JP4166946B2 - フィルターを備えた発声バルブ - Google Patents

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Description

【0001】
本発明は、気管瘻に利用される発声バルブ(vocal valve)に関する。
【0002】
気管瘻は、例えば、痰(phlegm)の形成のために患者が自然に呼吸するのが困難な場合、あるいは、患者が、喉頭と声帯の切除を伴う喉頭切除術を受け、気管と口との間が接続されなくなった場合に開口される。後者の場合には、多くの場合、患者が声帯がないにもかかわらず発声することを可能にするために、音声プロテーゼ(voice prosthesis)が、フィステル内において気管と食道との間の壁に手術によって配置され、食道へ音声プロテーゼを通して空気を圧することによって発声がなされるが、そこでは粘膜が振動されることによって発声がなされる。このことを可能とするためには、発声がなされる時に気管瘻を閉鎖する必要があり、これは、患者が指で気管瘻を覆うこと、あるいは気管瘻内に配置されたバルブを手動で閉じることの何れかによって行われる。声帯がまだ有る場合にも又、気管瘻を閉じることが必要である。何故ならば、さもなければ、空気は、通常のように声帯と口を介して漏れ出る代わりに気管瘻を通って漏れ出るからである。しかし、通常のように声帯と口を介して漏れ出る場合には、呼気は声帯と口を介して通常の方法で行われることが可能であるので、バルブは吸気時に開き呼気時に閉じる逆止弁を備えている。
【0003】
喉頭切除された患者に対する自動発声バルブが提案されており(米国特許第4582058号及び米国特許第4325366号)、これらは、通常の呼吸の間は開かれているが、患者が発声したい時に気管内に生じる圧力衝撃(pressure shock)によって閉じる。このタイプのバルブは、気管カニューレを有する患者について、十分に上手く機能せず、従って、患者の首の皮膚に対して直接テープでとめられる。
【0004】
気管瘻を通して吸気及び呼気を行う喉頭切除された患者については、再生式湿気及び熱交換器(regenerative moisture and heat exchanger)、いわゆる「人工鼻」が気管瘻に接続される。それは、フィルターとして形成され、このフィルターは呼気から湿気及び熱を吸収し、次いで前記湿気と熱を吸気へ放出する(スェーデン特許公告第348643号及びスェーデン特許公告第467195号)。国際公開公報第95/17138号によると、このようなフィルターを、気管瘻を閉じるために手動操作され得るバルブと組合せることも又提案されている。
【0005】
気管切開された患者は、多くの場合、何らかのタイプのカニューレ、即ち、気管瘻を通過して気管の中へ通された湾曲チューブを有しており、その目的は気管瘻を開状態に維持すると共に、声帯バルブ及び/又は湿気及び熱交換器のためのホルダーを形成することであるが、これらはその代わりとして、患者の首の皮膚に対して直接テープでとめられ得る。
【0006】
本発明に従った発声バルブは国際公開公報第95/17138号に開示された種類のものであり、発声バルブを通した呼吸時に湿気及び熱を交換するためのフィルターと、フィルターを受容すると共に、気管瘻へ接続されるフィルターの一方の側面における第1開口部と、周囲と連通している、フィルターの反対側の側面における少なくとも一つの第2開口部とを有するハウジングと、フィルターを通る空気経路を遮断するための手動操作されるバルブ要素と、を備える。
【0007】
国際公開公報第95/17138号に従った発声バルブでは、フィルターを介して気管瘻を通る空気流が、バルブ要素の手動操作時に前記第2開口部を閉じることによって遮断される。これは、明らかな欠点を含んでいる。何故ならば、密閉された閉鎖を果たすために、開口部の平面、従ってフィルターの開口部の平面には、限られた面積だけしか提供することが出来ず、他の点では、発声バルブは必要なフィルター容積において過度に高くなるであろう。フィルターの小さな面積は、不十分な湿気と熱の交換を意味する。
【0008】
本発明の目的は、この欠点を克服することであり、それは、請求項1の特徴を有する、本発明に従った発声バルブによって達成され、それによって、フィルターの構成に関して大きな自由度が得られ、フィルターは、最適な湿気及び熱交換機能のための大きさにされることが可能で、同時にバルブ要素は小さな面積だけを閉じさえすれば良く、そのことはバルブ要素の操作において非常に小さな力だけを必要とする。一方、バルブ要素が、国際公開公報第95/17138号に従った発声バルブにおいて、最適フィルター面積を閉鎖する場合には、相当に大きな力が必要とされ、このことは、発声バルブがカニューレを備えている場合には特に、これが患者の非常に繊細な領域の中へ通っているので、患者にとって不便を生じさせる。最近手術を受けた上記の全ての患者は、非常に影響を受け易い。
【0009】
本発明をより詳細に説明するために、以下で、幾つかの実施形態が添付の図面を参照して説明される。
【0010】
図1から図3を参照すると、そこに示された本発明に従った発声バルブの実施形態は、気管瘻に挿入されると共に2つの柔軟なウィング又はフラップ11を備えている湾曲気管カニューレ10を備えており、この柔軟なウィング又はフラップ11は、首の周りを通されると共にフラップへ取付けられたストラップにより首の皮膚に対して固定される。フラップ11は気管カニューレ上のフランジ12の下方側へ取付けられ、人工呼吸器又は他の機器に接続するためのISO錐状体(ISO-cone)から成るはめ輪14が、フランジ12と気管カニューレに備えられたエンドフランジ13との間に提供され、このエンドフランジ13は、発声バルブのシート面13Aを形成する。ハウジング15は、はめ輪14上に取付けられ、両端で開口している比較的柔軟なプラスチックのソケットを備えている。断面においては、このハウジングは、図2で見ることが出来るような、丸められた角部を備えたほぼ矩形状をしている。ハウジング内部には、2つのフィルター本体16が提供され、これらはエンドグリッド17とハウジング内に突出している気管カニューレ10の部分との間でハウジング内に保持される。フィルター本体は、例えば、塩化カルシウムを含浸させた発泡ポリウレタン等のフォーム材料から構成することが出来る。
【0011】
発声バルブを通した呼吸においては、呼気は、気管カニューレ10を通過し、シート13Aによって包囲されている開口部を通ってハウジング15に入り、次いでフィルター本体16を通って周囲空気へ進むようにされると共に、吸気は、気管カニューレ10の中へ反対の方向で進む。フィルター本体は再生式湿気及び熱交換器を構成し、熱と湿気はフィルターによって呼気から吸収され、次いで吸気へ放出される。
【0012】
発声がなされる時、発声バルブを通る空気の経路は遮断され、呼気は声帯を介して又は(喉頭切除された患者に関しては)気管と食道との間の壁の音声プロテーゼを介して口を通して放出されるようにされるが、このことは、図4に従い指でハウジング15を変形させ、ハウジングをシート面13Aと密閉するようにして係合させることによって果たされる。バルブハウジング15の変形を容易にするために、シート面13Aの上方で中央に位置したハウジングの部分15′は、バルブハウジングの他の部分よりも薄い壁で作られている。バルブハウジングのこの部分には弱め線(weakening lines)18が不透過性の十字(impervious cross)のように設けられ、例えば鉛筆のような鈍器(blunt object)をこの十字の中央に押圧することによって、フィルターハウジングの壁は貫通されることができ、四つのとがったフラップが確立され、開口部がハウジングの壁に設けられて、この壁を通して、図5のように、吸引用カテーテル19が気管の中へ気管カニューレ10を通して導入されることができ、痰の発生量が多く、そのような痰を咳で除去するのが困難な患者において、気管から痰を吸引して取り去るようにする。バルブハウジング15の材料が比較的柔軟な場合、フラップは、吸引用カテーテルを抜き取った後、それらのもとの位置を維持し、ハウジング壁の開口部が再びほぼ閉じられるようにする。少数の患者だけが痰の吸引を必要とするので、この実施形態は有利である。他の案は、発声バルブを、吸引ポートを有するものと有していないものとの2つの型で供給するようにすることであり、これは、痰の吸引を必要としない患者は、発声バルブに開口吸引ポートを有することを望まないためである。
【0013】
図6から図9に開示された本発明に従った発声バルブの実施形態では、バルブハウジングは2つの部分15A及び15Bで作られ、部分15Aはボトムプレートを構成し、このボトムプレートは、上方に突出するカラー20においてISO錐状体14上へ進められている。部分15Bは、ボトムプレート15A上のカバーを構成し、フィルター本体16を囲うためにボトムプレートと接続される。カバー15Bは、バルブハウジングの内部を周囲空気とフィルター本体16を介して連通するために、幾つかの開口部21を有している。
【0014】
発声バルブを通る空気経路を遮断するために、図10に示し、且つ上述したように、カバー15Bは、カバーをバルブシート13Aと密閉するようにして係合するように指で変形され得る。この場合では、ボトムプレート15Aは酸素ホースの接続のためのニップル22を備えている。このニップルは固定的に配置構成されたニップルで構成されることができ、あるいは、バルブハウジングの接続アパーチャの中へ挿入される別体のニップルで構成されることも出来る。
【0015】
上述したのと同じ方法で、吸引用カテーテルはバルブハウジングのアパーチャを通されることができ、前記アパーチャは、図5に開示されたのと同様に、カバー15B上の不透過性の十字18を貫通することによって開かれる。
【0016】
図6から図9の実施形態の変形例が図11に開示されており、この変形例においては、気管カニューレ10は省略されており、フラップ11はボトムプレート15Aの下方側に直接取付けられている。この実施形態では、カラー20が上方に延設され、シート面13Aを形成する。フラップ11が患者の首の皮膚に対してテープでとめられることによって発声バルブが患者へ取付けられる場合、カラー20によって形成される経路は気管瘻と直接連通する。
【0017】
軟質材料で製造する代わりに、バルブハウジング15は硬質材料で製造することが可能で、別体のバルブ要素をバルブハウジング内にバルブシート13Aと協働するように提供することができ、前記バルブ要素はバルブハウジングの外部から操作される。例えば、バルブ要素は、部分15′においてバルブハウジングのアパーチャを通って突出しているバルブステム(valve stem)を有することが出来る。このような実施形態は図12及び図13に開示されている。バルブディスク23は、カバー15Bにその内部において接続され、カバーのアパーチャ25を通して突出しているソケット24を有している。通常、バルブディスク23とソケット24は、図12に示されるこの位置にあるが、図13に示されるように、バルブディスクを弾性変形してシート面13Aと密閉するようにして係合するように指によって外側から手動操作することが出来る。吸引用カテーテルが、図14に開示されているように、バルブハウジングを通過され、気管カニューレの中へ及びそれを通って進まされることを可能にするために、不透過性の弱め線を十字形に、上述したようにソケット24の底壁26に設けることが出来る。
【0018】
図16及び図17に従った実施形態では、バルブハウジングは、底部分15Aとカバー部分15Bを備えていて、底部分15Aは柔軟なフランジ11Aに取付けられ、カバー部分15Bは底部分15Aに接続される。カバー部分15Bの内部にはフィルター本体16が提供される。このカバー部分は不透過性の中央部分28の周りに幾つかのアパーチャ27を伴って製造され、バルブハウジングの内部を周囲とアパーチャ27を覆うフィルター本体16を介して連通するようにする。カバー部分15B内のプレート29は中央リング30を有し、フランジ11Aが、リング30を気管瘻の中央に位置させた状態で患者の首の皮膚に対してテープでとめられることによって発声バルブが患者に取り付けられる場合、この中央リング30を通してバルブハウジングの内部が気管瘻と連通する。患者が指で、カバー部分15Bの不透過性の中央部分28上を押圧する時、図17に示されるように、発声バルブを通る空気経路を遮断するために、前記部分は変形され、又、フィルター本体16は密閉するようにしてリング30によって形成されたシート面13Aに係合され、それに対して加圧される。
【0019】
この実施形態では、フィルター本体16を備えたカバー部分15Bは、交換可能フィルターユニットを含むことができ、底部分15Aは、気管瘻を覆う交換可能フィルターユニットの利用のために恒久的に使用されることが意図される。
【0020】
以上で説明された、本発明に従った発声バルブの全ての実施形態においては、気管瘻と連通する開口部が発声バルブを通る空気流を遮断するために閉鎖され、その結果として再生式湿気及び熱交換フィルター(regenerating moisture and heat exchanging filter)は、発声バルブが気管瘻から許容できないほど大きく突出することなく、最適な機能のために必要な寸法にされ得る。発声バルブが気管カニューレと組合される場合に、最適な寸法にされたフィルターが、カニューレの端部(シート面13A)の内方に配置されることが出来る。
【0021】
本発明に従った発声バルブは、特に、バルブハウジングの壁が変形されて発声バルブを閉じ、それを通る空気流を遮断するようにする場合に、この実施形態の発声バルブが可動部分を持たないことから、製造コストが低くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明に従った発声バルブの第1実施形態の側面図であり、部分的に軸断面を示している。
【図2】 図2は、再生式湿気及び熱交換器のためのフィルターの端面図である。
【図3】 図3は、フィルターを受容するハウジングの平面図である。
【図4】 図4は、フィルターを受容するハウジングの断面図であり、フィルターを通る空気経路を遮断する手動操作を図示している。
【図5】 図5は、発声バルブを通過する吸引用カテーテルを伴った、図1に対応する図である。
【図6】 図6は、本発明に従った発声バルブの第2実施形態の図1と同様の図である。
【図7】 図7は、フィルターを受容するハウジングの側面図である。
【図8】 図8は、フィルター及びそのフィルターを受容するハウジングの断面図である。
【図9】 図9は、ハウジングの平面図である。
【図10】 図10は、図4と同様の図であり、フィルターを通る空気経路を遮断する手動操作を図示している。
【図11】 図11は、図6から図9の発声バルブの変形例の図6と同様の図である。
【図12】 図12は、本発明に従った発声バルブの第3実施形態の図1と同様の図である。
【図13】 図13は、図12の実施形態の図4及び図10と同様の図である。
【図14】 図14は、図12の実施形態の図5と同様の図である。
【図15】 図15は、本発明の第4実施形態の軸断面図である。
【図16】 図16は、図15の実施形態の平面図である。
【図17】 図17は、図4と同様の図であり、図15及び図16に従った発声バルブの手動操作を図示している。

Claims (12)

  1. 気管瘻に接続する発声バルブであり、
    前記発声バルブを通した呼吸において湿気及び熱を交換する再生式フィルター(16)と、
    前記フィルター(16)を受容すると共に前記フィルターの前記気管瘻に接続される側における第1開口部(13A)前記フィルター(16)の反対の周囲と連通している側における少なくとも一つの第2開口部(21)とを有するハウジング(15)であって、呼気が、前記第1開口部(13A)を通って当該ハウジング(15)に入り、次いで前記フィルター(16)を通過し、前記少なくとも一つの第2開口部(21)を通って周囲空気へ進むようになっているハウジング(15)と、
    前記フィルターを通る空気経路を遮断するための手動操作されるバルブ要素(15′、23)と、を備える発声バルブであって、
    前記ハウジング(15)の内部へ突出しているシート面(13、13A)が、前記第1開口部を画定するバルブシートを構成し、前記バルブ要素(15′、23)の手動操作でバルブ要素(15′、23)によって前記第1開口部(13A)を遮断するように密閉係合されることを特徴とする、発声バルブ。
  2. 前記第1開口部(13A)が、気管カニューレ(10)の端部開口部を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の発声バルブ。
  3. 前記第1開口部が、前記ハウジング(15)によって構成されるシール面(13A)によって周囲を囲まれていることを特徴とする請求項1に記載の発声バルブ。
  4. 前記シール面(13A)が、前記ハウジングの内部に突出しているカラー又はリング(20;30)の端部表面によって構成されることを特徴とする請求項3に記載の発声バルブ。
  5. 前記手動操作されるバルブ要素が、前記ハウジング(15)の壁部分(15′)を備え、この壁部分(15′)が、前記第1開口部(13A)と密閉係合されるために弾性的に変形され得ることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の発声バルブ。
  6. 前記手動操作されるバルブ要素が、前記ハウジング(15)の壁部分(28)を備え、この壁部分(28)が弾性的に変形されることが可能であって前記壁部分(28)と前記第1開口部との間に配置されたフィルター(16)を押圧し、前記第1開口部に対する前記フィルターの圧縮の下で、前記第1開口部と密閉係合するようにすることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の発声バルブ。
  7. 前記ハウジング(15)が、比較的柔軟な材料で構成されることを特徴とする請求項5又は6に記載の発声バルブ。
  8. 前記ハウジング(15)の弾性的に変形可能な壁部分(15′)が薄くされた壁厚さを有していることを特徴とする請求項5から7の何れか一項に記載の発声バルブ。
  9. 前記ハウジング(15)が、両端部で開口しているカラー(20)であって、該カラー(20)の周りに配置されている2つのフィルター本体(16)の間に配置されている前記第1開口部を有するカラー(20)を備えることを特徴とする請求項1に記載の発声バルブ。
  10. 前記手動操作されるバルブ要素が、前記ハウジングの外側において使用可能な操作部材(24)を有するバルブディスク(23)を前記ハウジング(15)内に備えることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の発声バルブ。
  11. 前記バルブディスクが、前記ハウジングへ接続される弾性的に変形可能なプレート(23)を備えていることを特徴とする請求項10に記載の発声バルブ。
  12. 前記ハウジング(15)が、吸引用カテーテルポートの開口の際に前記ハウジングを貫通するために不透過性の弱め線(18)を十字形に備えていることを特徴とする請求項1から11の何れか一項に記載の発声バルブ。
JP2000550420A 1998-05-14 1999-05-12 フィルターを備えた発声バルブ Expired - Lifetime JP4166946B2 (ja)

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