JP4174231B2 - 光学系 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光学系に関するものであり、特に使用波長帯域の全域で高い回折効率が得られるように、異なる材料からなる複数の回折格子を積層した、所謂積層型の回折光学素子それを用いた光学系に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より屈折光学系の色収差を補正する方法の1つとして、それぞれ分散の異なる硝材からなる複数のレンズを組み合わせる方法が知られている。
【0003】
また、他の方法として、レンズ面あるいは光学系の一部に回折作用を有する回折光学素子を用いることで色収差を減じる方法がSPIE Vol.1354 International Lens Design Conference (1990)等の文献や、特開平4−213421号公報、特開平6−324262号公報、そして米国特許第5044706号等に開示されている。これらは、光学系中の屈折部と回折部とでは、ある基準波長に対する色収差が逆方向に発現するという物理現象を利用したものである。さらに、このような回折光学素子は、その周期構造の周期を調整することで非球面レンズと同様の効果を持たせることもでき、色収差以外の諸収差の低減をも行うことができる。
【0004】
ここで、光の屈折作用と回折作用を比較すると、通常の屈折作用を持ったレンズ面においては、ある波長の1本の光線は屈折後も1本の光線のままであるのに対し、回折面ではある波長の1本の光線は回折次数の異なる複数の光線に分かれてしまう。
【0005】
そこで、光学系に回折光学素子を用いる場合には、使用波長領域の光束が特定の回折次数(以下「設計次数」とも言う)に集中するように格子構造を決定する必要がある。特定の回折次数に光が集中している場合では、それ以外の回折次数での光線の強度は小さいものとなり、強度が0の場合にはその回折次数の光は存在しないものとなる。そのため、前記のような特徴を有するためには設計次数の回折効率が十分高いことが必要である。
【0006】
このような情況を鑑みて、広い波長領域にわたり回折効率の低下を抑制できる構成を本出願人は特開平10−133149号公報で提案している。上記で提案した回折光学素子は、図15に示すように異なる材料からなる回折格子4と回折格子5とを基板2上に重ね合わせた積層型の回折光学素子であり、2つの回折格子4,5を構成する材料の屈折率、分散特性および格子厚d1,d2をそれぞれ適切な値とすることにより、使用波長領域全域で、高い回折効率を実現している。
【0007】
又、回折効率の低下を減少できる構成が特開平9−127322号公報に提示されている。ここでは、図16に示すように3つの回折格子4,5,6を3種の異なる材質と格子厚d1,d2を最適に選び積層することで、可視領域全域で高い回折効率を実現している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来の積層型の回折光学素子では、回折格子の格子側面(結像に寄与しない格子の側壁部分、エッジ部ともいう)4a,5aの角度に関しては言及しておらず、格子側面4a,5aはすべて回折格子の設けられた面Haに対し垂直なものとなっている。
【0009】
実際の光学系、例えば銀塩カメラやデジタルカメラなどに用いられる撮像光学系や、望遠鏡、双眼鏡、顕微鏡などの観察光学系の一部に回折光学素子を用いる場合、格子面内の任意の位置における回折格子に対して、全ての有効光線が必ずしも入射角0°あるいは0°を中心とした正、負に均等な角度分布で入射するとは限らない。したがって、格子面内全域にわたって全ての回折格子における格子側面の角度を回折格子の設けられた面に対して垂直とした場合、0°以外の入射角あるいは0°以外の角度を中心とした入射角分布を持った光線が入射する場合、格子側面で光線がケラレたり、高い回折効率を達成するための条件を満たすための光路を通過しない光線の割合が大きくなり(本明細書の中ではこれらを総じて、単に「ケラレ」と表現している)、結像に寄与する有効光の光量が低下するばかりか、フレアやゴースト等の要因となる有害光が増大する場合がある。
【0010】
本発明は、このような格子側面でのケラレを低減して、高い回折効率が得られる回折光学素子を実現し、この回折光学素子を光学系中に用いた時にはフレア光やゴースト光の発生を極力低減させることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明では、異なる材料からなる複数の回折格子を積層した回折光学素子を用いた光学系において、その複数の回折格子のうち少なくとも1つの回折格子が、その側面が傾いた領域、又はそのエッジがそれに近接する回折格子のエッジに対してずれた領域を有するよう構成し、入射する光線の入射角・射出角の分布から求めた平均値、重心値、最大値、最小値に基づいて決められた光線や、回折光学素子を光学系に用いた際の絞りの中心を通過する光線等の特定の光線の入射角又は射出角に応じて、その傾きやずれ量を回折光学素子の面内の位置により異ならせている。
特に本発明では、異なる材料からなる複数の回折格子を積層した回折光学素子を有する光学系において、前記複数の回折格子のうち少なくとも1つの回折格子は、その格子側面が傾いた領域を有し、その格子部を通過する全有効光線の射出角の分布から求められる平均の射出角を持つ光線を特定の光線とし、前記少なくとも1つの回折格子は前記複数の回折格子のうち入射側から数えて第i層目に配置された回折格子であって、その中心部から数えて第j番目の格子部に入射する特定の光線の射出角をθi(j)′とするとき、前記格子部の稜線を連ねた面の法線に対する前記格子側面の傾き角度φi(j)が、
φi(j)=C1・θi(j)′
ただし、C 1 は0.78以上、1.16以下の任意の実数
を満足するように変化する領域を有することを特徴としている。
【0012】
このように本発明は、撮影光学系や観察光学系などの光学系に好適に用いることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
図1は、本発明の回折光学素子の実施形態1の正面図である。同図において、回折光学素子1は、基板2の表面に、それぞれ異なる材料からなる複数の回折格子を積層した回折部3が配置された構成となっている。回折部3は、後述する図2に示すようにy方向に伸びる1次元格子(直線状格子)である回折格子4と回折格子5とが空気層を挟んで積層されており、回折格子4,5は中心(中心軸)Caからx方向に沿って周辺に向かうほど格子周期が徐々に小さくなっている。
【0014】
図2は、図1の回折光学素子1を図中のA−A′断面で切断した断面形状の一部を示すものであり、分かりやすくするために、回折格子の厚さ方向(図中のZ方向)に拡大デフォルメして描いている(他の断面図でも同様)。
【0015】
回折部3は、基板(透明基板)2上に、回折格子4と回折格子5とを光学材料層ではない空気層airを介して積層配置することにより構成されている。光の入射側LInから数えて第1層目の回折格子4はエネルギー硬化材料の1つである第1の紫外線硬化樹脂(屈折率nd=1.636、アッベ数νd=22.8)によって形成され、第2層目の回折格子5は第2の紫外線硬化樹脂(屈折率nd=1.513、アッベ数νd=51.0)によって形成されている。回折格子4は格子部の格子厚が1つの周期で中心から周辺に向かって減少する鋸歯形状、回折格子5は格子部の格子厚が1つの周期で中心から周辺に向かって増加する鋸歯形状であり、特定の次数の回折光の回折効率を高めるような形状に設定されている。ここで「格子部」とは各回折格子を構成する1つの周期構造を指し、本実施形態及び他の実施形態において「1周期」とは格子部の一方の側面から他方の側面までと定義している。したがって、j番目の格子部の一方の側面は第(j−1)番目の格子部の側面であり、他方の側面は第(j+1)番目の格子部の側面でもあることになる。
【0016】
さて、本実施形態の回折光学素子で最も特徴的なのは、回折格子を構成する各格子部の側面の傾きが、後述する特定の光線の入射角又は射出角に応じて有効面内の位置によって異なっている(異なる領域を有している)点である。
【0017】
具体的には図2に示すように、回折格子4において各格子部の射出側の稜線を連ねた面402(回折格子4の射出面に相当)の法線401paと中心軸Caから数えて第p番目の格子部4pの周辺側(図中右側)の格子側面401pとのなす角度φ1(p)と、同面402の法線401qaと第q番目の格子部4qの周辺側の格子側面401qとのなす角度φ1(q)が、特定の光線の入射角又は射出角に応じて異なっており、格子が並ぶ方向(格子の周期方向、図中x方向)に変化している。
【0018】
同様に、回折格子5における各格子部の入射側の稜線を連ねた面(回折格子5の入射面に相当)502の法線501paと第p番目の周辺側の格子側面501pとのなす角度φ2(p)と、同面502の法線501qaと第q番目の格子部5qの周辺側の格子側面501qとのなす角度φ2(q)も、特定の光線の入射角又は射出角に応じて異なっており、格子が並ぶ方向で変化している。格子側面の傾きの変化は中心軸Caから離れるに従って順次角度が大きく、又は小さくなっている。
【0019】
すなわち、通常の屈折光学系において色消しを行うのと同様に、分散の異なる材料を組み合わせた複数の回折格子によって回折光学素子を構成することで、回折効率の波長依存性を低減し、使用波長領域全域で高い回折効率を得るとともに、格子部の位置ごとに通過する全有効光線の入射・射出角度分布を考慮し、それぞれの格子部での光線のケラレが少なくなるように格子側面の傾きを変化させ、画角全域にわたりフレアやゴースト等の撮影や観察の際に不要な有害光の発生を抑制している。
【0020】
図17に実施形態1と同様の積層構造からなり、格子側面401,501を回折部3の入射面Haに対して垂直(すなわち面402,502に対しても垂直)に設けた回折光学素子にある角度を持った光線(特定の光線)が入射した際の光線の様子を示す。回折格子の1周期の格子部に入射する光束7のうち、一部の光束701は格子側面401,501などにより大きくケラレたり、高い回折効率を達成するための条件を満たさない光路を通過しており、これらは結像に寄与しないばかりでなく有害光が発生する原因となる。
【0021】
例えば、光線の入射面Haに対する入射角θ1(j)を10°とし、第1層目の回折格子4の格子厚d1を7.88μm、第2層目の回折格子5の格子厚d2を10.95μm、第1層目の回折格子4の稜線を連ねた面402から第2層目の回折格子5の稜線を連ねた面502までの間隔L1(j)′を1.5μm、格子ピッチを80μmとしたときには、1周期の格子部に入射する光束7のうちケラレる光束701(4.25μm)の割合は約5.3%にもなる。
【0022】
図3は、実施形態1の回折光学素子1に特定の光線が入射した際の光線のケラレの様子を示す説明図である。回折格子4,5の各格子部の側面の傾き角度φi(j)を光線のケラレが少なくなるように面内(xy面内)で変化させることで、1周期の格子部に入射する光束7のうちケラレる光束701の割合が図19の回折光学素子に比べて明らかに減少していることが分かる。
【0023】
本実施形態においては、特定の光線701の回折光学素子1の入射面Haに対する入射角θ1(j)を10°、第1層目の回折格子4の格子厚d1を7.88μm、第2層目の回折格子5の格子厚d2を10.95μm、面402から面502までの間隔L1(j)′を1.5μm、格子ピッチを80μmとし、格子側面401の面402の法線に対する角度φ1(j)を10°、格子側面501の面502の法線に対する角度φ2(j)を12.8°と設定した。
本実施例において回折格子4のピッチ80μm、格子厚7.88μmである。これより格子面の面402に対する角度αは
tan −1 (7.88/80)=5.625°
である。入射角θ 1 (j)は
θ 1 (j)=10°である。回折格子4の材料の屈折率1.636であるからスネルの法則より出射角θ 1 (j) ' は
θ 1 (j) ' =12.8°
となる。
同様に回折格子5についても求めると回折格子5に対する入射角θ 2 (j)は
θ 2 (j)=θ 1 (j) ' =12.8°
である。
これにより、回折部3の1周期の格子部に入射する光束7のうちケラレる光束701(0.73μm)の割合は約0.9%となり、図18に示す従来例の構造に比べ光線のケラレる割合が約6分の1にまで低減される。このような本実施形態の回折光学素子1を光学系の一部に用いることでフレアやゴーストなどの要因となる有害光の抑制に大きな効果がある。
回折格子5の材料の屈折率1.513であるからスネルの法則より出射角θ 2 (j) ' は
θ 2 (j) ' =11.0°
となる。
【0024】
ここで、格子側面401の角度φ1(j)および格子側面501の角度φ2(j)を回折格子4,5への特定の光線の入射角θ1(j),θ2(j)に基づきそれぞれ10°,12.8°と決定したが、いずれか一方ないしは両方をそれぞれの格子からの特定の光線の射出角θ1(j)′、θ2(j)′に基づいて決定してもよい。また、格子側面の角度は特定の光線の入射角ないしは射出角に厳密に一致させなくとも、入射角ないしは射出角の0.2倍から2.0倍の間の角度で任意に設定しても前述したのと同様の効果が得られる。
【0025】
すなわち、複数の回折格子のうち光入射側から数えて第i層目および第(i+1)層目に配置された回折格子は、その中心から数えて第j番目の格子部を通過する特定の光線の入射角をθi(j),θi+1(j)、射出角をθi(j)′,θi+1(j)′とするとき、格子側面の傾き角度φi(j)が、
φi(j)=C1・θi(j) …(1)
φi(j)=C1・θi(j)′ …(2)
φi+1(j)=C1・θi+1(j) …(3)
φi+1(j)=C1・θi+1(j)′ …(4)
ただし、
C1:0.2以上、2.0以下の任意の実数
のうちの少なくとも1つを満たしつつ変化する領域を有することが好ましい。
【0026】
本実施形態では、2つの層からなる積層型の回折光学素子において、その両方の層の格子側面の傾きが変化している形態を示しているが、この傾きの変化はいずれか一方の層だけでもそれなりの効果が得られる。また、2層より多くの回折格子からなる積層型の回折光学素子においても、1層以上で実施するだけでそれなりの効果がある。
【0027】
さらに、実施形態1では、図1に示したように、各回折格子を構成する格子部が直線状に設けられた場合を示しているが、格子部が同心円状に設けられているような場合についても同様な効果が得られる。
【0028】
(実施形態2)
図4は、本発明の回折光学素子の実施形態2の正面図である。同図において、回折光学素子1は、基板2の表面にそれぞれ異なる材料からなる複数の回折格子を積層した回折部3が配置された構成となっている。回折部3は、後述する図5に示すように同心円状の回折格子4と回折格子5とが空気層を挟んで積層されており、回折格子4,5は中心Laからx方向に沿って周辺に向かうほど格子周期が徐々に小さくなっている。 図5は、実施形態2の回折光学素子1を図4中のA−A′断面で切断した断面形状の一部を示すものである。入射側から数えて第1層目の回折格子4はエネルギー硬化材料の1つである第1の紫外線硬化樹脂(屈折率nd=1.636、アッベ数νd=22.8)で形成され、第2層目の回折格子5は第2の紫外線硬化樹脂(屈折率nd=1.513、アッベ数νd=51.0)で形成されている。Laは回折光学素子1の中心、すなわち光軸である。回折格子4は格子部の格子厚が1つの周期で中心から周辺に向かって減少する鋸歯形状、回折格子5は格子部の格子厚が1つの周期で中心から周辺に向かって増加する鋸歯形状であり、特定の次数の回折光の回折効率を高めるような形状に設定されている。
【0029】
本実施形態においても、実施形態1と同様に、回折格子4において各格子部の射出側の稜線を連ねた面402の法線401paと光軸Laから数えて第p番目の格子部4pの周辺側の格子側面401pのなす角度φ1(p)と、同面402の法線401qaと第q番目の格子部4qの周辺側の格子側面401qのなす角度φ1(q)が、特定の光線の入射角又は射出角に応じて異なっており、光軸Laから離れるに従って順次大きく若しくは小さく変化している。
【0030】
同様に回折格子5における各格子部の入射側の稜線を連ねた面502の法線501paと光軸Laから数えて第p番目の格子部5pの周辺側の格子側面501pのなす角度φ2(p)と、同面502の法線501qaと第q番目の格子部5qの周辺側の格子側面501qとのなす角度φ2(q)も特定の光線の入射角又は射出角に応じて異なっている。
【0031】
本実施形態において更に特徴的なのは、各層の回折格子を構成する回折格子のエッジ(稜線)の位置を特定の光線の入射角又は射出角に応じてx方向でずらし、ずれ量が光軸Laから離れるに従って大きく又は小さくなるように変化させている点である。具体的には第1層第p番目の格子部の周辺側のエッジとそれに近接した第2層第p番目の格子部の周辺側のエッジのx方向のずれ量ΔS2(p)と、第1層第q番目の格子部の周辺側のエッジとそれに近接した第2層第q番目の格子部の周辺側のエッジのx方向のずれ量ΔS2(q)を、特定の光線の入射角又は射出角に応じて異ならせている。
【0032】
このように、格子部の位置ごとに通過する全有効光線の入射・射出角度分布を考慮し、それぞれの格子部で光線のケラレが少なくなるような格子側面の傾き角度およびエッジの位置を最適に設定することで、画角全域にわたりフレアやゴースト等の要因となる有害光の発生を抑制している。
【0033】
図6は、実施形態2の回折光学素子1に特定の光線が入射した際の光線のケラレの様子を示す説明図である。格子側面の傾き角度および各層の格子部のエッジのずれ量の少なくとも一方を光線のケラレが少なくなるように変化させることで、1周期の格子部に入射する光束7のうちケラレる光束701の割合を大幅に減少させることができる。
【0034】
本実施形態においては、特定の光線の入射角θ1(j)を10°、第1層目の回折格子
4の格子厚d1を7.88μm、第2層目の回折格子5の格子厚d2を10.95μm、面402から面502までの間隔L1(j)′を1.5μm、格子ピッチを80μmとし、格子側面401の傾き角度φ1(j)を10°、格子側面501の傾き角度φ2(j)を12.8°、エッジのずれ量ΔS2(j)を0.34μmに設定した。
ここで入射角θ 1 (j)はθ 1 (j)=10°より出射角θ 1 (j) ' はスネルの法則
θ 1 (j) ' =12.8°
となる。
回折格子5に対する入射角θ 2 (j)は
θ 2 (j)=θ 1 (j) ' =12.8°
である。
入射光束7のうちケラレる光束701に相当する回折格子の断面形状における横方向の距離ΔPをスネルの法則を用いて求めると
ΔP=0.39μm
となる。
これにより、1周期の格子部に入射する光束7(80μm)のうちケラレる光束701(0.39μm)の割合は約0.49%となり、図17に示した構造に比べ光線のケラレる割合が約10分の1にまで低減される。そして、このような本実施形態の回折光学素子1を光学系の一部に用いることでフレアやゴーストなどの有害光の抑制に大きな効果がある。ただし、ここで示したケラレる光束の割合は、単純に回折格子を断面形状で考えた際の横方向の割合である。
【0035】
本実施形態では、角度φ1(j)および角度φ2(j)を回折格子4,5への特定の光線の入射角θ1(j),θ2(j)に基づき10°、12.8°と決定したが、いずれか一方ないしは両方をそれぞれの回折格子からの特定の光線の射出角θ1(j)′,θ2(j)′に基づいて決定してもよい。また、格子側面401、501の傾き角度は厳密に特定の光線の入射角ないしは射出角に一致させる必要はなく、前述の条件式(1)〜(4)の少なくとも1つを満足するように、特定の光線の入射角ないしは射出角の0.2倍から2.0倍の間の角度で任意に設定してもよい。
【0036】
さらに、各層の格子部のエッジのずれ量ΔS2(j)は、間隔L1(j)′および回折格子4からの特定の光線の射出角θ1(j)′の値12.8°に基づいて間隔1.5μmにtan12.8°を乗じた値から0.34μmと決定したが、厳密にこうして求めた値に一致させる必要はなく、この値
L1(j)′×tanθ1(j)′
の0.1倍から1.5倍の間で任意に設定してもよい。
【0037】
具体的には、第i層目に配置された回折格子における中心から数えて第j番目の格子部のエッジの位置と、それに近接する第(i+1)層目の回折格子の格子部のエッジの位置とが特定の光線のケラレが少なくなるように格子部の並び方向にずれて配置されており、そのずれ量ΔSi+1(j)が、
ΔSi+1(j)=C2・Li(j)′tanθi(j)′ …(5)
ただし、
C2:0.1以上、1.5以下の任意の実数
を満たすように変化させればよい。
【0038】
なお実施形態2では、図4のように回折格子が同心円状に設けられた場合を示しているが、回折格子が直線状に設けられた場合についても同様な効果が得られる。
【0039】
(実施形態3)
図7は、本発明の回折光学素子の実施形態3の正面図である。同図において、回折光学素子1は、基板2の表面にそれぞれ異なる材料からなる複数の回折格子を積層した回折部3が配置された構成となっている。回折部3は、後述する図8に示すようにy方向に伸びる1次元格子(直線状格子)である回折格子4と回折格子5とが空気層を挟んで、その回折格子5と回折格子6とが空気層を挟まず積層されており、回折格子4,5,6は中心Caからx方向に沿って周辺に向かうほど格子周期が徐々に小さくなっている。
【0040】
図8は、実施形態3の回折光学素子1を図7中のA−A′断面で切断した断面形状の一部を示すものである。基板2上に入射側から順に、回折格子4、空気層air、回折格子5、回折格子6が積層されている。入射側から数えて第1層目の回折格子4はエネルギー硬化材料の1つである第1の紫外線硬化樹脂(屈折率nd=1.636、アッベ数νd=22.8)、第2層目の回折格子5は第2の紫外線硬化樹脂(屈折率nd=1.598、アッベ数νd=28.0)、第3層目の回折格子6は第3の紫外線硬化樹脂(屈折率nd=1.513、アッベ数νd=51.0)で形成されている。回折格子4は格子部の格子厚が1つの周期で周辺に向かって増加する鋸歯形状、回折格子5は格子部の格子厚が1つの周期で周辺に向かって減少する鋸歯形状、回折格子6は格子部の格子厚が1つの周期で周辺に向かって増加する鋸歯形状であり、特定の次数の回折光の回折効率を高めるような形状に設定されている。
【0041】
本実施形態の回折光学素子では、回折格子6の各格子部の入射側の稜線を連ねた面602の法線601paと空気層を挟まず密着した回折格子5,6において中心Caから数えて第p番目の格子部5p,6pの周辺側の格子側面501pとのなす角度φ2(p)と、同面602の法線601qaと第q番目の格子部5q,6qの周辺側の格子側面501qのなす角度φ2(q)が、特定の光線の入射角又は射出角に応じて異なっており、x方向に沿って変化している。
【0042】
図18に実施形態3と同様の3層の回折格子からなり、格子部の側面を入射面に対して垂直に設けた回折光学素子に特定の光線が入射した際の様子を示す。1周期の格子部に入射する光束7のうち、一部の光束701は格子側面401,501などにより大きくケラレたり、高い回折効率を達成するための条件を満たさない光路を通過しており、これらは結像に寄与しないばかりでなくフレアやゴーストなどの有害光が発生する原因となる。
【0043】
例えば、特定の光線701の入射角θ1(j)を10°とし、第1層目の回折格子4の格子厚d1を3.54μm、第2層目の回折格子5および第3層目の回折格子6の格子厚d2を19.50μm、第1層目の回折格子4の射出側の稜線を連ねた面402から第2層目の回折格子5における入射側の界面503までの間隔l1(j)′を1.5μm、同面503から面602までの間隔l2(j)を1.5μm、格子ピッチを80μmとしたときには、1周期の格子部に入射する光束7(80μm)のうちケラレる光束701(5.28μm)の割合は約6.6%になる。
【0044】
これに対し、図9は実施形態3の回折光学素子1に特定の光線7が入射した際の光線のケラレの様子を示す説明図である。回折格子5,6の各格子部の側面501の傾き角度φi(j)を光線のケラレが少なくなるように面内(xy面内)でx方向で変化させることで、1周期の格子部に入射する光束7のうち、ケラレる光束701の割合が図18の回折光学素子に比べて明らかに減少していることが分かる。
【0045】
本実施形態においては、特定の光線の回折光学素子1の入射面に対する入射角θ1(j)を10°、第1層目の回折格子4の格子厚d1を3.54μm、第2層目の回折格子5および第3層目の回折格子6の格子厚d2を19.50μm、面402から第2層目の回折格子5における入射側の界面503までの間隔l1(j)′を1.5μm、同面503から面602までの間隔l2(j)を1.5μm、格子ピッチを80μmとし、格子側面401の面402の法線に対する角度φ1(j)を0°、格子側面601の面602の法線に対する角度φ2(j)を11.2°と設定した。これにより、回折部3の1周期の格子部に入射する光束7(80μm)のうちケラレる光束701(1.42μm)の割合は約1.78%となり、図18に示す従来例の構造に比べ光線のケラレる割合が3分の1以下にまで低減される。このような本実施形態の回折光学素子1を光学系の一部に用いることで、フレアやゴーストなどの有害光の抑制に大きな効果がある。
【0046】
ここで、格子側面601の角度φ2(j)を回折格子5からの特定の光線の射出角θ2(j)′と同じ11.2°と決定したが、回折格子6への特定の光線の入射角θ2(j)に基づいて決定してもよい。また、格子側面の角度は特定の光線の入射角ないしは射出角に必ずしも厳密に一致させる必要はなく、前述の条件式(1)〜(4)の少なくとも1つを満足するように、入射角ないしは射出角の0.2倍から2.0倍の間の角度で任意に設定してもよい。
【0047】
なお本実施形態では、3つの層からなる積層型の回折光学素子において、入射側から数えて第2層目および第3層目に配置された回折格子の格子側面の傾き角度が変化している形態を示しているが、更に第1層目の回折格子の側面の傾きをも変化させても良い。但し、積層型の回折光学素子において少なくとも1層で実施するだけでもそれなりの効果がある。
【0048】
さらに実施形態3では、図7に示したように、各回折格子を構成する格子部が直線状に設けられた場合を示しているが、格子部が同心円状に設けられているような場合についても同様な効果が得られる。
【0049】
(実施形態4)
図10は、本発明の回折光学素子の実施形態4の正面図である。同図において、回折光学素子1は、基板2の表面にそれぞれ異なる材料からなる回折格子を積層した回折部3が配置された構成となっている。回折部3は、後述する図11に示すように同心円状の回折格子4,5,6が積層されており、それぞれの回折格子は中心Laからx方向に沿って周辺に向かうほど周期が小さくなっている。
【0050】
図11は、実施形態4の回折光学素子1を図10中のA−A′断面で切断した断面形状の一部を示すものである。基板2上に入射側から、回折格子4、空気層airを介して回折格子5、回折格子5と密着して回折格子6が積層されている。そして、入射側から数えて第1層目の回折格子4はエネルギー硬化材料の1つである第1の紫外線硬化樹脂(nd=1.636、νd=22.8)、第2層目の回折格子5は第2の紫外線硬化樹脂(nd=1.598、νd=28.0)、第3層目の回折格子6は第3の紫外線硬化樹脂(nd=1.513、νd=51.0)で形成されている。Laは回折光学素子1の中心すなわち光軸である。そして、回折格子4は格子部の格子厚が1つの周期で周辺に向かって増加する鋸歯形状、回折格子5は格子部の格子厚が1つの周期で周辺に向かって減少する鋸歯形状、回折格子6は格子部の格子厚が1つの周期で周辺に向かって増加する鋸歯形状であり、特定の次数の回折光の回折効率を高めるような形状に設定されている。
【0051】
本実施形態においても、回折格子6の各格子部の入射側の稜線を連ねた面602の法線601paと空気層を挟まず密着した回折格子5,6において中心Laから数えて第p番目の格子部5p,6pの周辺側の格子側面501pとのなす角度φ2(p)と、同面602の法線601qaと第q番目の格子部5q,6qの周辺側の格子側面のなす角度φ2(q)が、特定の光線の入射角又は射出角に応じて異なっており、光軸Laから離れるに従って拡大又は減少するように変化している。
【0052】
更に本実施形態の回折光学素子は、回折格子4を構成する格子部の周辺側のエッジ(稜線)とそれに近接する回折格子5,6を構成する格子部の周辺側のエッジを特定の光線の入射角又は射出角に応じてx方向でずらし、ずれ量が光軸Laから離れるにしたがって、大きく又は小さくなるように変化させている。具体的には第1層第p番目の格子部のエッジと第2,3層第p番目の格子部のエッジのx方向のずれ量ΔS2(p)と、第1層第q番目の格子部のエッジ第2,3層第q番目の格子部のエッジとのx方向のずれ量ΔS2(q)とを特定の光線の入射角又は射出角に応じて異ならせている。
【0053】
このように、格子部の位置ごとに通過する全有効光線の入射・射出角度分布を考慮し、それぞれの格子部で光線のケラレが少なくなるような格子側面の傾き角度およびエッジの位置を最適に設定することで、画角全域にわたりフレアやゴースト等の要因となる有害光の発生を抑制している。
【0054】
図12は、実施形態4の回折光学素子1に特定の光線が入射した際の光線のケラレの様子を示す説明図である。格子側面の傾き角度および第1層と第2層の格子部のエッジのずれ量を光線のケラレが少なくなるように変化させることで、1周期の格子部に入射する光束7のうち、ケラレる光束701の割合が大幅に減少している。
【0055】
本実施形態においては、特定の光線の入射角θ1(j)を10°とし、第1層目の回折格子4の格子厚d1を3.54μm、第2層目の回折格子5および第3層目の回折格子6の格子厚d2を19.50μm、面402から第2層目の回折格子5における入射側の界面503までの間隔l1(j)′を1.5μm、同面503から面602までの間隔l2(j)を1.5μm、格子ピッチを80μmとし、第1層の格子側面401の傾き角度φ1(j)を0°、第2,3層の格子側面601傾き角度φ2(j)を11.2°、エッジのずれ量ΔS2(j)を0.79μmに設定した。これにより、1周期の格子部に入射する光束7(80μm)のうちケラレる光束701(0.62μm)の割合は約0.78%となり、図18に示した構造に比べ光線のケラレる割合は8分の1以下にまで低減される。そして、このような本実施形態の回折光学素子1を光学系の一部に用いることで、フレアやゴーストなどの有害光の抑制に大きな効果がある。ただし、ここで示したケラレる光束の割合は、単純に回折格子を断面形状で考えた際の横方向の割合である。
【0056】
本実施形態では、角度φ2(j)を回折格子5からの特定の光線の射出角θ2(j)′に基づき11.2°と決定したが、格子部への特定の光線の入射角θ2(j)に基づいて決定してもよい。また、格子側面の角度は厳密に特定の光線の入射角ないしは射出角に一致させる必要はなく、前述の条件式(1)〜(4)の少なくとも1つを満足するように、入射角ないしは射出角の0.2倍から2.0倍の間の角度で任意に設定してもよい。
【0057】
さらに、ずれ量ΔS2(j)を間隔l1(j)′,l2(j)、回折格子4からの特定の光線の射出角θ1(j)′の値18.3°、回折格子5への入射角θ2(j)の値11.3°に基づいて、1.5μmにtan18.3°を乗じた値と1.5μmにtan11.3°を乗じた値の和から0.79μmと決定したが、厳密にこうして求めた値に一致させる必要はなく、この値のl1(j)′×tanθ1(j)′の0.1倍から1.5倍の間で任意に設定してもよい。
【0058】
具体的には、入射側から数えて第i層目に配置された回折格子における中心から数えて第j番目の格子部のエッジの位置と、それに近接する回折格子における中心から数えて第j番目の格子部のエッジの位置とが特定の光線のケラレが少なくなるように格子部の並び方向にずれて配置されており、そのずれ量ΔSi+1(j)が、
ΔSi+1(j)=C2・[li(j)′tanθi(j)′+li+1(j)tanθi+1(j)]
ただし、
C2:0.1以上、1.5以下の任意の実数
li(j)′:第i層目の回折格子の格子部の稜線を連ねた面から第(i+1)層目の回折格子の入射側の界面までの第j番目の格子部位置での間隔
θi(j)′:第i層目の回折格子における第j番目の格子部からの特定の光線の射出角
li+1(j):第(i+1)層目の回折格子の入射側の界面から格子部の稜線を連ねた面までの第j番目の格子部位置での間隔
θi+1(j):第(i+1)層目の回折格子における第j番目の格子部への特定の光線の入射角
の式を満たすように変化させればよい。
【0059】
なお本実施形態では、3つの層からなる積層型の回折光学素子において、入射側から数えて第2層目および第3層目に配置された回折格子の格子側面の傾き角度が変化している形態を示しているが、更に第1層目の回折格子の格側面の傾きを変化させても良い。但し、積層型の回折光学素子においても、少なくとも1層で実施するだけでもそれなりの効果がある。
【0060】
また実施形態4では、図10に示したように、回折格子が同心円状に設けられた場合を示しているが、回折格子が直線状に設けられた場合についても同様な効果が得られる。
【0061】
以上の実施形態1〜4に示したように、積層型の回折光学素子を構成する回折部の格子側面の傾きを特定の光線の入射角あるいは射出角を考慮して変化させる、ないしは各層の近接するエッジ位置のずれ量を特定の光線の入射角ないしは射出角を考慮して変化させることで、光線のケラレを大きく低減することができ、光学系中に用いたときにはフレアやゴースト等の要因となる有害光の発生を有効に抑制することができる。
【0062】
ここで、実際の光学系に回折光学素子を用いた場合、中心(光軸)からの距離に応じて有効光の入射角は変化しており、かつ、その入射角は単一の値ではなく、一定の分布を持っているのが一般的である。そこで実施形態1〜4に示した回折光学素子では、入射する光線の入射角・射出角の分布から求めた平均値、重心値、最大値、最小値等の光線や、回折光学素子を光学系に用いた際の絞りの中心を通過する光線などのうち、ケラレが最も少なくなるような光線を「特定の光線」に設定し、これに基づいて格子側面の傾き角度、エッジ位置のずれ量等を設定している。
【0063】
また、実施形態1〜4の説明では、いずれも分かりやすくするために平らな基板2上に回折格子4,5,6を設けた場合を示しているが、曲面より成る基板上に設けられた場合についても同様な効果が得られる。
【0064】
また、以上の各実施形態において、ある層の回折格子のエッジの位置がその層の入射側あるいは射出側に隣接する他の層の回折格子のエッジと格子部の並び方向にずらして配置してある領域を有するだけでも良く、これによれば光束のケラレをある程度少なくすることができる。
【0065】
また、実施形態1〜4において射出面を反射面とし、反射型の回折光学素子としても同様の効果が得られる。
(実施形態5)
次に本発明の実施形態5として実施形態1〜4で説明した回折光学素子を光学系の一部に用いた例を示す。
【0066】
図13は、カメラ等の撮影光学系の断面を示したものである。同図において、8は撮影レンズであり、内部に本発明に関わる回折光学素子1が基板2としてのレンズ面上に設けられている。9は絞りであり、10は結像面であるフィルム、又はCCDやCMOSなどの固体撮像素子(光電変換素子)である。
【0067】
回折光学素子1を分散の異なる材料からなる複数の回折格子の積層構造で構成することで、回折効率の波長依存性は大幅に改善されている。さらに回折格子の有効面内の位置に応じた入射角度分布から適切に格子側面の傾き角度や各層の近接する格子部のエッジのずれ量を適切に設定することで、格子側面でケラレる光線の割合を大きく低減し、フレアやゴーストなどの有害光が少なく画面全域にわたり解像度も高い高性能な撮影レンズが得られる。
【0068】
このような本実施形態の撮影光学系は、一眼レフカメラ用の交換レンズ、ビデオカメラやデジタルカメラ等の撮影レンズなどに好適に用いられる。
(実施形態6)
次に本発明の実施形態6として実施形態1〜4で説明した回折光学素子を観察光学系の一部に用いた形態を示す。
【0069】
図14は、双眼鏡の一対の光学系のうち、一方の断面を示したものである。同図において、11は観察像を形成する対物レンズ、12は像を反転させるためのプリズム(像反転部材)、13は接眼レンズ、14は評価面(瞳面)である。図中の1は本発明に係る回折光学素子であり、対物レンズ11の一部を構成している。回折光学素子1は対物レンズ11の結像面10での色収差などを補正する目的で設置されている。
【0070】
回折光学素子1を分散の異なる材料からなる複数の回折格子の積層構造で構成することで、回折効率の波長依存性は大幅に改善されている。さらに回折格子の有効面内の位置に応じた入射角度分布から適切に格子側面の傾き角度や各層の近接する格子部のずれ量を適切に設定することで、格子側面でケラレる光線の割合を大きく低減し、フレアやゴーストなどの有害光が少なく、画面全域にわたり解像度も高い高性能な観察光学系が得られる。
【0071】
本実施形態では、観察光学系における対物レンズ11が回折光学素子1を有する場合を示したが、これに限定するものではなく、プリズム12の表面や接眼レンズ13に設けてもよい。しかし、結像面10より物体側に設けることで対物レンズ側のみで色収差低減効果があるため、肉眼での観察光学系の場合、少なくとも1つの回折光学素子を結像面10よりも対物レンズ側に設けることが望ましい。
【0072】
また、本実施形態では、双眼鏡の実施形態について説明したが、これに限定するものではなく、地上望遠鏡や天体観察用望遠鏡、顕微鏡などであってもよく、また、レンズシャッターカメラやビデオカメラなどの光学式のファインダーであっても同様の効果が得られる。
【0073】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、回折光学素子を構成する回折格子の形状を適切に設定することにより、高い回折効率が得られ、光学系中に用いたときにフレア光やゴースト光等の有害光を低減させることができる。そして本発明を結像光学系や観察光学系に適用すれば、小型で良好な光学性能の光学系を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1の回折光学素子の正面図である。
【図2】実施形態1の回折光学素子の要部断面図である。
【図3】実施形態1の回折光学素子における光線のケラレの説明図である。
【図4】実施形態2の回折光学素子の正面図である。
【図5】実施形態2の回折光学素子の要部断面図である。
【図6】実施形態2の回折光学素子における光線のケラレの説明図である。
【図7】実施形態3の回折光学素子の正面図である。
【図8】実施形態3の回折光学素子の要部断面図である。
【図9】実施形態3の回折光学素子における光線のケラレの説明図である。
【図10】実施形態4の回折光学素子の正面図である。
【図11】実施形態4の回折光学素子の要部断面図である。
【図12】実施形態4の回折光学素子における光線のケラレの説明図である。
【図13】回折光学素子を有する撮像光学系の実施形態の概略図である。
【図14】回折光学素子を有する観察光学系の実施形態の概略図である。
【図15】従来の回折光学素子(2層)の断面図である。
【図16】従来の回折光学素子(3層)の断面図である。
【図17】従来の回折光学素子(2層)における光線のケラレの説明図である。
【図18】従来の回折光学素子(3層)における光線のケラレの説明図である。
【符号の説明】
1 回折光学素子
2 基板
3 回折部
4 回折格子
401p、401q 格子側面
402 回折格子4の稜線を連ねた面
5 回折格子
501p、501q 格子側面
502 回折格子5の稜線を連ねた面
503 回折格子5の入射側の界面
6 回折格子
8 撮影レンズ
9 絞り
10 結像面
11 対物レンズ
12 像反転プリズム
13 接眼レンズ
14 瞳面
Claims (8)
- 異なる材料からなる複数の回折格子を積層した回折光学素子を有する光学系において、前記複数の回折格子のうち少なくとも1つの回折格子は、その格子側面が傾いた領域を有し、その格子部を通過する全有効光線の射出角の分布から求められる平均の射出角を持つ光線を特定の光線とし、前記少なくとも1つの回折格子は前記複数の回折格子のうち入射側から数えて第i層目に配置された回折格子であって、その中心部から数えて第j番目の格子部に入射する特定の光線の射出角をθi(j)′とするとき、前記格子部の稜線を連ねた面の法線に対する前記格子側面の傾き角度φi(j)が、
φi(j)=C1・θi(j)′
ただし、C 1 は0.78以上、1.16以下の任意の実数
を満足するように変化する領域を有することを特徴とする光学系。 - 前記少なくとも1つの回折格子は、格子側面の傾きが中心部から周辺部に向かって次第に大きくなるように変化する領域を有することを特徴とする請求項1に記載の光学系。
- 前記少なくとも1つの回折格子は、格子側面の傾きが中心部から周辺部に向かって次第に小さくなるように変化する領域を有することを特徴とする請求項1に記載の光学系。
- 前記少なくとも1つの回折格子は、その格子エッジの位置がそれに近接する回折格子の格子エッジの位置に対して格子の並ぶ方向にずれた領域を有し、そのずれ量が特定の光線の入射角又は射出角に応じて位置により異なることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光学系。
- 前記少なくとも1つの回折格子は、前記ずれ量が中心部から周辺部に向かって次第に大きくなるように変化する領域を有することを特徴とする請求項4に記載の光学系。
- 前記少なくとも1つの回折格子は、前記ずれ量が中心部から周辺部に向かって次第に小さくなるように変化する領域を有することを特徴とする請求項4に記載の光学系。
- 第i層目の回折格子の射出側の稜線を連ねた面から第(i+1)層目の回折格子の入射側の稜線を連ねた面までの中心部から数えて第j番目の格子部位置での間隔をLi(j)′、第i層目の回折格子の第j番目の格子部からの特定の光線の射出角をθi(j)′とするとき、第i層目の回折格子の第j番目の格子部の格子エッジの位置と第(i+1)層目の回折格子の第j番目の格子エッジの位置とのずれ量ΔSi+1(j)が、
ΔSi+1(j)=C2・Li(j)′tanθi(j)′
ただし、C2は0.1以上、1.5以下の任意の実数
を満足するように変化する領域を有することを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載の光学系。 - 第i層目の回折格子の射出側の稜線を連ねた面から第(i+1)層目の回折格子の入射側の界面までの中心部から数えて第j番目の格子部位置での間隔をli(j)′、第i層目の回折格子の第j番目の格子部からの特定の光線の射出角をθi(j)′、第i+1層目の回折格子における第j番目の格子部への特定の光線の入射角をθi+1(j)、第(i+1)層目の回折格子の入射側の界面から第(i+1)層目の回折格子の入射側の稜線を連ねた面までの第j番目の格子部位置での間隔をli+1(j)とするとき、第i層目の回折格子第j番目の格子エッジの位置と第(i+1)層目の回折格子の第j番目の格子部の格子エッジの位置とのずれ量ΔSi+1(j)が、
ΔSi+1(j)=C2・[li(j)′tanθi(j)′+li+1(j)tanθi+1(j)]
ただし、C2は0.1以上、1.5以下の任意の実数
を満足するように変化する領域を有することを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載の光学系。
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