JP4179764B2 - 高力銅基合金の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な析出硬化型の高力銅基合金の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、析出硬化型の高力銅基合金は、図1の工程概略図に示すように、溶解鋳造工程101により得られた析出硬化型の銅基合金を、熱間工程103にて材料の粗大な結晶粒子を微細にし機械的性質を改善するために熱間加工(鍛造ないしリング圧延等)した後、溶体化加熱処理工程105にて、900〜950℃程度に前段階で存在している析出相を固溶させて、均一固溶体にするに充分な時間保持した後、冷却(焼入処理)工程107にて、水中に急速に浸漬することで冷却(急冷)を行い、さらに必要に応じて冷間加工工程109にて硬化を促進し時効をより完全にするために冷間加工(鍛造)を行い、次に時効硬化熱処理工程111にて、一旦温度を400〜500℃に上げて過飽和固溶体の分解によってGPゾーン、中間相を析出させて強度を増大させ、合金に入れ込んだ成分金属を析出する冷却時効硬化熱処理を施し、その後空冷などにより冷却し、所望の銅基合金を製造している。
【0003】
しかしながら、製造条件を同じにして作られた銅基合金にも拘わらず、銅基合金の肉厚が厚くなると、所望の材質(例えば、疲労強度等)が得られない場合が生じるなどの問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、析出硬化型の高力銅基合金の肉厚によらず常に優れた材質(例えば、疲労破壊強度など)を有する高力銅基合金の製造方法を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の問題点を解決するために種々検討した結果、溶体化処理後の冷却工程において、該銅基合金の肉厚が厚いと水中浸漬により急冷処理しているにもかかわらず冷却速度が遅くなり、そのために硬化に寄与しない粗大な成分金属結晶粒子の析出(成長)が進み、またこの析出相が偏在化するなどのために銅基合金の組織内部で過飽和固溶体を充分に得ることができず、その後の銅基合金の性能(例えば、疲労破壊強度など)に影響を及ぼすことを知得し、かかる知見に基づき、水中浸漬冷却時に銅基合金表面に水の蒸発により形成される膜沸騰領域を遷移沸騰領域にすみやかに移行させることで、銅基合金の肉厚によらず冷却速度を速くすることができ、これにより冷却工程で析出が起こらず、母相中に固溶残存する成分金属が多くなり、所望の過飽和固溶体を得ることができ(焼きが入り)、その後の冷却時効硬化熱処理により銅基合金の肉厚によらず常に優れた材質(例えば、疲労破壊強度など)を有する高品質の高力銅基合金を安定的に得ることができることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0006】
すなわち、本発明者らは、所望の材質(例えば、疲労破壊強度等)の銅基合金が得られない原因は、溶体化処理後水中浸漬により急冷処理していたつもりが、銅基合金の導電性が高く熱伝導率が良好であるがゆえに、冷却時に銅基合金の体積/表面積の比率が大きいと、銅基合金表面では、図2および図3に示すように蒸気層が発生して膜沸騰領域を形成するため、銅基合金表面が直接水と接触して熱流束(抜熱量)を高める事ができず、図2に示すように銅基合金の表面温度の低下に伴い熱流束が一旦大きく低下するため、銅基合金を水中浸漬しているにもかかわらず急冷できず、この間に銅基合金の組織内部で硬化に寄与しない粗大な成分金属粒子の析出が進み、またこの析出相が偏在化することを見出したものである。そして、一旦、こうした粗大な成分金属(Zrなど)粒子が析出した後に、膜沸騰領域から蒸気層が徐々に消失し気泡の発生に移ることで遷移沸騰領域が形成されるようになると、銅基合金表面に直接水が接触可能となり急速に熱流束(抜熱量)が増加し冷却速度が増すことになる。しかしながら既に銅基合金の組織内部に粗大な結晶粒子の析出相が形成されてしまっているので所望の過飽和固溶体を得ることができないことがわかった。そこで本発明では、この銅基合金表面の膜沸騰領域を、構造的に抑制する仕組みを該銅基合金表面に持たせることで、あるいは強制的に破壊することで直接水を接触させることで、体積/表面積の比率が大きくとも、膜沸騰領域温度下でも銅基合金表面が早く冷え、遷移沸騰領域、特に図2に示す熱流束のピーク領域に早く移行し、冷却速度を高めることができることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至ったものである。すなわち、本発明の要旨とするところは、下記(1)〜(8)により達成される。
【0007】
(1) 析出硬化型の銅基合金を熱間加工した後、成分金属が固溶する温度以上に保持した後冷却する溶体化熱処理を行ってから、冷却時効硬化熱処理を施す高力銅基合金の製造方法において、
溶体化処理後に冷却する際に、
溶体化処理前に常温で表面に一層目に金属系、二層目に熱伝導率10mW/m2K以下の材料を溶射してから加熱して溶体化し、
その後冷却することを特徴とする高力銅基合金の製造方法。
【0008】
(2) 析出硬化型の銅基合金を熱間加工した後、成分金属が固溶する温度以上に保持した後冷却する溶体化熱処理を行ってから、冷却時効硬化熱処理を施す高力銅基合金の製造方法において、
溶体化処理後に冷却する際に、
その表面に垂直ないし平行に水噴流を噴射しながら冷却することを特徴とする高力銅基合金の製造方法であって、
前記溶体化処理後に冷却する際に、前記銅基合金を水中浸漬しながら行うことを特徴とする析出硬化型の高力銅基合金の製造方法。
【0009】
(3) 上記(2)に記載の製造方法において、被冷却物の表面に垂直に水噴流を噴射しながら冷却する方法であって、
水噴流の噴射流量が0.1m3/min/m2以上であることを特徴とする析出硬化型の高力銅基合金の製造方法。
【0010】
(4) 上記(2)に記載の製造方法において、被冷却物の表面に平行に水噴流を噴射しながら冷却する方法であって、
水噴流の噴射流量が0.1m3/min/m2以上で、
水噴流の噴射流速が0.1m/s以上であることを特徴とする析出硬化型の高力銅基合金の製造方法。
【0011】
(5) 上記(1)に記載の製造方法において、(i)溶体化処理後に冷却する際に、
その表面に垂直あるいは平行に水噴流を噴射しながら冷却することを特徴とする析出硬化型の高力銅基合金の製造方法;
(ii)上記(1)の製造方法において、被冷却物の表面に垂直に水噴流を噴射しながら冷却する方法であって、
水噴流の噴射流量が0.1m 3 /min/m 2 以上であることを特徴とする析出硬化型の高力銅基合金の製造方法;
(iii)上記(1)の製造方法において、被冷却物の表面に平行に水噴流を噴射しながら冷却する方法であって、
水噴流の噴射流量が0.1m 3 /min/m 2 以上で、
水噴流の噴射流速が0.1m/s以上であることを特徴とする析出硬化型の高力銅基合金の製造方法;
の上記(i)〜(iii)のいずれか1つに記載の製造方法を施すことを特徴とする高力銅基合金の製造方法。
【0012】
(6) 前記溶体化処理後に冷却する際に、前記銅基合金を水中浸漬しながら行うことを特徴とする上記(1)または(5)のいずれか1つに記載の高力銅基合金の製造方法。
【0013】
(7) 中空円筒の析出硬化型の銅基合金を熱間加工した後、成分金属が固溶する温度以上に保持した後冷却する溶体化熱処理を行ってから、冷却時効硬化熱処理を施す高力銅基合金の製造方法において、
溶体化処理後に冷却する際に、
溶体化処理前に常温で円筒内側表面および円筒の片端面に、一層目に金属系、二層目に熱伝導率10mW/m2K以下の材料を溶射してから、円筒端面の溶射していない面を下方にして台に乗せて加熱し(て溶体化し)、
その後水中浸漬冷却し、その際に、円筒外側側面に垂直に水噴流を噴射し、内側側面には、円筒中心軸と平行に水流を流すことを特徴とする高力銅基合金の製造方法。
【0014】
(8) 中空円筒の析出硬化型の銅基合金を熱間加工した後、成分金属が固溶する温度以上に保持した後冷却する溶体化熱処理を行ってから、冷却時効硬化熱処理を施す高力銅基合金の製造方法において、
溶体化処理後に冷却する際に、
溶体化処理前に常温で円筒の片端面に、一層目に金属系、二層目に熱伝導率10mW/m2K以下の材料を溶射してから、円筒端面の溶射していない面を下方にして台に乗せて加熱し(て溶体化し)、
その後水中浸漬冷却する際に、円筒外側側面および円筒内側側面に垂直に水噴流を噴射することを特徴とする高力銅基合金の製造方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明は、析出硬化型の銅基合金を熱間加工した後、成分金属が固溶する温度以上に保持した後冷却する溶体化熱処理を行ってから、冷却時効硬化熱処理を施す高力銅基合金の製造方法において、溶体化処理後に冷却する際に、
(1)溶体化処理前に常温で表面に一層目に金属系、二層目に熱伝導率10mW/m2K以下の材料を溶射してから加熱して溶体化し、その後冷却することを特徴とする高力銅基合金の製造方法、
(2)その表面に垂直あるいは平行に水噴流を噴射しながら冷却することを特徴とする高力銅基合金の製造方法、または
(3)上記(1)の方法において、上記(2)方法を施すことを特徴とする高力銅基合金の製造方法である。
【0016】
以下、図面を用いながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
図1は、本発明の高力銅基合金の製造方法の上記した実施の形態を示す工程概略図である。
【0018】
本発明に係る上記(1)の実施の形態は、既に従来技術で図1を用いて説明したと基本的には同じ工程を行うものであり、溶解鋳造工程101により得られた析出硬化型の銅基合金を、熱間加工工程103にて材料の粗大な結晶粒子を微細にし機械的性質を改善するために熱間加工(鍛造ないしリング圧延等)した後、溶体化処理工程105にて、クロムやジルコニウムなどの成分金属が固溶する温度以上に、前段階で存在している析出相を固溶させて均一固溶体にするに充分な時間保持した後、冷却(焼入処理)工程107にて、水で冷やすことで冷却(急冷)を行い、その後に所望の高力銅基合金を製造すべく、冷間加工工程および冷却時効硬化熱処理工程を適宜実施すればよい。図では、冷却(焼入処理)工程107後、さらに必要に応じて冷間加工工程109にて時効をより完全にするために冷間加工(鍛造)を行い、次に冷却時効硬化熱処理工程111にて、一旦温度を上げて過飽和固溶体の分解によってGPゾーン、中間相を析出させて強度を増大させ、合金に入れ込んだ成分金属を析出する時効硬化熱処理を施し、その後空冷などにより冷却し、所望の高力銅基合金を製造している。
【0019】
さらに、本発明の上記(1)の実施の形態では、溶体化処理後に冷却する際に、
溶体化処理工程105の前に、2層溶射工程115を設け、かかる工程115にて、高力銅基合金表面に一層目に金属系、二層目に熱伝導率10mW/m2K以下の材料を溶射し、
続く溶体化処理工程105にて加熱して溶体化し、
その後、冷却(焼入処理)工程107にて冷却(水冷)することを特徴とするものである。
【0020】
溶体化処理工程前に2層溶射工程を設けたのは、これにより、図4に示すように、高力銅基合金401表面に構造的に金属系溶射層403を介して熱伝導率の低い低熱伝導率溶射層(断熱層)405を設けることで、図5に示すように、溶体化処理後に冷却する際に、直ちに断熱層の表面温度が大幅に低下し遷移沸騰領域の熱流束ピーク領域にまで移行することができるためである。さらに、内部の銅基合金部分からの熱伝導率が低いために、銅基合金部分が高温(膜沸騰領域温度)であっても断熱層表面では遷移沸騰領域の熱流束ピーク領域温度を保つことができるため、急冷が可能となるものである。すなわち、断熱層として断熱効果を発揮し、水に接した表面温度を早期に下げる効果を持たせることができる。
【0021】
ここで、一層目の金属系材料は、銅基合金(母層)と二層目の熱伝導率10mW/m2K以下の材料との結合材としての役割を有するものである。すなわち、熱伝導率10mW/m2K以下の材料を直接銅基合金に溶射した場合、溶射された断熱層は熱伝導率が小さく熱膨脹率も小さいため、母層と断熱層の熱膨脹率の差が大きく温度衝撃により断熱層が剥がれてしまうため、両者の中間ぐらいの熱膨脹率(熱伝導率)を有する金属系材料を緩衝となる層(クッション)として用いることで両者をうまくくっつける効果が発揮できるものである。
【0022】
上記一層目の金属系材料としては、特に制限されるべきものではなく、例えば、Cu、Ni、Ni−Cr、MCoCrAlY(エムクラリ、M;Co、Co−Ni、Ni−Co、Ni、Feと、コバルト、クロム、アルミニウム、イットリウムの合金)、CoCrAlY(コバルト、クロム、アルミニウム、イットリウムの合金)、CoNiCrAlY(コバルト、ニッケル、クロム、アルミニウム、イットリウムの合金)、Mo合金、Cr合金などが挙げられる。これらは、1種単独で用いても良いが2種以上を併用してもよい。すなわち、金属系材料による金属系溶射層は、単一層であっても、または2層以上の多層構造であってもよい。すなわち、母層と断熱層の中間層として徐々に熱膨脹率を変化するようにしてもよい。
【0023】
また、上記二層目の熱伝導率10mW/m2K以下の材料としては、断熱層として機能し得るものであり特に制限されるべきものではなく、例えば、ZrO2−Y2O3(ジルコニア−イットリア)、アルミナ、ジルコニア−マグネシア、ジルコニアームライト、アルミナ−チタニア、サーメット(ジルコニアイットリアニクロム)などが挙げられる。これらは、1種単独で用いても良いが2種以上を併用しても良い。すなわち、熱伝導率10mW/m2K以下の材料による断熱層は、単一層であっても、または2層以上の多層構造であってもよい。
【0024】
また、2層目の溶射材料の熱伝導率は、10mW/m2K以下、好ましくは5mW/m2K以下である。該溶射材料の熱伝導率が10mW/m2Kを超える場合には、得られる断熱層において十分な断熱効果が発揮できず、上述したように溶体化処理後に冷却する際に断熱層表面での温度低下が充分でなく、膜沸騰領域から遷移沸騰領域への移行が早く行えず、冷却速度が遅くなり、所望の材質(疲労破壊強度など)を有する高力銅基合金を得ることが困難となる。
【0025】
また、溶射層の厚みは、上述した作用効果を損なわない範囲内であれば特に制限されるべきのものではなく、使用する種類によっても異なることから一義的に規定することはできないが、1層目の金属溶射層が10〜100μm、2層目の断熱層が10〜300μmの範囲である。1層目の金属溶射層が10μm未満の場合には2層目と母材との接合が不十分であり、一方、100μmを越える場合には製造コストが高くなり好ましくない。また、2層目の断熱層が10μm未満の場合には断熱効果が不十分であり、一方、300μmを越える場合には断熱層が厚すぎるため、断熱層表面での温度低下が大きくなりすぎ、図2に示す移沸騰領域の熱流束ピーク領域温度よりも低い側に外れてしまうため、熱流束が小さくなり冷却速度が遅くなってしまうなど好ましくない。また、実際には、大体の目安として1層目の金属溶射層で50〜100μm程度、2層目の断熱層も100μm程度であれば十分であり、事前にかかる厚みを目安として予備実験を行うなどして、上記作用効果を発現し得る厚みを決定するのが望ましい。
【0026】
また、溶射層を付着させるときの銅基合金表面の温度としては、通常、酸化層発生温度よりも低い温度であればよい。これは、溶射前には、銅基合金の表面を極力清浄な状態にするために、脱脂洗浄、表面の凹凸をつけるためのショットブラストなどを行うことが望ましい。したがって、この後、大気中で120℃以上程度にすると酸化層が発生し、溶射被膜の付着が悪化することが懸念されるためである。ただし、例外として、溶射を特定雰囲気(酸化層が発生しないAr、He、H2、N2などの不活性ガスや非酸化性ガス雰囲気など)の場合には、高温で溶射を行い溶射層内の残留応力を低減することもできるため、かかる場合においては、特に銅基合金表面の温度としては、制限されるものではない。
【0027】
また、溶射方法としては、特に制限されるべきものではなく、従来既知の各種溶射技術を適宜選択して行うことができるものであり、溶射材料や加工材(銅基合金)の種類に応じて、例えば、プラズマ溶射法(プラズマ溶射ガン等の溶射装置でノントランスファードアークを発生させ、このアーク中にAr、He、H2、N2などの不活性ガスを供給して作り出したプラズマ流中に、それぞれ上記1層目の金属系の粉末材料や2層目の熱伝導率10mW/m2K以下の粉末材料を送って溶融噴射し銅基合金表面上に順次被膜を形成させる方法)、ジェットコート溶射法(新しい高エネルギーガス溶射法であり、ジェットコートガン等の溶射装置で燃焼ガスには水素や炭化水素系のプロパン、マップガスを使用し、これに酸素を添加して約2700℃の高温を発生させ加圧し、この結果生じたマッハ5以上にもおよぶ極超音速の収束ジェット流に金属系の溶射粉末材料や熱伝導率10mW/m2K以下の溶射粉末材料を供給し、特殊ノズルで圧縮したのち加工材(銅基合金)表面上にジェット噴射して順次被膜を形成させる方法)、ローカイド溶射法(ローカイドガン等の溶射装置で燃焼ガス(主として酸素・アセチレン)によって完全に溶融された粒子のみが噴射されるという特徴があり、セラミックロッドを溶射してセラミック被膜を形成させる方法)、スフェコード溶射法(プラスチックのチューブにセラミック粉末を充填し、フレキシブルコード状にした溶射材料を使用する方法)などが挙げられる。好ましくは、他の溶射法による熱源では溶射し得なかった難溶融金属、セラミックス、サーメットなどの材料も溶射が可能であり、金属、合金、セラミックス、サーメットと極めて広範囲な材料を対象とでき、粉末の粒度範囲は粗級から微細級(5〜125μm)に互り、また使用条件によっては、2種類以上の溶射材料を組み合わせた被膜、あるいは2種類の材料の配合比を除々に変化させて形成した被膜、さらにまたプラズマ被膜表面の微細な粗さを利用した凹凸(滑り止め)被膜などが可能なプラズマ溶射法である。
【0028】
なお、2層溶射工程では、上述したように溶射前の前処理として、銅基合金の表面を極力清浄な状態にするために、脱脂洗浄、表面の凹凸をつけるためのショットブラストなどを行うことが望ましい。同様に後処理として、溶射層表面の仕上げ加工などを行ってもよい。
【0029】
本発明の上記(1)の実施の形態では、上記2層溶射工程にて金属系材料、熱伝導率10mW/m2K以下の断熱材料を順次溶射することで、続く溶体化処理工程105にて加熱して溶体化し、その後、冷却(焼入処理)工程107にて従来と同様に水中浸漬するなどの冷却(急冷)処理により、体積/表面積の比率が大きい銅基合金であっても冷却速度を速めることができ、疲労破壊強度などの材質に優れた高力銅基合金の製品を得ることができるものである。
【0030】
本発明に係る上記(2)の実施の形態でも、既に従来技術で図1を用いて説明したと基本的には同じ工程を行うものであり、溶解・鋳造工程101により得られた析出硬化型の銅基合金を、熱間加工工程103にて材料の粗大な結晶粒子を微細にし機械的性質を改善するために熱間加工(鍛造ないしリング圧延等)した後、溶体化処理工程105にて、クロムやジルコニウムなどの成分金属が溶解する温度以上に、前段階で存在している析出相を固溶させて均一固溶体にするに充分な時間保持した後、冷却(焼入処理)工程107にて、水で冷やすことで冷却(急冷)を行い、その後に所望の高力銅基合金を製造すべく、冷間加工工程および冷却時効硬化熱処理工程を適宜実施すればよい。図では、冷却(焼入処理)工程107後、さらに必要に応じて冷間加工工程109にて時効をより完全にするために冷間加工(鍛造)を行い、次に冷却時効硬化熱処理工程111にて、一旦温度を400〜500℃に上げて入れ込んだ成分金属を析出する時効硬化熱処理を施し、その後空冷などにより冷却し、所望の高力銅基合金を製造している。
【0031】
ただし、本発明の上記(2)の実施の形態では、溶体化処理後に冷却する際に、
上記冷却(焼入処理)工程107にて、銅基合金表面に垂直および/または平行に水噴流107´を噴射しながら冷却(水冷)することを特徴とするものである。
【0032】
冷却工程で、水噴流を噴射しながら冷却するとしたのは、上述したように冷却初期に膜沸騰領域が形成されるため、かかる膜沸騰領域を形成する銅基合金表面の蒸気層を外力を付加することでいわば強制的に破壊することで、銅基合金表面に直接水を接触させ、すばやく銅基合金の表面温度を大幅に低下させ、遷移沸騰領域の熱流束ピーク領域にまで移行させるためである。
【0033】
したがって、ここでの水噴流の噴射流量は、対象となる銅基合金の大きさ、肉厚、体積/表面積の比率の大きさ、溶体化処理時の温度条件などにより銅基合金の持つ熱容量が異なるため、発生する蒸気層の厚さも異なるほか、水噴流の当て方(特に流れの向き)等によっても異なるため一義的に規定されるべきものではないが、少なくとも発生した蒸気層を突き破るだけの噴射流量(流速)を有している必要がある。
【0034】
例えば、(i)銅基合金を水中浸漬した状態で該銅基合金表面に垂直に水噴流を噴射する場合には、水噴流の噴射流量は0.1m3/min/m2以上が好ましい。垂直な水噴流の噴射流量が0.1m3/min/m2未満の場合には、発生する蒸気層を常に突き破ることができない場合があるため好ましくない。
【0035】
(ii)銅基合金を水中浸漬した状態で該銅基合金表面に平行に水噴流を噴射する場合には、水噴流の噴射流量は0.1m3/min/m2以上で、噴射流速0.1m/s以上が好ましい。平行な水噴流の噴射流量が0.1m3/min/m2未満の場合もしくは平行な水噴流の噴射流速が0.1m/s未満の場合には、発生する蒸気膜を突き破ることができない場合があるため好ましくない。すなわち、平行流の場合、冷却面積に対する噴射流量だけでは、該銅基合金表面に垂直な方向における流動を規定できず、例えば、平行な水噴流の噴射流量が同じであっても、図10(b)のように、銅基合金表面上を流れる水噴流(図中、矢印で示す。この矢印の大きさは噴射流速の大きさに比例するものとする。)による水膜厚(平行流の厚み)が小さいと、平行な水噴流の噴射流速が速く、蒸気膜をうち破る力が大きく、所望の冷却効果を発揮し得るものである。一方、図10(a)のように、銅基合金表面上を流れる水噴流(図中、矢印で示す)による水膜厚(平行流の厚み)が大きくなると、極端に噴射流速が遅くなり、蒸気膜をうち破る力が不足し、所望の冷却効果を充分に発揮し得ないため、上記のように噴射流量および噴射流速の双方を規定したものである。
【0036】
(iii)銅基合金を水中浸漬していない状態で該銅基合金表面に垂直に水噴流を噴射する場合には、水噴流の噴射流量は0.1m3/min/m2以上が好ましい。垂直な水噴流の噴射流量が0.1m3/min/m2未満の場合には、発生する蒸気膜を突き破ることができない場合があるため好ましくない。
【0037】
(iv)銅基合金を水中浸漬していない状態で該銅基合金表面に平行に水噴流を噴射する場合には、水噴流の噴射流量は0.1m3/min/m2以上で、噴射流速0.1m/s以上が好ましい。平行な水噴流の噴射流量が0.1m3/min/m2未満の場合あるいは平行な水噴流の噴射流速が0.1m/s未満の場合には、発生する蒸気膜を突き破ることができない場合があるため好ましくない。
【0038】
また、上記(i)〜(iv)に規定する水噴流の噴射流量は、常に一定の噴射流量でなくともよく、蒸気層の状態に応じて、適宜その噴射流量を加減してもよい。同様に、上記(ii)、(iv)に規定する水噴流の噴射流速は、常に一定の噴射流速でなくともよく、蒸気層の状態に応じて、適宜その噴射流速を加減してもよい。また、上記(iii)、(iv)の銅基合金を水中浸漬していない状態としては、例えば、溶体化処理工程105後に、銅基合金を水槽中に沈めるために移送している状態や冷却工程107中、水槽中に沈めることなく水を噴きかけて冷却している状態などが挙げられる。
【0039】
なお、ここで、「表面に」水噴流を噴射するとあるのは、当該(2)の実施態様の作用機序から明らかなように、表面のほぼ全体にわたって水噴流を噴射するのが好ましいといえるが、決して、本発明では表面の一部に水噴流を噴射する実施態様を排除するものではない。すなわち、表面の一部分であっても、少なくとも発生した蒸気層を突き破るだけの水噴流を噴射することができれば、銅基合金の熱伝導率の良さから、銅基合金の冷却速度を低下させることがない場合もある得るからである。
【0040】
また、該表面に「垂直ないし平行に」水噴流を噴射するとしたのは、少なくとも発生した蒸気層を突き破るだけの水噴流を噴射することができれば特に制限されるものではないためであり、例えば、銅基合金の表面に常に一定の角度で水噴流を噴射してもよいし、銅基合金の表面に対して水が当たる角度が経時的に変化するようにしてもよいものであり、この場合には、角度に応じて、常に発生する蒸気層を突き破ることができるように噴射流量も変化するようにしてもよいといえる。また、対象となる銅基合金の形状によっては、表面全体に垂直流または平行流のいずれかを噴射するようにしてもよいし、ある面には垂直流を噴射し、別の面には平行流や0度〜180度の範囲の水噴流を噴射するようにしてもよいものでもある。1例を挙げれば、円筒形状の銅基合金の場合を例にとれば、外側表面には垂直流を噴射し、内側表面には平行流を噴射するなどしてもよい。また、これらの中には層流以外にも、うず流のような一様でない流れ(乱流)を含んでもよいことは言うまでもない。
【0041】
なお、ここでいう水噴流を「噴射しながら」冷却するとしたのは、例えば、銅基合金の周囲にノズルのような水噴射部を多数配置し、溶体化処理後に直ちにこれらのノズルから表面全体に水噴流を噴射しながら冷却してもよいが、好ましくは、溶体化処理後に直ちにこうしたノズルから水噴流を噴射しなから水中浸漬し、浸漬後も該ノズルから上記噴射流量にて水噴流を噴射し続けるのが急冷する上で効果的であるといえる。
【0042】
本発明に係る上記(3)の実施の形態は、上記(1)の実施の形態において、上記(2)の実施の形態を施すものである。これにより本発明の作用効果をより有効かつ効果的に発現することができる点で有利である。特に、形状によっては、銅基合金の表面全体に水噴流を噴射することができない場合もあり、こうした場合に、当該水噴流を噴射することができない場所に上記(1)の実施の形態を施すことで、本発明の作用効果をより確実に達成することができる点で有利である。
【0043】
上記(3)の実施の形態につき、より具体的な例を図面を用いて以下に説明する。
【0044】
中空円筒の析出硬化型の銅基合金を熱間加工した後、成分金属が固溶する温度以上に保持した後冷却する溶体化熱処理を行ってから、冷却時効硬化熱処理を施す高力銅基合金の製造方法において、
溶体化処理後に冷却する際に、
(a);図6に示すように、溶体化処理前に円筒内側表面603および円筒の片端面605に、一層目に金属系、二層目に熱伝導率10mW/m2K以下の材料を溶射して溶射部601を形成してから、円筒端面の溶射していない面609を下方にしてメッシュ状の台607に乗せて加熱して溶体化し、
その後水中浸漬冷却し、その際に、円筒外側側面611に垂直に水噴流613(矢印で表示した)を噴射し、内側側面603には、円筒中心軸と平行に水噴流615(矢印で表示した)を噴射し流す方法、
あるいは(b);図7に示すように、溶体化処理前に円筒の片端面705に、一層目に金属系、二層目に熱伝導率10mW/m2K以下の材料を溶射して溶射部701を形成してから、中空円筒(の銅基合金)端面の溶射していない面709を下方にしてメッシュ状の台707に乗せて加熱して溶体化し、
その後水中浸漬冷却する際に、円筒外側側面711および該円筒内側側面703に垂直に水噴流713、715を噴射する方法などが挙げられるが本発明の上記(3)の実施形態がこれらに限定されるものでない。
【0045】
ここで、上記(a)では、銅基合金の形状として中空円筒を用い、溶体化処理後に冷却する際に、
(i)該中空円筒上端面には、溶射層を形成し((1)の実施の形態)、
(ii)中空円筒外側側面および下端面には、水噴流を垂直に噴射し((2)の実施の形態)、
(iii)中空円筒内側側面には、溶射層を形成し、かつ水噴流を平行に噴射する((1)+(2)の実施の形態)例である。
【0046】
上記(b)では、上記(a)と同じく銅基合金の形状として中空円筒を用い、溶体化処理後に冷却する際に、
(i)該中空円筒上端面には、溶射層を形成し((1)の実施の形態)、
(ii)中空円筒外側側面、中空円筒内側側面および下端面には、水噴流を垂直に噴射する((2)の実施の形態)例である。
【0047】
上記(3)の実施の形態において、中空円筒の析出硬化型の銅基合金を水中浸漬させるには、例えば、図8(a)、(b)に示すように、中空円筒801を乗せた台803を適当な支持材(ワイヤ)805で吊るし、これをクレーンなどの左右上下に可動自在な支持体(図示せず)で支持しながら適時移動させることで、溶体化処理用の加熱炉(図示せず)から水を張った水槽807に移動し、台803ごと水中浸漬すればよい。なお、上記(1)および(2)の実施の形態においても同様に行うことができるが、本発明では、水中浸漬しなくとも充分な量の水噴流を噴射することでも冷却(急冷)することは可能である。
【0048】
また、上記(3)の実施の形態において、上記円筒外側側面に垂直に水噴流を噴射する方法としては、特に制限されるものではなく、従来公知の水噴射関連技術を適宜利用することができるものであり、1例を挙げれば、図9に示すように、中空円筒(の銅基合金)901を乗せた台903を吊るした支持材(ワイヤ)905よりもさらに外側の上部に該円筒901の同心円状(リング状)のヘッダ909が設けられ、該ヘッダ909らは垂れ下がりヘッダ911が複数垂れ下げられており、各垂れ下がりヘッダ911には、水噴流の噴射口(ノズル)913が、円筒外側側面に垂直に水噴流915が当たるように多数設けられており、かかる噴射口(ノズル)913から水噴流915を噴射することで円筒外側側面全体にほぼ垂直に水噴流915を噴射することができるものである。なお、ノズル913の噴射角度を変えることで、水噴流の角度を円筒外側側面全体に垂直〜平行(0°〜180°)の範囲で任意に調整することができるものである。なお、上記(2)の実施の形態においても同様に行うことができる。
【0049】
一方、上記円筒内側側面に平行に水噴流を噴射する方法としては、特に制限されるものではなく、従来公知の水噴射関連技術を適宜利用することができるものであり、1例を挙げれば、図9に示すように、水槽907の底面921に、その中央部から上方に伸びる水噴流の噴射ノズル923であって、該噴射ノズル923の上下左右に可動自在なノズル口が真上を向くように設置しておき、中空円筒(の銅基合金)901を乗せた台903を適当な支持材(ワイヤ)905で吊るし、これをクレーンなどの左右上下に可動自在な支持体(図示せず)で支持しながら、水槽907の中央部にちょうど中空円筒901の中空部902が来るように移動させ、水を張った水槽907に水中浸漬するように下げていけばよい。これにより噴射ノズル923のノズル口から水噴流を噴射することで、中空円筒901内側側面全体にほぼ平行に水噴流925を噴射することができるものである。また、上記円筒内側側面に垂直に水噴流を噴射する方法としては、特に制限されるものではなく、従来公知の水噴射関連技術を適宜利用することができるものであり、1例を挙げれば、図9の噴射ノズル923をさらに上方にまで伸ばし、中空円筒(の銅基合金)901を乗せた台903を水中浸漬した状態で、中空円筒(の銅基合金)901の上部から下部までの間に、該噴射ノズル923のノズル口が配置するようにしておき(図示せず)、かつ各ノズル口の角度は、円筒内側側面全体にほぼ垂直に水噴流を噴射することができるように調整されていればよい。なお、各ノズル口(図示せず)の噴射角度を変えることで、水噴流の角度を円筒内側側面全体に対して垂直〜平行(0°〜180°)の範囲で任意に調整することができるものである。また、これらの噴射ノズル923は、上記とは反対に上方部に設け、上方から下方に向けて噴射するようにしても良い。
【0050】
以上が、本発明の主要部に関する具体的な実施の形態についての説明であるが、本発明は、これらに何ら制限されるべきものではない。
【0051】
また、本発明の他の構成要件に関しては、従来公知の析出硬化型の高力銅基合金の製造技術(装置技術や関連技術等を含む)の全てが適用可能であり、これらの中から適宜選択して利用することができるものであり、何ら制限されるべきものではない。具体的な個々の製造条件も従来公知の析出硬化型の高力銅基合金の製造技術に基づき適宜決定すればよい。従って、以下に図1を用いて簡単に概説するが、決してこれらに制限されるものではない。
【0052】
(1)溶解鋳造工程
この工程では、析出硬化型の銅基合金の原料を溶解し、適当な型などに鋳込み鋳造することで、所望の形状を有する析出硬化型の高力銅基合金(鋳塊)を得る。得られた銅基合金の鋳塊表面の偏析層および鋳塊欠陥を研削して除去する。
【0053】
ここで、析出硬化型の高力銅基合金とは、当該工程101後の熱間加工工程103、高温で加熱冷却(溶体化処理工程105〜冷却(焼入処理)工程107)の後、低温で加熱冷却(冷却時効硬化熱処理工程111)によって硬化し得る全ての高力銅基合金材料であればよく、その組成及び種類としては、例えば、Cr−Cu、Be−Cu、Zr−Cu、Cu−Ti、Cr−Zr−Cu、Cu−Cr−Zr−Si、Cu−Cr−Cd、Be−Zr−Cu、Cu−Ni−Be−Zr、Cu−Ni−Be、Cu−Be−Co、Cu−Ti、Cu−Ni−Si及び他の元素をベースにした銅合金などを挙げることができるが、これらに制限されるべきものではない。
【0054】
また、本発明の製造方法では、対象となる析出硬化型の高力銅基合金の大きさは、肉厚、体積/表面積の比率の大きさは、いずれも特に制限されるべきものではなく、非常に大きな熱容量を有する大型の析出硬化型の高力銅基合金であってもよい。これは、発明の製造方法では、上述したように溶体化処理後に冷却する際に、大きさ、肉厚、体積/表面積の比率の大きさによらず、冷却時に最大限の熱流速(抜熱量)を実現できる温度流域に素早く移行し保持できる技術を獲得したことに他ならないためである。特に、本発明の製造方法では、大きさが大きくなるほど、急冷が困難であったことに鑑みれば、より大型の析出硬化型の高力銅基合金に適したものであるといえ、例えば、中空円筒の析出硬化型の高力銅基合金を例にとれば、外径が1000mm以上、肉厚が100mm以上であっても全く問題なく本発明の作用効果を奏することができるものである。
【0055】
(2)熱間加工工程
熱間加工工程103では、材料の粗大な結晶粒子を微細にし機械的性質を改善するために、例えば、鍛造やリング圧延等による加工を行う。
【0056】
(3)溶体化処理工程
成分金属が固溶する温度以上に前段階で存在している析出相を固溶させて、均一固溶体にするに充分な時間保持する。
【0057】
ここで、成分金属としては、銅基合金の銅以外の成分組成がこれに該当するものであり、Cr、Si、Sn、Ni、Zn、Fe、Mn、Co、Al、Mg、As、Ca、V、Y、希土類元素、In、Pb、Sb、Bi、Te、Ag、Au、P、B、Ga、Zr、Geなどが挙げられるが、これらに限定されるべきものではない。また、これらは1種だけでも良いが2種以上を併用しても良い。
【0058】
溶体化処理温度としては成分金属が固溶する温度以上が必要であり、たとえば、900〜950℃の範囲などが例としてあげられる。溶体化処理温度が成分金属が固溶する温度未満の場合には溶体化が不十分となり充分な強度が出ないなど好ましくない。また、溶体化処理温度の上限温度は、特に制限されるべきものではないが、融点に近くなれば、高力銅基合金の再融解の危険性があり所定の強度が得られる温度とすることが好ましい。
【0059】
溶体化処理時間は、均一固溶体にするに充分な時間であれば良い。溶体化処理時間が均一固溶体にするに充分な時間保持し得ない場合には、固溶体が均一に析出せずに不均一なまま残るなど、溶体化が不十分となり充分な強度が出ないなど好ましくない。
【0060】
(4)冷却(焼入処理)工程
冷却(焼入処理)工程に関しては、上述したとおりである。なお、冷却した合金の表面を酸洗、研削またはこれらの組み合わせにより洗浄化してもよい。
【0061】
なお、冷却(焼入処理)工程で用いる溶媒としては、水、油類、液体金属、溶融塩がある。油類、液体金属、溶融塩は水に比べて沸点が高く、沸騰しないことから水より高冷却能力を得られる場合もあるが取り扱いが水に比較して難しく、また、コストも高いため、使う機会が限定される。なお、水は純水(イオン交換水)でなくともよく、水道水(市水)、地下水(井戸水)、工業用水、川水、湖水、海水などであってもよい。これは、若干銅基合金表面には、溶射層で保護されていたり、あるいは保護されていなくとも、その後、最終的に表面の研削を行うため、この時点で表面層が汚染されていたり欠陥を有していても特に問題はないためである。
【0062】
また、冷却方法としては、既に上述したように、水中浸漬を必ずしも必須とするものではなく、表面温度の低下が速くなり、冷却速度が向上し得る程度に冷却(水冷)を行うことができるのであれば、水噴流の噴射を行うだけであっても良いなど、特に限定されるものではない。この場合には、特に大型の水槽を必要とせず、また連続的に量産することもできる点で有利であるまた、水中浸漬を行う場合に、上記水噴流を噴射するにはノズルなどを設け、系外から供給ポンプなどを通じて一定温度の水を常に噴射するようにしてもよいが、撹拌翼などを水槽中に設け、かかる撹拌翼による水流によって所望の噴射流量を達成し、これを水噴流としてもよいが、水槽内だけで循環する場合には水の温度が上昇するため、常に水槽内の液温がほぼ一定温度となるように系外から供給ポンプなどを通じて一定温度の水を供給するようにしてもよいなど、特に制限されるものではない。
【0063】
また、冷却(焼入処理)工程では、対象の析出硬化型の高力銅基合金の温度は、通常、液温とほぼ同じ温度まで冷却されていればよい。
【0064】
(5)冷間加工工程
当該冷間加工工程109は、必要に応じて適宜設けることができる。該冷間加工工程109では、硬化を促進し時効をより完全にするためにおこなうものであり、1〜90%の加工率で冷間加工を行ってもよい。該冷間加工としては、例えば、鍛造等による加工を行うことができる。
【0065】
(6)時効硬化熱処理工程
当該時効硬化熱処理工程111は、必要に応じて適宜設けることができる。該時効硬化熱処理工程111では、一旦、合金の温度を上げて過飽和固溶体の分解によってGPゾーン、中間相を析出させて強度を増大させ、合金に入れ込んだ成分金属を析出する時効硬化熱処理を施す。その後、例えば、空冷などにより常温程度まで冷却する。
【0066】
時効硬化熱処理温度は、材質により異なるが、たとえば、500℃、1時間程度である。
【0067】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、実施例での強度比較は、350℃での引っ張り強度により比較した。
【0068】
実施例1
析出硬化型の高力銅基合金Cu−1.0Cr質量%合金を鋳造後、850℃程度で熱間加工し、900℃以上で1時間以上保持して溶体化処理を行ってから冷却(焼き入れ処理)し、10%程度の冷間加工を施した後、400℃以上で1時間以上保持した後、空冷により常温まで冷却する時効硬化処理を施す析出硬化型の高力銅基合金の製造において、
前記溶体化処理後に冷却(焼き入れ処理)する際に、
前記溶体処理前に常温で高力銅基合金の表面全体に1層目として、CoNiCrAlYを0.1mm、二層目として熱伝導率約1.0W/mKのジルコニア−イットリアを0.2mmプラズマ溶射にて溶射する溶射処理を行ってから前記溶体化熱処理により加熱し、その後前記冷却(焼き入れ処理)として水中浸漬により急冷した。この際、目視にて溶射層表面を観察した結果、膜沸騰による蒸気層の発生期間は短く、すぐに遷移沸騰に移行したことを示す気泡の発生が確認できた。
【0069】
得られた析出硬化型の高力銅基合金(1)につき、上記測定方法で引っ張り強度の測定を行ったところ、390MPaであった。
【0070】
比較例1
実施例1において、前記溶体化処理後に冷却(焼入処理)する際に、前記溶体化処理前に溶射処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして中空円筒の析出硬化型の高力銅基合金の製造を行った。冷却(焼入処理)する際に、目視にて高力銅基合金表面を観察した結果、膜沸騰による蒸気層の発生期間は長く、なかなか遷移沸騰による気泡の発生には移行しなかった。
【0071】
得られた比較用の析出硬化型の高力銅基合金(1)につき、上記測定方法で引っ張り強度の測定を行ったところ、300MPaであった。
【0072】
実施例2
析出硬化型の高力銅基合金Cu−1.0Cr質量%合金を鋳造後、850℃程度で熱間加工し、900℃以上で1時間以上保持して溶体化処理を行ってから冷却(焼き入れ処理)し、10%程度の冷間加工を施した後、400℃以上で1時間以上で保持した後、空冷により常温まで冷却する時効硬化処理を施す析出硬化型の高力銅基合金の製造において、
前記溶体化処理後に冷却(焼き入れ処理)する際に、
前記溶体化熱処理により加熱し、その後前記冷却(焼き入れ処理)として、水中で材料に垂直な方向に水噴流を0.1m3/min/m2噴射させたところに浸漬させ、急冷した。この際、目視にて水噴流衝突部を観察した結果、膜沸騰による蒸気層の発生期間は短く、すぐに遷移沸騰に移行したことを示す気泡の発生が確認できた。
【0073】
得られた析出硬化型の高力銅基合金(2)につき、上記測定方法で引っ張り強度の測定を行ったところ、400MPaであった。
【0074】
比較例2
析出硬化型の高力銅基合金Cu−1.0Cr質量%合金を鋳造後、850℃程度で熱間加工し、900℃以上で1時間以上保持して溶体化処理を行ってから冷却(焼き入れ処理)し、10%程度の冷間加工を施した後、400℃以上で1時間以上で保持した後、空冷により常温まで冷却する時効硬化処理を施す析出硬化型の高力銅基合金の製造において、
前記溶体化処理後に冷却(焼き入れ処理)する際に、
前記溶体化熱処理により加熱し、その後前記冷却(焼き入れ処理)として、水中に浸漬させ急冷した。この際、目視にて水噴流衝突部を観察した結果、膜沸騰による蒸気層の発生期間は前記実施例2に比較して長くなっていることが確認できた。
【0075】
得られた比較用の析出硬化型の高力銅基合金(2)につき、上記測定方法で引っ張り強度の測定を行ったところ、300MPaであった。
【0076】
実施例3
中空円筒の析出硬化型の高力銅基合金Cu−1.0Cr質量%合金を鋳造後、850℃程度で熱間加工し、900℃以上で1時間以上保持して溶体化処理を行ってから冷却(焼き入れ処理)し、10%程度の冷間加工を施した後、400℃以上で1時間以上保持した後、空冷により常温まで冷却する時効硬化処理を施す析出硬化型の高力銅基合金の製造において、
前記溶体化処理後に冷却(焼き入れ処理)する際に、
前記溶体化処理前に常温で高力銅基合金の中空円筒の円筒内側表面及び円筒の片端面に1層目として、CoNiCrAlYを厚さ0.1mm、二層目として熱伝導率約1.0W/mKのジルコニア−イットリアを厚さ0.2mmプラズマ溶射にて溶射する溶射処理を行った。その後円筒端面の溶射していない面を下方にして台に載せて前記溶体化熱処理により加熱し、その後前記冷却(焼き入れ処理)として水中浸漬により急冷した。この際、円筒外側側面に垂直に水噴流を0.1m3/min/m2噴射し、円筒の内側側面には円筒中心軸と平行に0.5m3/min/m2の水流を流した。なお、円筒を載せた台は、円筒の内径より大きい開口部を備え、円筒内径部に下方から水流が流入出できるようになっている。
【0077】
得られた析出硬化型の高力銅基合金(3)につき、上記測定方法で引っ張り強度の測定を行ったところ、各部位とも400MPaであった。
【0078】
実施例4
中空円筒の析出硬化型の高力銅基合金Cu−1.0Cr質量%合金を鋳造後、850℃程度で熱間加工し、900℃以上で1時間以上保持して溶体化処理を行ってから冷却(焼き入れ処理)し、10%程度の冷間加工を施した後、400℃以上で1時間以上保持した後、空冷により常温まで冷却する時効硬化処理を施す析出硬化型の高力銅基合金の製造において、
前記溶体化処理後に冷却(焼き入れ処理)する際に、
前記溶体化処理前に常温で高力銅基合金の中空円筒の円筒の片端面に1層目として、CoNiCrAlYを厚さ0.1mm、二層目として熱伝導率約1.0W/mKのジルコニア−イットリアを厚さ0.2mmプラズマ溶射にて溶射する溶射処理を行った。その後円筒端面の溶射していない面を下方にして台に載せて前記溶体化熱処理により加熱し、その後前記冷却(焼き入れ処理)として水中浸漬により急冷した。この際、円筒外側側面及び内側側面に垂直に水噴流を0.1m3/min/m2噴射した。なお、円筒を載せた台は、円筒の内径より大きい開口部を備え、円筒内径部に下方から水流が流入出できるようになっている。
【0079】
得られた析出硬化型の高力銅基合金(4)につき、上記測定方法で引っ張り強度の測定を行ったところ、各部位とも400MPaであった。
【0080】
【発明の効果】
本発明に係る高力銅基合金の製造方法を採用することにより、溶体化処理後に冷却する際に、冷却速度を早め、肉厚や体積/表面積の比率の大きさなどによらず常に優れた材質、とりわけ疲労破壊強度に優れた材質の高力銅基合金を得ることができるものである。すなわち、本発明により得られる高力銅基合金では、例えば、中空円筒の析出硬化型の高力銅基合金の場合、肉厚が350mm以上のものでは、その高温引っ張り強度が30%程度向上する。本発明と比較例の材料について小野式回転曲げ疲労試験機を用いて、260MPaの繰り返し加重を付加したところ、本発明による方法では、従来法の3〜5倍と大幅な寿命延長が得られた。そのため、これらの高力銅基合金では、連続鋳造用鋳型材、抵抗溶接用電極材、金型材などとして幅広い分野に利用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来法および本発明の析出硬化型の高力銅基合金の製造工程概略図を示す。
【図2】 析出硬化型の高力銅基合金の表面温度の低下に伴う該銅基合金の熱流束の関係を示すグラフである。
【図3】 図3(a)は、析出硬化型の高力銅基合金の表面での蒸気層の発生により膜沸騰領域が形成された際の様子を模式的に表す断面概略図である。図3(b)は、析出硬化型の高力銅基合金の表面で、図3(a)の膜沸騰領域から、遷移沸騰領域に移行した後の様子を模式的に表す断面概略図である。
【図4】 本発明の製造方法の1つの実施形態により、析出硬化型の高力銅基合金の表面に2層溶射層が形成された際の様子を模式的に表す断面概略図である。
【図5】 本発明の製造方法の1つの実施形態により、表面に溶射層が形成された析出硬化型の高力銅基合金を溶体化処理後に水中浸漬冷却した際の、該高力銅基合金の中心部から溶射層表面部までの温度分布の様子を模式的に示すグラフである。
【図6】 図6(a)は、本発明の製造方法の1つの実施形態により、中空円筒の析出硬化型の高力銅基合金を溶体化処理後に冷却した際の、高力銅基合金の溶射層および水噴流の噴射により冷却する様子を模式的に表す上面概略図であり、図6(b)は、概略斜視図である。
【図7】 図7(a)は、本発明の製造方法の他の1つの実施形態により、中空円筒の析出硬化型の高力銅基合金を溶体化処理後に冷却した際の、高力銅基合金の溶射層および水噴流の噴射により冷却する様子を模式的に表す上面概略図であり、図7(b)は、概略斜視図である。
【図8】 図8は、本発明の製造方法の他の1つの実施形態により、中空円筒の析出硬化型の高力銅基合金を溶体化処理後に水中浸漬冷却する際の、高力銅基合金の様子を模式的に表す概略図である。
【図9】 本発明の製造方法の1つの実施形態により、中空円筒の析出硬化型の高力銅基合金を溶体化処理後に冷却した際の、高力銅基合金への水噴流の噴射により冷却する様子を模式的に表す概略図である。
【図10】 図10は、析出硬化型の高力銅基合金表面に平行に水噴流(図中、矢印で示す。この矢印の大きさは噴射流速の大きさに比例するものとする。)を噴射しながら冷却する際には、水噴流の噴射流量と噴射流速の双方を規定する必要がある理由を説明するための参考図であって、平行な水噴流の噴射流量を同じにした際に、図10(a)は、銅基合金表面上を流れる水噴流による水膜厚(平行流の厚み)が大きく、平行な水噴流の噴射流速が極端に遅くなる様子を模式的に表した高力銅基合金表面近傍の断面概略図であり、図10(b)は、銅基合金表面上を流れる水噴流による水膜厚(平行流の厚み)が小さく、平行な水噴流の噴射流速が速くなる様子を模式的に表した高力銅基合金表面近傍の断面概略図である。
【符号の説明】
101…溶解鋳造工程、 103…熱間加工工程、
105…溶体化加熱処理工程、 107…冷却(焼入処理)工程、
107´…水噴流操作、 109…冷間加工工程、
111…時効硬化熱処理工程、 115…2層溶射工程、
401…高力銅基合金、 403…金属系溶射層、
405…低熱伝導率溶射層(断熱層)、 601…溶射部、
603…円筒内側表面、 605…円筒の上端面、
607…台、 609…円筒端面の下端面、
611…円筒外側側面、 613…円筒外側側面に垂直な水噴流、
615…円筒中心軸と平行な水噴流、 701…溶射部、
703…円筒内側表面、 705…円筒の上端面、
707…台、 709…円筒端面の下端面、
711…円筒外側側面、 713…円筒外側側面に垂直な水噴流、
715…円筒内側側面に垂直な水噴流、 801…中空円筒、
803…台、 805…支持材(ワイヤ)、
807…水槽、 901…中空円筒、
903…台、 805…支持材(ワイヤ)、
907…水槽、 909…ヘッダ、
911…垂れ下がりヘッダ、 913…噴射口(ノズル)、
915…円筒外側側面に垂直な水噴流、 921…水槽の底面、
923…水噴流の噴射ノズル、 925…円筒内側側面に平行な水噴流。
Claims (8)
- 析出硬化型の高力銅基合金を熱間加工した後、成分金属が固溶する温度以上に保持した後冷却する溶体化熱処理を行ってから、冷却時効硬化熱処理を施す析出硬化型の高力銅基合金の製造方法において、
溶体化処理後に冷却する際に、
溶体化処理前に表面に一層目に金属系、二層目に熱伝導率10mW/m2K以下の材料を溶射してから加熱して溶体化し、
その後冷却することを特徴とする析出硬化型の高力銅基合金の製造方法。 - 析出硬化型の高力銅基合金を熱間加工した後、成分金属が固溶する温度以上に保持した後冷却する溶体化熱処理を行ってから、冷却時効硬化熱処理を施す析出硬化型の高力銅基合金の製造方法において、
溶体化処理後に冷却する際に、
その表面に垂直あるいは平行に水噴流を噴射しながら冷却することを特徴とする析出硬化型の高力銅基合金の製造方法であって、
前記溶体化処理後に冷却する際に、前記銅基合金を水中浸漬しながら行うことを特徴とする析出硬化型の高力銅基合金の製造方法。 - 請求項2に記載の製造方法において、被冷却物の表面に垂直に水噴流を噴射しながら冷却する方法であって、
水噴流の噴射流量が0.1m3/min/m2以上であることを特徴とする析出硬化型の高力銅基合金の製造方法。 - 請求項2に記載の製造方法において、被冷却物の表面に平行に水噴流を噴射しながら冷却する方法であって、
水噴流の噴射流量が0.1m3/min/m2以上で、
水噴流の噴射流速が0.1m/s以上であることを特徴とする析出硬化型の高力銅基合金の製造方法。 - 請求項1に記載の製造方法において、
(1)溶体化処理後に冷却する際に、
その表面に垂直あるいは平行に水噴流を噴射しながら冷却することを特徴とする析出硬化型の高力銅基合金の製造方法;
(2)上記(1)の製造方法において、被冷却物の表面に垂直に水噴流を噴射しながら冷却する方法であって、
水噴流の噴射流量が0.1m 3 /min/m 2 以上であることを特徴とする析出硬化型の高力銅基合金の製造方法;
(3)上記(1)の製造方法において、被冷却物の表面に平行に水噴流を噴射しながら冷却する方法であって、
水噴流の噴射流量が0.1m 3 /min/m 2 以上で、
水噴流の噴射流速が0.1m/s以上であることを特徴とする析出硬化型の高力銅基合金の製造方法;
の上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の製造方法を施すことを特徴とする析出硬化型の高力銅基合金の製造方法。 - 前記溶体化処理後に冷却する際に、前記銅基合金を水中浸漬しながら行うことを特徴とする請求項1または5に記載の析出硬化型の高力銅基合金の製造方法。
- 中空円筒の析出硬化型の銅基合金を熱間加工した後、成分金属が固溶する温度以上に保持した後冷却する溶体化熱処理を行ってから、冷却時効硬化熱処理を施す析出硬化型の高力銅基合金の製造方法において、
溶体化処理後に冷却する際に、
溶体化処理前に円筒内側表面および円筒の片端面に、一層目に金属系、二層目に熱伝導率10mW/m2K以下の材料を溶射してから、円筒端面の溶射していない面を下方にして台に乗せて加熱して溶体化し、
その後水中浸漬冷却し、その際に、円筒外側側面に垂直に水噴流を噴射し、内側側面には、円筒中心軸と平行に水流を流すことを特徴とする析出硬化型の高力銅基合金の製造方法。 - 中空円筒の析出硬化型の銅基合金を熱間加工した後、成分金属が固溶する温度以上に保持した後冷却する溶体化熱処理を行ってから、冷却時効硬化熱処理を施す析出硬化型の高力銅基合金の製造方法において、
溶体化処理後に冷却する際に、
溶体化処理前に円筒の片端面に、一層目に金属系、二層目に熱伝導率10mW/m2K以下の材料を溶射してから、円筒端面の溶射していない面を下方にして台に乗せて加熱して溶体化し、
その後水中浸漬冷却する際に、円筒外側側面および円筒内側側面に垂直に水噴流を噴射することを特徴とする析出硬化型の高力銅基合金の製造方法。
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