JP4171303B2 - 腎疾患・腎不全の予防剤及び/又は治療剤 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は、下記式で示される化合物(I)
Figure 0004171303
(式中、R及びRは独立して水素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、R及びRは独立して水素、ハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基、水酸基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又はフェニル基である。)
又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する腎疾患及び/又は腎不全の予防剤及び/又は治療剤又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する薬剤に関する。
背景技術
メサンギウム領域は糸球体を構成する基本要素の一つであり、メサンギウム細胞とメサンギウム基質により構成されている。この内メサンギウム細胞は腎糸球体毛細血管の支持組織であると考えられている。腎疾患では、このメサンギウム細胞の増殖及び/又はメサンギウム基質の増加が観察され、最終的には糸球体硬化にいたり腎不全の転帰をとる。従って、メサンギウム細胞の増殖を抑えることは、腎疾患、腎不全をはじめ種々の腎臓疾患の予防及び/又は治療に有効である。
ところで、9−メチル−3−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オン(一般名:ペミロラスト)のカリウム塩(以下、ペミロラストカリウムという。)は、気管支喘息、アレルギー性鼻炎等の治療薬として広く用いられている薬物であり、本件出願人である三菱ウェルファーマ(株)よりアレギサール(商品名)として日本国内において市販されているが、本願発明者らが知る限り、ペミロラストカリウム単独でメサンギウム細胞増殖を伴う腎疾患や腎不全あるいはその動物モデルに有効性を示すことに関して報告された例はない。
現在、メサンギウム細胞増殖性腎疾患に対しては、降圧剤、抗血小板剤、抗凝固剤、副腎皮質ステロイド剤等が使用されているが、その効果は十分とはいえない。そこで、本発明は新規な腎疾患、腎不全の予防剤及び/又は治療剤、すなわち、ペミロラスト又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する腎疾患、腎不全の予防剤及び/又は治療剤を提供することを目的とする。
発明の開示
本発明者らは、化合物(I)又はその薬理学的に許容される塩がメサンギウム細胞増殖を伴う腎疾患モデルに有効性を示し、腎疾患、腎不全の予防及び/又は治療に有効であることを見出し、本発明を完成した。
即ち本発明の要旨は以下の通りである。
1.下記式で示される化合物
Figure 0004171303
(式中R及びRは独立して水素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、R及びRは独立して水素、ハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基、水酸基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又はフェニル基である。)
又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する腎疾患及び/又は腎不全の予防剤及び/又は治療剤。
2.R及びRが独立して水素又はメチル基であり、Rが水素、塩素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又はフェニル基であり、Rが水素、塩素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヒドロキシメチル基又はメチルオキシ基である第1記載の予防剤及び/又は治療剤。
3.9−メチル−3−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オン又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する腎疾患及び/又は腎不全の予防剤及び/又は治療剤。
4.腎疾患が急性腎炎症候群、急速進行性腎炎症候群、反復性あるいは持続性血尿、慢性(糸球体)腎炎症候群及び/又はネフローゼ症候群である第1項乃至第3項に記載の予防剤及び/又は治療剤。
5.腎疾患がIgA腎症である第1項乃至第4項に記載の予防剤及び/又は治療剤。
6.腎疾患がメサンギウム細胞増殖を伴う腎疾患である第1項又は第3項に記載の予防剤及び/又は治療剤。
7.9−メチル−3−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オン又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する慢性腎炎症候群及び/又はネフローゼ症候群の予防剤及び/又は治療剤。
8.9−メチル−3−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オン又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するIgA腎症の予防剤及び/又は治療剤。
9.薬理学的に許容される塩がカリウム塩である第1項乃至第8項記載の予防剤及び/又は治療剤。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において、糸球体疾患と腎疾患とは、その境界が明確ではないことから、ほぼ同義の疾患として扱うこととする。
腎疾患という場合、WHOは発症様式、腎機能の経時的推移、蛋白尿の程度などにより5つに分類する臨床症候分類と組織分類の2つを用いて分類している。本明細書において腎疾患という場合には、この臨床症候分類及び組織分類に含まれるすべての腎疾患を含有している。ここで、臨床症候分類について説明する。
1.急性腎炎症候群
血尿、蛋白尿、高血圧、糸球体濾過値の減少、Naと水の貯留の急激な出現など発症が明らかであることを特徴とする症候群である。この臨床像を呈する組織所見又は疾患の例としては、溶連菌感染後急性糸球体腎炎、半月体形成性糸球体腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎、硬化性糸球体腎炎の急性増悪期、巣状増殖性糸球体腎炎、ループス腎炎、紫斑病性腎炎、IgA腎症、遺伝性腎炎(Alport症候群)、結節性動脈周囲炎、ウェグナー(Wegener)肉芽腫をあげることができる。
2.急速進行性腎炎症候群
血尿、蛋白尿、貧血、急速に進行する腎不全が急激にあるいは潜在性に発症する症候群である。この臨床像を呈する組織所見又は疾患の例としては、半月体形成性糸球体腎炎、グッドパスチャー(Goodpasture)症候群、膜性増殖性糸糸球体腎炎、紫斑病性腎炎、ループス腎炎、結節性動脈周囲炎、ウェグナー(Wegener)肉芽腫、感染性心内膜炎、膜性腎症、クリオグロブリン血症、溶血性尿毒症性症候群をあげることができる。
3.反復性あるいは持続性血尿
蛋白尿は僅かあるいはほとんど認めないが、肉眼的または顕微鏡的血尿が潜在性に、あるいは急激に出現し、しかもほかの腎炎症候群にみられる所見を認めないものをいう。この臨床像を呈する組織所見又は疾患の例としては、巣状増殖性糸球体腎炎、IgA腎症、IgM腎症、び漫性増殖性糸球体腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎、巣状糸球体硬化症、硬化性腎炎、アルポート(Alport)症候群、ループス腎炎、基底膜菲薄化症候群、糸球体異常なしをあげることができる。
4.慢性(糸球体)腎炎症候群
慢性腎炎症候群と呼ばれることもある。蛋白尿、血尿、高血圧が認められ徐々に腎不全に陥るもの。この臨床像を呈する組織所見又は疾患の例としては、瀰漫性増殖性糸球体腎炎、硬化性腎炎、IgA腎症、膜性腎症、巣状糸球体硬化症、ループス腎炎、糖尿病性腎症、腎アミロイドーシス、アルポート(Alport)症候群をあげることができる。
5.ネフローゼ症候群
大量の蛋白尿、浮腫、低アルブミン血症と、しばしば高コレステロール血症を伴う症候群、糸球体病変は多彩である。この臨床像を呈する組織所見又は疾患の例としては、微少変化型ネフローゼ症候群、巣状糸球体硬化症、膜性腎症、び漫性増殖性糸球体腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎、IgA腎症、IgM腎症、クリオグロブリン血症、ループス腎炎、紫斑病性腎炎、糖尿病性腎症、アミロイドーシス、アルポート(Alport)症候群、先天性ネフローゼ症候群をあげることができる。
なお、以上に示した疾患名は例としてあげたものであり、定義に合致する疾患・病態である限り、本明細書における腎疾患をこれらに限定するものではない。
また、日本においては慢性腎炎には「蛋白尿、血尿、高血圧が認められ、徐々に腎不全に陥る進行例(進行期)と、それ以外に腎機能正常の非進行例(固定期)が含まれる」と捉えるのが一般的とされている。さらに、ネフローゼ症候群については、日本独自の判断基準を設けている。本明細書における腎疾患には、これらの慢性腎炎、ネフローゼ症候群も含まれる。
本発明において、有効成分として用いられるペミロラスト及びその薬理学的に許容される塩は、特開昭54−36294号公報や特開平2−289569号公報に記載されているような方法に準じて容易に製造することが可能であり、市販品を使用することも可能である。薬理学的に許容される塩としては、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸塩、酢酸、クエン酸、フマル酸、酒石酸等の有機酸塩、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸塩及びアラニン、ロイシン、グルタミン酸、グルタミン等のアミノ酸塩ならびにアンモニア塩、エチルアミン、エタノールアミン等の有機アミン塩及びアルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属塩が挙げられ、カリウム塩が特に好ましい。また、ペミロラスト又はその薬理学的に許容される塩は、水和物若しくは溶媒和物又は結晶多形の物質として単離されることがあるが、これらもまた本発明に含まれる。
化合物(I)において、炭素数1〜6のアルキル基とは直鎖及び枝分かれした飽和脂肪族炭化水素基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等である。
ハロゲンとはフッ素、塩素、臭素及びヨウ素である。
水酸基で置換された炭素数1〜6のアルキル基とは、水酸基で置換されている上述した炭素数1〜6のアルキル基であり、例えばヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基等である。
炭素数1〜6のアルコキシ基とは、上述した炭素数1〜6のアルキルオキシ基であり、例えばメチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等である。
化合物(I)においてRの好ましい例としては水素、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基が挙げられ、より好ましくは水素又はメチル基である。Rの好ましい例としては水素、塩素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基、ブチルオキシ基又はフェニル基が挙げられ、より好ましくは水素、塩素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又はフェニル基である。Rの好ましい例としては水素、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基が挙げられ、より好ましくは水素又はメチル基である。Rの好ましい例としては水素、塩素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、メチルオキシ基、エチルオキシ基又はプロピルオキシ基が挙げられ、より好ましくは水素、塩素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヒドロキシメチル基又はメチルオキシ基である。
化合物(I)の好ましい例としては9−メチル−3−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オンを挙げることができる。
本発明においては、化合物(I)又はその薬理学的に許容される塩は通常の製剤担体を配合することにより、錠剤、ハード若しくはソフトカプセル剤、顆粒剤、散剤、細粒剤若しくは座剤等の固形製剤又は注射剤、吸入剤、シロップ剤、水剤、懸濁剤若しくは乳剤等の液剤に調製して用いることも可能である。配合する製剤担体としては、所望の剤型に応じ例えば、賦型剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、被覆剤、溶解補助剤、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、吸収助剤、安定化剤又は溶剤等を適宜選択してもよい。使用用量は年齢、症状及び投与形態により異なるが、経口投与では1日当たり、0.1〜1000mgを、非経口投与では1日当たり0.01〜100mgを1回又は数回に分けて用いる。なお、本発明で用いる上記化合物は安全性が高く、ペミロラストのLD50値は雄性ラット経口投与の場合で1317mg/kg、雄性ラット腹腔内投与の場合で533mg/kgであることがわかっている。
発明を実施するための最良の形態
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、以下の実施例は本発明を限定するものではない。なお、以下で使用したペミロラストカリウムは、日本特許公開公報、特開平2−289569号公報に記載の方法に従って製造したものを用いた。
実施例
製剤処方例
ペミロラストカリウムを10g量り、ゲル形成高分子としてプルラン、ポリビニルアルコール、オイドラギットRS(商品名)、カーボポール(商品名)、アルギン酸ナトリウムを用い、これを30g、及び乳糖59gを加えて混合した。次に、練合水として水を用いて練合造粒し、熱風送風乾燥機にて乾燥した後、16メッシュの篩を用いて篩過した。これに所定量の無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウムを量り、ポリエチレン袋で混合し、8mm径のパンチを用いて1錠200mgとなるように打錠した。
薬理実験例
メサンギウム細胞増殖により誘発される腎炎の抑制効果
雄性SDラットに1mg/kgの抗Thy−1.1抗体を静脈内投与することによりメサンギウム細胞増殖性腎炎を誘発した(Nephrol.Dial.Transplant(2000),15,pp.16−22)。抗Thy−1.1抗体投与から0、3、5、7、10日後にメタボリックケージを用いて24時間尿を採取し、尿中の蛋白質量を測定した。ペミロラストカリウムを抗Thy−1.1抗体投与の10日前から1日1回経口投与した。結果を表1に示す。
Figure 0004171303
上記の結果により、ペミロラストは腎炎進展のパラメータである尿蛋白を抑制し、メサンギウム細胞増殖により誘発される腎炎の抑制効果が確認された。この結果からペミロラストカリウムはメサンギウム細胞の増殖により引き起こされる糸球体硬化、さらには腎機能低下を軽減させることが期待される。
産業上の利用可能性
以上の結果から明らかなように、ペミロラストを含む化合物(I)又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬はメサンギウム細胞増殖性腎炎モデルにおいて、腎炎進展のパラメータである尿蛋白を抑制し、腎疾患及び腎疾患が悪化することにより発症する腎不全の予防及び/又は治療剤として有効に使用することができる。
なお、本出願は日本国特許出願番号:特願2001−49778号に基づく優先権を主張して出願されたものである。

Claims (9)

  1. 下記式で示される化合物
    Figure 0004171303
    (式中R及びRは独立して水素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、R及びRは独立して水素、ハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基、水酸基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又はフェニル基である。)
    又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する腎疾患及び/又は腎不全の予防剤及び/又は治療剤。
  2. 及びRが独立して水素又はメチル基であり、Rが水素、塩素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又はフェニル基であり、Rが水素、塩素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヒドロキシメチル基又はメチルオキシ基である請求の範囲第1項記載の予防剤及び/又は治療剤。
  3. 9−メチル−3−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オン又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する腎疾患及び/又は腎不全の予防剤及び/又は治療剤。
  4. 腎疾患が急性腎炎症候群、急速進行性腎炎症候群、反復性あるいは持続性血尿、慢性(糸球体)腎炎症候群及び/又はネフローゼ症候群である請求の範囲第1項乃至第3項に記載の予防剤及び/又は治療剤。
  5. 腎疾患がIgA腎症である請求の範囲第1項乃至第4項に記載の予防剤及び/又は治療剤。
  6. 腎疾患がメサンギウム細胞増殖を伴う腎疾患である請求の範囲第1項又は第3項に記載の予防剤及び/又は治療剤。
  7. 9−メチル−3−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オン又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する慢性腎炎症候群及び/又はネフローゼ症候群の予防剤及び/又は治療剤。
  8. 9−メチル−3−(1H−テトラゾール−5−イル)−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オン又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するIgA腎症の予防剤及び/又は治療剤。
  9. 薬理学的に許容される塩がカリウム塩である請求の範囲第1項乃至第8項記載の予防剤及び/又は治療剤。
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