JP4176326B2 - 圧縮機運搬治具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷凍機、空調機などに使用される密閉形圧縮機の運搬のための治具に関する。
【0002】
【従来の技術】
冷凍機や空調機の圧縮機の交換などの際には、圧縮機を空調機等の近傍まで運搬する必要がある。図6は、密閉形圧縮機の従来の運搬方法を説明するための図である。
【0003】
図6に示すように、従来は、密閉形圧縮機2を木枠1に梱包したままの状態で運搬していた。このような方式は、台車を使用できる場所では梱包状態のまま台車に乗せて運搬すればよいので問題はなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、業務用の冷凍機や空調機の密閉形圧縮機は、たとえば40kg〜80kgなどになる重量物であり、階段や屋根の上など台車が使用できないところでは、作業者5が何人かで木枠1を持って移動しなければならず、作業性が悪かった。
【0005】
また、木枠1は圧縮機2を取り出す際に分解するので、木片等のゴミが発生するなどの問題がある。食品工場などでは、木くずや埃の発生が厳禁の場所があり、このような場所では木枠1の分解に細心の注意が要求され、作業を非常に困難にしていた。
【0006】
また、木枠1を分解した後も、古い圧縮機2を取り外したり、新しい圧縮機を取り付けたりする際に、圧縮機2上部に設けられた吊り金具2aをウォータープライヤなどで掴んで動かす必要があり、作業がきわめて困難であった。
【0007】
また、冷凍機や空調機の室外機の送風機モータを交換する際などには、プロペラファンをモータ軸から取り外す必要がある。ところがモータ軸に錆ができていたり、異物が噛み込んでいたりするなどで、ファンがモータ軸から非常に抜けにくくなっている場合がよくある。このような場合、従来は、図7に示すように、作業者5がハンマー6などで、プロペラファンの基部3に衝撃を与えて抜けやすくするなどの作業で対応していた。この方式ではファンの基部3に衝撃を与えることが重要であるが、一般にファン基部3の直近にはモータ本体4があり、さらにファンの羽根3aもあるので、ファン基部3に効果的に衝撃を与えることは困難であった。また、この作業では、衝撃を与えるため、ファンその他の部分の破損を招く可能性もあった。
【0008】
本発明は、このような従来の問題点を解決するためになされたものであり、密閉形圧縮機の運搬の作業性を向上させることができる圧縮機運搬治具を提供することを目的とする。また本発明は、この運搬治具を利用して室外機のファンの取り外し作業を容易にする仕組みを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る圧縮機運搬治具は、作業者により担持される担持部材と、前記担持部材に取り付けられ、密閉形圧縮機上部に設けられた吊り金具に対して着脱自在に係合可能な吊り下げ部材と、を備える。この構成によれば、吊り下げ部材に対して圧縮機の吊り金具を係合させることにより、担持部材に圧縮機を吊り下げた状態で運搬することができる。ここで、前記吊り下げ部材は、前記担持部材に設けられた吊り下げ部材取付部に螺合される吊りボルトと、この吊りボルトに着脱自在に取り付けられ、前記圧縮機の吊り金具と係合する係合部材と、を含む。そして、圧縮機運搬治具は、前記担持部材に着脱自在に取付可能であり、室外機のファンを支持するモータ軸の延長線上に前記担持部材の前記吊り下げ部材取付部を配置したときに前記ファンを保持するファン保持部材と、前記吊り下げ部材取付部に螺合し、回転により前記担持部材からの突出量が可変する突出ボルトとを備える。この態様では、吊り下げ部材取付部を前記モータ軸の延長線上に位置決めして前記突出ボルトを前記モータ軸に正対させ、かつ前記担持部材に取り付けた前記ファン保持部材で前記ファンを保持した状態で、前記吊り下げ部材取付部に螺合した突出ボルトを回転させてその突出量を増大させることにより、前記担持部材と前記モータ軸との相対距離を増大させることで、前記ファン保持部材を介して前記担持部材に保持された前記ファンを前記モータ軸に対して相対移動させるようにできる。したがって、打撃を与えることなくファンをモータ軸から取り外すことができる。
【0010】
本発明の好適な態様では、前記担持部材は棒状の部材であり、前記吊り下げ部材を取り付ける吊り下げ部材取付部がその担持部材の長手方向に沿って複数設けられている。この態様では、吊り下げ部材を取り付ける部位(取付部)を変えることで、作業環境に合わせて作業者が担持部材を持ちやすくすることができる。
【0013】
さらに好適な態様では、前記突出ボルトとして前記吊りボルトを用いる。これにより部品点数を削減できる。
【0014】
また好適な態様では、前記担持部材は、前記ファン保持部材を取り付ける取付部位を、対象とするファン羽根枚数の種類に応じて複数備える。これにより、1つの担持部材で複数種類のファンの取り外しに対応することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)について、図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る圧縮機運搬治具を説明するための図であり、(a)はこの治具に密閉形圧縮機2に取り付けた状態を示す図、(b)はこの治具の運搬棒7の長手方向中央部での断面図である。
【0017】
この実施形態の圧縮機運搬治具は、大きく分けて運搬棒7とそれに取り付けられる吊り下げ部材の2つの部材から構成される。吊り下げ部材は、主要部品として、吊りボルト8とシャックル12を含む。
【0018】
吊りボルト8は、図2に示すように一方端が錐状部8Aとして形成され、他方端にはシャックル12のピン12aが挿通されるピン穴8Bが形成されている。
【0019】
吊りボルト8は、運搬棒7の長手方向中央部に設けられたネジ穴13Aに螺合される。ネジ穴13Aは運搬棒7を貫通しており、その貫通穴の一方の側には埋込ナット9の形状に合ったナット収容部が形成されている。吊りボルト8は、このナット収容部側に錐状部8Aを向けてネジ穴13Aに螺合される。そして、錐状部8A側に螺合された埋込ナット9,平ワッシャ10,ナット11により、吊りボルト8の抜け止めと、回転防止が図られている。ネジ穴13Aは、吊り下げ部材(吊りボルト8及びシャックル12)を取り付ける取付部として機能している。
【0020】
このように吊りボルト8を運搬棒7中央のネジ穴13Aに螺合して固定し、シャックル12のU字部を密閉形圧縮機2の吊り金具2aの穴に通した後、ピン12aを吊りボルト8のピン穴8Bに通してU字部を留める。これにより、図1に示すごとく、密閉形圧縮機2が、シャックル12及び吊りボルト8を介して運搬棒7から吊り下げられる状態となる。
【0021】
この状態で、例えば2人の作業員が、運搬棒7の前端近傍及び後端近傍をそれぞれ持つことにより、圧縮機2を持ち上げて運搬することができる。特に、駕籠のように運搬棒7の両端を作業員が肩で担いで運搬できるので、木枠のまま運搬するのに比べ、はるかに良好な作業性が得られる。また、この運搬治具を用いれば、圧縮機設置場所まで木枠を持ち込まずに済むので、木枠の分解に関する上述の諸問題を回避できる。
【0022】
運搬棒7の長さは、例えば二人持ちならば、吊り下げた圧縮機2の前後にそれぞれ一人の作業員が入って自然に担げる程度のものにすればよい。運搬棒7は、例えば木製品として作成することができる。木製とすれば、軽量であり、扱いやすい。
【0023】
この運搬治具は、既に設置してある密閉形圧縮機2を取り外す際にも利用できる。すなわち、運搬時と同様にして、設置した圧縮機2に対して図1(a)に示すように運搬治具を取り付け、作業員が運搬棒7を持ち上げることにより、その圧縮機2を持ち上げて設置場所から取り外すことができる。
【0024】
なお、圧縮機2の設置場所が狭いと、運搬棒7がつかえてうまく作業できない場合もある。そのような狭い場所での圧縮機2の設置や取り外しを容易にするため、本実施形態の治具では、運搬棒7の長手方向中央部のネジ穴13Aのほかに、長手方向端部側にオフセットした位置に、吊りボルト8用のネジ穴13Bに設けている。狭い場所での設置や取り外しの際には、図3に示すように、このネジ穴13Bに吊りボルト8を螺合固定して、シャックル12から圧縮機2を吊り下げる。これにより、運搬棒7が狭い設置場所につかえるなどの問題を回避することができる。
【0025】
次に、この圧縮機運搬治具を用いた室外機のプロペラファン取り外し作業について、図4及び図5を参照して説明する。図4はこのファン取り外し作業時の運搬治具及びファン周りの状況を示す側面図であり、図5はこのときの状況をファンの上側から(運搬治具側からファンに向かう向きに)見た図である。図4,図5において、図1に示した構成要素、部位に相当する要素、部位には、図1と同じ符号を付す。
【0026】
なお、この例では、ファンがモータ27の上側に装着されているものとして説明するが、本実施形態の効果がこのような配置以外の場合にも得られることは、以下の説明から明らかであろう。
【0027】
ファン取り外しの際には、図4に示すように、ファンが装着されたモータ軸26の延長線上に吊りボルト8が来るように運搬棒7を位置決めし、運搬棒7を上下逆向きにして吊りボルト8の錐状部8Aを下向きにして、モータ軸26の先端に取り付けられたボルト25の頭部にその錐状部8Aを当接させる。ボルト25の頭部には、すり鉢状の凹部25Aが形成されており、この凹部25Aに吊りボルト8の錐状部8Aが係合することで、モータ軸26に対する治具の水平方向の位置ずれを防止する。なお、シャックル12は、作業の邪魔にならないよう、吊りボルト8から取り外しておく。
【0028】
この例では、ファン基部20の下部を引掛け棒22で引っ掛けることにより、ファンを保持する。引掛け棒22は、一方端がファン基部20に引っ掛かる鉤状部22aとなっており、他方端はネジ部22bとなっている。このネジ部22bにより、引掛け棒22が運搬棒7に対して固定される。引掛け棒22のネジ部22bを運搬棒7に設けられたネジ穴30Aに螺合し、平ワッシャ23とナット24で運搬棒7に対して固定する。
【0029】
なお、図示の例では、3枚羽根のファンを対象としており、羽根20aを避けて三方から引掛け棒22によりファン基部20を保持できるようにしている。このため、この例では、図5に示すように、アングル21を運搬棒7に対して固定し、そのアングル21の両端部に引掛け棒22を固定するようにしている。アングル21自体は、運搬棒7のネジ穴29A(図1参照)に対し、留めボルト29で固定される。このような構造により、アングル21に固定された2本の引掛け棒22とネジ穴30Aに固定された1本の引掛け棒22により、三方からファン基部20を引っ掛けて保持することができる。なお、ネジ穴29A及び30Aの位置は、吊りボルト8をモータ軸26の延長線上に位置決めした際に、運搬棒7及びアングル21に取り付けた引掛け棒22がファン基部20の外周にほぼ接するようになるよう、決められている。
【0030】
運搬治具をファン基部20に対して取り付けて図4,5に示すような状態としたところで、吊りボルト8をモンキーレンチなどで回して吊りボルト8を下方に下げることで、運搬棒7に対する吊りボルト8の下方への突出量が増える。この結果、吊りボルト8によりモータ軸26が運搬棒7に対して相対的に押し下げられる(モータが固定されていれば、運搬棒7が相対的に持ち上がる)。これにより、引掛け棒22に保持されたファン基部20がモータ27から引き離される方向に移動する。モータ軸26が錆びていたり、モータ軸26とファンとの間に異物が噛み込んでいたりする場合でも、このような仕組みによりファンをモータ軸26に対して相対的に持ち上げることで、そのような錆や異物によるファン・モータ軸26間の結合を解除することができ、ファンをモータ軸26から抜けやすくすることができる。
【0031】
この方式によれば、打撃による衝撃を用いないので、ファンやその周辺部材を損傷させずに、ファンをモータ軸26から抜けやすくすることができる。したがって、ファンが損傷しないので、モータ交換の際、元のモータに取り付けられていたファンを再利用することができるので、モータ交換のコストを低減できる。また、この例では、圧縮機運搬治具の運搬棒7及び吊りボルト8をそのまま用いてファン取り外しができる。したがって、圧縮機の運搬とファンの取り外しをほぼ共通の部材で行うことができ、作業に対する必要な部品点数を低減することができる。
【0032】
なお、図4,5の例では、3枚羽根のファンの取り外しを例にとったが、室外機には4枚羽根のファンもよく用いられる。4枚羽根のファンの取り外しの場合は、アングル21を用いる代わりに、ネジ穴28A(図1及び4参照)に引掛け棒22を取り付け、ネジ穴30Aに取り付けた引掛け棒22と2本でファン基部20を保持するようにすればよい。このように、運搬棒7にファンの羽根枚数種類に応じて複数種類の引掛け棒取付部位を設けておくことで、この治具を羽根枚数の異なるファンに対して用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る圧縮機運搬治具を説明するための図である。
【図2】 吊りボルトを示す図である。
【図3】 実施形態の運搬治具を狭い場所で用いる場合の使用形態を説明するための図である。
【図4】 室外機ファン取り外し作業時の運搬治具及びファン周りの状況を示す側面図である。
【図5】 室外機ファン取り外し作業時の運搬治具及びファン周りの状況を、上側から見た図である。
【図6】 密閉形圧縮機の従来の運搬方法を説明するための図である。
【図7】 従来のファン取り外し作業を説明するための図である。
【符号の説明】
2 密閉形圧縮機、2a 吊り金具、7 運搬棒、8 吊りボルト、12 シャックル、13A ネジ穴、20 ファン基部、21 アングル、22 引掛け棒、26 モータ軸、27 モータ。

Claims (4)

  1. 作業者により担持される担持部材と、
    前記担持部材に取り付けられ、密閉形圧縮機上部に設けられた吊り金具に対して着脱自在に係合可能な吊り下げ部材と、
    を備え、前記吊り下げ部材に対して前記吊り金具を係合させることにより前記担持部材に前記圧縮機を吊り下げた状態で前記圧縮機を運搬可能な圧縮機運搬治具であって、
    前記吊り下げ部材は、
    前記担持部材に設けられた吊り下げ部材取付部に螺合される吊りボルトと、
    この吊りボルトに着脱自在に取り付けられ、前記圧縮機の吊り金具と係合する係合部材と、
    を含み、
    前記圧縮機運搬治具は、
    前記担持部材に着脱自在に取付可能であり、室外機のファンを支持するモータ軸の延長線上に前記担持部材の前記吊り下げ部材取付部を配置したときに前記ファンを保持するファン保持部材と、
    前記吊り下げ部材取付部に螺合し、回転により前記担持部材からの突出量が可変する突出ボルトと、
    を更に備え、前記吊り下げ部材取付部を前記モータ軸の延長線上に位置決めして前記突出ボルトを前記モータ軸に正対させ、かつ前記担持部材に取り付けた前記ファン保持部材で前記ファンを保持した状態で、前記吊り下げ部材取付部に螺合した突出ボルトを回転させてその突出量を増大させることにより、前記担持部材と前記モータ軸との相対距離を増大させ、これにより前記ファン保持部材を介して前記担持部材に保持された前記ファンを前記モータ軸に対して相対移動させるようにしたことを特徴とする圧縮機運搬治具。
  2. 前記担持部材は棒状の部材であり、前記吊り下げ部材を取り付ける吊り下げ部材取付部がその担持部材の長手方向に沿って複数設けられていることを特徴とする請求項1記載の圧縮機運搬治具。
  3. 前記突出ボルトとして前記吊りボルトを用いることを特徴とする請求項1記載の圧縮機運搬治具。
  4. 前記担持部材は、前記ファン保持部材を取り付ける取付部位を、対象とするファン羽根枚数の種類に応じて複数備えることを特徴とする請求項1記載の圧縮機運搬治具。
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