JP4177712B2 - エンジンエンクロージャ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンを囲むエンジンエンクロージャ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジン騒音の防音のため、エンジンをハウスカバーおよびエンジンフードで囲み、さらに、エンジンフードに火災に備えて消火剤を装備した建設機械がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、図5に示されるように、エンジン1を収納したエンジン室2と、エンジン1により駆動される油圧ポンプ3が設置されたポンプ室4とを、ファイアウォール部5により仕切ることで、ポンプ配管も含む油圧ポンプ3からの油洩れによる火災の発生を防止しようとするエンクロージャ6がある。
【0004】
この密閉性が高いエンクロージャ6の構造において、エンジン室2内の雰囲気を、マフラ7からの排気流を利用したエゼクタ機構8により強制的に排出するため、エンジン室2内が負圧となり、油圧ポンプ3から油洩れが生じた場合は、ポンプ室4側からの飛散油が、ファイアウォール部5の隙間を経て、負圧状態のエンジン室2内に吸込まれ、排気熱により高温に加熱されたマフラ7や、ターボチャージャ9などの高温加熱部に到達するおそれがある。
【0005】
また、エンジン騒音の防音のため、エンジン1をエンクロージャ6で囲っている構造では、エンジン1により冷却ファンをベルト駆動できないので、エンクロージャ6の外部に油圧モータ11を配置して、この油圧モータ11により冷却ファン12を油圧駆動し、この冷却ファン12により、エンジン冷却水を冷却するラジエータおよびメイン回路の作動油を冷却するオイルクーラなどを含むクーリングユニット13と、エンジン1の燃料を冷却する燃料クーラ14とを空冷するようにしている。
【0006】
そこで、前記ポンプ室4側からの飛散油による火災対策のために、この冷却ファン12による冷却風をエンジン室2内に導入することが望ましい。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−3387(第2頁、図3)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
この冷却風を利用する場合は、エンクロージャ6のファン対向面に開口を設けるので、冷却ファン12の付近に配置されたファン駆動用の油圧モータ11、クーリングユニット13、燃料クーラ14などの油圧機器、油圧配管、燃料系機器、燃料配管が破損したときに、冷却風に乗って、エンジン室2内のマフラ7やターボチャージャ9などの高温加熱部に飛散油、燃料などの可燃性流体が接触するおそれがある。
【0009】
特に、冷却ファン12を駆動する油圧モータ11またはそのモータ配管から油が噴出した場合は、作動油がなくなるまで噴出し続け、火災発生のリスクが大きくなる。
【0010】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、エンクロージャ内に導入される冷却風の風向を制御することで、可燃性流体がエンジン室内の高温加熱部に到達するおそれを防止できるエンジンエンクロージャ装置を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載された発明は、高温加熱部を有するエンジンを囲むエンクロージャと、エンクロージャの一部に開口された冷却風導入口と、冷却風導入口の外側に対向して設置された冷却ファンと、冷却ファンから冷却風導入口に供給された冷却風の風向を少なくとも高温加熱部を回避する方向に制御する風向制御機構とを具備し、風向制御機構は、冷却風導入口に回動自在に軸支された風向調整体と、冷却ファンの近傍に位置する可燃性流体の供給を受ける機器からの流体洩れを検知する流体洩れ検知手段と、流体洩れ検知手段による流体洩れ検知を判断して風向調整体の向きを制御するコントローラとを具備したエンジンエンクロージャ装置であり、そして、冷却ファンからエンクロージャの冷却風導入口に供給された冷却風の風向を、風向制御機構により少なくともエンジンの高温加熱部を回避する方向に制御するので、エンクロージャ内に導入される冷却風によって可燃性流体がエンジンの高温加熱部に到達するおそれを防止でき、特に、流体洩れ検知手段が可燃性流体の供給を受ける機器からの流体洩れを検知すると、コントローラは、風向調整体の向きを制御して、冷却ファンからエンクロージャの冷却風導入口に供給された冷却風の風向を、少なくともエンジンの高温加熱部を回避する方向に制御するので、通常は冷却ファンからエンジン室内に導入される冷却風をエンジンの高温加熱部にも案内して、この高温加熱部を効率良く冷却できるとともに、可燃性流体を含む冷却風がエンジン室内に導入される場合のみ、その可燃性流体がエンジン室内の高温加熱部に到達するおそれを自動的に防止できる。
【0012】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載のエンジンエンクロージャ装置におけるコントローラが、流体洩れ検知手段による流体洩れ検知時に風向調整体により一定時間風向を制御した後に風向調整体を閉じるエンジンエンクロージャ装置であり、そして、流体洩れ検知手段が流体洩れのおそれを検知したら、風向調整体により一定時間風向を制御しながら、先ずエンジン室内の高温加熱部に可燃性流体が到達するおそれを防止しつつエンジンを冷却でき、さらに、一定時間の経過で流体洩れを確認した後に風向調整体を閉じることで、エンジン室内への可燃性流体の流入を遮断でき、エンジン室内の高温加熱部に可燃性流体が到達するおそれを確実に防止できる。
【0013】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2記載のエンジンエンクロージャ装置において、流体洩れ検知を判断したコントローラからの警報信号により作動される警報手段を具備したものであり、そして、流体洩れ検知を判断したコントローラは、警報信号により警報手段を作動するので、警報を受けた作業者は、可燃性流体の流体洩れに迅速に対処できる。
【0014】
請求項4に記載された発明は、請求項1乃至3のいずれか記載のエンジンエンクロージャ装置における可燃性流体の供給を受ける機器が、作動油の供給を受けて冷却ファンを駆動する油圧モータであり、流体洩れ検知手段を、この油圧モータに供給される作動油の回路圧力を検出する圧力センサとしたエンジンエンクロージャ装置であり、そして、流体洩れ検知手段を、冷却ファン駆動用の油圧モータに供給される作動油の回路圧力を検出する圧力センサとし、冷却ファン駆動用の油圧モータおよびその配管接続部などから油洩れが発生すると上記回路圧力は上昇しないので、この回路圧力を圧力センサにより監視することで、上記油洩れを確実に検知できる。また、圧力センサは、油圧回路制御用などで設置されたものを有効利用できる。
【0015】
請求項5に記載された発明は、請求項1乃至3のいずれか記載のエンジンエンクロージャ装置おける可燃性流体の供給を受ける機器が、冷却ファン駆動用の油圧モータであり、流体洩れ検知手段を、冷却ファンおよび油圧モータの少なくとも一方の回転速度を検出する回転速度センサとしたエンジンエンクロージャ装置であり、そして、流体洩れ検知手段を、冷却ファンおよび冷却ファン駆動用の油圧モータの少なくとも一方の回転速度を検出する回転速度センサとし、冷却ファン駆動用の油圧モータおよびその配管接続部などから油洩れが発生すると上記回転速度は上昇しないので、この回転速度を回転速度センサにより監視することで、上記油洩れを確実に検知できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図1乃至図4に示された一実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図4は、作業機械または建設機械としての油圧ショベルを示し、下部走行体17に上部旋回体18が旋回可能に設けられ、この上部旋回体18に、エンジンおよびこのエンジンにより駆動される油圧ポンプなどの動力装置部19、油圧ポンプを油圧源とする油圧回路を制御するコントロール弁ユニット(図示せず)、オペレータの運転空間を覆うキャブ21、作業装置22などが搭載されている。
【0018】
作業装置22は、ブーム用油圧シリンダ23により回動されるブーム24の先端部に、アーム用油圧シリンダ25により回動されるアーム26が軸支され、このアーム26の先端部にバケット用油圧シリンダ27によりリンケージ28を介し回動されるバケット29が軸支されている。
【0019】
図1および図2は、前記動力装置部19の内部を示し、ディーゼルエンジンなどのエンジン31を囲むエンクロージャ32と、このエンクロージャ32にて形成されたエンジン室33内の雰囲気を強制的に排出する室内雰囲気排出手段34と、エンジン室33内に供給される冷却風の風向を制御する風向制御機構35とを具備したエンジンエンクロージャ装置が設けられている。
【0020】
エンジン31は、高温加熱部としてのマフラ36およびターボチャージャ37を備えており、マフラ36は排気音を消音処理し、ターボチャージャ37は排気エネルギを利用してエンジン31への吸気を圧縮するので、これらのマフラ36およびターボチャージャ37は、共にエンジン31からの高温排気により加熱されている。
【0021】
前記エンクロージャ32は、ファイアウォール部38によって内部が仕切られ、エンジン31が収納されたエンジン室33と、エンジン31により駆動される油圧ポンプ39が設置されたポンプ室40とが区画形成されている。
【0022】
エンジン31により駆動される油圧ポンプ39は、前記各種油圧シリンダ23,25,27や、走行用および旋回用の各油圧モータ(図示せず)などの油圧アクチュエータに作動油を加圧供給する複数のメイン回路用油圧ポンプと、エンクロージャ32の外部に設置された冷却ファン41を駆動する冷却ファン駆動用の油圧モータ42に作動油を加圧供給するファン回路用油圧ポンプとを含むもので、これらのメイン回路用油圧ポンプおよびファン回路用油圧ポンプは、ポンプ吐出流量を可変制御できる可変容量型ポンプである。以下、この油圧ポンプ39は、ファン回路用油圧ポンプとする。
【0023】
冷却ファン41は、エンジン冷却水を冷却するラジエータおよびメイン回路の作動油を冷却するオイルクーラなどを含むクーリングユニット43と、エンジン31の燃料を冷却する燃料クーラ44とに冷却風を供給してこれらのクーリングユニット43および燃料クーラ44を空冷するためのもので、可変容量型の油圧ポンプ39によってポンプ吐出流量を可変制御することで、冷却ファン駆動用の油圧モータ42の回転速度すなわち冷却ファン41の回転速度を可変制御でき、これにより、空冷能力も可変制御できる。
【0024】
前記室内雰囲気排出手段34は、エンクロージャ32から突出された排気外管45に対し、マフラ36から突出された排気内管46が隙間47を介して嵌合されたエゼクタ構造であり、排気内管46から排気外管45に噴出された排気流の周囲に発生する負圧により、エンジン室33内の雰囲気を隙間47より吸出すとともに、エンクロージャ32に設けられた隙間や開口より外気をエンジン室33内に吸込むことで、エンジン室33内を換気する機能がある。
【0025】
エンクロージャ32のファイアウォール部38のうち、マフラ36およびターボチャージャ37が配置された上部とは反対側の下部には、通気口50が開口されている。
【0026】
一方、エンクロージャ32の冷却ファン41と対向する側面部32aには、冷却風導入口51が開口されている。
【0027】
前記風向制御機構35は、冷却風導入口51の外側に対向して設置された冷却ファン41から冷却風導入口51に供給された冷却風の風向を少なくとも高温加熱部を回避する方向に制御するものであり、冷却風導入口51にそれぞれ回動自在に軸支された可動ルーバまたはフラップなどの風向調整体52a,52bと、冷却ファン41の近傍に位置する可燃性流体としての作動油の供給を受ける機器としての油圧モータ42からの流体洩れとしての油洩れを検知する流体洩れ検知手段としての油洩れ検知手段53と、この油洩れ検知手段53による油洩れ検知を判断して風向調整体52a,52bの向きおよび開閉状態を制御するコントローラ54とを具備している。
【0028】
前記通気口50と前記冷却風導入口51とは、エンジン室33内のマフラ36およびターボチャージャ37などの高温加熱部を経由しない外気流通ルート上に設置されている。
【0029】
図1に示されるように、前記風向調整体52aは、電動モータなどのアクチュエータ55aにより作動されるカム・スライダ機構などの伝動手段56aを介して上下方向に開閉動作する可動ルーバまたはフラップである。同様に、図2に示されるように、前記風向調整体52bは、電動モータなどのアクチュエータ55bにより作動されるカム・スライダ機構などの伝動手段56bを介して水平方向に開閉動作する可動ルーバまたはフラップである。
【0030】
そして、油圧モータ42の破損などにより油洩れが発生した場合は、エンクロージャ32内に流入される冷却風のエンジン室内流通ルートが、マフラ36やターボチャージャ37などの高温加熱部を経由しないルートとなるように、冷却風導入口51の風向調整体52a,52bの向きがそれぞれ制御される。
【0031】
前記油洩れ検知手段53は、油圧ポンプ39から冷却ファン駆動用の油圧モータ42に供給される作動油の回路圧力(以下、この圧力を「油圧ポンプ・モータ回路圧力」という)を検出する圧力センサ57であり、あるいは冷却ファン41および油圧モータ42の少なくとも一方の回転速度(以下、この回転速度を「冷却ファン・モータ回転速度」という)を検出する回転速度センサ58であり、これらの圧力センサ57または回転速度センサ58はコントローラ54に接続されている。
【0032】
このコントローラ54は、圧力センサ57で検出された油圧ポンプ・モータ回路圧力をモニタするか、または回転速度センサ58で検出された冷却ファン・モータ回転速度をモニタし、同時に、油圧ポンプ39の斜板傾転角などを調整する容量可変手段を可変制御するが、その際に、油圧ポンプ39の容量可変手段を制御する制御信号もモニタして、この制御信号に応じて、ファン駆動用の油圧ポンプ・モータ回路圧力または冷却ファン・モータ回転速度が立上がる状態を監視する。
【0033】
そして、コントローラ54は、油圧ポンプ39から油圧モータ42に供給されるファン駆動用の油圧ポンプ・モータ回路圧力を圧力センサ57によってモニタしており、可燃性流体としての作動油の供給を受ける機器の1つである冷却ファン駆動用の油圧モータ42およびその配管接続部などから油洩れが発生すると、油圧ポンプ39の吐出圧力を上昇させるコントローラ54からのポンプ制御信号に対して、モニタしている油圧ポンプ・モータ回路圧力は上昇せず、場合によっては低下するので、この油圧ポンプ・モータ回路圧力を圧力センサ57で監視するコントローラ54は、上記油洩れを検知できる。
【0034】
もしくは、このような油圧ポンプ・モータ回路圧力と同様に、コントローラ54は、冷却ファン41または油圧モータ42の回転速度すなわち冷却ファン・モータ回転速度も回転速度センサ58でモニタしており、油圧モータ42およびその配管接続部などから油洩れが発生すると、油圧ポンプ39の吐出流量を上昇させるコントローラ54からのポンプ制御信号に対して、モニタしている冷却ファン・モータ回転速度は上昇せず、場合によっては低下するので、この冷却ファン・モータ回転速度を回転速度センサ58で監視するコントローラ54は、上記油洩れを検知できる。
【0035】
前記コントローラ54には、各風向調整体52a,52bをそれぞれ作動する各アクチュエータ55a,55bが接続され、コントローラ54は、各アクチュエータ55a,55bの動作量制御を通じて、風向調整体52a,52bの向きを制御するとともに、風向調整体52a,52bを最大限動作させることで、冷却風導入口51を完全に閉じることも可能である。
【0036】
また、このコントローラ54には、油洩れ検知を判断したコントローラ54からの警報信号により作動されるブザー、スピーカなどの警報手段59が接続されている。
【0037】
次に、図3に示されたコントローラ54の制御手順を参照しながら、上記実施の形態の作用効果を説明する。なお、図3中の丸数字は、制御手順のステップ番号を示す。
【0038】
(ステップ1)
圧力センサ57により検出されたファン駆動用の油圧ポンプ・モータ回路圧力、または回転速度センサ58で検出された冷却ファン・モータ回転速度をモニタすることで、冷却ファン駆動用の油圧モータ42またはそのモータ配管からの油洩れを監視する。
【0039】
(ステップ2)
可変容量型の油圧ポンプ39の容量可変手段を制御することでポンプ吐出流量を制御し、冷却ファン駆動用の油圧モータ42の回転速度などを制御するが、その油圧ポンプ39の容量可変手段を制御する制御信号もモニタする。
【0040】
(ステップ3)
冷却ファン41の回転速度を制御するための油圧ポンプ39の容量可変制御信号に反して、ファン駆動用の油圧ポンプ・モータ回路圧力、または冷却ファン・モータ回転速度が立上がらないか否かを判断する。
【0041】
油圧ポンプ・モータ回路圧力、または冷却ファン・モータ回転速度が正常に立上がる場合は(ステップ3でNO)、風向調整体52a,52bの向きをエンジン31のマフラ36およびターボチャージャ37などの高温加熱部に向けるように制御し、冷却ファン41からエンジン室33内に導入される冷却風をこれらの高温加熱部にも案内して、これらの高温加熱部を効率良く冷却する。
【0042】
(ステップ4)
ファン駆動用の油圧ポンプ・モータ回路圧力、または冷却ファン・モータ回転速度が立上がらず、下降したままの場合は(ステップ3でYES)、風向調整体52a,52bの向きを制御して、冷却風の風向をマフラ36やターボチャージャ37などの高温加熱部が存在しない方向に制御することで、エンジン室33内の高温加熱部に洩れ油が到達するおそれを防止しつつ、エンジン31を冷却する。
【0043】
(ステップ5)
ファン駆動用の油圧ポンプ・モータ回路圧力、または冷却ファン・モータ回転速度が立上がらないで下降したままの状態が、一定時間経過したか否かを判断する。
【0044】
(ステップ6)
油圧ポンプ39の制御信号に反して、ファン駆動用の油圧ポンプ・モータ回路圧力、または冷却ファン・モータ回転速度が、一定時間経過しても立上がらなければ(ステップ5でYES)、油圧モータ42からの油洩れ有りと判断し、各冷却風導入口51の風向調整体52a,52bを完全に閉じて、作動油などの可燃性流体を含む冷却風が冷却風導入口51よりエンジン室33内に導入されるおそれを確実に防止する。
【0045】
これにより、油圧モータ42からの洩れ油が冷却風に混入されたとしても、その洩れ油がエンジン室33内の高温に加熱されたマフラ36やターボチャージャ37に到達するおそれを確実に防止できる。
【0046】
(ステップ7)
コントローラ54は、冷却風導入口51の風向調整体52a,52bを閉じた後、警報手段59に対して警報信号を発信する。
【0047】
次に、この実施の形態の作用効果を説明する。
【0048】
冷却ファン41からエンクロージャ32の冷却風導入口51に供給された冷却風の風向を、風向制御機構35により少なくともエンジン31の高温に加熱されたマフラ36およびターボチャージャ37を回避する方向に制御するので、エンクロージャ32内に導入される冷却風によって油圧モータ42からの洩れ油がエンジン31のマフラ36およびターボチャージャ37に到達するおそれを防止できる。
【0049】
油洩れ検知手段53が油圧モータ42からの油洩れを検知すると、コントローラ54は、風向調整体52a,52bの向きを制御して、冷却ファン41からエンクロージャ32の冷却風導入口51に供給された冷却風の風向を、少なくともエンジン31のマフラ36およびターボチャージャ37を回避する方向に制御するので、通常は冷却ファン41からエンジン室33内に導入される冷却風をエンジン31のマフラ36およびターボチャージャ37などの高温加熱部にも案内して、これらの高温加熱部を効率良く冷却できるとともに、洩れ油を含む冷却風がエンジン室33内に導入される場合のみ、その洩れ油がエンジン室33内のマフラ36およびターボチャージャ37などの高温加熱部に到達するおそれを自動的に防止できる。
【0050】
また、油洩れ検知手段53を、冷却ファン駆動用の油圧モータ42に供給される作動油の回路圧力を検出する圧力センサ57とし、冷却ファン駆動用の油圧モータ42およびその配管接続部などから油洩れが発生すると上記回路圧力は上昇しないので、この回路圧力を圧力センサ57により監視することで、上記油洩れを確実に検知できる。また、圧力センサ57は、油圧回路制御用などで設置されたものを有効利用できる。
【0051】
同様に、油洩れ検知手段53を、冷却ファン41および冷却ファン駆動用の油圧モータ42の少なくとも一方の回転速度を検出する回転速度センサ58とし、冷却ファン駆動用の油圧モータ42およびその配管接続部などから油洩れが発生すると上記回転速度は上昇しないので、この回転速度を回転速度センサ58により監視することで、上記油洩れを確実に検知できる。
【0052】
また、油洩れ検知手段53の圧力センサ57または回転速度センサ58が油圧モータ42からの油洩れのおそれを検知したら、風向調整体52a,52bにより一定時間風向を制御しながら、先ずエンジン室33内の高温加熱部に漏れ油が到達するおそれを防止しつつエンジン31を冷却でき、さらに、一定時間の経過で油圧モータ42からの油洩れを確認した後に風向調整体52a,52bを閉じることで、エンジン室33内への漏れ油の流入を完全に遮断できる。
【0053】
油洩れ検知を判断したコントローラ54は、警報信号により警報手段59を作動するので、警報を受けた作業者は、可燃性流体の流体洩れに迅速に対処できる。
【0054】
なお、この技術は、作動油だけでなく、破損により燃料が噴出するおそれのある燃料クーラ44にも適用可能であり、要するに、エンジン31の近傍に配置された冷却ファン41が吸込むおそれのある可燃性流体の供給を受ける機器に適用できる。
【0055】
以上のように、冷却風上流での油圧機器、油圧配管、燃料系機器、燃料配管が破損した場合、エンジン31の周囲を囲むエンクロージャ32に設置されている可動式ルーバなどの風向調整体52a,52bが向きを変え、油、燃料などの可燃性流体を含む冷却風の流入ルートを、マフラ36やターボチャージャ37から遠い位置のルートに制御する。さらに、風向調整体52a,52bが閉じて、油や燃料などの可燃性流体がエンジン室33内へ浸入することを遮断することで、マフラ36やターボチャージャ37などの高温加熱部に到達するおそれを確実に防止する。
【0056】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、冷却ファンからエンクロージャの冷却風導入口に供給された冷却風の風向を、風向制御機構により少なくともエンジンの高温加熱部を回避する方向に制御するので、エンクロージャ内に導入される冷却風によって可燃性流体がエンジンの高温加熱部に到達するおそれを防止でき、特に、流体洩れ検知手段が可燃性流体の供給を受ける機器からの流体洩れを検知すると、コントローラは、風向調整体の向きを制御して、冷却ファンからエンクロージャの冷却風導入口に供給された冷却風の風向を、少なくともエンジンの高温加熱部を回避する方向に制御するので、通常は冷却ファンからエンジン室内に導入される冷却風をエンジンの高温加熱部にも案内して、この高温加熱部を効率良く冷却できるとともに、可燃性流体を含む冷却風がエンジン室内に導入される場合のみ、その可燃性流体がエンジン室内の高温加熱部に到達するおそれを自動的に防止できる。
【0057】
請求項2記載の発明によれば、流体洩れ検知手段が流体洩れのおそれを検知したら、風向調整体により一定時間風向を制御しながら、先ずエンジン室内の高温加熱部に可燃性流体が到達するおそれを防止しつつエンジンを冷却でき、さらに、一定時間の経過で流体洩れを確認した後に風向調整体を閉じることで、エンジン室内への可燃性流体の流入を遮断でき、エンジン室内の高温加熱部に可燃性流体が到達するおそれを確実に防止できる。
【0058】
請求項3記載の発明によれば、流体洩れ検知を判断したコントローラは、警報信号により警報手段を作動するので、警報を受けた作業者は、可燃性流体の流体洩れに迅速に対処できる。
【0059】
請求項4記載の発明によれば、流体洩れ検知手段を、冷却ファン駆動用の油圧モータに供給される作動油の回路圧力を検出する圧力センサとし、冷却ファン駆動用の油圧モータおよびその配管接続部などから油洩れが発生すると上記回路圧力は上昇しないので、この回路圧力を圧力センサにより監視することで、上記油洩れを確実に検知できる。また、圧力センサは、油圧回路制御用などで設置されたものを有効利用できる。
【0060】
請求項5記載の発明によれば、流体洩れ検知手段を、冷却ファンおよび冷却ファン駆動用の油圧モータの少なくとも一方の回転速度を検出する回転速度センサとし、冷却ファン駆動用の油圧モータおよびその配管接続部などから油洩れが発生すると上記回転速度は上昇しないので、この回転速度を回転速度センサにより監視することで、上記油洩れを確実に検知できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るエンジンエンクロージャ装置の一実施の形態を示す垂直方向の断面図である。
【図2】 同上エンジンエンクロージャ装置の水平方向の断面図である。
【図3】 同上エンジンエンクロージャ装置を制御するコントローラの制御手順を示すフローチャートである。
【図4】 同上エンジンエンクロージャ装置を搭載した油圧ショベルの側面図である。
【図5】 従来のエンクロージャ構造を示す断面図である。
【符号の説明】
31 エンジン
32 エンクロージャ
35 風向制御機構
36,37 高温加熱部としてのマフラおよびターボチャージャ
41 冷却ファン
42 可燃性流体の供給を受ける機器としての油圧モータ
51 冷却風導入口
52a,52b 風向調整体
53 流体洩れ検知手段としての油洩れ検知手段
54 コントローラ
57 圧力センサ
58 回転速度センサ
59 警報手段
Claims (5)
- 高温加熱部を有するエンジンを囲むエンクロージャと、
エンクロージャの一部に開口された冷却風導入口と、
冷却風導入口の外側に対向して設置された冷却ファンと、
冷却ファンから冷却風導入口に供給された冷却風の風向を少なくとも高温加熱部を回避する方向に制御する風向制御機構とを具備し、
風向制御機構は、
冷却風導入口に回動自在に軸支された風向調整体と、
冷却ファンの近傍に位置する可燃性流体の供給を受ける機器からの流体洩れを検知する流体洩れ検知手段と、
流体洩れ検知手段による流体洩れ検知を判断して風向調整体の向きを制御するコントローラと
を具備したことを特徴とするエンジンエンクロージャ装置。 - コントローラは、
流体洩れ検知手段による流体洩れ検知時に風向調整体により一定時間風向を制御した後に風向調整体を閉じる
ことを特徴とする請求項1記載のエンジンエンクロージャ装置。 - 流体洩れ検知を判断したコントローラからの警報信号により作動される警報手段
を具備したことを特徴とする請求項1または2記載のエンジンエンクロージャ装置。 - 可燃性流体の供給を受ける機器は、作動油の供給を受けて冷却ファンを駆動する油圧モータであり、
流体洩れ検知手段は、この油圧モータに供給される作動油の回路圧力を検出する圧力センサである
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載のエンジンエンクロージャ装置。 - 可燃性流体の供給を受ける機器は、冷却ファン駆動用の油圧モータであり、
流体洩れ検知手段は、冷却ファンおよび油圧モータの少なくとも一方の回転速度を検出する回転速度センサである
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載のエンジンエンクロージャ装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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