JP4231437B2 - 車両の操舵装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両を操舵するために運転者によって操作される操舵ハンドルと、転舵輪を転舵するための転舵アクチュエータと、同操舵ハンドルの操作に対して反力を付与する反力アクチュエータと、操舵ハンドルの操作に応じて転舵アクチュエータを駆動制御して転舵輪を転舵する転舵制御装置とを備えたステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置に関する。
近年、この種のステアリングバイワイヤ方式を採用した操舵装置の開発は、積極的に行われるようになった。そして、例えば下記特許文献1は、操舵角および車速を検出し、操舵角の増加に従って減少するとともに車速の増加に従って増加する伝達比を計算し、この伝達比で操舵角を除算することにより前輪の転舵角(ラック軸の変位量)を計算して、同計算した転舵角に前輪を転舵するようにした操舵装置が示されている。また、この操舵装置においては、検出ハンドル操舵角を時間微分した操舵速度に応じて前記計算した転舵角を補正することにより、前輪の転舵応答性・追従性を高めるようにしている。さらに、検出車速および検出ハンドル操舵角を用いて目標ヨーレートを計算し、この計算した目標ヨーレートと検出した実ヨーレートとの差に応じて前記計算した転舵角を補正することにより、車両の挙動状態を考慮した転舵制御を実現するようになっている。
また、下記特許文献2には、操舵トルクおよびハンドル操舵角を検出し、操舵トルクおよびハンドル操舵角の増加に従って増加する2つの転舵角をそれぞれ計算し、これらの計算した両転舵角を加算した転舵角に前輪を転舵するようにした転舵装置が示されている。この操舵装置においては、車速も検出し、この検出車速により前記両転舵角を補正して、転舵特性を車速に応じて変更するようになっている。
しかしながら、上記従来の装置のいずれにおいても、車両を操舵するための運転者による操舵ハンドルに対する操作入力値である操舵角および操舵トルクを検出し、これらの検出した操舵角および操舵トルクを用いて前輪の転舵角を直接的に計算して、この計算した転舵角に前輪を転舵するようにしている。しかし、これらの前輪の転舵制御は、従前の操舵ハンドルと転舵輪との機械的な連結を外してはいるものの、操舵ハンドルの操作に対する前輪の操舵の応答性としては、操舵ハンドルの操作位置または操作力に対応させて前輪の転舵角を決定するという基本的な技術思想は全く同じであり、これらの転舵方法では、人間の感覚特性に対応して前輪の転舵角が決定されていないので、車両の運転操作が難しかった。
すなわち、上記従来の装置においては、運転者が知覚し得ない転舵角が操舵ハンドルの操作に対応させて直接的に決定され、同転舵角に応じた前輪の転舵によって車両が旋回する。そして、運転者はこの車両の旋回に起因した車両の横加速度、ヨーレートおよび旋回曲率を触覚または視覚により感じ取り、操舵ハンドルの操作にフィードバックして車両を所望の態様で旋回させていた。言い換えれば、運転者による操舵ハンドルの操作に対する前輪の転舵角は人間の知覚し得ない物理量であるので、運転者の操舵操作に対して直接的に決定される転舵角は運転者の知覚特性に合わせて決められたものではなく、これが車両の運転を難しくしていた。
また、上記従来の装置においては、検出車速および検出ハンドル操舵角を用いて計算した目標ヨーレートと、検出した実ヨーレートとの差に応じて決定転舵角を補正するようにしているが、これは車両の挙動状態を考慮した転舵角の単なる補正であって、操舵ハンドルの操作により運転者が知覚するであろうヨーレートに応じて転舵角を決定しているわけではない。したがって、この場合も、運転者の操舵操作に対して決定される転舵角は運転者の知覚特性に合わせて決められたものではなく、車両の運転を難しくしていた。
さらに、上記従来の装置においては、運転者が所定量だけ操舵した操舵ハンドルから手を離した場合には、転舵輪がセルフアライニングトルクなどにより中立位置(直進走行位置)へ復帰する。このとき、転舵輪が路面などから反力を受けている場合には、その反力により、転舵輪が急激に直進走行位置方向へ転舵し、この転舵に応答して操舵ハンドルも中立位置方向へ急激に回動することによって、車両に大きな揺れが発生する場合がある。これに対し、例えば、下記特許文献3、特許文献4および特許文献5には、運転者が操舵ハンドルから手を放した場合であっても操舵ハンドルの急回転を防止する車両用操舵装置が示されている。これら従来の装置によれば、運転者が操舵ハンドルに付与する操作トルクに基づき、運転者が操舵ハンドルから手を放しているか否かを判定する。そして、運転者が手を放しているときには、操舵ハンドルを中立位置へ戻すときに操舵ハンドルの回動を緩やかに制御して戻すようになっている。これにより、操舵ハンドルの戻し操作時における転舵輪の急激な転舵を防止するようになっている。また、下記特許文献6に示した操舵装置においては、運転者の操舵ハンドル操作速度(送り速度)に応じて、操舵ハンドルの戻し速度を適性に制御するようになっている。これによっても、操舵ハンドルの戻し操作時における転舵輪の急激な転舵を防止するようになっている。
このように、特に、ステアリングバイワイヤ方式の操舵装置においては、運転をやさしくするとともに、車両の走行時において運転者が意図しない挙動を排除して快適な操舵特性が得られることが望まれている。
特開2000−85604号公報 特開平11−124047号公報 特開平10−230861号公報 特開平10−310073号公報 特開2002−37111号公報 特開平10−230861号公報
本発明者等は、上記問題に対処するために、運転者による操舵ハンドルの操作に対して、人間の知覚特性に合わせて車両を操舵することができる車両の操舵装置の研究に取り組んだ。このような人間の知覚特性に関し、ウェーバー・ヘフナー(Weber-Fechner)の法則によれば、人間の感覚量は与えられた刺激の物理量の対数に比例するといわれている。言い換えれば、人間の操作量に対して人間に与えられる刺激の物理量を指数関数的またはべき乗関数的に変化させれば、操作量と物理量との関係を人間の知覚特性に合わせることができる。本発明者等は、このウェーバー・ヘフナーの法則を車両の操舵装置に適用し、次のようなことを発見した。
車両の運転にあたっては、操舵ハンドルの操作によって車両は旋回し、この車両の旋回によって横加速度、ヨーレート、旋回曲率などの車両の運動状態量が変化し、運転者はこの車両の運動状態量を触覚および視覚により感じ取るものである。したがって、前記操舵ハンドルに対する運転者の操作に対して、運転者が知覚し得る車両の運動状態量を指数関数的またはべき乗関数的に変化させるようにすれば、運転者の操舵ハンドルの操作に対して運転者の知覚特性に合わせて車両を運転操作できることになる。
本発明は、上記発見に基づくもので、その目的は、運転者による操舵ハンドルの操作に対して、人間の知覚特性に合わせて車両を操舵させることにより、車両の運転をやさしくするとともに、操舵ハンドルの戻し操作時における車両の挙動を安定させる車両の操舵装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、車両を操舵するために運転者によって操作される操舵ハンドルと、同操舵ハンドルの操作に対して反力を付与する反力アクチュエータと、転舵輪を転舵するための転舵アクチュエータと、前記操舵ハンドルの操作に応じて前記転舵アクチュエータを駆動制御して転舵輪を転舵する転舵制御装置とを備えたステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、前記転舵制御装置は、前記操舵ハンドルの変位量を検出する変位量センサと、前記検出された変位量を前記操舵ハンドルに付与される操作力に変換する操作力変換手段と、車両の旋回に関係して運転者が知覚し得る車両の運転状態を表していて、前記運動状態量に関する予め決められたウェーバー比を前記操作力に関する予め決められたウェーバー比で除算した値を指数とする前記操作力のべき乗関数として定義される車両の見込み運動状態量を、前記変換された操作力を用いて計算する運動状態量計算手段と、前記計算された見込み運動状態量で車両が運動するために必要な前記転舵輪の転舵角を、前記計算された見込み運動状態量を用いて計算する転舵角計算手段と、前記計算された転舵角に応じて前記転舵アクチュエータを制御して前記転舵輪を同計算された転舵角に転舵する転舵制御手段と、前記反力アクチュエータの作動を制御して前記操舵ハンドルを所定の角速度によって前記中立位置方向へ回動させる反力アクチュエータ制御手段とを備えていることにある。
この場合、前記変位量センサ及び操作力変換手段に代えて、前記操舵ハンドルに付与される操作力を検出する操作力センサを備え、前記運動状態量計算手段が、前記検出された操作力を用いて車両の見込み運動状態量を計算するようにしてもよい。
この場合、さらに、前記所定の角速度によって前記操舵ハンドルを前記中立位置方向へ回動させるための戻り反力を計算する戻り反力計算手段を備え、前記反力アクチュエータ制御手段は、前記戻り反力計算手段によって計算された戻り反力を前記操舵ハンドルに付与して、前記操舵ハンドルを前記中立位置方向へ回動させるとよい。
また、前記見込み運動状態量は、車両の横加速度、ヨーレートおよび旋回曲率のうちのいずれか一つであるとよい。
上記のように構成した本発明においては、まず、操舵ハンドルに対する運転者の操作が、車両の旋回に関係して運転者が知覚し得る車両の運動状態を表していて、前記運動状態量に関する予め決められたウェーバー比を前記操作力に関する予め決められたウェーバー比で除算した値を指数とする前記操作力のべき乗関数として定義される車両の見込み運動状態量(横加速度、ヨーレート、旋回曲率など)に変換される。そして、この変換された見込み運動状態量に基づいて、同見込み運動状態量で車両が運動するために必要な転舵輪の転舵角が計算されて、この計算された転舵角に転舵輪が転舵される。したがって、転舵輪の転舵によって車両が旋回すると、この旋回により、運転者には前記見込み運動状態量が与えられる。そして、この見込み運動状態量は、操舵ハンドルへの操作に対してべき乗関係で変化するものであるので、運転者は、人間の知覚特性に合った運動状態量を知覚しながら、操舵ハンドルを操作でき、これにより、見込んだ運動状態で車両を挙動させることができる。なお、横加速度およびヨーレートについては、運転者が車両内の各部位との接触により触覚的に感じ取ることができる。また、旋回曲率については、運転者が車両の視野内の状況の変化により視覚的に感じ取ることができる。その結果、本発明によれば、運転者は、人間の知覚特性に合わせて操舵ハンドルを操作できるので、車両の運転が簡単になる。
また、運転者が操舵ハンドルから手を放して、操舵ハンドルを中立位置方向へ回動させる、すなわち、車両を直進状態とする場合には、反力アクチュエータ制御手段によって操舵ハンドルは所定の角速度で回動される。このように、所定の角速度、例えば、一定の角速度で操舵ハンドルを回動させることによって、転舵輪を急激に転舵させることが防止でき、車両の揺れを効果的に防止できて、滑らかに進路を収束させることができる。
このとき、操舵ハンドルの回動に伴って変化する操作が、前記操作力のべき乗関数として定義される車両の見込み運動状態量(横加速度、ヨーレート、旋回曲率など)に連続的に変換される。そして、この変換された見込み運動状態量に基づいて、同見込み運動状態量で車両が運動するために必要な転舵輪の転舵角が連続的に計算されて、この計算された転舵角に転舵輪が連続的に転舵される。したがって、直進状態へ移行する車両の挙動は、運転者が見込んだ運動状態で変化するため、意図しない車両の挙動を排除することができて、車両の挙動を良好に安定させることができる。また、運転者が見込んだ運動状態で車両の挙動が変化するため、運転者は不安を感じることがない。
また、操舵ハンドルを戻り反力計算手段により計算された戻り反力で中立位置方向へ回動させることによって、例えば、操舵ハンドルの角速度を検出するための他の装置(例えば、センサなど)を別途設ける必要がない。このため、操舵装置の製造コストを低減することもできて、好適である。
以下、本発明の一実施形態に係る車両の操舵装置について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る車両の操舵装置を概略的に示している。
この操舵装置は、転舵輪としての左右前輪FW1,FW2を転舵するために、運転者によって回動操作される操作部としての操舵ハンドル11を備えている。操舵ハンドル11は操舵入力軸12の上端に固定され、操舵入力軸12の下端は電動モータおよび減速機構からなる反力アクチュエータ13に接続されている。反力アクチュエータ13は、運転者の操舵ハンドル11の回動操作に対して反力を付与する。
また、この操舵装置は、電動モータおよび減速機構からなる転舵アクチュエータ21を備えている。この転舵アクチュエータ21による転舵力は、転舵出力軸22、ピニオンギア23およびラックバー24を介して左右前輪FW1,FW2に伝達される。この構成により、転舵アクチュエータ21からの回転力は転舵出力軸22を介してピニオンギア23に伝達され、ピニオンギア23の回転によりラックバー24を軸線方向に変位させて、このラックバー24の軸線方向の変位により、左右前輪FW1,FW2は左右に転舵される。
次に、これらの反力アクチュエータ13および転舵アクチュエータ21の作動を制御する電気制御装置について説明する。電気制御装置は、操舵角センサ31、転舵角センサ32、車速センサ33および横加速度センサ34を備えている。
操舵角センサ31は、操舵入力軸12に組み付けられて、操舵ハンドル11の中立位置からの回転角を検出して操舵角θとして出力する。転舵角センサ32は、転舵出力軸22に組み付けられて、転舵出力軸22の中立位置からの回転角を検出して実転舵角δ(左右前輪FW1,FW2の転舵角に対応)として出力する。なお、操舵角θおよび実転舵角δは、中立位置を「0」とし、左方向の回転角を正の値で表すとともに、右方向の回転角を負の値でそれぞれ表す。車速センサ33は、車速Vを検出して出力する。横加速度センサ34は、車両の実横加速度Gを検出して出力する。なお、実横加速度Gも、左方向の加速度を正で表し、右方向の加速度を負で表す。
これらのセンサ31〜34は、電子制御ユニット35に接続されている。電子制御ユニット35は、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータを主要構成部品とするもので、プログラムの実行により反力アクチュエータ13および転舵アクチュエータ21の作動をそれぞれ制御する。電子制御ユニット35の出力側には、反力アクチュエータ13および転舵アクチュエータ21を駆動するための駆動回路36,37がそれぞれ接続されている。駆動回路36,37内には、反力アクチュエータ13および転舵アクチュエータ21内の電動モータに流れる駆動電流を検出するための電流検出器36a,37aが設けられている。電流検出器36a,37aによって検出された駆動電流は、両電動モータの駆動を制御するために、電子制御ユニット35にフィードバックされている。
また、電子制御ユニット35は、操舵トルクセンサ38も備えている。操舵トルクセンサ38は、操舵入力軸12に組み付けられていて、操舵ハンドルに付与された操舵トルクTを検出して、電子制御ユニット35に出力する。
次に、上記のように構成した本実施形態に関し、電子制御ユニット35内にてコンピュータプログラム処理により実現される機能を表す図2の機能ブロック図を用いて説明する。電子制御ユニット35は、操舵ハンドル11の回動操作に基づいて運転者の感覚特性に対応した左右前輪FW1,FW2の目標転舵角δdを決定するための感覚適合制御部40と、目標転舵角δdに基づいて左右前輪FW1,FW2を転舵制御するための転舵制御部50と、操舵ハンドル11への反力付与を制御するための反力制御部60とからなる。
運転者によって操舵ハンドル11が回動操作されると、操舵角センサ31によって操舵ハンドル11の回転角である操舵角θが検出されて、同検出された操舵角θを感覚適合制御部40および反力制御部60にそれぞれ出力する。
感覚適合制御部40においては、変位−トルク変換部41が下記式1を用いて操舵角θの指数関数である操舵トルクTdを計算する。
Td=To・exp(K1・θ) …式1
ただし、前記式1中のTo,K1は定数である。ここで、前記式1中の操舵角θは前記検出操舵角θの絶対値を表しているものであるが、検出操舵角θが正であれば定数Toを正の値とするとともに、検出操舵角θが負であれば定数Toを前記正の定数Toと同じ絶対値を有する負の値とする。この場合、前記式1の演算に代えて、操舵角θに対する操舵トルクTdを記憶した図3に示すような特性の変換テーブルを用いて、操舵トルクTdを計算するようにしてもよい。
この計算された操舵トルクTdは、トルク−横加速度変換部42に供給される。トルク−横加速度変換部42は、運転者がハンドルの回動操作により見込んでいる見込み横加速度Gdを、操舵トルクTdの絶対値が正の小さな所定値To未満であれば下記式2のように「0」とし、操舵トルクTdの絶対値が正の小さな所定値To以上であれば下記式3に従って操舵トルクTdのべき乗関数である見込み横加速度Gdを計算する。
Gd=0 (|Td|<To) …式2
Gd=C・TdK2 (To≦|Td|) …式3
ただし、式3中のC,K2は定数である。また、前記式3中の操舵トルクTdは前記式1を用いて計算した操舵トルクTdの絶対値を表しているものとし、前記計算した操舵トルクTdが正であれば定数Cを正の値とするとともに、前記計算した操舵トルクTdが負であれば定数Cを前記正の定数Cと同じ絶対値を有する負の値とする。なお、この場合も、前記式2,3の演算に代えて、操舵トルクTdに対する見込み横加速度Gdを記憶した図4に示すような特性の変換テーブルを用いて、操舵トルクTdを計算するようにしてもよい。
ここで、前記式3について説明しておく。前記式1を用いて操舵トルクTdを消去すると、下記式4に示すようになる。
Gd=C(To・exp(K1・θ))K2=C・ToK2・exp(K1・K2・θ)=Go・exp(K1・K2・θ)…式4
前記式4において、Goは定数C・ToK2であり、式4は、運転者による操舵ハンドル11の操舵角θに対して見込み横加速度Gdが指数関数的に変化していることを示す。そして、この見込み横加速度Gdは、車内の所定部位への運転者の体の一部の接触によって運転者が知覚し得る物理量であり、前述したウェーバー・ヘフナーの法則に従ったものである。したがって、運転者が、この見込み横加速度Gdに等しい横加速度を知覚しながら操舵ハンドル11を回動操作することができれば、操舵ハンドル11の回動操作と車両の操舵との関係を人間の知覚特性に対応させることができる。
このように、前記式3(すなわち式4)に示された見込み横加速度Gdは操舵ハンドル11の操作量である操舵角θに対して指数関数的に変化するものであるので、人間の知覚特定に合ったものである。さらに、運転者による操舵ハンドル11の回動操作にとって最も簡単な方法は操舵ハンドル11を一定速度ω(θ=ω・t)で回動することであり、この回動操作によれば、見込み横加速度Gdは下記式5に示すように時間tに対して指数関数的に変化する。したがって、これからも、前記見込み横加速度Gdに等しい横加速度を知覚しながら操舵ハンドル11を回動操作することができれば、運転者の操舵ハンドル11の回動操作が簡単になることがわかる。
Gd=Go・exp(K0・ω・t) …式5
ただし、K0は、K0=K1・K2の関係にある定数である。
また、前記式2に示されるように、操舵トルクTdが所定値To未満である場合、見込み横加速度Gdは「0」に保たれている。これは、操舵角θが「0」のとき、すなわち操舵ハンドル11が中立位置に保たれる場合でも、前記式1の演算により、操舵トルクTdは正の所定値Toになり、この操舵トルクTd(=To)を前記式3の演算に適用してしまうと、見込み横加速度Gdは正の値C・ToK2になって、これは現実的でない。しかしながら、前述のように、操舵トルクTdが所定値To未満であれば、見込み横加速度Gdは「0」であるので、この問題は解決される。
また、この場合、運転者が知覚し得る最小感知横加速度をGoとし、かつ所定値ToがGo=C・ToK2の関係になるようにすれば、操舵トルクTdが所定値Toになるまで、すなわち運転者が操舵ハンドル11の操作によって車両が旋回して運転者が車両に発生する横加速度を感じるまで、車両の見込み横加速度Gdが「0」に保たれる。これによれば、最小操舵トルクTo以上で操舵ハンドル11を操舵したときのみ、見込み横加速度Gdを発生させるために必要な転舵角だけ左右前輪FW1,FW2は転舵制御され、この転舵制御が車両の操舵に的確に対応したものとなる。
次に、前記式1〜5で用いたパラメータK1,K2,C(所定値K1,K2,C)の決め方について説明しておく。なお、このパラメータK1,K2,Cの決め方についての説明では、前記式1〜5の操舵トルクTdおよび見込み横加速度Gdについては、操舵トルクTおよび横加速度Gとして扱う。前述したウェーバー・ヘフナーの法則によれば、「人間の知覚できる最小の物理量変化ΔSとその時点での物理量Sとの比ΔS/Sは、物理量Sの値によらず一定となり、その比ΔS/Sをウェーバー比という」ことになっている。本発明者等は、操舵トルクおよび横加速度に関し、前記ウェーバー・ヘフナーの法則が成立することを確認するとともに、ウェーバー比を決定するために、次のような実験を、男女、年齢、車両の運転履歴などの異なる種々の人間に対して行った。
操舵トルクに関しては、車両の操舵ハンドルにトルクセンサを組み付け、操舵ハンドルに検査用のトルクを外部から付与するとともに同検査用トルクを種々の態様で変化させながら、この検査用トルクに抗して人間が操舵ハンドルに操作力を加えて同操舵ハンドルを回転させないように調整する人間の操舵トルク調整能力を計測した。すなわち、前記状況下で、ある時点での検出操作トルクをTとし、同検出操舵トルクTからの変化を知覚し得る最小の操舵トルク変化量をΔTとしたときの比の値ΔT/Tすなわちウェーバー比を種々の人間に対して計測した。この実験結果によれば、操舵ハンドルの操作方向、操舵ハンドルを把持する手の状態、検査用トルクの大きさおよび方向によらず、ウェーバー比ΔT/Tはほぼ一定の0.03程度であった。
横加速度に関しては、運転席の側方に壁部材を設けて同壁部材に人間の肩の押圧力を検出する力センサを組み付け、人間に操舵ハンドルを把持させるとともに壁部材の力センサに方を接触させ、壁部材に検査用の力を人間に対して横方向に外部から付与するととともに同検査用の力を種々の態様で変化させながら、この検査用の力に抗して人間が壁部材を押して壁部材が移動しないように調整する、すなわち姿勢を維持する人間の横力調整能力を計測した。すなわち、前記状況下で、ある時点での外部からの横力に耐えて姿勢を維持する検出力をFとし、同検出力Fからの変化を知覚し得る最小の力変化量ΔFとしたときの比の値ΔF/Fすなわちウェーバー比を種々の人間に対して計測した。この実験の結果によれば、壁部材に付与される基準力の大きさおよび方向によらず、ウェーバー比ΔF/Fはほぼ一定の0.09程度の値であった。
一方、前記式1を微分するとともに、同微分した式において式1を考慮すると、下記式6が成立する。
ΔT=To・exp(K1・θ)・K1・Δθ=T・K1・Δθ …式6
この式6を変形するとともに、前記実験により求めた操舵トルクに関するウェーバー比ΔT/TをKtとすると、下記式7が成立する。
K1=ΔT/(T・Δθ)=Kt/Δθ …式7
また、最大操舵トルクをTmaxとすれば、前記式1より下記式8が成立する。
Tmax=To・exp(K1・θmax) …式8
この式8を変形すれば、下記式9が成立する。
K1=log(Tmax/To)/θmax …式9
そして、前記式7および式9から下記式10が導かれる。
Δθ=Kt/K1=Kt・θmax/log(Tmax/To) …式10
この式10において、Ktは操舵トルクTのウェーバー比であり、θmaxは操舵角の最大値であり、Tmaxは操舵トルクの最大値であり、Toは前記したように人間が知覚し得る最小感知横加速度Goに対応するように計算されたものであり、これらの値Kt,θmax,Tmax,Toはいずれも実験およびシステムによって決定される定数であるので、前記微分値Δθを前記式10を用いて計算できる。そして、この微分値Δθとウェーバー比Ktを用いて、前記式7に基づいて所定値(係数)K1も計算できる。
また、前記式3を微分するとともに、同微分した式において式3を考慮すると、下記式11が成立する。
ΔG=C・K2・TK2-1ΔT=G・K2・ΔT/T …式11
この式11を変形し、かつ前記実験により求めた操舵トルクに関するウェーバー比ΔT/TをKtとするとともに、横加速度に関するウェーバー比ΔF/FをKaとすると下記式12,13が成立する。
ΔG/G=K2・ΔT/T …式12
K2=Ka/Kt …式13
この式13において、Ktは操舵トルクに関するウェーバー比であるとともに、Kaは横加速度に関するウェーバー比であって、共に定数として与えられるものであるので、これらのウェーバー比Kt,Kaを用いて、前記式13に基づいて係数K2も計算できる。
また、横加速度の最大値をGmaxとし、操舵トルクの最大値をTmaxとすれば、前記式3から下記式14が導かれる。
C=Gmax/TmaxK2 …式14
そして、この式14においては、GmaxおよびTmaxは実験およびシステムによって決定される定数であり、かつK2は前記式13によって計算されるものであるので、定数(係数)Cも計算できる。
以上のように、操舵角θの最大値θmax、操舵トルクTの最大値Tmax、横加速度Gの最大値Gmax、最小操舵トルクTo、最小感知横加速度Go、操舵トルクTに関するウェーバー比Ktおよび横加速度に関するウェーバー比Kaを、実験およびシステムによって決定すれば、前記式1〜4における係数K1,K2,Cを予め計算により決定しておくことができる。したがって、変位−トルク変換部41およびトルク−横加速度変換部42においては、前記式1〜4を用いて、運転者の知覚特性に合った操舵トルクTdおよび見込み横加速度Gdを計算できる。また、後述する反力制御部60の変位−トルク変換部61においては、前記式1と同様の下記式17を用いることにより、運転者の知覚特性に合った反力トルクTzを計算できる。
ふたたび、図2の説明に戻ると、トルク−横加速度変換部42にて計算された見込み横加速度Gdは、転舵角変換部43に供給される。転舵角変換部43は、見込み横加速度Gdを発生するのに必要な左右前輪FW1,FW2の目標転舵角δdを計算するものであり、図5に示すように車速Vに応じて変化して見込み横加速度Gdに対する目標転舵角δdの変化特性を表すテーブルを有する。このテーブルは、車速Vを変化させながら車両を走行させて、左右前輪FW1,FW2の転舵角δと横加速度Gとを予め実測して収集したデータの集合である。そして、転舵角変換部43は、このテーブルを参照して、前記入力した見込み横加速度Gdと車速センサ33から入力した検出車速Vとに対応した目標転舵角δdを計算する。また、前記テーブルに記憶されている横加速度G(見込み横加速度Gd)と目標転舵角δdはいずれも正であるが、転舵角変換部43から供給される見込み横加速度Gdが負であれば、出力される目標転舵角δdも負となる。
なお、目標転舵角δdは下記式15に示すように車速Vと横加速度Gの関数であるので、前記テーブルを参照することに代えて、下記式15の演算の実行によっても計算することができる。
δd=L・(1+A・V2)・Gd/V2 …式15
ただし、前記式15中のLは車両のホイールベースを示す予め決められた所定値であり、Aは予め決められた所定値である。
この計算された目標転舵角δdは、転舵制御部50の転舵角補正部51に供給される。転舵角補正部51は、トルク−横加速度変換部42から見込み横加速度Gdを入力するとともに、横加速度センサ34によって検出された実横加速度Gをも入力しており、下記式16の演算を実行して、入力した目標転舵角δdを補正して補正目標転舵角δdaを計算する。
δda=δd+K3・(Gd−G) …式16
ただし、係数K3は予め決められた正の定数であり、これにより実横加速度Gが見込み横加速度Gdに満たない場合には、補正目標転舵角δdaの絶対値が大きくなる側に補正される。また、実横加速度Gが見込み横加速度Gdを超える場合には、補正目標転舵角δdaは小さくなる側に補正される。この補正により、見込み横加速度Gdに必要な左右前輪FW1,FW2の目標転舵角δdがより精度よく確保される。
この計算された補正目標転舵角δdaは、駆動制御部52に供給される。駆動制御部52は、転舵角センサ32によって検出された実転舵角δを入力し、左右前輪FW1,FW2が補正目標転舵角δdaに転舵されるように転舵アクチュエータ21内の電動モータの回転をフィードバック制御する。また、駆動制御部52は、駆動回路37から転舵アクチュエータ21内の電動モータに流れる駆動電流も入力し、同電動モータに転舵トルクに対応した大きさの駆動電流が適切に流れるように駆動回路37をフィードバック制御する。この転舵アクチュエータ21内の電動モータの駆動制御により、同電動モータの回転は、転舵出力軸22を介してピニオンギア23に伝達され、ピニオンギア23によりラックバー24を軸線方向に変位させる。そして、このラックバー24が軸線方向に変位することにより、左右前輪FW1,FW2は補正目標転舵角δdaに転舵される。
一方、反力制御部60においては、変位−トルク変換部61にて前記式1と同様な下記式17に従って、操舵角θの指数関数である反力トルクTzを計算する。
Tz=To・exp(K1・θ) …式17
この場合も、前記式17中のTo,K1は、前記式1と同様な定数である。また、前記式17中の操舵角θは前記検出操舵角θの絶対値を表しているものであるが、検出操舵角θが正であれば定数Toを負の値とするとともに、検出操舵角θが負であれば定数Toを前記負の定数Toと同じ絶対値を有する正の値とする。ここで、この場合も、前記式17の演算に代えて、操舵角θに対する反力トルクTzを記憶した図3に示すような特性の変換テーブルを用いて、反力トルクTzを計算するようにしてもよい。
また、操舵角センサ31によって検出された操舵角θは、反力制御部60の微分器62および戻り粘性力計算部63にも出力される。微分器62は、検出操舵角θを時間tで微分し、同微分した値すなわち操舵ハンドル11の操舵角速度θ’を戻り粘性力計算部63に出力する。戻り粘性力計算部63は、運転者が操舵後、例えば、操舵ハンドル11を中立位置すなわち左右前輪FW1,FW2を直進位置へ戻すために手を放した場合に、一定の角速度で操舵ハンドル11を戻すように粘性力を発生させるための係数(以下、トルク係数Trという)を下記式18に従って計算する。
Tr=−θ/|θ|・(1+θ/|θ|・θ’/ωc) …式18
ただし、前記式18中の一定角速度ωcは、以下のように決定される。
本実施形態に係る操舵装置においては、上記したように、運転者は上記式1〜式4に基づいて、入力した操舵角θに対して見込んだ見込み横加速度Gdを知覚しながら操舵ハンドル11を操舵することができる。言い換えると、操舵ハンドル11を中立位置まで戻す際に、上記式1に従って操舵ハンドル11を一定角速度ωcで回動させることにより、車両の軌跡および車両に働く横加速度を滑らかに(運転者が意図するように)進路に収束させることができる。このことに基づき、上記式1を下記式19のように変形する。
Td=To・exp(Kt・θ/θo) …式19
ただし、Ktは操舵トルクに関するウェーバー比であり、θoは操舵トルクの最大値Tmaxと操舵角の最大値θmaxから決定される定数である。
このとき、運転者は横加速度G(見込み横加速度Gd)を操舵角速度θ’によってコントロールするため、上記式6に従うことにより、下記式20が成立する。
Td’=Td・(Kt・θ’/θo) …式20
ここで、操舵角速度θ’が定数である場合、すなわち、一定の操舵角速度で操舵ハンドル11が回動された場合には、この微分方程式を解くことにより、操舵トルクTdは時定数θo/(Kt・θ’)の指数関数によって変化する。
また、上記式13が成立することにより、上述した操舵トルクに関するウェーバー比Ktと横加速度に関するウェーバー比Kaとの関係として、1:Kt/Kaが成立する。この関係に基づき、横加速度Gの時定数をTcとすると、操舵トルクTdの時定数θo/(Kt・θ’)から、Tc=θo/(Ka・θ’)が成立する。さらに、上記式10から、θo=Kt・θmax/log(Tmax/To)と表されるので、横加速度Gの時定数Tcは下記式21に示すようになる。
Tc=Kt・θmax/(Ka・θ’)・log(Tmax/To) 式21
前記式21を操舵角速度θ’について整理すると、下記式22に示すようになる。
θ’=Kt・θmax/(Ka・Tc)・log(Tmax/To) 式22
したがって、操舵角速度ωcは、下記式23に示すようになる。
ωc=Kt・θmax/(Ka・Tc)・log(Tmax/To) 式23
このように、操舵角速度ωcを決定することにより、戻り粘性力計算部63は、トルク係数Trを計算し、同計算したトルク係数Trを乗算器64に供給する。
乗算器64においては、変位−トルク変換部61から供給された反力トルクTzと戻り粘性力計算部63から供給されたトルク係数Trとを乗算して、戻り反力トルクTm=Tz・Trを計算する。そして、乗算器64は、計算した戻り反力トルクTmを駆動制御部65に供給する。
このように、変位−トルク変換部61によって計算された反力トルクTzと乗算器64によって計算された戻り反力トルクTmは、それぞれ駆動制御部65に供給される。駆動制御部65は、操舵トルクセンサ38によって検出された操舵トルクTを入力し、同入力された操舵トルクTの値に基づいて、運転者が操舵ハンドル11から手を放しているか否かを判定する。そして、駆動制御部65は、操舵トルクTが「0」よりも大きいすなわち運転者によって操舵ハンドル11に操舵トルクが付与されていれば運転者が左右前輪FW1,FW2を転舵するために操舵ハンドル11を回動操作していると判定し、操舵ハンドル11に付与する反力として変位−トルク変換部61から供給された反力トルクTzを採用する。
これにより、駆動制御部65は、駆動回路36から反力アクチュエータ13内の電動モータに流れる駆動電流を入力し、同電動モータに反力トルクTzに対応した駆動電流が流れるように駆動回路36をフィードバック制御する。したがって、運転者は、操舵角θに対して指数関数的に変化する反力トルクTzを感じながら、言い換えればこの反力トルクTzに等しい操舵トルクを操舵ハンドル11に加えながら、操舵ハンドル11を回動操作することになる。この操舵角θと反力トルクTzの関係も上述したウェーバー・へフナーの法則に従うものであり、運転者は、操舵ハンドル11から人間の知覚特性に合った感覚を受けながら、操舵ハンドル11を回動操作できる。
一方、駆動制御部65は、操舵トルクが「0」すなわち運転者によって操舵ハンドル11に操舵トルクが付与されていなければ運転者が左右前輪FW1,FW2を直進位置に戻すために操舵ハンドル11から手を放していると判定し、操舵ハンドル11に付与する反力として乗算器64から供給された戻り反力トルクTmを採用する。これにより、駆動制御部65は、駆動回路36から反力アクチュエータ13内の電動モータに流れる駆動電流を入力し、同電動モータに戻り反力トルクTmに対応した駆動電流が流れるように駆動回路36をフィードバック制御する。したがって、操舵ハンドル11は、一定の操舵角速度ωcによって中立位置方向へ回動する。
このように、戻り反力トルクTmを採用することにより、運転者が操舵ハンドル11から手を放した場合であっても操舵ハンドル11の急激な回動を防止し、操舵ハンドル11を中立位置方向へ一定の操舵角速度ωcで回動させることができる。そして、この操舵ハンドル11の回動に伴う操舵角θの変化に対応して、感覚適合制御部40および転舵制御部50が左右前輪FW1,FW2を転舵制御することによって、車両を滑らかに進路に収束させることができる。
上記作動説明から理解できるように、第1実施形態によれば、操舵ハンドル11に対する運転者の操作入力値としての操舵角θは変位−トルク変換部41によって操舵トルクTdに変換されるとともに、同変換された操舵トルクTdはトルク−横加速度変換部42によって見込み横加速度Gdに変換され、転舵角変換部43、転舵角補正部51および駆動制御部52により、左右前輪FW1,FW2は見込み横加速度Gdの発生に必要な補正目標転舵角δdaに転舵される。
この場合、操舵トルクTdは、反力トルクTzと等しいため、反力アクチュエータ13の作用によって運転者が操舵ハンドル11から知覚し得る物理量であるとともに、操舵角θに対して指数関数的に変化するものであるので、運転者はウェーバー・ヘフナーの法則に従った反力を感じながら人間の知覚特性に従って操舵ハンドル11を回動操作できる。また、左右前輪FW1,FW2の転舵によって車両に発生する実横加速度Gも知覚し得る物理量であるとともに、この実横加速度Gは見込み横加速度Gdに等しくなるように制御される。さらに、この見込み横加速度Gdも運転者が入力した操舵角θに対してべき乗関数的(式3を式4に変形することにより指数関数的)に変化する。したがって、運転者はウェーバー・ヘフナーの法則に従った横加速度を感じながら人間の知覚特性に従って操舵ハンドル11を回動操作して、車両を旋回させることができる。その結果、運転者は、人間の知覚特性に合わせて操舵ハンドル11を操作できるので、車両の運転が簡単になる。
また、転舵角補正部61は、車両に実際に発生している実横加速度Gが操舵ハンドル11の操舵角θに正確に対応するように目標転舵角δdを補正するので、車両には操舵ハンドル11の操舵角θに正確に対応した実横加速度Gが発生する。その結果、運転者は、人間の知覚特性により正確に合った横加速度を知覚しながら、操舵ハンドル11を操作できるようになるので、車両の運転がより簡単になる。
さらに、運転者が操舵ハンドル11から手を放して、操舵ハンドル11を中立位置方向へ回動させる、すなわち、車両を直進状態とする場合には、反力制御部60の駆動制御部65によって操舵ハンドル11は一定の操舵角速度ωcで回動される。このように、一定の操舵角速度ωcで操舵ハンドル11を回動させることによって、左右前輪FW1,FW2を急激に転舵させることが防止でき、車両の揺れを効果的に防止できて、滑らかに進路を収束させることができる。
このとき、操舵ハンドル11の回動に伴って変化する操舵角θが、感覚適合制御部40の変位−トルク変換部41およびトルク−横加速度変換部42によって予め定めたべき乗関係(または指数関係)にある車両の見込み横加速度Gdに連続的に変換される。そして、転舵角変換部43によって、この変換された見込み横加速度Gdに基づいて、同見込み横加速度Gdで車両が運動するために必要な左右前輪FW1,FW2の目標転舵角δdが連続的に計算される。この計算された目標転舵角δdは、転舵制御部50の転舵角補正部51によって補正目標転舵角δdaに補正されて、駆動制御部52により左右前輪FW1,FW2が連続的に転舵される。したがって、直進状態へ移行する車両の挙動は、運転者が見込んだ運動状態すなわち見込み横加速度Gdで変化するため、意図しない車両の挙動を排除することができて、車両の挙動を良好に安定させることができる。また、運転者が見込んだ見込み横加速度Gdで車両の挙動が変化するため、運転者は不安を感じることがない。
また、操舵ハンドル11を反力制御部60の戻り粘性力計算部63および乗算器64により計算された戻り反力トルクTmで中立位置方向へ回動させることによって、例えば、操舵ハンドル11の角速度を検出するための他の装置(例えば、センサなど)を別途設ける必要がない。このため、操舵装置の製造コストを低減することもできて、好適である。
a.第1変形例
上記実施形態においては、操舵ハンドル11の操作入力値として操舵角θを利用するように実施した。これに対して、操舵ハンドル11の操作入力値として操舵トルクTを利用して実施することも可能である。その他の構成については、上記実施形態と同じであるが、電子制御ユニット35にて実行されるコンピュータプログラムは上記実施形態の場合とは若干異なる。この第1変形例の場合には、前記コンピュータプログラムを表す図2の機能ブロック図において、変位−トルク変換部41は設けられておらず、トルク−横加速度変換部42が、上記実施形態における変位−トルク変換部41にて計算される操舵トルクTdに代えて、操舵トルクセンサ38によって検出された操舵トルクTを用いた式2,3の演算の実行により見込み横加速度Gdを計算する。なお、この場合も、式2,3の演算に代えて、図4に示す特性を表す変換テーブルを用いて見込み横加速度Gdを計算するようにしてもよい。なお、電子制御ユニット35にて実行される他のプログラム処理については上記実施形態の場合と同じである。
この第1変形例によれば、操舵ハンドル11に対する運転者の操作入力値としての操舵トルクTがトルク−横加速度変換部42によって見込み横加速度Gdに変換され、転舵角変換部43、転舵角補正部51および駆動制御部52により、左右前輪FW1,FW2は見込み横加速度Gdの発生に必要な補正目標転舵角δdaに転舵される。そして、この場合も、操舵トルクTは運転者が操舵ハンドル11から知覚し得る物理量であるとともに、操舵トルクTに対して見込み横加速度Gdはべき乗関数的に変化するものであるので、運転者はウェーバー・ヘフナーの法則に従った反力を感じながら人間の知覚特性に従って操舵ハンドル11を回動操作できる。したがって、この第1変形例においても、上記実施形態の場合と同様に、運転者はウェーバー・ヘフナーの法則に従った横加速度を感じながら人間の知覚特性に従って操舵ハンドル11を回動操作して、車両を旋回させることができるので、上記実施形態と同様な効果が期待される。
さらに、上記実施形態による車両の操舵制御と、前記第1変形例による車両の操舵制御とを切り替え可能にしてもよい。すなわち、上記実施形態のように変位−トルク変換部41にて計算される目標転舵トルクTdを用いて見込み横加速度Gdを計算する場合と、操舵トルクセンサ38によって検出された操舵トルクTを用いて見込み横加速度Gdを計算する場合とを切り替えて利用可能とすることもできる。この場合、前記切り替えを、運転者の意思により、または車両の運動状態に応じて自動的に切り替えるようにするとよい。
b.第2変形例
次に、上記実施形態における運動状態量としての横加速度に代えて、ヨーレートを用いた第2変形例について説明する。この第2変形例における操舵装置は、図1に破線で示すように、上記実施形態における横加速度センサ34に代えて、運転者が知覚し得る運動状態量である実ヨーレートγを検出するヨーレートセンサ39を備えている。他の構成については、上記実施形態と同じであるが、電子制御ユニット35にて実行されるコンピュータプログラムは上記実施形態の場合と若干異なる。
この第2変形例においては、電子制御ユニット35にて実行されるコンピュータプログラムが図6の機能ブロック図により示されている。この場合、感覚適合制御部40において、変位−トルク変換部41は上記実施形態と同様に機能するが、上記実施形態のトルク−横加速度変換部42に代えてトルク−ヨーレート変換部44が設けられている。
このトルク−ヨーレート変換部44は、変位−トルク変換部41にて計算された操舵トルクTdを用いて、運転者が操舵ハンドル11の回動操作により見込んでいる見込みヨーレートγdを、操舵トルクTdの絶対値が正の小さな所定値To未満であれば下記式24のように「0」とし、操舵トルクTdの絶対値が正の小さな所定値To以上であれば下記式25に従って計算する。
γd=0 (|Td|<To) …式24
γd=C・TdK2 (To≦|Td|) …式25
ただし、式25中のC,K2は、上記実施形態と同じく定数である。また、この場合も、前記式25中の操舵トルクTdは上記式1を用いて計算した操舵トルクTdの絶対値を表しているものであり、前記計算した操舵トルクTdが正であれば定数Cを正の値とするとともに、前記計算した操舵トルクTdが負であれば定数Cを前記正の定数Cと同じ絶対値を有する負の値とする。なお、この場合、前記式24,25の演算に代えて、操舵トルクTdに対する見込みヨーレートγdを記憶した図7に示すような特性の変換テーブルを用いて、見込みヨーレートγdを計算するようにしてもよい。
また、転舵角変換部45は、見込みヨーレートγdを発生するのに必要な左右前輪FW1,FW2の目標転舵角δdを計算するものであり、図8に示すように車速Vに応じて変化して見込みヨーレートγdに対する目標転舵角δdの変化特性を表すテーブルを有する。このテーブルは、車速Vを変化させながら車両を走行させて、左右前輪FW1,FW2の転舵角δとヨーレートγとを予め実測して収集したデータの集合である。そして、転舵角変換部45は、このテーブルを参照して、前記入力した見込みヨーレートγdと車速センサ33から入力した検出車速Vに対応した目標転舵角δdを計算する。また、前記テーブルに記憶されているヨーレートγ(見込みヨーレートγd)と目標転舵角δdは、いずれも正であるが、転舵角変換部45から供給される見込みヨーレートγdが負であれば、出力される目標転舵角δdも負となる。
なお、目標転舵角δdは下記式26に示すように車速Vとヨーレートγの関数であるので、前記テーブルを参照することに代えて、下記式26の演算の実行によっても計算することができる。
δd=L・(1+A・V2)・γd/V …式26
ただし、前記式26においても、Lはホイールベースを示す予め決められた所定値であり、Aは予め決められた所定値である。
この計算された目標転舵角δdは、転舵制御部50の転舵角補正部53に供給される。転舵角補正部53は、トルク−ヨーレート変換部44から見込みヨーレートγdを入力するとともに、ヨーレートセンサ39によって検出された実ヨーレートγをも入力しており、下記式27の演算を実行して、入力した目標転舵角δdを補正して補正目標転舵角δdaを計算する。
δda=δd+K4・(γd−γ) …式27
ただし、係数K4は予め決められた正の定数であり、実ヨーレートγが見込みヨーレートγdに満たない場合には、補正目標転舵角δdaの絶対値が大きくなる側に補正される。また、実ヨーレートγが見込みヨーレートγdを超える場合には、補正目標転舵角δdaの絶対値が小さくなる側に補正される。この補正により、見込みヨーレートγdに必要な左右前輪FW1,FW2の転舵角がより精度よく確保される。
また、電子制御ユニット35にて実行される他のプログラム処理については上記実施形態の場合と同じである。そして、図6の機能ブロック図において、上記実施形態の図2と同一の符号を付してその説明を省略する。
そして、上記説明した第2変形例においても、操舵ハンドル11に対する運転者の操作入力値としての操舵角θは変位−トルク変換部41によって操舵トルクTdに変換されるとともに、同変換された操舵トルクTdはトルク−ヨーレート変換部44によって見込みヨーレートγdに変換され、転舵角変換部45、転舵角補正部53および駆動制御部52により左右前輪FW1,FW2は見込みヨーレートγdの発生に必要な補正目標転舵角δdaに転舵される。この場合も、操舵トルクTdは、反力トルクTzと等しいため、反力アクチュエータ13の作用によって運転者が操舵ハンドル11から知覚し得る物理量であるとともに、操舵角θに対して指数関数的に変化するものであるので、運転者はウェーバー・ヘフナーの法則に従った反力を感じながら人間の知覚特性に従って操舵ハンドル11を回動操作できる。
また、左右前輪FW1,FW2の転舵によって車両に発生するヨーレートγも知覚し得る物理量であるとともに、このヨーレートγは見込みヨーレートγdに等しくなるように制御され、さらに、この見込みヨーレートγdも操舵角θに対してべき乗関数的に(上記実施形態の式3から式4への変形と同様に式25を変形することにより指数関数的に)変化する。したがって、運転者はウェーバー・ヘフナーの法則に従ったヨーレートを感じながら人間の知覚特性に従って操舵ハンドル11を回動操作して、車両を旋回させることができる。その結果、運転者は、上記実施形態の場合と同様に、人間の知覚特性に合わせて操舵ハンドル11を操作できるので、車両の運転が簡単になる。
さらに、運転者が操舵ハンドル11から手を放して、操舵ハンドル11を中立位置方向へ回動させる、すなわち、車両を直進状態とする場合には、反力制御部60の駆動制御部65によって操舵ハンドル11は一定の操舵角速度ωcで回動される。このように、一定の操舵角速度ωcで操舵ハンドル11を回動させることによって、左右前輪FW1,FW2を急激に転舵させることが防止でき、車両の揺れを効果的に防止できて、滑らかに進路を収束させることができる。
このとき、操舵ハンドル11の回動に伴って変化する操舵角θが、感覚適合制御部40の変位−トルク変換部41およびトルク−ヨーレート変換部44によって予め定めたべき乗関係(または指数関係)にある車両の見込みヨーレートγdに連続的に変換される。そして、転舵角変換部45によって、この変換された見込みヨーレートγdに基づいて、同見込みヨーレートγdで車両が運動するために必要な左右前輪FW1,FW2の目標転舵角δdが連続的に計算される。この計算された目標転舵角δdは、転舵制御部50の転舵角補正部53によって補正目標転舵角δdaに補正されて、駆動制御部52により左右前輪FW1,FW2が連続的に転舵される。したがって、直進状態へ移行する車両の挙動は、運転者が見込んだ運動状態すなわち見込みヨーレートγdで変化するため、意図しない車両の挙動を排除することができて、車両の挙動を良好に安定させることができる。また、運転者が見込んだ見込みヨーレートγdで車両の挙動が変化するため、運転者は不安を感じることがない。
また、操舵ハンドル11を反力制御部60の戻り粘性力計算部63および乗算器64により計算された戻り反力トルクTmで中立位置方向へ回動させることによって、例えば、操舵ハンドル11の角速度を検出するための他の装置(例えば、センサなど)を別途設ける必要がない。このため、操舵装置の製造コストを低減することもできて、好適である。
c.第3変形例
次に、上記実施形態における運動状態量としての横加速度に代えて、旋回曲率を用いた第3変形例について説明する。この第3変形例における操舵装置は、上記実施形態と同様に図1に示すように構成されている。ただし、電子制御ユニット35にて実行されるコンピュータプログラムが上記実施形態の場合とは若干異なる。
この第3変形例においては、電子制御ユニット35にて実行されるコンピュータプログラムが図9の機能ブロック図により示されている。この場合、感覚適合制御部40において、変位−トルク変換部41は上記実施形態と同様に機能するが、上記実施形態のトルク−横加速度変換部42に代えてトルク−旋回曲率変換部46が設けられている。
このトルク−旋回曲率変換部46は、変位−トルク変換部41にて計算された操舵トルクTdを用いて、運転者が操舵ハンドル11の回動操作により見込んでいる見込み旋回曲率ρdを、操舵トルクTdの絶対値が正の小さな所定値To未満であれば下記式28にように「0」とし、操舵トルクTdの絶対値が正の小さな所定値To以上であれば下記式29に従って計算する。
ρd=0 (|Td|<To) …式28
ρd=C・TdK2 (To≦|Td|) …式29
ただし、式29中のC,K2は、上記実施形態と同じく定数である。また、この場合も、前記式29中の操舵トルクTdは上記式1を用いて計算した操舵トルクTdの絶対値を表しているものであり、前記計算した操舵トルクTdが正であれば定数Cを正の値とするとともに、前記計算した操舵トルクTdが正であれば定数Cを前記正の定数Cと同じ絶対値を有する負の値とする。なお、この場合、前記式28,29の演算に代えて、操舵トルクTdに対する見込み旋回曲率ρdを記憶した図10に示すような特性の変換テーブルを用いて、見込み旋回曲率ρdを計算するようにしてもよい。
また、転舵角変換部47は、見込み旋回曲率ρdを発生するのに必要な左右前輪FW1,FW2の目標転舵角δdを計算するものであり、図11に示すように車速Vに応じて変化して見込み旋回曲率ρdに対する目標転舵角δdの変化特性を表すテーブルを有する。このテーブルは、車速Vを変化させながら車両を走行させて、左右前輪FW1,FW2の転舵角δと旋回曲率ρとを予め実測して収集したデータの集合である。そして、転舵角変換部47は、このテーブルを参照して、前記入力した見込み旋回曲率ρdと車速センサ33から入力した検出車速Vとに対応した目標転舵角δdを計算する。また、前記テーブルに記憶されている旋回曲率ρ(見込み旋回曲率ρd)と目標転舵角δdはいずれも正であるが、トルク−旋回曲率変換部46から供給される見込み旋回曲率ρdが負であれば、出力される目標転舵角δdも負となる。
なお、目標転舵角δdは下記式30に示すように車速Vと旋回曲率ρの関数であるので、前記テーブルを参照することに代えて、下記式30の演算の実行によっても計算することができる。
δd=L・(1+A・V2)・ρd …式30
ただし、前記式30においても、Lはホイールベースを表す予め決められた所定値であり、Aは予め決められた所定値である。
この計算された目標転舵角δdは、転舵制御部50の転舵角補正部54に供給される。転舵角補正部54は、トルク−旋回曲率変換部46から見込み旋回曲率ρdを入力するとともに、旋回曲率計算部55から実旋回曲率ρも入力する。旋回曲率計算部55は、横加速度センサ34によって検出された横加速度Gまたはヨーレートセンサ39によって検出されたヨーレートγと、車速センサ33によって検出された車速Vとを用いて、下記式31の演算の実行により実旋回曲率ρを計算して転舵角補正部54に出力する。
ρ=G/V2またはρ=γ/V …式31
そして、転舵角補正部54は、下記式32の演算を実行して、入力した目標転舵角δdを補正して補正目標転舵角δdaを計算する。
δda=δd+K5・(ρd−ρ) …式32
ただし、係数K5は予め決められた正の定数であり、実旋回曲率ρが見込み旋回曲率ρdに満たない場合には、補正目標転舵角δdaの絶対値が大きくなる側に補正される。また、実旋回曲率ρが見込み旋回曲率ρdを超える場合には、補正目標転舵角δdaの絶対値が小さくなる側に補正される。この補正により、見込み旋回曲率ρdに必要な左右前輪FW1,FW2の転舵角がより精度よく確保される。
また、電子制御ユニット35にて実行される他のプログラム処理については上記実施形態の場合と同じである。そして、図9の機能ブロック図において、上記実施形態の図2と同一の符号を付してその説明を省略する。
そして、上記説明した第3変形例においても、操舵ハンドル11に対する運転者の操作入力値としての操舵角θは変位−トルク変換部41によって操舵トルクTdに変換されるとともに、同変換された操舵トルクTdはトルク−旋回曲率変換部46によって見込み旋回曲率ρdに変換され、転舵角変換部47、転舵角補正部54および駆動制御部52により、左右前輪FW1,FW2は見込み旋回曲率ρdの発生に必要な補正目標転舵角δdaに転舵される。この場合も、操舵トルクTdは、反力トルクTzと等しいため、反力アクチュエータ13の作用によって運転者が操舵ハンドル11から知覚し得る物理量であるとともに、操舵角θに対して指数関数的に変化するものであるので、運転者はウェーバー・ヘフナーの法則に従った反力を感じながら人間の知覚特性に従って操舵ハンドル11を回動操作できる。
また、左右前輪FW1,FW2の転舵による旋回曲率も視覚によって知覚し得る物理量であるとともに、この旋回曲率ρは見込み旋回曲率ρdに等しくなるように制御され、さらに、この見込み旋回曲率ρdも操舵角θに対してべき乗関数的に(上記実施形態の式3から式4への変形と同様に式29を変形することにより指数関数的に)変化する。したがって、運転者はウェーバー・ヘフナーの法則に従った旋回曲率を視覚により知覚しながら人間の知覚特性に従って操舵ハンドル11を回動操作して、車両を旋回させることができる。その結果、運転者は上記実施形態の場合と同様に、人間の知覚特性に合わせて操舵ハンドル11を操作できるので、車両の運転が簡単になる。
さらに、運転者が操舵ハンドル11から手を放して、操舵ハンドル11を中立位置方向へ回動させる、すなわち、車両を直進状態とする場合には、反力制御部60の駆動制御部65によって操舵ハンドル11は一定の操舵角速度ωcで回動される。このように、一定の操舵角速度ωcで操舵ハンドル11を回動させることによって、左右前輪FW1,FW2を急激に転舵させることが防止でき、車両の揺れを効果的に防止できて、滑らかに進路を収束させることができる。
このとき、操舵ハンドル11の回動に伴って変化する操舵角θが、感覚適合制御部40の変位−トルク変換部41およびトルク−旋回曲率変換部46によって予め定めたべき乗関係(または指数関係)にある車両の見込み旋回曲率ρdに連続的に変換される。そして、転舵角変換部47によって、この変換された見込み旋回曲率ρdに基づいて、同見込み旋回曲率ρdで車両が運動するために必要な左右前輪FW1,FW2の目標転舵角δdが連続的に計算される。この計算された目標転舵角δdは、転舵制御部50の転舵角補正部54によって補正目標転舵角δdaに補正されて、駆動制御部52により左右前輪FW1,FW2が連続的に転舵される。したがって、直進状態へ移行する車両の挙動は、運転者が見込んだ運動状態すなわち見込み旋回曲率ρdで変化するため、意図しない車両の挙動を排除することができて、車両の挙動を良好に安定させることができる。また、運転者が見込んだ見込み旋回曲率ρdで車両の挙動が変化するため、運転者は不安を感じることがない。
また、操舵ハンドル11を反力制御部60の戻り粘性力計算部63および乗算器64により計算された戻り反力トルクTmで中立位置方向へ回動させることによって、例えば、操舵ハンドル11の角速度を検出するための他の装置(例えば、センサなど)を別途設ける必要がない。このため、操舵装置の製造コストを低減することもできて、好適である。
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態および各変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、上記実施形態および各変形例においては、操舵ハンドルに入力された操作入力値としての操舵角や操舵トルクを見込み運動状態量に変換し、同変換した見込み運動状態量を用いて転舵角を計算するステアバイワイヤ方式の車両の操舵装置に適用して実施した。しかしながら、操舵ハンドルに入力された操舵角や操舵トルクに基づいて転舵角を直接計算し、転舵アクチュエータによって転舵輪を転舵角となるように転舵する従来のステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置に適用して実施することも可能である。この場合においても、従来のステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置に対して、上記説明したトルク係数Trを計算するとともに戻り反力トルクTmを計算し、運転者が操舵ハンドルから手を放したときには戻り反力トルクTmによって操舵ハンドルを中立位置方向へ回動させることにより、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、上記実施形態および各変形例においては、車両を操舵するために回動操作される操舵ハンドル11を用いるようにした。しかし、これに代えて、例えば、直線的に変位するジョイスティックタイプの操舵ハンドルを用いてもよいし、その他、運転者によって操作されるとともに車両に対する操舵を指示できるものであれば、いかなるものを用いてもよい。
また、上記実施形態および各変形例においては、転舵アクチュエータ21を用いて転舵出力軸22を回転させることにより、左右前輪FW1,FW2を転舵するようにした。しかし、これに代えて、転舵アクチュエータ21を用いてラックバー23をリニアに変位させることにより、左右前輪FW1,FW2を転舵するようにしてもよい。
さらに、上記実施形態および各変形例においては、人間が知覚し得る車両の運動状態量として、横加速度、ヨーレートおよび旋回曲率をそれぞれ単独で用いるようにした。しかし、これらの車両の運動状態量を、運転者による選択操作により切り替え、または車両の走行状態に応じて自動的に切り替えて、車両の操舵制御を行うようにしてもよい。車両の走行状態に応じて自動的に切り替える場合、例えば、車両の低速走行時には前記運動状態量として旋回曲率を用い、車両の中速走行時には前記運動状態量としてヨーレートを用い、かつ車両の高速走行時には前記運動状態量として横加速度を用いるようにする。これによれば、車両の走行状態に応じて適切な車両の操舵制御がなされ、車両の運転がより易しくなる。
本発明の一実施形態の車両の操舵装置の概略図である。 本発明の一実施形態に係り、図1の電子制御ユニットにて実行される転舵制御のコンピュータプログラム処理を機能的に表す機能ブロック図である。 操舵角と操舵トルクの関係を示すグラフである。 操舵トルクと見込み横加速度の関係を示すグラフである。 見込み横加速度と目標転舵角の関係を示すグラフである。 本発明の第2変形例に係り、図1の電子制御ユニットにて実行される転舵制御のコンピュータプログラム処理を機能的に表す機能ブロック図である。 操舵トルクと見込みヨーレートの関係を示すグラフである。 見込みヨーレートと目標転舵角の関係を示すグラフである。 本発明の第3変形例に係り、図1の電子制御ユニットにて実行される転舵制御のコンピュータプログラム処理を機能的に表す機能ブロック図である。 操舵トルクと見込み旋回曲率の関係を示すグラフである。 見込み旋回曲率と目標転舵角の関係を示すグラフである。
符号の説明
FW1,FW2…左右前輪、11…操舵ハンドル、12…操舵入力軸、13…反力アクチュエータ、21…転舵アクチュエータ、22…転舵出力軸、25…待機系転舵アクチュエータ、31…操舵角センサ、32…転舵角センサ、33…車速センサ、34…横加速度センサ、35…電子制御ユニット、38…ヨーレートセンサ、40…感覚適合制御部、41…変位−トルク変換部、42…トルク−横加速度変換部、43,45,47…転舵角変換部、44…トルク−ヨーレート変換部、46…トルク−旋回曲率変換部、50…転舵制御部、51,53,54…転舵角補正部、60…反力制御部、61…変位−トルク変換部、62…微分器、63…戻り粘性力計算部、64…乗算器、65…駆動制御部

Claims (4)

  1. 車両を操舵するために運転者によって操作される操舵ハンドルと、同操舵ハンドルの操作に対して反力を付与する反力アクチュエータと、転舵輪を転舵するための転舵アクチュエータと、前記操舵ハンドルの操作に応じて前記転舵アクチュエータを駆動制御して転舵輪を転舵する転舵制御装置とを備えたステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、前記転舵制御装置は、
    前記操舵ハンドルの変位量を検出する変位量センサと、
    前記検出された変位量を前記操舵ハンドルに付与される操作力に変換する操作力変換手段と、
    車両の旋回に関係して運転者が知覚し得る車両の運転状態を表していて、前記運動状態量に関する予め決められたウェーバー比を前記操作力に関する予め決められたウェーバー比で除算した値を指数とする前記操作力のべき乗関数として定義される車両の見込み運動状態量を、前記変換された操作力を用いて計算する運動状態量計算手段と、
    前記計算された見込み運動状態量で車両が運動するために必要な前記転舵輪の転舵角を、前記計算された見込み運動状態量を用いて計算する転舵角計算手段と、
    前記計算された転舵角に応じて前記転舵アクチュエータを制御して前記転舵輪を同計算された転舵角に転舵する転舵制御手段と、
    前記反力アクチュエータの作動を制御して前記操舵ハンドルを所定の角速度によって前記操舵ハンドルの中立位置方向へ回動させる反力アクチュエータ制御手段とを備えていることを特徴とするステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。
  2. 車両を操舵するために運転者によって操作される操舵ハンドルと、同操舵ハンドルの操作に対して反力を付与する反力アクチュエータと、転舵輪を転舵するための転舵アクチュエータと、前記操舵ハンドルの操作に応じて前記転舵アクチュエータを駆動制御して転舵輪を転舵する転舵制御装置とを備えたステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、前記転舵制御装置は、
    前記操舵ハンドルに付与される操作力を検出する操作力センサと、
    車両の旋回に関係して運転者が知覚し得る車両の運転状態量を表していて、前記運動状態量に関する予め決められたウェーバー比を前記操作力に関する予め決められたウェーバー比で除算した値を指数とする前記操作力のべき乗関数として定義される車両の見込み運動状態量を、前記検出された操作力を用いて計算する運動状態量計算手段と、
    前記計算された見込み運動状態量で車両が運動するために必要な前記転舵輪の転舵角を、前記計算された見込み運動状態量を用いて計算する転舵角計算手段と、
    前記計算された転舵角に応じて前記転舵アクチュエータを制御して前記転舵輪を同計算された転舵角に転舵する転舵制御手段と、
    前記反力アクチュエータの作動を制御して前記操舵ハンドルを所定の角速度によって前記操舵ハンドルの中立位置方向へ回動させる反力アクチュエータ制御手段とを備えていることを特徴とするステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載したステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、さらに、
    前記所定の角速度によって前記操舵ハンドルを前記中立位置方向へ回動させるための戻り反力を計算する戻り反力計算手段を備え、
    前記反力アクチュエータ制御手段は、前記戻り反力計算手段によって計算された戻り反力を前記操舵ハンドルに付与して、前記操舵ハンドルを前記中立位置方向へ回動させることを特徴とするステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。
  4. 請求項1または請求項2に記載したステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、
    前記見込み運動状態量は、車両の横加速度、ヨーレートおよび旋回曲率のうちのいずれか一つであるステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。
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