JP4175566B2 - 電子楽器の発音制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電子楽器の発音制御装置に関し、特に、複数の押鍵に対して単音を発音する単音優先機能を備えた電子楽器の発音制御装置に関する。
電子オルガンやシンセサイザ等の電子楽器において、同時に実行された複数の押鍵操作に対して、予定の基準によって選択された一つの鍵に対応する楽音を発生する単音優先機能(いわゆるソロ機能)を備えた電子楽器が知られる。さらに、このような電子楽器において、発音されている楽音に対応する鍵が離鍵された時に、その時点で依然として押されている複数の鍵の中から一つを選択し、この選択された鍵に対応する楽音を発音(以下、「再発音」もしくは「リトリガ」という)させる機能も知られる。リトリガ機能を有する電子楽器は、特開2001−125572号公報や、特公平2−15078号公報等に開示されている。これら公報には、リトリガ時の押鍵強さもしくはベロシティに基づく音量制御に関して記述されている。例えば、特公平2−15078号公報の楽器では、それまで発音していた鍵のタッチ値でリトリガに対応する楽音を発音するようにしている。
特開2001−125572号公報 特公平2−15078号公報
上述のリトリガ機能を有する電子楽器において、押鍵していた二つの鍵を同時に離鍵する操作をすれば、リトリガはされない。しかし、演奏者が同時に二つの鍵を離したとしても、鍵盤に設けられている鍵検出センサは、二つの離鍵タイミングの微妙な差を検出してしまう。その結果、先に離鍵が検出された鍵によるリトリガ命令が生じ、遅れて離鍵が検出された鍵に対応するリトリガの処理が行われ、楽音が発音される。この楽音は、遅れて検出された離鍵に対する処理が終了するまで、ごく短時間ではあるが持続する。すなわち、演奏者の意図しない楽音が生じる。特に、演奏音がピアノのような減衰音である場合、瞬間的に大きい振幅に立ち上がるので、短時間ではあるが耳障りな音となって聞こえる。
本発明は、上記課題に鑑み、複数鍵が同時に離鍵されたときにリトリガ機能を確実に禁止して、演奏者が意図しない楽音が発生しないようにすることができる電子楽器の発音制御装置を提供することを目的とする。
上記の課題を解決し、目的を達成するための本発明は、同時に生じた複数の押鍵に対し、該複数の鍵のうち予定の基準で選択されたものに対応する楽音を発する発音手段と、前記選択された鍵の離鍵に応答して、対応する楽音の発音を停止する発音停止手段と、前記楽音の発音停止とともに、押鍵が維持されている鍵のうち予定の基準で選択されたものに対応する楽音を発する再発音手段と、前記離鍵後予定の時間、前記再発音手段による発音を禁止する再発音禁止手段とを具備した点に第1の特徴がある。
また、本発明は、前記発音手段および再発音手段が、減衰音を含む複数の音色のうち選択された音色で楽音を発するように構成され、減衰音が選択されたときに前記再発音禁止手段を有効にするようにした点に第2の特徴がある。
上記特徴を有する本発明によれば、複数の同時押鍵があって、その後、現在発音中の楽音に対応する鍵が離鍵されたときでも、予定時間が経過するまでは再発音手段によるリトリガ動作が行われない。したがって、複数の鍵が全く同時に離鍵されていなくても、予定時間内にすべてが離鍵された場合つまり実質的に同時に複数鍵が離鍵された場合は、リトリガによる演奏者の意図しない発音が抑制される。特に、減衰音の場合は短時間で大きい音量で発音されるので、この再発音禁止手段による発音抑制効果は大きい。
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。図2は本発明の一実施形態に係る電子鍵盤楽器のシステム構成を示すブロック図である。同図において、電子鍵盤楽器1は、鍵盤2、操作パネル3、表示パネル4、音源装置5およびサウンドシステム6、ならびにこれらを制御するCPU7を備える。さらに、記憶装置として、CPU7で処理されるプログラムを記憶するプログラムメモリ8、楽音波形メモリ9、および自動演奏データメモリ10、ならびに各種データが格納されるRAM11を備える。
鍵盤2は、押鍵および離鍵を感知するキーセンサを含む鍵盤インタフェース12を備える。操作パネル3は、メインスイッチ、音量ボリューム、効果音スイッチ、ならびに各種選択スイッチ等を含む指示入力装置であり、パネルインタフェース13を備える。表示パネル4は、LCD(液晶表示装置)やCRT(陰極線管)等の情報表示装置であり、表示コントローラ(表示インタフェース)14を備える。
音源装置5とサウンドシステム6との間には、D/A変換器15、アナログ信号処理装置16およびアンプ17が設けられる。上記CPU7、インタフェース12,13,14、記憶装置8,9,10、および音源装置5はバスライン18に接続される。さらに、別の電子楽器等、外部機器を接続するためにMIDIインタフェース19を設けることができる。
鍵盤インタフェース12は、キーセンサにより鍵盤2の押鍵および離鍵操作を感知してキーオン、キーオフ、キーナンバ(音高)、ベロシティ等のキー情報を発生する。操作パネル3は、音色、テンポ、リズム等、入力された指示情報を発生する。CPU7は、キー情報や指示情報に基づき、プログラムに従って音源装置5を制御し、楽音波形メモリ9から読み出した波形データによる楽音信号を発生させる。自動演奏モードでは、前記キー情報に代えて、自動演奏データメモリ10に格納された自動演奏データが使用されて楽音信号が発生される。
音源装置5で発生された楽音信号はD/A変換器15でアナログ信号に変換され、アナログ信号処理装置16で、効果付与などの信号処理が施される。アナログ信号処理装置16から出力された信号はアンプ17を介してサウンドシステム6から発音される。
電子鍵盤楽器1は単音優先機能を有する。すなわち、同時に複数の押鍵が発生した場合(予定の短時間内に複数の押鍵が検出された場合)、予定の基準に従って、複数の押鍵のうち一つの押鍵に対応するキー情報を生かし、他の押鍵に対応するキー情報は無視する。例えば、押された複数鍵のうち最も低音である鍵を優先して発音させたり、先に押された鍵を優先させて発音させたりする。また、どの鍵の音を優先させるかは、操作パネル3からの指示で選択された音色に対応させてもよい。例えば、ピアノでは高音優先にし、ストリングスでは低音優先にするなど、演奏者の好みに応じて設定することができる。
さらに、この単音優先機能に加えて、リトリガ機能を有する。つまり、押鍵されている複数鍵のうち現在の発音に対応する鍵が離鍵されたときに、この鍵以外に依然として押鍵されている鍵の音を発音させる。現在発音中の音に対応する鍵以外に複数の鍵が押鍵状態であった場合、すなわち、同時押鍵が3鍵以上であって一つの鍵が離鍵された場合は残りの二つの鍵のいずれかの音を発音させる。例えば押鍵時と同一の基準で優先鍵を決定して発音させることができる。
本実施形態では、このリトリガ機能を先の離鍵から予定時間経過するまでは禁止する機能を含む。この付加機能によって、実質的に同時に複数の鍵が離鍵操作された場合はリトリガ設定されていたとしても再発音がされない。すなわち、押鍵されている複数の鍵の一つを離鍵した後、残りの鍵を押鍵したままある程度の時間保持しているときに再発音が行われる。したがって、演奏者の意図しないリトリガを防ぐことができる。
図3は、CPUのメインルーチンに係るフローチャートである。ステップS1では、各種レジスタ、カウンタ、フラグなどの初期化を行う。ステップS2では、パネル走査つまり操作パネル3の状態を検出する。ステップS3では、ステップS2の結果により操作パネル3の状態に変化があったか否か、つまりなんらかの操作が行われたか否かが判断される。操作パネル3に含まれるスイッチおよびボリューム類の操作が行われたと判断されたときはステップS4に進んで、検出されたスイッチ等の変化つまりスイッチ等の操作に対応したパネル処理を行う。リトリガの設定もこのパネル処理で行われる。
ステップS5では、鍵盤走査を行い、鍵盤インタフェース12の各キーセンサの出力を判別する。つまり、各鍵毎に押鍵・離鍵の有無、ならびにベロシティが検出される。ステップS6では、鍵盤走査の結果に基づき、鍵盤に変化があったか否かが判断される。つまり、押鍵されていた場合は離鍵されたか否か、離鍵されていた場合は押鍵されたか否かが判断される。
鍵盤に変化があった場合は、ステップS7に進んで鍵盤処理を行う。鍵盤処理は図4に関して後述する。ステップS8ではリトリガ処理を行う。リトリガ処理は図6に関して後述する。
図4は、鍵盤処理(ステップS7)の詳細なフローチャートである。ステップS70では、押鍵か否かが判断される。押鍵の場合はステップS71に進んで押鍵処理を行う。押鍵処理では、押鍵された鍵に対応する音高に対応する周期で楽音波形メモリ9から波形データを読み出し、音源装置5で楽音信号を生成し、サウンドシステム6に供給する。ステップS72では、離鍵か否かが判断される。離鍵の場合はステップS73に進んで離鍵処理を行う。離鍵処理は図5に関して次に説明する。
図5は、離鍵処理(ステップS73)の詳細なフローチャートである。ステップS730では、押鍵中の鍵の有無を判断する。押鍵中の鍵があれば、ステップS731に進み、発音条件が成立しているか否かが判断される。発音条件としては、リトリガを実行するように設定されていること、および、離鍵された鍵に対応する楽音が発音されていたこと等である。押鍵されている複数鍵のうち、現在発音中の音に対応していない鍵が離鍵されたときはリトリガさせないためである。リトリガされる鍵に関しても複数の鍵が押されている場合に優先付けが必要である。リトリガにおいても、高音優先か低音優先か、あるいは先押し優先か後押し優先か等が設定可能である。リトリガを実行するか否かは予め演奏に先立って操作パネル3から指示を入力して設定できる。
発音条件が成立した場合は、ステップS732に進んでカウンタをクリアする。このカウンタはリトリガによる発音を禁止する時間を計数するためのものであり、予め設定された指示値になるとカウントアップされる。このカウンタの加算は所定時間毎の割り込み処理によって行うことができる。
ステップS733では、発音条件が成立していることを示すフラグをセットする。ステップS734では、現在発音中の楽音を消音させる消音処理を行う。離鍵操作に対応する消音処理は周知のようにできるので説明は省略する。ステップS730および731の判断が否定であれば、消音だけを行うためステップS734にジャンプする。
図6は、リトリガ処理のフローチャートである。ステップS80では、前記フラグがセットされているか、つまりリトリガの発音条件が成立しているか否かを判別する。フラグがセットされていればステップS81に進んで前記カウンタの値が指示値以上か否かが判断される。このカウンタが指定値以上であれば、カウントアップしてステップS82に進み、発音処理が行われる。このカウンタの指示値は、音色に応じて可変とすることができる。
発音処理では、押されている鍵(キーナンバ)に対応する周期で楽音波形メモリ9から楽音波形データが音源装置5に読み出され楽音信号が生成される。押されている鍵が複数ある場合は、優先基準に従って選択された鍵に対応する楽音信号が生成される。ステップS83では、フラグがクリアされる。
図1は、本実施形態に係る単音優先機能を有する発音制御装置の要部機能を示すブロック図である。リトリガ設定部20は、リトリガ指示がされていることを示す記憶部であり、操作パネル3から入力されたリトリガ指示が登録される。発音中判別部21は、押鍵に対応する発音処理がなされたときにセットされて消音処理でクリアされるフラグで構成される。離鍵検出部22は、鍵盤インタフェース12の走査により離鍵操作(キーオフイベント)の有無を検出する。押鍵中鍵検出部23は、鍵盤インタフェース12の走査により押鍵中の鍵の有無を判断する。
リトリガ判別部24は、リトリガ指示が設定されていて、現在発音中の鍵が離鍵されて、かつ押鍵中の鍵が有ると判断されれば、カウンタ25を付勢してCPUのクロックパルスの計数を開始させる。
消音処理部26は、離鍵検出部22でキーオフイベントが検出されると、発音中の音の消音処理を行う。押鍵中鍵検出部23は、押鍵中鍵の有無を示す情報をリトリガ判別部24に供給するとともに、優先鍵選択部28に押鍵中の鍵のキー情報を入力する。優先鍵選択部28は一つの鍵が離鍵されたときに押鍵中の鍵から予定の優先基準で鍵を一つ選択してそのキー情報を発音処理部27に入力する。
発音処理部27は、カウンタ25のカウントアップに応答して押鍵中鍵検出部23から優先鍵のキー情報を受け取り、このキー情報に基づいて楽音信号を生成してサウンドシステム6に出力する。
このように、本実施形態ではリトリガの条件が成立したときでも、カウンタ25がカウントアップするまでは発音処理が禁止される。したがって、このカウントアップまでの時間に全ての鍵が離鍵されれば再発音は実行されない。つまり、押鍵中の複数鍵が実質的に同時に離鍵されたときはリトリガ機能が働かない。
カウンタ25の指示値は音色毎に変化させることができるようにしておくのが望ましい。また、音色選択スイッチによりピアノ等の減衰音が選択されたときにのみこのカウンタ25を有効にして、それ以外の音色が選択されたときには、リトリガ指示の設定が認識されたならばカウンタ25をバイパスして発音処理部27に発音処理の許可をするようにしてもよい。
本発明の一実施形態に係る発音制御装置の要部機能ブロック図である。 本発明の一実施形態に係る電子鍵盤楽器のシステム構成を示すブロック図である。 電子鍵盤楽器のメインフローチャートである。 鍵盤処理のフローチャートである。 離鍵処理のフローチャートである。 リトリガ処理のフローチャートである。
符号の説明
2…鍵盤、 22…離鍵検出部、 23…押鍵中鍵検出部、 24…リトリガ判別部、 25…カウンタ、 28…優先鍵選択部

Claims (1)

  1. 鍵盤と、鍵盤の各鍵の押鍵および離鍵を検出するセンサ手段とを有する電子楽器の発音制御装置において、
    同時に生じた複数の押鍵に対し、該複数の鍵のうち予定の基準で選択されたものに対応する楽音を発する発音手段と、
    前記選択された鍵の離鍵に応答して、対応する楽音の発音を停止する発音停止手段と、
    前記楽音の発音停止とともに、押鍵が維持されている鍵のうち予定の基準で選択されたものに対応する楽音を発する再発音手段と、
    前記離鍵後、前記再発音手段による発音を予定時間経過するまで禁止する再発音禁止手段と、
    音色を選択する音色スイッチとを具備し、
    前記発音手段および再発音手段が、減衰音を含む複数の音色のうち前記音色スイッチで選択された音色で楽音を発するように構成され、減衰音が選択されたときに前記再発音禁止手段を有効にするようにしたことを特徴とする電子楽器の発音制御装置。
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