JP4178928B2 - 排気浄化装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はディーゼルエンジンの排気パティキュレートを処理する排気浄化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼルエンジンから排出される排気パティキュレートを処理するために、排気系にパティキュレートを捕集するフィルタを配置し、フィルタに所定量のパティキュレートが堆積したとき、フィルタ温度を上昇させてフィルタに堆積しているパテキュレートを燃焼処理する、いわゆるフィルタの再生処理を行うものが各種提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−259533号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、フィルタの再生処理には概ね次の3つの要求を共に満たさなければならない。
【0005】
(1)再生処理の開始に際しては、フィルタのベッド温度を、フィルタに堆積しているパティキュレートの自着火温度まで速やかに上昇させる必要がある。フィルタのベッドを昇温させるため例えばポスト噴射や燃料噴射時期の遅角が行われるが、速やかな昇温が要求されるのは、フィルタのベッド昇温期間が長引けばそれだけ燃費が悪化するからである。
【0006】
(2)フィルタのベッド温度がパティキュレートの自着火温度に達してパティキュレートが燃焼する段階になると、フィルタのベッド温度が許容最高温度を超えないようにパティキュレートの燃焼速度を抑制する必要がある。これは、パティキュレートの燃焼速度(フィルタの再生速度)が速いとフィルタに堆積している大量のパティキュレートが急激に燃焼してフィルタのベッド温度が許容最高温度を超え、これによってフィルタに熱劣化が生じて耐久性が低下しかねないからである。
【0007】
(3)再生処理の終了間近に際しては、フィルタにパティキュレートの燃え残りが生じないようにする必要がある。これはフィルタに燃え残りが生じると、次のような問題点が生じるからである。
【0008】
▲1▼フィルタの圧力損失が完全になくならないので、燃費が悪化する。
【0009】
▲2▼燃え残り部分にパティキュレートが堆積すると堆積分布のアンバランスが生じ、次の再生処理時にその部分の急激燃焼によりフィルタの耐久性が低下する。
【0010】
そこで本発明はフィルタの再生処理中に一定の目標再生速度が得られるように1サイクル当り2回のポスト噴射と酸素濃度制御とを行うことにより、再生処理の上記3つの要求を共に満たす装置を提供することを目的とする。
【0011】
一方、上記の従来装置においては、触媒活性前に1サイクル当たり1回のポスト噴射を行い、触媒活性後には1サイクル当たり2回のポスト噴射を行っている。
【0012】
しかしながら、従来装置は上記(1)の要求、つまりフィルタのベッド温度を上昇させようとするものでしかないので、上記(2)の要求に応じることができない。すなわち、フィルタのベッド温度がパティキュレートの自着火温度に達するとパティキュレートが盛んに燃焼してフィルタの再生速度が急上昇する。この段階でも、従来装置のように1サイクル当たり2回のポスト噴射を行ったのでは、再生速度が目標を超えて大きくなりすぎ、フィルタのベッド温度が限界温度を超えて上昇しかねない。これに対して、本願発明では、フィルタのベッド温度がパティキュレートの自着火温度に達した後は、1サイクル当り2回のポスト噴射を止めて1サイクル当り1回のポスト噴射にすると共に、排気中の目標酸素濃度を低濃度に設定した第1酸素濃度制御を行うことによって、再生速度が目標再生速度を超えて大きくならないようにするのであり、このように触媒反応によりフィルタのベッド温度を上昇させようとする従来装置と、フィルタの再生速度に着目する本願発明とでは技術的思想が異なっている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、排気通路にパティキュレートを捕集するフィルタを備え、フィルタの再生時期になるとフィルタの再生処理を行うエンジンの排気浄化装置において、フィルタの再生処理中に一定の目標再生速度が得られるようにエンジンの1サイクル当り2回のポスト噴射と排気の酸素濃度制御とを行う再生処理手段を備えている。具体的にはフィルタの再生処理期間を前期、中期、後期から構成し、前期に再生速度が目標再生速度へと大きくなるように第1目標ベッド温度へと制御する昇温制御を行い、中期に再生速度が目標再生速度へと小さくなるように第1目標ベッド温度を維持させる第1目標ベッド温度維持制御及び排気中の目標酸素濃度を低濃度に設定した第1酸素濃度制御を行い、後期に再生速度が目標再生速度へと大きくなるように第1目標ベッド温度より高い第2目標ベッド温度を維持させる第2目標ベッド温度維持制御及び排気中の目標酸素濃度を高濃度に設定した第2酸素濃度制御を行う。
【0014】
【発明の効果】
本発明による再生処理手段によれば、次の効果が得られる。
【0015】
(1)前期にはフィルタのベッド温度をパティキュレートが自着火する温度である第1目標ベッド温度にまで急速に上昇させることができる。
【0016】
(2)中期にはフィルタのベッド温度がパティキュレートが自着火する温度である第1目標ベッド温度に維持した状態で第1酸素濃度制御が行われるが、この第1酸素濃度制御によればフィルタに堆積している大量のパティキュレートが急激に燃えることがないように排気中の目標酸素濃度を低濃度の酸素濃度に設定してあるので、フィルタのベッド温度が許容最高温度を上回ることがなく、これによりフィルタの耐久性が損なわれることがない。
【0017】
なお、排気温度を低下させることによりパティキュレートの燃焼速度を抑制する方法もあるが、この排気温度によるパティキュレート燃焼速度制御方法だと、排気やフィルタの熱慣性の影響を受けて制御の応答性が悪く、パティキュレートが急激に燃えることが困難で、制御性が劣る。これに対して本発明では、こうした排気温度によるパティキュレート燃焼速度制御方法でないため、排気やフィルタの熱慣性の影響を排除でき、制御応答性がよく制御の信頼性が高い。
【0018】
(3)後期には第1目標ベッド温度よりも高い第2目標ベッド温度に維持した状態で目標酸素濃度を第1酸素濃度制御時より大きくして十分な酸素を供給することで、再生処理の終了間近にフィルタに残存するパティキュレートを迅速にかつ確実に燃え切らせることができる。
【0019】
このように、本発明では、再生処理の前期、中期、後期に要求されるところを総て満たすことから、再生処理期間を短縮できると共に、ほぼ完全なフィルタ再生を図ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は本発明の一実施形態を示す概略構成図である。
【0022】
図1において、1はディーゼルエンジンで、排気通路2と吸気通路3のコレクタ部3aとを結ぶEGR通路4に、圧力制御弁(図示しない)からの制御圧力に応動するダイヤフラム式のEGR弁6を備えている。圧力制御弁は、エンジンコントローラ31からのデューティ制御信号により駆動されるもので、これによって運転条件に応じた所定のEGR率を得るようにしている。
【0023】
エンジンにはコモンレール式の燃料噴射装置10を備える。この燃料噴射装置10は、主に燃料タンク(図示しない)、サプライポンプ14、コモンレール(蓄圧室)16、気筒毎に設けられるノズル17からなり、サプライポンプ14により加圧された燃料は蓄圧室16にいったん蓄えられ、蓄圧室16の高圧燃料が気筒数分のノズル17へと分配される。
【0024】
ノズル17(燃料噴射弁)は、針弁、ノズル室、ノズル室への燃料供給通路、リテーナ、油圧ピストン、リターンスプリングなどからなり、油圧ピストンへの燃料供給通路に三方弁(図示しない)が介装されている。三方弁(電磁弁)のOFF時には、針弁が着座状態にあるが、三方弁がON状態になると針弁が上昇してノズル先端の噴孔より燃料が噴射される。つまり三方弁のOFFからONへの切換時期により燃料の噴射開始時期が、またON時間により燃料噴射量が調整され、蓄圧室16の圧力が同じであればON時間が長くなるほど燃料噴射量が多くなる。
【0025】
EGR通路4の開口部下流の排気通路2に、排気の熱エネルギーを回転エネルギーに変換するタービン22と吸気を圧縮するコンプレッサ23とを同軸で連結した可変容量ターボ過給機21を備える。タービン22のスクロール入口に、アクチュエータ25により駆動される可変ノズル24が設けられ、エンジンコントローラ31により、可変ノズル24は低回転速度域から所定の過給圧が得られるように、低回転速度側ではタービン22に導入される排気の流速を高めるノズル開度(傾動状態)に、高回転速度側では排気を抵抗なくタービン22に導入させノズル開度(全開状態)に制御する。
【0026】
上記のアクチュエータ25は、制御圧力に応動して可変ノズル26を駆動するダイヤフラムアクチュエータ26と、このダイヤフラムアクチュエータ26への制御圧力を調整する圧力制御弁27とからなり、可変ノズル24の実開度が目標ノズル開度となるように、デューティ制御信号が作られ、このデューティ制御信号が圧力制御弁27に出力される。
【0027】
アクセルセンサ32、エンジン回転速度とクランク角度を検出するセンサ33、水温センサ34、エアフローメータ35からの信号が入力されるエンジンコントローラ31では、これらの信号に基づいて目標EGR率と目標過給圧とが得られるようにEGR制御と過給圧制御を協調して行う。
【0028】
排気通路2には排気中のパティキュレートを捕集するフィルタ41が設置される。このフィルタ41には酸化触媒が担持されており、フィルタ41のパティキュレートの堆積量が所定値に達すると、排気温度を上昇させてフィルタ41に堆積しているパティキュレートを燃焼除去する。
【0029】
フィルタ41の圧力損失(フィルタ41の上流と下流の圧力差)を検出するために、フィルタ41をバイパスする差圧検出通路に差圧センサ36が設けられる。
【0030】
この差圧センサ36により検出されるフィルタ41の圧力損失ΔPは、温度センサ37からのフィルタ入口温度T1、温度センサ38からのフィルタ出口温度T2と共にエンジンコントローラ31に送られ、主にマイクロプロセッサで構成されるエンジンコントローラ31では、これらに基づいてフィルタ41の再生処理を行う。すなわち、フィルタ41の再生処理の期間を時系列的に図2に示したように前期(t1の時間)、中期(t2の時間)、後期(t3の時間)の3つの期間に分割するものの、再生処理の全区間を通して一定の目標再生速度が得られるように1サイクル当り機能の異なる2回のポスト噴射と酸素濃度制御とを行う。
【0031】
これをさらに図3、図4を参照しながら説明する。図3において第4段目に本実施形態によるポスト噴射の特性を、また最下段に本実施形態による排気中の目標酸素濃度の特性を示す。
【0032】
ここでは機能の異なるポスト噴射を導入している(図4上段参照)。すなわち、ポスト噴射1は、シリンダ内で燃焼させて直接的に排気温度の上昇を図ることを目的として、メイン噴射に近い噴射時期(TDC〜ATDC60deg)に設定する。これに対して ポスト噴射2は、フィルタ41に担持している酸化触媒にHCを供給し、その触媒反応でHCを燃焼させてフィルタ41のベッド温度を上昇させることを目的として、シリンダ内でほとんど燃焼しない時期(ATDC60deg以降)に設定する。
【0033】
〈1〉前期:
フィルタ41のベッド温度が触媒活性温度(およそ240℃)以下にある前段では、早期に触媒を活性化させるためにポスト噴射1を実行する(図4下段の左参照)。このとき、触媒ではHCの反応が行われないのでポスト噴射2は行わない。
【0034】
フィルタ41のベッド温度が触媒活性温度を超える後段になると、ポスト噴射1に加えてポスト噴射2を実行し、ベッド温度をさらに上昇させる。フィルタ41のベッド温度が上昇して第1目標ベッド温度(600℃程度)tTbed1に到達すると、前期を終了して次の段階の中期に移行する。
【0035】
ここで、前段より後段への移行は、フィルタ41の実ベッド温度rTbedが触媒活性温度に達したか否かにより行う。フィルタ41の実ベッド温度はフィルタ41前後に設けている温度センサ37、38からの信号に基づいて推定する。
【0036】
ただし、前期の時間内では排気中の目標酸素濃度は定めず、従って酸素濃度制御は行わない。
【0037】
〈2〉中期:
フィルタ41に堆積しているパティキュレートの燃焼速度(フィルタの再生速度)を抑制するため、排気中の目標酸素濃度を図3最下段に示したように低濃度に設定し、この低濃度の目標酸素濃度が得られるように酸素濃度制御(第1酸素濃度制御)を行う。
【0038】
また、フィルタ41の実ベッド温度が第1目標ベッド温度tTbed1と一致するようにポスト噴射1のポスト噴射量をフィードバック制御する(図4下段の中参照)。フィルタ41内のパティキュレートが活発に燃焼して、第1目標ベッド温度が維持される場合にはポスト噴射1を行わない。
【0039】
低濃度に設定した目標酸素濃度が得られるように排気中の酸素濃度制御を行うと共に第1目標ベッド温度を維持する温度制御を行うことで、フィルタ41に堆積したパティキュレートが急激に燃焼することなく燃焼が進行する。
【0040】
〈3〉後期:
再生処理の終了間近にフィルタ41に残存するパティキュレートをもれなく燃やし切るため、排気中の目標酸素濃度を図3最下段のように中期の場合より高濃度に設定し、この高濃度の目標酸素濃度が得られるように酸素濃度制御(第2酸素濃度制御)を行う。
【0041】
また、後期にはポスト噴射1に加えてポスト噴射2を行い、フィルタ41の実ベッド温度が、第1目標ベッド温度tTbed1よりも高い第2目標ベッド温度tTbed2(650℃程度)と一致するようにポスト噴射2のポスト噴射量をフィードバック制御する(図4下段の右参照)。
【0042】
このように高濃度に設定した目標酸素濃度が得られるように排気中の酸素濃度制御を行うと共に中期よりも高い第2目標ベッド温度を維持する制御を行うことで、再生効率が高まり、完全再生である100%へと近づいていく。
【0043】
こうした考え方の元になったものは、次の通りである。すなわち、排気温度を一定に保ったとき、フィルタに堆積されているパティキュレートは再生処理の開始により徐々に燃焼し始め、やがて塊となって活発に燃え、その後に下火になり、燃焼が終了する。この燃焼状態を表すのが再生速度である。このため再生速度は、図3最上段に実線で示したように、再生処理の開始より徐々に大きくなってピークを採り、その後に小さくなっている。こうした再生速度の変化に合わせるかのように、フィルタのベッド温度が変化している(図3第2段目の破線参照)。
【0044】
ここで、図3最上段は、フィルタをひとかたまりとしてみたときの再生速度の時間的変化であるが、実際にはフィルタ内でのパティキュレートの堆積分布やガス流れ分布は一様でなく、空間的にも再生速度のムラが生じている。
【0045】
このように時間的あるいは空間的に再生速度に変化(ムラ)があると困るのはフィルタ41内にパティキュレートの燃え残りが生じることで、この燃え残りがあると、次回の再生処理時にこの燃え残った分のパティキュレートも燃焼し、その分だけフィルタのベッド温度が余計に上昇してしまう。従って、燃え残りが生じることがなく、かといって燃焼が激しすぎないような再生速度(フィルタの材質、容量によって変わるが、例えば2〜3g/min)を目標値(目標再生速度)として選択し、再生処理の全区間にわたってこの目標再生速度となるように制御することが望ましい。となると、再生処理の前期後段には再生速度が高くなるように、再生処理の中期には再生速度が低下するように、再生処理の後期には再生速度が高くなるようにしなければならない(図3最上段参照)。本発明では、こうした一定の目標再生速度を得るためにポスト噴射と酸素濃度制御とを組み合わせて用いているのである。
【0046】
次に、エンジンコントローラ31により行われるこれら制御の内容を詳述する。
【0047】
図5のフローチャートは再生処理を行うためのメインルーチンで、このフローは一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。
【0048】
ステップ1では再生処理フラグをみる。この再生処理フラグの設定については、図6のフローにより説明する。
【0049】
図6のフローは図5とは別に一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。図6においてステップ11ではフィルタ41の圧力損失ΔPを差圧センサ36の出力から読み込む。
【0050】
ステップ12では再生処理フラグをみる。再生処理フラグは後述する再生処理条件が成立したとき1となるフラグである。エンジン始動時にはゼロに初期設定されているので、再生処理条件の成立する前にはステップ13、14に進み、再生処理条件をみる。再生処理条件の成立は、フィルタ41の圧力損失ΔPが再生開始判定値ΔPHmaxを超えかつ再生実施条件にあることである。
【0051】
ここで、再生実施条件は例えばエンジンの回転速度と燃料噴射量(エンジン負荷相当)により定まる運転条件がアイドル時やアイドルに近い低負荷域を除いた所定の領域にある場合に成立する。
【0052】
アイドル時やアイドルに近い低負荷域である領域で再生実施条件が非成立であるとするのは、アイドル時はもともと排気温度が低く、ポスト噴射及び吸気絞りを行ってもフィルタ41のベッド温度を第1目標ベッド温度tTbed1へと上昇させることができないからである。
【0053】
このため圧力損失ΔPが再生開始判定値ΔPHmax以下のときやエンジンの運転条件が再生実施条件にないときにはそのまま今回の処理を終了する。
【0054】
フィルタ41の圧力損失ΔPが再生開始判定値ΔPHmaxを超えかつエンジンの回転速度と燃料噴射量により定まる運転条件が再生実施条件にあるときには再生処理を行うことができると判断しステップ15に進んで再生処理フラグ=1とする。
【0055】
この再生処理フラグ=1により次回からはステップ12よりステップ13へと進むことができないため、そのまま処理を終了する。
【0056】
図5に戻り、ステップ1で再生処理フラグ=1であるときには再生処理を行うためステップ2以降に進む。ステップ2では再生フェーズを設定する。この再生フェーズの設定については図7のフローにより説明する。
【0057】
図7のフロー(図5ステップ2のサブルーチン)は再生処理の開始からの経過時間Tと設定時間t1、t2、t3とを比較して、再生フェーズの前期、中期、後期を設定するためのものである。
【0058】
ステップ21では再生終了フラグをみる。再生終了フラグはゼロに初期設定されているので、ステップ22に進み、再生処理フラグをみる。再生処理フラグ=0のときはそのまま今回の処理を終了する。
【0059】
再生処理フラグ=1であるときにはステップ23に進み、タイマ値T(ゼロに初期設定)を、
T=Tz+ΔT…(1)
ただし、ΔT:演算周期(=10ms)、
Tz:タイマ値の前回値、
の式によりインクリメントする。このタイマは再生処理開始からの経過時間(つまり再生処理時間)計測するためのものである。
【0060】
ステップ24、25ではこのタイマ値Tと設定時間t1、t2、t3(図2参照)とに基づいて、次のように再生フェーズの各期間を設定する。
【0061】
(1)T<t1であるとき:
ステップ24よりステップ26進み再生フェーズを前期に設定する。
【0062】
(2)t1≦T<t1+t2であるとき:
ステップ24よりステップ27に進み再生フェーズを中期に設定する。
【0063】
(3)t1+t2≦T<t1+t2+t3であるとき:
ステップ24、25よりステップ28に進み再生フェーズを後期に設定する。
【0064】
(4)t1+t2+t3≦Tであるとき:
このときには再生処理の終了であると判断し、ステップ24、25よりステップ29に進み再生終了フラグ=1とする。また、次回の再生処理に備えるためステップ30、31で再生処理フラグ=0かつタイマ値T=0とする。
【0065】
ステップ24で用いる上記の設定時間t1、t2、t3は一定値でもかまわないが、ここでは、t1とt2については次のように可変値で設定している。
【0066】
図8は再生処理開始時の実際のベッド温度に対するt1の設定例である。フィルタ41を再生するにはフィルタ41に堆積しているパティキュレートが自着火して燃焼し得る温度である第1目標ベッド温度tTbed1にまで上昇させなければならないが、t1は再生処理の開始より第1目標ベッド温度tTbed1に上昇させるまでの時間である。この時間t1は図8のように再生処理開始時のベッド温度が高くなるほど小さくなる。これは再生処理開始時のベッド温度が高ければフィルタ41のベッド温度を第1目標ベッド温度tTbed1まで上昇させるに要する時間も短くて済むからである。
【0067】
また、tTbed1以上の温度域ではt1=0である。これはtTbed1以上の温度域では昇温制御を行わなくともフィルタ41に堆積しているパティキュレートが自着火して燃焼するので、このときにはt1をゼロとして次の段階の中期へと即座に移行させるためである。
【0068】
また、再生処理開始時のベッド温度が所定値Taより低い温度域では一定値としている。これは、Taより低い温度域ではフィルタ41を昇温させようとしても目標ベッド温度tTbed1にまで昇温できないので、一定値としたものである。
【0069】
なお、図8において横軸の再生処理開始時の実際のベッド温度は、再生処理開始時にフィルタ41の前後に設けた温度センサ37、38により検出される2つの温度T1、T2から、
rTbed=b1・T1+b2・T2…(2)
ただし、Tbed:再生処理開始時のベッド温度、
b1、b2:定数、
の式により推定(算出)すればよい。(2)式のb1、b2は実験により決まる値である。
【0070】
図9は再生処理開始時のパティキュレート堆積量(図ではPM堆積量で略記)に対するt2の設定例である。フィルタ41のベッド温度を第1目標ベッド温度tTbed1にまで上昇させた後は、フィルタ41に堆積しているパティキュレートが自着火して燃焼する。この場合に、排気中の酸素濃度が十分に大きい状態(空燃比でいうと理論空燃比よりリーン側の所定値A)ではフィルタ41に堆積している大量のパティキュレートが急激に燃焼し、これによってフィルタ41のベッド温度が許容最高温度Tmaxを超えて上昇し、フィルタ41に熱劣化が生じて耐久性が低下しかねない。このため、フィルタ41に堆積している大量のパティキュレートが急激には燃えない程度の低い酸素濃度(空燃比でいうと理論空燃比よりはリーン側で上記のAよりはリッチ側の所定値B)に維持する時間(期間)がt2である。この時間t2は再生開始時のパティキュレート堆積量が大きくなるほど長くなる。
【0071】
また、再生処理開始時のパティキュレート堆積量が最大パティキュレート堆積量pmax以上ではt2を一定としている。
【0072】
また、再生処理開始時のパティキュレート堆積量が所定値p以下の堆積量のときt2=0としている。これは、p以下のパティキュレート堆積量の場合には、中期を省略して後期に移行し、その総てを一気に燃焼させてもフィルタ41のベッド温度の上昇が少なく、フィルタ41のベッド温度が許容最高温度Tmaxに達することはないので、中期の段階を省略して即座に後期へと移行させるためである。すなわち、所定値pは、中期を介さずとも後期においてフィルタ41のベッド温度が許容最高温度を超えないパティキュレート堆積量の最大量付近に設定している。
【0073】
なお、図9において、横軸の再生処理開始時のパティキュレート堆積量は、再生処理開始時のフィルタの圧力損失から図10を内容とするテーブルを検索することにより演算すればよい。
【0074】
このようにして図7の再生フェーズの各段階の設定を総て終了したら図5に戻り、ステップ3では現在の処理タイミングが再生フェーズのいずれの段階にあるのかをみて、次のように各制御を行う。すなわち、前期であればステップ4に進み再生速度が目標再生速度へと大きくなるように第1目標ベッド温度tTbed1へと制御する昇温制御を行う。
【0075】
中期であるときにはステップ5、7に進み再生速度が目標再生速度へと小さくなるように第1目標ベッド温度tTbed1を維持させる第1目標ベッド維持制御及び排気中の目標酸素濃度を低濃度に設定した第1酸素濃度制御を行う。後期になるとステップ6、7に進み再生速度が目標再生速度へと大きくなるように第1目標ベッド温度tTbed1より高い第2目標ベッド温度tTbed2を維持させる第2目標ベッド維持制御及び排気中の目標酸素濃度を高濃度に設定した第2酸素濃度制御を行う。
【0076】
ここで、図5のステップ4〜8での制御をポスト噴射と酸素濃度制御に分けてさらに説明する。
【0077】
〔1〕ポスト噴射:
〔1〕−1.昇温制御:
図11のフロー(図5ステップ4のサブルーチン)は昇温制御を行うためのものである。
【0078】
ステップ31ではクランク角センサ33により検出されるエンジン回転速度Ne、メイン燃料噴射量Qf、温度センサ37により検出されるフィルタ入口温度T1、温度センサ38により検出されるフィルタ出口温度T2を読み込む。
【0079】
ステップ32ではフィルタ入口温度T1、フィルタ出口温度T2から前述の(2)式を用いてフィルタ41の実ベッド温度rTbedを算出する。
【0080】
ステップ33では後段フラグ(ゼロに初期設定)をみる。ここでは後段フラグ=0であったとして説明すると、このとき前段の処理であるステップ34、35に進んでエンジン回転速度Neとメイン燃料噴射量Qfとから図12、図13を内容とするマップを検索することにより前段ポスト噴射量1、前段ポスト噴射時期1を演算する。
【0081】
前段ポスト噴射1の機能は排気温度を触媒温度へと上昇させることが目的であるから、前段ポスト噴射量1は、基本的にメイン燃料噴射量のみによる排気温度(ベースの排気温度)と触媒活性温度の差に比例する値を与えればよい。つまり、触媒活性温度からの差が大きいほど大きな値の前段ポスト噴射量1を与える。ここで、ベースの排気温度は低負荷低回転速度側のほうが低いので、これに対応して低負荷低回転速度側になるほど前段ポスト噴射量1を大きくしている(図12参照)。
【0082】
ステップ36ではフィルタ41の実ベッド温度rTbedと触媒活性温度(240℃程度)を比較する。実ベッド温度rTbedが240℃未満であるときにはそのまま今回の処理を終了する。
【0083】
運転条件(Ne、Qf)に応じて前段ポスト噴射量1を与え続けるとやがて実ベッド温度rTbedが240℃以上になるので、このときにはステップ37に進んで後段フラグ=1とする。
【0084】
この後段フラグ=1により次回よりはステップ33よりステップ38以降の後段での処理に進む。
【0085】
ステップ38、39、40、41ではエンジン回転速度Neとメイン燃料噴射量Qfとから図14、図15、図16、図17を内容とするマップを検索することにより後段ポスト噴射量1、後段ポスト噴射時期1、基本後段ポスト噴射量2、後段ポスト噴射時期2を演算する。
【0086】
後段ポスト噴射量1は前段ポスト噴射量1と同様であり、ベースの排気温度と触媒活性温度の差に比例する値を与える。
【0087】
これに対して、ポスト噴射2の機能は触媒にHCを供給して燃焼させベッド温度を第1目標ベッド温度へと上昇させることが目的であるから、基本後段ポスト噴射量2としてはフィルタ入口温度T1と第1目標ベッド温度tTbed1の差に比例する値を与える。つまり、第1目標ベッド温度tTbed1からの差が大きいほど大きな値の基本後段ポスト噴射量2を与える。ここで、フィルタ入口温度T1は低負荷低回転速度側のほうが低いので、これに対応して低負荷低回転速度側になるほど基本後段ポスト噴射量2を大きくしている(図16参照)。
【0088】
ステップ42〜45は実ベッド温度rTbedが第1目標ベッド温度tTbed1と一致するように後段ポスト噴射量2のフィードバック量FB21を演算する部分である。すなわち、ステップ42で実ベッド温度rTbedと第1目標ベッド温度tTbed1に許容値ε(正の値)を加算した値である第1目標ベッド温度上限値(tTbed1+ε)とを、またステップ43で実ベッド温度rTbedと第1目標ベッド温度tTbed1より許容値εを減算した値である第1目標ベッド温度下限値(tTbed1−ε)とをそれぞれ比較する。実ベッド温度rTbedが第1目標ベッド温度上限値(tTbed1+ε)を超えているときにはステップ44に進んでフィードバック量(初期値はゼロ)FB21を所定値Δ21(正の値)だけ減量し、これに対して実ベッド温度rTbedが第1目標ベッド温度下限値(tTbed1−ε)を下回っているときにはステップ45に進んでフィードバック量FB21を所定値Δ21だけ増量する。一方、実ベッド温度rTbedが第1目標ベッド温度上限値と第1目標ベッド温度下限値との間に収まっているときにはステップ46に進んでフィードバック量FBをそのまま維持する。
【0089】
上記の所定値Δ21は一定値でもよいし、実ベッド温度rTbedと第1目標ベッド温度tTbed1の差に比例させて与えてもかまわない。
【0090】
ステップ47ではこのようにして求めたフィードバック量FB21を基本後段ポスト噴射量2に加算した値を後段ポスト噴射量2として算出する。
【0091】
図示しない燃料噴射制御フローでは、このように得られる前段ポスト噴射量1、前段ポスト噴射時期1を用いて前段でのポスト噴射(1サイクル当たり1回のポスト噴射)が行われ、またこのように得られる後段ポスト噴射量1、後段ポスト噴射時期1、後段ポスト噴射量2、後段ポスト噴射時期2を用いて後段でのポスト噴射(1サイクル当たり2回のポスト噴射)が行われる。
【0092】
〔1〕−2.第1目標ベッド温度への維持制御:
図18のフロー(図5ステップ6のサブルーチン)は第1目標ベッド温度tTbed1への維持制御を行うためのものである。
【0093】
ステップ51、52は図11のステップ31、32と同じであり、実ベッド温度rTbedを算出する。ステップ53、54ではエンジン回転速度Neとメイン燃料噴射量Qfとから図19、図20を内容とするマップを検索することにより基本ポスト噴射量1、ポスト噴射時期1を演算する。
【0094】
基本ポスト噴射量1(中期でのポスト噴射量)は、前期におけるポスト噴射量1(前段ポスト噴射量1、後段ポスト噴射量2)よりも少ない値である(図3参照)。これは、中期でのポスト噴射量を前期でのポスト噴射量1より減少させると、フィルタ入口温度が下がりフィルタ41を冷却することになるので、フィルタ41の再生速度を低下させるためである。
【0095】
ステップ55〜58はフィルタ41の実ベッド温度rTbedが第1目標ベッド温度tTbed1と一致するようにポスト噴射量1のフィードバック量FB1を演算する部分である。すなわち、ステップ55ではフィルタ41の実ベッド温度rTbedと第1目標ベッド温度上限値(tTbed1+ε)とを、またステップ56ではフィルタ41の実ベッド温度rTbedと第1目標ベッド温度下限値(tTbed1−ε)とを比較する。実ベッド温度rTbedが第1目標ベッド温度上限値(tTbed1+ε)を超えているときにはステップ57に進んでフィードバック量(初期値はゼロ)FB1を所定値Δ1だけ減量し、これに対して実ベッド温度rTbedが第1目標ベッド温度下限値(tTbed1−ε)を下回っているときにはステップ58に進んでフィードバック量FB1を所定値Δ1だけ増量する。一方、実ベッド温度rTbedが第1目標ベッド温度上限値と第1目標ベッド温度下限値との間に収まっているときにはステップ59に進んでフィードバック量FB1をそのまま維持する。
【0096】
上記の所定値Δ1は一定値でもよいし、実ベッド温度rTbedと第1目標ベッド温度tTbed1の差に比例させて与えてもかまわない。
【0097】
ステップ60ではこのようにして求めたフィードバック量FB1を基本ポスト噴射量1に加算した値をポスト噴射量1として算出する。
【0098】
図示しない燃料噴射制御フローでは、このように得られるポスト噴射量1、ポスト噴射時期1を用いて中期でのポスト噴射(1サイクル当たり1回のポスト噴射)が行われる。ここで、フィードバック量FB1は負の値を採りうるので、ポスト噴射量1はゼロになり得る(ステップ57、60)。このときには、フィルタ41内のパティキュレートが活発に燃焼して、ポスト噴射1により排気温度上昇制御を行う必要がないことを意味している。
【0099】
〔1〕−3.第2目標ベッド温度への維持制御:
図21のフロー(図5ステップ8のサブルーチン)は第2目標ベッド温度tTbed2への維持制御を行うためのものである。
【0100】
ステップ71、72は図11のステップ31、32と同じであり、実ベッド温度rTbedを算出する。ステップ73、74、75、76ではエンジン回転速度Neとメイン燃料噴射量Qfとから図22、図23、図24、図25を内容とするマップを検索することによりポスト噴射量1、ポスト噴射時期1、基本ポスト噴射量2、ポスト噴射時期2を演算する。
【0101】
ポスト噴射量1は前期でのポスト噴射量(前段ポスト噴射量1、後段ポスト噴射量1)と同様であり、ベースの排気温度と触媒活性温度の差に比例する値を与える。中期でのポスト噴射量1との関係では、後期でのポスト噴射量1のほうが多くなり(図3最下段参照)、これによって排気温度が上昇しフィルタの再生速度が上昇する。
【0102】
基本ポスト噴射量2は、後段ポスト噴射量2と同様であり、フィルタ入口温度T1と第2目標ベッド温度tTbed2の差に比例する値を与える。つまり、第2目標ベッド温度tTbed2からの差が大きいほど大きな値の基本ポスト噴射量2を与える。ここで、フィルタ入口温度T1は低負荷低回転速度側のほうが低いので、これに対応して低負荷低回転速度側になるほど基本後段ト噴射量2を大きくしている(図24参照)。
【0103】
ステップ77〜81はフィルタ41の実ベッド温度rTbedが第2目標ベッド温度tTbed2と一致するようにポスト噴射量2のフィードバック量FB22を演算する部分である。すなわち、ステップ77ではフィルタ41の実ベッド温度rTbedと第2目標ベッド温度上限値(tTbed2+ε)とを、またステップ78ではフィルタ41の実ベッド温度rTbedと第2目標ベッド温度下限値(tTbed2−ε)とを比較する。
【0104】
ここで、後期で用いる第2目標ベッド温度tTbed2は、前期、中期で用いる第1目標ベッド温度tTbed1より高くしている。これは、再生処理の後期にはパティキュレートが燃焼しにくく(壁温で冷却されるため)、フィルタ41の再生速度を中期と同じに維持するためには目標ベッド温度を上げる必要があるためである。
【0105】
実ベッド温度rTbedが第2目標ベッド温度上限値(tTbed2+ε)を超えているときにはステップ79に進んでフィードバック量(初期値はゼロ)FB22を所定値Δ22だけ減量し、これに対して実ベッド温度rTbedが第2目標ベッド温度下限値(tTbed2−ε)を下回っているときにはステップ80に進んでフィードバック量FB22を所定値Δ22だけ増量する。一方、実ベッド温度rTbedが第2目標ベッド温度上限値と第2目標ベッド温度下限値との間に収まっているときにはステップ81に進んでフィードバック量FB22をそのまま維持する。
【0106】
上記の所定値Δ22は一定値でもよいし、実ベッド温度rTbedと第2目標ベッド温度tTbed2の差に比例させて与えてもかまわない。
【0107】
ステップ82ではこのようにして求めたフィードバック量FB22を基本ポスト噴射量2に加算した値をポスト噴射量2として算出する。
【0108】
図示しない燃料噴射制御フローでは、このように得られるポスト噴射量1、後段ト噴射時期1、ポスト噴射量2、ポスト噴射時期2を用いてポスト噴射(1サイクル当たり2回のポスト噴射)が行われる。
【0109】
〔2〕酸素濃度制御:
〔2〕−1.中期の酸素濃度制御(第1酸素濃度制御):
図26にパティキュレート堆積量(PM堆積量)が多い状態(つまり中期)で再生処理を行ったときのフィルタ入口温度、排気中酸素濃度とフィルタ41のベッド温度の最高温度との関係を示すと、パテキュレート堆積量が多いため曲線と曲線の間の間隔が短く、これは温度勾配が急であることを表している。
【0110】
このようにパティキュレート堆積量が多い状態では、低酸素濃度側に目標酸素濃度の制御範囲を設けることで、フィルタ41のベッド温度の許容最高温度内でフィルタ41の再生処理を行うことができる。
【0111】
ここで、排気中の目標酸素濃度は空燃比に換算すると理論空燃比よりリーン側(例えば空気過剰率で1.5程度)である。パティキュレート堆積量が多い状態で高濃度の酸素があると、パティキュレートの燃焼速度が大きいためにフィルタ41に堆積しているパティキュレートが急激に燃えるので、これを抑えるため排気中の目標酸素濃度を低酸素濃度に設定している。
【0112】
また、目標酸素濃度の制御範囲に幅を設けているのは、バラツキと過渡時の制御遅れとを考慮したものである。
【0113】
〔2〕−2.後期の酸素濃度制御(第2酸素濃度制御):
図27には今度は、パティキュレート堆積量が少ない状態(つまり後期)で再生処理を行ったときのフィルタ入口温度、排気中酸素濃度とフィルタ41のベッド温度の最高温度との関係を示し、パティキュレート堆積量が少ない状態では曲線と曲線の間隔が広がり(温度勾配が緩やかとなり)、かつベッド温度の許容最高温度の位置も図26の場合より右方向に移動している。
【0114】
このため、パティキュレート堆積量が少ない状態では、排気中の酸素濃度を中期に比べ大きくしても、フィルタ41の再生処理中のベッド温度の最高温度を許容最高温度以下に保つことができるので、後期には図中1)のように中期よりも目標酸素濃度を大きくする。これによって十分な酸素を供給してパティキュレートの燃焼速度を大きくし、フィルタ41に燃え残っているパティキュレートの総てを短期間で完全に燃え切らせることが可能となる。さらに、図中2)のようにフィルタ入口温度の目標値tT1をも上昇させることで、さらに再生処理時間の短縮とパティキュレートの再生効率の向上を図ることができる。
【0115】
〔2〕−3.酸素濃度制御の制御結果:
図28に本実施形態による排気中酸素濃度の制御目標(目標酸素濃度)とその制御結果としての実際の排気中酸素濃度の変化を示す。図示のように中期に低酸素濃度に制御されていたものが、後期になると、それより高い酸素濃度へと切換えられている。なお、中期、後期を除く他の期間(前期を含む)では排気中酸素濃度が激しく変化している。これは、他の期間ではもともと排気中の酸素濃度制御を行っていないこと、また加速や減速が繰り返される過渡時のものであるからである。
【0116】
図28は排気中の目標酸素濃度を低濃度から高濃度へと単純に2段階に切換えるものであるが、図29のように、中期の後半部分で徐々に目標酸素濃度を大きくして後期の目標酸素濃度に滑らかにつなぐことにより、図28の場合より再生処理期間の短縮を図ることも可能である。
【0117】
〔2〕−4.酸素濃度制御手段:
排気中の目標酸素濃度をtRO2[%]、この目標酸素濃度tRO2が得られるときの空気過剰率を目標空気過剰率tλとすると、次式が成立する。
【0118】
tλ=21/(21−tRO2)…(3)
ただし、21:新気中の酸素濃度[%]、
なお、(3)式は燃焼による作動ガスのモル増加を考慮していないが、制御精度をさらに向上させるためにこの効果を(3)式に入れることもできる。
【0119】
(3)式の目標空気過剰率tλを得るための制御には吸入新気量の制御と、燃料噴射の制御とがある。
【0120】
〔2〕−4−1.吸入新気量の制御:
(3)式の目標空気過剰率tλを得るための吸入新気量をtQaとすれば、燃料噴射量Qfとの間に次式が成立する。
【0121】
tQa=Qf×理論空燃比×tλ…(4)
(3)式を(4)式に代入すると次式が得られる。
【0122】
tQa=Qa×理論空燃比×21/(21−tRO2)…(5)
従って、(5)式の目標吸入新気量tQaが得られるように吸入新気量を制御する。
【0123】
この場合、吸入新気量制御手段により、カバーできる運転領域が図30に示したように異なるので、吸入新気量制御手段に応じて次のように酸素濃度制御を行う。
【0124】
▲1▼吸入新気量制御手段が可変容量ターボ過給機21のとき:
R6、R7、R8の領域では可変容量ターボ過給機21により吸入新気量を制御する。例えば、可変ノズル24の開度を小さくするとタービン22の回転速度が高くなり、吸入新気量を増やす(酸素濃度を大きくする)ことができる。この逆に可変ノズル24の開度を大きくするとタービン22の回転速度が低くなり、吸入新気量を減らすことができる。
【0125】
▲2▼吸入新気量制御手段がEGR装置のとき:
R7、R8の領域ではEGR弁6(EGR装置)により吸入新気量を制御する。例えば、EGR率やEGR量を増加すれば吸入新気量を減らすことが、この逆にEGR率やEGR量を小さくすれば吸入新気量を増やすことができる。
【0126】
▲3▼吸入新気量制御手段が吸気絞り弁42(吸気絞り装置)のとき:
R8の領域では吸気絞り弁42により吸入新気量を制御する。例えば、吸気絞り弁42を閉じれば吸入新気量を減らすことが、この逆に吸気絞り弁42を戻せば吸入新気量を増やすことができる。
【0127】
〔2〕−4−2.燃料噴射の制御:
上記(5)式の目標空気過剰率tλを得るための目標燃料噴射量をtQfとすれば、吸入新気量Qaとの間に次式が成立する。
【0128】
Qa=tQf×理論空燃比×tλ…(6)
(3)式、(6)式を目標燃料噴射量tQfについて解くと次式が得られる。
【0129】
tQf=Qa×(1/理論空燃比)×(21−tRO2)/21…(7)
従って、(7)式の目標燃料噴射量tQfが得られるように燃料噴射を制御する。
【0130】
この場合、燃料噴射制御手段によりカバーできる運転領域が図31に示したように異なるので、燃料噴射制御手段に応じて次のように酸素濃度制御を行う。
【0131】
領域R9:メイン噴射時期を遅角しつつ(7)式の目標燃料噴射量tQfが得られるように燃料噴射を制御する。
【0132】
領域R10:メイン噴射時期の遅角とポスト噴射を行いつつ(7)式の目標燃料噴射量tQfが得られるように燃料噴射を制御する。ポスト噴射量を増加すれば燃料噴射量を増加する(酸素濃度を小さくする)ことができる。ポスト噴射はエンジンの膨張行程で行うため、トルク増加をあまり伴わずに噴射量の増加を行うことができる。そしてトルク増加分はメイン噴射量を減少してコントロールする。
【0133】
領域R11:ポスト噴射と吸気絞りとメイン噴射時期とにより燃料噴射量を制御する。例えば吸気絞りを行うとポンピングロスが増加するため、これを補う分だけポスト噴射量を増加できる。また、このときのメイン噴射時期は噴射量を制御しない場合よりも進角側に制御する。
【0134】
〔2〕−4−3.排気中酸素濃度のフィードバック制御:
上記の〔2〕−4−1、〔2〕−4−2での制御はオープンループ制御であるが、フィードバック制御を行わせることもできる。例えばエアフローメータ35出力より検出される実際の吸入新気量が上記(5)式の目標吸入新気量tQaと一致するように、あるいは実際の燃料噴射量が上記(7)式の目標燃料噴射量tQfと一致するようにフィードバック制御する。
【0135】
また、排気通路2に排気中の実際の酸素濃度を検出するセンサ(例えば広域空燃比センサ)を設けておき、このセンサにより検出される排気中の実際の酸素濃度が目標酸素濃度と一致するようにフィードバック制御を行わせることもできる。
【0136】
ここで、本実施形態の作用を図3を参照しながら説明すると、同図は上から再生速度、フィルタのベッド温度、パティキュレート堆積量、ポスト噴射の期間及び時期、排気中の目標酸素濃度の動きをモデル的に示している。なお、第2段目においては本実施形態の場合を実線で、これに対して従来装置の場合を破線で示している。
【0137】
(1)再生処理の前期:
前期には実ベッド温度rTbedが触媒活性温度に達する前の前段で排気温度上昇を目的とするポスト噴射1のみを行い、実ベッド温度rTbedが触媒活性温度に達した後の後段になると、HCの供給することを目的とするポスト噴射2を追加して、HCを活性状態にある触媒へと供給するので、触媒では酸化触媒反応による発熱が生じ、これによりベッド温度が第1目標ベッド温度へと急速に上昇している。
【0138】
(2)再生処理の中期:
▲1▼フィルタのベッド温度がパティキュレートが自着火する温度である第1目標ベッド温度に維持した状態で、最下段のように排気中の目標酸素濃度を低濃度側に設定して、フィルタ41に堆積しているパティキュレートの燃焼速度を抑制するので、フィルタのベッド温度の最高温度が許容最高温度を上回ることがなく、これによりフィルタ41の耐久性が損なわれることがない。
【0139】
▲2▼排気温度を低下させることによりパティキュレートの燃焼速度を抑制する方法もあるが、この排気温度によるパティキュレート燃焼速度制御方法だと、排気やフィルタ41の熱慣性の影響を受けて制御の応答性が悪くなる。これに対して本実施形態では、こうした排気温度によるパティキュレート燃焼速度制御方法でないため排気やフィルタ41の熱慣性の影響を排除でき、制御応答性がよく制御の信頼性が高い。
【0140】
▲3▼排気温度によるパティキュレート燃焼速度制御方法だと、パティキュレートの燃焼速度を抑えようと排気温度を低下させたとき、これに伴ってフィルタ41のベッド温度が目標ベッド温度以下に低下するようだと再生不良が生じ得る。これに対して本実施形態では、第1目標ベッド温度を保ちつつ、パテキュレートの燃焼速度の抑制は酸素濃度制御で行うので、パテキュレートの燃焼中においても、フィルタ41のベッド温度が第1目標ベッド温度を下回ることがない。すなわち、本実施形態は、排気温度によるパティキュレート燃焼速度制御方法でないため、フィルタ41のベッド温度を第1目標ベッド温度より低下させる必要がなく、これによってフィルタ周辺の温度低下による再生不良を防止できる。
【0141】
(3)再生処理の後期:
第1目標ベッド温度よりも高い第2目標ベッド温度に維持した状態で最下段のように排気中の目標酸素濃度を中期の段階より大きくすることで、再生処理の終了間近にフィルタ41に残存するパティキュレートの総てを迅速にかつ確実に燃え切らせることができ、これにより再生処理時間の短縮、ならびにほぼ完全なフィルタ再生を図ることができる。
【0142】
その結果、本実施形態では次の効果が得られる。
【0143】
(1)再生処理時間の短縮:
再生処理に要する燃料消費の増加を最小限とし、燃費悪化を抑制できる。再生処理中の高温維持時間が減少し、フィルタの熱劣化を抑制でき、排気性能の向上、寿命の延長が図れる。
【0144】
(2)完全再生の実現:
燃え残りのパティキュレートによる圧損上昇がなくなるので燃費悪化を防止できる。また、燃え残りパティキュレートの上に新たなパティキュレートが堆積して生じる不均一パティキュレート堆積は、局所的な急激なパティキュレート燃焼を引き起こし、その部分で耐久性が低下する可能性があるが、これを防止できる。
【0145】
実施形態では、再生処理の前期、中期、後期を時間で切り分ける場合で説明したが、これに限られるものでなく、中期、後期への移行判定には次のような方法がある。
【0146】
(a)前期において中期への移行を判定する他の方法:実ベッド温度rTbedと第1目標ベッド温度tTbed1を比較し、実ベッド温度rTbedが第1目標ベッド温度tTbed1に到達すれば中期に移行する。
【0147】
(b)中期において後期への移行を判定する他の方法:パティキュレートの燃焼がかなり進行して燃え尽きてくると、フィルタ入口温度T1よりフィルタ出口温度T2のほうが低くなる。従って、フィルタ出口温度T2が、フィルタ入口温度T1より所定値(例えば数十℃)を差し引いた値(つまりしきい値)を下回ったとき、後期に移行する。
【0148】
さて、図3第4段目からも分かるように後段ポスト噴射量2は多い。このため、図32下段に破線で示したように実ベッド温度rTbedが触媒活性温度(240℃)に達したタイミングでこの多い量の後段ポスト噴射量2をステップ的に与えると、パティキュレートの再燃焼中のベッド温度が異常に温度上昇する(図32上段の破線参照)。これは、実ベッド温度が触媒活性温度に達した時点でステップ的に変化する目標値(マップ値)を与えて後段ポスト噴射2を行うと、その噴射燃料が触媒上で気化潜熱を奪うために実ベッド温度の低下を招き、蒸発できない燃料が触媒上に残留する。そして、実ベッド温度が再び触媒活性温度まで上昇したときに、触媒上に残留するパティキュレートが急激に燃焼するためである。
【0149】
これに対処するには、図32下段の実線で示したように目標値に対して応答遅れ処理を施した値で与えることが好ましい。このように、実ベッド温度が触媒活性温度付近にあるときには目標値に対して応答遅れ処理を施した後段ポスト噴射量2を与えることで(請求項8に記載の発明)、後段ポスト噴射量2の蒸発によるベッド温度の低下を抑えることができ、触媒反応が開始するタイミングでのベッド温度の上昇を早めることができる。
【0150】
請求項2に記載の発明において、前期に昇温制御を行う手段は図5のステップ4及び図11、中期に第1目標ベッド温度維持制御を行う手段は図5のステップ6及び図18、中期に第1酸素濃度制御を行う手段は図5のステップ5、後期に第2目標ベッド温度維持制御を行う手段は図5のステップ8及び図21、後期に第2酸素濃度制御を行う手段は図5のステップ7によりそれぞれ果たされている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す概略構成図。
【図2】再生処理期間の3つの段階を示す特性図。
【図3】本実施形態の作用効果を説明するための波形図。
【図4】機能の異なるポスト噴射の使い分けを説明するための図。
【図5】再生処理の全体を説明するためのフローチャート。
【図6】再生処理フラグの設定を説明するためのフローチャート。
【図7】再生フェーズの設定を説明するためのフローチャート。
【図8】設定時間t1の特性図。
【図9】設定時間t2の特性図。
【図10】パティキュレート堆積量に対するフィルタ圧力損失の特性図。
【図11】昇温制御を説明するためのフローチャート。
【図12】前段ポスト噴射量1の特性図。
【図13】前段ポスト噴射時期1の特性図。
【図14】後段ポスト噴射量1の特性図。
【図15】後段ポスト噴射時期1の特性図。
【図16】基本後段ポスト噴射量2の特性図。
【図17】後段ポスト噴射時期2の特性図。
【図18】第1目標ベッド温度維持制御を説明するためのフローチャート。
【図19】ポスト噴射量1の特性図。
【図20】ポスト噴射時期1の特性図。
【図21】第2目標ベッド温度維持制御を説明するためのフローチャート。
【図22】ポスト噴射量1の特性図。
【図23】ポスト噴射時期1の特性図。
【図24】基本ポスト噴射量2の特性図。
【図25】ポスト噴射時期2の特性図。
【図26】パティキュレート堆積量が多い場合の再生処理時のベッド温度の最高温度の特性図。
【図27】パティキュレート堆積量が少ない場合の再生処理時のベッド温度の最高温度の特性図。
【図28】排気中の目標酸素濃度の設定方法を説明するための波形図。
【図29】他の実施形態の排気中の目標酸素濃度の設定方法を説明するための波形図。
【図30】吸入新気量制御手段を説明するための領域図。
【図31】燃料噴射制御手段を説明するための領域図。
【図32】後段ポスト噴射量2の変化波形図。
【符号の説明】
1 エンジン
2 排気通路
3 吸気通路
6 EGR弁
10 コモンレール式燃料噴射装置
17 ノズル(燃料噴射弁)
21 可変容量ターボ過給機
31 エンジンコントローラ
33 クランク角センサ
36 差圧センサ
37、38 温度センサ
41 フィルタ
42 吸気絞り弁
Claims (7)
- 排気通路にパティキュレートを捕集するフィルタを備え、
フィルタの再生時期になるとフィルタの再生処理を行うエンジンの排気浄化装置において、
フィルタの再生処理中に一定の目標再生速度が得られるようにエンジンの1サイクル当り2回のポスト噴射と排気の酸素濃度制御とを行う再生処理手段を備え、
前記フィルタの再生処理期間を前期、中期、後期から構成し、
前期に再生速度が目標再生速度へと大きくなるように第1目標ベッド温度へと制御する昇温制御を行い、
中期に再生速度が目標再生速度へと小さくなるように第1目標ベッド温度を維持させる第1目標ベッド温度維持制御及び排気中の目標酸素濃度を低濃度に設定した第1酸素濃度制御を行い、
後期に再生速度が目標再生速度へと大きくなるように第1目標ベッド温度より高い第2目標ベッド温度を維持させる第2目標ベッド温度維持制御及び排気中の目標酸素濃度を高濃度に設定した第2酸素濃度制御を行う
ことを特徴とする排気浄化装置。 - 前記中期における第1目標ベッド温度を維持させる第1目標ベッド維持制御を、1サイクル当り排気温度上昇用の1回のポスト噴射で行うことを特徴とする請求項1に記載の排気浄化装置。
- 前記後期における第2目標ベッド温度を維持させる第2目標ベッド維持制御を、1サイクル当り排気温度上昇用とHC供給用の2回のポスト噴射で行うことを特徴とする請求項1に記載の排気浄化装置。
- 前記フィルタに触媒を担持している場合に、前期は、触媒活性温度へと制御する昇温制御を行う前段と、第1目標ベッド温度へと制御する昇温制御を行う後段とからなることを特徴とする請求項1に記載の排気浄化装置。
- 前記前段における触媒活性温度へと制御する昇温制御を、1サイクル当り排気温度上昇用の1回のポスト噴射で行うことを特徴とする請求項4に記載の排気浄化装置。
- 前記後段における第1目標ベッド温度へと制御する昇温制御を、1サイクル当り排気温度上昇用とHC供給用の2回のポスト噴射で行うことを特徴とする請求項4に記載の排気浄化装置。
- 前記HC供給用のポスト噴射を実行する際に目標値に対して応答遅れ処理を施した値とすることを特徴とする請求項6に記載の排気浄化装置。
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