JP4171894B2 - 多孔質膜形成用組成物、多孔質膜の製造方法、多孔質膜、層間絶縁膜、及び半導体装置 - Google Patents
多孔質膜形成用組成物、多孔質膜の製造方法、多孔質膜、層間絶縁膜、及び半導体装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘電特性、密着性、塗膜の均一性、機械強度に優れ、吸湿性を低減化した多孔質膜、層間絶縁膜を形成し得る膜形成用組成物、多孔質膜の製造方法及び形成された多孔質膜、層間絶縁膜、並びに多孔質膜を内蔵する半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体集積回路の高集積化の進展に伴い、金属配線間の寄生容量である配線間容量の増加に起因する配線遅延時間の増大が半導体集積回路の高性能化の妨げになっている。配線遅延時間は金属配線の抵抗と配線間容量の積に比例するいわゆるRC遅延と呼ばれるものである。
【0003】
従って、配線遅延時間を小さくするためには、金属配線の抵抗を小さくするか又は配線間容量を小さくすることが必要である。
【0004】
配線間容量を低下させることで半導体デバイスはより高集積化しても配線遅延を引き起こさないため、高速化が可能になり、更に消費電力も小さく抑えることが可能になる。
【0005】
配線間容量を小さくする方法としては、金属配線同士の間に形成される層間絶縁膜の比誘電率を低くすることが考えられ、比誘電率の低い絶縁膜としては、従来のシリコン酸化膜に代えて多孔質膜が検討されている。比誘電率2.0以下を達成可能な膜で実用的なものとしては多孔質膜がほとんど唯一の膜といえ、そこで種々の多孔質膜の形成方法が提案されている。
【0006】
第一の多孔質膜の形成方法としては、熱的に不安定な有機成分を含むシロキサンポリマーの前駆体を合成した後、その前駆体溶液を基板上に塗布して塗布膜を形成し、その後熱処理を行って有機成分を分解、揮発させることによって、揮発した成分の後に多数の細孔を形成させるという方法がある。
【0007】
第二の多孔質膜の形成方法としては、シリカゾル溶液の基板上に塗布するかCVD法を行うことによってウェットゲルを形成した後、このウェットゲルからの溶媒の蒸発速度を制御することにより、体積収縮を抑制しながらシリカゾルの縮合反応を行わせ、多孔質を形成する方法が知られている。
【0008】
第三の多孔質膜の形成方法としては、シリカ微粒子の溶液を基板上に塗布して塗布膜を形成した後、塗布膜を焼き固めることによって、シリカ微粒子同士の間に多数の細孔を形成する方法が知られている。
【0009】
更に第四の多孔質膜の形成方法として、特開2000−44875号公報(特許文献1)には、(A)R1 nSi(OR2)4-n(R1は1価の有機基、R2は1価炭化水素基で、nは0〜2の整数)で表される成分、(B)金属キレート化合物、及び(C)ポリアルキレンオキサイド構造を有する化合物を含有することを特徴とする多孔質膜形成用組成物に関する提案がなされている。
【0010】
しかしながら、これらの方法にはそれぞれ大きな欠点がある。
即ち、第一の多孔質膜の形成方法は、シロキサンポリマーの前駆体溶液を合成する必要があるのでコストが高くなるという問題があると共に、前駆体溶液を塗布して塗布膜を形成するため、塗布膜中に残留するシラノール基の量が多くなるので、後に行われる熱処理工程において水分などが蒸発する脱ガス現象及び多孔質膜の吸湿に起因する膜質の劣化などの問題がある。
【0011】
また、第二の多孔質膜の形成方法は、ウェットゲルからの溶媒の蒸発速度を制御するために特殊な塗布装置が必要になるので、コストが高くなるという問題があると共に、細孔の表面に多数のシラノールが残留し、そのままでは吸湿性が高く膜質の著しい劣化が生じることから、表面のシラノールをシリル化する必要があるため、工程が複雑になるという問題もある。なお、ウェットゲルをCVD法により形成する場合には、半導体プロセスで通常用いられているプラズマCVD装置とは異なる特殊なCVD装置が必要になるので、やはりコストが高くなる。
【0012】
第三の多孔質膜の形成方法は、シリカ微粒子同士の間に形成される細孔の径が、幾何学的に堆積されるシリカ微粒子の堆積構造により決定されるため、細孔の径が非常に大きくなってしまうので、多孔質膜の比誘電率を2.0以下にすることが困難であるという問題がある。
【0013】
第四の多孔質膜の形成方法の場合、(A)、(B)、(C)の三成分中(B)成分の金属キレート化合物は、(A)、(C)成分の相溶性を向上させ、硬化後の塗膜の厚さを均一にするために必要な成分であるが、成分を複雑化し、製造プロセスを複雑化し、コストも上昇させる要因となり好ましくない。即ち、キレートの成分無しで均一な溶液が形成でき、その硬化後の塗膜も平坦であるような材料の開発が望まれている。
【0014】
また、上記いずれの方法においても、形成された多孔質膜自体の力学的強度の低下が問題となっている。
【0015】
以上のように、従来の材料では熱処理工程において膜質の劣化が生じたり、コストが高くなるという問題を有していた。また、多孔質膜を形成する際に空孔径が大きくなってしまうために低誘電率化が困難であるという問題を有していた。更に、従来の多孔質膜を半導体装置の多層配線に絶縁膜として組み込む場合に、半導体装置製造に必要な機械強度が得られないという問題を有していた。
【0016】
このように半導体装置の多層配線に絶縁膜として使用する多孔質膜の比誘電率が大きいと半導体装置の多層配線におけるRC遅延の増大をもたらし、半導体装置の性能(高速、低消費電力)の向上が図れないという大きな問題があった。また、その多孔質膜の機械強度が弱いと半導体装置の信頼性が低下するという問題があった。
【0017】
【特許文献1】
特開2000−44875号公報
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の諸問題を一挙に解決し、簡単な工程かつ低コストで、比誘電率が2.0以下であり、かつ実用的な力学的強度を有する多孔質膜、層間絶縁膜を形成できる膜形成用組成物、多孔質膜の製造方法及びそれにより形成された多孔質膜を提供することを目的とする。また、本発明はこの多孔質膜を内蔵する高性能かつ高信頼性を備えた半導体装置を提供することを目的とする。
【0019】
本発明者らは、従来の検討から、シリコーン成分は、通常、アクリル系重合体との相溶性が低く、そのままでは均一に混合することは困難であるという知見を有していた。しかし、この問題は、シリコーン成分の構造を制御すること、具体的には、下記一般式(1)
R1−SiZ3 (1)
(但し、上記式中R1は置換又は非置換の1価炭化水素基を示し、ZはOH基、加水分解性基及びシロキサン残基から選ばれ、少なくとも1つはシロキサン残基を示す。)
で表される構造単位(T単位)を30モル%以上含有し、数平均分子量が100以上で、加水分解性基の残存が極めて低く、シラノール基をケイ素原子に対して10モル%以上含有するシラノール基含有シリコーン樹脂を使用し、これに分散度が1.5以下で、数平均分子量が5,000以下のアクリル系重合体を組み合わせることにより、シリコーン樹脂とアクリル系重合体との相溶性が高くなり、有機溶剤中で均一に混合され、塗布により透明な塗布膜を得ることができることを知見した。更に、多孔質膜が実用レベルの強度を保つには、微細で均一な細孔径を持つ孔を膜内に均一に分散させることが有効であるが、上記シリコーン樹脂と上記アクリル系重合体とを含む組成物の塗布膜をこのアクリル系重合体の分解温度以上の温度で加熱することにより、強度の大きい多孔質膜が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0020】
従って、本発明は、下記に示す多孔質膜形成用組成物、多孔質膜の製造方法及び多孔質膜を提供する。
(1) (A)下記一般式(1)
R1−SiZ3 (1)
(但し、上記式中R1は置換又は非置換の1価炭化水素基を示し、ZはOH基、加水分解性基及びシロキサン残基から選ばれ、少なくとも1つはシロキサン残基を示す。)
で表される構造単位(T単位)を30モル%以上含有し、数平均分子量が100以上で、加水分解性基の残存が極めて低く、シラノール基をケイ素原子に対して10モル%以上含有することを特徴とするシラノール基含有シリコーン樹脂100重量部と、(B)分散度が1.5以下で、数平均分子量が5,000以下のアクリル系重合体10〜200重量部とを含有することを特徴とする多孔質膜形成用組成物。
(2) 上記の組成物を基板に塗布し、形成された膜を(B)成分の分解温度以上の温度で加熱することを特徴とする多孔質膜の製造方法。
(3) 上記方法によって得られた多孔質膜。
【0021】
本発明の半導体装置は、
(A)下記一般式(1)
R1−SiZ3 (1)
(但し、上記式中R1は置換又は非置換の1価炭化水素基を示し、ZはOH基、加水分解性基及びシロキサン残基から選ばれ、少なくとも1つはシロキサン残基を示す。)
で表される構造単位(T単位)を30モル%以上含有し、数平均分子量が100以上で、シラノール基をケイ素原子に対して10モル%以上含有するシラノール基含有シリコーン樹脂100重量部と、(B)分散度が1.5以下で、数平均分子量が5,000以下のアクリル系重合体10〜200重量部とを含有することを特徴とする膜形成用組成物を用いて形成された多孔質膜を内部に備えている。具体的には、半導体装置の多層配線の絶縁膜として前記多孔質膜が使用されている。
【0022】
このようにすると、半導体装置の機械強度を確保した上で多孔質膜の吸湿性が低減されるため低誘電率の絶縁膜を内蔵した半導体装置が実現される。絶縁膜の低誘電率化により、多層配線の周囲の寄生容量は低減され、半導体装置の高速動作及び低消費電力動作が達成される。
【0023】
また、本発明の半導体装置において、多層配線の同一層の金属配線間絶縁膜、又は、上下金属配線層の層間絶縁膜に、多孔質膜が存在することが好ましい。このようにすると、高性能かつ高信頼性を備えた半導体装置が実現される。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる(A)成分のシリコーン樹脂は以下のように定義される。
下記一般式(1)
R1−SiZ3 (1)
(但し、上記式中R1は置換又は非置換の1価炭化水素基を示し、ZはOH基、加水分解性基及びシロキサン残基から選ばれ、少なくとも1つはシロキサン残基を示す。)
で表される構造単位(T単位)を30モル%以上、好ましくは50モル%以上含有し、数平均分子量が100以上で、加水分解性基の残存が極めて低く、シラノール基をケイ素原子に対して10モル%以上含有するシラノール基含有シリコーン樹脂である。
【0025】
ここで、下記一般式(1)
R1−SiZ3 (1)
で表されるシリコーン樹脂を構成する構造単位中、R1の1価炭化水素基としては、炭素数1〜12のものが好ましく、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基等や、これらの水素原子の一部又は全部がフッ素原子等のハロゲン原子、グリシジル基やグリシジルオキシ基等のエポキシ含有基で置換された基を挙げることができる。具体的にアルキル基、アリール基、グリシジル基を実例として挙げることができ、ここでアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられ、好ましくは炭素数1〜5であり、これらのアルキル基は鎖状でも分岐していてもよく、更に水素原子がフッ素原子で置換されてもよい。アリール基としてはフェニル基、ナフチル基などを挙げることができる。これらの中でメチル基、フェニル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0026】
また、Zは、OH基、加水分解性基又はシロキサン残基を表し、加水分解性基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基等のアルコキシ基、ビニロキシ基、2−プロペノキシ基等のアルケノキシ基、フェノキシ基、アセトキシ基等のアシロキシ基、ブタノキシム基等のオキシム基、アミノ基などを挙げることができる。これらの中でアルコキシ基が好ましく、特に加水分解・縮合時の制御のし易さから、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基を用いるのが好ましい。また、シロキサン残基は、酸素原子を介して隣接するケイ素原子に結合し、シロキサン結合を形成している置換基のことを意味し、−O−(Si≡)となっているが、酸素原子が隣接するケイ素原子と共有するためO1/2と表すこともできる。
【0027】
更にこのシリコーン樹脂中には下記一般式(1a)
R1−Si(OH)Z’2 (1a)
で表されるシラノール基を1個含有する構造単位(T−2単位)を30〜80モル%含有することが好ましい。
ここにおいて、R1は上記と同様に定義され、Z’はシロキサン残基である。
【0028】
また、本発明のシリコーン樹脂においては、上記T単位を含有すると共に、更に下記一般式(2)
SiZ4 (2)
(但し、式中ZはOH基、加水分解性基及びシロキサン残基から選ばれ、少なくとも1つはシロキサン残基を示し、上記一般式(1)中のZとは同じでも異なってもよい。)
で示される構造単位(Q単位)を含有してもよい。
【0029】
この場合、上記式(2)のQ単位は、0〜40モル%、特に0〜20モル%であることが好ましいが、Q単位を含む場合、Q単位が1モル%以上、特に2モル%以上であることが好ましい。
なお、シリコーン樹脂は、T単位とQ単位との合計量が50モル%以上、特に60モル%以上であることが好ましい。
【0030】
上記シリコーン樹脂は、上記式(1)のR1−SiZ3(T単位)、及び上記式(2)のSiZ4(Q単位)以外の基として、R1 3−SiZ(M単位)、R1 2−SiZ2(D単位)を含んでもよい。この場合、M単位は0〜30モル%、特に0〜10モル%、D単位は0〜50モル%、特に0〜20モル%の含有量とすることができる。但し、M単位、D単位のZの少なくとも1つはシロキサン残基である。
【0031】
次に、本発明で適用されるシラノール基含有シリコーン樹脂の分子量について述べると、塗布し、均一な膜を形成しようとした場合、シリコーン樹脂は一定以上の分子量を有していることが均一な膜を形成する上で望ましい。この点から、本発明においては数平均分子量が100以上のシリコーン樹脂を使用することが必要である。100未満では適度な構造性が確保できないため均一な膜の形成が困難であり、また保存安定性も劣る。好ましくは、数平均分子量は500〜100,000、特に好ましくは1,000〜5,000である。
【0032】
本発明に適用可能なシリコーン樹脂は、上記条件を満たしていると同時に、シラノール基を一定量以上含有しているものであり、シラノール基をケイ素原子に対して10モル%以上、好ましくは20〜80モル%、より好ましくは30〜60モル%有するものである。シラノール基含有量が少なすぎると架橋に寄与するシラノール基の絶対量が不足するため、硬化皮膜の硬度が低下する場合が生じる。またこの場合、シリコーン樹脂は加水分解性基の残存が極めて低く、具体的にはケイ素原子に対して5モル%以下、特には3モル%以下、中でも1モル%以下の含有量であることが好ましい。
【0033】
上記条件を満たしていれば、シリコーン樹脂はいかなる方法で製造してもよい。具体的製造方法を以下に述べる。
【0034】
製造するための原料としては、加水分解性基としてアルコキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、オキシム基等の官能基を有するシラン化合物、あるいはその部分加水分解・縮合物を使用することができる。加水分解反応の制御のし易さ、あるいは加水分解副生成物の処理のし易さ、及び経済的観点から、加水分解性基としては、アルコキシ基あるいはクロル原子、特にアルコキシ基を採用するのがよい。クロル原子を用いる場合は、クロル原子を完全に加水分解させ、シリコーン樹脂中に塩素原子を残さないようにすることが好ましい。また、加水分解性基の数は、ケイ素原子1個あたり1個、2個、3個又は4個含有し、上記条件を満たすシラン化合物であればいかなるものも使用可能であるが、上記有機置換基R1を有し、加水分解性基Xの数が3、即ち
R1SiX3
で示される加水分解性シラン化合物を全加水分解性シラン化合物中の30モル%以上、特に50モル%以上を使用する。なお、他の加水分解性シラン化合物としては、SiX4,R1 2SiX2,R1 3SiXを用いることができる。
【0035】
具体的には、3官能性シランとしては、メチルトリクロルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリプロペノキシシラン、エチルトリクロルシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリクロルシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリクロルシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリクロルシラン、へキシルトリメトキシシラン、フェニルトリクロルシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなど、4官能性シランとしては、テトラクロルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシランなど、2官能性シランとしては、ジメチルジクロルシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジメチルジイソプロペノキシシラン、プロピルメチルジクロルシラン、プロピルメチルジメトキシシラン、ヘキシルメチルジクロルシラン、ヘキシルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジメトキシシランなど、及び1官能性シランとしては、トリメチルクロルシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルイソプロペノキシシラン、ジメチルフェニルクロルシランなど、及び有機官能基を有するいわゆるシランカップリング剤、例えばビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、5−ヘキセニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、4−ビニルフェニルトリメトキシシラン、3−(4−ビニルフェニル)プロピルトリメトキシシラン、4−ビニルフェニルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ビニルメチルジクロルシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、及びこれらの部分加水分解物などが使用可能なシラン化合物の例として挙げられる。
【0036】
操作性、副生物の留去のし易さから、アルコキシシラン、特にメトキシシラン、エトキシシラン類の使用が好ましい。なお、使用可能な有機ケイ素化合物は上記のものに限定されるものではない。更にこれらのシラン化合物の1種又は2種以上の混合物を使用してもよい。
【0037】
本発明に係るシラノール基含有シリコーン樹脂は、上記加水分解性シラン化合物を水溶液中で加水分解することにより得られる点に最大の特徴がある。実質的に有機溶剤をほとんど含有しない親水性条件で加水分解を実施すると、T−2単位を多量に含有する構造性を有する特異なシリコーン樹脂が得られる。このシリコーン樹脂は、以下の各工程を経て調製される。
【0038】
まず、第一段階は、前述した各種加水分解性有機シラン化合物をpH1〜7の水溶液中で加水分解・縮合する過程である。加水分解に使用する水の量は、上記の諸条件を満足する組成に配合したシラン化合物あるいはその混合物100重量部に対して50〜5,000重量部使用するのがよい。50重量部未満では反応系内の水量が少ないため、前述したシラノール基の反応性の制御が難しく、構造性の付与が不可能な場合が生じる。また、5,000重量部を超過すると原料のシラン濃度が低すぎ、縮合反応が遅くなってしまう場合がある。
【0039】
加水分解は、水溶液にシラン化合物を加え、撹拌することにより行う。加水分解、特に初期の加水分解を促進させるために、加水分解用触媒を添加してもよい。加水分解用触媒は、シラン化合物を添加する前に水溶液に添加してもよいし、シラン化合物を分散させた後の分散液に添加してもよい。加水分解用触媒としては、従来公知の触媒を使用することができ、添加した水浴液がpH1〜7の酸性を示す物を適用するのがよい。特に、酸性のハロゲン化水素、カルボン酸、スルフォン酸、酸性あるいは弱酸性の無機塩、イオン交換樹脂等の固体酸などが好ましい。具体例としては、フッ化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸、酢酸、マレイン酸、トリフルオロ酢酸に代表される有機酸、メタンスルフォン酸、パラトルエンスルフォン酸、トリフルオロメタンスルフォン酸などのスルフォン酸類及び表面にスルフォン酸基又はカルボン酸基を有するカチオン交換樹脂等が挙げられる。
【0040】
加水分解用触媒を使用する場合、その添加量はケイ素原子上の加水分解性基1モルに対して0.001〜10モル%の範囲であることが好ましい。pH1未満の強酸性条件下、あるいはpH7を超えるアルカリ性条件下では、シラノール基が極めて不安定になりやすい。より好ましくは、使用する水溶液のpHが2〜6である。水量は加水分解性基の量に対して大過剰であるため、加水分解は完全に進行する。この条件下で室温乃至加熱下撹拌することにより、容易にシラノール基同士の縮合が進行する。
【0041】
この段階では、系内には加水分解副生成物が存在するため、シラノール基含有シリコーン樹脂の前駆体であるシラン反応混合物は、溶液中に溶解して存在する。
【0042】
第二段階は、この反応混合物を含む溶液から加水分解副生成物を系外に除去し、主としてシラノール基含有シリコーン樹脂と水を含有する系にする過程である。
【0043】
即ち、第一の過程で得られたシラン反応混合物を含有する溶液を、常圧下80℃以下、好ましくは30〜70℃程度の温度条件下で加熱するか、あるいは室温〜80℃、好ましくは室温〜70℃の温度下、20mmHg〜常圧に減圧することにより、アルコール等の加水分解副生成物を留去し、実質的にシラノール基含有シリコーン樹脂と水からなる系に変換する。この過程において、シリコーン樹脂の縮合度は更に進行する。
【0044】
第一段階である程度加水分解縮合したシリコーン樹脂は、縮合の更なる進行に伴い高分子化し、徐々に親水性を失う。同時に、シリコーン樹脂が溶存する外部環境も大部分が水となってくる。
【0045】
加水分解副生成物を、その生成量の30〜100%を除去することによりシラノール基含有シリコーン樹脂は溶液中にもはや溶解できなくなり、溶液は徴濁乃至白濁した状態となる。副生成物の50〜100%が除去されると、シリコーン樹脂は水層に不溶となり、静置することにより沈降する。
【0046】
このようにして水層から分離したシリコーン樹脂は、それ自体を取り出すことも可能であるが、水と均一に相溶しない有機溶媒を添加し、溶液として水層から分離することも可能である。このような有機溶媒としてはジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
【0047】
本発明に用いられるシリコーン樹脂はこのようにして製造することが可能であるが、先に定義した範囲であればいかなる製造方法によるものであっても用いることができ、製造法によって限定されるものではない。
【0048】
本発明に使用する(B)成分のアクリル系重合体としては、分散度が2.0以下で、数平均分子量が10,000以下のものであればどのようなものでもよいが、好ましくは、重量平均分子量が300〜10,000、好ましくは500〜3,000程度で単分散性が高く、しかもモノマー成分を含有しないような重合体を使用することにより、シリコーン樹脂との相溶性が高く、良好な多孔質の皮塗布膜を与えることができる。
【0049】
本発明では、シリコーン樹脂−アクリル系重合体の組成物を焼成することにより、アクリル系重合体が選択的に分解除去されて空孔を導入する工程を経ることから、アクリル系重合体の分子量分布が形成される空孔径と密接に関連しており、アクリル系重合体の分子量分布を制御することが形成される空孔の孔径分布を制御することにつながる。また、単分散性の高いアクリル系重合体を使用することにより、形成される空孔の孔径分布も単分散性が高くなる。この場合、本発明におけるアクリル系重合体の分散度は、上述したように2.0以下であり、好ましくは1.5以下である。分散度が2.0を超えると得られる膜の平担性が悪くなる。
【0050】
また、アクリル系重合体の分子量が高いとシリコーン樹脂との相溶性が低くなる傾向があり、この際多分散のアクリル系重合体を使用することにより一見相溶性が高まり、相溶性が良好な組成物を得ることができる。しかし、この組成物から得られた膜は、焼成後の空孔径が大きくなり、また孔径分布も20nm以上の細孔がかなり存在するなど大きくなって膜の力学的強度が小さいものしか得られない。分子量分布を狭くすることにより、シリコーン樹脂との相溶性は悪くなる傾向にあるが、数平均分子量が10,000以下のアクリル系重合体であれば本発明に使用するシラノール基含有シリコーン樹脂とは良好に混合することができる。
【0051】
従って、本発明におけるアクリル系重合体の数平均分子量は、10,000以下であり、好ましくは5,000以下である。また、数平均分子量の下限値としては、500とすることが好ましい。10,000を超えるとシリコーン樹脂との相溶性が低く、また数平均分子量が小さすぎるとモノマー単位を完全に除去することが実質的に困難となる。
【0052】
ここで、単分散性の高いアクリル系重合体としては、例えば、アニオンリビング重合性のアクリルなどの分散度2.0以下の重合物を挙げることができる。アニオンリビング重合によるアクリル系重合体の合成方法としては、例えば大畑、五十野らの報告(Polymer,Vol.33,828,(1992)、高分子論文集、Vol.49,801,(1992))にあるような方法を採ることができる。また、通常の重合方法のアクリル系重合体でも低分子量のもの、又は低分子量部分を抽出分離したアクリル系重合体でも有効である。また、アクリル系のモノマーは一般的に独特の臭気を持ち、また引火性もあるので、重合物中にはモノマーは含有しないことが望ましい。その意味でもアニオンリビング重合によるアクリル系重合体は極めて好ましい。
【0053】
なお、アニオンリビング重合でないアクリル系重合体の場合でも、液体クロマトグラフィーにより高分子量を取り除いた場合には、例えばBET表面積分析で平均孔径3.4nmで、10nm以上の孔径の細孔のない焼成膜を得ることができる。
【0054】
また、これらアクリル系重合体は、非官能性であることが基本であるが、シリコーン樹脂との相溶性を高めるため、あるいは反応性を持たせるために官能基を導入することも可能である。但し、導入される官能基は、400〜450℃の焼成で完全分解することが好ましい。
【0055】
(B)成分のアクリル系重合体の配合量は、シリコーン樹脂100重量部に対して10〜200重量部、好ましくは50〜100重量部である。アクリル系重合体の配合量が少なすぎると十分な空孔が得られず、多すぎると膜強度が低下する。
【0056】
このようなアクリル系重合体は、シリコーン樹脂成分と混合し、下記溶媒に混合した状態で重合反応を行い、本発明にかかる組成物とすることも可能である。このような方法で製造した場合、シリコーン樹脂の存在下モノマーが重合するため、両樹脂が相互貫入網目構造(IPN)を形成する。その結果、一般には相互溶解性に劣るメチル系シリコーン樹脂とアクリル系重合体の混合物であっても、全く透明で、塗布後も分離したり斑になったりしない、従来のシリコーン樹脂とアクリル系重合体を混合した場合に比べて遙かに均一性の高い溶液が得られる。
【0057】
本発明にかかる塗布液は、シリコーン樹脂とアクリル系重合体を溶解する溶媒に溶解した状態で用いられる。ここで用いられる溶媒としては通常の塗布溶媒であればどんなものであっても用いることができ、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、乳酸エチル、シクロヘキサノン、ジグライム、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、アニソールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
また、この膜形成用組成物には、塗布後の平坦性を向上させるために界面活性剤を添加することも可能である。
【0059】
本発明の多孔質膜形成用組成物の製造方法は、(A)、(B)成分及びその他の成分をPGMEAなどの有機溶媒中で混合し、室温にて長時間の撹拌を行うだけでも可能であるが、その際、50〜150℃程度に加熱しながら撹拌を行うことにより、迅速に良好な多孔質膜形成用組成物を調製することができる。
【0060】
本発明の多孔質膜形成用組成物を用いて多孔質膜を形成する方法としては、まず本発明の組成物を基板に塗布し、塗膜を形成する。ここで、本発明の組成物を塗布することができる基板としては半導体、ガラス、セラミックス、金属などが挙げられ、塗布方法としては通常の半導体装置製造等で用いられる方法であればどんな方法でも用いることができるが、例えばスピンコート、ディッピング、ローラーブレードなどが挙げられる。ここで、形成する塗膜の厚さは、層間絶縁膜の場合で通常0.2〜20μmである。次いで、形成された塗膜を加熱するが、これは通常プリベークと呼ばれる工程で塗布液中の溶媒を蒸発させ、塗布膜の形状を固定化することを目的とする。このときの加熱温度は塗布液中の溶媒を蒸発させるのに十分な温度が用いられる。
【0061】
このようにして形成した膜を、(A)成分が硬化し、かつ(B)成分が分解蒸発するのに十分な温度に加熱することによって細孔を有する硬化膜を形成することができる。
【0062】
この加熱方法としては、300〜500℃の温度で加熱することが好ましく、これによって本組成物の場合、細孔を有する多孔質膜となる。加熱時間は1分〜2時間程度であるが、より好ましくは5分〜1時間である。加熱温度が低すぎると、(A)成分の硬化と(B)成分の分解蒸発が進行せず、硬化不十分で機械的強度が小さな膜しか形成できず、また高すぎる温度は、(A)成分の過剰な分解をもたらし、やはり膜強度の低下をもたらすと共に、半導体装置製造プロセスに適合しないことがあり、350〜450℃の温度がより好ましい。
【0063】
この加熱の時の雰囲気としては、大気中で行った場合と不活性ガス雰囲気で行った場合では、膜の細孔の分布及び機械的強度に差異が生じるが、これを制御することにより膜物性の制御が可能であり、どのようなものであっても用いることができ、限定されない。
【0064】
不活性ガスとしては窒素ガス、アルゴンガスなどを挙げることができる。本発明において、不活性ガスは酸素濃度が例えば5ppm以下の値となるように使用することが好ましく、このような不活性ガス中で加熱することにより、酸素の影響を排して、得られる膜の誘電率をより低い値とすることができる。
【0065】
また、本発明の膜の製造方法において、減圧状態で多孔質膜形成用組成物を加熱(反応)することにより、酸素の影響を排して、得られる膜の誘電率をより低い値とすることができる。
【0066】
本発明の組成物を本発明の方法によって加熱して得られた膜は、通常100nm以下の細孔を有し、空隙率は5〜70%である。また膜の誘電率は、通常、2.7〜1.2、好ましくは2.5〜1.2、より好ましくは2.2〜1.2である。従って、本発明の膜は絶縁膜として好適であり、特に高集積回路の層間絶縁膜に適している。
【0067】
本発明の多孔質膜は、特に半導体装置における配線の層間絶縁膜として好ましい。半導体装置は、高集積化しても配線遅延を引き起こさなくするには配線容量を小さくすることが必要となる。これを達成するための種々の手段が考えられているが、金属配線同士の間に形成される層間絶縁膜の比誘電率を低くすることもその一つである。
【0068】
本発明の多孔質膜形成用組成物を用いて層間絶縁膜を製造すると、半導体装置の微細化と高速化が可能になり、更に消費電力も小さく抑えることができる。
【0069】
なお、低誘電率化するために膜に空孔を導入し多孔質とした場合、膜を構成する材料の密度が低下するため、膜の機械的な強度が低下してしまうという問題がある。機械的な強度の低下は、半導体装置の強度自体に影響を及ぼすのみならず、製造プロセスにおいて通常用いられる化学的機械研磨のプロセスにおいて充分な強度を有しないために剥離を引き起こすという問題がある。特に本発明に係る多孔質膜を半導体装置の多層配線における層間絶縁膜として用いる場合には、多孔質膜でありながら大きな機械的強度を有するためにこのような剥離を引き起こさず、製造された半導体装置の信頼性が大幅に改善される。
【0070】
本発明の半導体装置の実施形態について説明する。図1は、本発明の半導体装置の概略断面図を示す。
図1において、1は基板を示しており、Si基板、SOI(Si on insulator)基板等のSi半導体基板であるが、SiGeやGaAs等の化合物半導体基板であってもよい。2はコンタクト層の層間絶縁膜である。3、5、7、9、11、13、15及び17は、配線層の層間絶縁膜である。
【0071】
最下層の配線層の層間絶縁膜3から最上層の配線層の層間絶縁膜17までの配線層を順に略称でM1、M2、M3、M4、M5、M6、M7及びM8と呼ぶ。4、6、8、10、12、14及び16はビア層の層間絶縁膜であり、最下層のビア層の層間絶縁膜4から順に上層に向かって、略称でV1、V2、V3、V4、V5、V6及びV7と呼ぶ。18と21〜24は金属配線を示している。同様に同じ模様の部分は金属配線を示している。19は、ビアプラグであり、金属により構成される。通常銅配線の場合には銅が用いられる。図1中、符号が省略されていても、これと同じ模様の部分はビアプラグを示している。20はコンタクトプラグであり、基板1最上面に形成されたトランジスタ(図示外)のゲートあるいは基板へ接続される。このように、配線層とビア層は交互に積み重なった構成となっており、一般に、多層配線とはM1から上層部分のことを指す。通常、M1〜M3をローカル配線、M4、M5を中間配線あるいはセミグローバル配線、M6〜M8をグローバル配線と呼ぶことが多い。
【0072】
本発明の半導体装置は、配線層の層間絶縁膜3、5、7、9、11、13、15、17、もしくは、ビア層の層間絶縁膜4、6、8、10、12、14、16の少なくとも1つ以上の層に、本発明の多孔質膜を用いたものである。例えば、配線層(M1)の層間絶縁膜3に本発明の多孔質膜を用いている場合、金属配線21と金属配線22の間の配線間容量が大きく低減できる。また、ビア層(V1)の層間絶縁膜4に本発明の多孔質膜を用いている場合、金属配線23と金属配線24の間の配線間容量を大きく低減することができる。このように配線層に本発明の低比誘電率を有する多孔質膜を用いると、同一層の金属配線間容量を大きく低減できる。また、ビア層に本発明の低比誘電率を有する多孔質膜を用いると、上下金属配線の層間容量を大きく低減できる。従って、すべての配線層及びビア層に本発明の多孔質膜を用いることにより、配線の寄生容量を大きく低減できる。
【0073】
本発明の多孔質膜を配線の絶縁膜として使用することにより、従来問題となっていた多孔質膜を積層形成して多層配線を形成する際の多孔質膜の吸湿による誘電率の増大も発生しない。その結果、半導体装置の高速動作及び低消費電力動作が実現される。また、本発明の多孔質膜は機械強度が強いため、半導体装置の機械強度が向上し、その結果半導体装置の製造上の歩留まりや半導体装置の信頼性を大きく向上させることができる。
【0074】
【実施例】
以下、製造例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0075】
[製造例1]
2リットルのフラスコに水800gを仕込み、窒素雰囲気下、0℃でメチルトリメトキシシラン408g(3.0モル)を加えてよく混合した。ここに、氷冷下、0.05Nの塩酸水溶液216gを40分間かけて滴下し、加水分解反応を行った。滴下終了後、10℃以下で1時間撹拌し、更に室温で3時間撹拌して加水分解反応を完結させた。次いで、加水分解で生成したメタノール及び水を70℃×60torrの条件下で1時間減圧留去し、1,136gの溶液を得た。溶液は白濁しており、一昼夜静置すると二層に分離し、水に不溶となったシリコーン樹脂は沈降した。この白濁溶液にメチルイソブチルケトン200gを加えよく撹拌した後、静置し、水層から分離した。これによって溶液398gが得られた。このシラノール基含有シリコーン樹脂の29Si−NMR分析を行ったところ、T単位が100モル%であり、そのうちT−1単位を2モル%、T−2単位を42モル%、T−3単位を56モル%含んでおり、このシリコーン樹脂の数平均分子量は1,800であった。なお、シラノール基含有量は46モル%であった。
但し、T−1単位:CH3−Si(OH)2Z’
T−2単位:CH3−Si(OH)Z’ 2
T−3単位:CH3−SiZ’ 3
(Z’はシロキサン残基を示す。)
【0076】
[製造例2]
製造例1に準じてメチルトリメトキシシラン408g(3.0モル)の代わりにメチルトリメトキシシラン367g(2.7モル)とテトラメトキシシラン46g(0.3モル)を使用して、T単位90モル%、Q単位10モル%を含有するシリコーン樹脂を製造した。この樹脂の全シラノール量は48モル%、数平均分子量は3,150であった。なお、T単位以外の構造単位を含む場合のシラノール量はグリニャー法にて測定した。
【0077】
[製造例3]
製造例1に準じてメチルトリメトキシシラン408g(3.0モル)の代わりにメチルトリメトキシシラン102g(0.75モル)とテトラメトキシシラン342g(2.25モル)を使用して、T単位25モル%、Q単位75モル%を含有するシリコーン樹脂を製造した。この樹脂の全シラノール量は53モル%、数平均分子量は2,240であった。
【0078】
[製造例4]
製造例1に準じてメチルトリメトキシシラン408g(3.0モル)の代わりにメチルトリメトキシシラン102g(0.75モル)とテトラメトキシシラン46g(1.2モル)及びジメチルジメトキシシラン126g(1.05モル)を使用して、D/T/Q単位の比が35/25/40のシリコーン樹脂を製造した。この樹脂の全シラノール量は38モル%、数平均分子量は2,860であった。
【0079】
[製造例5]
高分子論文集Vol.49,801,(1992)の方法に準拠し、ブレークシール法により、1−(p−t−ブトキシエチルフェニル)−1−フェニルエチレンとブチルリチウムにより作製した開始剤を用いて、−40℃にてメタクリル酸メチル(MMA)のリビングアニオン重合を行った。生成したポリマーのGPCによるポリスチレン換算の平均分子量を測定したところ、数平均分子量は2,050、重量平均分子量は2,330で、分散度は1.14であった。
【0080】
[製造例6]
製造例5と同じようにMMAの重合を−78℃にて行った。生成したポリマーの数平均分子量は4,330、重量平均分子量は5,420で、分散度は1.25であった。
【0081】
[製造例7]
多分散ポリ(メチルメタクリレート)を日本分析工業の分取型GPCにより高分子量成分を取り除き、数平均分子量5,130、重量平均分子量9,640で、分散度1.88の成分を得た。
【0082】
[実施例1〜4、参考例1〜3、及び比較例1〜3]
表1に示す成分の膜形成用組成物をシリコンウエハー上にスピン塗布後、風乾し、更に窒素気流下で425℃にて60分間焼成し、多孔質膜を得た。ここで、膜形成用組成物は、必要に応じてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)で希釈し、不揮発分20〜30%の溶液とした。また、塗布条件は、1,000〜3,000rpmで1分間とした。
得られた多孔質膜の平坦性及び屈折率をそれぞれ測定した。なお、平坦性は、目視にて評価し、平坦であるものを○、平坦でないものを×とした。また、屈折率の測定は、PLASMOS社のエリプソメーターSD2300LAを用いて測定した。
更に、実施例1で作製した多孔質塗布膜を削り取り、島津製作所製のTRISTARを用いてBET表面積の分析を行ったところ、平均細孔径は2.2nmで、5nm以上の孔径を持つような細孔成分を含まないことが確認された。また、焼成膜の断面のSEM観察により、膜内に均一に細孔が分布された多孔質膜であることが確認された。
【0083】
【表1】
【0084】
なお、アニオンリビング重合によるアクリル系重合体として、ポリ(メチルメタクリレート)の数平均分子量2,020、分散度1.14を用いたアクリル含有率40%の組成物では、焼成後誘電率1.9の絶縁膜を得ることができた。この焼成膜のBET表面積を測定すると平均孔径2.2nmで、5nm以上の孔径の細孔が含まれていないことが確認された。また数平均分子量4,330、分散度1.25のアニオンリビング重合ポリ(メチルメタクリレート)を用いた場合は、同様の組成で、焼成後の誘電率2.0、BET表面積分析により平均孔径が2.3nmで、5nm以上の孔径の細孔は含まれていなかった。
【0085】
【発明の効果】
本発明の組成物を用いることによって、多孔質で低誘電率でありながら、平坦で均一であると共に、誘電率が小さく、しかも機械的な強度も大きい、半導体装置製造に用いるとき層間絶縁膜として最適な膜を形成することが可能になる。また、本発明の組成物から形成される多孔質膜を多層配線の絶縁膜として使用することにより、高性能かつ高信頼性を有する半導体装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る半導体装置の概略断面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 コンタクト層の層間絶縁膜
3 配線層(M1)の層間絶縁膜
4 ビア層(V1)の層間絶縁膜
5 配線層(M2)の層間絶縁膜
6 ビア層(V2)の層間絶縁膜
7 配線層(M3)の層間絶縁膜
8 ビア層(V3)の層間絶縁膜
9 配線層(M4)の層間絶縁膜
10 ビア層(V4)の層間絶縁膜
11 配線層(M5)の層間絶縁膜
12 ビア層(V5)の層間絶縁膜
13 配線層(M6)の層間絶縁膜
14 ビア層(V6)の層間絶縁膜
15 配線層(M7)の層間絶縁膜
16 ビア層(V7)の層間絶縁膜
17 配線層(M8)の層間絶縁膜
18 金属配線
19 ビアプラグ
20 コンタクトプラグ
21 金属配線
22 金属配線
23 金属配線
24 金属配線
Claims (12)
- (A)下記一般式(1)
R1−SiZ3 (1)
(但し、上記式中R1は置換又は非置換の1価炭化水素基を示し、ZはOH基、加水分解性基及びシロキサン残基から選ばれ、少なくとも1つはシロキサン残基を示す。)
で表される構造単位(T単位)を30モル%以上含有し、数平均分子量が100以上で、シラノール基をケイ素原子に対して10モル%以上含有するシラノール基含有シリコーン樹脂100重量部と、(B)分散度が1.5以下で、数平均分子量が5,000以下のアクリル系重合体10〜200重量部とを含有することを特徴とする多孔質膜形成用組成物。 - シラノール基含有シリコーン樹脂が、更に下記一般式(2)
SiZ4 (2)
(但し、ZはOH基、加水分解性基及びシロキサン残基から選ばれ、少なくとも1つはシロキサン残基を示し、上記一般式(1)中のZとは同じでも異なってもよい。)
で示される構造単位(Q単位)を含有することを特徴とする請求項1に記載の多孔質膜形成用組成物。 - シラノール基含有シリコーン樹脂が、式(1)で表される構造単位(T単位)と式(2)で表される構造単位(Q単位)との合計が50モル%以上のものであることを特徴とする請求項2に記載の多孔質膜形成用組成物。
- (B)成分のアクリル系重合体が、アニオンリビング重合で得られることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の多孔質膜形成用組成物。
- 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の組成物を基板に塗布し、形成された膜を(B)成分の分解温度以上の温度で加熱することを特徴とする多孔質膜の製造方法。
- 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の組成物を用いて得られることを特徴とする多孔質膜。
- 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の組成物を用いて得られることを特徴とする層間絶縁膜。
- (A)下記一般式(1)
R1−SiZ3 (1)
(但し、上記式中R1は置換又は非置換の1価炭化水素基を示し、ZはOH基、加水分解性基及びシロキサン残基から選ばれ、少なくとも1つはシロキサン残基を示す。)
で表される構造単位(T単位)を30モル%以上含有し、数平均分子量が100以上で、シラノール基をケイ素原子に対して10モル%以上含有するシラノール基含有シリコーン樹脂100重量部と、(B)分散度が1.5以下で、数平均分子量が5,000以下のアクリル系重合体10〜200重量部とを含有する膜形成用組成物を用いて形成された多孔質膜を内部に有することを特徴とする半導体装置。 - シラノール基含有シリコーン樹脂が、更に下記一般式(2)
SiZ4 (2)
(但し、ZはOH基、加水分解性基及びシロキサン残基から選ばれ、少なくとも1つはシロキサン残基を示し、上記一般式(1)中のZとは同じでも異なってもよい。)
で示される構造単位(Q単位)を含有することを特徴とする請求項8に記載の半導体装置。 - シラノール基含有シリコーン樹脂が、式(1)で表される構造単位(T単位)と式(2)で表される構造単位(Q単位)との合計が50モル%以上のものであることを特徴とする請求項9に記載の半導体装置。
- (B)成分のアクリル系重合体がアニオンリビング重合で得られることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の半導体装置。
- 上記多孔質膜が、多層配線の同一層の金属配線間絶縁膜、又は、上下金属配線層の層間絶縁膜に存在することを特徴とする請求項8乃至11のいずれか1項に記載の半導体装置。
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