以下、本発明の実施の形態を示して、本発明を詳細に説明する。
本発明のキャリアの製造方法は、バインダー樹脂と、このバインダー樹脂中に分散され少なくとも磁性体を含む金属化合物粒子と、を含有する磁性体分散型樹脂キャリアコアの製造方法において、少なくとも、撹拌−せん断作用により、キャリアコア粒子にシェアをかけた後に所定粒度以下の粒子および前記撹拌−せん断作用により破砕された粒子を分級する工程を含むことが大きな特徴である。
磁性体分散型樹脂キャリア粒子(コア)を得るための製造方法としては、各種の方法で製造することができる。重合法により磁性体分散型樹脂キャリア粒子を造粒する場合には、モノマー中に磁性体、重合開始剤を溶解又は分散させたモノマー系原料を、分散安定剤が含有されている水相中によく分散される様に撹拌器で撹拌しながら、所望の粒度になる様に条件を保ちつつ重合させ、反応終了後に洗浄ろ過して磁性体分散型樹脂キャリア粒子を得る。
こうして得られた磁性体分散型樹脂キャリア粒子(コア)は、そのほとんどが1個の粒子からなるものであるが、一部には、中心粒径に対して約0.5倍以下の粒子が2個以上固まったような粒子や、中心粒径付近の粒子に、中心粒径の約0.5倍程度以下の粒子が付着したような粒子、いわゆる合一化粒子が多少なりとも存在していた。
重合法による造粒方法においては、造粒の不均一や未反応残存モノマー起因の合一がきっかけと思われるような、2個一粒子や3個一粒子が観測される場合があった。
これらの合一粒子は、合一した部分の強度が弱いために、現像器の中でストレスを受けた場合、粒子が分解、小粒径化し、感光体へのキャリア付着を引き起こすことで、感光体傷、定着ローラーの傷、もしくは画像部へのキャリア付着を起こしてしまうことがあった。また、合一化粒子が分解した界面へ、トナーが付着してしまうことにより、キャリアの帯電付与性能が低下してしまう場合もあった。さらには、界面において磁性粉が露出してしまうことでキャリア粒子の表面抵抗が低下し、現像バイアスのリークを引き起こしてしまうこともあった。
また、本発明者らの検討によれば、このような合一化粒子は、通常の粒子と比較して、感光体へのキャリア付着がしやすい粒子であることが分かっている。その理由は明確ではないが、おそらく磁気特性によるもの、形状因子によるものと考えている。
その結果、現像器の中での粒子の分解が起こらなかった場合においても、感光体へ付着し、通常のキャリア付着で起こり得るような画像欠陥を起こすばかりか、転写部あるいはクリーニング部においてストレスを受け、粒子が分解することで、2倍、3倍に画像欠陥の頻度が増えていってしまう場合があった。
そこで、本発明においては、磁性体分散型樹脂キャリア粒子を得た後に、撹拌−せん断作用により、キャリアコア粒子にシェアをかけ、合一粒子をあらかじめ解砕しておくという工程をとる。その後、所定粒度以下の粒子および前記撹拌−せん断作用により破砕された粒子を分級するという工程を行なう。このことによって、キャリア付着防止により効果的で、上記弊害のないキャリアコア粒子を得ることができた。
本発明において、合一粒子解砕工程に使用する装置について、例を用いて説明する。言うまでもないが、合一化粒子が解砕されるために充分であり、なおかつ、キャリアコア粒子の磁性体剥がれがおきない程度のシェアをかけられる装置であれば、特にその構成に制限はない。
図1は、円錐状の内周壁面を持ち、槽底の中心を垂直に貫く駆動軸を持った撹拌羽を有している撹拌混合装置である。
逆円錐形状の撹拌混合容器8の上部に2重らせん構造をしたリボン翼11が回転するように構成されている。このような構成をすることによって、容器9内に供給された磁性体分散型樹脂キャリア粒子(コア)を、下方から上方に持ち上げながら撹拌と分散とを繰り返し付与できるので、容器8内の原料を全体にわたって効率よく撹拌させることができ、粒子に適度なストレスを与えることができる。また、撹拌翼については、1重らせん構造を持ったものを用いても良い。
図2は、円錐状の内周壁面に沿って配設した螺旋翼を有する回転軸を、モータにより公転および自転可能に構成した撹拌混合装置の模式図である。
撹拌翼として、スクリュー式の撹拌翼2を用いている。そして撹拌翼2が逆円錐形状の撹拌混合容器8の上部に設けられており、該撹拌翼2が回転(自転)しながら容器2の内周面に沿って旋回(公転)するように構成されている。磁性体分散型樹脂キャリア粒子(コア)は、逆円錐形状の撹拌混合容器8の上部に設けられた原料供給口6から供給され、撹拌翼2の自転によって乾燥容器8の内壁面に沿って上部方向に運ばれ、撹拌翼2の終端では、その回転力により周辺にまき散らされる。そして、撹拌翼2の自転と同時に行われる公転により、磁性体分散型樹脂キャリア粒子(コア)は水平の円運動を与えられる。撹拌翼2により磁性体分散型樹脂キャリア粒子(コア)は上部へ運ばれるため、撹拌混合容器8内下部で空間が生じ、その空間に磁性体分散型樹脂キャリア粒子(コア)が重力により落下していく。以上のように撹拌混合容器8内の磁性体分散型樹脂キャリア粒子(コア)が下方から上方に持ち上げられながら撹拌と分散が繰り返されるので、磁性体分散型樹脂キャリア粒子(コア)が撹拌混合容器8内全体にわたって効率よく撹拌され、粒子に適度なストレスを与えることができる。
図3は、処理槽における槽底の中心を垂直に貫く駆動軸を持った撹拌羽を有している流動撹拌型混合装置である。
31は撹拌混合容器であり、撹拌混合容器の中心に混合羽根32,33が設けられ、モータ36により回転するように構成されている。また、混合羽根先端部分は、球状、卵形状又は円柱形状を有することにより、その断面積をより大きくすることができる。なお、37はディフレクター、38は原料供給口、39は排出シュートである。
磁性体分散型樹脂キャリア粒子(コア)は原料供給口38より、撹拌混合容器31に投入され、回転羽根32,33の回転力で混合室内壁に押しつけられて旋回し、回転羽根の先端部分により混合される。さらに、ディフレクターにより、一度壁面より剥離され分散されて再び混合室内壁に押しつけられて旋回混合される。この操作が繰り返されて安定した混合が行われ、粒子に適度なストレスを与えることができる。
図4は、中心軸線を回転軸として回転可能な円筒容器を有し、前記円筒容器の内部に内壁に沿って螺進する複数本のリボンスクリユー状の外羽根と、この外羽根の内側に配設されかつ外羽根とは逆方向に螺進する複数本のリボンスクリュー状の内羽根を設けた円筒型混合装置である。
磁性体分散型樹脂キャリア粒子(コア)は原料供給口58より、撹拌混合容器54に投入され、混合終了後に59から排出される構成になっている。撹拌混合容器が、排出口から見て時計回りに回転することで、リボンスクリュー状の外羽根60が、撹拌混合容器の内壁62に近い側の磁性体分散型樹脂キャリア粒子(コア)を排出口59から原料供給口58のほうに向かって移動させる。また、内羽根61は、撹拌混合容器の中心側の磁性体分散型樹脂キャリア粒子を原料供給口から排出口のほうに向かって移動させることによって混合される。この操作が繰り返されることによって安定した混合が行われ、粒子に適度なストレスを与えることができる。
本発明の磁性体分散型樹脂キャリアは、微小圧縮硬度試験機による粒子破壊を引き起こす平均負荷量をa(gf/cm2)、とした時に、1/2a以下の負荷量で破壊が引き起こされる粒子の個数%(N1)が、0%〜1.5%である。
強度の弱い粒子がキャリア全粒子中に1.5%以上存在すると、先に述べたような弊害を引き起こす。
微小圧縮硬度試験は、島津製作所の微小圧縮硬度試験機(MCTM−500)により、50μmの平面圧子を用い、変位スケール50μm、負荷50gf、負荷速度15の条件で1000個の粒子を測定することによって行った。
磁性体分散型樹脂キャリアの粒径は、体積基準による50%平均粒径で25〜60μmが好ましい。磁性体分散型樹脂キャリアの粒径が、25μm以下であるとキャリアの粒度分布のうち、微粒子側の通常粒子による非画像部へのキャリア付着を良好に防止できない場合があり、60μmより大きいと、二成分現像方式である現像装置において、磁気ブラシの緻密さが損なわれやすくなり、画像のムラを生じてしまう場合がある。
(キャリアの粒径の測定方法)
磁性体分散型樹脂キャリアの粒径の測定は、シンパテック(SYNPATEC)社製で乾式分散機(ロドス<RODOS>)を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置(へロス<HELOS>)を用いてキャリアの体積基準の50%平均粒径として測定する。
また、本発明の磁性体分散型樹脂キャリアの粒度分布として、メッシュ法による20μm以下のキャリアの含有率が0.01〜10質量%であり、74μm以上の含有率が0.1〜20質量%であることが望ましい。20μm以下のキャリアが0.01質量%未満であった場合、現像剤が密に詰まりやすくなり、現像剤劣化を起こしやすくなる。10質量%超であった場合、キャリアの微粉による通常粒子のキャリア付着を生じる傾向がある。74μm以上の粒子が0.1質量%未満であった場合に関しても、高密度による現像剤劣化を引き起こしやすく、20質量%超であった場合には、磁気ブラシの緻密さが損なわれやすくなり、画像のムラを生じてしまう場合がある。
さらに、メッシュ法による20μm以下の磁性体分散型樹脂キャリアの1000/4πにおける磁気特性σ1000は、20〜80Am2/kgであることが好ましい。磁気特性が20Am2/kg未満であった場合、キャリア付着が生じやすくなる。また、80Am2/kg超であることは、現像器内における現像スリーブ上からキャリアが剥ぎ取られにくくなり、選択的にキャリアの劣化を起こしてしまう。
メッシュ法による20μm以下の微粉量および74μm以上の粗粉量の測定は、各目開きのメッシュを用意し、電磁式実験用ふるい振とう機(フリッチェ・ジャパンアナリセット3型)を用いて測定する。条件は、Timer=5min、Amplitude強度=2とし、試料は1kg用いる。
本発明における磁性体分散型樹脂キャリアは、金属化合物粒子の含有量が80〜99質量%であることが好ましい。金属化合物粒子の量が80質量%未満であると帯電性が不安定になりやすく、特に低温低湿環境下においてキャリアが帯電し、その残留電荷が残存しやすくなるために微粉トナーや外添剤等がキャリア表面に付着しやすくなる。さらに、トナーの劣化に対して効果的な適度な比重が得られ難くなる。また、99質量%を超えるとキャリア強度が低下して、耐久によるキャリアの割れなどの問題を生じやすくなる。
磁性体分散型樹脂キャリアの金属化合物粒子含有率は、初期のキャリアの質量(W1)とpHが1以下の強酸で24h以上処理した後に残った、残渣の質量(W2)を測定し、以下の式により求める。
(W1−W2)/W1×100
磁性体分散型樹脂キャリアの真比重は2.5〜4.5が好ましく、さらには2.8〜4.2が好ましい。真比重が4.5を超えるとキャリアの質量によるトナーの劣化を引き起こしやすい。一方、真比重が2.5未満であると、磁性体分散型樹脂キャリアの磁気特性とも関係するが通常粒子によるキャリア付着が生じやすくなる。
真比重の測定は、密度計(マイクロメリティクス社製、マルチボリウム密度計を用いて測定した。
磁性体分散型樹脂キャリアの比抵抗は、1×108〜1×1016Ω・cmであることが好ましく、より好ましくは1×109〜1×1015Ω・cmであること、さらに好ましくは1×1010〜1×1014Ω・cmであることが好ましい。磁性体分散型樹脂キャリアの比抵抗が1×108Ω・cm未満であると、現像バイアスの注入によると思われる通常粒子によるキャリア付着が起こりやすくなる。磁性体分散型樹脂キャリアの比抵抗が1×1016Ω・cmを超えると、エッジ強調のきつい画像が形成され易く、さらに、キャリア表面の電荷がリークしづらくなるため、チャージアップ現象による画像濃度の低下や、新たに補給されたキャリアとトナーとの帯電が不均一になることによるカブリ及び飛散などを起こしてしまうことがある。その他、静電気的な外添剤付着が促進されるなど、画像欠陥を引き起こしやすい。
磁性体分散型樹脂キャリアの抵抗測定は、真空理工(株)社製の粉体用絶縁抵抗測定器を用いて測定する。測定の条件は、23℃,60%条件下に24h以上放置したキャリアを直径20mm(283cm2)の測定セル中にいれ、120g/cm2の荷重電極で挟み、厚みを2mmとし、印加電圧を500Vで測定する。
磁性体分散型樹脂キャリアの磁気特性は、1000/4π(kA/m)での磁化の強さσ1000が30〜80Am2/kgであることが良く、好ましくは40〜80Am2/kg、より好ましくは50〜80Am2/kgであることが好ましい。さらに、残留磁化σrは0.1〜20Am2/kgであることが好ましい。
σ1000が80Am2/kgを超えると、磁性体分散型樹脂キャリアの粒径にも関係するが、現像器内でのストレスが大きくなりキャリア劣化が促進され、特に多数枚の複写又はプリントによる現像剤の耐久劣化が生じやすい。30Am2/kg未満では、キャリア微粉をカットしてもキャリアの磁気力が低下し、キャリア付着が生じやすくなる。
また、σrが0.1Am2/kgより小さいと、特に重合法などを用いて製造した球形トナーと球形キャリアとを使用した場合、流動性が良すぎてトナーとキャリアが密に詰まりやすくなり、補給用現像剤の劣化、補給不良などを起こしやすくなる。逆に20Am2/kgより大きい場合には、キャリアのチェーン化などによりキャリアにトナーがうまく混合せず、帯電不良につながり、ひいては補給不良につながってしまう。
磁気特性の測定は、理研電子(株)製の振動磁場型磁気特性自動記録装置BHV−35を用いて行う。磁性体分散型樹脂キャリアの磁気特性値は、1000/4π(kA/m)の外部磁場を作り、そのときの磁化の強さを求める。キャリアを円筒状のプラスチック容器にキャリアが動かないように十分密になるようにパッキングした状態に作製し、この状態で磁化モーメントを測定し、試料を入れたときの実際の質量を測定して、磁化の強さ(Am2/kg)を求める。
磁性体分散型樹脂キャリアに用いる金属化合物粒子としては、磁性を示すMO・Fe2O3またはMFe2O4の式で表されるマグネタイト又はフェライトが挙げられる。式中、Mは3価、2価あるいは1価の金属イオンを示す。Mとしては、Mg、Al、Si、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、Sn、Ba、Pb、Liが挙げられる。
Mは単独あるいは複数で用いることができる。例えばマグネタイト、Zn−Fe系フェライト、Mn−Zn−Fe系フェライト、Ni−Zn−Feフェライト、Mn−Mg−Fe系フェライト、Ca−Mn−Fe系フェライト、Ca−Mg−Fe系フェライト、Li−Fe系フェライト、Cu−Zn−Fe系フェライト等の鉄系酸化物が挙げられる。
上記磁性を示す金属化合物粒子と下記非磁性の金属化合物粒子とを混合して用いても良い。例えば、非磁性の金属化合物粒子としては、Al2O3、SiO2、CaO、TiO2、V2O5、CrO、MnO2、α−Fe2O3、CoO、NiO、CuO、ZnO、SrO、Y2O3、ZrO2が挙げられる。このように、少なくとも2種以上の金属化合物粒子を混合して用いる場合には、比重や形状が類似している金属化合物粒子を用いるのが、結着樹脂との密着性及びキャリアの強度を高めるためにより好ましい。例えば、マグネタイトとヘマタイト、マグネタイトとγ−Fe2O3、マグネタイトとSiO2、マグネタイトとAl2O3、マグネタイトとTiO2、の組み合わせが好ましく用いることができる。中でもマグネタイトとヘマタイトの組み合わせが特に好ましく用いることができる。
上記の金属化合物粒子を使用する場合、磁性を示す金属化合物粒子の個数平均粒径は、キャリアの粒径によっても変わるが、0.02〜2μmのものが好ましい。2種以上の金属化合物粒子を用いる場合、磁性を示す金属化合物の個数平均粒径は0.02〜2μmのものが好ましく、他方の非磁性の金属化合物粒子の個数平均粒径は0.05〜5μmのものが好ましい。
この場合、磁性を示す金属化合物粒子の個数平均粒径(平均粒径ra)と他方の非磁性の金属化合物粒子の個数平均粒径(平均粒径rb)の粒径比rb/raは、1を超え5以下であることが好ましく、より好ましくは1.2以上5.0以下が良い。1.0倍以下であると比抵抗の低い強磁性を示す金属化合物粒子が表面に出やすくなり、キャリアの比抵抗を上げにくく、キャリア付着を防止する効果が得られにくくなる。また5倍を超えると、キャリアの強度が低下しやすく、キャリア破壊を引き起こしやすくなる。
金属酸化物粒子の個数平均粒径は、以下のように測定する。日立製作所(株)製の透過型電子顕微鏡H−800により5000〜20000倍に拡大した写真画像を用い、ランダムに粒径0.01μm以上の粒子を300個以上抽出し、ニレコ社(株)社製の画像処理解析装置Luzex3により水平方向フェレ径をもって金属酸化物粒子の粒径として測定し、平均化処理して個数平均粒径を算出する。
結着樹脂に分散される金属化合物粒子の比抵抗は、磁性を示す金属化合物粒子が1×103Ω・cm以上の範囲のものが好ましく、特に2種以上の金属化合物粒子を混合して用いる場合には、磁性を示す金属化合物粒子の比抵抗が1×103Ω・cm以上の範囲が好ましく、他方の非磁性の金属化合物粒子は磁性を示す金属化合物粒子よりも高い比抵抗を有するものを用いることが好ましい。好ましくは、本発明に用いる非磁性の金属化合物粒子の比抵抗は1×108Ω・cm以上、より好ましくは1×1010Ω・cm以上のものが良い。
磁性を示す金属化合物粒子の比抵抗が1×103Ω・cm未満であると、含有量を減量しても所望の高比抵抗が得られにくく、電荷注入を招き、画質を落としたり、キャリア付着を招きやすい。
また、2種以上の金属化合物粒子を使用する場合には、非磁性の金属化合物粒子の比抵抗が1×108Ω・cm未満であると、磁性体分散型樹脂キャリアの比抵抗が低くなり、本発明の効果が得られにくくなることから好ましくない。
金属化合物粒子の比抵抗測定方法は、キャリアの比抵抗測定方法に準じる。
2種以上の金属化合物粒子を分散した磁性体分散型樹脂キャリアにおいて、含有する金属化合物粒子全体に占める磁性を示す金属化合物粒子の含有量は50〜95質量%である。50質量%未満であると、磁性体分散型樹脂キャリアの高抵抗化は良好になる反面、キャリアとしての磁気力が小さくなり、キャリア付着を招く場合がある。また、95質量%を超えると、磁性を示す金属化合物粒子の比抵抗にもよるが、より好ましい磁性体分散型樹脂キャリアの高抵抗化がはかれない場合がある。
本発明に用いる磁性体分散型樹脂キャリアの結着樹脂としては、熱硬化性樹脂が好ましく、さらには一部又は全部が3次元的に架橋されている樹脂、例えばフェノール樹脂を含有する熱硬化性樹脂であることが好ましい。この樹脂を用いることにより、分散する金属化合物粒子を強固に結着出来る為、磁性体分散型樹脂キャリアの強度をアップさせることが出来、多数枚の複写においても金属化合物粒子の脱離が起り難くなる。
本発明においては、磁性体分散型樹脂キャリアをキャリアコアとして、該キャリアコアの表面を樹脂及び/又はカップリング剤により処理されるコートキャリアを用いることが好ましい。磁性体分散型樹脂キャリアの結着樹脂として熱硬化性樹脂を用いることにより、キャリアコアの表面を処理しコートキャリアとした場合に、良好にコートすることができる。
磁性体分散型キャリアコアを得る方法としては、特に限定されるものではないが、本発明においては、結着樹脂となるモノマーと上記金属化合物粒子と溶媒が均一に分散又は溶解されている様な溶液中でモノマーを重合させることにより、キャリアコアを生成する重合法の製造方法、特に、キャリアコア中に分散する金属化合物粒子に親油化処理を施すことにより、粒度分布のシャープな微粉の少ない磁性体分散型樹脂キャリアコアを得る方法が、好適に用いられる。
高画質化を達成するために重量平均粒径が3〜10μmのように小粒径トナーの場合、キャリア粒径もトナーに応じて小粒径化することが好ましく、上述した製造方法であれば、キャリア粒径が小粒径化しても平均粒径に関係なく微粉の少ないキャリアを製造できる。
キャリアコアの結着樹脂に使用されるモノマーとしては、ラジカルの重合性のモノマーを用いることができる。例えばスチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレン、p−ターシャリーブチルスチレン等のスチレン誘導体;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノメチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸エステル類;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルエーテル、イソブチルエーテル、βークロルエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテルp−メチルフェニルエーテル、p−クロルフェニルエーテル、p−ブロムフェニルエーテル、p−ニトロフェニルビニルエーテル、p−メトキシフェニルビニルエーテル等のビニルエーテル;ブタジエン等のジエン化合物を挙げることができる。
これらのモノマーは単独または混合して使用することができ、好ましい特性が得られるような好適な重合体組成を選択することができる。
キャリアコアの結着樹脂は3次元的に架橋されていることが好ましい。架橋剤としては、重合性の2重結合を一分子当たり2個以上有する架橋剤を使用することが好ましい。架橋剤としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、3−ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセロールアクロキシジメタクリレート、N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルフォンが挙げられる。2種類以上を適宜混合して使用しても良い。
架橋剤は、重合性混合物にあらかじめ混合しておくこともできるし、必要に応じて適宜重合の途中で添加することもできる。
その他のキャリアコアの結着樹脂のモノマーとして、エポキシ樹脂の出発原料であるビスフェノール類とエピクロルヒドリン;フェノール樹脂の出発原料であるフェノール類とアルデヒド類;尿素樹脂の出発原料である尿素とアルデヒド類;メラミン樹脂の出発原料であるメラミンとアルデヒド類が挙げられる。
もっとも好ましい結着樹脂は、フェノール樹脂である。その出発原料としては、フェノール、m−クレゾール、3,5−キシレノール、p−アルキルフェノール、レゾルシル、p−tert−ブチルフェノール等のフェノール化合物、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド化合物が挙げられる。特にフェノールとホルマリンの組合せが好ましい。
フェノール樹脂又はメラミン樹脂を用いる場合には、硬化触媒として塩基性触媒を用いることができる。塩基性触媒として通常のレゾール樹脂製造に使用される種々のものを用いることができる。具体的にはアンモニア水、ヘキサメチレンテトラミン、ジエチルトリアミン、ポリエチレンイミン等のアミン類を挙げることができる。中でもアンモニア水を用いることが好ましい。
本発明における磁性体分散型樹脂キャリアに含有される金属化合物粒子は親油化処理されていることが磁性体分散型樹脂キャリアの粒度分布をシャープにすること及び金属化合物粒子のキャリアからの脱離を防止する上で好ましい。親油化処理された金属化合物粒子を分散させたキャリアを形成する場合、モノマーと溶媒が均一になっている液中から重合反応が進むと同時に溶液に不溶化した磁性体分散型樹脂キャリアが生成する。そのときに金属化合物粒子が磁性体分散型樹脂キャリア内部で均一に、かつ高密度に取り込まれる作用と磁性体分散型樹脂キャリア同士の凝集を防止し粒度分布をシャープ化する作用があると考えられる。更に、親油化処理を施した金属化合物粒子を用いた場合、フッ化カルシウム等の懸濁安定剤を用いる必要がなく、懸濁安定剤がキャリア表面に残存することによる帯電性阻害、キャリアコアをコートする際におけるコート樹脂の不均一性、特にシリコーン樹脂等の反応性樹脂をコートした場合における反応阻害を防止する。
金属化合物粒子の親油化処理は、エポキシ基、アミノ基、及びメルカプト基から選ばれた、1種又は2種以上の官能基を有する有機化合物や、それらの混合物である親油化処理剤で行うことが好ましい。また、中でもエポキシ基が好ましく用いられる。
金属化合物粒子は、100質量部当り0.1〜10質量部(より好ましくは、0.2〜6質量部)の親油化処理剤で処理されているのが金属化合物粒子の親油性及び疎水性を高める上で好ましい。
アミノ基を持つ親油化処理剤としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメトキシジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、エチレンジアミン、エチレントリアミン、スチレン−(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、イソプロピルトリ(N−アミノエチル)チタネート等が用いられる。
メルカプト基を有する親油化処理剤としては、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が用いられる。
エポキシ基をもつ親油化処理剤としては、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシラン、エピクロルヒドリン、グリシドール、スチレン−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体等が挙げられる。
磁性体分散型樹脂キャリアをキャリアコアとして用い、該キャリアコア表面を樹脂で処理してコートキャリアとする場合に用いる樹脂は、特に限定を受けるものではない。例としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル共重合体等のアクリル樹脂、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリフッ化ビニリデン樹脂、フルオロカーボン樹脂、パーフロロカーボン樹脂、溶剤可溶性パーフロロカーボン樹脂ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、石油樹脂、セルロース、セルロース誘導体、ノボラック樹脂、低分子量ポリエチレン、飽和アルキルポリエステル樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、マレイン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、無水マレイン酸とテレフタル酸と多価アルコールとの重縮合によって得られる不飽和ポリエステル、尿素樹脂、メラミン樹脂、尿素−メラミン樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−グアナミン樹脂、アセトグアナミン樹脂、グリプタール樹脂、フラン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂等を挙げることができる。
中でもシリコーン樹脂、フッ素樹脂は、コアとの密着性、スペント防止等の観点から好ましく用いられ、特に好ましくは、シリコーン樹脂が用いられる。またこれらは単独で用いることもできるが、被膜強度を高め、好ましい帯電に制御するために、カップリング剤と併用して用いることが好ましい。
カップリング剤は、その一部が、樹脂をコートする前に、コア表面に処理される、いわゆるプライマー剤として用いられることが好ましく、そうすることにより樹脂層を、共有結合を伴ったより密着性の高い状態で形成させる事ができる。
カップリング剤としては、アミノシランを用いると良い。その結果、ポジ帯電性を持ったアミノ基をキャリア表面に導入でき、好ましい帯電量をトナーに付与できる。更に、金属化合物粒子を親油化処理し、キャリアコアの被覆層としてシリコーン樹脂を用いた場合、アミノ基の存在は、親油化処理剤とシリコーン樹脂の両者を活性化させるため、シリコーン樹脂のキャリアコアとの密着性を更に高め、同時にシリコーン樹脂の硬化を促進することで、より強固な被膜を形成する事ができる。
本発明におけるトナーは、少なくとも結着樹脂と着色剤を含有するものであればとくに限定を受けるものではない。
本発明においては、重量平均粒径が3〜10μmのトナーを用いて現像剤とした場合、有効である。3μm以下のトナーを用いた場合、特に、低湿環境下において現像剤としての流動性が悪化する傾向があり、現像性が落ちる。また、トナー自身としても粉体としてのハンドリング性が低い。10μmを超えると現像性においてトナー粒子1個が大きくなるために解像度の高い、より緻密な画像を得にくい。また静電的な転写を行うと、トナーの飛び散りが生じやすくなる。
トナーの結着樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリスチレン;ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン誘導体から得られる高分子化合物;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体等のスチレン共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、マレイン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂;脂肪族多価アルコール、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジアルコール類及びジフェノール類から選択される単量体を構造単位として有するポリエステル樹脂;ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油樹脂が挙げられる。
本発明のトナーに用いられる着色剤としては下記のものが挙げられる。
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、94、95、109、110、111、128、129、147、168等が挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物等が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド3、5、6、7、23、48;2、48;3、48;4、57;1、81;1、144、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が特に好ましい。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15;1、15;2、15;3、15;4、60、62、66等が特に好適に利用できる。
これらの着色剤は、単独又は混合し、更には固溶体の状態で用いることができる。
ブラック着色剤としては、カーボンブラック及び上記に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い、黒色に調色したものが挙げられる。
着色剤は、カラートナーの場合、色相角、彩度、明度、耐候性、OHP透明性、トナー中への分散性の点から選択される。該着色剤は、結着樹脂100質量部に対し1〜20質量部添加して用いられる。
本発明におけるトナーは、コア/シェル構造を有し、コアが低軟化点物質で形成されたものも好ましく用いられる。低軟化点物質でコアを形成されたコア/シェル構造を有するトナーは、低温定着、オイルレス定着に有利であるが、機械的シェアによる発熱に不利な方向にあり、現像剤容器内での撹拌等により、トナースペントをおこすことがある。しかし、本発明における磁性体分散型樹脂キャリアと組み合わせて用いることで、その懸念は解消される。
トナーのコアを形成する低軟化点物質としては、固体ワックスが1〜40質量%、好ましくは2〜30質量%含有されることが好適である。ワックスが1質量%未満であるとオフセット抑制効果が小さく、40質量%を超えるとトナー表面にも偏在するようになり、キャリア汚染等が生じやすくなることで現像剤中のキャリア量を多くしないと、画像濃度変化が大きくなりやすい。
好ましいワックスとして、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定される分子量分布において、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が1.45以下であり、かつ溶解度パラメーターが8.4〜10.5のワックスを用いることにより、トナーは流動性に優れ、光沢ムラのない均一な定着画像が得られ、さらに定着装置の加熱部材に対する汚染や保存性の低下が生じ難くなる。また、定着性及び定着画像の光透過性に優れるため、トナーを溶融させて透明性に優れたフルカラーOHPを作成する際に、ワックスの一部または全部が適度に加熱部材を被覆することから、トナーがオフセットすることなく、フルカラーOHPが作成でき、かつ良好な低温定着性が発現できることに加えて、圧接部材の長寿命化を達成できる。
本発明で用いられるトナーに含有されるワックスは、ダブルカラムを用いたGPCによる分子量分布において、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が1.45以下、好ましくは1.30以下であることが、定着画像の均一性の点、及び、トナーの良好な転写性及び感光体に接触して帯電するための接触帯電手段に対する汚染の防止の点で、より好ましい。
ワックスのMw/Mnの値が1.45を超える場合には、トナーの流動性が低下することにより、定着画像の光沢ムラ、トナーの転写性の低下が生じ易く、さらにキャリアへの汚染が生じ易く、キャリアの回収が不安定になりやすい。
本発明においてワックスの分子量分布は、ダブルカラムを用いたGPCにより次の条件で測定される。
(GPC測定条件)
装置 :GPC−150C(ウォーターズ社製)
カラム:GMH−HT30cm2連(東ソー社製)
温度 :135℃
溶媒 :o−ジクロロベンゼン(0.1%アイオノール添加)
流速 :1.0ml/min
試料 :濃度0.15%の試料を0.4ml注入
以上の条件で測定し、試料の分子量算出にあたっては単分散ポリウレタン標準試料により作成した分子量較正曲線を使用する。さらに、Mark−Houwink粘度式から導き出される換算式でポリエチレン換算することによって、重量平均分子量および数平均分子量を算出する。
本発明に用いられるワックスの融点は、40〜150℃であることが好ましく、50〜120℃が特に好ましい。ワックスの融点が40℃より低い場合はトナーの耐ブロッキング性を弱め、多数枚の複写時でのスリーブを汚染しやすくなり、画像形成スピードを変えた際に現像剤の潜像保持体へのコートが不均一となり画像濃度ムラが生じやすい。ワックスの融点が150℃を超える場合は、粉砕法によりトナーを製造した際に結着樹脂との均一混合に過大のエネルギーが必要になり、トナーを重合法により製造した際にも結着樹脂への均一化のために、粘度を高めることによる装置の大型化あるいは相溶する量に限界があるため、多量に含有されることが難しくなるため好ましくない。
ワックスの融点は、ASTM D3418−8に準じて測定される吸熱曲線における主体極大ピーク(main peak)値の温度とする。
ASTM D3418−8に準ずる測定には、例えばパーキンエルマー社製DSC−7を用い行う。装置検出部の温度補正はインジウム亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。サンプルはアルミニウム製パンを用い対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/minで温度20〜200℃の範囲で測定を行う。
本発明において用いられるワックスの100℃における溶融粘度は、1〜50mPa・sであることが好ましく、更に好ましくは3〜30mPa・sであることが特に好ましい。ワックスの溶融粘度が1mPa・sより低い場合には、キャリアを用いてトナーを現像する際にトナーとキャリア間のズリ力によりダメージを生じやすく、外添剤の埋没やトナー破砕が生じやすく、種々の画像形成スピードに対して常に安定量の現像剤を潜像保持体へコートするのが難しくなる傾向がある。ワックスの溶融粘度が50mPa・sを超える場合には、重合法を用いてトナーを製造する際、分散質の粘度が高すぎ、均一な粒径を有する微小粒径のトナーを得ることが容易でなく、粒度分布の広いトナーとなりやすい。
ワックスの溶融粘度の測定は、HAAKE社製VT−500にてコーンプレート型ローター(PK−1)を用い測定する方法が挙げられる。
さらに、本発明に用いられるワックスは、GPCにより測定される分子量分布が、2つ以上のピーク又は1つ以上のピークと1つ以上のショルダーとを有し、かつ分子量分布において、重量平均分子量(Mw)が200〜2000、数平均分子量(Mn)が150〜2000であることが好ましい。より好ましくはMwが200〜1500、さらに好ましくは300〜1000、Mnは200〜1500、さらに好ましくは250〜1000であることが良い。ワックスのMwが200未満又はMnが150未満の場合には、トナーの耐ブロッキング性が低下することがある。ワックスのMwが2000超又はMnが2000超の場合には、ワックス自体の結晶性が発現し、透明性が低下することがある。上述の分子量分布は、単一のワックス又は複数のワックスのいずれで達成しても良く、結果として結晶性が阻害でき、透明性が一層向上する。
2種以上のワックスをブレンドする方法としては特に限定はないが、例えばブレンドするワックスの融点以上においてメディア式分散機(ボールミル、サンドミル、アトライター、アペックスミル、コボールミル、ハンディミル)を用いて溶融ブレンドする方法や、ブレンドするワックスを重合性単量体中へ溶解させ、メディア式分散機にてブレンドする方法が挙げられる。このとき添加物として、顔料、荷電制御剤、重合開始剤を使用しても構わない。
本発明に用いることが可能なワックスとしては、例えばパラフィン系ワックス、ポリオレフィン系ワックス、これらの変性物(例えば、酸化物やグラフト処理物)、高級脂肪酸、およびその金属塩、アミドワックス、及びエステル系ワックスなどが挙げられる。その中でも、より高品位なフルカラーOHP画像が得られる点でエステルワックスが特に好ましい。
トナーを製造する方法としては以下の方法が挙げられる。結着樹脂及び着色剤、場合によってはワックス、荷電制御剤等の二成分系現像剤のトナーとして必要な成分及びその他の添加剤等を溶融混練し、混練物を冷却後、粉砕分級してトナー粒子を得る方法、懸濁重合方法を用いて直接トナー粒子を生成する方法や、単量体には可溶で得られる重合体が不溶な水系有機溶剤を用い直接トナー粒子を生成する分散重合方法、又は水溶性極性重合開始剤存在下で直接重合しトナー粒子を生成するソープフリー重合方法に代表される乳化重合方法を用いトナー粒子を製造する方法等により得られたトナー粒子に、必要により外添剤を添加することによりトナーとする。
本発明においては、粒度分布がシャープで重量平均粒径3〜10μm粒径のトナーが比較的容易に得られる、常圧下での、または加圧下での懸濁重合方法によるトナーの製法が好ましい。懸濁重合法により前述のコア/シェル構造を有するトナーを得ることもできる。
コア/シェル構造を有するトナーを得る方法、すなわち低軟化点物質であるワックスをトナー粒子中に内包化させる方法としては、水系媒体中でのトナー材料の極性を結着樹脂となる主要単量体より低軟化点物質の方を小さく設定し、更に外殻樹脂となる少量の極性の大きな樹脂又は単量体を添加させることで、低軟化点物質を外殻樹脂で被覆した、いわゆるコア/シェル構造を有するトナー粒子を得ることができる。トナー粒子の粒度分布制御や粒径の制御は、難水溶性の無機塩や保護コロイド作用とする分散剤の種類や添加量を変える方法や機械的装置条件例えばローラの周速・パス回数・撹拌羽根形状等の撹拌条件や容器形状又は、水系媒体中での固形分濃度等を制御することにより所定のトナー粒子を得ることができる。
トナー粒子の外殻樹脂としては、スチレン−(メタ)アクリル共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体等が挙げられる。重合法により直接トナー粒子を得る方法においては、これらの単量体が好ましく用いられる。
具体的には、スチレン;o(m−,p−)−メチルスチレン、m(p−)−エチルスチレン等のスチレン単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸エステル単量体;ブタジエン、イソプレン、シクロヘキセン、(メタ)アクリロニトリル、アクリル酸アミド等のエン単量体が好ましく用いられる。
トナーに用いられる荷電制御剤としては、公知のものが利用できる。カラートナーの場合は、特に、無色又は淡色でトナーの帯電スピードが速く且つ一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。更にトナー粒子の製造において直接重合方法を用いる場合には、重合阻害性が無く水系媒体への可溶化物の無い荷電制御剤が特に好ましい。
例えば、ネガ系荷電制御剤として、サリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸又はそれらの誘導体の金属化合物;スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物;ホウ素化合物;尿素化合物;ケイ素化合物;カリークスアレーン等が挙げられる。ポジ系荷電制御剤として、四級アンモニウム塩,該四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物等が好ましく用いられる。
荷電制御剤は結着樹脂100質量部に対し0.5〜10質量部が好ましく、ジアルキルサリチル酸金属化合物が特に好ましく用いられる。
直接重合方法によりトナー粒子を生成する場合には、重合開始剤として、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系重合開始剤;ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒトドペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド等の過酸化物系重合開始剤が用いられる。
重合開始剤の添加量は、目的とする重合度により変化するが一般的には単量体に対し0.5〜20質量%添加され用いられる。重合開始剤の種類は、重合方法により若干異なるが、10時間半減期温度を参考に、単独又は混合し利用される。重合度を制御するための公知の架橋剤、連鎖移動剤、重合禁止剤等を更に添加して用いることも可能である。
トナーの製造方法として懸濁重合を利用する場合には、用いる分散剤として、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等の無機系酸化物が挙げられる。ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン等の有機系化合物を分散剤として用いることも可能である。これらは水相に分散させて使用される。これら分散剤は、重合性単量体100質量部に対して0.2〜10.0質量部を使用することが好ましい。
これら分散剤は、市販のものをそのまま用いても良いが、細かい均一な粒度を有する分散粒子を得るために、分散媒中、高速撹拌下で該無機系酸化物を生成させることも出来る。例えば、リン酸三カルシウムの場合、高速撹拌下において、リン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合することで懸濁重合方法に好ましい分散剤を得ることが出来る。また、これら分散剤の微細化のために、重合性単量体100質量部に対して0.001〜0.1質量部の界面活性剤を併用しても良い。具体的には市販のノニオン型、アニオン型又はカチオン型の界面活性剤が利用でき、例えばドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムが好ましく用いられる。
トナーの製造方法に直接重合法を用いる場合において、以下のような製造方法によってトナーを得ることが可能である。単量体中に低軟化物質からなるワックス、着色剤、荷電制御剤、重合開始剤その他の添加剤を加え、ホモジナイザー、超音波分散機等によって均一に溶解又は分散させた単量体組成物を、分散安定剤を含有する水相中に通常の撹拌機またはホモミキサー、ホモジナイザー等により分散させる。好ましくは単量体組成物からなる液滴を所望のトナー粒子のサイズを有するように撹拌速度・時間を調整し、造粒する。
その後は分散安定剤の作用により、粒子状態が維持され、且つ粒子の沈降が防止される程度の撹拌を行えば良い。
重合温度は40℃以上、一般的には50〜90℃の温度に設定して重合を行う。また、重合反応後半に昇温しても良く、更に、耐久特性向上の目的で、未反応の重合性単量体、副生成物等を除去するために反応後半、又は、反応終了後に一部水系媒体を留去しても良い。反応終了後、生成したトナー粒子を洗浄・ろ過により回収し、乾燥する。懸濁重合法においては、通常単量体組成物100質量部に対して水300〜3000質量部を分散媒として使用するのが好ましい。
トナー粒子は、必要により外添剤として少なくともシリカおよび/または酸化チタン微粒子を添加しトナーとすることが、現像剤に流動性を持たせるとともに環境特性が向上することから好ましい。また、外添剤の個数平均粒径は0.2μm以下であることが好ましい。個数平均粒径が0.2μmを超えると流動性が低下し、現像及び転写時に画質が低下する。平均粒径の測定方法は、金属酸化物の測定時の方法に準ずる。
その他の外添剤としては、金属酸化物粉体(酸化アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化錫、酸化亜鉛、など)、窒化物粉体(窒化ケイ素など)、炭化物粉体(炭化ケイ素など)、金属塩粉体(硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなど)、脂肪酸金属塩粉体(ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなど)、カーボンブラック、シリカ粉体、ポリテトラフロロエチレン、ポリビニリデンフロライド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、シリコーン等の材料の微粒子が好ましい。
外添剤の使用量は、トナー粒子100質量部に対し、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.05〜5質量部が用いられる。外添剤は単独で用いても、又複数併用しても良い。外添剤は疎水化処理を行ったものが、より好ましい。
外添剤は、BET法による窒素吸着によった比表面積が30m2/g以上、特に50〜400m2/gの範囲のものが良好である。
トナー粒子と外添剤との混合処理は、ヘンシェルミキサー等の混合機を使用して行うことができる。
トナーは分級して粒度分布を制御しても良く、その方法として好ましくは慣性力を利用した多分割分級装置を用いる。この装置を用いることにより、本発明で好ましい粒度分布を有するトナーを効率的に製造できる。
トナーの形状係数SF−1は、100〜160、SF−2は、100〜140であることが、好ましい。
トナーの形状係数SF−1は球形度合を示し、160より大きいと、球形から徐々に不定形となる。SF−2は凹凸度合を示し、140より大きいと、トナー表面の凹凸が顕著となる。
SF−1が160を超えたり、SF−2が140を超えると、耐久によるトナー劣化が顕著となり、濃度低下やカブリが発生したり、帯電性の不均一が原因の画像ムラが発生する。
トナーの平均粒径及び粒度分布測定は、以下の通りに行う。
純水100〜150mlに界面活性剤(例えばアルキルベンゼンスルホン酸塩)を1〜5ml添加し、これに測定試料を2〜20mgを添加する。試料を懸濁した電界液を超音波分散器で1〜3分間分散処理して、レーザースキャン粒度分布アナライザーCIS−100(GALAI社製)を用いて粒度分布等を測定する。
本発明では0.5〜60μmの粒子を測定して、この条件で測定した個数平均粒径、重量平均粒径をコンピュータ処理により求め、さらに個数基準の粒度分布より個数平均粒径の1/2倍径累積分布以下の累積割合を計算し、1/2倍径累積分布以下の累積値を求める。同様に体積基準の粒度分布より重量平均粒径の2倍径累積分布以上の累積割合を計算し、2倍径累積分布以上の累積値を求める。
トナーの形状係数SF−1、2は、日立製作所製FE−SEM(S−800)を用い、トナー像(倍率300倍)を300個以上無作為にサンプリングし、その画像情報をインターフェースを介してニレコ社製画像解析装置(Luze×3)に導入し解析を行い、下式より算出し得られた値を、トナーの形状係数SF−1、2と定義する。
SF−1=((MXLNG)2/AREA)×(π/4)×100
SF−2=((PERI)2/AREA)×(1/4π)×100
(式中、MXLNGはトナーの最大径を示し、AREAはトナーの投影面積、PERIは、周長を示す。)
次に本発明に好ましく用いられる画像形成方法について図5に示す。
図5は、回転体たるロータリー現像器を備えた多色画像形成装置(カラー複写機)の一例を示すものである。
装置本体200には、原稿載置台206、光源207、レンズ系208、給紙部209、画像形成部202等を備えている。給紙部209は、転写材を収容して装置本体200に着脱自在なカセット210、211及び手差しカセット212を有し、このカセット210、211及び手差しカセット212から転写材が供給される。画像形成部202には、単独に構成されたブラック現像器203、円筒状の感光ドラム213、1次帯電器214、トナーカートリッジ6と一体となった他の3色のカラー現像器215を内蔵したロータリ現像器201、現像後の画質を調整するポスト帯電器216、4色のトナー像を重ねて転写作像した後転写材へ多色画像を転写する無端円環状の転写ベルト217、感光ドラム上の残トナーをクリーニングするドラムクリーナ218、転写ベルトから転写材へトナー画像を転写する2次転写ローラ219、転写ベルト上の残トナーをクリーニングするベルトクリーナ220等がそれぞれ配設されている。
画像形成部の上流側には転写材の姿勢位置精度を高め、転写ベルト上のトナー像に合わせて転写材をタイミングよく送り出すレジストローラ221、下流側にはトナー像が転写された転写材Sを搬送する転写搬送装置222、転写材S上の未定着画像を定着する定着装置204、画像が定着された転写材Sを多色画像形成装置外に排出する排出ローラ205等が配設されている。
この多色画像形成装置の動作を説明する。
装置本体側200に設けられている図示しない制御装置から給紙信号が出力されると、カセット210、211または手差しカセット212から転写材Sが供給される。一方、光源207−1から原稿載置台206に載置されている原稿Dに当てられて反射した光は、一旦CCDユニット207−2により読み取られた後、電気信号に変換されレーザースキャナーユニット208からのレーザー光に置き換えられて感光ドラム213上に照射される。感光ドラム213は、あらかじめ一次帯電器214により帯電されており、光が照射されることにより静電潜像が形成され、次いでブラック現像器203により、黒色のトナー像が形成される。
感光ドラム上に形成されたトナー像はポスト帯電器216によって電位が調整され、やがて転写位置で転写ベルト217上に転写される。転写されたトナー像がカラーモードの場合には、次のトナー像が形成転写されるよう転写ベルト217を更に1回転する。この間ロータリー現像器201は、まず最初のトナー像を形成する準備を始めるため、指定カラーの現像器を感光ドラム213に対向するよう矢印i方向に回転し、次の静電潜像を現像する準備をする。こうしてフルカラーモードでは所定画像数のトナー画像が転写され終わるまで、静電潜像形成・現像・転写を繰り返す。
ところで、給紙部209から給送された転写材Sはレジストローラ221で斜行が補正され、さらにタイミングが合わされて画像形成部202へ送られる。そして、2次転写ローラ219によりトナー像が転写され、分離された転写材Sは、搬送装置222により定着装置204に搬送されて、定着装置204の熱と圧力により転写材Sに未定着転写画像が永久定着される。画像が定着された転写材Sは排出ローラ205により装置本体200から排出される。
このようにして、給紙部209から給送された転写材Sは画像が形成されて排出される。
尚、白黒の画像形成をおこなう場合は、黒のトナーを収容するブラック用現像器203により感光ドラム213上に形成されたトナー像は、転写ベルト217上に一次転写された後、すぐに記録紙S上に二次転写され、転写ベルト217から剥離された記録紙Sは搬送装置222により搬送され、定着装置204によって加圧/加熱され、永久画像となる。この方式による単色画像形成はフルカラー画像形成に比べ4倍程度画像生産性が高い。
この時、転写ベルト217が、感光ドラム213を押す圧力は、その転写ニップ部分において、800〜1300gf/cm2(78.4〜127.4kPa)であるように設計されていることが、トナーの転写効率を充分に向上させ、トナー消費量を抑制するために好ましい。また、更に好ましくは、1000〜1300gf/cm2(98〜127.4kPa)である。
以下、本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
<1>キャリアの製造
(1)キャリア製造例1
・フェノール 7.5質量部
・ホルマリン溶液 11.25質量部
(ホルムアルデヒド約40%、メタノール約10%、残りは水)
・γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.7質量%で
親油化処理したマグネタイト微粒子 62質量部
(個数平均粒径0.35μm、比抵抗5.1×105Ω・cm)
・γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.7質量%で
親油化処理したα−Fe2O3微粒子 26質量部
(個数平均粒径0.60μm、比抵抗2×109Ω・cm)
ここで用いたマグネタイト及びα−Fe2O3の親油化処理は、マグネタイト99.3質量部及びα−Fe2O399.3質量部のそれぞれに対して0.7質量部のγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを加え、ヘンシェルミキサー内で100℃で30分間、予備混合撹拌することによって行った。
上記材料および水11質量部を40℃に保ちながら、1時間混合を行った。このスラリーに塩基性触媒として28質量%アンモニア水2.0質量部、および水11質量部をフラスコに入れ、撹拌、混合しながら40分間で90℃まで昇温・保持し、2.5時間反応させ、フェノール樹脂を生成し硬化させた。その後、30℃まで冷却し、100質量部の水を添加した後、上澄み液とともに、沈殿物をろ過水洗し、風乾した。次いで、これを減圧下(5mmHg以下)に140℃で乾燥して、フェノール樹脂を結着樹脂としたマグネタイト微粒子含有の球状のキャリアコア粒子を得た。この粒子を図1の装置を用いて1h混合撹拌した後、60メッシュの篩によって、粗大粒子の除去をおこない、次いでコアンダ効果を利用した多分割風力分級機(エッボジェットラボEJ−L−3、日鉄鉱業社製)を使用して微粉除去及び粗粉除去をおこない、50%平均粒径36μmのキャリアコアを得た。
得られたキャリアコアをコーター内に投入し、その後、トルエン溶媒を用いて希釈したγ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.3質量%を、剪断応力を連続して印加しつつ、キャリアコア表面に処理した。またその際、40℃,101.3kPa(760torr)にて10分間処理、更にその後、10分間かけて40.0kPa(300torr)にまで減圧させ、乾燥窒素気流下で溶媒を揮発させながら行なった。引き続き、置換基がすべてメチル基であるストレートシリコーン樹脂0.7質量%及び、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.02質量%の混合物をトルエンを溶媒としてコートした。その際、まず混合物の1/3を40℃,101.3kPa(760torr)にて10分間処理、さらにその後10分間かけて66.5kPa(500torr)にまで減圧させ、乾燥窒素気流下で溶媒を揮発させた。この操作を1/3ずつその後2回繰り返し、残りの2/3の処理を行なった。さらに、このコートキャリアを140℃で焼き付け、100メッシュの篩で、凝集した粗大粒子をカットし、次いで多分割風力分級機で微粉及び粗粉を除去して粒度分布を調整した。その後23℃,60%に保たれたホッパー内で100hr調湿してキャリア1を得た。得られたキャリア1の製法および物性を表1に示す。
(2)キャリア製造例2
キャリア製造例1において、図2の撹拌混合装置を用いることを除いては、キャリア製造例1と同様にしてキャリア2を得た。得られたキャリア2の製法および物性を表1に示す。
(3)キャリア製造例3
キャリア製造例1において、図3の撹拌混合装置を用いることを除いては、キャリア製造例1と同様にしてキャリア3を得た。得られたキャリア3の製法および物性を表1に示す。
(4)キャリア製造例4
キャリア製造例1において、図4の撹拌混合装置を用いることを除いては、キャリア製造例1と同様にしてキャリア4を得た。得られたキャリア4の製法および物性を表1に示す。
(5)キャリア製造例5
キャリア製造例2において、コート前の分級条件を変更することを除いては、キャリア製造例2と同様にしてキャリア5を得た。得られたキャリア5の製法および物性を表1に示す。
(6)キャリア製造例6
キャリア製造例2において、コート前の分級条件を変更することを除いては、キャリア製造例2と同様にしてキャリア6を得た。得られたキャリア6の製法および物性を表1に示す。
(7)キャリア製造例7
キャリア製造例2において、キャリアコアの表面処理として、コート樹脂を0.02μmのスチレン/メチルメタクリレート共重合樹脂粒子0.7質量%をハイブリタイザー(奈良機械社製)で乾式コートすることを除いては、キャリア製造例2と同様にしてキャリア7を得た。得られたキャリア7の製法および物性を表1に示す。
(9)キャリア製造例9
キャリア製造例1において、撹拌混合工程をおこなわなかったことを除いては、キャリア製造例1と同様にしてキャリア9を得た。得られたキャリア9の製法および物性を表1に示す。
<2>トナーの製造
<トナー製造例1>
イオン交換水405質量部に0.1M−Na3PO4水溶液250質量部を投入し60℃に加温した後、1.07M−CaCl2水溶液40.0質量部を徐々に添加して燐酸カルシウム塩を含む水系媒体を得た。
一方、下記処方をアトライター(三井三池化工機(株))を用いて均一に分散混合した。
スチレン 80質量部
n−ブチルアクリレート 20質量部
ジビニルベンゼン 0.2質量部
飽和ポリエステル樹脂 4.0質量部
(Mw=41000)
負帯電性荷電制御剤(ジターシャリーブチルサリチル酸のAl化合物)
1質量部
C.Iピグメントブルー15:3 6.0質量部
この単量体組成物を60℃に加温し、そこにベヘニン酸ベヘニルを主体とするエステルワックス(DSCにおける昇温測定時の最大吸熱ピーク72℃)12質量部を添加混合溶解し、これに重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)[t1/2=140分,60℃条件下]3質量部を溶解した。
前記水系媒体中に上記重合性単量体系を投入し、60.5℃,N2雰囲気下においてTK式ホモミキサー(特殊機化工業(株))を用いて10,000rpmで15分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ、60.5℃で6時間反応させた。その後液温を80℃とし更に4時間撹拌を続けた。反応終了後、80℃で更に3時間蒸留を行い、その後、懸濁液を冷却し、塩酸を加えて燐酸カルシウム塩を溶解し、濾過・水洗を行い、湿潤着色粒子を得た。
次に、上記粒子を40℃にて12時間乾燥して着色粒子(トナー粒子)を得た。
このトナー粒子100質量部と、シリコーンオイルで処理したBET値が130m2/gであり、一次粒径が12nmの疎水性シリカ微粒子1.2質量部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して、トナー(シアントナー)1を得た。トナー1の物性を表2に示す。
<トナー製造例2>
C.Iピグメントブルー15:3を7.5質量部用いる代わりに、C.I.ピグメントレッド122を8.0質量部用いたこと以外はトナーの製造例1と同様にして重合性単量体を調製した。この重合性単量体を製造例1と同様の水系媒体中に投入し、62℃,N2雰囲気下においてTK式ホモミキサー(特殊機化工業(株))を用いて10,000rpmで15分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ、62℃で6時間反応させた。その後液温を80℃とし更に4時間撹拌を続けた。反応終了後、80℃で更に3時間蒸留を行い、その後、懸濁液を冷却し、塩酸を加えて燐酸カルシウム塩を溶解し、濾過・水洗を行い、湿潤着色粒子を得た。
次に、上記粒子を40℃にて12時間乾燥して着色粒子(トナー粒子)を得た。
このトナー粒子100質量部と、ヘキサメチルジシラザンで処理した後にシリコーンオイルで処理したBET値が130m2/gであり、一次粒径が12nmの疎水性シリカ微粒子1.2質量部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して、トナー(マゼンタトナー)2を得た。トナー2の物性を表2に示す。
<トナー製造例3>
C.Iピグメントブルー15:3を7.5質量部用いた代わりにC.I.ピグメントイエロー17を8.0質量部用いたこと以外は、トナーの製造例1と同様にして重合性単量体を調整した。この重合性単量体を製造例1と同様の水系媒体中に投入し、58℃,N2雰囲気下においてTK式ホモミキサー(特殊機化工業(株))を用いて10,000rpmで15分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ、58℃で6時間反応させた。その後液温を80℃とし更に4時間撹拌を続けた。反応終了後、80℃で更に3時間蒸留を行い、その後、懸濁液を冷却し、塩酸を加えて燐酸カルシウム塩を溶解し、濾過・水洗を行い、湿潤着色粒子を得た。
次に、上記粒子を40℃にて12時間乾燥して着色粒子(トナー粒子)を得た。
このトナー粒子100質量部と、ヘキサメチルジシラザンで処理したBET値が120m2/gであり、一次粒径が20nmの疎水性シリカ微粒子1.2質量部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して、トナー(イエロートナー)3を得た。トナー3の物性を表2に示す。
<トナー製造例4>
C.I.ピグメントイエロー17を8.0質量部の代わりに、C.I.ピグメントイエロー17を3質量部、C.I.ピグメントレッド122を3質量部、C.Iピグメントブルー15:3を3質量部の3色ブラックとしたこと以外は、トナー製造例1と同様にして重合性単量体を調製した。この重合性単量体を製造例1と同様の水系媒体中に投入し、58℃,N2雰囲気下においてTK式ホモミキサー(特殊機化工業(株))を用いて10,000rpmで15分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ、58℃で6時間反応させた。その後液温を80℃とし更に4時間撹拌を続けた。反応終了後、80℃で更に3時間蒸留を行い、その後、懸濁液を冷却し、塩酸を加えて燐酸カルシウム塩を溶解し、濾過・水洗を行い、湿潤着色粒子を得た。
次に、上記粒子を40℃にて12時間乾燥して着色粒子(トナー粒子)を得た。
このトナー粒子100質量部と、ヘキサメチルジシラザンで処理したBET値が120m2/gであり、一次粒径が20nmの疎水性シリカ微粒子1.2質量部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して、トナー(ブラックトナー)4を得た。トナー4の物性を表2に示す。
<3>画像形成装置
次に、実施例1〜7、9〜11及び比較例1において用いられる画像形成装置について説明する。
実施例1〜7及び比較例1の画像評価を行う評価機としては、図5の画像形成装置例に示した装置を用いた。これは、キヤノン製カラー複写機CP−660の改造機であって、現像手段として感光体に対しロータリー型の二成分現像装置を配置したものに改造した。画像形成速度(プロセススピード)は、250mm/secとした。
転写工程においては、中間転写ベルトを用い、中間転写体上で多層の現像像を形成し転写材上に一括転写する手段とし、本実施例に用いるカラー画像形成装置にした。1次転写の感光体に対するニップ部における圧力は、1100gf/cm2(107.8kPa)とした。
(二成分現像装置)
現像スリーブとしてアルミコートスリーブを使用し、スリーブと感光体間を400μmに設定した。現像に使用する交流バイアスはピークトゥピークの電界強度で1300Vpp、周波数は2000Hzとした。
さらに、帯電工程として非接触型のコロナ帯電方式を使用し、印加電圧条件としては交流電界を使用した。
現像コントラストは200Vに設定した。
〔実施例1〕
トナーNo.1を8質量部とキャリアNo.1を92質量部秤量し、各々をV型混合機で混合し、スタート用現像剤A−Cyとした。同様にして、トナーNo.2、No.3、No.4をそれぞれ8質量部とキャリアNo.1をそれぞれ92質量部を混合しスタート用現像剤A−M、A−Y、A−Bkとした。得られた現像剤をトナーの色に対応したステーションに投入し、それぞれの色に対応したトナーを補給しながら、スリーブ周速をプロセススピード×1.5倍の速度で、常温低湿環境下(23℃,5%RH)にてフルカラーモードで5万枚の画出し試験を行った。画像としては、画像面積が各色5%となるオリジナル原稿にて行った。そして、ini、10K、30K、50Kにおける、画像濃度、ハーフトーン均一性、ベタ白画像均一性に関して、以下の評価方法に基づいて評価したところ、良好な結果が得られた。評価結果を表3に示す。尚、下記評価結果A〜Eにおいて、A〜Cまでを実用レベルとした。
(画像濃度)
画像濃度は、各色のベタ黒画像をA3で複写し、その濃度を、カラー反射濃度計(Color reflection densitometer X−RITE 404A manufactured by X−Rite Co.)で測定した。測定は、ベタ画像上の4隅と中央部の5点測定し、平均することによって求めた。
(ハーフトーン均一性)
ハーフトーン均一性は、マゼンタの全面ハーフトーン画像をA3にて複写し、以下の基準によって目視判断した。
A・・・ムラおよびがさつきなし。
B・・・ムラおよびがさつき軽微
(A3フルカラーの実用画像(グラフィクユース)で、全く分からないレベル)
C・・・ムラおよびがさつき若干目立つ
(A3フルカラーの実用画像(ビジネスユース)で、全く分からないレベル)
D・・・ムラおよびがさつき目立つ
(A3フルカラーの実用画像で、分かるレベル)
E・・・ムラおよびがさつき悪い。
(ベタ白均一性)
ベタ白均一性は、フルカラーモードでベタ白画像を複写し、以下の基準によって目視判断した。
A・・・問題なし。
B・・・20μm未満の黒ぽちが5個以下
C・・・20μm以上100μm未満の黒ぽちが5個以下
D・・・黒ぽちが5個を超える。
E・・・縦スジがある。
〔実施例2〜7、9〜11及び比較例1〕
実施例2〜7、9〜11及び比較例1に関しても、同様にして実験行なった。実施例9に関しては、1次転写の感光体に対するニップ部における圧力を、700gf/cm2(68.6kPa)として同様に実験を行なった。実施例10に関しては、1次転写の感光体に対するニップ部における圧力を、900gf/cm2(88.2kPa)として同様に実験を行なった。また、実施例11に関しては、1次転写の感光体に対するニップ部における圧力を、1400gf/cm2(137.2kPa)として同様に実験を行なった。各実験条件、現像剤、および評価結果を表3及び4に示す。