JP4171804B2 - 熱電型交直変換素子 - Google Patents
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Description
入力端子に高周波電力を供給すると、この電力は、抵抗体によって熱に変換される。サーもパイルはこの熱を電圧に変換し、電圧検出用の出力端子間には、入力端子間に供給された高周波電力に応じた電位差が生じる。
従来、熱電型交直変換素子は、10Hzから1MHzまでの交流電圧標準を導出するために用いられている。熱電型交直変換素子には、直流電圧と交流電圧が交互に通電され、その電力(実効値)をヒーター部において熱に変換し、その温度上昇を熱電対などの温度検出素子を用いて測定する。直流電圧と交流電圧に対して、同じ温度上昇が得られる場合には、通電された交流電圧の実効値は直流電圧に等しいと見なし、直流電圧を基準として交流電圧の基準が導出される。
図7は従来の熱電型交直変換素子の構成図である。
例えばセラミックによって構成されたケース121の内部には、誘電体からなる薄いフィルム122が設けられている。このフィルム122の一側面には、電力吸収用の抵抗体123が設けられている。この抵抗体123は測定系のインピーダンスに合わせて抵抗材料をフィルム121に真空蒸着して形成される。この抵抗体123の一端部には、電極124を介して高周波電力の入力端子125が設けられ、他端には電極126を介して高周波電力の接地端子127が設けられている。
入力端子125に高周波電力を供給すると、この電力は、抵抗体123によって吸収され、抵抗体123はこの吸収量に応じて発熱する。サーモパイル128は抵抗体123から発生される熱を電圧に変換し、電圧検出端子131、132の相互間には、入力端子125に供給された高周波電力に応じた電位差が生ずる。
M.Klonz,"Current Developments in accurate ac−dc transfer measurements,"IEEE Trans.Instrum.Meas.,Vol.44,No.2,pp.363−366,1995. B.D.Inglis,"Standards for ac−dc transfer,"Metrologia,vol.29,pp.191−199,1992.
すなわち、ヒーターに1MHz程度の高周波の交流電流を流すと、隣接する温接点に高周波信号が伝播し影響が出る欠点があった。
図5の横軸は周波数、縦軸は直流電力と交流電力の変換誤差をppm(存在比:百万分の1)で表してある。正常位置の特性と交換位置の特性を示す。特性上交換特性は高い周波数の領域で正常位置の特性と大きく相違する。
本発明は、上記従来例の問題点に鑑み、ヒーターに高周波電流を印加したときにも温接点に影響の出ないようにし、交流電圧の実効値と直流電圧の測定感度を損なわずに、高い入出力分離を行う交直変換素子を提供することを目的とする。
(1)
熱電型交直変換素子において、薄膜型のヒーター回路と温度検出回路を空間的に分離し、前記両者間を熱伝導体で熱伝導可能に接続したことを特徴とする。
(2)
熱電型交直変換素子において、耐熱性絶縁フィルムの一側に、ヒーターと該ヒーターに接続された接地電位側の広い面積のリード線部分を連設し、耐熱性絶縁フィルムの他側に、サーモパイルを配置し、前記耐熱性絶縁フィルムを中心にして、前記広い面積のリード線部分に対向して前記サーモパイルを配置した熱電型交直変換素子であって、
少なくとも前記ヒーターを熱伝導体で覆うことを特徴とする。
(3)
熱電型交直変換素子において、ポリイミド膜の一側に、ヒーターと該ヒーターに接続された接地電位側の広い面積のリード線部分を連設し、ポリイミド膜の他側に、サーモパイルを配置し、前記ポリイミド膜を中心にして、前記広い面積のリード線部分に対向して前記サーモパイルを配置した熱電型交直変換素子であって、
少なくとも前記ヒーターを熱伝導体で覆うことを特徴とする。
(4)
熱電型交直変換素子において、ポリイミド膜の一側に、ヒーターと該ヒーターに接続された接地電位側の広い面積のリード線部分を連設し、ポリイミド膜の他側に、サーモパイルを配置し、前記ポリイミド膜を中心にして、前記広い面積のリード線部分に対向して前記サーモパイルを配置した熱電型交直変換素子であって、
前記ヒーターをアルミナチップ又は窒化アルミニウムチップ3で覆うことを特徴とする。
(5)
熱電型交直変換素子において、ポリイミド膜の一側に、ヒーターと該ヒーターに接続された接地電位側の広い面積のリード線部分を連設し、ポリイミド膜の他側に、サーモパイルを配置し、前記ポリイミド膜を中心にして、前記広い面積のリード線部分に対向して前記サーモパイルを配置した熱電型交直変換素子であって、
前記ヒーターとこのヒーターに接続された接地電位側の広い面積のリード線部分をアルミナチップ又は窒化アルミニウムチップ3で覆うことを特徴とする。
図6の横軸は周波数、縦軸は直流電力と交流電力の変換誤差をppm(存在比:百万分の1)で表してある。正常位置の特性と交換位置の特性を示す。両特性は、最大でも数ppm程度の相違しかなく、高い一致を示し、図5の特性より改善されていることがわかる。
(1)熱伝導の結果を測定する必要から、熱電型交直変換素子の特性が安定するまでに数秒程度の時間を要する。このために、ヒーターの発熱量の最適化と、主な熱伝導物質の熱伝導特性の選択等が必要となる。
(2)熱電型交直変換素子の使用周波数帯は、数十Hzから1MHzの周波数帯になるので、低周波数帯における発生熱の変動の抑制と、高周波数帯における表皮効果の影響の低減を必要とする。
(3)熱電型交直変換素子は、高周波入力信号の、ヒーターやサーモパイル等からなる容量結合による出力への影響を抑制するための構成を採用する必要がある。
(4)熱電型交直変換素子は、交直変換誤差が極めて小さな値、例えば数ppmレベルとなることが必要で、そのために熱伝導が効率的に行われる構成が必要となる。
本発明は以上の各条件を満足するように構成される。
薄膜型のヒーター回路は、電極部4および5と、配線パターン13、14および15と、ヒーター7からなる。
温度検出回路は、電極部10および11と、配線パターン16および17と、サーモパイル9からなる。
図2では、薄い耐熱性絶縁フィルム2、例えば、ポリイミドフィルム(以下、ポリイミドフィルムを用いて実施例を説明する)の一方側に,ヒーター7と該ヒーター7から各端子4、5までの銅箔リード線の配線パターン13、14、15を形成する。
耐熱性絶縁フィルム6は、200度程度の蒸着温度に耐える、耐熱性を有する絶縁性の薄いフィルム材で構成され、例えば、ポリイミドフィルムやテフロン(登録商標)系のフィルム材が好ましい。
この配線パターン14は、ヒーター7の接地側からヒーター7の長さ方向にヒーター7の横幅より広い横幅で後述する多数の熱電対(サーモパイル)7を多段に折り曲げて配置する横幅に相当する長さ相当延びるように構成される。ヒーター7の接地電位側の配線パターン14は、配線パターン13と比べ、そのパターン面積が極端に大きく形成されている。
一方、薄いポリイミドフィルム2の他方側には、前記ヒーターの接地電位側の広幅の配線パターン14を覆うように多対の熱電対(サーモパイル)9を配置する。
サーモパイル9は、Bi(ビスマス)とSb(アンチモン)を成分とし、パターン成形される。このパターンの構成は、例えば、定格入力電力を20mWとしたとき、膜厚は、例えば、Biが1.6μm、Sbが0.8μmで、パターン幅0.1mm、対数が30対とすることが好ましい。サーモパイル9は、冷接点と温接点が交互に接続された構造を有する。
このサーモパイル9の両端にも各端子10、11までの銅箔リード線の配線パターン16,17が設けられている。
熱伝導体となるアルミナチップ3は、熱容量を必要以上に大きくせず、かつ十分な熱伝導を確保できる厚さとする。0.6mm厚のアルミナ基板が好ましい。他の例としては、後述する窒化アルミニウムがある。
ヒーター7での発熱は、アルミナチップ3、配線パターン14、ポリイミドフィルム6を経て、サーモパイル9に導かれる。
ヒーター7やサーモパイル9等の構成要素を搭載したポリイミドフィルム6は、その周辺部でアルミナ枠2に固定される。
ポリイミドフィルム6は、例えば、約12.5μmの厚さが好ましい。
アルミナ枠2は、アルミナシートの4層構造で、例えば、幅9mm、長さ15mm、厚さ0.6mmの構成が好ましい。
アルミナ(A1203)
熱伝導率:21.0Wm−1K−1
定積比熱Cv:0.8Jg−1K−1/3.7gcm−3=2.96JK−1cm−3
窒化アルミニウム(AlN)
熱伝導率:170Wm−1K−1
定積比熱Cv:0.7Jg−1K−1/3.2gcm−3=2.24JK−1cm−3
ポリイミドフィルム
熱伝導率:0.27Wm−1K−1
ヒーター薄膜(NiCr)
熱伝導率:13.0Wm−1K−1
銅箔膜(Cu)
熱伝導率:403Wm−1K−1
定積比熱Cv:0.38Jg−1K−1/8.93gcm−3=3.39JK−1cm−3
体積抵抗率ρ:1.72×10−8Ωm
ビスマス箔膜(Bi)
熱伝導率:8.2Wm−1K−1
体積抵抗率ρ:120×10−8Ωm
対Pt起電力ε:−0.074×10−3VK−1
アンチモン薄膜(Sb)
熱伝導率:25.5Wm−1K−1
体積抵抗率ρ:38.7×10−8Ωm
対Pt起電力ε:+0.049×10−3VK−1
ヒーター7の配線パターン14は、サーモパイル9と対向配置されるため、入出力間で容量結合を構成するが、本発明の場合、この配線パターン14は接地電極へ接続されるので、入力側から出力側への寄生容量を介した不要信号の影響を抑制することができる。
図3では、図2の例と比べ、ヒーター部分を覆う熱伝導体であるチップを、アルミナチップ3に替えて熱伝導率の大きな窒化アルミニウムチップとし、ヒーター7および配線パターン14全面をカバーするように広幅に構成される。
窒化アルミニウムチップ3は、金属と同等の熱伝導率を有し、チップのカバーすべき面積が大きくなるので、熱容量と熱伝導を両立させるため、絶縁体の中で熱伝導率の大きなアルミナ基板を研磨して使用する。例えば、基板厚さ0.3mmに研磨した場合、面内熱伝導率は51000×10−6wk−1になる。
熱電型交直変換素子の熱伝導特性は、窒化アルミニウムの形状に依存する。
窒化アルミニウム(300μm)で、51000×10−6wk−1、
アルミナ(600μm)で、 12600×10−6wk−1、
銅蒸着膜(Cu/0.5μm)で、 201×10−6wk−1、
Sb蒸着膜(Sb/0.8μm)で、 20.4×10−6wk−1、
Bi蒸着膜(Bi/1.6μm)で、 13.1×10−6wk−1、
ポリイミド膜(12.5μm)で、 3.37×10−6wk−1、
ヒーター薄膜(NiCr/0.05μm)で、0.65×10−6wk−1。
図4では、上から下に向かって積層順に並べてある。
(1)一側面には一層目としてアルミナカバー1が設けられる。アルミナカバー1の両上隅は、外部電極(図示省略)を後述する配線パターン13、15に接続するために切り欠かれている。
(2)次の層は、アルミナ枠2と窒化アルミニウムチップ3により構成される。アルミナ枠2は、前記一層目のアルミナカバー1と同じ外形を有し、中央部分に窒化アルミニウムチップ3の形状より大きい形状の開口が形成されている。窒化アルミニウムチップ3は、その厚みがアルミナ枠2の厚みと同じ厚みで、長方形の平板に構成される。その長方形の面積は、次に述べるヒーター7と該ヒーター7の配線パターン14を多い尽くす面積に形成される。
ヒーター7と窒化アルミニウムチップ3は、保護膜形成用のワニス(図示省略)を用いて熱接触される。ワニスの熱伝導率はポリイミド膜6と同程度の0.27Wm−1K−1程度が好ましい。
(3)次の層は、主要な構成要素を搭載した耐熱性絶縁フィルムであるポリイミド膜6の層からなる。
窒化アルミニウムチップ3側のポリイミド膜6上には、電極部5とヒーター用電極部を配線部分で接続した銅箔リードの配線パターン13と、接地側の電極部4とヒーター用電極部兼幅広配線部を接続した銅箔リードの配線パターン14と15が形成され、前記両ヒーター用電極間にヒーター7が設けられている。
前記ヒーター7とは反対側のポリイミド膜6上には、電極部11とサーモパイル9の一方の端子までの間の配線部分からなる銅箔リードの配線パターン16と、電極部10とサーモパイルの他方の端子までの間の銅箔リードの配線パターン17と、サーモパイル9が形成されている。サーモパイル9は、温接点と冷接点を交互に接続し端部8で折り返して接続した構成とされる。
(4)次の層は、前記2層目のアルミナ枠2を、切り欠き部を上下逆に設けた構成とする。この切り欠き部は、前記両出力用の端子10,11に外部端子(図示省略)を接続するために形成されている。
(5)最後の層は、前記1層目のアルミナカバー1を、端子10,11用の切り欠き部を上下逆に設けた構成とする。この切り欠き部は、前記端子10,11に外部端子(図示省略)を接続するために形成されている。
また、本発明の交直変換素子は、ヒーターに高周波電流を印加したときにも温接点に影響の出ないようにし、交流電圧の実効値と直流電圧の測定感度を損なわずに、高い入出力分離を行うことができる。
2 アルミナ枠
3、12 熱伝導体(アルミナチップ、窒化アルミニウムチップ)
4、5、10,11 電極部
6 耐熱性絶縁フィルム(ポリイミド膜)
7 ヒーター
8 端部
9 サーモパイル
Claims (4)
- 耐熱性絶縁フィルムと、該耐熱性絶縁フィルムの一側面に設けたヒーター及び該ヒーターの長さ方向の一対の端部のそれぞれに接続された高圧側及び接地側の一対の配線パターンと、前記耐熱性絶縁フィルムの他側面に設けたサーモパイル及び該サーモパイルの一対の端部のそれぞれに接続された一対の配線パターンとからなり、
前記ヒーターに接続された接地端子側の配線パターンのヒーター側部分配線パターンは、該ヒーターに接続された高圧端子側部分配線パターンと比べヒーター側部分配線パターンのパターン面積を極端に大きく形成し、該ヒーター側部分配線パターンは接地端子に接続された接地側部分配線パターンとヒーターの一端を接続し給電路になると共に前記ヒーターの発生した熱を前記サーモパイルへ伝えるために幅広に構成され、前記部分配線パターンは、前記ヒーターの接地端子側から前記ヒーターの長さ方向に前記ヒーターの横幅より広い横幅で前記サーモパイルを多段に折り曲げて配置する横幅に相当する長さ延びるようにし、前記耐熱性絶縁フィルムの他方側には、前記ヒーターの接地端子側の広幅の配線パターンを覆うようにサーモパイルを配置したことを特徴とする熱電型交直変換素子。 - 前記ヒーターを熱伝導体で覆うことを特徴とする請求項1記載の熱電型交直変換素子。
- 前記熱伝導体をアルミナチップ又は窒化アルミニウムチップとしたことを特徴とする請求項2記載の熱電型交直変換素子。
- 前記耐熱性絶縁フィルムをポリイミド膜としたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の熱電型交直変換素子。
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