JP4169966B2 - 炎症性腸疾患予防治療剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、安全な炎症性腸疾患予防治療剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)は、未だその原因が明らかにされていない消化管疾患であり、現在様々な治療・予防方法の確立が急務とされている。炎症性腸疾患は、長期間に亘る腸炎病変の回復と再発が繰り返されるのがこの病変の特徴であり、現在のところ、治療には長期間に亘る薬剤投与法に依るしかない。
【0003】
一方、我々のこれまでの研究によって、ヒトIBDおよび動物IBDモデルのいずれでも、病変部の腸粘膜上皮細胞においてSTAT( Signal Transducer and Activator of Transcripution)-3リン酸化応答が亢進してることが見いだされている。STAT-3分子のリン酸化に関わる分子としては、インターロイキン(IL)-6、白血病増殖阻止因子(LIF)、オンコスタチンM(OSM)等が知られている。
【0004】
また、IBDモデル動物及びヒトIBDにおいて、腸上皮細胞でのIL-6産生が亢進していることも明らかとなっている。従って、IBDモデル動物およびヒトIBDに認められる腸上皮細胞のSTAT-3のリン酸化は、炎症に伴って腸上皮細胞において産生されるIL-6に起因している可能性が高い。
【0005】
IL-6は、炎症反応時、腸上皮細胞あるいは単球、マクロファージによって分泌される可溶性IL-6受容体(IL-6R)と複合体を形成する。非リンパ系細胞を含めたほぼ全ての細胞に発現するIL-6受容体のシグナル伝達鎖である膜糖タンパク質のgp130分子は、複合体化したIL-6/IL-6Rと会合し、細胞内にシグナルを伝達する。
【0006】
従って、複合体化したIL-6/IL-6Rは、gp130分子に結合することでIL-6Rを発現していない細胞系へもシグナルを伝達し、炎症反応を誘導する。以上のことから、IL-6/STAT-3リン酸化応答系の制御は、種々の炎症性疾患の抑制方法として現在注目されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
炎症性腸疾患において、従来のような長期間に亘る薬剤投与法による治療では、副作用が問題となっている。そこで、副作用の少ない安全な食品を用いた病態の抑制法の開発が炎症性腸疾患の治療にとって非常に有益であると考えられる。
【0008】
また、上記の如く、炎症性腸疾患の病変部腸上皮細胞においても亢進が見られるSTAT-3リン酸化応答系の制御は、炎症性腸疾患の炎症性病変の抑制も期待でき、このSTAT-3リン酸化応答系の制御方法として、IL-6産生の抑制効果が考えられる。
【0009】
よって、IL-6産生抑制効果を有すると同時に安全である物質を主成分とする予防・治療剤が得られれば、炎症性腸疾患を効果的に且つ安全に予防あるいは治療することも可能となる。
【0010】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、安全な物質を有効成分とする炎症性腸疾患予防治療剤を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係る炎症性腸疾患予防治療剤は、モズク由来のフコイダンを有効成分とする経口用のものである。
【0012】
また、請求項2に記載の発明に係る炎症性腸疾患予防治療剤は請求項1に記載の炎症性腸疾患予防治療剤において、オキナワモズク由来のフコイダンを有効成分とするものである。
【0014】
リポ多糖(LPS)は、バクテロイデス属や大腸菌などのようなグラム陰性細菌の細胞壁成分である。炎症性腸疾患患者において、腸内細菌叢中のバクテロイデス菌の総数が増加していることは良く知られており、バクテロイデス種の過剰増殖がトランスジェニックラットHLA-B27 の腸炎を憎悪することも報告されている。また、細胞表面のLPS受容体(TLR4)の遺伝子が破壊されたマウスにおいては大腸炎が対照マウスより軽度であることも報告されている。
【0015】
従って、LPSシグナルは、炎症性腸疾患の発症・悪化において重要な要素である。LPSのような細菌成分は腸表面に直接影響し、腸上皮細胞における免疫反応を誘発すると考えられる。即ち、LPSシグナルは腸上皮細胞におけるIL-6の産生を引き起こし、大腸炎を発生させると思われる。従って、腸上皮細胞からのこれらシグナルの除去が腸炎の改善に寄与する可能性は高い。
【0016】
本発明は、本発明者らが、ヒト胃細胞系へのヘリコバクター・ピロリの定着妨害やある種のウイルスのヒト細胞系への感染を防ぐ等の多くの生物学的効果が報告されており、海藻類等から得ることができ、その多糖に毒性や刺激の見られない安全性の高いフコイダンに着目し、リポ多糖(LPS:リポポリサッカライド)刺激により大腸炎が誘発されたマウス腸上皮細胞系における種々の海藻由来フコイダンのIL-6産生抑制効果を検討したところ、前記フコイダンのなかには、IL-6産生抑制効果を持つものがあることを見出し、さらにこれによって炎症性腸疾患に対する予防・治療剤の有効成分となることを見出して本発明に至ったものである。
【0017】
中でも、モズク由来のフコイダン、特にオキナワモズク由来のフコイダンは、他物質由来のフコイダンに比べてそのIL-6産生抑制効果が高く、炎症性腸疾患予防治療剤の有効成分として望ましいものであることを見出した。
【0018】
フコイダンは、モズクやコンブ、ワカメ等の褐藻類やなまこ体壁などに豊富に含有されている主にフコースからなる硫酸化多糖体である。従って、古くから食されていた安全性の高い種々の食物から得ることができ、フコイダンあるいはフコイダンを含有する抽出物を有効成分とした炎症性腸疾患の予防治療剤にも高い安全性が確保できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるフコイダンとしては、褐藻類のCladoshipon okamuranus Tokida 所謂オキナワモズク由来のフコイダン、Kjellmaniella crassifolia 所謂ガゴメコンブ由来のフコイダン、またHimmanthalia elongata 由来のフコイダン、Sargassum horneri 由来のフコイダン、Lamanaria digtata 由来のフコイダン、Fucus vesiculosus 所謂ヒバマタ由来のフコイダン等が挙げられる。
【0020】
各海藻からのフコイダンの調製法としては、従来から用いられている方法を用いても良い。例えば、代表的なものとして、以下に例示する▲1▼酸抽出法、▲2▼熱水抽出法がある。
【0021】
▲1▼酸抽出法
海藻をその湿重量の1〜3倍量の水に懸濁させ、酢酸水溶液または希塩酸を加えてpH2〜4,望ましくはpH2〜3に調整する。次いで約50℃以上、望ましくは80〜100℃に加熱し、フコイダンを溶出させた後、遠心分離して沈殿物を除き、上清を水酸化ナトリウムで中和して抽出物を得る。必要に応じて、さらに限外ろ過、透析等を行って低分子量の不純物を除き、凍結乾燥することで純度の高いフコイダンが得られる。
【0022】
▲2▼熱抽出法
海藻をその湿重量の1〜3倍量の水に懸濁させ、約10分〜1時間、100℃に加熱する。次いで遠心分離して沈殿物を除き、フコイダンを含む抽出物を得る。必要により、上清に塩化カルシウムまたは酢酸バリウムを加えて沈殿するアルギン酸を除く。更に透析を行って低分子量の不純物を除いた後、凍結乾燥すると純度の高いフコイダンを得ることができる。
【0023】
本発明においては、炎症性腸疾患予防治療剤の有効成分として、低分子量の不純物を除いた純度の高いフコイダンを用いることが好ましい。また、低分子量の不純物(水溶性成分、塩類等)を除去する任意の段階において、イオン交換処理を施しフコイダンの硫酸エステル基を遊離酸形またはアルカリ金属塩形に変換することが特に好ましい。イオン交換処理は、例えば電気透析、限外濾過膜を用いる酸洗浄、イオン交換樹脂処理、またはこれらの処理のいずれかとそれに続く中和処理等により行うことができる。これらの処理はいずれも定法に従い行えばよく、またイオン交換処理後のフコイダンをカ性ソーダ、カ性カリ等のアルカリ金属水酸化物で中和すれば、アルカリ金属塩を得ることができる。
【0024】
また、本発明の炎症性腸疾患予防治療剤は、その有効成分であるフコイダンの安全性が確立されているため、そのまま経口投与しても問題ないが、必要に応じて、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、被覆剤、乳化剤、分散剤、溶剤、安定化剤など、フコイダンの効果を阻害するものでなければ適宜添加してもよく、錠剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、カプセル剤などに製剤して使用しても良い。なお、適度なフコイダンの投与量は、おおむね50mg〜3g/人/日、好ましくは 100mg〜1g/人/日である。
【0025】
また、本発明の炎症性腸疾患予防治療剤の有効成分のフコイダンは、高純度なものだけでなく、海藻類から簡単な工程で抽出したフコイダン含有抽出物を用いることもできる。
【0026】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以降の実施例においては、上記常法により調製した低分子量の不純物を除いた高純度のフコイダンおよびこれと同程度の市販フコイダンを用いるものとする。
【0027】
(1)材料
オキナワモズク(Cladoshipon okamuranus Tokida )は沖縄で養殖されたものをトロピカル・テクノセンターより塩漬食品として購入し、他の海藻( Kjellmaniella crassifolia,Himmanthalia elongata,Sargassum horneri,Lamanaria digitata)は乾物としてSCETI社より供与され、これら各海藻から、上記常法で高純度のフコイダンを抽出した。また、Fucus vesiculosus 由来のフコイダンは、シグマ社より購入した。
【0028】
(2)データ解析
以降の実施例で示される全てのデータは、平均値±SE(統計誤差)として表した。また、0.05より小さいP数値は、統計的に有意であるとする。
【0029】
実施例1
本実施例では、各種フコイダンのIL-6産生抑制効果を、マウス大腸癌細胞CMT-93 をLPS刺激後のIL-6産生において調べる。なお、本実験を始めるに当たって、まず、種々の濃度のLPS刺激に対する、CMT-93 細胞株のIL−6産生を調べた。
【0030】
(A)LPS刺激CMT−93細胞におけるIL-6産生量
マウス大腸癌細胞株CMT-93 はATCCより購入した。LPSはシグマ社より購入したE.coli由来のものを用いた。CMT-93 細胞を、10%FCS/10mM Hepes/penicillin-streptomycin/2-ME/non-essential aminoacid/DMEM培養液を用いて、37℃、5%CO2 の条件下で、LPS無添加、あるいは種々の濃度のLPS添加条件の下で、72時間培養した。培養後、培養液を回収し、−84℃で保存した。IL-6産生量は、BDPharMingen社より購入したマウスの抗IL-6mAbs(クローン:MP5-20F3,MP5-32C11)を用いてELISA法により測定した。
【0031】
その結果、図1に示すように、CMP-93 細胞におけるIL-6産生量はLPSが5〜10μm/mlの場合において最大に達し、10μg/mlで飽和状態であった。
【0032】
(B)LPS刺激CMP-93 細胞に対するフコイダンのIL-6産生抑制効果
前記各海藻由来のフコイダンについて、LPS刺激CMP-93 細胞におけるIL-6産生を抑制することができるかを調べた。即ち、1μg/mlの各種フコイダンを添加したCMT-93 細胞培養系へ10μg/mlLPSを加え、72時間培養した。培養後、培養液を回収し、上記と同様にELISA法によりIL-6産生量を測定した。
【0033】
その結果、図2(a)に示すように、オキナワモズク(Cladoshipon okamuranus Tokida)由来のフコイダンおよびガゴメコンブ(Kjellmaniella crassifolia)由来のフコイダンは、LPS刺激CMP-93 細胞におけるIL-6産生を抑制した。しかしながら、他のFucus vesiculosus,Himmanthalia elongata,Sargassum horneri,Lamanaria digitata 由来のフコイダンはIL-6産生を抑制しなかった。
【0034】
次に、IL-6産生を抑制することが分かった前記オキナワモズク由来フコイダンおよびガゴメコンブ由来フコイダンについて、異なるフコイダン添加濃度におけるLPS刺激CMP-93 細胞でのIL-6産生抑制効果を調べた。細胞培養およびELISA法によるIL-6量の測定は上記と同様である。
【0035】
その結果、図2(b)に示すように、どちらのフコイダンにおいても、その添加濃度に依存してIL-6産生量が抑制された。
【0036】
実施例2
本実施例では、in vivo でのマウス慢性大腸炎に対するフコイダンの改善効果を調べた。
【0037】
(C)動物
本実施例では、雌 Balb/c マウス(8週齢)(日本クリア研究所社より購入)を用いた。これらのマウスは実験中SPF(Specific pathogen-free)環境下で飼育されるものである。
【0038】
(D)慢性DSS大腸炎の誘発
Balb/cマウスへの慢性大腸炎の誘発は、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)により行った。10週齢のマウスに、4%DSS(分子量40kDa:ICN社製)水を7日間飲料水として投与した後、続く10日間を休止期とする方法を1サイクルとして、合計4サイクルで慢性大腸炎を誘発した。
【0039】
(E)in vivo でのマウス慢性大腸炎におけるフコイダン効果
スタンダードマウス飼料(MF)およびオキナワモズク(Cladoshipon okamuranus Tokida)由来のフコイダン含有(0.05%w/w)MF飼料、またはヒバマタ(Fucus vesiculosus)由来のフコイダン含有(0.05%w/w)MF飼料、のそれぞれで飼育したBalb/cマウスに、上記の如くDSS入り飲料水により大腸炎を誘発し、大腸炎におけるフコイダン効果を種々の疾患パラメータにより分析した。
【0040】
(1) 腸炎疾患評価
腸炎疾患の評価は、体重、下痢、便潜血という疾患の特徴的変化をパラメータとしてそれぞれ0〜4の段階数値でスコア換算され、各パラメータの数値および数値総計で、DSS大腸炎マウスの臨床的経過における変化の反映として確認された。
【0041】
結果は図3(a)に示したように、全パラメータのスコアも、スタンダード飼料またはヒバマタ由来フコイダン含有飼料が与えられた場合に対して、オキナワモズクフコイダン含有飼料が与えられたBalb/cマウスにおいて数値が低かった。
【0042】
(2) 腸組織長評価
盲腸から肛門までの大腸の長さを、DSS大腸炎の重症度パラメータとして測定した。
【0043】
その結果、図3(b)に示すように、腸組織長は、オキナワモズク由来フコイダン含有飼料が与えられた大腸炎誘発Balb/cマウスの方がスタンダード飼料を与えられたマウスのものより有意に長かった。また、スタンダード飼料およびヒバマタ由来フコイダン含有飼料を与えられた大腸炎誘発Balb/cマウスにおいては腸炎の重症化のために大腸の長さが短くなっていた。
【0044】
(3) ミエロペルオキシダーゼ(MPO)測定
上記の結果を確認するため、腸組織のMPO活性を3グループ間で比較した。MPO活性の測定は、以下の手順で行った。即ち、まず、それぞれのマウス大腸組織をヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(シグマ社製)緩衝液中でポリトロンホモゲナイザーで破砕し、その懸濁液を氷上で音波処理した後、15000rpmで30分間の遠心分離を行った。各上清を、0.167mg/ml のO-ジアニシジンヒドロクロライド(シグマ社製)と0.0005%過酸化水素を含む酵素基質緩衝液に混合し、それぞれ405nm波長における吸光度の変化を測定し、MPO活性(U/g proten )を求めた。
【0045】
その結果、図4に示すように、腸組織MPO活性は、オキナワモズク由来フコイダン含有飼料を与えられたマウスにおいて、ヒバマタ由来フコイダン含有飼料またはスタンダード飼料を与えられたマウスより低かった。
【0046】
以上の結果から、オキナワモズク由来のフコイダンには、マウスにおける慢性大腸炎を改善する効果を備えていることが明らかとなった。
【0047】
実施例3
本実施例では、オキナワモズク由来フコイダンの免疫学的特徴を調べた。
【0048】
(F)リンパ球産生およびフローサイトメトリー
コントロールBalb/cマウスとDSSにより誘導された大腸炎誘発Balb/cマウスとで、大腸粘膜固有層( IL-LPLs)の表現型を比較した。
【0049】
1cmずつにカットされた大腸片を、0.45mMDTTおよび2mMEDTAを含むハンクスの平衡塩類液(HBSS)中で37℃、15分間ずつ2回、振蕩しながらインキュベートした。デカンテイションによる液層の除去の後、残った大腸片を、2.5%ウシ胎児血清(FCS)と300μg/ml コラゲナーゼ(コラゲナーゼ−ヤクルトS;ヤクルト本社製)、50μg/mlデオキシリボヌクレアーゼI(シグマ社製)を含むRPMI1640培養液で、CO2 恒温器にて振蕩しながら、37℃、45分間ずつ3回、インキュベートした。その後、細胞塊を、氷冷した2.5%FCS/10mMHepes/RPMI 液中に懸濁し、ナイロンカラムを通過させた。リンパ球群を、パーコール密度勾配(シグマ社製)の44/100%境界から分離した。得られた細胞は、TCRβ、CD4、CD45RB、CD69あるいはB220に対するmAbsで染色された。染色後の細胞は、Epics ELセルアナライザー(ベックマン社製)によって分析された。
【0050】
これらの結果に基づいて、スタンダード飼料、オキナワモズク由来フコイダン含有飼料、ヒバマタ由来フコイダン含有飼料、をそれぞれ与えられた大腸炎誘発Balb/cマウスの3つのグループ間で IL-LPLsの表現型を比較した。
【0051】
その結果、図5に示すように、B220 陽性B細胞の総数は、オキナワモズク由来フコイダン含有飼料投与マウスにおいて、他のグループのマウスより有意に低かった。
【0052】
(G)細胞培養およびサイトカイン測定
前記3グループの各大腸炎誘発マウスからの粘膜固有層細胞(1.0×106cell)を、24穴組織培養プレートを用いて10%FCS/10mM Hepes/2-ME/RPMI培養液中で、固層化した抗TCRβmAb(H57-597,10μg/ml)、抗CD28mAb(37.51,1μg/ml)の刺激の下で培養した。72時間培養の後、その培養液を回収し、ELISA測定に供するまで−84℃で保存した。
【0053】
サイトカイン特異的ELISA測定は、次に挙げる抗体結合を用いて行った。即ち、抗インターフェロン(IFN)-γ(クローン:XMG1.2,R4-6A2 )、抗インターロイキン4(IL-4)(クローン:11B11,BVD6-24G2 )であり、これらは全てBDpharMingen より購入した。IL-10およびTGF-β1の測定用には、バイオソース・インターナショナル社、Genzyme社、よりそれぞれ購入した測定キットを用いた。
【0054】
TCRβ/CD28抗原で刺激された大腸粘膜固有層細胞( IL-LPLs)においては、図6(a)(b)に示すように、IFN(インターフェロン)-γやIL-6のような炎症性サイトカインの産生量は、オキナワモズク由来フコイダン含有飼料投与大腸炎誘発マウスでスタンダード飼料およびヒバマタ由来フコイダン含有飼料投与マウスより有意に低かった。
【0055】
これに対して、炎症抑制性サイトカインであるTGF-β1の産生量は、オキナワモズク由来フコイダン含有飼料投与大腸炎誘発マウスにおいてスタンダード飼料およびヒバマタ由来フコイダン含有飼料投与マウスより有意に高かった(図6(e))。同じく炎症抑制性サイトカインであるIL-10 の産生量は、オキナワモズク由来フコイダン含有飼料投与大腸炎誘発マウスにおいてスタンダード飼料投与マウスより高かった(図6(d))。なお、IL-4 の産生量はスタンダード飼料投与マウスが最も低かった。
【0056】
(H)腸片部における免疫グロブリンG(IgG)の測定
前記3グループのマウスの大腸の破砕サンプルを上記と同様に調製し、全IgG、IgG1およびIgG2の産生量を特異的サンドイッチELISA法により測定した。
【0057】
前記3つの実験グループにおける大腸粘膜でのIgGの測定の結果、図7に示すように、IgG総量、IgG1およびIgG2a がそれぞれスタンダード飼料、またヒバマタ由来フコイダン含有飼料を与えられた大腸炎誘発Balb/cマウスにおいて増加していた。
【0058】
実施例4
本実施例では、オキナワモズク由来フコイダン含有飼料が与えられた大腸炎誘発Balb/cマウスの大腸上皮細胞上のIL-6mRNAレベルを、大腸炎非誘発Balb/cマウスおよび、スタンダード飼料が与えれた大腸炎誘発Balb/cマウスを対照として、RT−PCR法によって測定した。
【0059】
大腸上皮細胞は、大腸炎非誘発Balb/cマウス、またスタンダード飼料またはオキナワモズク由来フコイダン含有飼料を与えられた大腸炎誘発Balb/cマウスからそれぞれ得た。
【0060】
また全RNAは、これら3つのマウスグループより調製された。1.0μgの全RNAを逆転写反応後、G3PDH,IL-6、TNF-α、TLR-4 特異的プライマーを用いてPCR反応を行った。ゲル電気泳動の後、PCR産生物をエチジウムブロマイドにより染色して検出した。
【0061】
その結果、図8に示したように、IL-6mRNAは、スタンダード飼料投与DSS大腸炎誘導Balb/cマウスにおいて激増した。しかし、IL-6mRNAの誘導は、オキナワモズク由来フコイダン含有飼料投与Balb/cマウスの大腸上皮細胞において抑制された。TNF(腫瘍壊死因子)-αおよびTLR-4 mRNAも、オキナワモズク由来フコイダン含有飼料投与Balb/cマウスの大腸上皮細胞において抑制された。
【0062】
以上の実施例において、フコイダン、特に、オキナワモズク由来のフコイダンは、in vivo およびin vitroで、大腸上皮細胞におけるIL-6の産生抑制作用を示し、大腸炎病変の改善効果も示され、炎症性腸疾患の高い予防治療効果が期待できるものである。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、有効成分であるフコイダンに高い安全性が確立されており、その作用機序はIL-6産生抑制作用に基づく腸炎病変改善効果が高いものであり、炎症性腸疾患の安全で効果的な予防治療剤の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のLPS刺激CMT−93細胞におけるIL-6産生量の測定結果を示す棒グラフ図(横軸:IL-6産生量pg/ml ,縦軸:LPS添加量μg/ml)。
【図2】実施例1のLPS刺激CMP−93 細胞のIL-6産生におけるフコイダンの効果を示す棒グラフ図であり、(a)は各種褐藻類由来のフコイダンのIL-6分泌阻害率(横軸:%)を示すものであり、(b)はオキナワモズク由来フコイダンおよびガゴメコンブ由来フコイダンの添加量(縦軸:μg/ml)に対するIL-6分泌阻害率(横軸:%)を示すものである。
【図3】実施例2のin vivo でのマウス慢性大腸炎におけるフコイダン効果測定結果を示す棒グラフ図であり、(a)は腸炎病態の各パラメータ(縦軸)に対するスコア(横軸:0〜4のポイント数値)を示すものであり、(b)は3つのマウスグループ(縦軸:ヒバマタ由来フコイダン含有飼料投与、オキナワモズク由来フコイダン含有飼料投与、フコイダン無添加飼料投与)における大腸組織長(横軸:cm)を示すものである。
【図4】実施例2における、前記3つのマウスグループ(横軸)の各腸組織のミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性の測定結果(縦軸:U/g protein )を示すグラフ図である。
【図5】実施例3における、前記3つのマウスグループ(縦軸)の大腸粘膜固有層細胞(B220 B細胞,TCRαβ型T細胞)数(横軸:細胞数、×106 個)を示す棒グラフ図である。
【図6】実施例3における、前記3つのマウスグループ(縦軸)の大腸粘膜固有層細胞の各種サイトカインの産生量(縦軸:pg/ml )を示す棒グラフであり、(a)はIFN-γ、(b)はIL-6、(c)はIL-4、(d)はIL-10、(e)はTGF-β、の産生量をそれぞれ示したものである。
【図7】実施例3の、前記3つのマウスグループ(横軸)の大腸片部におけるIgG(縦軸:ng/mg protein )の測定結果を示すグラフ図であり、(a)は総IgG量、(b)はIgG1 量、(c)はIgG2a量、をそれぞれ示すものである。
【図8】実施例4の、大腸炎非誘発マウスと、フコイダン投与および非投与大腸炎誘発マウスの大腸上皮細胞上のIL-6mRNAレベルを示すRT−PCR反応産生物の電気泳動像である。
Claims (2)
- モズク由来のフコイダンを有効成分とする経口用の炎症性腸疾患予防治療剤。
- オキナワモズク由来のフコイダンを有効成分とする請求項1に記載の炎症性腸疾患予防治療剤。
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