JP4175126B2 - エキゾーストマニホールドの製造方法 - Google Patents
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Description
【技術分野】
本発明は、エンジンのシリンダから排出される排気ガスを集めてエキゾーストパイプに送るエキゾーストマニホールドの製造方法に関する。
【0002】
【背景技術】
エンジンのシリンダヘッドの開口に接続されて、前記エンジンのシリンダから排気ガスが排出される複数の分岐管と、前記複数の分岐管を束ねて固定し、前記分岐管により排出された排気ガスを集めてエキゾーストパイプに送る集合部材とを有するエキゾーストマニホールドが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば4気筒エンジンを対象とする上記のようなエキゾーストマニホールドの場合、一般的に、4本のパイプ部材を湾曲状に別々に成形し、所定の長さに切断し、各パイプ部材の両端の開口端部の断面形状をシリンダヘッド及び集合部材の開口形状に合わせるようにそれぞれ成形することにより、4本の分岐管が形成されている。さらに、このように成形された4本の分岐管の一方の開口端部を束ねるようにして集合させ、各分岐管同士を溶接して集合部材に挿入することにより、このエキゾーストマニホールドが製造されている。
【0004】
しかしながら、このようなエキゾーストマニホールドの製造方法では、4本の分岐管を製造するに際して、1本の分岐管に対して1本のパイプ部材を必要とするため、切断工数が多くなるとともに、切断工程におけるパイプ部材の歩留まりが決して良いものとは言い難かった。
【0005】
また、4本の分岐管がそれぞれ別々のパイプ部材で構成されているため、これらを束ねて溶接する際に、必然的に溶接部位が多くなるだけでなく、各パイプ部材の先端部の位置ズレにより段差が生じ、良好な溶接品質を維持できるものとは言い難かった。これらの問題は、エンジンのシリンダの数が増加するにつれてとりわけ顕著となる。
【0006】
【特許文献1】
実開平2−61123号公報
【0007】
【発明の開示】
本発明は、エンジンのシリンダから排出される排気ガスを集めてエキゾーストパイプに送るエキゾーストマニホールドの製造方法に関し、特に材料の歩留まりが向上し、良好な品質を確保可能なエキゾーストマニホールドの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明によれば、複数の分岐管を有し、エンジンの複数のシリンダから排出される排気ガスを集めてエキゾーストパイプに送るエキゾーストマニホールドの製造方法であって、一本のパイプ部材を前記分岐管の二本分と実質的に同一の長さに切断するステップと、前記パイプ部材に二つの孔を形成するステップと、前記二つの孔の間の一方を継げるように、前記パイプ部材の二つの孔の間の一方を切断して、前記二つの孔の間の他方に、切断されていない非切断領域を形成するステップと、前記非切断領域を中心に、前記パイプ部材を折り曲げて二本の分岐管を一体で形成するステップとを有するエキゾーストマニホールドの製造方法が提供される。
【0009】
本発明では、エキゾーストマニホールドの製造方法において、所定の長さで切断された一本のパイプ部材に、二つの孔を形成し、当該二つの孔の間の一方を継げるように切断し、切断されていない二つの孔の間の他方に、切断されていない非切断領域を形成し、この非切断領域を中心に前記パイプ部材を折り曲げて二本の分岐管を一体で形成する。
【0010】
このように、一本のパイプ部材から、エキゾーストマニホールドの二本の分岐管を一体で形成することにより、パイプ部材を分岐管の長さに合わせる切断工程を半減することが可能となると共に、パイプ部材の歩留まりも向上する。
【0011】
また、一本のパイプ部材から二本の分岐管が一体で形成されており、この2本の分岐管が、非切断領域で既に連結されているため、複数の分岐管を束ねて溶接する際の、溶接箇所が減少すると共に、各分岐管の端部の位置ズレにより段差が生じることを防止することが可能となり、良好な品質を確保することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は本発明の実施形態におけるエキゾーストマニホールドの全体を示す図であり、図1(A)は正面図、図1(B)は平面図、図1(C)は側面図である。図2は本発明の実施形態におけるエキゾーストマニホールドの製造方法の第1工程及び第2工程を示す概略図、図3は本発明の実施形態におけるエキゾーストマニホールドの製造方法の第3工程及び第4工程を示す概略図、図4は本発明の実施形態におけるエキゾーストマニホールドの製造方法の第5工程を示す概略図、図5は本発明の実施形態におけるエキゾーストマニホールドの製造方法の第6工程を示す概略図、図6は図5に示す第6工程において用いられる治具を示す図であり、図6(A)は正面図、図6(B)は平面図、図6(C)は側面図である。図7は図5の第6工程における金型成形を示す図であり、図7(A)は正面断面図、図7(B)は側面断面図、図8(A)は角度指定がある分岐管の平面図、図8(B)は角度指定に対応するための治具の平面図、図9は本発明の実施形態におけるエキゾーストマニホールドの製造方法の第7工程を示す概略図である。
【0014】
まず、本発明の実施形態において製造されるエキゾーストマニホールド4の構造について説明する。
【0015】
図1に示すように、本発明の実施形態において製造されるエキゾーストマニホールド4は、4気筒エンジン1に具備された各シリンダから排出される排気ガスを集めて、エキゾーストパイプ11に送るものであり、フランジ5と、4本の分岐管6〜9と、集合部材10とから構成されている。
【0016】
フランジ5は、エンジン1のシリンダヘッド2に気密状に取り付けられており、当該シリンダヘッド2に形成された4つの排気ポート3の第1の開口部3aと対応する位置に、略楕円形状の4つの第2の開口部5aが形成されている。
【0017】
4本の分岐管6〜9は、図1に示すように、各々所定の形状に湾曲したパイプ部材であり、各分岐管6〜9の一方の端部が、前記フランジ5に形成された4つの第2の開口部5aにそれぞれ接合されており、エンジン1の排気ポート3と当該分岐管6〜9が連通している。また、当該分岐管6〜9の一方の端部は、フランジ5の第2の開口部5aの開口形状に対応するような略楕円形状を有している。
【0018】
集合部材10は、全体としてテーパ形状であり、端部に略円形形状の第3の開口部10bを有する集合管部10aと、エキゾーストパイプ11の端部にボルト等により取り付けられるフランジ部10cとから構成されており、集合管部10aの第3の開口部10bには、4本の分岐管6〜9の他方の端部が束ねられて挿入されている。4本の分岐管6〜9の他方の各端部は、集合部材10の集合管部10aの第3の開口部10bに挿入可能なように、略扇形状を有しており、これら分岐管6〜9が束ねられると、集合管部10aの第3の開口部10bの開口形状に対応するような略円形形状となる。集合部材10のフランジ部10cには、第4の開口部10dが、前記集合管部10aの第3の開口部10bと連通して設けられている。
【0019】
従って、以上のように構成されるエキゾーストマニホールド4は、エンジン1の排気ポート3から排出される排気ガスを、フランジ5の第1の開口部5a及び各分岐管6〜9を介して、集合部材10に集め、集合部材10のフランジ部10cの第4の開口部10dを経て、当該集合部材10のフランジ部10cに取り付けられたエキゾーストパイプ11に送る。
【0020】
以下に、本発明の実施形態に係るエキゾーストマニホールドの製造方法について説明する。
【0021】
先ず、エキゾーストマニホールドの第1工程として、図2に示すように、直線状のパイプ部材20を、パイプベンダー等により、エキゾーストマニホールド4の第1の分岐管6と、当該第1の分岐管6に隣り合う第4の分岐管9との2本分の湾曲形状にまとめて成形する。図2において、パイプ部材20の分割線21を境界として、パイプ部材20の第1の部分R1の形状は、エキゾーストマニホールド4の第1の分岐管6の形状に相当し、パイプ部材20の第2の部分R2の形状は、第4の分岐管9の形状に相当するように成形される。同様に、別のパイプ部材を、エキゾーストマニホールド4の第2及び第3の分岐管7、8に相当する湾曲形状に成形する。
【0022】
次に、第2工程において、図2に示すように、第1工程において湾曲形状に成形されたパイプ部材20の両端部を切断し、パイプ部材20の第1の部分R1の長さが第1の分岐管6の長さに後述する第6工程の先端揃えを考慮した長さと実質的に同一にすると共に、第2の部分R2の長さを第4の分岐管6の長さに第6工程の先端揃えを考慮した長さと実質的に同一にする。同様に、別のパイプ部材の両端部を切断し、当該パイプ部材の各部分の長さを、第2の分岐管7及び第3の分岐管8の長さに第6工程の先端揃えを考慮した長さと実質的に同一にする。
【0023】
次に、第3工程において、図3に示すように、第2工程において所定長さに切断されたパイプ部材20の分割線21の円周上に、ドリル等により、間隔Aを空けて2つの貫通孔22を形成する。エキゾーストマニホールド4の第2及び第3の分岐管7、8を形成する別のパイプ部材にも、同様の貫通孔を形成する。なお、この2つの貫通孔22を形成する前後に、集合部材10の集合管部10aに挿入可能とするために、当該貫通孔22の近傍を直線状に成形しても良い。
【0024】
当該2つの貫通孔22の間隔Aは、4本の分岐管6〜9を束ねて集合部材10の集合管部10aに挿入するために、第1の分岐管6及び第4の分岐管9の端部が略扇形状に成形される際の当該略扇形状の半径rに従って設定されている。
【0025】
次に、第4工程において、2つの貫通孔22の間を継ぐように、2つの貫通孔22の間の切断部分23を切断する。エキゾーストマニホールド4の第2及び第3の分岐管7、8を形成する別のパイプ部材も、同様に切断する。図3において、切断部分23は点線にて示されている。2つの貫通孔22の間を切断することにより、パイプ部材20の分割線21上に折り曲げ部分24(非切断領域)が形成される。
【0026】
次に、第5工程において、図4に示すように、折り曲げ部分24を中心として、パイプ部材20の第1の部分R1と第2の部分R2とを互いに180°程度回転させて、パイプ部材20を折り曲げる。同様に、エキゾーストマニホールド4の第2及び第3の分岐管7、8を形成する別のパイプ部材も折り曲げる。この第5工程におけるパイプ部材20の折り曲げにより、第1の部分R1及び第2の部分R2の分割線21上の端部に、第5の開口部25aがそれぞれ開口する。
【0027】
このように、一本のパイプ部材を折り曲げて、エキゾーストマニホールドの二本の分岐管を一体で形成することにより、パイプ部材を分岐管の長さに合わせる切断工程を半減することが可能となると共に、パイプ部材の歩留まりも向上する。
【0028】
なお、この折り曲げ時に、貫通孔22から亀裂が生じないように、第3工程で形成される貫通孔22の孔径を設定する必要がある。例えば、パイプ部材20の肉厚が約2mmである場合には、貫通孔22の孔径は約3〜4mmが好ましい。
【0029】
次に、第6工程において、図5に示すように、治具30を用いて、パイプ部材20に形成された第5の開口部25aを、略扇形状に成形する。図5において、当該押圧前のパイプ部材20の第5の開口部25aを実線で示し、押圧後のパイプ部材20の第5の開口部25bを点線で示す。
【0030】
この第6工程で用いられる治具30は、図6(A)〜(C)に示すように、略扇形の断面形状を持ち、全体としてテーパ形状である2つの扇部31と、これら扇部31を保持するベース部32と、2つの扇部31の間に形成された溝33とを有しており、2つの扇部31が、パイプ部材20に形成された2つの第5の開口部25aにそれぞれ挿入可能となっている。
【0031】
図7(A)及び(B)に示すように、治具30の2つの扇部31を、パイプ部材20の2つの第5の開口部25aに挿入し、プレス機等の上型40及び下型50により上下方向から所定の押圧力で印加する。これにより、パイプ部材20の各第5の開口部25aが、略扇形状に成形され、第1の分岐管6及び第4の分岐管9の各端部が形成される。
【0032】
この際、治具30に形成された溝33に、パイプ部材20の折り曲げ部分24が入り込むため、第1の分岐管6の端部と第4の分岐管9の端部とを連結して、且つ、同時に形成することが可能となっている。なお、治具30のベース部32は、図7(B)に示すように、扇部31より大きな外形を有しているため、扇部31の第5の開口部25aへの挿入時においてストッパとして機能する。
【0033】
また、第1の分岐管6と第4の分岐管9との成す角度が指定されている場合には、治具30の溝33の角度を調整することにより容易に対応することが可能となっている。例えば、図8(A)に示すように、第1の分岐管6と第4の分岐管9との成す角度がD°に指定されている場合には、図8(B)に示すような、当該角度D°に対してスプリングバック等を考慮した、先端に向かって徐々に幅広となるような角度D’°を具備した溝33’を有する治具30’を用いて、パイプ部材20の第5の開口部25aを成形することにより、第1及び4の分岐管6、9の端部を連結して同時に形成することが可能になると共に、当該分岐管6、9の角度指定に容易に精度良く対応することが可能となる。
【0034】
この第1及び第4の分岐管6、9の端部の成形の前後に、当該第1及び第4の分岐管6、9の反対側の端部の開口を、フランジ5の第2の開口部5aに対応するような略楕円形状に、プレス機等により成形される。なお、切断等により当該端部の先端が揃えられても良い。第3及び第4の分岐管7、8を形成する別のパイプ部材についても、同様に両端部の成形及び切断が行っても良い。なお、分岐管6〜9の集合部材10側の端部は、先端揃えのための切断を行う必要はない。
【0035】
次に、第7工程として、図9に示すように、第1の分岐管6及び第4の分岐管9を形成するパイプ部材20の第5の開口部25aと、第2の分岐管7及び第3の分岐管8を形成するパイプ部材20’の第5の開口部25a’とを束ねるように集合させる。そして、同図中の接合部分26aにおいて、第1の分岐管6と第2の分岐管7とを溶接等により接合すると共に、同図中の接合部分26bにおいて、第3の分岐管8と第4の分岐管9とを溶接等により接合する。なお、それぞれ同一のパイプ部材から形成されている第1の分岐管6及び第4の分岐管9と、第2の分岐管7及び第3の分岐管8とは、折り曲げ部分24、24’でそれぞれ連結されているため、溶接等を行う必要はない。
【0036】
このように、一本のパイプ部材から形成された2本の分岐管が、折り曲げ部分により予め連結されているため、複数の分岐管を束ねて接合する工程において、全体として接合箇所が減少すると共に、各分岐管の端部の位置ズレにより段差が生じることを防止することが可能となり、良好な品質を確保することができる。
【0037】
次に、第8工程として、束ねられて接合された第1〜4の分岐管6〜9の端部を集合部材10の集合管部10aに挿入して固定すると共に、これらの反対側の各端部をフランジ5の第2の開口部5aに取り付けることにより、図1に示すようなエキゾーストマニホールド4が製造される。
【0038】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。例えば、上記の実施形態においては、4気筒エンジンに適用されるエキゾーストマニホールドの製造方法について説明したが、本発明は特にこれに限定されることなく、例えば6気筒エンジンに適用されるエキゾーストマニホールドを製造することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の実施形態におけるエキゾーストマニホールドの全体を示す図であり、図1(A)は正面図、図1(B)は平面図、図1(C)は側面図である。
【図2】図2は本発明の実施形態におけるエキゾーストマニホールドの製造方法の第1工程及び第2工程を示す概略図である。
【図3】図3は本発明の実施形態におけるエキゾーストマニホールドの製造方法の第3工程及び第4工程を示す概略図である。
【図4】図4は本発明の実施形態におけるエキゾーストマニホールドの製造方法の第5工程を示す概略図である。
【図5】図5は本発明の実施形態におけるエキゾーストマニホールドの製造方法の第6工程を示す概略図である。
【図6】図6は図5に示す第6工程において用いられる治具を示す図であり、図6(A)は正面図、図6(B)は平面図、図6(C)は側面図である。
【図7】図7は図5に示す第6工程における金型成形を示す図であり、図7(A)は正面断面図、図8(B)は側面断面図である。
【図8】図8(A)は角度指定がある分岐管の平面図、図8(B)は角度指定に対応するための治具の平面図
【図9】図9は本発明の実施形態におけるエキゾーストマニホールドの製造方法の第7工程を示す概略図である。
【符号の説明】
4…エキゾーストマニホールド
5…フランジ
6〜9…第1〜4の分岐管
10…集合部材
10a…集合管部
10b…第3の開口部
10c…フランジ部
10d…第4の開口部
20…パイプ部材
21…分割線
22…貫通孔
23…切断部分
24…折り曲げ部分
25a…第5の開口部
26…接合部分
30…治具
31…扇部
32…ベース部
33…溝
Claims (3)
- 複数の分岐管を有し、エンジンの複数のシリンダから排出される排気ガスを集めてエキゾーストパイプに送るエキゾーストマニホールドの製造方法であって、一本のパイプ部材を前記分岐管の二本分と実質的に同一の長さに切断するステップと、
前記パイプ部材に二つの孔を形成するステップと、
前記二つの孔の間の一方を継げるように、前記パイプ部材の二つの孔の間の一方を切断して、前記二つの孔の間の他方に、切断されていない非切断領域を形成するステップと、
前記非切断領域を中心に、前記パイプ部材を折り曲げて二本の分岐管を一体で形成するステップとを有するエキゾーストマニホールドの製造方法。 - 前記パイプ部材を折り曲げて一体で成形された二本の分岐管の非切断領域側の開口端部を同時に押圧して、前記二本の分岐管の前記開口端部を略扇型断面形状に成形するステップをさらに有する請求項1記載のエキゾーストマニホールドの製造方法。
- 前記一本のパイプ部材を折り曲げて形成された二本の分岐管の折り曲げ角度を任意の角度で固定しながら、前記二本の分岐管の開口端部を同時に押圧する請求項2記載のエキゾーストマニホールドの製造方法。
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