JP4176904B2 - 動力一輪運搬車 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は動力一輪運搬車の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
通称「猫車」(ねこぐるま)と言われる手押し式の一輪運搬車又は二輪運搬車は、小型で小回りが利くので、工事現場や農地など種々の場所で使用されている。しかし、このような簡易な構成の一・二輪運搬車で、重量物を運搬したり上り坂を登るには、操作する作業者の負担が大きい。
作業者の負担を軽くするためには、一・二輪運搬車をエンジン等の動力で自力走行させることが考えられ、このような運搬車としては、例えば、実公昭51−25250号公報「原動機付手押し一輪運搬車」がある。
【0003】
上記従来の技術は、その公報の第1図によれば、手押し一輪運搬車に原動機25(番号は公報に記載されたものを引用した。以下同じ。)、減速機23並びに駆動ローラ21からなる、上下スイング可能な動力ユニットを備え、任意に原動機25の動力で車輪3を回転させるというものである。
手押し一輪運搬車を自走させるときには、クラッチペダル27を踏み、動力ユニットを時計回りにスイングさせることによって、駆動ローラ21を車輪3の外周面に押し付け、原動機25の動力で車輪3を回転させて前進走行させる。
手押し一輪運搬車を手押し走行させるときには、クラッチレバー39を操作し、動力ユニットを反時計回りにスイングさせることによって、駆動ローラ21を車輪3の外周面から離反させる。この結果、前又は後に手押し走行させることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、工事現場やビニールハウス内では、作業スペースが狭い上に路面に凹凸や起伏がある。労力軽減のためには、後進走行時であっても、前進走行時と同様に、手押し一輪運搬車を動力で走行させたいときもある。例えば、畑で農作物等を運搬する際には、前進走行をするよりも後進走行をする方が多く、労力軽減のために前進時並びに後進時に動力で走行させることが好ましい。
【0005】
しかし、上記従来の技術は、出力軸が一方向にしか回転できないエンジンを原動機25としたものであり、前進走行時のみ自走可能な、原動機付手押し一輪運搬車である。これに対して、原動機25を、正逆転可能なモータと置換することが考えられる。この場合には、モータの回転方向を電気的に切換える回転切換装置を必要とする。
しかしながら、モータの回転方向を電気的に頻繁に切換えるのでは、一方向回転だけで使用する場合に比べて、モータに起動負荷が頻繁に作用することから、1ランク大型のモータを使用せざるを得ない。しかも、回転切換装置によって、モータの回転方向を電気的に切換えるのでは、制御系が複雑になる。このようなことから、モータや制御系が高価格になり、必ずしも得策であるとは言えず、改良の余地がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、前・後進ともに動力によって走行させることが可能な、簡易な構成で低価格の動力一輪運搬車を、提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、車両の幅中央部に1個の駆動輪を備え、車両に駆動輪を動力伝達機構を介して駆動する駆動源を備えた動力一輪運搬車において、前記動力伝達機構は、前記駆動輪を支承する車軸の近傍に、駆動輪を前進と後進とに機械的に切換える前後進切換え機構を備え、前記前後進切換え機構は、前記車輪を支承する車軸に前進用被動ベベルギヤと後進用被動ベベルギヤとを対向させて回転可能に取付けるとともに、これらの前進・後進用被動ベベルギヤに、前記駆動源にて駆動する駆動ベベルギヤを噛み合わせ、前記前進・後進用被動ベベルギヤの互いに対向する面に、前進用クラッチ爪並びに後進用クラッチ爪を設け、前記車軸の長手途中に、径方向に突出したクラッチピンを車軸に沿って移動可能に取付け、前記クラッチピンを弾性部材にて車軸の端部側へ弾発し、前記車軸の端面に、車軸と同心で有底の縦孔を設け、この縦孔にシフトロッドを進退可能に嵌合し、前記シフトロッドの挿入端を前記クラッチピンに当てることで、シフトロッドの進退移動によりクラッチピンを同方向に移動させ、前記クラッチピンの端部を、前記前進用クラッチ爪又は前記後進用クラッチ爪に選択して掛けるように構成したことを特徴とする。
【0008】
駆動源から駆動輪へ動力を伝達する動力伝達機構に、前後進切換え機構を備え、この前後進切換え機構によって、駆動輪を前進と後進とに機械的に切換えるようにした。駆動源がエンジンであっても、駆動輪を前進と後進とに切換えることができる。また、駆動源をモータとし、頻繁に前・後進操作を繰り返して使用する場合であっても、モータの回転方向を変えないので、モータに起動負荷が頻繁に作用せず、比較的小型のモータですむ。
車軸の近傍に前後進切換え機構を配置するので、動力一輪運搬車は比較的小型である。
また、シフトロッドを進退移動させることにより、クラッチピンを車軸の長手方向に移動させて、前進用クラッチ爪又は後進用クラッチ爪に選択的に掛け、駆動源の動力を前進用被動ベベルギヤ又は後進用被動ベベルギヤから車軸へ伝達し、駆動輪を前進走行又は後進走行させることができる。
車軸から径方向に突出したクラッチピンを、前進用クラッチ爪又は後進用クラッチ爪に直接に掛けるようにしたので、クラッチを構成する部品数が少なく、クラッチの構成を簡素化できる。従って、前後進切換え機構は、比較的簡単な構成になる。
【0009】
請求項2は、請求項1において、前記前進用及び後進用の各ベベルギヤに複数のクラッチ爪を同心状に配置し、各クラッチ爪の間に、クラッチピンが嵌合するクラッチ凹部を設けたことを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図面に基づいて以下に説明する。
なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は作業者から見た方向に従い、Frは前側、Rrは後側、Lは左側、Rは右側、CLは車幅中心(車体中心)を示す。また、図面は符号の向きに見るものとする。
【0012】
図1は本発明に係る動力一輪運搬車の斜視図である。
動力一輪運搬車10は、車体フレーム11の車幅方向中央に車輪12を1個のみ取付け、車体フレーム11にモータ13とモータ13の動力を車輪12へ伝達する動力伝達機構14と左右のバッテリ15L,15Rとを取付け、車体フレーム11から後方へ左右の操作ハンドル16L,16Rを延長し、車体フレーム11の後部下部に左右の接地スタンド17L,17Rを設け、車体フレーム11の上部に荷台18並びに荷台用柵19,19を取付けたところの、歩行型手押し式電動一輪運搬車(通称、「猫車」)である。
【0013】
この動力一輪運搬車10は、左右の操作ハンドル16L,16Rを持上げることで、地上から接地スタンド17L,17Rを浮かせた状態で、手押し操作可能な運搬車である。左右の操作ハンドル16L,16Rは、車体フレーム11から後上方へ延ばしたバーハンドルであり、その端部にグリップ21L,21Rを取付けたものである。さらに、左の操作ハンドル16Lはブレーキレバー22を備え、右の操作ハンドル16Rは操作レバー機構30を備える。
【0014】
図2は本発明に係る動力一輪運搬車の側面図である。
動力伝達機構14は、駆動源としてのモータ13に連結した第1減速機構50と、第1減速機構50に連結した伝動軸68と、伝動軸68に連結した第2減速機構70とからなる、シャフト駆動方式の伝達機構であり、この伝達機構は、モータ13の動力を車軸81を介して、駆動輪としての車輪12に伝達するものである。
第1減速機構50は、モータ13の回転を減速するものであり、第2減速機構70は、第1減速機構50の出力回転をさらに減速して、車軸81に伝達するものである。第1減速機構50はモータ13の近傍に配置し、第2減速機構70は車輪12の近傍に配置することになる。車軸81は車輪12を支える軸である。なお、車体フレーム11は、減速機付きモータ13を取付けるためのモータ用ブラケット24と、第2減速機構70並びに後述する軸受部を取付けるための左右の車軸用ブラケット25L,25Rとを備える。
【0015】
図3は本発明に係る動力一輪運搬車の平面図であり、車輪12を車体フレームの車幅中心(車幅方向中央)CLに配置し、2つのバッテリ15L,15Rを車体フレーム11の左右に配置し、モータ13を車幅中心CLから右寄りに配置したことを示す。
車体フレーム11は、後部の取付板26にキースイッチ27及びバッテリ残量表示計28を取付けるとともに、荷台18の下にポテンショメータ40を取付けたものである。
【0016】
図4(a),(b)は本発明に係る操作レバー機構並びにポテンショメータの構成図兼作用図である。
(a)に示すように、操作レバー機構30は、ケース31に軸32を介して操作レバー33を取付け、操作レバー33に右手Hの親指Fを掛けて図時計回りに回すことで、スロットルワイヤ34を図左から右へ引くものであり、オートリターン機構を備える。
【0017】
ポテンショメータ40は、ケース41に軸42を介してレバー43を取付けた可変抵抗器であって、スロットルワイヤ34でレバー43を回すことにより、軸42が回り、内蔵した図示せぬ摺動接点を移動させるものであり、軸42にオートリターン機構を備える。オートリターン機構は、軸42を常に中立位置に戻す役割を果たす。ポテンショメータ40を図1に示すモータ13に直接接続し、ポテンショメータ40にてモータ13を電圧制御する。
【0018】
(a)の中立状態から、親指Fで操作レバー33を図面時計方向回りに回すことにより、(b)に示すように、ポテンショメータ40のレバー43が時計回りに回り、操作レバー33を回す量に応じた供給電圧を発する。この結果、モータ13への供給電圧を増す。
その後、操作レバー33から親指Fを外すと、操作レバー33は付属のオートリターン機構の作用で(a)の位置へ戻り、スロットルワイヤ34を戻す。この結果、ポテンショメータ40も付属のオートリターン機構の作用で(a)の中立位置へ戻り、供給電圧を零にする。モータ13は、供給電圧が零のときに停止し、供給電圧の増加に応じて高速回転する。
【0019】
図5は本発明に係る動力伝達機構の断面図であり、第1減速機構50と伝動軸68と第2減速機構70と車軸81の連結関係を示す。
第1減速機構50は、モータ13の出力軸13aに連結する第1小ギヤ51と、第1小ギヤ51に噛み合う第1大ギヤ52と、第1大ギヤ52をスプライン結合して且つ支持する中間軸53と、中間軸53に双方向クラッチ54を介して連結する第2小ギヤ55と、第2小ギヤ55に噛み合う第2大ギヤ56と、第2大ギヤ56を回転自在に支持する軸受57と、これらのギヤ51,52,55,56、中間軸53、軸受57等を収納するハウジング58並びにリッド59とからなる、2段減速機構である。
【0020】
双方向クラッチ54は、(1)モータ13を回転したときには、中間軸53から第2小ギヤ55へ動力伝達が可能であり、(2)モータ13を停止したときには、第2小ギヤ55を双方向に回転可能にしたクラッチ機構である。第2小ギヤ55から中間軸53への動力伝達は不能である。なお、双方向クラッチ54の有無は任意である。
第2大ギヤ56は、伝動軸68の一端68aをスプライン結合するするとともに、ハウジング58から突出したハブ56aにブレーキ機構61を取付けたものである。図中、62,63は軸受である。
【0021】
第2減速機構70は、互いに交差して配置する伝動軸68並びに車軸81と、伝動軸68の他端68bにスプライン結合する小ベベルギヤ(駆動ベベルギヤ)71と、車軸81の一端81a近傍に互いに対向して回転可能に取付けた2個の大ベベルギヤ(前進用被動ベベルギヤ72並びに後進用被動ベベルギヤ73)と、これらのベベルギヤ71〜73を収納するハウジング74と、伝動軸68の他端68b近傍を支持する駆動軸用軸受75と、車軸81の一端81aを支持する第1の軸受76と、車軸81の途中を支持する第2の軸受77とからなる、ギヤの1段減速機構である。
【0022】
車軸81は、他端81bを軸受部82で支持するとともに、長手中央に車輪12をピン83で結合したものである。車輪12と車軸81は一体的に回転可能である。
ところで、動力伝達機構14は、車軸81の近傍に、車輪12を前進と後進とに機械的に切換える前後進切換え機構(前後進切換えクラッチ)90を備えたことを特徴とする。
【0023】
図6は本発明に係る第2減速機構の断面図であり、上記図5に示す第2減速機構70を拡大して表した。
伝動軸68の他端68bは、止め輪78や軸の段差によって、第2減速機構70に軸方向移動不能に取付けたものである。車軸81の一端81aは、軸の段差によって、第2減速機構70に軸方向移動不能に取付けたものである。
前進・後進用被動ベベルギヤ72,73は、駆動ベベルギヤ71に噛み合うことで、互いに逆方向に回転することになる。
【0024】
ハウジング74は、左右対称形の2つのハウジング半体74A,74B同士を重ねて箱状に組合せ、4本のボルト・ナット79(この図では1本のみ示す。)にて固定したものである。左右対称形の2つのハウジング半体74A,74Bを組合せるのであるから、第2減速機構70の組立は容易である。
【0025】
次に、前後進切換え機構90について説明する。
前後進切換え機構90は、前進・後進用被動ベベルギヤ72,73に一体に形成した前進用クラッチ爪91並びに後進用クラッチ爪92と、前進用クラッチ爪91又は後進用クラッチ爪92に選択的に掛かるクラッチピン93と、クラッチピン93を操作するシフトロッド94と、クラッチピン93をシフトロッド94側に弾発する圧縮ばね95との組合せを基本構成とする。
【0026】
具体的に説明すると、車軸81は、一端81aの端面81cに且つ車軸81と同心に縦孔81dを開けるとともに、長手途中に径方向へ貫通した貫通孔81eを開けたものである。縦孔81dは有底の丸孔である。貫通孔81eは、車軸81の長手方向に長く且つ縦孔81dに交差した長孔である。
【0027】
クラッチピン93は、車軸径よりも長い丸棒であって、車軸81の長手方向に移動可能に且つ車軸81の周方向に移動不能に、貫通孔81eへ嵌合したものである。
貫通孔81eの位置は、前進・後進用クラッチ爪91,92の中間位置である。車軸81の長手方向における、貫通孔81eの幅は、クラッチピン93が前進・後進用クラッチ爪91,92のどちらにも、掛かる程度に移動可能な、大きさである。
【0028】
シフトロッド94は、縦孔81dに進退可能に嵌合した丸棒であり、挿入端94aをクラッチピン93の周面に当てるとともに、露出端94bにフォークエンド101を介してシフトレバー102をスイング可能に連結したものである。フォークエンド101又はシフトレバー102は、ブラケット103を介してハウジング74にスイング可能に取付けたものである。
圧縮ばね95は、縦孔81dの底部に差込んで、クラッチピン93を車軸81の一端81a側へ弾発する弾性部材である。
【0029】
前進用被動ベベルギヤ72の前進用クラッチ爪91と、後進用被動ベベルギヤ73の後進用クラッチ爪92とは、互いに対向し、しかも、所定距離だけ離れて配置したものであって、貫通孔81eから突出したクラッチピン93の端部が着脱可能に掛かるものである。なお、前進・後進用被動ベベルギヤ72,73間の距離は、車軸81と同心の円筒状ディスタンスカラー96にて保持されている。ディスタンスカラー96は、さらに車軸81を囲むことによって、クラッチピン93の抜け止めを兼ねる。
以上の説明から明らかなように、前後進切換え機構90は、車軸81の近傍に配置していると言える。
図中、104は連結ピン、111,112はオイルシール、113はスラストワッシャである。
【0030】
図7は本発明に係る前後進切換え機構の分解斜視図であり、車軸81の長手方向に長い貫通孔81eにクラッチピン93を嵌合し、このクラッチピン93を圧縮ばね95で弾発していることを示す。
後進用被動ベベルギヤ73の後進用クラッチ爪92・・・(・・・は複数を示す。以下同じ。)は複数個ある。これらの後進用クラッチ爪92・・・を同心上に、側面視で円環状になるように配置し、各後進用クラッチ爪92・・・の間に、クラッチピン93が嵌合するクラッチ凹部98・・・を設けたものである。前進用クラッチ爪91・・・も同様である。
【0031】
ディスタンスカラー96は、径方向に分割する2個のカラー分割体96A,96Bからなり、これらのカラー分割体96A,96Bを重ねて車軸81を囲うとともに、外周面の周溝96aに弾性を有する止め輪97を嵌めることで、一体的に組合せるようにしたものである。
【0032】
ディスタンスカラー96を組付けるには、(1)車軸81にクラッチピン93と圧縮ばね95を組付けた後に、(2)二分割筒体のディスタンスカラー96を被せ、(3)前進・後進用クラッチ爪91・・・,92・・・の外周面に内周面を合せて、径方向の位置決めをし、(4)前進・後進用被動ベベルギヤ72,73の対向面間にて、長手方向の位置決めをし、(5)止め輪97で止める。従って、簡単な構成で、クラッチピン93の容易に抜け止めをするとともに、前進・後進用被動ベベルギヤ72,73間の距離を容易に保持することができる。
このように、ディスタンスカラー96の組付け作業は簡単である。しかも、車軸81に嵌合したクラッチピン93を、前進・後進用クラッチ爪91,92に選択的に掛けるようにできるので、クラッチの構成を簡素化できる。
【0033】
ここで、一旦図5に戻って説明を続けると、シフトレバー102は、車両上下方向へのスイングのみを許容する継手105を介在して、車両後方へ延び、更に後部の取付板26を貫通し、後端にグリップ106を備えたものである。取付板26は、シフトレバー102を車両左右方向に案内するガイド溝26aを設け、このガイド溝26aの中央部並びに両端に位置決め溝26b・・・を設けたものである。
このようなフォークエンド101、シフトレバー102、グリップ106、ブラケット103及び取付板26のガイド溝26aからなる組立構造は、前後進切換え機構用操作機構100をなす。
【0034】
次に、上記構成の前後進切換え機構90の作用を、図8〜図10に基づき説明する。
図8は本発明に係る前後進切換え機構の作用説明図(その1)である。
駆動ベベルギヤ71は常に時計回り方向roに回転しており、この結果、前進用被動ベベルギヤ72は常に反時計回り方向(前進方向)rfに回転し、後進用被動ベベルギヤ73は常に時計回り方向(後進方向)rrに回転する。
今、シフトレバー102が中立位置Nにあるので、シフトロッド94はクラッチピン93を図に示す中立位置にセットした状態にある。従って、クラッチピン93は前進・後進用クラッチ爪91,92に掛かっていない、クラッチオフ状態である。このため、車軸81は停止している。このときには、動力一輪運搬車10(図1参照)を前又は後に手押し走行させることができる。
【0035】
図9は本発明に係る前後進切換え機構の作用説明図(その2)である。
シフトレバー102を前進操作位置Foに切換えて、シフトロッド94を押込むと、シフトロッド94は圧縮ばね95の弾発力に抗して、クラッチピン93を移動させる。この結果、クラッチピン93は前進用クラッチ爪91に掛かり、前進側クラッチオンになる。従って、駆動ベベルギヤ71からの動力は、前進用被動ベベルギヤ72→前進用クラッチ爪91→クラッチピン93→貫通孔81eを経て、車軸81に伝わる。このときには、車軸81が反時計回り方向(前進方向)rfに回転するので、動力一輪運搬車10(図1参照)を駆動力にて前進走行させることができる。
【0036】
図10は本発明に係る前後進切換え機構の作用説明図(その3)である。
シフトレバー102を後進操作位置Roに切換えて、シフトロッド94を引くと、クラッチピン93は圧縮ばね95の弾発力によって、車軸81の一端81a側へ移動する。この結果、クラッチピン93は後進用クラッチ爪92に掛かり、後進側クラッチオンになる。従って、駆動ベベルギヤ71からの動力は、後進用被動ベベルギヤ73→後進用クラッチ爪92→クラッチピン93→貫通孔81eを経て、車軸81に伝わる。このときには、車軸81が時計回り方向(後進方向)rrに回転するので、動力一輪運搬車10(図1参照)を駆動力にて後進走行させることができる。
【0037】
図11は本発明に係る前後進切換え機構用操作機構の変形例図であり、前後進切換え機構用操作機構120が、手の指で操作するクラッチ操作レバー機構121と、クラッチ操作レバー機構121の操作力をクランクワイヤ125を介して伝えて、シフトロッド94を進退させるクランク機構131とからなることを示す。
【0038】
クラッチ操作レバー機構121は、ケース122に軸123を介してクラッチ操作レバー124を取付け、クラッチ操作レバー124に手の親指を掛けて図時計回りに回すことで、クランクワイヤ125を図左から右へ引くものであり、解除レバー126を押すことで図示せぬオートリターン機構によって、クラッチ操作レバー124を、図の想像線の位置から実線の位置へ自動復帰させるものである。クラッチ操作レバー機構121は、例えば、上記図1で左の操作ハンドル16Lに想像線にて示すように取付けることになる。
【0039】
クランク機構131は、ケース132に軸133を介してクランクレバー134を取付けたものであって、クランクワイヤ125でクランクレバー134を回すことにより、シフトロッド94を進退させるものであり、軸133にオートリターン機構を備える。オートリターン機構は、軸133を常に中立位置に戻す役割を果たす。
なお、変形例において、第2減速機構70並びに前後進切換え機構90の構成、作用については、上記図6〜図10に示すものと同一であり、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0040】
クラッチ操作レバー124が実線にて示す前進位置Foにあるとき、クランクレバー134は実線にて示す位置にあって、シフトロッド94を押込む。この結果、シフトロッド94はクラッチピン93を押込んで前進用クラッチ爪91に掛け、前進側クラッチオンになる。このときには、車軸81が反時計回り方向(前進方向)rfに回転するので、動力一輪運搬車10(図1参照)を駆動力にて前進走行させることができる。
【0041】
クラッチ操作レバー124に親指を掛け、図時計回りに回して想像線にて示す後進位置Roに切換えることで、クランクワイヤ125を引くと、クランクレバー134は想像線にて示す位置に回って、シフトロッド94を引く。この結果、クラッチピン93は圧縮ばね95の弾発力によって車軸81の一端81a側へ移動し、後進用クラッチ爪92に掛かり、後進側クラッチオンになる。このときには、車軸81が時計回り方向(前進方向)rrに回転するので、動力一輪運搬車10(図1参照)を駆動力にて後進走行させることができる。
【0042】
なお、上記本発明の実施の形態並びに各変形例において、駆動源はモータ13に限定されるものではなく、例えば、エンジンであってもよい。
また、クラッチピン93を弾発する弾性部材は、圧縮ばね95に限定されるものではない。
【0043】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、1個の駆動輪を備えた動力一輪運搬車において、駆動源から駆動輪へ動力を伝達する動力伝達機構に、前後進切換え機構を備え、この前後進切換え機構によって、駆動輪を前進と後進とに機械的に切換えるようにしたので、駆動源の出力軸を一方にのみ回転させた状態であっても、駆動輪を前進側の回転と後進側の回転とに自由に切換えることができる。従って、駆動源がエンジンであっても、動力一輪運搬車を前進走行と後進走行とに切換えることができる。
【0044】
また、駆動源をモータとし、頻繁に前・後進操作を繰り返して使用する場合であっても、モータの回転方向を切換える必要がないので、モータに起動負荷が頻繁に作用しない。このため、比較的小型のモータですむ。しかも、モータの回転方向を制御系で切換えないので、制御系は簡単な構成ですむ。従って、低価格のモータや制御系ですみ、動力一輪運搬車のコストダウンを図ることができる。
【0045】
さらには、車軸の近傍に前後進切換え機構を配置することにより、車軸周りの空きスペースを有効利用して、動力一輪運搬車を比較的小型化することができる。
さらにまた、一輪運搬車であるから、旋回時などに車体を傾けることになるが、所定高さにある車軸の近傍に前後進切換え機構を配置したので、前後進切換え機構が接地したり、旋回半径が大きくなる心配はない。
また、車軸から径方向に突出したクラッチピンを、前進用クラッチ爪又は後進用クラッチ爪に直接に掛けることができるので、クラッチを構成する部品数が少なく、クラッチの構成を簡素化できる。この結果、前後進切換え機構を、比較的簡単な構成にすることができる。
【0046】
請求項2は、請求項1において、前記前進用及び後進用の各ベベルギヤに複数のクラッチ爪を同心状に配置し、各クラッチ爪の間に、クラッチピンが嵌合するクラッチ凹部を設けるようにした。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る動力一輪運搬車の斜視図
【図2】本発明に係る動力一輪運搬車の側面図
【図3】本発明に係る動力一輪運搬車の平面図
【図4】本発明に係る操作レバー機構並びにポテンショメータの構成図兼作用図
【図5】本発明に係る動力伝達機構の断面図
【図6】本発明に係る第2減速機構の断面図
【図7】本発明に係る前後進切換え機構の分解斜視図
【図8】本発明に係る前後進切換え機構の作用説明図(その1)
【図9】本発明に係る前後進切換え機構の作用説明図(その2)
【図10】本発明に係る前後進切換え機構の作用説明図(その3)
【図11】本発明に係る前後進切換え機構用操作機構の変形例図
【符号の説明】
10…動力一輪運搬車、12…駆動輪としての車輪、13…駆動源としてのモータ、14…動力伝達機構、50…第1減速機構、70…第2減速機構、71…駆動ベベルギヤ、72…前進用被動ベベルギヤ、73…後進用被動ベベルギヤ、81…車軸、81a…車軸の端部(一端)、81c…端面、81d…縦孔、81e…貫通孔、90…前後進切換え機構、91…前進用クラッチ爪、92…後進用クラッチ爪、93…クラッチピン、94…シフトロッド、94a…シフトロッドの挿入端、95…弾性部材としての圧縮ばね、102…シフトレバー。

Claims (2)

  1. 車両の幅中央部に1個の駆動輪を備え、車両に駆動輪を動力伝達機構を介して駆動する駆動源を備えた動力一輪運搬車において、
    前記動力伝達機構は、前記駆動輪を支承する車軸の近傍に、駆動輪を前進と後進とに機械的に切換える前後進切換え機構を備え、
    前記前後進切換え機構は、
    前記車輪を支承する車軸に前進用被動ベベルギヤと後進用被動ベベルギヤとを対向させて回転可能に取付けるとともに、これらの前進・後進用被動ベベルギヤに、前記駆動源にて駆動する駆動ベベルギヤを噛み合わせ、
    前記前進・後進用被動ベベルギヤの互いに対向する面に、前進用クラッチ爪並びに後進用クラッチ爪を設け、
    前記車軸の長手途中に、径方向に突出したクラッチピンを車軸に沿って移動可能に取付け、
    前記クラッチピンを弾性部材にて車軸の端部側へ弾発し、
    前記車軸の端面に、車軸と同心で有底の縦孔を設け、この縦孔にシフトロッドを進退可能に嵌合し、
    前記シフトロッドの挿入端を前記クラッチピンに当てることで、シフトロッドの進退移動によりクラッチピンを同方向に移動させ、
    前記クラッチピンの端部を、前記前進用クラッチ爪又は前記後進用クラッチ爪に選択して掛けるように構成した、
    ことを特徴とする動力一輪運搬車。
  2. 前記前進用及び後進用の各ベベルギヤに複数のクラッチ爪を同心状に配置し、各クラッチ爪の間に、クラッチピンが嵌合するクラッチ凹部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の動力一輪運搬車。
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