JP4172431B2 - ハイブリッド車両の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ハイブリッド車の制御装置に関し、特に動力源としてエンジンと二つのモータを備えた構成に関する。
従来、共線図上に4つの入出力要素が配列される4要素2自由度の遊星歯車機構を構成し、前記入出力要素のうちの内側に配列される2つの要素の一方にエンジンからの入力を、他方に駆動系統への出力をそれぞれ割り当てると共に、前記内側の要素の両外側に配列される2つの要素にそれぞれ第1モータジェネレータと第2モータジェネレータとを連結したハイブリッド駆動装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2003−32808号公報
上記ハイブリッド駆動装置には、ある運転点において、第1モータジェネレータを固定し、エンジンと第2モータジェネレータによって走行する固定変速比モードが設定されている。このとき、第2モータジェネレータの回転数は車速に対し一義的に決定されるため、車速が上昇するにつれて第2モータジェネレータ回転数も上昇し、モータ損失が大きな所で制御を行わなければならない走行状態も考えられる。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、固定変速比モードで車速が上昇したとしても第2モータジェネレータの損失を低減可能なハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明では、共線図上に4つ以上の入出力要素が配列され、前記入出力要素のうちの内側に配列される2つの要素の一方にエンジンからの入力を、他方に駆動系統への出力部材をそれぞれ割り当てると共に、前記内側の要素の両外側に配列される2つの要素にそれぞれ第1モータジェネレータと第2モータジェネレータとを連結した差動装置と、前記入出力要素上に設けられた複数の締結要素と、前記締結要素の締結・解放の組み合わせにより複数の走行モードを達成するハイブリッド車両の制御装置において、前記第1モータジェネレータと前記差動装置とを断接するモータジェネレータクラッチと、前記差動装置の第1モータジェネレータ入力要素を回転数ゼロに固定するハイローブレーキと、前記第1モータジェネレータと前記エンジンとを連結するシリーズクラッチとを設け、前記ハイローブレーキで第1モータジェネレータ入力要素を固定し、前記第2モータジェネレータと前記エンジンの駆動力で走行する固定変速比モードにおいて、高車速領域では、前記シリーズクラッチを締結することで、前記第1モータジェネレータと前記エンジンとを連結する損失低減モードに移行することを特徴とする。
よって、固定変速比モードで車速が上昇したとしても第1モータジェネレータと第2モータジェネレータの両方を用いた最適制御を達成し、モータ損失を低減することができる。
以下、本発明のハイブリッド車の制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
まず、ハイブリッド車の駆動系の構成を説明する。
図1は実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車の駆動系を示す全体システム図である。実施例1のハイブリッド車の駆動系は、図1に示すように、エンジンEと、第1モータジェネレータMG1(ジェネレータ)と、第2モータジェネレータMG2(モータジェネレータ)と、出力軸OUT(出力部材)と、これらの入出力要素E,MG1,MG2,OUTが連結される差動装置(第1遊星歯車PG1、第2遊星歯車PG2、第3遊星歯車PG3)と、選択された走行モードに応じて後述する油圧制御装置5からの制御油圧により締結・解放が制御される摩擦締結要素(ローブレーキLB、ハイクラッチHC、ハイローブレーキHLB)と、エンジンクラッチEC(第1クラッチ)と、モータジェネレータクラッチMGC(第2クラッチ)と、シリーズクラッチSC(第3クラッチ)と、を備えている。
前記エンジンEは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、後述するエンジンコントローラ1からの制御指令に基づいて、スロットルバルブのバルブ開度などが制御される。
前記第1モータジェネレータMG1と第2モータジェネレータMG2は、永久磁石を埋設したロータと、ステータコイルが巻き付けられたステータと、を有する同期型モータジェネレータであり、後述するモータコントローラ2からの制御指令に基づいて、インバータ3により作り出された三相交流をそれぞれのステータコイルに印加することにより独立に制御される。
前記差動装置としての第1遊星歯車PG1と第2遊星歯車PG2と第3遊星歯車PG3は、何れも2自由度3要素のシングルピニオン型遊星歯車である。前記第1遊星歯車PG1は、第1サンギヤS1と、第1ピニオンP1を支持する第1ピニオンキャリアPC1と、第1ピニオンP1に噛み合う第1リングギヤR1と、によって構成されている。前記第2遊星歯車PG2は、第2サンギヤS2と、第2ピニオンP2を支持する第2ピニオンキャリアPC2と、第2ピニオンP2に噛み合う第2リングギヤR2と、によって構成されている。前記第3遊星歯車PG3は、第3サンギヤS3と、第3ピニオンP3を支持する第3ピニオンキャリアPC3と、第3ピニオンP3に噛み合う第3リングギヤR3と、によって構成されている。
前記第1サンギヤS1と前記第2サンギヤS2とは第1回転メンバM1により直結され、前記第1リングギヤR1と第3サンギヤS3とは第2回転メンバM2により直結され、前記第2ピニオンキャリアPC2と前記第3リングギヤR3とは第3回転メンバM3により直結される。したがって、3組の遊星歯車PG1,PG2,PG3は、第1回転メンバM1と第2回転メンバM2と第3回転メンバM3と第1ピニオンキャリアPC1と第2リングギヤR2と第3ピニオンキャリアPC3との6つの回転要素を有する。
前記差動装置の6つの回転要素に対する動力源E,MG1,MG2と出力軸OUTと各係合要素LB,HC,HLB,EC,SC,MGCの連結関係について説明する。
前記第1回転メンバM1(S1,S2)には、第2モータジェネレータMG2が連結されている。
前記第2回転メンバM2(R1,R3)には、入出力要素の何れにも連結されていない。
前記第3回転メンバM3(PC2,R3)には、エンジンクラッチECと第1オイルポンプOP1を介してエンジンEが連結されている。
前記第1ピニオンキャリアPC1には、ハイクラッチHCを介して第2モータジェネレータMG2が連結されている。また、ローブレーキLBを介して変速機ケースTCに連結されている。
前記第2リングギヤR2には、モータジェネレータクラッチMGCを介して第1モータジェネレータMG1が連結されている。また、ハイローブレーキHLBを介して変速機ケースTCに連結されている。
前記第3ピニオンキャリアPC3には、出力軸OUTが連結されている。なお、出力軸OUTからは、図外のプロペラシャフトやディファレンシャルやドライブシャフトを介して左右の駆動輪に駆動力が伝達される。
なお、前記第1モータジェネレータMG1とは、シリーズクラッチSCを介して連結されている。
上記連結関係により、図2に示す共線図上において、第1モータジェネレータMG1(R2)、エンジンE(PC2,R3)、出力軸OUT(PC3)、第2モータジェネレータMG2(S1,S2)の順に配列され、遊星歯車列の動的な動作を簡易的に表せる剛体レバーモデル(第1遊星歯車PG1のレバー(1)、第2遊星歯車PG2のレバー(2)、第3遊星歯車PG3のレバー(3))を導入することができる。ここで、「共線図」とは、差動歯車のギヤ比を考える場合、式により求める方法に代え、より簡単で分かりやすい作図により求める方法で用いられる速度線図であり、縦軸に各回転要素の回転数(回転速度)をとり、横軸にリングギヤ、キャリア、サンギヤ等の各回転要素をとり、各回転要素の間隔をサンギヤとリングギヤの歯数比に基づく共線図レバー比(α、β、δ)になるように配置したものである。
前記ローブレーキLBは、油圧により締結される多板摩擦ブレーキであり、図4の共線図上において、第2モータジェネレータMG2の回転速度軸より外側位置に配置され、図2及び図3の共線図に示すように、締結によりロー側変速比を分担する「ローギヤ固定モード」と「ロー側無段変速モード」を実現する。
前記ハイクラッチHCは、油圧により締結される多板摩擦クラッチであり、図4の共線図上において、第2モータジェネレータMG2の回転速度軸と一致する位置に配置され、図2及び図3の共線図に示すように、締結によりハイ側変速比を分担する「2速固定モード」と「ハイ側無段変速モード」と「ハイギヤ固定モード」を実現する。
前記ハイローブレーキHLBは、油圧により締結される多板摩擦ブレーキであり、図4の共線図上において、第1モータジェネレータMG1の回転速度軸と一致する位置に配置され、図2及び図3の共線図に示すように、ローブレーキLBと共に締結することにより変速比をアンダードライブ側の「ローギヤ固定モード」とし、ハイクラッチHCと共に締結することにより変速比をオーバードライブ側の「ハイギヤ固定モード」とする。
前記エンジンクラッチECは、油圧により締結される多板摩擦クラッチであり、図4の共線図上において、エンジンEとの回転速度軸と一致する位置に配置され、締結によりエンジンEの回転とトルクを、エンジン入力回転要素である第3回転メンバM3(PC2,R3)に入力する。
前記シリーズクラッチSCは、油圧により締結される多板摩擦クラッチであり、図4の共線図上において、エンジンEと第1モータジェネレータMG1とを連結する位置に配置され、締結によりエンジンEと第1モータジェネレータMG1とを連結する。
前記モータジェネレータクラッチMGCは、油圧により締結される多板摩擦クラッチであり、図4の共線図上において、第1モータジェネレータMG1と第2リングギヤR2を連結する位置に配置され、第1モータジェネレータMG1と第2リングギヤR2との締結解除を行う。
次に、ハイブリッド車の制御系を説明する。
実施例1におけるハイブリッド車の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、インバータ3と、バッテリ4(強電バッテリ4a,12Vバッテリ4b,DCDCコンバータ4c)と、油圧制御装置5と、統合コントローラ6と、アクセル開度センサ7と、車速センサ8と、エンジン回転数センサ9と、第1モータジェネレータ回転数センサ10と、第2モータジェネレータ回転数センサ11と、第3リングギヤ回転数センサ12と、を有して構成されている。
前記エンジンコントローラ1は、アクセル開度センサ7からのアクセル開度APとエンジン回転数センサ9からのエンジン回転数Neを入力する統合コントローラ6からの目標エンジントルク指令等に応じ、エンジン動作点(Ne,Te)を制御する指令を、例えば、図外のスロットルバルブアクチュエータへ出力する。
前記モータコントローラ2は、レゾルバによる両モータジェネレータ回転数センサ10、11からのモータジェネレータ回転数N1,N2を入力する統合コントローラ6からの目標モータジェネレータトルク指令等に応じ、第1モータジェネレータMG1のモータ動作点(N1,T1)と、第2モータジェネレータMG2のモータ動作点(N2,T2)と、をそれぞれ独立に制御する指令をインバータ3へ出力する。なお、このモータコントローラ2からは、バッテリ4(強電バッテリ4aもしくは12Vバッテリ4b)の充電状態をあらわすバッテリS.O.Cの情報が統合コントローラ6に対して出力される。
前記インバータ3は、前記第1モータジェネレータMG1と第2モータジェネレータMG2との各ステータコイルに接続され、モータコントローラ2からの指令により独立した3相交流を作り出す。このインバータ3には、力行時に放電し回生時に充電するバッテリ4(強電バッテリ4a,12Vバッテリ4b)が接続されている。
前記油圧制御装置5は、両オイルポンプOP1,OP2の少なくとも一方からの油圧供給を受け、統合コントローラ6からの油圧指令に基づいて、ローブレーキLBと、ハイクラッチHCと、ハイローブレーキHLBと、エンジンクラッチECと、シリーズクラッチSCと、モータジェネレータクラッチMGCの締結油圧制御及び解放油圧制御を行う。この締結油圧制御及び解放油圧制御には、滑り締結制御や滑り解放制御による半クラッチ制御も含む。
前記統合コントローラ6は、アクセル開度センサ7からのアクセル開度APと、車速センサ8からの車速VSPと、エンジン回転数センサ9からのエンジン回転数Neと、第1モータジェネレータ回転数センサ10からの第1モータジェネレータ回転数N1と、第2モータジェネレータ回転数センサ11からの第2モータジェネレータ回転数N2と、第3リングギヤ回転数センサ12からのエンジン入力回転速度ωin等の情報を入力し、所定の演算処理を行う。そして、エンジンコントローラ1、モータコントローラ2、油圧制御装置5に対し演算処理結果にしたがって制御指令を出力する。
なお、統合コントローラ6とエンジンコントローラ1、および、統合コントローラ6とモータコントローラ2とは、情報交換のためにそれぞれ双方向通信線14、15により接続されている。
次に、ハイブリッド車の走行モードについて説明する。
走行モードとしては、ローギヤ固定モード(以下、「Lowモード」という。)と、ロー側無段変速モード(以下、「Low-iVTモード」という。)と、2速固定モード(以下、「2ndモード」という。)と、ハイ側無段変速モード(以下、「High-iVTモード」という。)と、ハイギヤ固定モード(以下、「Highモード」という。)と、の5つの走行モードを有する。
前記5つの走行モードについては、エンジンEを用いないで両モータージェネレータMG1,MG2のみで走行する電気自動車モード(以下、「EVモード」という。)と、エンジンEと両モータージェネレータMG1,MG2を用いて走行するハイブリッド車モード(以下、「HEVモード」という。)とに分けられる。
よって、図2(EVモード関連の5つの走行モード)及び図3(HEVモード関連の5つの走行モード)に示すように、「EVモード」と「HEVモード」とを合わせると「10の走行モード」が実現されることになる。
ここで、図2(a)は「EV-Lowモード」の共線図、図2(b)は「EV-Low-iVTモード」の共線図、図2(c)は「EV-2ndモード」の共線図、図2(d)は「EV-High-iVTモード」の共線図、図2(e)は「EV-Highモード」の共線図である。また、図3(a)は「HEV-Lowモード」の共線図、図3(b)は「HEV-Low-iVTモード」の共線図、図3(c)は「HEV-2ndモード」の共線図、図3(d)は「HEV-High-iVTモード」の共線図、図3(e)は「HEV-Highモード」の共線図である。
前記「Lowモード」は、図2(a)及び図3(a)の共線図に示すように、ローブレーキLBを締結し、ハイクラッチHCを解放し、ハイローブレーキHLBを締結し、シリーズクラッチSCを解放し、モータジェネレータクラッチMGCを締結することで得られるローギヤ固定モードである。
前記「Low-iVTモード」は、図2(b)及び図3(b)の共線図に示すように、ローブレーキLBを締結し、ハイクラッチHCを解放し、ハイローブレーキHLBを解放し、シリーズクラッチSCを解放し、モータジェネレータクラッチMGCを締結することで得られるロー側無段変速モードである。
前記「2ndモード」は、図2(c)及び図3(c)の共線図に示すように、ローブレーキLBを締結し、ハイクラッチHCを締結し、ハイローブレーキHLBを解放し、シリーズクラッチSCを解放し、モータジェネレータクラッチMGCを締結することで得られる2速固定モードである。
前記「High-iVTモード」は、図2(d)及び図3(d)の共線図に示すように、ローブレーキLBを解放し、ハイクラッチHCを締結し、ハイローブレーキHLBを解放し、シリーズクラッチSCを解放し、モータジェネレータクラッチMGCを締結することで得られるハイ側無段変速モードである。
前記「Highモード」は、図2(e)及び図3(e)の共線図に示すように、ローブレーキLBを解放し、ハイクラッチHCを締結し、ハイローブレーキHLBを締結し、シリーズクラッチSCを解放し、モータジェネレータクラッチMGCを締結することで得られるハイギヤ固定モードである。
そして、前記「10の走行モード」のモード遷移制御は、統合コントローラ6により行われる。すなわち、統合コントローラ6には、要求駆動力Fdrv(アクセル開度APにより求められる。)と車速VSPとバッテリS.O.Cによる三次元空間に、例えば、図5に示すような前記「10の走行モード」を割り振った走行モードマップが予め設定されていて、車両走行時等においては、要求駆動力Fdrvと車速VSPとバッテリS.O.Cの各検出値により走行モードマップが検索され、要求駆動力Fdrvと車速VSPにより決まる車両動作点やバッテリ充電量に応じた最適な走行モードが選択される。なお、図5は三次元走行モードマップをバッテリS.O.Cが充分な容量域のある値で切り取ることにより、要求駆動力Fdrvと車速VSPとの二次元によりあらわした走行モードマップの一例である。
さらに、シリーズクラッチSCとモータジェネレータクラッチMGCを採用したことに伴い、上記「10の走行モード」に加え、図6に示すように、発進時等で選択されるシリーズローギヤ固定モード(以下、「S-Lowモード」という。)が追加される。この「S-Lowモード」は、ローブレーキLBとハイローブレーキHLBを締結し、エンジンクラッチECとハイクラッチHCとモータジェネレータクラッチMGCを解放し、シリーズクラッチSCを締結することで得られる。
つまり、上記「10の走行モード」はパラレル型ハイブリッド車としての走行モードであるが、シリーズローギヤ固定モードである「S-Lowモード」については、エンジンEと第1モータジェネレータMG1とを共線図から切り離し、エンジンEにより第1モータジェネレータMG1を駆動して発電し、該第1モータジェネレータMG1による発電電力を受け入れて充電する強電バッテリ4aと、この強電バッテリ4aからDCDCコンバータ4cによって降圧されて充電された12Vバッテリ4bの充電電力を用いて第2モータジェネレータMG2を駆動するというシリーズ型ハイブリッド車としての走行モードを達成する。つまり、実施例1は、パラレルにシリーズを組み合わせたハイブリッド車両として構成される。
前記走行モードマップの選択により、「EVモード」と「HEVモード」との間においてモード遷移を行う場合には、図6に示すように、エンジンEの始動・停止と、エンジンクラッチECを締結・解放する制御が実行される。また、「EVモード」の5つのモード間でのモード遷移や「HEVモード」の5つのモード間でのモード遷移を行う場合には、図6に示すON/OFF作動表にしたがって行われる。
これらのモード遷移制御のうち、例えば、エンジンEの始動・停止とクラッチやブレーキの締結・解放が同時に必要な場合や、複数のクラッチやブレーキの締結・解放が必要な場合や、エンジンEの始動・停止またはクラッチやブレーキの締結・解放に先行してモータジェネレータ回転数制御が必要な場合等においては、予め決められた手順にしたがったシーケンス制御により行われる。
(Highモードにおける損失低減モードへの遷移処理)
次に、Highモードから損失低減モードへの遷移処理について図7のフローチャートに基づいて説明する。
ステップ101では、車速がモード切替車速以上かどうかを判断し、モード切替車速以上のときはステップ102へ進み、それ以外はステップ103へ進む。
ステップ102では、損失低減制御処理を開始する。
ステップ102aでは、通常モードかどうかを判断し、通常モード(Highモード)のときはステップ102bへ進み、それ以外はステップ102cへ進む。
ステップ102bでは、Highモードから損失低減モードへのモード切替制御を実行する。
ステップ102cでは、第1及び第2モータジェネレータMG1,MG2の最適制御を実行する。
ステップ103では、損失低減モードかどうかを判断し、損失低減モードのときはステップ104へ進み、それ以外はステップ107へ進む。
ステップ104では、車速の減速度がモード切替減速度未満かどうかを判断し、減速度が小さいときはステップ105へ進み、減速度が大きいときはステップ106へ進む。
ステップ105では、通常の損失低減モードからHighモードへのモード切替制御を実行する。
ステップ106では、急減速時切替制御を実行する。
ステップ107では、通常の制御(Highモード)を継続する。
上記フローチャートについて説明する。図8はHighモードから損失低減モードへ遷移するときのタイムチャートである。
時刻t1において、Highモードで走行中に車速がモード切替車速を越えると、損失低減モードへの遷移が開始され、まず、モータジェネレータクラッチMGCが解放され、同時に、第1モータジェネレータMG1は停止している状態からエンジン回転数まで回転数を上昇させるよう力行トルクの出力が開始される。尚、Highモードで走行中の第2モータジェネレータMG2は回生トルク(発電)を発生させている。このときの第2モータジェネレータ損失は大きく、車速の上昇に伴って増大する。
時刻t2において、第1モータジェネレータMG1の回転数がエンジン回転数と一致すると、シリーズクラッチSCが締結され、エンジンEと第1モータジェネレータMG1は一体とされる。ここで、トルクバランスを維持できるように、第2モータジェネレータMG2が負担している回生トルクを減らし、第1モータジェネレータMG1の回生トルクを増大させる。このとき、第1モータジェネレータMG1の回転数及び回生トルクは効率のよいポイントで運転可能であるため、損失は低い。また、第2モータジェネレータMG2は連れ回るだけであり、回生トルクや力行トルクを発生する必要がないため、損失は徐々に減少する。
時刻t3において、第2モータジェネレータMG2のトルクが0となると、完全に損失低減モードに移行することとなり、第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2の両方を合わせた損失が大きく低減できる。
(損失低減モードについて)
Highモードにて走行中は、図9の共線図に示すように、エンジンクラッチEC、ハイローブレーキHLB、ハイクラッチHC、モータジェネレータクラッチMGCがONとされている。すなわち、第1モータジェネレータMG1は固定状態とされ、エンジンEと第2モータジェネレータMG2によって走行している。Highモードは固定変速比モードであるため車速VSPが決定されると、一義的にエンジン回転数及び第2モータジェネレータ回転数が決定される。このとき、エンジンEは基本的に最適燃費線をなぞるように制御されるため、車速VSPに対するエンジントルクはエンジン回転数に規定される。運転者のアクセルペダル開度等によって要求駆動力Fdrvが決定されると、第2モータジェネレータトルクを制御することで、車速VSP及び要求駆動力Fdrvに対応する走行制御が達成される。このとき、第2モータジェネレータトルクは、図9に示すように、力行側もしくは発電側に制御されることとなる。Highモードでは、第1モータジェネレータMG1は駆動力制御には関与しない。
ここで、第1モータジェネレータMG1の最大トルクは、第2モータジェネレータMG2の最大トルクよりも大きく、第1モータジェネレータMG1の最高回転数は、第2モータジェネレータMG2の最高回転数よりも低い仕様に設計されている。また、バッテリ4には、強電バッテリ4aと、12Vバッテリ4bと、強電バッテリ4aの強電を降圧し12Vバッテリ4bを充電するDCDCコンバータ4cが備えられている。基本的に、上述の構成に基づく実施例1のハイブリッド車両にあっては、強電バッテリ4aに第1モータジェネレータMG1もしくは第2モータジェネレータMG2によって発電された電力が充電され、この強電力はDCDCコンバータ4cによって降圧することで12Vバッテリ4bに充電される。このとき、発電は強電モータである第1モータジェネレータMG1の方が効率が良いにも係わらず、Highモードでは第2モータジェネレータMG2によって発電を行うと損失が増大する場合がある。
図11の左側は、第2モータジェネレータMG2の効率を表す効率マップである。横軸に図中右側が正となる回転数、縦軸に上側が正となるトルクを取ると、正回転正トルクの領域である力行領域は、ポイントA2を最大効率として等高線が記載されている。また、負回転正トルクの領域である発電領域は、ポイントB2を最大効率として等高線が記載されている。Highモードの高車速領域(モード切替車速以上)での第2モータジェネレータMG2は、図11の左側の囲まれた領域C2での運転となる。この領域において、力行もしくは発電を行うと効率が低く、モータ損失が大きい。特に発電時は強電バッテリ4aに充電したあと、DCDCコンバータ4cによって降圧し12Vバッテリ4bに充電する観点からも、モータ損失は更に高くなる。
そこで、図10に示すように、損失低減モードとして、モータジェネレータクラッチMGCを解放し、シリーズクラッチSCを締結することで、エンジンEと第1モータジェネレータMG1を直結状態とした。図11の右側は、第1モータジェネレータMG1の効率を表す効率マップである。力行領域はポイントA1を最大効率として等高線が記載されている。また、発電領域は、ポイントB1を最大効率として等高線が記載されている。第1モータジェネレータMG1をエンジンEと直結したとしても、エンジン回転数自体は第2モータジェネレータMG2に比べて低い回転数で制御されており、第1モータジェネレータMG1もこの回転数領域で制御可能となる。この低い回転数領域では第1モータジェネレータMG1を高効率で制御することが可能となり、モータ損失を低減できる。
よって、レバー比は第2モータジェネレータMG2に比べて小さいため、高トルク(力行・発電の両方)を必要とするが、高い効率を達成でき、このことは発電時に特に有効である。これにより、トルクバランスを維持する制御として第2モータジェネレータMG2によることなく、第1モータジェネレータMG1のトルク制御によって達成することが可能となる。
(損失低減モードから通常の走行モードへの遷移処理)
次に、損失低減モードから通常の走行モードへの遷移処理について説明する。損失低減モードで走行中に車速VSPがモード切替車速を下回ると、通常の走行モード(図5に示す走行モードマップに基づく走行モード)への遷移処理が行われる。ここで、車速VSPの低下によって遷移処理が行われるため、車速VSPに基づいて車体減速度が演算される。この車体減速度がモード切替減速度よりも小さいときは、まず、Highモードへの遷移が行われ、その後は通常のモード遷移制御が行われる。
一方、車体減速度がモード切替減速度よりも大きいときには、急減速が行われており、図5の走行モードマップに示すように車速の急激な低下によってHighモードではなく、他の走行モードに遷移する。このとき、一旦Highモードに遷移した後、他の走行モードに遷移する時間を確保できないため、このときは、損失低減モードから他の走行モードへ直接遷移させる。これにより、運転者の意図に応じた走行モードを達成することができる。
以上、実施例1について特に第2モータジェネレータMG2の発電時(回生トルク出力時)における作用について説明したが、例えば第2モータジェネレータMG2が力行トルクを出力している場合であっても、同様に第2モータジェネレータMG2の力行トルクを減少させ、第1モータジェネレータMG1の力行トルクを用いた二つのモータによる制御を実行してもよい。
次に、効果を説明する。
実施例1のハイブリッド車両の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1)ハイブリッド車両の制御装置において、モータジェネレータクラッチMGCと、ハイローブレーキHLBと、シリーズクラッチSCとを設け、ハイローブレーキHLBを固定し、第2モータジェネレータMG2とエンジンEの駆動力で走行するHighモードにおいて、高車速領域(モード切替車速以上の領域)では、モータジェネレータクラッチMGCを解放し、シリーズクラッチSCを締結することで、第1モータジェネレータMG1とエンジンEとを連結する損失低減モードに移行することとした。よって、固定されていた第1モータジェネレータMG1をエンジンEに連結することで、固定変速比モードでありながら、第1モータジェネレータMG1と第2モータジェネレータMG2の両方のモータを使用した最適制御を実現することができる。
(2)損失低減モードにおいて、トルクバランスを維持しつつ、第2モータジェネレータMG2の駆動負荷の一部を第1モータジェネレータMG1が負担するよう制御することとした。第2モータジェネレータMG2が高回転となり、モータ損失が大きいときでも、エンジン回転数は低いため、エンジンEと直結される第1モータジェネレータMG1の回転数は低い。この状態で第1モータジェネレータMG1によるトルク制御を実行したとしてもモータ損失を小さくすることが可能となり、第1モータジェネレータMG1及び第2モータジェネレータMG2の両方のトータル損失を低減することができる。
(3)損失低減モードにおいて、トルクバランスを維持しつつ、第2モータジェネレータMG2が負担していた発電制御の一部を第1モータジェネレータが負担する用に制御することとした。実施例1のハイブリッド車両に搭載されるバッテリ4は、強電バッテリ4aと、12Vバッテリ4bと、強電バッテリ4aの強電を降圧し12Vバッテリ4bを充電するDCDCコンバータ4cから構成されており、第2モータジェネレータMG2による高回転時の発電制御は特に損失が増大する。よって、第1モータジェネレータMG1による発電制御に移行することで、モータ損失を大幅に低減することができる。
(4)第1モータジェネレータMG1の最大トルクは、第2モータジェネレータMG2の最大トルクよりも大きく、第1モータジェネレータMG1の最高回転数は、第2モータジェネレータMG2の最高回転数よりも低い構成とされている。すなわち、第1モータジェネレータMG1の方が低回転領域において力行トルク及び回生トルクの両方を効率よく出力できる構成とされているため、第2モータジェネレータMG2の駆動制御から第1モータジェネレータMG1の駆動制御に移行することで、よりモータ損失の低減を図ることができる。
以上、本発明のハイブリッド車の制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1のハイブリッド車両の制御装置は、3つのシングルピニオン型遊星歯車により構成された差動装置を有し、パラレル走行モードとシリーズ走行モードとが選択可能なハイブリッド差動装置の例を示したが、例えば、特開2003−32808号公報等に記載されているようにラビニョウ型遊星歯車により構成された差動装置を有し、パラレル走行モードとシリーズ走行モードとが選択可能なハイブリッド差動装置に適用することもできる。さらに、シリーズ走行モードのみを持つシリーズ型ハイブリッド車にも適用することができる。
実施例1のハイブリッド車両を示す全体システム図である。 実施例1のハイブリッド車両において電気自動車モードでの5つの走行モードをあらわす共線図である。 実施例1のハイブリッド車両においてハイブリッド車モードでの5つの走行モードをあらわす共線図である。 実施例1のハイブリッド車両において各係合要素との関係を示す共線図である。 実施例1のハイブリッド車両において走行モードの選択に用いられる走行モードマップの一例を示す図である。 実施例1のハイブリッド車両において「10の走行モード」でのエンジン・エンジンクラッチ・モータジェネレータ・ローブレーキ・ハイクラッチ・ハイローブレーキ・シリーズクラッチ・モータジェネレータクラッチの作動表である。 実施例1の損失低減モードへの遷移処理の流れを示すフローチャートである。 実施例1のHighモードから損失低減モードへ遷移する状態を表すタイムチャートである。 実施例1のHighモードを表す共線図である。 実施例1の損失低減モードを表す共線図である。 実施例1のモータの回転数とトルクの関係に基づく効率を表す効率マップである。
符号の説明
E エンジン
MG1 第1モータジェネレータ
MG2 第2モータジェネレータ
OUT 出力軸(出力部材)
PG1 第1遊星歯車
PG2 第2遊星歯車
PG3 第3遊星歯車
LB ローブレーキ
HC ハイクラッチ
HLB ハイローブレーキ
EC エンジンクラッチ
MGC モータジェネレータクラッチ
SC シリーズクラッチ
1 エンジンコントローラ
2 モータコントローラ
3 インバータ
4 バッテリ
4a 強電バッテリ
4b 12Vバッテリ(低電圧バッテリ)
4c DCDCコンバータ(コンバータ)
5 油圧制御装置
6 統合コントローラ
7 アクセル開度センサ
8 車速センサ
9 エンジン回転数センサ
10 第1モータジェネレータ回転数センサ
11 第2モータジェネレータ回転数センサ
12 第3リングギヤ回転数センサ

Claims (5)

  1. 共線図上に4つ以上の入出力要素が配列され、前記入出力要素のうちの内側に配列される2つの要素の一方にエンジンからの入力を、他方に駆動系統への出力部材をそれぞれ割り当てると共に、前記内側の要素の両外側に配列される2つの要素にそれぞれ第1モータジェネレータと第2モータジェネレータとを連結した差動装置と、
    前記入出力要素上に設けられた複数の締結要素と、
    前記締結要素の締結・解放の組み合わせにより複数の走行モードを達成するハイブリッド車両の制御装置において、
    前記第1モータジェネレータと前記差動装置とを断接するモータジェネレータクラッチと、前記差動装置の第1モータジェネレータ入力要素を回転数ゼロに固定するハイローブレーキと、前記第1モータジェネレータと前記エンジンとを連結するシリーズクラッチとを設け、
    前記ハイローブレーキで第1モータジェネレータ入力要素を固定し、前記第2モータジェネレータと前記エンジンの駆動力で走行する固定変速比モードで走行中であって、高車速領域では、前記シリーズクラッチを締結することで、前記第1モータジェネレータと前記エンジンとを連結する損失低減モードに移行することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
  2. 請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置において、
    前記損失低減モードにおいて、トルクバランスを維持しつつ、前記第2モータジェネレータの駆動負荷の一部を前記第1モータジェネレータが負担するよう制御することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
  3. 請求項1又は2に記載のハイブリッド車両の制御装置において、
    前記損失低減モードにおいて、トルクバランスを維持しつつ、前記第2モータジェネレータが負担していた発電制御の一部を前記第1モータジェネレータが負担するよう制御することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
  4. 請求項1ないし3いずれか1項に記載のハイブリッド車両の制御装置において、
    前記第1モータジェネレータの最大トルクは、前記第2モータジェネレータの最大トルクよりも大きく、前記第1モータジェネレータの最高回転数は、前記第2モータジェネレータの最高回転数よりも低いことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
  5. 請求項1ないし4いずれか1項に記載のハイブリッド車両の制御装置において、
    強電バッテリと、低電圧バッテリと、前記強電バッテリの強電を降圧し前記低電圧バッテリを充電するコンバータとを備えたことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
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