JP4176082B2 - 電波吸収性能を有する木質系内装仕上げ材 - Google Patents

電波吸収性能を有する木質系内装仕上げ材 Download PDF

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Description

本発明は電波吸収性能を有しかつ施工性に優れた木質系内装仕上げ材に関する。具体的には、オフィスや公共建築物や一般住宅などの床、壁、天井に用いられる木質系内装仕上げ材に関するものである。
近年携帯電話や無線LANの急速な普及に見られるとおり電波の利用は飛躍的に増加しており、オフィスのみならず一般家庭においても通信障害の原因となる不要電波の対策や、盗聴の対象となる漏洩電波の対策が必要とされつつある。
屋内で用いられる電波吸収体としては、電波暗室に用いられるようなフェライト系の重厚な電波吸収体や発泡樹脂にカーボンなどを含浸させた長大な電波吸収体が古くから知られている。
また近年ではオフィスなどでの使用を意識した様々な電波吸収体が提案されてきており、例えば熱可塑性樹脂やゴム、ガラス繊維にフェライトやカーボン、金属酸化物などを混合成型してなる天井材が知られている。あるいは、石膏を主原料として各種処理を施したもの、木材ボード中にカーボン繊維または金属繊維を分散させたもの、電波吸収性のシートを各種材料に積層したものなどが提案されている。
例えば、特許文献1には、木炭粒子層,スペーサー層,そして反射層の順で積層されてなる電波吸収体が開示されている。
特開2002−141691号公報
しかしながら、電波暗室に用いられるようなフェライト系あるいは発泡樹脂系の電波吸収体は外観意匠、形状、大きさ、重量、価格などの面からオフィスや一般家庭で用いることはできなかった。
また近年提案されている電波吸収体はもっぱら下地材としての発明であって、電波が空気や吸収材の表面保護材など予め想定した材料中を伝播してくるものとして設計されており、電波の入射する面に異なる誘電率を持つ材料すなわち内装仕上げ材等が存在すると、特性インピーダンスが変化するために必ずしも設計どおりの電波吸収性能が発現されないという課題点があった。
例えば、特許文献1に記載された電波吸収体の表面は、木炭粒子層、すなわち、木炭粒子をバインダー樹脂によって固めるとともに、両面を不織布又は織布若しくは樹脂膜で覆って所定の厚みとしたものからなるため、床、壁、天井に用いられる場合には、通常、木炭粒子層の表面に壁紙や、羽目板,腰壁,フローリングといった厚みのある化粧材が貼着されるようになっている。そして、このように化粧板が表面に貼着されると特性インピーダンスが変化するために設計どおりの電波吸収性能が発現されないという問題がある。
さらに熱可塑性樹脂やゴム、ガラス繊維系材料や石膏系材料は物理的な強度に劣るため、力の加わる部位への適用は難しく、用途はごく限られたものであった。
そこで、本発明の目的とするところは、優れた電波吸収性能を発揮するとともに内装仕上げ材として直接使用することのできる電波吸収性能を有する木質系内装仕上げ材を提供することにある。
上記の目的を達成するために、本発明の電波吸収性能を有する木質系内装仕上げ材は、床材、腰壁、羽目板、化粧用壁パネル、天井板等、表面を露出した状態で使用される木質系内装仕上げ材であって、
室内側より順に、表面化粧材料層(1)、吸収層(2)、λ/4型電波吸収体(λは吸収する電波の波長)用のスペーサー層(3)、及び、反射層(4)の各層を一体的に積層してなり、少なくとも前記スペーサー層(3)を木質系材料で形成し、前記表面化粧材料層(1)を広葉樹または針葉樹の単板からなるものとし、しかも、前記吸収層(2)として、前記単板の割れ防止用の紙を使用したことを特徴とする。
また、本発明は、床材、腰壁、羽目板、化粧用壁パネル、天井板等、表面を露出した状態で使用される木質系内装仕上げ材であって、
室内側より順に、表面化粧材料層(1)、吸収層(2)、λ/4型電波吸収体(λは吸収する電波の波長)用のスペーサー層(3)、及び、反射層(4)の各層を一体的に積層してなり、少なくとも前記スペーサー層(3)を木質系材料で形成し、前記吸収層(2)として、樹脂含浸紙を使用したことを特徴とする。
さらに、本発明は、床材、腰壁、羽目板、化粧用壁パネル、天井板等、表面を露出した状態で使用される木質系内装仕上げ材であって、
室内側より順に、表面化粧材料層(1)、吸収層(2)、λ/4型電波吸収体(λは吸収する電波の波長)用のスペーサー層(3)、反射層(4)、及び、厚みもしくは強度調整のための調整材料層(5)の各層を一体的に積層してなり、少なくとも前記スペーサー層(3)を木質系材料で形成し、前記表面化粧材料層(1)を広葉樹または針葉樹の単板からなるものとし、しかも、前記吸収層(2)として、前記単板の割れ防止用の紙を使用したことを特徴とする。
また、本発明は、床材、腰壁、羽目板、化粧用壁パネル、天井板等、表面を露出した状態で使用される木質系内装仕上げ材であって、
室内側より順に、表面化粧材料層(1)、吸収層(2)、λ/4型電波吸収体(λは吸収する電波の波長)用のスペーサー層(3)、反射層(4)、及び、厚みもしくは強度調整のための調整材料層(5)の各層を一体的に積層してなり、少なくとも前記スペーサー層(3)を木質系材料で形成し、前記吸収層(2)として、樹脂含浸紙を使用したことを特徴とする。
なお、括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための最良の形態に記載された対応要素または対応事項を示す。
以上のとおり、本発明の電波吸収性能を有する木質系内装仕上げ材によれば、スペーサー層、あるいはそれに加えて調整材料層を木質系材料とするので、強度、重量、施工性、価格、生産性、環境保全性に優れる。また木材の誘電率はおよそ2〜4であるので、スペーサー層の厚みを、空気の場合のおよそ1/√2〜1/2に薄くすることができる。
また、本発明によれば、表面化粧材料層を予め一体化した状態で対象電波の周波数を十分に吸収しうる厚さにスペース層を構成する木質系材料の厚さを決定するので電波吸収体としての機能は十分発揮される。
よって、従来のように、電波吸収体の表面に、ある程度厚みを持った別のものが存在すると、入射する電波の特性インピーダンス(波動インピーダンスともいう)が変化してしまい、本来の電波吸収体の性能が発揮できないといった問題はなく、室空間への施工位置を電波の入射する最前面とする内装仕上げ材として使用することができる。
このように、本発明によれば、設計、施工面で従来の電波吸収体よりも容易かつ自由度が高く、性能面でも必要十分な電波吸収性能をもった木質系内装仕上げ材を提供できる。
本発明の実施形態に係る電波吸収性能を有する木質系内装仕上げ材は、床材、腰壁、羽目板、化粧用壁パネル、天井板等、表面を露出した状態で使用されるものであり、その形状はパネル状又はボード状である。
そして、本発明の実施形態に係る電波吸収性能を有する木質系内装仕上げ材の断面は、図1に示すように、表面化粧材料層1、吸収層2、スペーサー層3、反射層4、及び、調整材料層5の各層がこの順に一体的に積層されたもので、表面化粧材料層1側が室内側、そして調整材料層5側が室外側になるように設置される構成となっている。
全体の大きさは、長さ(縦)が300〜4000mm,幅(横)が60〜1200mm,厚さが3〜40mm程度のものが好ましい。
表面化粧材料層1は、厚さが0.2mmから5mmの範囲にある広葉樹または針葉樹の単板もしくは挽板、あるいは樹脂シートや印刷紙からなり、その表面に塗装などによる表面処理を施すこともできる。
吸収層2は、例えば、備長炭と樹脂からなるものを上下の不織布で挟みこんだシート状のもので厚さが1.1mm程度のものである。これにかえて、植物炭シートやカーボン系シートを使用することもできる。また、紙やPETフィルムなどのようにフィルム状にしたり、導電性塗料、導電性接着剤や導電性インクの層で構成することもできる。紙、シート、フィルムの場合には、表面への印刷、塗布に限らず、含浸させたものや、成型したものでもよい。さらには、化粧単板の割れ防止用の紙や、樹脂含浸紙(表面硬度を向上)や、防振シートなどに塗装または含浸させたものを使用することもできる。なお吸収層2を構成する、備長炭と樹脂からなるものを上下の不織布で挟みこんだシート状のものを多層にすることで複数の周波数の電波を吸収することができる。
スペーサー層3は、木質系材料で形成されていて、対象電波に応じて厚みが決定されている。木質系材料とは、無垢板材、単板積層材、集成材、木質ボード類(ストランドボード、パーティクルボード、ファイバーボード)、その他、板状のエンジニアリングウッドのことを示す。
反射層4は、導電不織布で形成されていて、厚みが1.5mm以下で、面抵抗値が20Ω□以下(好ましくは10Ω□以下)のものを使用した。これにかえて、導電布、導電紙、導電性シート、導電性接着剤、金属箔、金属板、導電性塗料、金属メッシュ、金属めっきなどを使用することもできる。
調整材料層5は、全体の厚みや強度を調整するためのもので、スペーサー層3と同様に木質系材料、あるいは有機・無機材料で形成されている。なお、調整材料層5は必要に応じて設ければよいので、設けない場合もある。
このように、スペーサー層3を木質系材料とするので、強度、重量、施工性、価格、生産性、環境保全性に優れる。また木材の誘電率はおよそ2〜4であるので、スペーサー層3の厚みを、空気の場合のおよそ1/√2〜1/2に薄くすることができる。また、調整材料層5を使用する場合にも、その調整材料層5を木質系材料とするので、強度、重量、施工性、価格、生産性、環境保全性に優れる。
スペーサー層3の厚みは、表面化粧材料層1、吸収層2、反射層4、及び調整材料層5を一定にした状態で、電波の周波数に対するスペーサー層3の厚みを変化させることにより電波吸収特性を予め把握し、その電波吸収特性に基づき、対象電波の周波数の吸収を所定dB以上にしうる厚みに決定される。
すなわち、図2に示すように、周波数(freq[GHz])とスペーサー層3の厚み(wood[mm])とそれに基づく吸収量([dB])との関係からなる電波吸収特性を測定し、設計チャートを作成する。そして、対象電波の周波数の吸収を所定dB以上にしようとする場合、例えば、5.2GHzの電波の吸収を15dB以上にしようとする場合には、図2の設計チャートからスペーサー層3の厚みは、A領域(3.2〜5.7mm)とB領域(22.5〜25.5mm)となるが、最も薄い厚みであるA領域(3.2〜5.7mm)の中から決定される。これによれば、全体の厚みをより薄くした状態で対象電波の周波数を十分吸収することができる。
これによれば、従来、電波吸収体の表面に、ある程度厚みを持った別のものが存在すると、入射する電波の特性インピーダンス(波動インピーダンスともいう)が変化してしまい、本来の電波吸収体の性能が発揮できないといった問題があったが、本発明の実施形態では、表面化粧材料層1を予め一体化した状態で対象電波の周波数を十分に吸収しうる厚さにスペース層3を構成する木質系材料の厚さを決定するので電波吸収体としての機能は十分発揮される。
よって、室空間への施工位置を電波の入射する最前面とする内装仕上げ材として使用することができる。
次に別の設計チャートによりスペーサー層3の厚みを決定する方法について説明する。
λ/4型電波吸収体のスペーサーとして用いられる材料には周波数依存性の少ない材料定数(複素比誘電率εr、(以下誘電率)と複素比透磁率μr(以下透磁率))を持つものが使われるが、木材の誘電率は周波数や含水率、比重によって変化があることが知られており、使用可能かどうか曖昧だった。
しかしながら建材として用いられる木質材料の誘電率(εr=εr’−jεr”)を測定したところ、概ね2から4程度であって、図3に示すとおり周波数依存性が小さく、λ/4型電波吸収体用のスペーサーとして十分有効であることがわかった。
そこで表1に示す材料を用い、図4の断面構成からなる、周波数5.2GHzの電波を20dB以上吸収する木質系内装仕上げ材を設計、製作した。
なおここでは垂直入射の場合で設計を行ったが、電波が斜めに入射する場合には、入射する角度を考慮した波動インピーダンスを用いて設計する。
Figure 0004176082
設計にあたり、
化粧材料(表面化粧材料層1)の厚さをd1[mm]、材料定数をε1,μ1、面抵抗値をR1[Ω□]、特性インピーダンスをZ1[Ω]とし、
吸収材料(吸収層2)の厚さをd2≒0[mm]、材料定数をε2,μ2、面抵抗値をR2[Ω□]、特性インピーダンスをZ2[Ω]とし、
スペーサー(スペーサー層3)の厚さをd3[mm]、材料定数をε3,μ3、面抵抗値をR3[Ω□]、特性インピーダンスをZ3[Ω]とし、
反射材料(反射層4)の厚さをd4[mm]、材料定数をε4,μ4、面抵抗値をR4[Ω□]、特性インピーダンスをZ4[Ω]とすると、
各特性インピーダンスは次のように表すことができる。
r=Z0√(μr/εr)=Rr+jXr(r=1,2,3,4、jは虚数単位)・・・式(1)
0=√(μ0/ε0)=376.7[Ω]
0:入射波(平面波)の空気中での波動インピーダンス
ε0:空気の誘電率
μ0:空気の透磁率
次に図4の構成を図5に示す電気的な等価回路に置換し、スペーサー層3から見込んだ入力インピーダンスをZin1、吸収層2から見込んだ入力インピーダンスをZin2、表面化粧材料層1から見込んだ入力インピーダンスをZin3とすると、それぞれ次の式で求められる。
in1=Z3(R4+Z3tanh(γ33))/(Z3+R4tanh(γ33))・・・式(2)
in2=Z2・Zin1/(Z2+Zin1)・・・式(3)
in3=Z1(Zin2+Z1tanh(γ11))/(Z1+Zin2tanh(γ11))・・式(4)
γr=(j2π/λ)・√(εr・μr)、λ=c/f
γr:伝搬定数
c:光速[m/s]
f:周波数[Hz]
λ:波長[m]
また吸収量AR[dB]は次の式で求められる。
R=−20・log(|(Zin3−Z0)/(Zin3+Z0)|)・・・式(5)
式(5)は、化粧材料に厚みのある材料や金属材料もしくは磁性材料などを混合した材料を用いた場合や、表面にアクリル樹脂系塗料を用いた場合など、化粧材料表面から見込んだ入力インピーダンスへの影響を無視できない場合に用いる。
もしも化粧材料にとても薄い厚さの木材単板を無塗装で用いた場合のように、化粧材料が表面から見込んだ入力インピーダンスにほとんど影響を与えないと考えられる場合は、式(5)に代えて次の式を用いることができる。
R=−20・log(|(Zin2−Z0)/(Zin2+Z0)|)・・・式(6)
以上より、式(1)〜(4)および(5)または(6)と、予め確認した各構成材料の諸元から、吸収量ARとスペーサー厚みd3と周波数fとの関係が得られるので、図6のような設計チャートを作成し、目的とする周波数(5.2GHz)および吸収量(20dB以上)に対する最適なスペーサー層3の厚み(4.2〜4.9、より好ましくは4.5mm)を設計した。
実際に作製した木質系内装仕上げ材の電波吸収性能を自由空間反射波法により測定した結果、図7に示すとおり所望の吸収特性を実現した。
したがって、本発明の実施形態に係る木質材料をスペーサー層3として用いることの妥当性および化粧材料を織り込んだ設計方法の妥当性が確認された。
本実施形態に係る電波吸収性能を有する木質系内装仕上げ材を示す断面図である。 本実施形態に係る電波吸収性能を有する木質系内装仕上げ材における電波吸収特性を示した設計チャート図である。 木質材料の誘電率の周波数依存性を示した図である。 木質系内装仕上げ材の材料諸元と断面構成を示した図である。 電気的等価回路を示した図である。 本実施形態に係る電波吸収性能を有する木質系内装仕上げ材における電波吸収特性を示した別の設計チャート図である。 本実施形態に係る電波吸収性能を示す図である。
符号の説明
1 表面化粧材料層
2 吸収層
3 スペーサー層
4 反射層
5 調整材料層

Claims (4)

  1. 床材、腰壁、羽目板、化粧用壁パネル、天井板等、表面を露出した状態で使用される木質系内装仕上げ材であって、
    室内側より順に、表面化粧材料層、吸収層、λ/4型電波吸収体(λは吸収する電波の波長)用のスペーサー層、及び、反射層の各層を一体的に積層してなり、少なくとも前記スペーサー層を木質系材料で形成し、前記表面化粧材料層を広葉樹または針葉樹の単板からなるものとし、しかも、前記吸収層として、前記単板の割れ防止用の紙を使用したことを特徴とする電波吸収性能を有する木質系内装仕上げ材。
  2. 床材、腰壁、羽目板、化粧用壁パネル、天井板等、表面を露出した状態で使用される木質系内装仕上げ材であって、
    室内側より順に、表面化粧材料層、吸収層、λ/4型電波吸収体(λは吸収する電波の波長)用のスペーサー層、及び、反射層の各層を一体的に積層してなり、少なくとも前記スペーサー層を木質系材料で形成し、前記吸収層として、樹脂含浸紙を使用したことを特徴とする電波吸収性能を有する木質系内装仕上げ材。
  3. 床材、腰壁、羽目板、化粧用壁パネル、天井板等、表面を露出した状態で使用される木質系内装仕上げ材であって、
    室内側より順に、表面化粧材料層、吸収層、λ/4型電波吸収体(λは吸収する電波の波長)用のスペーサー層、反射層、及び、厚みもしくは強度調整のための調整材料層の各層を一体的に積層してなり、少なくとも前記スペーサー層を木質系材料で形成し、前記表面化粧材料層を広葉樹または針葉樹の単板からなるものとし、しかも、前記吸収層として、前記単板の割れ防止用の紙を使用したことを特徴とする電波吸収性能を有する木質系内装仕上げ材。
  4. 床材、腰壁、羽目板、化粧用壁パネル、天井板等、表面を露出した状態で使用される木質系内装仕上げ材であって、
    室内側より順に、表面化粧材料層、吸収層、λ/4型電波吸収体(λは吸収する電波の波長)用のスペーサー層、反射層、及び、厚みもしくは強度調整のための調整材料層の各層を一体的に積層してなり、少なくとも前記スペーサー層を木質系材料で形成し、前記吸収層として、樹脂含浸紙を使用したことを特徴とする電波吸収性能を有する木質系内装仕上げ材。
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