JP4169399B2 - 希土類ボンド磁石の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、希土類ボンド磁石の製造方法に関し、更に詳細には、カーボン粉末を用いて磁石本体の表面を処理し、更に金属メッキ層で被覆した希土類ボンド磁石の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
Sm、Nd、Pr等の希土類元素の1種または2種以上を含む磁性材料の粉末と樹脂バインダーとを所要の割合で混合した混合物を射出成形または圧縮成形して得られる希土類ボンド磁石が、例えばモータのロータ等に好適に使用されている。しかるに、希土類ボンド磁石は、酸化し易い原料成分を含んでいるため、その表面が素地のままでは経時的に錆が発生し易く、モータ部品等にそのまま使用すると、耐久性の低下や故障の原因を招くことになる。そこで、錆止めのために希土類ボンド磁石の表面を、スプレー塗装、電着塗装または浸漬塗装等によって樹脂被膜で被覆する対策が一般に採られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、樹脂被膜で表面を被覆した希土類ボンド磁石を用いた製品においては、その機械的強度が低く、組立工程中に樹脂被膜が損傷したり、運搬時に誤って落としたときに簡単に破損してしまう等の難点が指摘される。そこで、機械的強度を向上させるべく、樹脂被膜に代えて金属メッキ層を希土類ボンド磁石の表面に被覆することが提案される。しかし、表面に連通する空孔や溝等の空隙部を有する希土類ボンド磁石に金属メッキ層を被覆する場合は、表面洗浄剤やメッキ液が空隙部に侵入して残留し、これによって溶損もしくは発錆を招くおそれがあり、直に金属メッキ層を施すことは極めて困難であった。
【0004】
なお、希土類ボンド磁石の空隙部に侵入、残留しても無害なメッキ液を選定したり、下地コーティングを施した後にメッキする方法が提案される。しかし、メッキ液のpH調整や完全な無害化は困難であり、また下地コーティングを施すことにより成膜効率が低下する難点がある。しかも、下地の厚みのばらつきがメッキ層の不安定要素となるため、充分な厚みの下地コーティングを施せば、更にメッキ層を被覆する必要はなくなるという矛盾も指摘される。
【0005】
【発明の目的】
本発明は、前述した従来の技術に内在している前記欠点に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、高い耐食性が得られ、かつ機械的強度を向上し得る新規な希土類ボンド磁石の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため本発明は、希土類磁石粉末と樹脂バインダーとを所要の割合で混合した混合物の成形体からなる磁石本体と、該磁石本体の表面部全体を被覆した金属メッキ層とからなる希土類ボンド磁石において、前記磁石本体に、金属メッキ用の下地コーティングが施されることなく、その表面部に連通する空隙部および該表面部の一部がカーボン粉末で充填・被覆されていることを特徴とする。
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の別の発明に係る希土類ボンド磁石の製造方法は、希土類磁石粉末と樹脂バインダーとを所要の割合で混合した混合物の成形体からなる磁石本体を、金属メッキ用の下地コーティングを施すことなく、カーボン粒を入れたバレルタンクに装入してバレル処理することで、該磁石本体の表面部に連通する空隙部および該表面部の一部にカーボン粉末を充填・被覆する工程を行ない、次いで前記カーボン粉末の充填・被覆部を含む磁石本体の表面全体を金属メッキ層で被覆する工程を行なうことを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る希土類ボンド磁石およびその製造方法につき、添付図面を参照しながら以下説明する。図1は、実施例に係る希土類ボンド磁石を示すものであって、該希土類ボンド磁石10の磁石本体12は、Sm、Nd、Pr等の希土類元素の1種または2種以上を含む磁性材料の粉末に樹脂バインダーを添加して混練したものを、所要形状に射出または圧縮成形することにより得られる。この磁石本体12の表面部12aの一部および該表面部12aに連通する空孔や溝等の空隙部14は、図2に示すように、カーボン粉末16で充填・被覆されている。更に、カーボン粉末16により被覆された部分も含め表面部の最表層全体には、ニッケルやクロム等の金属メッキ層18が被覆されている。
【0009】
図3は、実施例に係る希土類ボンド磁石の製造方法の工程を示すフローチャートであって、先ず前記磁石原料となる磁性材料の粉末および樹脂バインダーを混合・混練し、この実施例においては、中央部に孔を有する円柱形状を圧縮成型により得る。次に、この磁石本体12内に添加されている樹脂バインダーを、加熱等により硬化させて前記円柱形状を維持し得るよう硬化処理する。そして得られた磁石本体12に対してカーボン粉末の充填・被覆処理を施すことにより、該磁石本体表面部12aを滑らかに均一化すると共に、該カーボン粉末16を前記表面部12 a に連通する空隙部14に充填、かつ表面部12aの一部にカーボン粉末16の被膜を形成させる。前記カーボン粉末の充填・被覆処理工程に先立ち、前記磁石本体12の洗浄を行なうこともあるが、この洗浄作業は必ずしも必要なものではない。
【0010】
前記カーボン粉末の充填・被覆処理は、本実施例においては、硬化処理後の磁石本体12を、黒鉛からなるカーボンブロックを2〜10mm程度の大きさに破砕したカーボン粒を所定量(例えば容積比でカーボン粒:磁石本体=5:1)だけ入れたバレルタンクの内部に装入し、このタンクを所要時間(例えば1時間)回転させたり振動することにより行なわれる。すなわち前記カーボン粒が磁石本体12の表面部12aに衝突することで、該表面部12aの一部をカーボン粉末16で被覆すると共に、前記表面部12 a に連通する空隙部14にカーボン粉末16を充填する。またバレル処理に際し、カーボン粒は磁石本体12の表面部12aを研磨するブラストメディアとしても機能し、磁石本体12の表面部12aから、金属メッキ層18の被覆を阻害する樹脂を除去する。更に表面部12a上に余分付着したカーボン粉末は、金属メッキを施した後の表面突起の原因となり得るため、これの除去が必要である。除去方法としては、例えば布を用いて前記カーボン粒子をふき取ったり、セラミックスを前記バレルタンク内に混入し、所要時間(例えば2分間)回転させる方法が用いられる。
【0011】
このようにして得られた磁石本体12を、メッキ用金属としてニッケルを用いて、例えば20μm程度の厚みで電気金属メッキする。このとき磁石本体12における表面の空孔、溝等の空隙部14がカーボン粉末16で充填されて表面が均一で滑らかとなっているので、金属によるメッキが均一に施される。これによりニッケルメッキ層(金属メッキ層18)で被覆された高い耐食性を有し、かつ機械的強度が向上した希土類ボンド磁石10が得られる。なお、電気金属メッキに用いられるニッケルは、例えば半光沢ニッケル5〜10μmおよび光沢ニッケル5μmを二重に重ねたものが好適に使用される。また電気金属メッキとしては、メッキ液が貯留されたバレルタンク内に磁石本体12を装入し、このタンクを回転させると共に該タンク内に配設した電極に電流を流すことによりメッキを行なうバレル法が好適に用いられる。当然製品をメッキ液中に吊り下げて電気金属メッキを施す方法も有効である。更にメッキ液としては、公知のワット浴が好適である。なお、ニッケルメッキ層で被覆された希土類ボンド磁石10は、洗浄された後に乾燥される。
【0012】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明に係る希土類ボンド磁石の製造方法によれば、カーボン粉末で磁石本体表面部の研磨を行なうと共に、磁石本体の表面部に連通する空隙部および該表面部の一部にカーボン粉末を充填・被覆した後に磁石本体の表面全体を金属メッキ層で被覆したことによって、希土類ボンド磁石の耐食性および機械的強度が向上する。
従って、本発明に係る希土類ボンド磁石を用いた製品においては、その組立工程中に損傷したり、運搬時に誤って破損するのを抑制することができ、取扱が容易となる利点を有する。また、樹脂層がないため耐熱性が向上する効果もある。
【0013】
前記磁石本体の表面全体を金属メッキ層で被覆する前に、予め磁石本体の空隙部にカーボン粉末を充填・被覆することで、有害なメッキ液、洗浄液の侵入が防止され、内部より発錆してメッキ層が剥離する等の耐食性の劣化がなく、メッキ層の密着度や均一性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る希土類ボンド磁石を示す断面図である。
【図2】実施例に係る希土類ボンド磁石の要部を拡大して示す説明図である。
【図3】実施例に係る希土類ボンド磁石の製造方法の工程を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
12 磁石本体
12a 表面部
14 空隙部
16 カーボン粉末
18 金属メッキ層

Claims (1)

  1. 希土類磁石粉末と樹脂バインダーとを所要の割合で混合した混合物の成形体からなる磁石本体(12)を、金属メッキ用の下地コーティングを施すことなく、カーボン粒を入れたバレルタンクに装入してバレル処理することで、磁石本体(12)の表面全体に対して、該磁石本体(12)の表面部(12a)に連通する空隙部(14)および該表面部(12a)の一部にカーボン粉末(16)を充填・被覆する工程を行なって、磁石本体の内部の空隙部に対して金属メッキのときメッキ液の侵入が防止されるようにし、
    さらに磁石本体(12)の表面全体に対して、前記カーボン粉末(16)の充填・被覆部を含む磁石本体(12)の表面を金属メッキ層(18)で被覆する工程を行なうことを特徴とする希土類ボンド磁石の製造方法。
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