JP4176057B2 - 車両の操舵装置 - Google Patents

車両の操舵装置 Download PDF

Info

Publication number
JP4176057B2
JP4176057B2 JP2004193245A JP2004193245A JP4176057B2 JP 4176057 B2 JP4176057 B2 JP 4176057B2 JP 2004193245 A JP2004193245 A JP 2004193245A JP 2004193245 A JP2004193245 A JP 2004193245A JP 4176057 B2 JP4176057 B2 JP 4176057B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steering
vehicle
torque
vehicle speed
detected
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP2004193245A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2006015811A (ja
Inventor
裕一 小野田
憲司 十津
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Aisin Corp
Original Assignee
Aisin Seiki Co Ltd
Toyota Motor Corp
Aisin Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Aisin Seiki Co Ltd, Toyota Motor Corp, Aisin Corp filed Critical Aisin Seiki Co Ltd
Priority to JP2004193245A priority Critical patent/JP4176057B2/ja
Publication of JP2006015811A publication Critical patent/JP2006015811A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4176057B2 publication Critical patent/JP4176057B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Steering Control In Accordance With Driving Conditions (AREA)
  • Power Steering Mechanism (AREA)

Description

本発明は、車両を操舵するために運転者によって操作される操舵ハンドルと、転舵輪を転舵するための転舵アクチュエータと、操舵ハンドルの操作に応じて転舵アクチュエータを駆動制御して転舵輪を転舵する転舵制御装置とを備えたステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置に関する。
近年、この種のステアリングバイワイヤ方式の操舵装置の開発は、積極的に行なわれるようになった。そして、例えば下記特許文献1は、操舵角および車速を検出し、操舵角の増加に従って減少するとともに車速の増加に従って増加する伝達比を計算し、この伝達比で操舵角を除算することにより前輪の転舵角(ラック軸の変位量)を計算して、同計算した転舵角に前輪を転舵するようにした操舵装置が示されている。また、この操舵装置においては、検出ハンドル操舵角を時間微分した操舵速度に応じて前記計算した転舵角を補正することにより、前輪の転舵応答性・追従性を高めるようにしている。さらに、検出車速および検出ハンドル操舵角を用いて目標ヨーレートを計算し、この計算した目標ヨーレートと検出した実ヨーレートとの差に応じて前記計算した転舵角を補正することにより、車両の挙動状態を考慮した転舵制御を実現するようにもなっている。
また、下記特許文献2には、操舵トルクおよびハンドル操舵角を検出し、操舵トルクおよびハンドル操舵角の増加に従って増加する2つの転舵角をそれぞれ計算し、これらの計算した両転舵角を加算した転舵角に前輪を転舵するようにした操舵装置が示されている。この操舵装置においては、車速も検出して、この検出車速により前記両転舵角を補正して、転舵特性を車速に応じて変更するようにしている。
さらに、下記特許文献3には、車速に反比例する時定数を含む一時遅れ要素に基づいて前後輪を転舵角に転舵制御するステアリングバイワイヤ方式の車両用操舵装置が示されている。この車両用操舵装置においては、車速を検出し、同検出した車速の増大に伴い小さくなる時定数を設定して前後輪の転舵制御を行うことにより、特に低速域における運転者の急激な操舵によって車両が急激に旋回することを防止するようになっている。
特開2000−85604号公報 特開平11−124047号公報 特開2003−261056号公報
しかし、上記従来の装置のいずれにおいても、車両を操舵するための運転者による操舵ハンドルに対する操作入力値である操舵角および操舵トルクを検出し、これらの検出した操舵角および操舵トルクを用いて前輪の転舵角を直接的に計算して、この計算した転舵角に前輪を転舵するようにしている。しかし、これらの前輪の転舵制御は、従前の操舵ハンドルと転舵輪との機械的な連結を外してはいるものの、操舵ハンドルの操作に対する前輪の操舵方法としては、操舵ハンドルの操作位置または操作力に対応させて前輪の転舵角を決定するという基本的な技術思想は全く同じであり、これらの転舵方法では、人間の感覚特性に対応して前輪の転舵角が決定されていないので、車両の運転操作が難しかった。
すなわち、上記従来の装置においては、運転者が知覚し得ない転舵角が操舵ハンドルの操作に対応させて直接的に決定され、同転舵角に応じた前輪の転舵によって車両が旋回する。そして、運転者はこの車両の旋回に起因した車両の横加速度、ヨーレートおよび旋回曲率を触覚または視覚により感じ取り、操舵ハンドルの操作にフィードバックして車両を所望の態様で旋回させていた。言い換えれば、運転者による操舵ハンドルの操作に対する前輪の転舵角は人間の知覚し得ない物理量であるので、運転者の操舵操作に対して直接的に決定される転舵角は運転者の知覚特性に合わせて決められたものではなく、これが車両の運転を難しくしていた。
また、上記従来の装置においては、車両の操舵特性すなわち操舵ハンドルの操舵角に対する転舵輪の転舵角の関係(所謂、伝達比)が、例えば、車速に応じて変更可能とされている。しかしながら、この操舵特性の変更は、例えば、予め設定された車速を検出すると一方的に操舵特性を変更するものであり、運転者の知覚特性に合わせて決められたものではない。このため、運転者は、操舵特性の変更に伴って違和感を覚えるとともに車両の運転を難しくしていた。
さらに、上記従来の装置においても、検出車速および検出ハンドル操舵角を用いて計算した目標ヨーレートと、検出した実ヨーレートとの差に応じて決定転舵角を補正するようにしているが、これは車両の挙動状態を考慮した転舵角の単なる補正であって、操舵ハンドルの操作により運転者が知覚するであろうヨーレートに応じて転舵角を決定しているわけではない。また、検出車速に基づいて、操舵ハンドルの操舵時点と転舵開始時点との間に位相差を設けるようにしているが、これは車両の旋回挙動を考慮した転舵制御の単なる補正であって、操舵ハンドルの操作により運転者の見込んだ車両の運動状態を生じさせるものではない。したがって、この場合も、運転者の操舵操作に対して決定される転舵角は運転者の知覚特性に合わせて決められたものではなく、違和感を覚えるとともに車両の運転を難しくしていた。
本発明者等は、上記問題に対処するために、運転者による操舵ハンドルの操作に対して、人間の知覚特性に合わせて車両を操舵することができる車両の操舵装置の研究に取り組んだ。このような人間の知覚特性に関し、ウェーバー・ヘフナー(Weber-Fechner)の法則によれば、人間の感覚量は与えられた刺激の物理量の対数に比例すると言われている。言い換えれば、人間の操作量に対して人間に与えられる刺激の物理量を操作量が変位の場合には指数関数的に、操作量がトルクの場合にはべき乗関数的に変化させれば、操作量と物理量との関係を人間の知覚特性に合わせることができる。本発明者等は、このウェーバー・ヘフナーの法則を車両の操舵操作に適用し、次のようなことを発見した。
車両の運転にあたっては、操舵ハンドルの操作によって車両は旋回し、この車両の旋回によって横加速度、ヨーレート、旋回曲率などの車両の運動状態量が変化し、運転者はこの車両の運動状態量を触覚および視覚により感じ取るものである。したがって、前記操舵ハンドルに対する運転者の操作に対して、運転者が知覚し得る車両の運動状態量を指数関数的またはべき乗関数的に変化させるようにすれば、運転者は、知覚特性に合わせて操舵ハンドルを操作して車両を運転できることになる。
本発明は、上記発見に基づくもので、その目的は、車速に適した操舵特性に変更して、運転者による操舵ハンドルの操作に対して人間の知覚特性に合わせて車両を操舵させることにより、車両の運転を易しくした車両の操舵装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、車両を操舵するために運転者によって操作される操舵ハンドルと、転舵輪を転舵するための転舵アクチュエータと、前記操舵ハンドルの操作に応じて前記転舵アクチュエータを駆動して転舵輪を転舵制御する転舵制御装置とを備えたステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、前記転舵制御装置を、前記操舵ハンドルに対する運転者の操作入力値を検出する操作入力値検出手段と、車両の車速を検出する車速検出手段と、前記検出された車速に応じて変更される所定の関係に基づいて、前記検出された操作入力値を前記転舵輪の転舵制御に関する制御操作力に変換する制御操作力変換手段と、車両の旋回に関係して運転者が知覚し得る車両の運動状態を表していて前記変換された制御操作力と予め定めた指数関係またはべき乗関係にある車両の見込み運動状態量を、前記変換された制御操作力を用いて計算する運動状態量計算手段と、前記計算された見込み運動状態量で車両が運動するために必要な前記転舵輪の転舵角を、前記計算された見込み運動状態量を用いて計算する転舵角計算手段と、前記計算された転舵角に応じて前記転舵アクチュエータを制御して前記転舵輪を同計算された転舵角に転舵する転舵制御手段とで構成したことにある。
この場合、前記所定の関係は、前記検出された車速の増大に伴って前記検出された操作入力値に対する前記制御操作力を増大し、前記検出された車速の減少に伴って前記検出された操作入力値に対する前記制御操作力を減少する関係であるとよい。また、前記所定の関係は、前記検出された車速の増大に伴って前記検出された操作入力値の変化量に対する前記制御操作力の変化量の比を大きくし、前記検出された車速の減少に伴って前記検出された操作入力値の変化量に対する前記制御操作力の変化量の比を小さくする関係であるとよい。さらに、前記制御操作力変換手段は、前記検出された車速の増大に伴って前記操作入力値の検出時点から前記制御操作力の変換開始時点まで間の位相差を小さくし、前記検出された車速の減少に伴って前記操作入力値の検出時点から前記制御操作力の変換開始時点まで間の位相差を大きくして、前記操作入力値を前記制御操作力に変更するとよい。
また、この場合、見込み運動状態量は、例えば、車両の横加速度、ヨーレートおよび旋回曲率のうちのいずれか一つである。また、この車両の操舵装置において、さらに、操舵ハンドルの操作に対して反力を付与する反力装置を設けておくとよい。
また、操作入力値検出手段を、例えば、操舵ハンドルの変位量を検出する変位量センサで構成することができ、この場合、運動状態量計算手段を、前記検出された変位量を操舵ハンドルに付与される操作力に変換する操作力変換手段と、前記変換された操作力を見込み運動状態量に変換する運動状態量変換手段とで構成するとよい。そして、操作力変換手段は変位量を同変位量と指数関係にある操作力に変換し、運動状態量変換手段は操作力を同操作力と指数関係に有る見込み運動状態量に変換するとよい。
また、操作入力値検出手段を、例えば、操舵ハンドルに付与される操作力を検出する操作力センサで構成することもでき、この場合には、運動状態量計算手段を、前記検出された操作力を見込み運動状態量に変換する運動状態量変換手段で構成するとよい。そして、運動状態量変換手段は、操作力を同操作力とべき乗関係にある見込み運動状態量に変換するとよい。
上記のように構成した本発明においては、まず、操舵ハンドルに対する運転者の操作入力値が、車速に応じて変更される所定の関係に基づいて制御操作力に変換される。そして、変換された制御操作力が、車両の旋回に関係して運転者が知覚し得る車両の運動状態を表していて操舵ハンドルに対する操作入力値と予め定めた指数関係またはべき乗関係にある車両の見込み運動状態量(横加速度、ヨーレート、旋回曲率など)に変換される。そして、この変換された見込み運動状態量に基づいて、同見込み運動状態量で車両が運動するために必要な転舵輪の転舵角が計算されて、この計算された転舵角に転舵輪が転舵される。したがって、転舵輪の転舵によって車両が旋回すると、この旋回により、運転者には、前記ウェーバー・ヘフナーの法則による「与えられた刺激の物理量」として前記見込み運動状態量が与えられる。そして、この見込み運動状態量は操舵ハンドルへの操作入力値に対して指数関数的またはべき乗関数的に変化するものであるので、運転者は、人間の知覚特性に合った運動状態量を知覚しながら、操舵ハンドルを操作できる。なお、横加速度およびヨーレートについては、運転者が車両内の各部位との接触により触覚的に感じ取ることができる。また、旋回曲率については、運転者が車両の視野内の状況の変化により視覚的に感じ取ることができる。その結果、本発明によれば、運転者は、人間の知覚特性に合わせて操舵ハンドルを操作できるので、車両の運転が簡単になる。
また、検出された車速に応じて、操作入力値と制御操作力との所定の関係を変更することができる。すなわち、所定の関係を、検出された車速の増大に伴って操作入力値に対する制御操作力を増大するとともに検出された車速の減少に伴って検出された操作入力値に対する制御操作力を減少する関係とすることができる。また、所定の関係を、検出された車速の増大に伴って検出された操作入力値の変化量に対する制御操作力の変化量の比(ゲイン)を大きくするとともに検出された車速の減少に伴って検出された操作入力値の変化量に対する制御操作力の変化量の比(ゲイン)を小さくする関係とすることができる。
これらにより、車速の増大に伴って、運転者による操作入力値(またはその変化量)が大きな(またはその変化量の比が大きな)制御操作力に変換され、同変換された制御操作力に基づいて見込み運動状態量が計算されて必要な転舵角が計算される。このため、車速が増大している状態おいては、運転者による操作入力値(またはその変化量)に対して、見込み運動状態量が大きく計算され、同大きな見込み運動状態量を発生させるための転舵角が計算される。したがって、車速が増大した状態において運転者の知覚特性に合った操舵特性を確保することができる。一方、車速の減少に伴って、運転者による操作入力値(またはその変化量)が小さな(またはその変化量の比が小さな)制御操作力に変換され、同変換された制御操作力に基づいて見込み運動状態量が計算されて必要な転舵角が計算される。このため、車速が減少している状態おいては、運転者による操作入力値(またはその変化量)に対して、見込み運動状態量が小さく計算され、同小さな見込み運動状態量を発生させるための転舵角が計算される。したがって、車速が減少した状態においても運転者の知覚特性に合った操舵特性を確保することができる。これらにより、車速に応じた操舵特性を確保することができて、車両の運転をより簡単にすることができる。
さらに、見込み運動状態量計算手段は、例えば、予め設定された所定の指数関係またはべき乗関係に基づいて、制御操作力から見込み運動状態量を計算する。これによれば、車速の変化に伴って操舵特性が変化する場合であっても、計算される見込み運動状態量が運転者の知覚特性に合った状態を確保して、操舵特性を変更することができるため、運転者が違和感を覚えることがない。
また、制御操作力変換手段は、検出された車速の増大に伴って操作入力値の検出時点から制御操作力の変換開始時点まで間の位相差を小さくし、検出された車速の減少に伴って操作入力値の検出時点から制御操作力の変換開始時点まで間の位相差を大きくして操作入力値を制御操作力に変更することができる。これにより、車速が急激に変化している状況においても、運転者が操舵ハンドルを回動操作した時点から位相差を有して転舵輪が転舵制御される。これにより、操舵特性が急激に変更されることを効果的に防止できるとともに、計算される見込み運動状態量が運転者の知覚特性に合った状態とすることができて、運転者が違和感を覚えることがない。
また、本発明の他の特徴は、前記構成に、さらに見込み運動状態量と同一種類であって車両の実際の運動状態を表す実運動状態量を検出する運動状態量検出手段と、前記計算された見込み運動状態量と前記検出された実運動状態量との差に応じて前記計算された転舵角を補正する補正手段とを設けたことにある。これによれば、転舵輪は、前記計算された見込み運動状態量で車両が運動するために必要な転舵角にさらに正確に転舵されることになる。その結果、運転者は、人間の知覚特性に正確に合った運動状態量を知覚しながら、操舵ハンドルを操作できるようになるので、車両の運転がさらに簡単になる。
a.第1実施形態
以下、本発明の第1実施形態に係る車両の操舵装置について図面を用いて説明する。図1は、第1実施形態に係る車両の操舵装置を概略的に示している。
この操舵装置は、転舵輪としての左右前輪FW1,FW2を転舵するために、運転者によって回動操作される操作部としての操舵ハンドル11を備えている。操舵ハンドル11は操舵入力軸12の上端に固定され、操舵入力軸12の下端は電動モータおよび減速機構からなる反力アクチュエータ13に接続されている。反力アクチュエータ13は、運転者の操舵ハンドル11の回動操作に対して反力を付与する。
また、この操舵装置は、電動モータおよび減速機構からなる転舵アクチュエータ21を備えている。この転舵アクチュエータ21による転舵力は、転舵出力軸22、ピニオンギア23およびラックバー24を介して左右前輪FW1,FW2に伝達される。この構成により、転舵アクチュエータ21からの回転力は転舵出力軸22を介してピニオンギア23に伝達され、ピニオンギア23の回転によりラックバー24が軸線方向に変位して、このラックバー24の軸線方向の変位により、左右前輪FW1,FW2は左右に転舵される。
次に、これらの反力アクチュエータ13および転舵アクチュエータ21の回転を制御する電気制御装置について説明する。電気制御装置は、操舵角センサ31、転舵角センサ32、車速センサ33および横加速度センサ34を備えている。
操舵角センサ31は、操舵入力軸12に組み付けられて、操舵ハンドル11の中立位置からの回転角を検出して操舵角θとして出力する。転舵角センサ32は、転舵出力軸22に組み付けられて、転舵出力軸22の中立位置からの回転角を検出して実転舵角δ(左右前輪FW1,FW2の転舵角に対応)として出力する。なお、操舵角θおよび実転舵角δは、中立位置を「0」とし、左方向の回転角を正の値で表すとともに、右方向の回転角を負の値でそれぞれ表す。車速センサ33は、車速Vを検出して出力する。横加速度センサ34は、車両の実横加速度Gを検出して出力する。なお、実横加速度Gも、左方向の加速度を正の値で表し、右方向の加速度を負の値で表す。
これらのセンサ31〜34は、電子制御ユニット35に接続されている。電子制御ユニット35は、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータを主要構成部品とするもので、プログラムの実行により反力アクチュエータ13および転舵アクチュエータ21の作動をそれぞれ制御する。電子制御ユニット35の出力側には、反力アクチュエータ13および転舵アクチュエータ21を駆動するための駆動回路36,37がそれぞれ接続されている。駆動回路36,37内には、反力アクチュエータ13および転舵アクチュエータ21内の電動モータに流れる駆動電流を検出するための電流検出器36a,37aが設けられている。電流検出器36a,37aによって検出された駆動電流は、両電動モータの駆動を制御するために、電子制御ユニット35にフィードバックされている。
次に、上記のように構成した第1実施形態の動作について、電子制御ユニット35内にてコンピュータプログラム処理により実現される機能を表す図2の機能ブロック図を用いて説明する。電子制御ユニット35は、操舵ハンドル11への反力付与を制御するための反力制御部40と、操舵ハンドル11の回動操作に基づいて運転者の感覚特性に対応した左右前輪FW1,FW2の目標転舵角δdを決定するための感覚適合制御部50と、目標転舵角δdに基づいて左右前輪FW1,FW2を転舵制御するための転舵制御部60とからなる。
運転者によって操舵ハンドル11が回動操作されると、操舵角センサ31によって操舵ハンドル11の回転角である操舵角θが検出されて、同検出された操舵角θを反力制御部40および感覚適合制御部50にそれぞれ出力する。反力制御部40においては、運転者によって操舵ハンドル11が回動操作されると、変位−トルク変換部41が、操舵ハンドル11の操舵角θの絶対値が正の所定値θz未満であれば下記式1に従って操舵角θの一次関数である反力トルクTzを計算し、操舵角θの絶対値が正の所定値θz以上であれば下記式2に従って操舵角θの指数関数である反力トルクTzを計算する。ここで、式1の一次関数と式2の指数関数とは、操舵角θzで連続的に接続されるものであり、例えば、式2の指数関数における操舵角θzでの原点「0」と通る接線を式1の一次関数として採用するとよい。なお、式1に関しては、一次関数に限定されるものではなく、操舵角θが「0」のときに反力トルクTzが「0」となり、かつ、式2の指数関数と連続的に接続される関数であれば、種々の関数を採用することができる。
Tz=a・θ (|θ|<θz) …式1
Tz=To・exp(K1・θ) (θz≦|θ|) …式2
ただし、前記式1中のaは一次関数の傾きを表す定数である。また、式2中のTo,K1は定数であり、特に定数Toは運転者が知覚し得る最小操舵トルクである。なお、定数K1に関しては後述する感覚適合制御部50の説明時に詳しく説明する。さらに、前記式1および式2中の操舵角θは、前記検出操舵角θの絶対値を表しているものとし、検出操舵角θが正であれば定数aおよび定数Toを負の値とするとともに、検出操舵角θが負であれば定数aおよび定数Toを前記負の定数aおよび前記負の定数Toと同じ絶対値を有する正の値とする。なお、前記式1,2の演算に代えて、操舵角θに対する反力トルクTzを記憶した図3に示すような特性の変換テーブルを用いて、反力トルクTzを計算するようにしてもよい。
また、前記式1および式2中の操舵角θは、下記式3に従い、車速Vに応じてその変化し得る最大操舵角θmaxが計算される。
θmax=(1−V・D)・θmax0 …式3
ただし、前記式3中のDは予め設定された計算用パラメータであり、θmax0はシステムによって決定される最大操舵角の基準値である。この式3の計算によれば、車速Vが大きくなるに従って最大操舵角θmaxは小さく計算され、車速Vが小さくなるに従って最大操舵角θmaxは大きく計算される。言い換えれば、前記式3によって最大操舵角θmaxが計算されることにより、操舵角θの変化し得る範囲は、車速Vが大きくなるに従って小さくなり、車速Vが小さくなるに従って大きくなる。このとき、前記式2に従って、前記式3により計算された最大操舵角θmaxにおける反力トルクTzの最大値Tmaxが計算されるとすれば、図3に示すように、操舵角θの変化量に対する反力トルクTzの変化量(ゲイン)は、車速Vが大きくなるに伴って大きくなり、車速Vが小さくなるに伴って小さくなる変化特性を有するようになる。
この計算された反力トルクTzは、駆動制御部42に供給される。駆動制御部42は、駆動回路36から反力アクチュエータ13内の電動モータに流れる駆動電流を入力し、同電動モータに反力トルクTzに対応した駆動電流が流れるように駆動回路36をフィードバック制御する。この反力アクチュエータ13内の電動モータの駆動制御により、同電動モータは、操舵入力軸12を介して操舵ハンドル11に反力トルクTzを付与する。したがって、運転者は、操舵ハンドル11の回動操作を開始し、操舵角が操舵角θz未満のときは一次関数的に変化する反力トルクTzを感じ、また、操舵角が操舵角θz以上のときは指数関数的に変化する反力トルクTzを感じながら、操舵ハンドル11を回動操作することになる。さらに、運転者は、車速Vが大きくなるに伴って大きな反力トルクTzを感じ、車速Vが小さくなるに伴って小さな反力トルクTzを感じながら、操舵ハンドル11を回動操作することになる。したがって、運転者は、このように変化する反力トルクTzと等しい操舵トルクを操舵ハンドル11に加えながら、操舵ハンドル11を回動操作することになる。
具体的に説明すると、運転者が操舵ハンドル11を中立位置から回動操作すると、所定の操舵角θz未満であれば、前記式1に従ってすなわち検出操舵角θに対して一次関数的に変化する反力トルクTzが計算される。そして、検出操舵角θが所定の操舵角θz以上であれば、前記式2に従ってすなわち検出操舵角θに対して指数関数的に変化する反力トルクTzが計算される。このとき、所定の操舵角θzにて、反力トルクTzが前記式1に従う計算から前記式2に従う計算に変更されるときには、前記式1すなわち一次関数と前記式2すなわち指数関数とが連続的に接続されるため、運転者は、前記変更に伴う反力トルクTzの違和感を覚えることがない。そして、検出操舵角θが所定の操舵角θz以上のときには、操舵角θと反力トルクTzの関係が上述したウェーバー・ヘフナーの法則に従うものとなるため、運転者は、操舵ハンドル11から人間の知覚特性に合った感覚を受けながら、操舵ハンドル11を回動操作できる。
一方、運転者が操舵ハンドル11を中立位置方向へ回動操作すると、検出操舵角θが所定の操舵角θz以上であれば、運転者は、上述したように、ウェーバー・ヘフナーの法則に従った反力トルクTzすなわち操舵角θに対して指数関数的に変化する反力トルクTzを知覚しながら操舵ハンドル11を操作する。そして、中立位置近傍、言い換えると、検出操舵角θが所定の操舵角θz未満となれば、運転者が知覚する反力トルクTzは、前記式2から前記式1に変更されて計算される。このように、前記式2から前記式1に変更して反力トルクTzを計算することにより、反力トルクTzは操舵角θに対して一次関数的に「0」に収束する。これにより、操舵ハンドル11の中立位置では反力トルクTzを「0」とすることができるため、操舵ハンドル11の中立位置における振動の発生を防止することができる。
また、前記式3に従って車速Vに応じた最大操舵角θmaxが計算されることにより、例えば、運転者が操舵ハンドル11を中立位置から所定の操舵角θz以上に回動操作したときには、前記式2により表される指数関数の操舵角θの変化量に対する反力トルクTzの変化量(ゲイン)が車速Vに応じて変更される。これにより、車速Vが大きいときには操舵ハンドル11に対して大きな反力トルクTzを付与することができるため、運転者は、例えば、中高速走行時における操舵安定性が確保された状態で操舵ハンドル11を回動操作することができる。一方、車速Vが小さいときには操舵ハンドル11に対して小さな反力トルクTzを付与することができるため、運転者は、例えば、駐車など低速走行時において操舵ハンドル11を大きく(多く)回転するときには極めて容易に回動操作することができる。なお、所定の操舵角θz未満においては、運転者は一次関数的に変化する反力トルクTzを知覚しながら操舵ハンドル11を回動操作する。
一方、感覚適合制御部50に入力された操舵角θは、変位−トルク変換部51にて前記式1〜3と同様な下記式4,5および式6に従って操舵トルクTdを計算する。この操舵トルクTdの計算においても、式4に関しては、一次関数に限定されるものではなく、操舵角θが「0」のときに操舵トルクTdが「0」となり、かつ、式5の指数関数と連続的に接続される関数であれば、種々の関数を採用することができる。
Td=a・θ (|θ|<θz) …式4
Td=To・exp(K1・θ) (θz≦|θ|) …式5
θmax=(1−V・D)・θmax0 …式6
この場合も、式4中のaは一次関数の傾きを表す定数である。また、式5中のTo,K1は、前記式2と同様な定数である。さらに、前記式4および式5中の操舵角θは、前記検出操舵角θの絶対値を表しているものであるが、検出操舵角θが正であれば定数aおよび定数Toを正の値とするとともに、検出操舵角θが負であれば定数aおよび定数Toを前記正の定数aおよび定数Toと同じ絶対値を有する負の値とする。なお、この場合も、前記式4,5の演算に代えて、操舵角θに対する操舵トルクTdを記憶した図3に示すような特性の変換テーブルを用いて、操舵トルクTdを計算するようにしてもよい。
また、前記式3と同様に、前記式6中のDは予め設定された計算用パラメータであり、θmax0はシステムによって決定される最大操舵角の基準値である。そして、前記式6によっても、車速Vが大きくなるに伴って最大操舵角θmaxは小さく計算され、車速Vが小さくなるに伴って最大操舵角θmaxは大きく計算される。これにより、操舵角θの変化し得る範囲は、車速Vが大きくなるに従って小さくなり、車速Vが小さくなるに従って大きくなる。したがって、前記式5に従って計算される操舵トルクTdにおいても、図3に示すように、操舵角θの変化量に対する操舵トルクTdの変化量(ゲイン)は、車速Vが大きくなるに伴って大きくなり、車速Vが小さくなるに伴って小さくなる変化特性を有するようになる。
この計算された操舵トルクTdは、トルク−横加速度変換部52に供給される。トルク−横加速度変換部52は、運転者が操舵ハンドル11の回動操作により見込んでいる見込み横加速度Gdを、操舵トルクTdの絶対値が正の所定値Tg未満であれば下記式7に従って計算し、操舵トルクTdの絶対値が正の所定値Tg以上であれば下記式8に従って計算する。ここで、式7は操舵トルクTdの一次関数式であって操舵トルクTdが「0」のときに見込み横加速度Gdが「0」となる関数である。また、式8は操舵トルクTdのべき乗関数であり、式7と所定値Tgにて連続的に接続するものである。
Gd=b・Td (|Td|<Tg) …式7
Gd=C・TdK2 (Tg≦|Td|) …式8
ただし、式7中のbは一次関数の傾きを表す定数であり、式8中のC,K2は定数である。また、前記式7,8中の操舵トルクTdは前記式4,5を用いて計算した操舵トルクTdの絶対値を表しているものであり、前記計算した操舵トルクTdが正であれば定数bおよび定数Cを正の値とするとともに、前記計算した操舵トルクTdが負であれば定数bおよび定数Cを前記正の定数bおよび定数Cと同じ絶対値を有する負の値とする。なお、この場合も、前記式7,8の演算に代えて、操舵トルクTdに対する見込み横加速度Gdを記憶した図4に示すような特性の変換テーブルを用いて、見込み横加速度Gdを計算するようにしてもよい。
ここで、前記式8について説明しておく。前記式5を用いて操舵トルクTdを消去すると、下記式9に示すようになる。
Gd=C・(To・exp(K1・θ))K2=C・ToK2・exp(K1・K2・θ)=Go・exp(K1・K2・θ) …式9
前記式9において、Goは定数C・ToK2であり、式9は運転者による操舵ハンドル11の操舵角θに対して見込み横加速度Gdが指数関数的に変化していることを示す。そして、この見込み横加速度Gdは、車内の所定部位への運転者の体の一部の接触によって運転者が知覚し得る物理量であり、前述したウェーバー・ヘフナーの法則に従ったものである。したがって、操舵トルクTdが所定値Tg以上のときに、運転者が、この見込み横加速度Gdに等しい横加速度を知覚しながら操舵ハンドル11を回動操作することができれば、操舵ハンドル11の回動操作と車両の操舵との関係を人間の知覚特性に対応させることができる。
このように、前記式8(すなわち前記式9)に示された見込み横加速度Gdは操舵ハンドル11の操作量である操舵角θに対して指数関数的に変化するものであるので、人間の知覚特性に合ったものである。さらに、運転者による操舵ハンドル11の回動操作にとって最も簡単な方法は操舵ハンドル11を一定速度ω(θ=ω・t)で回動することであり、この回動操作によれば、見込み横加速度Gdは下記式10に示すように時間tに対して指数関数的に変化する。したがって、これからも、前記見込み横加速度Gdに等しい横加速度を知覚しながら操舵ハンドル11を回動操作することができれば、運転者の操舵ハンドル11の回動操作が簡単になることがわかる。
Gd=Go・exp(K0・ω・t) …式10
ただし、K0は、K0=K1・K2の関係にある定数である。
また、前記式7に示されるように、操舵トルクTdが所定値Tg未満である場合、見込み横加速度Gdは一次関数的に変化する。これは、操舵トルクTdが所定値Tg未満のとき、すなわち操舵角θが「0」近傍(操舵ハンドル11の中立位置近傍)に保たれる場合において、例えば、前記式8に従って見込み横加速度Gdを計算した場合には、見込み横加速度Gdが「0」に収束せず、これは現実的でない。しかしながら、前述のように、操舵ハンドル11が中立位置近傍、すなわち操舵トルクTdが所定値Tg未満であれば、見込み横加速度Gdを前記式7に従って計算することにより、操舵ハンドル11が中立位置方向へ回動された場合には、見込み横加速度Gdが「0」に収束するため、この問題は解決される。
また、前記式6に従って車速Vに応じた最大操舵角θmaxが計算されることにより、例えば、運転者が操舵ハンドル11を中立位置から所定の操舵角θz以上に回動操作したときには、前記式5により表される指数関数の操舵角θの変化量に対する操舵トルクTdの変化量(ゲイン)が車速Vに応じて変更される。これにより、変位−トルク変換部51から、車速Vが大きいときには操舵角θに対して大きな操舵トルクTdが供給されるため、同供給された操舵トルクTdを用いて計算される見込み横加速度Gdも大きくなる。このため、中高速走行時において、より大きく発生する横加速度の特性に対して、運転者が見込む見込み横加速度Gdを同横加速度の特性に合わせて、すなわち、運転者の感覚に合わせて計算することができる。
一方、変位−トルク変換部51から、車速Vが小さいときには操舵角θの変化量に対して小さな操舵トルクTdが供給されるため、同供給された操舵トルクTdを用いて計算される見込み横加速度Gdも小さくなる。このため、低速走行時において、より小さく発生する横加速度の特性に対して、運転者が見込む見込み横加速度Gdを同横加速度の特性に合わせて、すなわち、運転者の感覚に合わせて計算することができる。なお、所定値Tg未満においては、運転者は一次関数的に変化する見込み横加速度Gdを知覚する。
次に、前記式1〜10で用いたパラメータK1,K2,C(所定値K1,K2,C)の決め方について説明しておく。なお、このパラメータK1,K2,Cの決め方についての説明では、前記式1〜10の操舵トルクTdおよび見込み横加速度Gdについては、操舵トルクTおよび横加速度Gとして扱う。前述したウェーバー・ヘフナーの法則によれば、「人間の知覚できる最小の物理量変化ΔSとその時点での物理量Sとの比ΔS/Sは、物理量Sの値によらず一定となり、その比ΔS/Sをウェーバー比という」ことになっている。本発明者等は、操舵トルクおよび横加速度に関し、前記ウェーバー・ヘフナーの法則が成立することを確認するとともに、ウェーバー比を決定するために、次のような実験を、男女、年齢、車両の運転歴などの異なる種々の人間に対して行った。
操舵トルクに関しては、車両の操舵ハンドルにトルクセンサを組付け、操舵ハンドルに検査用のトルクを外部から付与するとともに同検査用トルクを種々の態様で変化させながら、この検査用トルクに抗して人間が操舵ハンドルに操作力を加えて同操舵ハンドルを回転させないように調整する人間の操舵トルク調整能力を計測した。すなわち、前記状況下で、ある時点での検出操舵トルクをTとし、同検出操舵トルクTからの変化を知覚し得る最小の操舵トルク変化量をΔTとしたときの比の値ΔT/Tすなわちウェーバー比を種々の人間に対して計測した。この実験の結果によれば、操舵ハンドルの操作方向、操舵ハンドルを把持する手の状態、検査用トルクの大きさおよび方向によらず、種々の人間に対してウェーバー比ΔT/Tはほぼ一定の値αとなった。
横加速度に関しては、運転席の側方に壁部材を設けて同壁部材に人間の肩の押圧力を検出する力センサを組付け、人間に操舵ハンドルを把持させるとともに壁部材の力センサに肩を接触させ、壁部材に検査用の力を人間に対して横方向に外部から付与するとともに同検査用の力を種々の態様で変化させながら、この検査用の力に抗して人間が壁部材を押して壁部材が移動しないように調整する、すなわち姿勢を維持する人間の横力調整能力を計測した。すなわち、前記状況下で、ある時点での外部からの横力に耐えて姿勢を維持する検出力をFとし、同検出力Fからの変化を知覚し得る最小の力変化量をΔFしたときの比の値ΔF/Fすなわちウェーバー比を種々の人間に対して計測した。この実験の結果によれば、壁部材に付与される基準力の大きさおよび方向によらず、種々の人間に対してウェーバー比ΔF/Fはほぼ一定の値βとなった。
一方、前記式5を微分するとともに、同微分した式において式5を考慮すると、下記式11が成立する。
ΔT=To・exp(K1・θ)・K1・Δθ=T・K1・Δθ …式11
この式11を変形するとともに、前記実験により求めた操舵トルクに関するウェーバー比ΔT/TをKtとすると、下記式12が成立する。
K1=ΔT/(T・Δθ)=Kt/Δθ …式12
また、操舵トルクTdの最大値をTmaxとすれば、前記式5,6より下記式13が成立する。
Tmax=To・exp(K1・θmax) …式13
この式13を変形すれば、下記式14が成立する。
K1=log(Tmax/To)/θmax …式14
そして、前記式12および式14から下記式15が導かれる。
Δθ=Kt/K1=Kt・θmax/log(Tmax/To) …式15
この式15において、Ktは操舵トルクTのウェーバー比であり、Toは人間が知覚し得る最小操舵トルクに対応するものであり、これらの値Kt,Tmax,Toはいずれも実験およびシステムによって決定される定数である。また、θmaxは前記式6に従い車速Vに対応して計算されるものであるので、前記微分値Δθは前記式15を用いて計算できる。そして、この微分値Δθとウェーバー比Ktを用いて、前記式12に基づいて所定値(係数)K1も計算できる。
また、前記式8を微分するとともに、同微分した式において式8を考慮すると、下記式16が成立する。
ΔG=C・K2・TK2-1・ΔT=G・K2・ΔT/T …式16
この式16を変形し、かつ前記実験により求めた操舵トルクに関するウェーバー比ΔT/TをKtとするとともに、横加速度に関するウェーバー比ΔF/FをKaとすると下記式17,18が成立する。
ΔG/G=K2・ΔT/T …式17
K2=Ka/Kt …式18
この式18において、Ktは操舵トルクに関するウェーバー比であるとともに、Kaは横加速度に関するウェーバー比であって、共に定数として与えられるものであるので、これらのウェーバー比Kt,Kaを用いて、前記式18に基づいて係数K2も計算できる。
また、横加速度の最大値をGmaxとし、操舵トルクの最大値をTmaxとすれば、前記式8から下記式19が導かれる。
C=Gmax/TmaxK2 …式19
そして、この式19においては、GmaxおよびTmaxは実験及びシステムによって決定される定数であり、かつK2は前記式18によって計算されるものであるので、定数(係数)Cも計算できる。
以上のように、最大操舵角θmax、操舵トルクTの最大値Tmax、横加速度Gの最大値Gmax、最小操舵トルクTo,最小感知横加速度Go,操舵トルクTに関するウェーバー比Kt、および横加速度に関するウェーバー比Kaを、車速Vに応じて計算し、または、実験およびシステムによって予め決定すれば、前記式1〜9における係数K1、K2,Cを計算することができる。したがって、変位−トルク変換部41,51およびトルク−横加速度変換部52においては、前記式1〜9を用いて、運転者の知覚特性に合った反力トルクTz、操舵トルクTdおよび見込み横加速度Gdを計算できる。
ふたたび、図2の説明に戻ると、トルク−横加速度変換部52にて計算された見込み横加速度Gdは、転舵角変換部53に供給される。転舵角変換部53は、見込み横加速度Gdを発生するのに必要な左右前輪FW1,FW2の目標転舵角δdを計算するものであり、図5に示すように車速Vに応じて変化して見込み横加速度Gdに対する目標転舵角δdの変化特性を表すテーブルを有する。このテーブルは、車速Vを変化させながら車両を走行させて、左右前輪FW1,FW2の転舵角δと横加速度Gとを予め実測して収集したデータの集合である。そして、転舵角変換部53は、このテーブルを参照して、前記入力した見込み横加速度Gdと車速センサ33から入力した検出車速Vとに対応した目標転舵角δdを計算する。また、前記テーブルに記憶されている横加速度G(見込み横加速度Gd)と目標転舵角δdはいずれも正であるが、転舵角変換部53から供給される見込み横加速度Gdが負であれば、出力される目標転舵角δdも負となる。
ここで、トルク−横加速度変換部52から供給される見込み横加速度Gdは、上述したように、車速Vに応じて、操舵角θの変化量に対する変化量(ゲイン)が変更されて供給される。すなわち、車速Vが大きい場合には、供給される見込み横加速度Gdの操舵角θの変化量に対する変化量(ゲイン)は大きくなり、転舵角変換部53によって計算される目標転舵角δdの変化量(ゲイン)も大きくなる。その結果、中高速域における車両の操舵特性が、操舵ハンドル11の操舵角θの変化に対して左右前輪FW1,FW2が機敏に転舵する操舵特性(クイックな操舵特性)になり、車両の運動性能を向上することができる。一方、車速Vが小さい場合には、供給される見込み横加速度Gdの操舵角θの変化量に対する変化量(ゲイン)は小さくなり、転舵角変換部53によって計算される目標転舵角δdの変化量(ゲイン)も小さくなる。その結果、低速域における車両の操舵特性が、操舵ハンドル11の操舵角θの変化に対して左右前輪FW1,FW2が細かく(滑らかに)転舵する操舵特性になり、車両の旋回をコントロールし易くすなわち車両を取り回し易くできる。また、見込み横加速度Gdが車速Vに依存しない図4に示した変換テーブルに基づいて計算されるため、見込み横加速度Gdは常に運転者の知覚特性に合わせて計算される。したがって、操舵特性が変化する場合であっても、運転者は違和感を覚えることがない。
なお、目標転舵角δdは下記式20に示すように車速Vと横加速度Gの関数であるので、前記テーブルを参照することに代えて、下記式20の演算の実行によっても計算することができる。
δd=L・(1+A・V2)・Gd/V2 …式20
ただし、前記式20中のLはホイールベースを示す予め決められた所定値であり、Aは予め決められた所定値である。
この計算された目標転舵角δdは、転舵制御部60の転舵角補正部61に供給される。転舵角補正部61は、トルク−横加速度変換部52から見込み横加速度Gdを入力するとともに、横加速度センサ34によって検出された実横加速度Gをも入力しており、下記式21の演算を実行して入力した目標転舵角δdを補正し、補正目標転舵角δdaを計算する。
δda=δd+K3・(Gd−G) …式21
ただし、係数K3は予め決められた正の定数であり、実横加速度Gが見込み横加速度Gdに満たない場合には、補正目標転舵角δdaの絶対値が大きくなる側に補正される。また、実横加速度Gが見込み横加速度Gdを超える場合には、補正目標転舵角δdaの絶対値が小さくなる側に補正される。この補正により、見込み横加速度Gdに必要な左右前輪FW1,FW2の転舵角がより精度よく確保される。
この計算された補正目標転舵角δdaは、駆動制御部62に供給される。駆動制御部62は、転舵角センサ32によって検出された実転舵角δを入力し、左右前輪FW1,FW2が補正目標転舵角δdaに転舵されるように転舵アクチュエータ21内の電動モータの回転をフィードバック制御する。また、駆動制御部62は、駆動回路37から同電動モータに流れる駆動電流も入力し、転舵トルクに対応した大きさの駆動電流が同電動モータに適切に流れるように駆動回路37をフィードバック制御する。この転舵アクチュエータ21内の電動モータの駆動制御により、同電動モータの回転は、転舵出力軸22を介してピニオンギア23に伝達され、ピニオンギア23によりラックバー24を軸線方向に変位させる。そして、このラックバー24の軸線方向の変位により、左右前輪FW1,FW2は補正目標転舵角δdaに転舵される。
上記作動説明からも理解できるように、上記第1実施形態によれば、操舵ハンドル11に対する運転者の操作入力値としての操舵角θは、変位−トルク変換部41によって反力トルクTzに変換される。また、操舵角θは変位−トルク変換部51によって操舵トルクTdに変換されるとともに、同変換された操舵トルクTdはトルク−横加速度変換部52によって見込み横加速度Gdに変換される。そして、変換された見込み横加速度Gdに基づいて、転舵角変換部53、転舵角補正部61および駆動制御部62により、左右前輪FW1,FW2は見込み横加速度Gdの発生に必要な補正目標転舵角δdaに転舵される。
この場合、変位−トルク変換部41,51により、操舵角θの変化量に対する反力トルクTz、操舵トルクTdの各変化量(ゲイン)は、車速Vに応じて変更される。すなわち、車速Vが大きければ各変化量(ゲイン)が大きくなるように変更され、車速Vが小さければ各変化量(ゲイン)が小さくなるように変更される。したがって、操舵角θに対する見込み横加速度Gdと、同見込み横加速度Gdに基づいて計算される目標転舵角δd(補正目標転舵角δda)の変化量(ゲイン)も車速Vに応じて変更することができる。これにより、車速Vが大きい場合すなわち中高速域においては、操舵装置の操舵特性をクイックな操舵特性とすることができて、車両の運動性能を向上させることができる。一方、車速Vが小さい場合すなわち低速域においては、操舵装置の操舵特性を、操舵角θに対して目標転舵角δd(補正目標転舵角δda)が細かく(滑らかに)変化する操舵特性とすることができる。このため、低速域にて横加速度G(見込み横加速度Gd)を知覚しにくい場合であっても、運転者が車両を容易に旋回させることができ、車両の取り回し性を向上させることができる。また、見込み横加速度Gdが車速Vに依存しない図4に示した変換テーブルに基づいて計算されるため、見込み横加速度Gdは常に運転者の知覚特性に合わせて計算される。したがって、操舵特性が変化する場合であっても、運転者は違和感を覚えることがない。
また、操舵トルクTdは、反力トルクTzと等しいため、反力アクチュエータ13の作用によって運転者が操舵ハンドル11から知覚し得る物理量であるとともに、操舵角θに対して指数関数的に変化するものであるので、運転者はウェーバー・ヘフナーの法則に従った反力を感じながら人間の知覚特性に従って操舵ハンドル11を回動操作できる。また、左右前輪FW1,FW2の転舵によって車両に発生する実横加速度Gも知覚し得る物理量であるとともに、この実横加速度Gは見込み横加速度Gdと等しくなるように制御される。さらに、この見込み横加速度Gdも運転者が入力した操舵角θから計算される操舵トルクTdに対してべき乗関数的(式8を式9に変形することにより操舵角θに対して指数関数的)に変化する。したがって、運転者はウェーバー・ヘフナーの法則に従った横加速度を感じながら人間の知覚特性に従って操舵ハンドル11を回動操作して、車両を旋回させることができる。その結果、運転者は、人間の知覚特性に合わせて操舵ハンドル11を操作できるので、車両の運転が簡単になる。
また、転舵角補正部61は、車両に実際に発生している実横加速度Gが操舵ハンドル11の操舵角θに正確に対応するように目標転舵角δdを補正するので、車両には操舵ハンドル11の操舵角θに正確に対応した実横加速度Gが発生する。その結果、運転者は、人間の知覚特性により正確に合った実横加速度を知覚しながら、操舵ハンドル11を操作できるようになるので、車両の運転がさらに簡単になる。
b.第2実施形態
次に、上記第1実施形態における運動状態量としての横加速度に代えて、ヨーレートを用いた本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態においては、図1に破線で示すように、上記第1実施形態における横加速度センサ34に代えて、運転者が知覚し得る運動状態量である実ヨーレートγを検出するヨーレートセンサ38を備えている。他の構成については上記第1実施形態と同じであるが、電子制御ユニット35にて実行されるコンピュータプログラムは上記第1実施形態の場合と若干異なる。
この第2実施形態においては、電子制御ユニット35にて実行されるコンピュータプログラムが図6の機能ブロック図により示されている。この場合、感覚適合制御部50において、変位−トルク変換部51は上記第1実施形態と同様に機能するが、上記第1実施形態のトルク−横加速度変換部52に代えてトルク−ヨーレート変換部54が設けられている。
このトルク−ヨーレート変換部54は、変位−トルク変換部51にて計算された操舵トルクTdを用いて、運転者が操舵ハンドル11の回動操作により見込んでいる見込みヨーレートγdを、操舵トルクTdの絶対値が正の所定値Tg未満であれば下記式22に従って計算し、操舵トルクTdの絶対値が正の所定値Tg以上であれば下記式23に従って計算する。ここで、式22は上記第1実施形態と同じく操舵トルクTdの一次関数式であって操舵トルクTdが「0」のときに見込みヨーレートγdが「0」となる関数である。また、式23は上記第1実施形態と同じく操舵トルクTdのべき乗関数であり、式22と所定値Tgにて連続的に接続するものである。
γd=b・Td (|Td|<Tg) …式22
γd=C・TdK2 (Tg≦|Td|) …式23
ただし、式22中のbは一次関数の傾きを表す定数であり、式23中のC,K2は,上記第1実施形態と同じく定数である。また、前記式22,23中の操舵トルクTdは前記式4〜6を用いて計算された操舵トルクTdの絶対値を表しているものであり、前記計算した操舵トルクTdが正であれば定数bおよび定数Cを正の値とするとともに、前記計算した操舵トルクTdが負であれば定数bおよび定数Cを前記正の定数bおよび定数Cと同じ絶対値を有する負の値とする。なお、この場合も、前記式22,23の演算に代えて、操舵トルクTdに対する見込みヨーレートγdを記憶した図7に示すような特性の変換テーブルを用いて、見込みヨーレートγdを計算するようにしてもよい。
また、この第2実施形態においても、前記式6に従って車速Vに応じた最大操舵角θmaxが計算されることにより、例えば、運転者が操舵ハンドル11を中立位置から所定の操舵角θz以上に回動操作したときには、前記式5により表される指数関数の操舵角θの変化量に対する操舵トルクTdの変化量(ゲイン)が車速Vに応じて変更される。これにより、変位−トルク変換部51から、車速Vが大きいときには操舵角θに対して大きな操舵トルクTdが供給されるため、同供給された操舵トルクTdを用いて計算される見込みヨーレートγdも大きくなる。このため、中高速走行時において、より大きく発生するヨーレートの特性に対して、運転者が見込む見込みヨーレートγdを同ヨーレートの特性に合わせて、すなわち、運転者の感覚に合わせて計算することができる。
一方、変位−トルク変換部51から、車速Vが小さいときには操舵角θの変化量に対して小さな操舵トルクTdが供給されるため、同供給された操舵トルクTdを用いて計算される見込みヨーレートγdも小さくなる。このため、低速走行時において、より小さく発生するヨーレートの特性に対して、運転者が見込む見込みヨーレートγdを同ヨーレートの特性に合わせて、すなわち、運転者の感覚に合わせて計算することができる。なお、所定値Tg未満においては、運転者は一次関数的に変化する見込みヨーレートγdを知覚する。
また、転舵角変換部55は、見込みヨーレートγdを発生するのに必要な左右前輪FW1,FW2の目標転舵角δdを計算するものであり、図8に示すように車速Vに応じて変化して見込みヨーレートγdに対する目標転舵角δdの変化特性を表すテーブルを有する。このテーブルは、車速Vを変化させながら車両を走行させて、左右前輪FW1,FW2の転舵角δとヨーレートγとを予め実測して収集したデータの集合である。そして、転舵角変換部55は、このテーブルを参照して、前記入力した見込みヨーレートγdと車速センサ33から入力した検出車速Vに対応した目標転舵角δdを計算する。また、前記テーブルに記憶されているヨーレートγ(見込みヨーレートγd)と目標転舵角δdはいずれも正であるが、トルク−ヨーレート変換部54から供給される見込みヨーレートγdが負であれば、出力される目標転舵角δdも負となる。
ここで、トルク−ヨーレート変換部54から供給される見込みヨーレートγdは、上述したように、車速Vに応じて操舵角θの変化量に対する変化量(ゲイン)が変更されて供給される。すなわち、車速Vが大きい場合には、供給される見込みヨーレートγdの操舵角θの変化量に対する変化量(ゲイン)は大きくなり、転舵角変換部55によって計算される目標転舵角δdの変化量(ゲイン)も大きくなる。その結果、この場合においても、中高速域における車両の操舵特性が、操舵ハンドル11の操舵角θの変化に対して左右前輪FW1,FW2が機敏に転舵する操舵特性(クイックな操舵特性)になり、車両の運動性能を向上することができる。一方、車速Vが小さい場合には、供給される見込みヨーレートγdの操舵角θの変化量に対する変化量(ゲイン)は小さくなり、転舵角変換部55によって計算される目標転舵角δdの変化量(ゲイン)も小さくなる。その結果、この場合においても、低速域における車両の操舵特性が、操舵ハンドル11の操舵角θの変化に対して左右前輪FW1,FW2が細かく(滑らかに)転舵する操舵特性になり、車両の旋回をコントロールし易くすなわち車両を取り回し易くできる。また、見込みヨーレートγdが車速Vに依存しない図7に示した変換テーブルに基づいて計算されるため、見込みヨーレートγdは常に運転者の知覚特性に合わせて計算される。したがって、操舵特性が変化する場合であっても、運転者は違和感を覚えることがない。
なお、目標転舵角δdは下記式24に示すように車速Vとヨーレートγの関数であるので、前記テーブルを参照することに代えて、下記式24の演算の実行によっても計算することができる。
δd=L・(1+A・V2)・γd/V …式24
ただし、前記式24においても、Lはホイールベースを示す予め決められた所定値であり、Aは予め決められた所定値である。
この計算された目標転舵角δdは、転舵制御部60の転舵角補正部63に供給される。転舵角補正部63は、トルク−ヨーレート変換部54から見込みヨーレートγdを入力するとともに、ヨーレートセンサ38によって検出された実ヨーレートγをも入力しており、下記式25の演算を実行して、入力した目標転舵角δdを補正して補正目標転舵角δdaを計算する。
δda=δd+K4・(γd−γ) …式25
ただし、係数K4は予め決められた正の定数であり、実ヨーレートγが見込みヨーレートγdに満たない場合には、補正目標転舵角δdaの絶対値が大きくなる側に補正される。また、実ヨーレートγが見込みヨーレートγdを超える場合には、補正目標転舵角δdaの絶対値が小さくなる側に補正される。この補正により、見込みヨーレートγdに必要な左右前輪FW1,FW2の転舵角δがより精度よく確保される。
また、電子制御ユニット35にて実行される他のプログラム処理については上記第1実施形態の場合と同じである。そして、図6の機能ブロック図において、上記第1実施形態の図2と同じ符号を付してその説明を省略する。
そして、上記説明した第2実施形態においても、操舵ハンドル11に対する運転者の操作入力値としての操舵角θは変位−トルク変換部41によって反力トルクTzに変換される。また、操舵角θは変位−トルク変換部51によって操舵トルクTdに変換されるとともに、同変換された操舵トルクTdはトルク−ヨーレート変換部54によって見込みヨーレートγdに変換される。そして、変換された見込みヨーレートγdに基づいて、転舵角変換部55、転舵角補正部63および駆動制御部62により、左右前輪FW1,FW2は見込みヨーレートγdの発生に必要な補正目標転舵角δdaに転舵される。
この場合も、変位−トルク変換部41,51により、操舵角θの変化量に対する反力トルクTz、操舵トルクTdの各変化量(ゲイン)は、車速Vに応じて変更される。すなわち、車速Vが大きければ各変化量(ゲイン)が大きくなるように変更され、車速Vが小さければ各変化量(ゲイン)が小さくなるように変更される。したがって、操舵角θに対する見込みヨーレートγdと、同見込みヨーレートγdに基づいて計算される目標転舵角δd(補正目標転舵角δda)の変化量(ゲイン)も車速Vに応じて変更することができる。これにより、車速Vが大きい場合すなわち中高速域においては、操舵装置の操舵特性をクイックな操舵特性とすることができて、車両の運動性能を向上させることができる。一方、車速Vが小さい場合すなわち低速域においては、操舵装置の操舵特性を、操舵角θに対して目標転舵角δd(補正目標転舵角δda)が細かく(滑らかに)変化する操舵特性とすることができる。このため、低速域にてヨーレートγ(見込みヨーレートγd)を知覚しにくい場合であっても、運転者が車両を容易に旋回させることができ、車両の取り回し性を向上させることができる。また、見込みヨーレートγdが車速Vに依存しない図7に示した変換テーブルに基づいて計算されるため、見込みヨーレートγdは常に運転者の知覚特性に合わせて計算される。したがって、操舵特性が変化する場合であっても、運転者は違和感を覚えることがない。
そして、この場合も、操舵トルクTdは、反力トルクTzと等しいため、反力アクチュエータ13の作用によって運転者が操舵ハンドル11から知覚し得る物理量であるとともに、操舵角θに対して指数関数的に変化するものであるので、運転者はウェーバー・ヘフナーの法則に従った反力を感じながら人間の知覚特性に従って操舵ハンドル11を回動操作できる。
また、左右前輪FW1,FW2の転舵によって車両に発生するヨーレートγも知覚し得る物理量であるとともに、このヨーレートγは見込みヨーレートγdに等しくなるように制御され、さらに、この見込みヨーレートγdも操舵角θから計算される操舵トルクTdに対してべき乗関数的(上記第1実施形態の式8から式9への変形と同様に式23を変形することにより操舵角θに対して指数関数的)に変化する。したがって、運転者はウェーバー・ヘフナーの法則に従ったヨーレートを感じながら人間の知覚特性に従って操舵ハンドル11を回動操作して、車両を旋回させることができる。その結果、運転者は、上記第1実施形態の場合と同様に、人間の知覚特性に合わせて操舵ハンドル11を操作できるので、車両の運転が簡単になる。
また、転舵角補正部63は、車両に実際に発生している実ヨーレートγが操舵ハンドル11の操舵角θに正確に対応した実ヨーレートγが発生する。その結果、運転者は、人間の知覚特性により正確に合ったヨーレートを知覚しながら、操舵ハンドル11を操作できるようになるので、車両の運転がより簡単になる。さらに、具体的な作用効果についても、上記第1実施形態の横加速度をヨーレートに換えた点を除けば、同じである。
c.第3実施形態
次に、上記第1実施形態における運動状態量としての横加速度に代えて、旋回曲率を用いた本発明の第3実施形態について説明する。この第3実施形態においても、上記第1実施形態と同様に図1に示すように構成されている。ただし、電子制御ユニット35にて実行されるコンピュータプログラムが上記第1実施形態の場合とは若干異なる。
この第3実施形態においては、電子制御ユニット35にて実行されるコンピュータプログラムが図9の機能ブロック図により示されている。この場合、感覚適合制御部50において、変位−トルク変換部51は上記第1実施形態と同様に機能するが、上記第1実施形態のトルク−横加速度変換部52に代えてトルク−旋回曲率変換部56が設けられている。
このトルク−曲率変換部56は、変位−トルク変換部51にて計算された操舵トルクTdを用いて、運転者が操舵ハンドル11の回動操作により見込んでいる見込み旋回曲率ρdを、操舵トルクTdの絶対値が正の所定値Tg未満であれば下記式26に従って計算し、操舵トルクTdの絶対値が正の小さな所定値Tg以上であれば下記式27に従って計算する。ここで、式26は上記第1実施形態と同じく操舵トルクTdの一次関数であって操舵トルクTdが「0」のときに見込み旋回曲率ρdが「0」となる関数である。また、式27は、上記各実施形態と同じく操舵トルクTdのべき乗関数であり、式26と所定値Tgにて連続的に接続するものである。
ρd=b・Td (|Td|<Tg) …式26
ρd=C・TdK2 (Tg≦|Td|) …式27
ただし、式26中のbは一次関数の傾きを表す定数であり、式27中のC,K2は,上記第1実施形態と同じく定数である。また、この場合も、前記式26,27中の操舵トルクTdは上記式4〜6を用いて計算した操舵トルクTdの絶対値を表しているものであり、前記計算した操舵トルクTdが正であれば定数bおよび定数Cを正の値とするとともに、前記計算した操舵トルクTdが負であれば定数bおよび定数Cを前記正の定数bおよび定数Cと同じ絶対値を有する負の値とする。なお、この場合も、前記式26,27の演算に代えて、操舵トルクTdに対する見込み旋回曲率ρdを記憶した図10に示すような特性の変換テーブルを用いて、見込み旋回曲率ρdを計算するようにしてもよい。
また、この第3実施形態においても、前記式6に従って車速Vに応じた最大操舵角θmaxが計算されることにより、例えば、運転者が操舵ハンドル11を中立位置から所定の操舵角θz以上に回動操作したときには、前記式5により表される指数関数の操舵角θの変化量に対する操舵トルクTdの変化量(ゲイン)が車速Vに応じて変更される。これにより、変位−トルク変換部51から、車速Vが大きいときには操舵角θに対して大きな操舵トルクTdが供給されるため、同供給された操舵トルクTdを用いて計算される見込み旋回曲率ρdも大きくなる。このため、中高速走行時において、より大きくなる旋回曲率の特性に対して、運転者が見込む見込み旋回曲率ρdを同旋回曲率の特性に合わせて、すなわち、運転者の感覚に合わせて計算することができる。
一方、変位−トルク変換部51から、車速Vが小さいときには操舵角θの変化量に対して小さな操舵トルクTdが供給されるため、同供給された操舵トルクTdを用いて計算される見込み旋回曲率ρdも小さくなる。このため、低速走行時において、より小さくなる旋回曲率の特性に対して、運転者が見込む見込み旋回曲率ρdを同旋回曲率の特性に合わせて、すなわち、運転者の感覚に合わせて計算することができる。なお、所定値Tg未満においては、運転者は一次関数的に変化する見込み旋回曲率ρdを知覚する。
また、転舵角変換部57は、見込み旋回曲率ρdを発生するのに必要な左右前輪FW1,FW2の目標転舵角δdを計算するものであり、図11に示すように車速Vに応じて変化して見込み旋回曲率ρdに対する目標転舵角δdの変化特性を表すテーブルを有する。このテーブルは、車速Vを変化させながら車両を走行させて、左右前輪FW1,FW2の転舵角δと旋回曲率ρとを予め実測して収集したデータの集合である。そして、転舵角変換部57は、このテーブルを参照して、前記入力した見込み旋回曲率ρdと車速センサ33から入力した検出車速Vとに対応した目標転舵角δdを計算する。また、前記テーブルに記憶されている旋回曲率ρ(見込み旋回曲率ρd)と目標転舵角δdはいずれも正であるが、トルク−旋回曲率変換部56から供給される見込み旋回曲率ρdが負であれば、出力される目標転舵角δdも負となる。
ここで、トルク−旋回曲率変換部56から供給される見込み旋回曲率ρdは、上述したように、車速Vに応じて操舵角θの変化量に対する変化量(ゲイン)が変更されて供給される。すなわち、車速Vが大きい場合には、供給される見込み旋回曲率ρdの操舵角θの変化量に対する変化量(ゲイン)は大きくなり、転舵角変換部57によって計算される目標転舵角δdの変化量(ゲイン)も大きくなる。その結果、この場合においても、中高速域における車両の操舵特性が、操舵ハンドル11の操舵角θの変化に対して左右前輪FW1,FW2が機敏に転舵する操舵特性(クイックな操舵特性)になり、車両の運動性能を向上することができる。一方、車速Vが小さい場合には、供給される見込み旋回曲率ρdの操舵角θに対する変化量(ゲイン)は小さくなり、転舵角変換部57によって計算される目標転舵角δdの変化量(ゲイン)も小さくなる。その結果、この場合においても、低速域における車両の操舵特性が、操舵ハンドル11の操舵角θの変化に対して左右前輪FW1,FW2が細かく(滑らかに)転舵する操舵特性になり、車両の旋回をコントロールし易くすなわち車両を取り回し易くできる。また、見込み旋回曲率ρdが車速Vに依存しない図10に示した変換テーブルに基づいて計算されるため、見込み旋回曲率ρdは常に運転者の知覚特性に合わせて計算される。したがって、操舵特性が変化する場合であっても、運転者は違和感を覚えることがない。
なお、目標転舵角δdは下記式28に示すように車速Vと旋回曲率ρの関数であるので、前記テーブルを参照することに代えて、下記式28の演算の実行によっても計算することができる。
δd=L・(1+A・V2)・ρd …式28
ただし、前記式28においても、Lはホイールベースを示す予め決められた所定値であり、Aは予め決められた所定値である。
この計算された目標転舵角δdは、転舵制御部60の転舵角補正部64に供給される。転舵角補正部64は、トルク−旋回曲率変換部56から見込み旋回曲率ρdを入力するとともに、旋回曲率計算部65から実旋回曲率ρも入力する。旋回曲率計算部65は、横加速度センサ34によって検出された横加速度Gと、または、ヨーレートセンサ38によって検出されたヨーレートγと、車速センサ33によって検出された車速Vとを用いて、下記式29の演算の実行により実旋回曲率ρを計算して転舵角補正部64に出力する。
ρ=G/V2またはρ=γ/V …式29
そして、転舵角補正部64は、下記式30の演算を実行して、入力した目標転舵角δdを補正して補正目標転舵角δdaを計算する。
δda=δd+K5・(ρd−ρ) …式30
ただし、係数K5は予め決められた正の定数であり、実旋回曲率ρが見込み旋回曲率ρに満たない場合には、補正目標転舵角δdaの絶対値が大きくなる側に補正される。また、実旋回局率ρが見込み旋回曲率ρdを超える場合には、補正目標転舵角δdaの絶対値が小さくなる側に補正される。この補正により、見込み旋回曲率ρdに必要な左右前輪FW1,FW2の転舵角がより精度よく確保される。
また、電子制御ユニット35にて実行される他のプログラム処理については上記第1実施形態の場合と同じである。そして、図9の機能ブロック図において、上記第1実施形態の図2と同一の符号を付してその説明を省略する。
そして、上記説明した第3実施形態においても、操舵ハンドル11に対する運転者の操作入力値としての操舵角θは変位−トルク変換部41によって反力トルクTzに変換される。また、操舵角θは変位−トルク変換部51によって操舵トルクTdに変換されるとともに、同変換された操舵トルクTdはトルク−旋回曲率変換部56によって見込み旋回曲率ρdに変換される。そして、変換された見込み旋回曲率ρdに基づいて、転舵角変換部57,転舵角補正部64および駆動制御部62により、左右前輪FW1,FW2は見込み旋回曲率ρdの発生に必要な補正目標転舵角δdaに転舵される。
この場合も、変位−トルク変換部41,51により、操舵角θの変化量に対する反力トルクTz、操舵トルクTdの各変化量(ゲイン)は、車速Vに応じて変更される。すなわち、車速Vが大きければ各変化量(ゲイン)が大きくなるように変更され、車速Vが小さければ各変化量(ゲイン)が小さくなるように変更される。したがって、操舵角θに対する見込み旋回曲率ρdと、同見込み旋回曲率ρdに基づいて計算される目標転舵角δd(補正目標転舵角δda)の変化量(ゲイン)も車速Vに応じて変更することができる。これにより、車速Vが大きい場合すなわち中高速域においては、操舵装置の操舵特性をクイックな操舵特性とすることができて、車両の運動性能を向上させることができる。一方、車速Vが小さい場合すなわち低速域においては、操舵装置の操舵特性を、操舵角θに対して目標転舵角δd(補正目標転舵角δda)が細かく(滑らかに)変化する操舵特性とすることができる。このため、低速域にて、運転者が車両を容易に旋回させることができ、車両の取り回し性を向上させることができる。また、見込み旋回曲率ρdが車速Vに依存しない図10に示した変換テーブルに基づいて計算されるため、見込み旋回曲率ρdは常に運転者の知覚特性に合わせて計算される。したがって、操舵特性が変化する場合であっても、運転者は違和感を覚えることがない。
そして、この場合も、操舵トルクTdは、反力トルクTzと等しいため、反力アクチュエータ13の作用によって運転者が操舵ハンドル11から知覚し得る物理量であるとともに、操舵角θに対して指数関数的に変化するものであるので、運転者はウェーバー・ヘフナーの法則に従った反力を感じながら人間の知覚特性に従って操舵ハンドル11を回動操作できる。
また、左右前輪FW1,FW2の転舵によって車両に発生する旋回曲率ρも知覚し得る物理量であるとともに、この旋回曲率ρは見込み旋回曲率ρdに等しくなるように制御され、さらに、この見込み旋回曲率ρdも操舵角θから計算される操舵トルクTdに対してべき乗関数的(上記第1実施形態の式8から式9への変形と同様に式27を変形することにより操舵角θに対して指数関数的)に変化する。したがって、運転者はウェーバー・ヘフナーの法則に従ったヨーレートを感じながら人間の知覚特性に従って操舵ハンドル11を回動操作して、車両を旋回させることができる。その結果、運転者は、上記第1実施形態の場合と同様に、人間の知覚特性に合わせて操舵ハンドル11を操作できるので、車両の運転が簡単になる。
また、転舵角補正部64は、車両に実際に発生している実旋回曲率ρが操舵ハンドル11の操舵角θに正確に対応した実旋回曲率ρで旋回する。その結果、運転者は、人間の知覚特性にさらに正確に合った旋回曲率を知覚しながら、操舵ハンドル11を操作できるようになるので、車両の運転がさらに簡単になる。さらに、具体的な作用効果についても、上記第1実施形態の横加速度を旋回曲率に換えた点を除けば、同じである。
次に、操舵ハンドル11の操作入力値として操舵トルクTを利用するようにした上記第1、第2および第3実施形態の変形例について説明する。この変形例においては、図1に破線で示すように、操舵入力軸12に組み付けられて操舵ハンドル11に入力された操舵トルクを検出するとともに、同検出された操舵トルクを車速Vに応じて検出した操舵トルクの変化量に対してその変化量(ゲイン)を変更した操舵トルクTとして出力する操舵トルクセンサ39を備えている。他の構成については上記第1、第2および第3実施形態と同じであるが、電子制御ユニット35にて実行されるコンピュータプログラムは上記第1、第2および第3実施形態の場合と若干異なる。なお、この変形例の説明においては、上記第1実施形態を代表的に例示して説明するが、第2および第3実施形態においても同様に構成することにより同様の効果を得ることができる。
この変形例の場合には、前記コンピュータプログラムを表す図2の機能ブロック図において、変位−トルク変換部51は設けられておらず、トルク−横加速度変換部52が、上記第1実施形態における変位−トルク変換部51にて計算される操舵トルクTdに代えて、操舵トルクセンサ39によって検出された操舵トルクTを用いた式7,8の演算の実行により見込み横加速度Gdを計算する。このとき、出力される操舵トルクTは、入力された操舵トルクに対して、前記式4,5および式6と同様の計算を実行して出力される。したがって、車速Vが大きいときには検出した操舵トルクの変化量に対して大きな変化量(ゲイン)で操舵トルクTが出力され、車速Vが小さいときには検出した操舵トルクの変化量に対して小さな変化量(ゲイン)で操舵トルクTが出力される。なお、この場合も、式7,8の演算の実行に代え、図4に示す特性を表すテーブルを用いて見込み横加速度Gdを計算するようにしてもよい。また、電子制御ユニット35にて実行される他のプログラム処理については上記第1実施形態の場合と同じである。
この変形例によれば、操舵ハンドル11に対する運転者の操作入力値としての操舵トルクTがトルク−横加速度変換部52によって見込み横加速度Gdに変換され、転舵角変換部53、転舵角補正部61および駆動制御部62により、左右前輪FW1,FW2は見込み横加速度Gdの発生に必要な補正目標転舵角δdaに転舵される。この場合においては、検出した操舵トルクの変化量に対する操舵トルクTの変化量(ゲイン)は、車速Vに応じて変更して出力される。すなわち、車速Vが大きければ変化量(ゲイン)が大きくなるように変更され、車速Vが小さければ変化量(ゲイン)が小さくなるように変更される。これにより、操舵トルクTに対する見込み横加速度Gdと、同見込み横加速度Gdに基づいて計算される目標転舵角δd(補正目標転舵角δda)の変化量(ゲイン)も車速Vに応じて変更することができる。したがって、この変形例においても、上記第1、第2および第3実施形態の場合と同様に、車速Vが大きい場合すなわち中高速域においては、操舵装置の操舵特性をクイックな操舵特性とすることができて、車両の運動性能を向上させることができる。一方、車速Vが小さい場合すなわち低速域においては、操舵装置の操舵特性を、操舵角θに対して目標転舵角δd(補正目標転舵角δda)が細かく(滑らかに)変化する操舵特性とすることができる。このため、低速域にて、運転者が車両を容易に旋回させることができ、車両の取り回し性を向上させることができる。また、見込み横加速度Gdが車速Vに依存しない図4に示した変換テーブルに基づいて計算されるため、見込み横加速度Gdは常に運転者の知覚特性に合わせて計算される。したがって、操舵特性が変化する場合であっても、運転者は違和感を覚えることがない。
そして、この場合も、操舵トルクTは運転者が操舵ハンドル11から知覚し得る物理量であるとともに、操舵トルクTに対して見込み横加速度Gdはべき乗関数的(式8を式9に変形することにより指数関数的)に変化するものであるので、運転者はウェーバー・ヘフナーの法則に従った反力を感じながら人間の知覚特性に従って操舵ハンドル11を回動操作できる。したがって、この変形例においても、上記第1、第2および第3実施形態の場合と同様に、運転者はウェーバー・ヘフナーの法則に従った横加速度を感じながら人間の知覚特性に従って操舵ハンドル11を回動操作して、車両を旋回させることができるので、上記第1、第2および第3実施形態の場合と同様な効果が期待される。
さらに、上記第1、第2および第3実施形態による車両の操舵制御と、前記変形例による車両の操舵制御とを切り替え可能にしてもよい。すなわち、操舵角センサ31と操舵トルクセンサ39の両方を備え、例えば、上記第1実施形態のように変位−トルク変換部51にて計算される操舵トルクTdを用いて見込み横加速度Gdを計算する場合と、操舵トルクセンサ39によって出力された操舵トルクTを用いて見込み横加速度Gdを計算する場合とを切り替えて利用可能とすることもできる。この場合、前記切り替えを、運転者の意思により、または車両の車速Vに応じて自動的に切り替えるようにするとよい。この場合においても、操舵角θに基づいて計算される操舵トルクTdまたは操舵トルクセンサ39から出力された操舵トルクTは、トルク−横加速度変換部52によって、例えば、図4に示す変換テーブルに基づいて見込み横加速度Gdが計算されるため、前記切り替えに伴う違和感を覚えることがない。
また、上記第1、第2および第3実施形態においては、操舵角センサ31によって検出された操舵角θを、その検出時点から位相差を有することなく、トルク−横加速度変換部52に出力するように実施した。これに対して、例えば、時定数Tsを設定し、同時定数Tsに基づいて計算される位相差を有して検出された操舵角θを出力するようにしてもよい。この場合、設定される時定数Tsは、車速Vに対して可変とされており、車速Vの増大に伴って小さな値とされ、車速Vの減少に伴って大きな値とされる。これにより、車速Vが大きいときには位相差を小さく計算し、車速Vが小さいときには位相差を大きく計算することができる。したがって、運転者によって操舵ハンドル11が回動された時点から、時定数Tsに基づいて決定される位相差を有して操舵角θがトルク−横加速度変換部52に出力されて操舵トルクTdが計算される。その結果、例えば、運転者がブレーキ操作を行い車速Vが急激に変化している状況においても、運転者が操舵ハンドル11を回動操作した時点から位相差を有して左右前輪FW1,FW2が転舵制御されるようになる。このため、車速Vの変化に伴って操舵特性が急激に変更されることをより効果的に防止でき、運転者が違和感を覚えることがない。
さらに、本発明の実施にあたっては、上記第1ないし第3実施形態及びそれらの変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、上記第1ないし第3実施形態及びそれらの変形例においては、車両を操舵するために回動操作される操舵ハンドル11を用いるようにした。しかし、これに代えて、例えば、直線的に変位するジョイスティックタイプの操舵ハンドルを用いてもよいし、その他、運転者によって操作されるとともに車両に対する操舵を指示できるものであれば、いかなるものを用いてもよい。
また、上記第1ないし第3実施形態及びそれらの変形例においては、転舵アクチュエータ21を用いて転舵出力軸22を回転させることにより、左右前輪FW1,FW2を転舵するようにした。しかし、これに代えて、転舵アクチュエータ13を用いてラックバー23をリニアに変位させることにより、左右前輪FW1,FW2を転舵するようにしてもよい。
さらに、上記第1ないし第3実施形態及びそれらの変形例においては、人間が知覚し得る車両の運動状態量として、横加速度、ヨーレートおよび旋回曲率をそれぞれ単独で用いるようにした。しかし、これらの車両の運動状態量を、運転者による選択操作により切り換え、または車両の走行状態に応じて自動的に切り換えて、車両の操舵制御を行なうようにしてもよい。車両の走行状態に応じて自動的に切り換える場合、例えば、車両の低速走行時には前記運動状態量として旋回曲率を用い、車両の中速走行時には前記運動状態量としてヨーレートを用い、かつ車両の高速走行時には前記運動状態量として横加速度を用いるようにする。これによれば、車両の走行状態に応じて適切な車両の操舵制御がなされ、車両の運転がより易しくなる。
本発明の第1ないし第3実施形態に共通の車両の操舵装置の概略図である。 本発明の第1実施形態に係り、図1の電子制御ユニットにて実行されるコンピュータプログラム処理を機能的に表す機能ブロック図である。 操舵角と操舵トルクの関係を示すグラフである。 操舵トルクと見込み横加速度の関係を示すグラフである。 見込み横加速度と目標転舵角の関係を示すグラフである。 本発明の第2実施形態に係り、図1の電子制御ユニットにて実行されるコンピュータプログラム処理を機能的に表す機能ブロック図である。 操舵トルクと見込みヨーレートの関係を示すグラフである。 見込みヨーレートと目標転舵角の関係を示すグラフである。 本発明の第3実施形態に係り、図1の電子制御ユニットにて実行されるコンピュータプログラム処理を機能的に表す機能ブロック図である。 操舵トルクと見込み旋回曲率の関係を示すグラフである。 見込み旋回曲率と目標転舵角の関係を示すグラフである。
符号の説明
FW1,FW2…前輪、11…操舵ハンドル、12…操舵入力軸、13…反力アクチュエータ、21…転舵アクチュエータ、22…転舵出力軸、31…操舵角センサ、32…転舵角センサ、33…車速センサ、34…横加速度センサ、35…電子制御ユニット、38…操舵トルクセンサ、39…ヨーレートセンサ、40…反力制御部、50…感覚適合制御部、51…変位−トルク変換部、52…トルク−横加速度変換部、53,55,57…転舵角変換部、54…トルク−ヨーレート変換部、56…トルク−旋回曲率変換部、60…転舵制御部、61,63,64…転舵角補正部。

Claims (9)

  1. 車両を操舵するために運転者によって操作される操舵ハンドルと、転舵輪を転舵するための転舵アクチュエータと、前記操舵ハンドルの操作に応じて前記転舵アクチュエータを駆動して転舵輪を転舵制御する転舵制御装置とを備えたステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、前記転舵制御装置を、
    前記操舵ハンドルに対する運転者の操作入力値を検出する操作入力値検出手段と、
    車両の車速を検出する車速検出手段と、
    前記検出された車速に応じて変更される所定の関係に基づいて、前記検出された操作入力値を前記転舵輪の転舵制御に関する制御操作力に変換する制御操作力変換手段と、
    車両の旋回に関係して運転者が知覚し得る車両の運動状態を表していて前記変換された制御操作力と予め定めた指数関係またはべき乗関係にある車両の見込み運動状態量を、前記変換された制御操作力を用いて計算する運動状態量計算手段と、
    前記計算された見込み運動状態量で車両が運動するために必要な前記転舵輪の転舵角を、前記計算された見込み運動状態量を用いて計算する転舵角計算手段と、
    前記計算された転舵角に応じて前記転舵アクチュエータを制御して前記転舵輪を同計算された転舵角に転舵する転舵制御手段とで構成したことを特徴とするステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。
  2. 前記所定の関係は、前記検出された車速の増大に伴って前記検出された操作入力値に対する前記制御操作力を増大し、前記検出された車速の減少に伴って前記検出された操作入力値に対する前記制御操作力を減少する関係である請求項1に記載したステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。
  3. 前記所定の関係は、前記検出された車速の増大に伴って前記検出された操作入力値の変化量に対する前記制御操作力の変化量の比を大きくし、前記検出された車速の減少に伴って前記検出された操作入力値の変化量に対する前記制御操作力の変化量の比を小さくする関係である請求項1に記載したステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。
  4. 前記制御操作力変換手段は、前記検出された車速の増大に伴って前記操作入力値の検出時点から前記制御操作力の変換開始時点まで間の位相差を小さくし、前記検出された車速の減少に伴って前記操作入力値の検出時点から前記制御操作力の変換開始時点まで間の位相差を大きくして、前記操作入力値を前記制御操作力に変更する請求項1に記載したステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。
  5. 請求項1に記載したステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、
    前記操作入力値検出手段を、前記操舵ハンドルの変位量を検出する変位量センサで構成するとともに、
    前記制御操作力変換手段は、前記所定に関係に基づいて、前記検出された変位量を前記制御操舵力に変換することを特徴とするステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。
  6. 請求項1に記載したステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、
    前記操作入力値検出手段を、前記操舵ハンドルに付与される操作力を検出する操作力センサで構成するとともに、
    前記制御操作力計算手段は、前記所定の関係に基づいて、前記検出された操作力を前記制御操作力に変換することを特徴とするステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。
  7. 請求項1ないし請求項6のうちのいずれ一つに記載したステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、
    前記見込み運動状態量は、車両の横加速度、ヨーレートおよび旋回曲率のうちのいずれか一つであるステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。
  8. 請求項1ないし請求項7のうちのいずれ一つに記載したステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、さらに、
    前記計算した見込み運動状態量と同一種類であって車両の実際の運動状態を表す実運動状態量を検出する運動状態量検出手段と、
    前記計算された見込み運動状態量と前記検出された実運動状態量との差に応じて前記計算された転舵角を補正する補正手段とを設けたことを特徴とするステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。
  9. 請求項1ないし請求項8のうちのいずれ一つに記載したステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、さらに、
    前記操舵ハンドルの操作に対して反力を付与する反力装置を設けたことを特徴とするステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。
JP2004193245A 2004-06-30 2004-06-30 車両の操舵装置 Expired - Lifetime JP4176057B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004193245A JP4176057B2 (ja) 2004-06-30 2004-06-30 車両の操舵装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004193245A JP4176057B2 (ja) 2004-06-30 2004-06-30 車両の操舵装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2006015811A JP2006015811A (ja) 2006-01-19
JP4176057B2 true JP4176057B2 (ja) 2008-11-05

Family

ID=35790446

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004193245A Expired - Lifetime JP4176057B2 (ja) 2004-06-30 2004-06-30 車両の操舵装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4176057B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7488632B2 (ja) * 2019-02-14 2024-05-22 日立Astemo株式会社 操舵制御装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2006015811A (ja) 2006-01-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4231416B2 (ja) 車両の操舵装置
JP5126357B2 (ja) 車両の操舵装置
JP4280682B2 (ja) 車両の操舵装置
JP5001591B2 (ja) 車両の操舵装置
JP4280678B2 (ja) 車両の操舵装置
JP4231422B2 (ja) 車両の操舵装置
JP4456018B2 (ja) 車両の操舵装置
JP4276609B2 (ja) 車両の操舵装置
JP4372577B2 (ja) 車両の操舵装置
JP2007326497A (ja) 車両の操舵装置
JP4799272B2 (ja) 車両の操舵装置
JP4446871B2 (ja) 車両の操舵装置
JP4280669B2 (ja) 車両の操舵装置
JP4176057B2 (ja) 車両の操舵装置
JP4176042B2 (ja) 車両の操舵装置
JP4280695B2 (ja) 車両の操舵装置
JP4231430B2 (ja) 車両の操舵装置
JP5105184B2 (ja) 車両用操舵装置
JP4231437B2 (ja) 車両の操舵装置
JP2006036060A (ja) 車両の操舵装置
JP2007313962A (ja) 車両の操舵装置
JP2005219686A (ja) 車両の操舵装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060802

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20080731

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20080813

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20080819

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110829

Year of fee payment: 3

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 4176057

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110829

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120829

Year of fee payment: 4

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120829

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130829

Year of fee payment: 5

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

EXPY Cancellation because of completion of term