JP4169898B2 - 立型排水ポンプ - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、排水ポンプ機場等に設置されるエンジン駆動式の立型排水ポンプに関する。
【０００２】
【従来の技術】
例えば、大雨などで排水ポンプ機場に多量の雨水が流入した時に対処するため、排水ポンプ機場にエンジン駆動式の立型排水ポンプを据付けて、必要な時のみ運転することが広く行われている。
【０００３】
この種の排水ポンプは、始動開始から始動完了までに時間を要するので、排水ポンプ機場の吸込水位が上昇してから排水ポンプを始動していたのでは排水が間に合わない。このため、降雨と同時に排水ポンプを大気中で始動しておいて水の流入を待つ待機運転を行うようにしている。
【０００４】
ここで、この種の立型排水ポンプの鉛直方向に延びるポンプ軸（主軸）は、例えば樹脂コーティングした長尺の炭素繊維を軸芯に対してコイル状に巻回し、加温加圧加工により成形した炭素繊維強化樹脂材料からなる円筒状の一対の滑り軸受で滑動自在に支持されている。
【０００５】
このため、排水ポンプを始動してからポンプ機場の吸込水槽に水が流入してきて排水を始めるまで大気中で空運転すると、滑り軸受の滑合面に水がない状態での運転となって、滑り軸受とポンプ軸との間に水膜がないため、ポンプ軸が自励振動を起こしやすくなる。これは、大気中でドライ状態のまま排水ポンプを運転すると、滑り軸受とポンプ軸との間に隙間があるために、回転体の軸芯に対する僅かの不釣り合い量によってポンプ軸の振れ廻りを生じ、水膜による減衰作用がないのでポンプ軸が滑り軸受に対して振れ回ってしまい、これが継続して自励振動となるからである。
【０００６】
このポンプ軸の自励振動を防止するため、潤滑水用水槽や潤滑水供給ポンプを別途設置しておき、この供給ポンプから排水ポンプ内部の滑り軸受とポンプ軸との間に潤滑用の水を供給しながら排水ポンプの待機運転（空運転）を行うようにしていた。
【０００７】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の技術にあっては、ポンプ軸の自励振動を防止するためには、潤滑水用水槽と潤滑水給水ポンプを別途設置しておき、排水ポンプ内部の滑り軸受とポンプ軸との間に潤滑用の水を供給する必要があるため、その分、設備コストが嵩んでしまうばかりでなく、この潤滑用の水の供給作業が面倒であるといった問題があった。
【０００８】
本発明は上記事情に鑑みて為されたもので、潤滑用の水を供給することなく、ポンプ軸を該軸の自励振動の発生を防止しつつ滑合自在に支持できるようにした滑り軸受装置を備えた立型排水ポンプを提供することを目的とする。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
請求項１に記載の発明は、炭素繊維強化樹脂材料からなる円筒状の滑り軸受の内周滑合面で鉛直方向に延びるポンプ軸を滑合自在に支持した滑り軸受装置を備え、処理水の排水を開始する前に大気中での待機運転を行う立型排水ポンプであって、前記滑り軸受の上面及び／または下面に、滑り軸受の軸心と直交する平面に対して段状に高低するように形成され、前記滑り軸受の滑合面が、その全周に亘る少なくとも一部で前記ポンプ軸の軸芯に対して非対称となって、接触位置が半周毎に変わる段差部を設けたことを特徴とする立型排水ポンプである。
【００１０】
これにより、滑り軸受の滑合面が、その全周に亘って軸の軸芯に対して対称で、軸が滑り軸受の滑合面と滑合する条件も全周に亘って同じとなる従来例とは異なり、軸の振れ回り条件が途中で変化するので、自励振動が発生しても、これが継続せず、従って軸の自励振動が防止される。
【００１１】
段差部の高さは、例えば内径が７５ｍｍのものにあっては、２ｍｍ程度である。
【００１５】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図１は、滑り軸受装置を装備した立型ポンプを示すもので、これは、例えば排水ポンプ機場等に据付けて、必要な時のみ運転するエンジン駆動式の立型排水ポンプである。
【００１６】
図１に示すように、この立型ポンプは、略円筒状の吸込みケーシング１０、ガイドベーンケーシング１２、中間ケーシング１４及びエルボ状の吐出しケーシング１６を直列に接続したポンプケーシング１８を有し、吐出しケーシング１６の下端外周に設けた据付けフランジ１６ａを介して、下方に垂下する如く据付けられる。
【００１７】
ポンプケーシング１８の内部には、ポンプ軸２０がその上端を外部に露出させて配置され、この露出部は、軸シール２２を介して水密的にシールされている。ポンプ軸２０の下端には、羽根車２４が該ポンプ軸２０と一体となって回転するように固着され、また上端には、カップリング等を介して、例えばエンジン等の出力軸と連結する連結フランジ２６が設けられている。
【００１８】
ガイドベーンケーシング１２の内部には、複数枚のガイドベーン２８が設けられ、このガイドベーン２８の内周端に軸受保持体３０が一体に連結されている。一方、中間ケーシング１４の上部内周面には、軸受支え３２が設けられ、これらの軸受保持体３０及び軸受支え３２には、軸受ケース３４を介して滑り軸受装置３６の滑り軸受４０が保持され、ポンプ軸２０の該滑り軸受４０に対応する位置には、軸スリーブ４２が嵌着されている。これにより、ポンプ軸２０は、２個の滑り軸受装置３６を介して回転自在に支承されている。なお、符番４４は、必要に応じて設置される吸気管である。
【００１９】
図２は、滑り軸受装置３６を構成する滑り軸受４０を示すもので、この滑り軸受４０は、例えば、樹脂コーティングした長尺の炭素繊維を軸芯に対してコイル状に巻回し、加温加圧加工により成形した炭素繊維強化樹脂材料から円筒状に形成され、この内周面の滑合面４０ａとポンプ軸２０に嵌着した軸スリーブ４２（図１参照）の外周面が互いに滑合するようになっている。
【００２０】
滑り軸受４０の上面及び下面は、この軸芯Ｏ_１に直角な面に対して傾斜角αで傾斜するテーパ面４０ｂとなっている。このテーパ面４０ｂの傾斜角αは、例えば５゜以下で、１〜３゜程度が好ましい。この滑り軸受４０は、図１に示すように、この軸芯Ｏ_１をポンプ軸２０の軸芯Ｏ_２に一致させた状態で軸受ケース３４内に保持されて配置される。
【００２１】
この例によれば、滑り軸受４０の上面及び下面をこの軸芯Ｏ_１と直角な面に対して傾斜角αで傾斜するテーパ面４０ｂとなして、この軸芯Ｏ_１とポンプ軸２０の軸芯Ｏ_２とを一致させることで、軸スリーブ４２が滑り軸受４０の滑合面４０ａに接触滑合した時の滑り軸受４０の滑合面４０ａと軸スリーブ４２との接触長さがポンプ軸２０の回転によって変わるので、ポンプ軸２０に作用する反力も滑り軸受４０の位置によって変わり、これによって、ポンプ軸２０の自励振動が防止される。なお、この例では、滑り軸受４０の上下両面をテーパ面４０ｂとした例を示しているが、どちらか一方をテーパ面としても良い。
【００２２】
図３は、本発明の第１の実施の形態の立型排水ポンプの滑り軸受装置に使用される滑り軸受を示すもので、これは、円筒状の滑り軸受４０の上面及び下面の互いに１８０゜ずれた位置に約半周の亘る機械加工を施して、ここに高さｈの段差部４０ｃ，４０ｄを形成して、滑り軸受４０の滑合面４０ａの約半周に亘る部分をこの高さｈだけ上下方向にずらしたものである。この段差部４０ｃ，４０ｄの高さｈは、例えば内径Ｄが７５ｍｍのものにあっては、２ｍｍ程度である。その他の構成は、図２に示すものと同様である。
【００２３】
この実施の形態にあっても、図１に示す立型ポンプに、この軸芯Ｏ_１とポンプ軸２０の軸芯Ｏ_２とを一致させ軸受ケース３４で保持して配置するのであり、これにより、軸スリーブ４２が滑り軸受４０の滑合面４０ａに接触滑合したときに、軸スリーブ４２の滑り軸受４０の滑合面４０ａとの接触位置が半周毎に変わるので、ポンプ軸２０に作用する反発力も変わり、ポンプ軸２０の自励振動が防止される。
【００２４】
図４は、本発明の第２の実施の形態の立型排水ポンプの滑り軸受装置に使用される滑り軸受を示すもので、これは、図３に示す段差部４０ｃ，４０ｄの代わりに、軸芯Ｏ_１に対して左右に偏心量ｅだけ偏心した点を中心として、半径Ｒの座ぐり加工を施すことで、円弧状の段差部４０ｅ，４０ｆを設けたものである。その他の構成は、図３に示すものと同様である。
【００２５】
図５は、他の滑り軸受装置に使用される滑り軸受を示すもので、これは、滑り軸受４０の滑合面４０ａの円周方向に沿った所定のピッチｐで軸方向に延びる６本の潤滑溝４０ｇを設け、更に、２本の潤滑溝４０ｈを任意の潤滑溝４０ｇ，４０ｇ間に設けて、潤滑溝４０ｇ，４０ｈを不等分に配置したものである。
【００２６】
この例にあっても、図１に示す立型ポンプに、この軸芯Ｏ_１とポンプ軸２０の軸芯Ｏ_２とを一致させ軸受ケース３４で保持して配置するのであり、これにより、軸スリーブ４２が滑り軸受４０の滑合面４０ａに接触滑合したときに、ポンプ軸２０の潤滑溝４０ｇ，４０ｈの配置状態に対応した位置によってポンプ軸２０に作用する反発力も変わり、ポンプ軸２０の自励振動が防止される。
【００２７】
図６は、更に他の滑り軸受装置に使用される滑り軸受を示すもので、これは、６本の潤滑溝４０ｉを円周方向に沿ったランダムな位置に、すなわち、不等ピッチｐ_１〜ｐ_６で配置したものである。その他の構成は、図５に示すものと同様である。
【００２８】
図７は、更に他の滑り軸受装置を示すもので、これは、円筒状の滑り軸受５０を該軸受５０の軸芯Ｏ_３が軸５２の軸芯Ｏ_４に対して角度θだけ傾斜するように配置して滑り軸受装置を構成したものである。この角度θは、例えば１゜程度である。
【００２９】
この例によれば、滑り軸受５０の軸芯Ｏ_３を軸５２の軸芯Ｏ_４に対して、角度θ°だけ傾けることで、軸５２に対する滑り軸受５０からの反力が軸５２の位置によって変わり、これによって、軸５２の自励振動が防止される。
【００３０】
図８は、更に他の滑り軸受装置を示すもので、これは、円筒状の滑り軸受５０の軸芯Ｏ_３が軸５２の軸芯Ｏ_４に対して所定間隔ｆだけ離間した位置に位置する様に配置して滑り軸受装置を構成したものである。この間隔ｆは、例えば０．１ｍｍ程度である。
【００３１】
この例によれば、軸５２の軸芯Ｏ_４に対して、滑り軸受５０の軸芯Ｏ_３を間隔ｆだけ偏心させることで、軸５２が滑り軸受５０に滑合したときの軸５２にかかる反力が軸５２の位相によって変化し、これによって、軸５２の自励振動が防止される。
【００３２】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の立型排水ポンプによれば、潤滑用の水を供給することなく、ポンプ軸を該軸の自励振動の発生を防止しつつ滑合自在に支持することができる。従って、大気中で排水ポンプを運転する待機運転を一切の潤滑水なしに始動でき、これによって、排水機場設備の潤滑水用水槽や潤滑水給水ポンプが不要となって、補助設備が簡単になり待機運転ポンプ設備の採用が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 滑り軸受装置を装備した立型排水ポンプを示す断面図である。
【図２】図１に示す滑り軸受装置に使用される滑り軸受を示し、（ａ）は平面図、（ｂ）は縦断正面図である。
【図３】 本発明の第１の実施の形態の立型排水ポンプの滑り軸受装置に使用される滑り軸受を示し、（ａ）は平面図、（ｂ）は縦断正面図である。
【図４】 本発明の第２の実施の形態の立型排水ポンプの滑り軸受装置に使用される滑り軸受を示し、（ａ）は平面図、（ｂ）は縦断正面図である。
【図５】 他の滑り軸受装置に使用される滑り軸受を示し、（ａ）は平面図、（ｂ）は縦断正面図である。
【図６】 更に他の滑り軸受装置に使用される滑り軸受を示し、（ａ）は平面図、（ｂ）は縦断正面図である。
【図７】 更に他の滑り軸受装置を示す縦断正面図である。
【図８】 更に他の滑り軸受装置を示す縦断正面図である。
【符号の説明】
１６ａ フランジ
１８ ポンプケーシング
２０ ポンプ軸
２４ 羽根車
２８ ガイドベーン
３６ 軸受装置
４０，５０ 滑り軸受
４０ａ 滑合面
４０ｂ テーパ面
４０ｃ，４０ｄ，４０ｅ，４０ｆ 段差部
４０ｇ，４０ｈ，４０ｉ 潤滑溝
４２ 軸スリーブ
５２ 軸

Claims (1)

1. 炭素繊維強化樹脂材料からなる円筒状の滑り軸受の内周滑合面で鉛直方向に延びるポンプ軸を滑合自在に支持した滑り軸受装置を備え、処理水の排水を開始する前に大気中での待機運転を行う立型排水ポンプであって、
   前記滑り軸受の上面及び／または下面に、滑り軸受の軸心と直交する平面に対して段状に高低するように形成され、前記滑り軸受の滑合面が、その全周に亘る少なくとも一部で前記ポンプ軸の軸芯に対して非対称となって、接触位置が半周毎に変わる段差部を設けたことを特徴とする立型排水ポンプ。

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