JP4167521B2 - ガス貯蔵タンク及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ガスを貯蔵するためのガス貯蔵タンクに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ガスを貯蔵するための種々のガス貯蔵タンクが提案されている。ガスを貯蔵する方法の一つとして、ガスを所定の吸蔵・吸着材に吸蔵・吸着させる方法が知られている。例えば、特許文献1では、より多くの水素を吸蔵可能となるように改良した水素吸蔵合金や、内部に水素吸蔵合金を備える水素貯蔵タンクが開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−53926号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
吸蔵・吸着材を備えるガス貯蔵タンクを用いる場合には、ガス貯蔵タンクに対するガスの供給圧をより高くすることで、ガスを吸蔵・吸着させる動作を促進することができる。また、ガス貯蔵タンクに対するガスの供給圧をより高くすることで、吸蔵・吸着材にガスを吸蔵・吸着させる他に、ガス貯蔵タンク内に形成される空間中に圧縮ガスとしてより多くのガスを貯蔵することが可能となる。このようにガス貯蔵タンク内の圧力をより高くして用いる場合には、ガス貯蔵タンクの強度をより高める必要がある。しかしながら、内部にガスの吸蔵・吸着材が充填されると共に、より高圧のガスを貯蔵可能となるガス貯蔵タンクの構成については、充分な検討がされていなかった。
【0005】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、ガスの吸蔵・吸着材を備えると共に、より高圧のガスを貯蔵可能なガス貯蔵タンクを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上記目的を達成するために、本発明の第1のガス貯蔵タンクは、ガスを貯蔵するためのガス貯蔵タンクであって、
少なくとも一つの開口部が形成されているタンク容器と、
前記タンク容器内に収納される収納部と、
前記タンク容器と前記収納部との間に配設され、前記タンク容器と前記収納部との間に形成される空間全体が前記開口部と連通するように、前記タンク容器内で前記収納部を支持する支持部と
を備えることを要旨とする。
【0007】
このような構成とすれば、タンク容器と収納部との間に形成される空間全体が、タンク容器に形成された少なくとも一つの開口部と連通しているため、タンク容器内に容易に水を流通させることが可能となり、タンク容器に対して水冷を伴う熱処理を施す際には、充分に急激にタンク容器を冷却することが可能となる。そして、タンク容器にこのような水冷を伴う熱処理を施すことで、ガス貯蔵タンクの強度を向上させることができる。
【0008】
本発明の第1のガス貯蔵タンクにおいて、前記収納部は、前記ガスを吸蔵および/または吸着する吸蔵・吸着材を内部に充填していることとしても良い。このような構成とすれば、吸蔵・吸着材を充填した収納部を内部に備えるガス貯蔵タンクを製造する際に、タンク容器の強度を向上させるための水冷を伴う熱処理を良好に行なうことが可能となる。
【0009】
本発明の第2のガス貯蔵タンクは、ガスを貯蔵するためのガス貯蔵タンクであって、
前記ガスを吸蔵および/または吸着する吸蔵・吸着材を内部に充填した充填部と、
前記充填部を内部に収納し、長手方向端部の少なくとも一方に開口部が形成されているタンク容器と、
前記タンク容器の長手方向に略平行に配設された複数の薄板によって形成されると共に、前記薄板における長手方向端面の一方で前記タンク容器と接し、前記長手方向端面の他方で前記充填部と接して、前記タンク容器と前記充填部との間に前記開口部と連通する空間を形成しつつ、前記タンク容器内で前記充填部を支持する支持部とを備えることを要旨とする。
【0010】
このような構成とすれば、タンク容器内に形成される空間は、長手方向に略平行に配設された薄板によって形成されるため、タンク容器の長手方向端部に設けた開口部からタンク容器内に水を投入すると、投入された水は、上記薄板に導かれて上記空間内を速やかに通過することができる。そのため、タンク容器に対して水冷を伴う熱処理を施す際には、充分に急激にタンク容器を冷却することが可能となる。そして、タンク容器にこのような水冷を伴う熱処理を施すことで、ガス貯蔵タンクの強度を向上させることができる。なお、上記複数の薄板の各々は、互いに別体として形成されている必要はなく、1枚の薄板を例えば波形に折り畳んだものでも良く、全体として上記形状となっていればよい。
【0011】
本発明の第1あるいは第2のガス貯蔵タンクにおいて、
前記タンク容器は、端部に形成される開口部付近において、横断面の面積がより小さくなる絞り部を有することとしても良い。
【0012】
このような構成とすれば、絞り部を設けてタンク容器の開口部の大きさを充分に小さくすることにより、内部に貯蔵するガスの圧力に耐えつつタンクの気密性を確保することが容易となる。そして、このような構成とするために、タンク容器内に充填部を収納した後にタンク容器に絞り加工などを施して絞り部を形成する場合に、さらにその後に水冷を伴う熱処理を施すときには、上記支持部を備えることで、充填部により水の流れが妨げられるのを抑えて、効率よく水冷を行なうことができる。
【0013】
また、本発明の第1または第2のガス貯蔵タンクにおいて、
前記タンク容器は、対向する位置に2つの前記開口部が形成されている構成も好適である。
【0014】
このような構成とすれば、タンク容器を水冷する際には、一方の開口部からタンク容器内に導入された水は他方の開口部から速やかに排出されるため、熱処理時の水冷の動作を、より迅速に行なうことができる。
【0015】
また、本発明の第1または第2のガス貯蔵タンクにおいて、
前記タンク容器は、略円筒形状に形成され、
前記支持部は、前記円筒形状の軸方向に略平行に配設された薄板によって形成されることとしても良い。
【0016】
このような形状とすることで、より高圧のガスを貯蔵するのに適したガス貯蔵タンクとすることができる。また、軸方向に略平行な薄板によって支持部を形成することで、ガス貯蔵タンクの断面において、支持部の総面積が小さくなり、水冷の際の水流路を充分に広く確保することができる。
【0017】
本発明の第1または第2のガス貯蔵タンクにおいて、
前記ガス貯蔵タンクは、水素を貯蔵するタンクであり、
前記吸蔵・吸着材は、少なくとも水素吸蔵合金を含み、
前記タンク容器は、アルミニウムを含む金属により形成されることとしても良い。
【0018】
アルミニウムは、熱伝導性に優れ、軽量であり、アルミニウム(アルミニウム合金)製の容器内に高圧の水素を内部に貯蔵しても水素分子が外部に漏れ出すことが無く、水素貯蔵タンクを構成するタンク容器の材料として優れている。そして、タンク容器を、このようなアルミニウムを含む金属によって形成する場合には、水冷を伴う熱処理を施すことで、タンク容器の疲労強度を向上させることができる。
【0019】
本発明の第1または第2のガス貯蔵タンクにおいて、前記支持部は、金属によって形成されていることとしても良い。
【0020】
支持部を金属により形成することで、充填部とタンク容器との間の伝熱性を向上させることができる。これにより、水素充填時に水素吸蔵合金で発生する熱を、充填部からタンク容器に伝えて、タンク容器およびこれから熱を伝えられる部材に吸収させたり、外部に放出させることができる。このように、水素充填時に水素吸蔵合金で発生する熱を効率よく処理可能となることで、ガス貯蔵タンク内に充填する水素吸蔵量をより多くしたり、水素吸蔵の動作をより早く行なうことが可能となる。また、水素充填時に水素吸蔵合金で発生する熱を効率よく処理可能となることで、熱を排出するために充填部内に設ける冷媒流路を小型化したり、不要としたりすることが可能となる。
【0021】
なお、本発明は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、ガス貯蔵タンクの製造方法などの形態で実現することが可能である。
【0022】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.水素貯蔵タンク10の構造:
B.水素貯蔵タンク10の製造工程:
C.水素の吸蔵および放出の動作:
D.効果:
E.変形例:
【0023】
A.水素貯蔵タンク10の構造:
図1は、本発明の好適な一実施例である水素貯蔵タンク10の構成の概略を表わす説明図であり、図2は、図1における2−2断面の様子を表わす説明図である。水素貯蔵タンク10は、タンク容器20と、このタンク容器20内に収納される熱交換器30と、タンク容器20内において熱交換器30との間に配設される支持部40とを備えている。
【0024】
タンク容器20は、略円柱状に形成された中空の容器である。本実施例では、タンク容器20は、アルミニウム合金によって形成している。このタンク容器20は、その両端部が、それぞれ接続口21,22として開口しており、これら接続口21,22の近傍は、その横断面が、タンク容器20の中程の横断面に比べてより小さな略円形となるように形成されている。
【0025】
これら接続口21,22には、それぞれ、接続部23,24がはめ込まれている。接続部23,24は、接続口21,22においてタンク容器20の気密性を確保するための構造であり、これによって、タンク容器20内部に貯蔵される水素ガスが外部に漏れるのを防いでいる。また、接続部23においては、タンク容器20内に対して水素ガスを給排するための水素給排口23aが、外部に開口して設けられている。
【0026】
熱交換器30は、タンク容器20よりも横断面の小さい略円柱形状の容器である熱交換器ケース34と、この熱交換器ケース34内に充填した水素吸蔵合金とを備えている。そしてさらに、充填された水素吸蔵合金と所定の冷媒との間で熱交換可能となるように、熱交換器30の内部を長手方向に貫通して、3組の冷媒流路35を備えている。3組の冷媒流路35は、いずれも、U字型形状を有している。これらU字型をした冷媒流路35のそれぞれでは、その両端部が、接続口22にはめ込まれた接続部24を介してタンク容器20内から外部に延出している。また、各々の冷媒流路35は、接続口21側の端部において熱交換器ケース34から突出して、熱交換器ケース34の外部においてUターン構造を形成している。これにより、各々の冷媒流路35に対して冷媒が供給されるときには、冷媒は、接続部24において外部に延出する端部の一方から冷媒流路35内に導入され、冷媒流路35内において熱交換器30の長手方向に導かれる。このように冷媒流路35内を導かれた冷媒は、熱交換器ケース34から突出して設けられた上記Uターン構造において流れの向きを反転し、そのまま接続部24側に向かって導かれ、接続部24において外部に延出する他方の端部から水素貯蔵タンク10外に排出される。
【0027】
また、タンク容器20と熱交換器30との間には、熱交換器30の外周を取り囲むように、支持部40が配設されている。支持部40は、アルミニウム合金やステンレス鋼、あるいはこれらを備えるクラッド材等の金属材料の薄板を、所定の間隔で互い違いの方向に折り畳んだ波形形状を有している(図2参照)。このような構造を有することで、支持部40は、昇温・降温に伴う熱交換器30における膨張・収縮を吸収しつつ、タンク容器20内で熱交換器30を保持する。すなわち、支持部40は、上記のような波形形状に形成することで全体が弾性体として働くため、生じる圧力によって熱交換器30を保持することができる。さらに、この支持部40は、熱交換器30とタンク容器20の壁面との間の伝熱を確保するという働きを有している。支持部40と、タンク容器20および熱交換器30との間を接合することによって、タンク容器20内で熱交換器30を保持し、このような伝熱性を向上させることとしても良い。
【0028】
なお、支持部40を上記のように波形形状に形成することで、タンク容器20の内壁面と熱交換器30との間には、タンク容器20の長手方向に貫通する空間である保持空間32が複数形成される(図2参照)。また、タンク容器20の内壁面と熱交換器30との間であって、タンク容器20の長手方向の両端部近傍には、支持部40を介さない空間である端部空間33が形成されている(図1参照)。水素貯蔵タンク10に供給された水素は、熱交換器30内に充填される水素吸蔵合金に吸蔵される他、水素吸蔵合金粉末間の空間や保持空間32および端部空間33においても、圧縮水素として貯蔵される。また、後述するように、水素貯蔵タンク10を製造する際には、タンク容器20に対して水冷を伴う熱処理を施すが、上記複数の保持空間32は、水冷の際には水の通り道となる。
【0029】
さらに、タンク容器20の外周には、補強層26が設けられている。この補強層26は、内部に高圧水素を貯蔵するタンク容器20の強度を向上させるためのものであり、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)によって形成されている。
【0030】
B.水素貯蔵タンク10の製造工程:
図3は、水素貯蔵タンク10の製造方法を表わす工程図である。また、図4および図5は、水素貯蔵タンク10を製造する際の主要な工程の様子を表わす説明図である。
【0031】
水素貯蔵タンク10を製造する際には、まず、中空の円柱状容器である熱交換器ケース34を用意する(ステップS100)。そして、この熱交換器ケース34に、3組の冷媒流路35を組み付ける(ステップS110、図4(A))。組み付けるには、熱交換器ケース34に予め冷媒流路35を貫通させる穴を開けておき、熱交換器ケース34の一方の端部の外側からU字型の冷媒流路35の両端部を差し込み、他方の端部から突出するように冷媒流路35を熱交換器ケース34内に貫通させればよい。熱交換器ケース34を貫通させた冷媒流路35は、溶接によって熱交換器ケース34に固定し、これにより、冷媒流路35と熱交換器ケース34との隙間を塞げばよい。また、ステップS110では、熱交換器ケース34の上記他方の端部から突出した冷媒流路35に対してさらに曲げ加工を施し、上記他方の端部から突出する6本の冷媒流路35を、熱交換器ケース34の中心軸よりに束ねた状態としている(図4(A)参照)。なお、熱交換器ケース34において、熱交換器ケース34のU字型の屈曲部が突出している側の面(円柱形状の底面)の中央部には、予め、水素吸蔵合金を充填するための穴31が形成されている。図4(A)では、穴31を設けている位置を矢印で示している。
【0032】
次に、タンク容器20を形成するための、両端部が開放された略円柱形状の外壁部50と、支持部40を形成するための波形状板材52とを用意する(ステップS120)。図4(B)は、外壁部50の外観を示し、図4(C)は、波形状板材52の外観を示す。そして、用意した外壁部50内に、冷媒流路35を組み付けた熱交換器ケース34と、波形状板材52とを収納する(ステップS130)。このとき、外壁部50と熱交換器ケース34との間に、外壁部50の両端部を連通させ互いに略平行な複数の空間が形成される向きとなるように、波形状板材52を配設する。このように、熱交換器ケース34と外壁部50との間に波形状板材52を配設することで、波形状板材52によって支持部40が形成される(図5(A))。
【0033】
次に、外壁部50の両端に絞り加工(口絞り加工)を施す(ステップS140)。すなわち、外壁部50の両端の開口部が、より小さな開口部である接続口21,22と成るように、外壁部50を加工して、タンク容器20を形成する(図5(B))。このとき、冷媒流路35の端部が外部に突出する側の開口部が接続口22となり、反対側の開口部が接続口21となる。
【0034】
その後、タンク容器20に対して、熱処理を施す(ステップS150)。この熱処理とは、タンク容器20を構成するアルミニウム合金の疲労強度を向上させるための処理である。水素貯蔵タンク10においては、温度の上昇および下降に伴って構成部材が膨張・収縮を行なうと共に、水素の充填および放出に伴って内部の圧力が昇降する。このような構成部材の膨張・収縮や、内部圧力の昇降に伴って、タンク容器20の形状は、所定の割合でひずみを起こす。このようなひずみを繰り返し生じることで、タンク容器20を構成するアルミニウム合金は、次第に金属疲労を起こす。上記熱処理は、疲労に対する耐性を高めるものであり、本実施例では、アルミニウム合金に対して施される周知のT6処理を行なった。この熱処理においては、例えば515〜550℃に加熱することで、アルミニウム合金を固溶化させ、その後水冷により急冷する。水冷の際には、充分に急激に冷却を行なうことができるように、タンク容器20の内部、すなわちタンク容器20の内壁面と熱交換器ケース34との間に形成される保持空間32にも水を通して冷却を行なう。
【0035】
熱処理の後は、熱交換器ケース34内に、水素吸蔵合金の粉末を充填する(ステップS160)。このステップS160の動作は、タンク容器20の接続口21を介して、熱交換器ケース34に設けた穴31から熱交換器ケース34内に水素吸蔵合金を投入することによって行なう(図5(B)中の矢印参照)。そして、穴31を塞いで、タンク容器20内で熱交換器30を完成する(ステップS170)。ステップS170で穴31を塞ぐ際には、焼結金属によって形成されるガス透過性の多孔質部材37を穴31にはめ込む(図5(B)参照)。このような多孔質部材37としては、熱交換器30に充填した水素吸蔵合金を、実質的に内部に進入させずに保持可能なものを用いる。これによって、熱交換器30内に充填した水素吸蔵合金が外部にこぼれ出すのを防止することができる。なお、多孔質部材37がはめ込まれた穴31は、水素貯蔵タンク10において熱交換器30内の水素吸蔵合金に水素を吸蔵させる際、あるいは水素吸蔵合金から水素を取り出す際に、水素の通り道として働く。
【0036】
その後、接続口21には接続部23を取り付け、接続口22には接続部24を取り付ける(ステップS180)本実施例では、接続部23は、オン−オフ弁である電磁弁と共に減圧弁を備えている。そして、水素給排口23aに対して高圧の水素ガスを導入することで、水素貯蔵タンク10内に水素を貯蔵可能となると共に、上記減圧弁によって減圧された水素を水素貯蔵タンク10から水素給排口23aを介して排出可能となっている。また、接続部24では、タンク容器20内外の間の気密性を確保しつつ、3組の冷媒流路35の両端部がタンク容器20外に延出するように保持される。
【0037】
さらに、タンク容器20の外周に補強層26を形成して(ステップS190)、水素貯蔵タンク10を完成する。補強層26は、例えば、エポキシ樹脂などを含浸させた炭素繊維をタンク容器20の外周に巻き付けた後に、上記含浸させた樹脂を硬化させることにより形成する。
【0038】
C.水素の吸蔵および放出の動作:
水素貯蔵タンク10に対して水素を貯蔵する際には、水素給排口23aを介して水素貯蔵タンク10内に高圧の水素を導入する。水素給排口23aから導入された水素は、水素貯蔵タンク10内の保持空間32および端部空間33に導かれ、さらに、穴31にはめ込まれた多孔質部材37を介して熱交換器30内に導入され、水素吸蔵合金に吸蔵される。水素吸蔵合金における水素吸蔵量は、水素圧力と温度と水素吸蔵合金の種類とによって決まる。そして所定の圧力で水素を供給すると、水素吸蔵合金は、所定の温度に達するまで、水素を吸蔵しつつ昇温する。このように水素の貯蔵を行なう際には、3組の冷媒流路35の各々に対して冷媒を給排し、冷媒流路35内に冷媒を通過させることによって水素貯蔵タンク10内を冷却し、水素吸蔵合金による水素吸蔵の動作を促進する。なお、水素吸蔵合金が所定の温度にまで昇温した後は、水素貯蔵タンク10に供給される水素圧に応じた圧力で、保持空間32および端部空間33内に水素ガスが充填されて、水素貯蔵タンク10は、満充填状態となる。
【0039】
水素貯蔵タンク10から水素を取り出す際には、所定の圧力に減圧した水素を水素給排口23aから放出させる。水素を取り出す際には、まず、保持空間32および端部空間33内の圧縮水素から放出され、その後さらに、水素吸蔵合金に吸蔵された水素が放出される。水素吸蔵合金は、水素の放出と共に吸熱するため、上記した冷媒の流路内に所定の高温の冷媒を通過させ、水素吸蔵合金を加熱することにより、水素吸蔵合金から水素を放出させる動作を継続することができる。
【0040】
なお、水素吸蔵合金に水素を吸蔵させる際には、水素吸蔵の動作に伴って水素吸蔵合金で生じる熱の一部は、熱交換器ケース34と、支持部40とを介してタンク容器20に伝えられ、タンク容器20から外部に放出される。
【0041】
D.効果:
以上のように構成された水素貯蔵タンク10によれば、タンク容器20と熱交換器30との間に、タンク容器20の開口部である接続口21と接続口22とを連通させる空間が、支持部40によって形成されているため、タンク容器20内に容易に水を流通させることが可能となり、タンク容器20を水冷する動作を充分に急激に行なうことができる。特に、本実施例では、支持部40は、熱交換器30の外周を取り囲んで配設され、タンク容器20と熱交換器30との間に形成される空間全体が、接続口21,22と連通しているため、水冷の際には、タンク容器20全体を内側から迅速に冷却することができる。
【0042】
既述したように、アルミニウム合金を熱処理することで、アルミニウム合金の疲労強度を向上させることができ、水素貯蔵タンク10内(保持空間32および端部空間33)に、より高圧の水素、例えば1MPa以上の圧力の水素を貯蔵することが可能となる。そして、本実施例のように補強層26を設けることで、さらに高圧の水素を貯蔵することができ、例えば25MPa以上、あるいはさらに35MPa以上の圧力の水素を貯蔵することも可能となる。このように、より高圧の水素を貯蔵する場合に、内部の水素の圧力に耐えつつタンクの気密性を充分に確保するためには、タンク容器20の開口部をできるだけ小さくすることが必要となる。また、タンク容器20内に熱交換器30を収納するためには、この熱交換器30の収納の時点では、タンク容器20の開口部は、熱交換器30が通過可能な大きさが確保されていることが必要となる。したがって、本実施例のように、熱交換器30を内部に収納した後に、タンク容器20に対して絞り加工を施す必要がある。また、水冷を伴う熱処理の工程を絞り加工の前に行なってしまうと、絞り加工を行なうことで、熱処理による疲労強度向上の効果が損なわれてしまう可能性があるため、水冷を伴う熱処理は、絞り加工の後に行なう必要がある。このように、水冷を伴う熱処理は、熱交換器30をタンク容器20内に収納する工程と、絞り加工を施す工程との後に行なうことが望ましいが、タンク容器20内で熱交換器を支える支持部が水の流れを妨げると、水冷を充分に急激に行なうことが困難となる可能性がある。本実施例のように、タンク容器20の両端部に形成される開口部と連通するように、支持部40によって空間を形成することで、水冷を充分に急激に行なうことが可能となる。
【0043】
E.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0044】
E1.変形例1:
タンク容器と熱交換器との間に設ける支持部は、上記実施例とは異なる形状としても良い。上記実施例では、支持部40は、熱交換器ケース34の長手方向の長さとほぼ同じ長さを有する波形状板材52を用いて形成したが、例えば、長さがより短い波形状板材を、熱交換器ケース34の外周に複数巻き付けて支持部を形成することとしても良い。このような水素貯蔵タンクの一例の様子を図6に示す。図6では、支持部40a,40bという2つの支持部を備えることとしたが、より多くに分割された支持部を設けることとしても良い。支持部を配設することで、タンク容器と熱交換器との間に形成される空間全体がタンク容器の開口部と連通するならば、冷却水をタンク容器内部全体に通すことができ、タンク容器を急激に冷却することが可能になるという同様の効果を得られる。特に、支持部によって形成される空間がタンク容器の長手方向に平行となるように、支持部の形状を形成することが、水冷の効率上、望ましい。
【0045】
E2.変形例2:
実施例では、タンク容器20は、その両端のそれぞれに開口部(接続口21,22)を有するため、水冷の際にタンク容器20内に容易に水を通過させてタンク容器20を急冷することができるので望ましいが、開口部は少なくとも1つ有していればよい。支持部の形状により、タンク容器と熱交換器との間の空間全体が開口部と連通していれば、熱処理の際にタンク容器の内部からも水冷を行なうことが可能となる。
【0046】
E3.変形例3:
実施例では、支持部40を金属製の薄板で形成しているため、タンク容器と熱交換器との間において、水の流通空間をより広く確保することができて望ましいが、薄板以外の部材により支持材を形成しても良い。支持部を設けることで、タンク容器と熱交換器との間の空間全体が開口部と連通するならば、熱処理の際にタンク容器の内部からも水冷を行なうことが可能となる。
【0047】
E4.変形例4:
実施例では、タンク容器20の端部に形成した穴31から水素吸蔵合金の充填を行なうと共に、さらにこの穴31を水素の給排のために用いているが、水素吸蔵合金の充填に用いる穴と水素の給排に用いる穴とは別個に設けることとしても良い。この場合には、水素給排のための穴には、熱交換器ケース34をタンク容器20内に収納するのに先立って多孔質部材37をはめ込んでおけばよい。そして、水素吸蔵合金を充填した後には、充填に用いた穴は、溶接などにより完全に塞ぐこととすればよい。
【0048】
E5.変形例5:
実施例では、熱交換器ケース34を収納したタンク容器20に絞り加工および熱処理を施した後に、水素吸蔵合金を充填したが、熱交換器ケース34をタンク容器20に収納する前に、熱交換器ケース34に水素吸蔵合金を充填することとしても良い。このように、水素吸蔵合金を充填した熱交換器30を収納するタンク容器に対して水冷を伴う熱処理を施す場合には、水冷によって水素吸蔵合金が湿潤状態とならないように、水冷の際には熱交換器30のシール性を充分に確保することが望ましい。例えば、水素吸蔵合金を充填した後、熱交換器30に着脱可能な蓋体を取り付け、水冷を伴う熱処理の後に、この蓋体を取り外すこととすればよい。
【0049】
E6.変形例6:
実施例では、アルミニウム合金で形成されたタンク容器を用いたが、このようなタンク容器に代えて、異なる材料によって形成されたタンク容器を用いることとしても良い。例えばステンレス鋼によりタンク容器を形成しても良い。他種の金属を用いる場合にも、水冷を伴う固溶化処理などの熱処理を行なう製造方法を採用する際に、本発明を適用することで、同様の効果を得ることができる。
【0050】
E7.変形例7:
水素吸蔵合金を充填する充填部としては、実施例に示した熱交換器の他に、種々の変形が可能である。例えば、内部にフィン等の伝熱部を設けた充填部を用いることとしても良い。水素吸蔵合金と冷媒流路との両方と接するように、充填部内に金属製のフィンを設けることで、水素吸蔵合金の冷却・加熱の効率を向上させることができる。また、水素吸蔵合金とタンク容器との両方と接するように、充填部内にフィンを設けることで、水素吸蔵の際に放熱を促進することができる。あるいは、水素の吸蔵を行なう際の冷却や、水素の放出を行なう際の加熱が充分に行なわれるならば、冷媒流路を内部に設けないこととしても良い。いずれの場合にも、タンク容器内に充填部(あるいは充填部を形成するためのケース)を収納し、その後に水冷を伴う熱処理を行なう場合には、本発明を適用することで、水冷を良好に行なうことが可能となる。
【0051】
E8.変形例8:
また、実施例では、充填部としての熱交換器内に水素吸蔵合金を充填することとしたが、他種の吸蔵・吸着材を用いることとしても良い。あるいは、他種の吸蔵・吸着材をさらに備えることとしても良い。例えば、水素吸蔵合金に加えて、活性炭やカーボンナノチューブをさらに備えることとしても良い。
【0052】
E9.変形例9:
また、水素を吸蔵および/または吸着する吸蔵・吸着材を内部に充填した充填部に代えて、このような吸蔵・吸着材を充填しない所定の収納部をタンク容器内に収納することとしても良い。すなわち、何らかの収納部をタンク容器内に収納するガス貯蔵タンクにおいて、タンク容器内で収納部を支持するために本発明の支持部を用いることで、同様の効果を得ることができる。
【0053】
E10.変形例10:
上記実施例では、水素を貯蔵する水素貯蔵タンクとしたが、水素以外の高圧ガスを貯蔵するタンクを製造する場合にも、本発明を適用して同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 水素貯蔵タンク10の構成の概略を表わす説明図である。
【図2】 図1における2−2断面の様子を表わす説明図である。
【図3】 水素貯蔵タンク10の製造方法を表わす工程図である。
【図4】 水素貯蔵タンク10を製造する際の主要な工程の様子を表わす説明図である。
【図5】 水素貯蔵タンク10を製造する際の主要な工程の様子を表わす説明図である。
【図6】 変形例の水素貯蔵タンクの様子を表わす説明図である。
【符号の説明】
10…水素貯蔵タンク
20…タンク容器
21,22…接続口
23,24…接続部
23a…水素給排口
26…補強層
30…熱交換器
31…穴
32…保持空間
33…端部空間
34…熱交換器ケース
35…冷媒流路
37…多孔質部材
40…支持部
40a,40b…支持部
50…外壁部
52…波形状板材
Claims (6)
- ガスを貯蔵するためのガス貯蔵タンクであって、
前記ガスを吸蔵および/または吸着する吸蔵・吸着材を内部に充填した充填部と、
前記充填部を内部に収納し、長手方向の両端部に開口部が形成されているタンク容器と、
金属製の薄板を互い違いの方向に折り畳んで波形形状に形成されると共に、前記波形形状の一方の面で前記タンク容器と接し、前記波形形状の他方の面で前記充填部と接して、前記タンク容器と前記充填部との間に、前記タンク容器の長手方向に略平行であって前記開口部と連通する複数の空間を形成しつつ、前記タンク容器内で前記充填部を支持する支持部と
を備えるガス貯蔵タンク。 - 請求項1記載のガス貯蔵タンクであって、
前記タンク容器は、端部に形成される開口部付近において、横断面の面積がより小さくなる絞り部を有する
ガス貯蔵タンク。 - 請求項1または2記載のガス貯蔵タンクであって、
前記タンク容器は、対向する位置に2つの前記開口部が形成されている
ガス貯蔵タンク。 - 請求項1ないし3いずれか記載のガス貯蔵タンクであって、
前記タンク容器は、略円筒形状に形成され、
前記支持部は、前記円筒形状の軸方向に略平行な複数の空間を、前記タンク容器と前記充填部との間に形成する
ガス貯蔵タンク。 - 請求項1ないし4いずれか記載のガス貯蔵タンクであって、
前記ガス貯蔵タンクは、水素を貯蔵するタンクであり、
前記吸蔵・吸着材は、少なくとも水素吸蔵合金を含み、
前記タンク容器は、アルミニウムを含む金属により形成される
ガス貯蔵タンク。 - ガスを貯蔵するためのガス貯蔵タンクの製造方法であって、
(a)長手方向の両端部に開口部が形成されているタンク容器内に、前記ガスを吸蔵および/または吸着する吸蔵・吸着材を内部に充填した充填部を収納すると共に、前記タンク容器の長手方向に略平行であって前記開口部と連通する複数の空間を形成しつつ、前記タンク容器内で前記充填部を支持するように、金属製の薄板を互い違いの方向に折り畳んで波形形状に形成した支持部を、前記タンク容器と前記充填部との間に配設する工程と、
(b)前記(a)工程の後に、前記タンク容器に対して、水冷を伴う熱処理を施す工程と
を備えるガス貯蔵タンクの製造方法。
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