JP4167064B2 - 直接の波面に基づいた角膜切除処理プログラム - Google Patents

直接の波面に基づいた角膜切除処理プログラム Download PDF

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Description

【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に,光学システムの測定に関する。本発明は光学システムの光学エラーの測定の装置,システムおよび方法に関し,特に,眼の光学エラーの屈折率矯正を決定するために最良のものである。
【0002】
関連出願
本発明は2000年12月8日に米国に出願した米国仮出願第60/2543133号(全開示内容がここに参考文献として組み込まれる)に基づくものである。
【背景技術】
【0003】
既知のレーザ眼外科手順は一般的に,眼の角膜から,間質性組織の微細層を除去するために,紫外線または赤外性レーザを使用する。レーザは典型的に,眼の屈折率エラーを矯正するために,角膜組織の選択された形状部を除去する。紫外線レーザ切除は,角膜組織の光分解をもたらすが,眼の近傍および下に位置する組織に,重大な熱損傷を生じさせない。照射された分子は,光化学作用で小さな揮発性部分に破壊し,直接分子間結合を破壊する。
【0004】
レーザ切除手順は,近視,遠視,乱視などの矯正といったいろいろな目的のために,角膜の輪郭を変化させるために,角膜の対象となった間質を除去することができる。角膜にわたって切除エネルギー分布を制御することは,切除マスク,固定および可動装置,制御された走査システム,眼の動きを追跡する機構などの使用を含む種々のシステムならびに方法により行える。既知のシステムにおいて,レーザビームはときに,レーザ光エネルギーの,一連の分離したパルスからなり,ここで,除去される組織の全形状および量は,角膜に衝突するレーザエネルギーパルスの形状,大きさ,位置および/または数によって決定される。いろいろなアルゴリズムが,眼の屈折率エラーを矯正すべく,角膜の再整形に使用されるレーザパルスのパターンを計算するために使用される。既知のシステムは,赤外線レーザ,紫外線レーザ,フェムト秒のレーザ,波長増倍形(wavelength multiplied)個体レーザといった矯正を有効にするために,種々の形態のレーザおよび/またはレーザエネルギーを使用する。他の視覚矯正技術は,角膜の放射方向の切開,眼内レンズ,取り外し可能な角膜支持構造体などの使用である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既知の角膜矯正処理方法は一般的に,近視,遠視,乱視などの標準的な視覚異常の矯正に対してうまくいっている。しかし,このような成功にもかかわらず,さらに改良がなされることが望ましい。
【0006】
波面センサーデータを使用して,特注の切除パターンを計算する既知の方法は一般的に,展開級数技術を使用して,眼の光学表面を数学的にモデル化することに関する。とりわけ,ゼルニケ多項式が光学表面のモデル化に使用されている。ゼルニケ多項式の係数は既知の適合技術により導かれ,屈折率矯正手順は,数学的な級数展開モデルにより示される光学表面の眼の形状を使用して決定される。
【0007】
本発明に関連して行った研究は,波面センサーデータに基づくレーザ切除処理プロトコルの計算のための既知方法論が理想より劣っていることを示した。既知のゼルニケ多項式モデル化方法は,理想的な屈折の矯正よりも悪い異常または“ノイズ”をもたらす。さらに,既知の表面モデル化技術はいくらか間接的で,達成されるべきに肉体上の異常の理解不足とともに,計算に不必要な異常をもたらす。
【0008】
上記課題に鑑み,特に屈折矯正の目的のために,眼の測定に使用する,改良された測定技術を提供することが望ましい。
この出願に関連する先行技術文献は次のものがある。
【特許文献1】
米国特許第5713892号明細書
【特許文献2】
米国特許第5683379号明細書
【特許文献3】
米国特許出願第08/968380号明細書
【特許文献4】
米国特許出願第09/274999号明細書
【特許文献5】
米国特許第4665913号明細書
【特許文献6】
米国特許出願第08/468898号明細書
【特許文献7】
米国特許第5646791号明細書
【特許文献8】
米国特許第6004313号明細書
【特許文献9】
米国特許出願第60/189633号明細書
【特許文献10】
米国特許第6095651号明細書
【特許文献11】
米国特許第6155684号明細書
【特許文献12】
米国特許第6271914号明細書
【特許文献13】
米国特許第6099125号明細書
【特許文献14】
米国特許第6000800号明細書
【特許文献15】
米国特許第5258791号明細書
【非特許文献1】
Nature,2000年1月,第403巻,第54-56頁
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一の態様において,本発明は,光学組織を測定するための方法を提供する。本方法は,光学組織を通してイメージを送ることを含む。光学組織の局所的な勾配が,光学組織にわたって,送られたイメージから決定される。光学組織の形状における,異常を矯正する変化は勾配にわたって積分することにより,マップ(図形)化される。
【0010】
イメージはときに,網膜から前方向(眼から外に向かった方向)に,光学組織を通して送られる。網膜上のイメージは,を光源から後方向(眼の外から眼に向かった方向)に,光学組織を通って網膜に送ることで形成することができる。小さな(単数または複数の)スポットが網膜イメージとして使用するのに,特に便利である。イメージは,眼の瞳孔よりも小さな角膜の中央領域を通って,網膜に送ることができる。このことは,角膜の中央部分がときに周囲領域よりも良好な光学形状をもつときに,網膜上に投影されたイメージにおいて,高次の光学異常を制限する。マップ(図形)化工程は,光学特性に所望の変化をもたらすように,光学組織の標高において,想定変化を導出することを含んでもよい。本方法はさに,想定変化にしたがって光学組織表面を修正することを含む。
【0011】
光学組織を通して送られたイメージは複数の小ビームを画成するために,(たとえば,複数の配列した小型レンズにより)分離することができる。光学組織の表面の勾配は、光学組織の表面を構成する部分のそれぞれの勾配からなり,各小ビームは,対応する勾配にしたがって関連した小型レンズにより送られる。積分工程は,光学組織の表面を構成する部分の勾配にわたって,閉じた積分路について積分することを含む。光学組織の表面を構成する部分の少なくとも一つの精度が,この閉じた積分路にそって,標高の変化を計算することで決定され得る。閉じた積分路は,勾配に関連した光学組織の表面を構成する部分の間における中央対中央積分により定義できるが,しかし好適には,光学組織の表面を構成する部分の間の最初の場所を使用することにより定義され,その結果部分にわたる積分が関連した勾配に直接基づいて実行され得る。
【0012】
実施例では,送られたイメージは,光学システムのエラーの少なくとも一つを補償するように,適応性のある光学要素で調節することができる。たとえば,光源イメージが角膜組織を通って網膜に投影されると,イメージが網膜上に現れて,よく画成されるように,変形可能なミラーが光源イメージを調節してもよい。
【0013】
任意に,光学システムの光学表面の標高マップが,光学表面に数学的に近似した級数展開の係数を導出することなく,マップ(図形)化工程において直接形成され得る。このことにより,ゼルニケ多項式および他の級数展開法を使用することにより導出され得るエラーを避けることができる。
【0014】
他の態様において,本発明は,患者の眼の治療にための装置を提供する。眼は網膜と光学組織を有する。装置は,光学組織を通って網膜に向けられるイメージ光源を含む。波面センサーの向きが光学組織により前方向(眼から外に向かった方向)に伝えられるイメージを検知するために定められる。波面のセンサーは光学組織にわって,光学組織の表面の勾配を示す信号を生成する。プロセッサが,光学組織の矯正のためのマップを決定するために,配列した部分の間のそれぞれの勾配の積分を行うように構成された積分モジュールを含む。
【0015】
好適に,プロセッサは,眼の表面を数学的に近似する級数展開の係数を導出することなく,眼の表面の表面標高マップを直接決定する。積分モジュールは,ハードウエア,ソフトウエア,ファームウエア,および/またはこれらの組み合わせからなってもよい。
【0016】
他の態様により,本発明は,眼の断層波面異常マップを測定する方法を提供する。光測定路は,眼に対して第一の角度方向に偏向され,眼の光学組織表面はその第一の角度方向で測定される。光測定路は,第二の角度方向(第二の光学組織表面が測定される方向)に偏向される。眼の断層波面のエラーマップは,連続した光学組織表面から計算される。その断層のマップは,眼の中で,異なる深さにおける複数の局所的な光学組織表面からなる。本方法は,偏向工程および測定工程を繰り返すことができ,また,眼の網膜上に,特性をもつ光構成を形成することを含んでもよい。
【0017】
さらに,他の態様において,本発明は,処理のための眼の異常を選択する方法を提供する。眼の断層波面のエラーマップを計算することにより,局所的な光学組織表面は,眼の対応する組織構成に関連付けられる。異常が,異常に対応する組織構成に応答して処理のために選択される。処理のために選択された異常は,光学処理表面を形成するために組み合わされる。角膜組織構成に対応する異常が
処理に含まれてもよく,水晶体組織構成に対応する異常が処理から除かれる。処理のために選択された異常は,眼の測定されて異常のサブセットからなってもよい。
【0018】
さらに,他の態様において,本発明は,眼の波面を測定する方法を提供する。波面センサーの光測定路が眼に対して第一の角度方向に偏向され,眼の第一の光学組織表面が測定される。光測定路は,第二の角度方向に偏向され,眼の第二の光学組織表面が測定される。眼の波面エラーマップは,連続した光学組織測定から計算される。本方法は,複数の光学組織表面測定を得るために,偏向工程および測定工程を繰り返してもよい。本方法はまた,網膜上に,特性をもつ光構成を形成し,第一の位置での光構成の特性から,第二の位置での光構成の特性が分離できるように,第一の位置から第二の位置に光構成を変位させることを含んでもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は特に,光屈折角膜切除術(PRK),光治療角膜切除術(PTK),レーザ現場角膜曲率形成術(LASIK)といった正確で有効なレーザ眼外科手順を向上するのに有用である。好適に,本発明は,角膜切除または他の屈折矯正処理プログラムを導き出す方法を改良することにより,屈折矯正手順の光学的な正確さを向上することができる。したがって,本発明の装置および方法は主にレーザ眼外科システムに関して説明されるが,本発明の技術は,放射状角膜切除術,眼内レンズ,角膜リング移植,コラーゲン角膜組織熱再モデル化といった他の眼処理手順およびシステムに適用することができる。
【0020】
本発明の技術は,既存のレーザシステム,波面センサー,および他の光学測定装置とともに容易に適用することができる。光学システムのエラーを矯正するためのより直接的な(したがって,よりノイズやエラーの発生しにくい)方法を提供することにより,本発明は,処理した眼が,所望で正常な視力以上となるように,角膜の整形を容易にすることができる。
【0021】
波面(wavefront)センサーは典型的に,全光学組織システムの異常(aberration)および他の光学的特性を測定する。波面センサーからのデータは,光学組織の表面を構成する部分のそれぞれの勾配から光学組織の光学組織表面を形成するために使用することができる。勾配が眼の組織システム全体にわって実際にある異常の影響を示すことから,光学組織表面が正確に実際の組織表面と整合する必要がないことは理解されよう。しかし,勾配から導出される異常を矯正するため,光学組織表面に行う矯正は光学システムを矯正しなければならない。「光学組織表面」の用語は,理論的な組織表面(たとえば,波面センサーデータから導出されるもの),実際の組織表面,および/または処理の目的で形成された組織表面(たとえば,LASIK手順の間,角膜の上皮のフラップ(皮膚弁)を変位させ,その下の間質を露出するように,角膜組織を切開することによる)を含む。ここで使用されるイメージは,光の点,光の小さな点を含むものである。
【0022】
図1に示されているように,本発明のレーザ眼外科システム10が,レーザビーム14を生成するレーザ12を含む。レーザ12は,レーザ伝達光学系16(患者Pの眼にレーザビーム14を向ける)に光学的に結びつけられる。伝達光学系支持構造物(簡単化のために,ここでは示されていない)がレーザ12を支持するフレーム18から伸びている。顕微鏡20は伝達光学系支持構造物上に取り付けられ,顕微鏡はしばしば眼の角膜の映像を得るために使用される。
【0023】
レーザ12は一般的に,エキシマレーザからなり,このエキシマレーザは約193nmの波長をもつレーザ光のパルスを生成するアルゴン−フッ素レーザである。レーザ12は好適に,伝達光学系16を介して,患者の眼に,フィードバック安定化フルエンスを与えるように,設計される。本発明はまたこの他に紫外線または赤外線輻射源,特に角膜組織を,眼の近傍または/およびその下の組織に重大なダメージを与えることなく,制御して切除できるものを使用できる。このような輻射源は,限定的ではないが,個体レーザ,約185と205nmの間の紫外線波長のエネルギーを発生できる他のデバイスおよび/または周波数多重化技術を利用するものを含む。したがって,エキシマレーザを切除ビームの実施例としているが,他のレーザも本発明に使用することができる。
【0024】
レーザ12および伝達光学系16は一般的に,プロセッサ22の指示にそって,患者Pの眼に,レーザビーム14を向ける。プロセッサ22はときに,角膜の整形および眼の屈折率特性の変更のために,レーザエネルギーのパルスで,角膜の部分をさらすべく,レーザビーム14を選択的に調節する。多くの実施例において,レーザ14およびレーザ伝達光学系16の両方ともプロセッサ22の制御に従い,所望の整形プロセスを実行するが,このプロセッサはレーザパルスのパターンを実行する(および任意に修正する)。パルスのパターンは,有形媒体29の機械読み取り可能なデータに,処理テーブルの形態にして要約され,処理テーブルは,切除モニタリングシステムフィードバックシステムから与えられるフィードバックデータに応答して自動化イメージ分析システムからのプロセッサ22へのフィードバック入力(システムの操作者によりプロセッサに手動入力)にしたがって調節することができる。このフィードバックは,レーザ処理システム10と下述する波面測定システムを統合することにより適用され,プロセッサ22は,フィードバックに応答して整形処理を続け,そして/または終了させ,フィードバックの少なくとも一部に基づいて,計画された整形を任意に修正することができる。
【0025】
レーザビーム14は他の種々の機構を使用して所望の整形をなすように調節することができる。レーザビーム14は一つ以上の可変な開口を使用することにより選択的に制限することができる。たとえば,可変なアイリスおよび可変な幅のスリットをもつ可変な開口システムが,ここで参考文献として組み込まれる特許文献1(米国特許第5713892号)に開示されている。レーザビームはまた特許文献2(米国特許第5683379号)に開示され,また,1997年11月12日に出願の特許文献3(米国特許出願第08/968380号),および1999年3月22日に出願の特許文献4(米国特許出願第09/274999号)(これら開示全内容は参考文献としてここに組み込まれる)に開示されている。
【0026】
さらに,眼の表面にわたってレーザビームを走査すること,たとえば,特許文献5(米国特許第4665913号)(ここに開示全内容は参考文献として組み込まれる)に開示されているように各位置で,パルスの数および/または滞留時間を制御すること,1995年6月6日に出願の特許文献6(米国特許出願第08/468898号)(開示全内容はここに参考文献として組み込まれる)に開示されているように,角膜へのビーム入射ビームのプロファイルを変化させるために,除去される,レーザビーム14の光経路にあるマスクを使用すること,寸法が可変なビーム(典型的に,可変幅のスリットおよび/または直径が可変な虹彩(アイリス)絞りにより制御される)が,角膜にわたって走査されるハイブリッドプロファイル−走査システムを使用することを含むこともできる。これらのレーザパターン形成技術のための,プロセッサプログラムおよび制御法が上記特許文献によく記述されている。
【0027】
他の要素およびサブシステムが,当業者には理解できるように,レーザシステム10とともに含み得る。たとえば,空間および/または時間積分器を,特許文献7(米国特許第5646791号)(開示全内容はここに参考文献として組み込まれる)に開示されているように,レーザビーム内のエネルギー分布を制御するために含むことができる。切除流出液排出器/フィルター,その他レーザ外科システムの補助的な要素は,本発明に必須のものではなく,発明の説明に関して詳説する必要のないものである。
【0028】
プロセッサ(コンピュータ)22はキーボード,ディスプレーモニターといった標準的なユーザインターフェイス装置を含む,在来のPCシステムからなる(または接続される)。プロセッサ22は典型的に,磁気または光ディスクドライブ,インターネット接続といった入力装置を含む。このような入力装置はしばしば,本発明の方法を実施して,有形の記憶媒体29からのプロセッサの実行可能なコードをダウンロードするために使用される。有形の記憶媒体29はフレキシブルディスク,光ディスク,データテープ,揮発性または不揮発性メモリーなどあり,プロセッサ22は,このコードを記憶し,実行する他の現代的なプロセッサシステムのメモリーボード,他の標準的な要素を含む。有形の記憶媒体29は任意に,波面センサーデータ,波面勾配,波面標高マップ,処理マップおよび/または切除テーブルを具体化できる。
【0029】
図2に示されているように,例示の波面センサーシステム30が説明の簡単化のために略示されている。一般的,波面センサーシステム30は,光を眼の外から眼に向けて眼の光学的な組織34を通して投影し,網膜Rの表面にイメージ44を形成する,イメージ光源32を含む。網膜Rからのイメージは,眼から外に向かう方句に眼の光学システム(特に,光学組織34)を通して伝えられ,システム光学系38により,波面センサー36に結像する。波面センサー36は,角膜切除処理プログラムの決定のために,信号をプロセッサ22に送信する。プロセッサ22は,レーザ外科システム10の操作に直接使用するのと同じプロセッサでも,または波面センサーシステムのプロセッサ要素の少なくと一部または全部でもよく,レーザ外科システムは分離されていてもよい。波面センサー36からのデータは,有形媒体29を介して,I/Oポートを介して,インターネットのようなネット網などを介して,分離したレーザシステムプロセッサに伝えられる。
【0030】
波面センサー36は一般的に,複数の配列した小型レンズ38およびイメージセンサー40からなる。網膜Rからのイメージは,光学組織34および複数の配列した小型レンズ38を通って伝えられ,複数の配列した小型レンズは伝えられたイメージを複数の小ビーム42に分離し,(システムの他の光学要素と組み合って)センサー40の表面に分離した小ビームを結像する。センサー40は典型的に,電荷結合デバイス“CCD”からなり,これら小ビームの特性(光学組織34の関連した領域の特性を決定するために使用することができる)を検知する。特に,イメージ44が光の点または小さなスポットからなる場合,小ビームによる結像として伝えられたスポットの位置が光学組織の表面を構成する部分に関連した領域の局所的な勾配を直接示すことができる。
【0031】
眼Eは一般的に,前方向きANT(眼から外に向かう方向)および後方向POS(眼の外から眼に向かう方向)を定義する。イメージ光源32は一般的に,イメージを後方向き(眼の外から眼に向かう方向)で,光学組織34を通して網膜Rに投影する。光学組織34は再度,イメージ44を網膜から、眼の外に向かう方向に,波面センサー36へと伝える。網膜R上に実際に形成された像44は,イメージ光源が最初光学組織34により伝えられたとき,眼の光学システムにおける欠陥により歪む。任意に,イメージ源投影光学系46が,イメージ44のゆがみを減少させるように構成される。
【0032】
実施例において,イメージ光源光学系は,光学組織34の球形および/または円筒形エラーを補償することにより,光学エラーを低次に減少させる。光学組織の,より高次の光学エラーが,変形可能なミラーのような適応性光学要素の使用により補償される。網膜Rに,イメージ44の点または小さなスポットを画成するために選択されたイメージ光源32の使用は,波面センサー36により与えられるデータの分析を容易にする。瞳孔の中央領域がその周囲領域よりも光学エラーの傾向が小さいことから,イメージ44の歪みは,瞳孔50よりも小さな光学組織34の中央領域48を通して,光源イメージを伝えることにより制限され,一般的に,網膜R上にイメージ44が,よく定義され正確に形成される。
【0033】
本発明の方法は,イメージ44の検知を参照して記述されてきたが,連続した波面センサーデータ読み取りがなされ得ることは理解されよう。たとえば,時間連続した波面データ読み取りが,眼の組織の異常をより正確で全体的な決定を助成する。眼の組織の形状が短い時間間隔にわたって変化可能であるから,多数の,時間間隔をあけた波面センサーの測定により,屈折率矯正手順の基準として,一つの断片的な光学特性に基づくことが回避され得る。さらに,眼の波面センサーデータを,眼の形状,位置,および/または向きを変えて取ることを含めて他の方法も取りうる。たとえば,特許文献8(米国特許第6004313号)(開示全内容はここに参考文献として組み込まれる)に開示されているように,固定ターゲットに焦点あわせすることにより,眼と波面センサーシステム30との整合の維持に患者がしばしば役立つ。この文献に記述されているように,固定ターゲット上の焦点位置を変化させることにより,眼がいろいろな距離で見るように順応する一方,眼の光学特性を決定することができる。さらに,波面センサーシステム30内に他の固定ターゲットを設け,そして/または固定ターゲットを動かすことにより,眼の回転を行うことを含んでもよい。
【0034】
眼の光軸の位置は,瞳孔カメラ52から与えられるデータを参照して変化させることができる。例示の実施例において,瞳孔カメラ52は,上記特許文献に記述されているように,光学組織に対して波面センサーデータの記憶のために,瞳孔の位置を決定するため,瞳孔50を映し出す。
【0035】
図3に示されているように,直接の波面をベースとした角膜切除処理方法60の利点は,特に,角膜組織をモデル化するための級数展開法62に基づく処理方法と比較するときに,理解されよう。しかし,これら二つの方法が矛盾し,あるいは互いに相容れないものではなく,図示のように組み合わせもできることは分かるであろう。
【0036】
級数展開法62において,ハートマン−シャック(Hartmann-Shack)変位マップ64が波面センサー36により与えられるデータから生成される。この変位マップの生成は,図4および図6を参照することで分かるであろう。図4に示されているように,網膜R上のイメージ44は,各小ビームがイメージセンサー40上に結像するために,光学組織34,光学系37および複数の配列した小型レンズ38を通して伝えられる。イメージセンサー40上の伝えられたイメージ66の位置70は一般的に,光学組織34に関連した部分68を示す。複数の配列した小型レンズ38の各小レンズは,瞳孔50(図2を参照)内の,光学組織34の部分68,ならびに光学システムからの情報をセンサー表面に移す各小ビームに対応する。位置70はときに,点光源を結像することで生じる点光信号の画素位置として検知されよう。
【0037】
図6に示されているように,複数の配列した小型レンズ 38のそれぞれはまた,センサー40上に,対応する領域72をもつ。複数の配列したセンサー領域 / 小型レンズのそれぞれは,図6に略示されているように,関連した座標基準をもつ。複数の配列した小型レンズおよび/またはセンサー領域の間の間隔は,ΔxとΔyにより示される。複数の配列した小型レンズの各レンズとともに,送られてきたイメージ66を分離することにより生じた複数の配列した位置70は変位マップ64を定義する。
【0038】
図3に戻って,ハートマン−シャック変位マップ64により,(図4からも分かるように)ハートマン−シャック勾配マップ74を計算することが可能である。光学組織34の表面を構成する各部分68は局所勾配76を有する組織表面を含む。局所勾配76はセンサー40上で分離された,送られてきたイメージ66の関連部分の位置70に重大なインパクトをもち,勾配は位置70から容易に導くことができる。勾配マップ74は,各レンズの各位置70から計算された複数の配列した局所勾配76からなってもよい。
【0039】
勾配マップ74が級数展開法を使用して,組織の数学的モデルを導き出すために使用されるとき,勾配マップおよび選択された展開級数78は,適当な展開級数の係数80を導き出すために使用される。組織表面をモデル化するために,数学的な級数展開の,特別で有益な形は,ゼルニケ多項式である。各ゼルニケ多項式Znの係数anはたとえば,標準最小二乗整合法を使用して決定することができる。ゼルニケ多項式係数anの数は,(たとえば約27個の係数に)制限することができる。
【0040】
標高マップを形成するために,光学組織のモデル化のために一般的に便利であると考えられる一方,ゼルニケ多項式(およびおそらく,全級数展開)はエラーを導入することができる。それにもかかわらず,ゼルニケ多項式とそれらの係数および総計82との組み合わせは,波面標高マップ84の計算を可能にする。
【0041】
処理プログラムマップ86が,光学組織の規則(球状および/または円筒状)および不規則なエラーを除去するように,波面標高マップから計算され得る。処理プログラム86と特定のレーザシステムのレーザ切除パルス特性88との組み合わせにより,切除パルス位置,大きさ,形状,および/または数のテーブル90を作り上げることができる。このような切除テーブルの用意のための例示の方法および装置が,「レーザ眼外科用の走査スポット位置の形成」と題する,2000年3月14日に出願の特許文献9(米国特許出願第60/189633号)(開示全内容がここに参考文献として組み込まれる)に記述されている。切除テーブル90は任意に,局所的な加熱を避けるように個々のパルスをソート(sort)すること,処理プログラムが中断されるなとの場合に,不規則な切除を最小にすることにより最適化され得る。眼はつぎに,レーザ切除92の処理テーブル90にしたがって,切除することができる。
【0042】
直接の処理法60において,ハートマン−シャック勾配マップ74は,勾配マップまたは光学組織の表面を構成する部分の間で,積分94を行うことにより波面標高マップ84を計算するために,直接使用される。この積分工程は一般的に,図5に参照することで理解されよう。
【0043】
図5に示されているように,光学組織34の異なる部分68のz軸(眼に見える方向または前方―後方)にそって,相対的な高さまたは位置(標高)が,小型レンズにより定義される領域でもって,隣接した(光学組織の表面を構成する)部分の間の積分経路にそって積分することにより決定され得る。第一の可能な積分路96が,第一の部分の中央から第二の部分の中央への経路にそって,勾配76を積分することにより,高さの変化を決定する。閉じた積分路にそって(ときに,共通の(積分を開始する)開始位置と(積分を終了する)終了位置との間の二つ以上の各経路にそって)このような中央から中央への積分を続けることにより,計算された標高の精度から決定がなされる。このことは,たとえるならば,丘の上に立ち,閉じた経路を歩いて元に戻ると,標高が最初のところと同じに落ち着くことと同じである。勾配マップ全体にわたって相対的な標高を決定するために,光学組織34にわたって,多くの開いた経路および/または閉じた経路を辿って行くことができる。
【0044】
中央から中央への積分経路96の一つの欠点は,第一の部分68から第二の隣接した部分68への各積分工程が,異なる勾配により影響を受ける標高の全変化をもつことである。積分路の,第一の半分は,当該部分の勾配76により決定付けられる第一の部分68上に依然としてある。隣接した経路の中央への積分路の第二の半分は,第二の部分の勾配とともに優先して変化する標高変化をもつ。積分路の一区間にそって多数の勾配を操作しなければならないことを避けるために,エッジ−エッジの積分路98が,標高の変化が一つの勾配により,全体として優勢な積分路工程を与える。しかし,エッジ−エッジ積分路98が,中央―中央積分路96よりも長い経路をもつ。
【0045】
図5および図6Aに示されているように,共通の開始点から共通の終了点への,二つの別個の積分路は,閉じた積分ループを定義するために示されている。領域に中央点0,0で始まると,標高f(0,0)は,定数cに等しい。0,0から1,1への二つの積分路にそった積分は次のようにして実行できる。
Figure 0004167064
或る点の標高は,もちろん,その点に至る経路にかかわらず同じである。言い換えるならば,平面上の点の標高は,積分に独立である。波面が周波数カットオフをもつと,近所の点は不明な点またはノイズ点の再構成を可能にする。このことは,隣接した小型レンズからのハートマン−シャックデータが独立した推定量でない限り(それらが,冗長性をもたないように十分に離れている),使用すべき点のマトリクスにわたる線路積分が,ハートマン−シャックデータの偏心性および大きさに基づいた推定値を作り出すことを可能にする。この必要条件は,リプシッツ(Lipschitz)基準として数学的に定式化することができる。リプシッツ基準は,微分方程式y’の唯一の解がf(x, y)に等しいことを保証する不等式である。
【0046】
いくつかの異なる経路にそって,一つの点の標高を積分することにより,一つの経路にそって,悪いハートマン−シャックデータを検出することが可能である。一つの経路にそって計算した標高が,他の複数の経路により計算した標高と顕著に異なるとき,顕著に異なる標高を与える経路にそった測定が正しくない。
【0047】
図5に関連して記述したように,波面データを積分する他の方法は,積分路工程の間,一つの小型レンズに対応する一つの領域にわたってのみ進む経路を選択することである。このような一つの勾配のエッジ−エッジ経路98は中心−中心経路96と一緒に図6Aに図示されている。中心−中心経路96における各積分路工程は,二つの隣り合う領域72からの勾配の使用に関する。
【0048】
図7Aおよび図7Bに示されているように,各関連領域72の,伝えられたイメージ66は,ハートマン−シャック(複数の配列した)勾配またはマップの関連要素にしたがって,位置を変える。実際に,光学組織表面34が著しく傾くところでは,複数の配列した小型レンズ38の特定の小レンズからの,伝えられたイメージ66は,関連したセンサー領域72の域を越えて位置できる。このことは図7Aに略示されており,ここで,伝えられたイメージ66は,関連したセンサー領域の中心から1/2(Δx)よりも大きな距離,ずれている。
【0049】
波面の傾斜を正確に測定するために,小型レンズアレー38から各伝えられたイメージ66は,関連した小型レンズおよびセンサー領域に,適切に記録されるべきである。この記録は,図2に示されているように,瞳孔カメラ52で,瞳孔の位置を測定することにより実行することができる。
【0050】
図7Cを参照することで分かるように,瞳孔位置50a,50bは,伝えられたイメージ66が関連した小型レンズで適切に記録されることを保証するために,ハートマン−シャックデータと組み合わされ得る。特に,瞳孔および虹彩は波面センサーの領域結びつく。センサー36に対する瞳孔の測定位置に関し,瞳孔のイメージの位置,およびハートマン−シャック(複数の配列した)小型レンズ上の瞳孔の縁の位置は計算することができる。計算された縁の位置から,伝えられた各イメージ66は特定の小レンズと確実に関連付けすることができる。たとえば,瞳孔が位置50aに位置する場合,“o”で示された,瞳孔の縁内の,伝えられたイメージ66’はセンサー40に形成されよう。瞳孔の上方の縁の位置,および最上の伝えられたイメージ66’は知られていることから,伝えられたイメージ66’は関連したセンサー領域72とともに,適切に記録することできる。瞳孔が瞳孔位置50bに移動すると,“+”で示されたイメージ66および関連した小型レンズの記録は,瞳孔カメラ52からの瞳孔の位置データを使用して再度与えられる。
【0051】
図8Aおよび図8Bに示されているように,瞳孔および眼の位置はまた,波面データの正確な決定のために重要である。典型的に,患者は,ターゲット100を固定することにより,波面センサーシステムと眼Eとの整合の維持に役立つ。しかし,眼Eが,最初の位置(図8Aに示されているように)から,別の位置(図8Bに示されているように)に移行することは,患者がターゲット上の適切な位置に固定されていても,眼E(したがって,光学組織)における角度変位(すなわち,傾きまたは傾斜)を導く。都合良く,角度変位αは,瞳孔カメラが移行Δtの大きさおよびその期間の両方を示すことから,瞳孔カメラ52により与えられる情報を参照して決定することができる。このような角度変位の補償計算は,波面センサーデータから,正確で繰り返し可能な標高マップの取得を極めて容易にできる。
【0052】
本発明の,直接切除処理プログラム導出から得する波面センサーシステムの他の実施例が図9に示されている。図9のシステムの主要な要素は図2のものと同じである。さらに,図9は,適応性のある光学要素102を可変ミラーの形態で示す。光源イメージは可変ミラー102で反射して網膜Rに伝えられ,可変ミラーはまた,網膜Rとイメージセンサー40との間で,伝えられたイメージを形成するための光学経路にそっている。可変ミラー102は網膜上に形成されたイメージの歪みを制限するために,制御可能に変形し,波面データの正確を高める。図9のシステムの構成および使用は,特許文献10(米国特許第6095651号)(開示全内容がここに参考文献として組み込まれる)により正確に記述されている。
【0053】
他の実施例として,VISX, Incorporated社(米国カリフォルニア州サンタクララ)から入手可能なWASVESCAN(商標)波面システムも使用できる。このシステムは,特許文献11(米国特許第6155684号)(開示全内容がここに参考文献として組み込まれる)に記述されているように,可変ミラーを任意に使用できるものである。
【0054】
波面シミュレーション研究コンピュータプログラムおよび方法110のフローチャートが図10に示されている。シミュレーション110で,ハートマン−シャックデータおよび勾配が,合成サブルーチンA1−A5において,人工的にシミュレートされる。ノイズが,サブルーチンB1において,シミュレートされたハートマン−シャックデータに付加され,波面は,ゼルニケ法のサブルーチンC1,C2を使用して,合成されたハートマン−シャックデータから計算できる。この計算された波面は,直接計算サブルーチンD1,D2により,直接法を使用して計算されたものと比較され,波面の間の偏差は,比較サブルーチンE1−E3において決定することができる。
【0055】
合成プログラムは,工程A1において,ゼルニケ多項式Zkのベクトルを入力することにより始まる。ゼルニケ多項式から,合成波面が工程A2において計算でき,合成勾配が工程A3において計算できる。計算されたハートマン−シャックセンサーのスポット図は,工程A4において,合成勾配および光学システムの特性から,計算できる。ノイズは,工程B1において,(任意に,既知の基準表面と関連したハートマン−シャックセンサーデータとの間の偏差に基づいたノイズとともに)人工的に付加することができ,工程A4において,合成ハートマン−シャックセンサーのスポット図を与える。勾配は,工程A5において,このスポット図から予想することができる。
【0056】
ゼルニケ法ZMを使用して合成ハートマン−シャック勾配アレーから,関連した波面を計算するために,最小二乗整合分析が工程C1において,ゼルニケ多項式Zkの適切な係数akを決定するために使用できる。このゼルニケ法により波面は工程C2において計算できる。
【0057】
計算されたゼルニケ法の波面と比較して,直接法DM計算が,上記特許文献に記述されていうように,合成ハートマン−シャック勾配アレーを成分することにより,そして任意に,種々の既知の方法を使用して,データを円滑化することにより,実行できる。このことにより,工程D2において,直接法の波面の計算が可能となる。
【0058】
ゼルニケ法の波面ともともと合成された波面との間の偏差は,工程E1において計算でき,直接法の波面ともともとの波面との同様の偏差が工程E2において計算できる。これら二つの計算された波面の比較は工程E3において実行でき,ここで,偏差は2乗平均平方根偏差を使用して計算され,最終比較は,ゼルニケ法の波面と直接法の波面との間でなされる。
【0059】
図11Aは,たとえば,三ジオプトリーの計算された非点収差および+12ジオプトリーの球面エラーをもつ,対称的に計算された表面を図示する。図11Dはこの表面の地形表示である。
【0060】
図10のシミュレーション研究プログラム110を使用して,直説法DM計算が,図11Bおよび図11Eに示されているように,計算された直接法の表面を導出するために,上記のように実施された。もともとの表面と直接法の表面との間の偏差は,図11Cおよび図11Fに図示されている。これらの図は,上で示した直接法の実施例を特徴付けるために,採用できる技術を示す。
【0061】
本発明に関連した研究は,適切なゼルニケ多項式の適切な選択が上述した方法を使用して,計算を容易にすることを示している。特に,低次数のゼルニケ多項式の係数は視力に非常に影響を及ぼすと知られている。多数の付加的なゼルニケ多項式が考えられているが,分析のために,適度の中間次数のゼルニケ多項式を選択すると,現実の適用において,十分な精度が得られる。たとえば,図12に挙げられた,名が付された中間次のゼルニケ多項式と低次数のゼルニケ多項式のみを加えることにより,屈折率矯正の目的のために,十分な精度をもつ光学表面のプロセッサモデルが決定できる。
【0062】
除去された組織の形状は,上記概念を使用して容易に計算できる。典型的に,光線は,無限の距離,より短い距離(老眼の改善を望む年寄り患者の場合,1/3メートルのような距離),および/または多数の距離(多焦点補正が望ましいとき)のような所望の距離に焦点合わせするために調節される。眼により屈折した光線はときに,所望の方向に屈折するために調節される。この調節は,光線の勾配がたとえば無限の距離にある所望の焦点に向けられるように,組織の切除により,角膜の表面の傾斜を変えるために,切除形状を誘導することにより,行われる。この計算は,周知のスネルの法則を参照することで容易に行える。角膜の表面の所望の傾斜が一旦分かると,レーザは,上述したように,所望の形状を切除するためにプログラムされる。
【0063】
切除のために,組織の形状を計算するための他の方法が,上述したように直接計算された光学表面エラーから,所望の切除形状を導くことである。このような場合,光学表面を所望の形状に調節するために組織が切除される。
【0064】
切除された材料の深さと,光学表面における対応した変化との間の関係は,除去された材料の屈折率の変化に関連する。たとえば,除去されるべき材料の深さは,光学組織表面マップを量(n−1)(ここでnは角膜の屈折率)で割ることにより,計算することができる。この関係は単に,300年にわたって知られている,フェルマーの最短時間の法則を適用したものである。このような計算技術の一実施例が,特許文献12(米国特許第6271914号)(全開示内容が,ここに参考文献として組み込まれる)に開示されている。
【0065】
他の実施例において,複数の光学組織表面の測定が,断層波面エラーを得るためになされる。断層情報は,眼の中における,いろいろな深さでの,局所的な光学組織表面の複合像として,光学組織表面を記述する。この技術でもって,図13に示されているように,眼200の中における,角膜196,レンズ198または他の組織構造体により,異常が生じているかを決定することができる。この情報は,上述したレーザ切除手順でもって,特定の異常を処理するかどうかの決定に使用することができる。処理の有効性は,眼の異常の一部を選択的に処理することにより高めることができるが,ここで処理のための,選択された異常は,眼の全体的な異常の一部のみからなっている。処理のための,このような異常の選択は,異常に対応する組織構造体,および/または異常の程度を決定することにより,行われる。選択された異常は,光学処理表面を形成するために組み合わされ,選択された異常は,光学組織表面において,処理のための,選択された異常を補正する角膜の形状を適切に切除して形成することにより処理される。
【0066】
光学表面の測定が連続して何回か行われる。図13に示されているように,連続測定の第一の光路192および第二の光路194は互いに,角度202の角度で,偏向する。光の構成,好適には,スポット204が網膜206上に形成される。網膜206に形成された光の構成は,前の測定の間における光の構成の前の位置に対して,網膜上でずれる。網膜上に形成された第一の光の構成が,その第一の光の構成の特性が,網膜上に形成された第二の光の構成の第二の特性から分解できるように,第二の光の構成から十分に離れる。たとえば,スポットがエネルギー強度のピークをもつとき,スポットは,図14に示されているように,第一のスポット214の第一のピークが,スポット218の第二のピーク216から分解されるように,十分な距離210,分離される。光の構成は網膜上に連続して位置し,連続した光学組織の表面を構成する部分のそれぞれの勾配が得られる。
【0067】
図15に示されているように,眼200は上述したように,可視固定ターゲット100上で固定され続ける一方,測定の光路は固定ターゲットに対して角度を付けて偏向する。好適に,固定ターゲット100は,眼の遠近調節がリラックスするように,調節される。しかし,眼が遠近調節するように,固定ターゲット100を調節することが望ましい。遠近調節の間,眼の異常が変化することがある。眼の測定の間,遠近調節をなすことは,眼の組織構造に異常を限定するのに役立つ。眼の光軸は上述したように,瞳孔カメラ52と整合する一方,眼は固定ターゲット上に凝視する。固定ターゲット100および瞳孔カメラ52は光学的に,ビームスプリッタ228および230により,それぞれ測定路と合わされる。上記の可変ミラー224が,測定路の角度方向を偏向するために,連続した測定の間で角度方向および網膜上に形成された光の構成の位置を分離するために傾斜させられる。ミラー224の傾斜は,上述したようにプロセッサ222からの命令により,または,プロセッサの制御の下で,ジンバル226上にミラー224を備えることにより行える。小型レンズ,イメージセンサーなどの上記した要素は,簡単化のために,図15では省略されている。眼に対する波面センサーの測定路を偏向する他の技術は,固定測定路に対して眼の位置および角度方向を調節するものである。眼の位置および/または角度位置は,図7C,図8Aおよび図8Bに示されているように,角度変位αを形成するように変えることができる。個々の測定に関連した光線束が前の測定とは異なる組織領域を通過するとき,測定された光学表面は測定の度に,異常が眼の中で位置するところに依存して変化し,このことにより,異常を誘発する組織を識別できる。
【0068】
測定路の角度向きの程度は,波面センサーシステムの空間解像度および所望の組織深さ解像度に関連する。角膜は,角膜の光学的に使用される部分にわたって,レンズから約3mmのところにあり,測定路にそった,レンズに対する角膜の位置は連続測定の間変化する。小型レンズの間の間隔が0.4mmとなる複数の配列した小型レンズに対して,対応する空間的な繰り返し率は,1mmあたり2.5サイクルとなる。ナイキストサンプリング基準を適用して,最大の分離可能な空間的な繰り返し率は,そのサンプリング率の半分である。小型レンズの間の空間が0.4mmであるとき最大の分離可能な繰り返し率は,1mm当たり約1.26サイクル,または1サイクルあたり0.8mmとなる。小型レンズの間の空間が0.1mmである複数の配列した小型レンズに対して,最大の分離可能な繰り返し率は,1mm当たり約5サイクル,または1サイクルあたり0.2mmとなる。光学組織表面における,容易に分離可能な変化を得るために,測定路の角度偏向は,レンズの位置に対する角膜の位置を,どの二つの連続測定の間でも,少なくとも約0.1mm,より好適には0.2mm,さらに好適には0.4mm,理想的には0.8mm,移動させるべきである。対応した角度偏向は,少なくとの約2度,好適には約4度,さらに好適には8度,理想的には16度である。
【0069】
いくつかの角度偏向によるデータが連続して収集され,プロセッサ222のメモリーに記憶される。アレーの精度は,上述したようにチェックされる。各測定に対して,光学組織表面は,ゼルニケ多項式(完備のp項をもつ)のような多項式で表される。眼の光軸にそった波面Wは次の式から計算される。
【0070】
Figure 0004167064
【0071】
ベクトルLがnp次元をもち,測定1から測定nまでの異なる連続した位置で測定された波面に対応する。Mは所望の断層マトリクスで,好適に,特異値分解法を使用して,ロー(列)毎に解かれる。星明かり波面の断層測定に対する一つの適切な技術が,非特許文献1(Nature(2000年1月,第403巻,第54-56頁))(開示全内容がここに参考文献として組み込まれる)に記述されている。所望の断層マトリクスMは,眼の変わる層での局部的な光学組織面に関連し,眼の層における局部的な光学組織表面を計算するために使用することができる。
【0072】
これに代えて,局部的な光学組織表面は,直接積分により決定してもよい。眼のいろいろな層に対応する勾配は,連続して収集されたデータおよび測定路の対応した角度偏向から決定される。各層の勾配が決定されると,各層における局部的な光学組織表面は,上述したように,勾配を直接積分することにより解かれる。好適に,測定路の角度は,図15Aに示されているように,各組織層における,測定された勾配の経路のサンプリング期間の整数倍に対応する分,偏向される。たとえば,小型レンズの間隔が0.4mmの距離232で,角膜の層236とレンズ層238との距離234が約3mmであると,偏向角202は好適に,測定間で,約8度である。図15Aから分かるように,サンプリング期間の距離232,偏向角202,距離234は,角膜層236およびレンズ層238のそれぞれで,第一の測定された勾配経路240および第二の測定勾配路242の完全な重なりを形成する。ここ使用しているように,用語の「組織層および/または構成」は,一つの層内の,いくつかの組織層および/または構成を包含するために使用される。たとえば,眼の水晶レンズは,いくつかの組織層からなる屈折率分布レンズである。ここで使用されているように,レンズの局所光学組織表面はいくつものレンズ組織の層を含み得る。
【0073】
図15Aに示されているように,測定勾配経路240および242は1の整数倍である。局所的な組織勾配242,244および245は,測定勾配246,248および(簡単化のために省略された)他の要素から決定される。測定された勾配246は測定された勾配経路242にそった局所的な組織勾配244および245の合計である。十分な数の勾配が,局所的な組織勾配を唯一決定するために,異なる偏向角で測定される。このシステムは好適に,二つ以上の組織層を使用し,局所的な勾配の計算は,さらに他の組織層へと拡張することができる。
【0074】
眼の異なる層に対応する局所的な光学組織表面が決定された後に,処理のための異常は選択される。好適に,処理のための異常は,眼の中の異常の,対応する組織および異常の程度の両方を選択することにより,決定される。異常の程度は,ゼロ,第一,第二,第三のような数値を付すことができる。図12に示されているように,最上で第二欄のn(ρ)は,いくつかのゼルニケ多項式の項の次数に対応する数値を挙げている。異常は,ゼルニケ多項式に加え,他の適当な特性のシステムにより特徴付けし,順序付けすることができる。たとえば,光学組織表面の異常は,古典的なザイデル異常の用語により,またはまた異常の形状に対応する残りの光学表面をもつ双円錐表面のように特徴付けすることができ,後者の場合,適当に,次数がその異常に付された。上述したように,直接積分により得られる,局所的な光学組織表面の場合,各局所的な表面を,異常として考えてもよく,その表面にたとえば三次のような所望な任意の次数を付してもよい。患者がレンズの組織に対応する眼の層に異常をもつかもしれない。このレンズ異常が三次の乱視に対応すると,二次の乱視を矯正する角膜の,対応する乱視形状を切除することにより,このレンズ乱視を強制することは,一般的に満足にいくものである。しかし,レンズ異常が,三次の三弁(trefoil)のようなより不規則な形状に対応すると,レンズの三次の異常を矯正するために,角膜を切除することは望ましくない。したがって,眼のレンズに対応する三次の異常は,処理のために選択されない一方,眼のレンズに対応する二次の異常は処理のために選択される。かくして,三次の三弁のような乱視異常および二次の乱視異常の両方は,それらが眼の角膜に対応するときに,処理のために選択される。処理のために選択される眼の異なる層からの異常は光学処理表面を形成するために組み合わされる。
【0075】
異常の選択方法を説明するフローチャート250が図16に示されている。このフローチャートは好適に,プロセッサ222により読みとられる,機械読み取り可能な指示のセットにより実行される。局所的な光学組織表面の異常は252で特性づけられ,次数が付される。局所的な異常に対応する組織構成が254で決定される。組織構成は,256で質問される。組織構成が260でレンズに対応するかをテストされる。組織構成が,レンズに対応するときは,異常の次数は,262でテストされる。異常の次数は,二次に等しいかそれよりも小さいとき,異常は,258で処理のために選択される。異常の次数が二次よりも大きいとき,異常は,264で処理から除外される。異常が角膜またレンズのいずれの組織構成に対応しないときには,異常は測定のエラーにより生じ,処理から除外される。処理のために選択された異常を加えることは,266で光学処理表面を形成することである。眼から除去される組織の形状は,上述したように,光学組織表面のと同様に,光学処理表面から計算される。眼の角膜は,上述したように,光学処理表面の異常を矯正するために切除される。
【0076】
上述の断層技術は,眼の光軸にそった眼の波面マップの良好な推定を与えるという利点をもつ。したがって,上述のように,一連の連続した測定の間,波面センサーの測定路を偏向する技術は,眼の波面マップをより正確に測定するために使用してもよい。
【0077】
特定の実施例が,例示として,そして理解を容易にするために,詳細に記述されてきたが,種々の順応,変更,修正は当業者には明らかであろう。本発明は,小型レンズを使用して,波面システムを参照して記述されているが,眼を通過する光の角度を測定する他の適切な波面システムも利用することができる。たとえば,光線追跡誤差測定,ツシェリング(tscherning)誤差測定,動的検影法の原理を使用するシステムも本発明とともに使用することができる。これらシステムはそれぞれ,TRACEY TECHNOLOGIES(テキサス州ベライヤー),WAVELIGHT(ドイツ,アーランゲン),NIDEK, Inc.(カリフォルニア州フレモント)から入手可能である。本発明はまた,特許文献13(米国特許第6099125号),特許文献14(米国特許第6000800号),特許文献15(米国特許第5258791号)(開示全体がここに参考文献として組み込まれる)に記述されているような,空間的に分離された屈折計で実施することができる。本発明より,効果を奏する処理は,眼内レンズ,コンタクトレンズ,眼鏡,およびレーザと一緒に使用する他の外科方法を含む。したがって,本発明の範囲は特許請求の範囲のみに限定される。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】 図1は,レーザ切除システムの斜視図である。
【図2】 図2は,波面センサーデータから,角膜切除処置処方箋またはプログラムを直接決定するための方法およびシステムを略示する。
【図3】 図3は,波面センサーデータを使用して角膜切除処理プログラムを直接決定する方法,ならびに波面センサーデータから導かれる角膜組織の,数学的に級数展開モデルを使用して,角膜切除処理プログラムを間接的に決定する方法を略示するフローチャートである。
【図4】 図4は波面センサーデータを使用して光学センサーの勾配を決定する方法を略示する。
【図5】 図5は,標高マップを導き出し,かつ/または波面センサーデータの精度を検証するために,勾配にわって積分するための,他の閉じた積分経路を略示する。
【図6】 図6は勾配アレーを計算するために使用することができる波面センサーにより形成されるデータを略示する。
図6Aは,波面勾配から標高マップを導くための,他の積分経路を略示する。
【図7】 図7Aから図7Cは,診断システムの瞳孔カメラを使用した,眼の光学組織および波面センサーデータの記憶を略示する。
【図8】 図8Aおよび図8Bは,固定ターゲットに対する眼の傾斜,および傾斜の測定により波面センサーデータを矯正するための方法を略示する。
【図9】 図9は,本発明の方法とともに,使用に適した他の波面センサーシステムを略示する。
【図10】 図10は,波面センサーデータからの,波面標高および矯正マップの直接の計算の精度を決定するための波面シミュレーション研究用コンピュータプログラムのフローチャートである。
【図11】 図11Aから図11Fは,図10のフローチャート図にしたがった,級数展開モデルから導き出されたもともとの理論表面と,光学表面の直接の計算とを比較する,シミュレートした波面データを図示する。
【図12】 図12は,低次および中間次のゼルニケ多項式を挙げ,光学表面の級数展開モデルにおいて使用するための,選択されたゼルニケ級数を示す。
【図13】 図13は角膜,レンズおよび網膜の間から,眼の異常の原因を検出するための方法を図示する。
【図14】 図14は図13の方法において使用する眼の網膜を照らす,二つの連続した光のスポットを示す。
【図15】 図15は眼の波面エラーマップの断層情報を得るために使用される波面測定システムを示し,図15Aは眼の角膜組織層およびレンズ組織層における,重なった測定路を示す。
【図16】 図16は組織構成および異常の程度に対して処理のための異常を選択するフローチャートを示す。

Claims (6)

  1. 網膜と光学組織とを有する患者の眼の治療装置であって、
    光が前記光学組織を通り、前記網膜に至るように向けられるイメージ光源と、
    前記網膜から前記光学組織と通って送られるイメージを検知できるように方向付けされ、前記光学組織の表面を構成する複数の配列した部分のそれぞれの勾配を示す信号を生成する波面センサーと、
    前記光学組織の矯正のためのマップを決定するために、前記配列した部分のそれぞれの勾配の積分を前記配列した部分の間の積分路にそって行う積分モジュールを含むプロセッサと、
    を含み、
    プロセッサは、前記波面センサーにより生成されて信号が示す勾配の精度を、ループとなった閉じた積分路にそって積分することにより決定することを特徴とする装置
  2. 前記プロセッサが、前記光学組織の表面形状の標高マップを決定する、請求項1に記載の装置
  3. さらに、前記積分路にそった積分により、標高が計算される、請求項1に記載の装置
  4. 前記閉じた積分路が、積分を開始する開始点、積分を終了する終了点、前記開始点と前記終了点とを結ぶ第一の積分路、および前記開始点と前記終了点とを結ぶ第二の積分路を含み、第一の積分路と第二の積分路はそれぞれ異なる経路をもつ、請求項1に記載の装置
  5. 前記閉じた積分路が、前記配列した部分のうちの第一の部分の勾配、前記配列した部分のうちの第二の部分の勾配、そして前記配列した部分のうちの第三の部分の勾配にそれぞれ対応して、前記第一の部分の第一の中央から前記第二の部分の第二の中央に、前記第二の中央から前記第三の部分の第三の中央に、そして前記第三の中央から前記第一の中央に戻る積分路である、請求項1に記載の装置
  6. 前記閉じた積分路が、前記配列した部分のうちの隣接する第一の部分と第二の部分の間の第1の位置から、該第二の部分と前記第二の部分に隣接する前記配列した部分のうちの第三の部分との間の第2の位置へ、さらに該第三の部分と隣接する前記配列した部分のうちの第四の部分との間の第三の位置へ、さらに該第三の部分と前記配列した部分のうちの前記第三の部分に隣接する第四の部分との間の第四の位置へ、そして前記第一の位置に戻る積分路である、請求項1に記載の装置
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