JP4166811B2 - カルシウム非依存性である新規なホスホリパーゼa2、その遺伝子及びそのプロモーター - Google Patents

カルシウム非依存性である新規なホスホリパーゼa2、その遺伝子及びそのプロモーター Download PDF

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本発明は、カルシム非依存性である新規なホスホリパーゼA2、より詳細には、カルシウム非依存性のホスホリパーゼA2であって、カイニン酸又は電気刺激などの外的刺激により海馬特異的に発現するホスホリパーゼA2であって、配列表の配列番号1、5若しくは8に記載されるアミノ酸配列、又はそれらのアミノ酸配列の中の1個以上のアミノ酸が他のアミノ酸で置換され、欠失され、1個以上のアミノ酸が付加されてなるアミノ酸配列を有する新規なホスホリパーゼA2に関する。
また、本発明は、イントロン中に存在する塩基配列であって、カイニン酸刺激又は電気刺激などの外的刺激によりRNAの転写開始を可能にし得る塩基配列を有する遺伝子、それを用いた発現を調節する方法、及びそれを導入した生物に関する。さらに、本発明は、本発明のホスホリパーゼA2を含有してなる医薬組成物に関する。
真核生物の遺伝子においては、タンパク質のアミノ酸配列を規定する遺伝情報が文壇されている場合が多い。タンパク質のアミノ酸配列の遺伝情報を有する部分をエキソンといい、アミノ酸配列の遺伝情報を持たない部分はイントロンと言われている。遺伝子DNAが転写されてmRNA前駆体が形成された後、スプライシングされて、イントロン部分が切り取られ、成熟したmRNAとなる。
このようなイントロン部分が真核生物に何故存在しているのかという理由は未だ明らかにされていない。しかし、多くの場合はひとつのエキソンが、タンパク質の特定のドメイン(機能領域)としてコードされており、進化の過程で同じような機能を有する新たなタンパク質が必要とされる場合に、異なるエキソンの組み合わせにより必要なタンパク質を生成させることができるようになったとも考えられている。
スプライシングを受ける前のmRNA前駆体のスプライシングは、イントロンを切り取るだけでなく、エキソン部分も切り取り同種の機能を有する異なるタンパク質をコードするmRNAとする場合も知られている。
例えば、カルシトニン遺伝しは、A、B、C、D、カルシトニンCCP、CGRP(Calcitonin gene related peptide)の6個のエキソンを有している。エキソンA及びエキソンBは非翻訳領域であり、翻訳領域はのこりの4個のエキソンである。細胞の核内で転写されたときは、全てのエキソンを含んでいるが、スプライシングの過程は、器官によって異なってきている。例えば、甲状腺C細胞では、6個目のCGRPのエキソンもスプライシングされて、その結果翻訳産物のタンパク質はC−D−カルシトニンCCPからなるペプチドとなり、主として血清Caの低下作用をするものとなる。また、視床下部の細胞では5個目のカルシトニンCCPのエキソンもスプライシングされて、その結果翻訳産物のタンパク質はC−D−CGRPからなるペプチドとなり、主として疼痛、自律神経活動の制御を担うペプチドとなる。
このように、エキソン部分をいくつかに分けておくことにより、必要に応じていくつかのエキソンを結合した異なるタンパク質を生成させることができるようになる。このような目的のために、エキソンを分けることは説明されているが、イントロンの必要性については、エキソン部分を作ること以外には殆ど解明されていない。イントロンの多くはその末端に5’−GT及びAG−3’の配列を有し、中間にピリミジンに富む領域があることが知られており、この両末端の配列を認識してスプライシングが行われると考えられている。
ホスホリパーゼA2は、哺乳類や微生物などに広く分布しており、その多くは膜結合の酵素であり、膜リン脂質の代謝に関与している。85kDa細胞質型ホスホリパーゼA2(cPLA2α)は、ホスホリパーゼA2の1種であり、主として膜リン脂質からアラキドン酸を切り出し、アラキドン酸から誘導されるプロスタグランジン、トロンボキサン、ロイコトリエンなどのアラキドン酸カスケードによる生理活性物質を産生する。また、脳内においても遊離されたアラキドン酸が種々の神経機能に関与することが知られており、本発明者らはこれまでに、ノーザンプロット法とin situハイブリダイゼーション法を用いて、cPLA2αが脳神経細胞に豊富に発現していることを示してきた。
一方、カイニン酸(Kainic acid)アミノ酸の1種であり、カイニンソウの中の駆虫成分として単離されてきたものである。カイニン酸はグルタミン酸に類似した化学構造を有するために、動物の脳や神経細胞のグルタミン酸受容体に結合し、ニューロン興奮作用を起こさせる物質として知られている。
本発明者らは、脳におけるホスホリパーゼA2の機能を調べるために、カイニン酸刺激や電気刺激を与えたところ、海馬の歯状回に限局して一過性に発現する新規ホスホリパーゼA2(アミノ酸455、分子量約50K)を発見した。本酵素は細胞質型ホスホリパーゼA2α(85K)の308番目のメチオニンから開始する部分タンパクであるが、同酵素の遺伝的欠損マウスでも出現するため、刺激に応じ、部位特異的に発現させる固有のプロモーターを含むものであった。本酵素は無刺激状態では存在しないが、電気刺激やカイニン酸刺激で発現し、従来のホスホリパーゼA2とは異なりカルシウム非依存性であって、エイコサノイドを産生し、脳機能を調節、また、神経細胞の変性やアポトーシス、再生に関与していることから、これらの脳機能の鍵を握る分子と考えられる。
また、この新規なホスホリパーゼA2(アミノ酸455、分子量約50K)は、公知の細胞質型ホスホリパーゼA2α(85K)の308番目のメチオニンから翻訳された部分タンパク質であり、その直前のイントロン部分にこのタンパク質を発現させるための固有のプロモーター領域が存在しており、本発明者らは、イントロンの中にRNAの転写開始を可能にする機能を有するイントロンがあることを見出した。このイントロンは通常の状態では、RNAの転写開始の機能を有していないが、ある条件を設定することにより本来の転写位置からではなく、このイントロンの塩基配列の部分からRNAの転写を開始する機能を有するものである。
本発明は、カルシウム非依存性の新規なホスホリパーゼA2(アミノ酸455、分子量約50K)、それをコードする遺伝子、それに対する抗体を提供する。
また、本発明は、イントロンの中に存在する塩基配列からなる、外的刺激に応じ、部位特異的に発現させる固有のプロモーター又は調節遺伝子を提供するものである。さらに、本発明は、外的刺激に応じて目的のタンパク質を発現させる方法、及びそれを導入した生物を提供するものである。
さらに、本発明は、本発明のKIDS cPLA2が神経幹細胞に特異的に発現することから、神経幹細胞を特異的に探索する方法を提供する。
本発明は、カルシウム非依存性の新規なホスホリパーゼA2、より詳細には、カルシウム非依存性で海馬特異的のホスホリパーゼA2であって、配列表の配列番号1、5若しくは8に記載されるアミノ酸配列、又はそれらのアミノ酸配列の中の1個以上のアミノ酸が他のアミノ酸で置換され、欠失され、1個以上のアミノ酸が付加されてなるアミノ酸配列を有するホスホリパーゼA2、それらをコードする遺伝子、及びその全長又は断片を抗原とする抗体に関する。
また、本発明はイントロン中に存在する塩基配列であって、カイニン酸刺激又は電気刺激などの外的刺激によりRNAの転写開始を可能にし得る塩基配列を有する遺伝子、より詳細には、部位特異的にRNAの転写開始を可能にし得る遺伝子に関する。好ましい本発明の遺伝子の例としては、配列表の配列番号12、13若しくは14に記載される塩基配列、又はその一部が欠失、付加、置換されてなる部分配列からなる塩基配列を有する遺伝子が挙げられる。
また、本発明は、イントロン中に存在する塩基配列であって、カイニン酸刺激又は電気刺激などの外的刺激によりRNAの転写開始を可能にし得るプロモーター、より詳細には、RNAの転写開始が部位特異的である前記のプロモーター、及び当該プロモーターの上流に調節エレメントを有する調節遺伝子に関する。
さらに、本発明は、タンパク質をコードしている遺伝子の上流に前記の遺伝子、前記のプロモーター、又は前記の調節遺伝子のいずれかを導入して、カイニン酸刺激又は電気刺激などの外的刺激により、好ましくは部位特異的にRNAの転写を開始させて、当該タンパク質を外的刺激に応じて発現させる方法、及びタンパク質をコードしている遺伝子の上流に前記の遺伝子、前記のプロモーター、又は前記の調節遺伝子のいずれかを導入してなる生物に関する。
また、本発明は、本発明のKIDS cPLA2の発現により神経幹細胞を特異的に探索する方法に関する。即ち、本発明は、神経細胞を外的刺激により刺激して、請求項1〜3のいずれかに記載のホスホリパーゼA2をコードしているmRNAの発現を検出又は同定することからなる神経幹細胞を検出又は同定する方法に関する。
さらに、本発明は、本発明のKIDS cPLA2及び製薬上許容される担体とからなる医薬組成物に関する。より詳細には、本発明は、本発明のKIDS cPLA2を含有してなるリゾホスファチジルコリン(LPC)などのリン脂質のレベル調節剤に関する。
本発明者らは、脳におけるホスホリパーゼA2の機能を調べる研究の一環で、カイニン酸を腹腔注入したラットの脳切片を作成し、cPLA2をプローブ(探索子)として、組織化学的にmRNAの発現を検討してきた。プローブの選定のために、通常、cPLA2の異なる部位を用いて、ノーザンブロットで確かめたところ、特定の部位(5’端)を用いたときに、cPLA2より短い長さ(1.8キロ塩基対程度)のmRNAが誘導されることを見出した。
このノーザンブロットの結果を図1に図面に代わる写真で示す。図1の上段は、cPLA2の塩基配列を示している。左端が翻訳開始コドン(ATG)であり、プローブとして用いた部分をA、B、C及びDで示している。即ち、プローブAはBamHIからBalIの部分で、プローブBはRsaIからRsaIBalIの部分で、プローブCはRsaIからBalIの部分であり、プローブDはRsaIから終止コドン(TGA)までの部分である。
図1の中段は、カイニン酸処理をしていない場合(KA(−))のものである。図1の下段は、カイニン酸処理をしたときの処理後3時間の場合(KA(+)、3h)のものである。カイニン酸処理をしていない場合(KA(−))には(図1の中段)、cPLA2αの位置のみにプロットがみられるが、カイニン酸処理をしたときの処理後3時間の場合(KA(+))には、5’末端側のプローブB、C及びDにはcPLA2αの位置のみならずその下側により短い鎖長のプロットを観察することができた。
次に海馬及び小脳について、経時的なノーザンブロットを行った。その結果を図2に図面に代わる写真で示す。図2の左側は海馬で、右側は小脳である。各々カイニン酸処理後から(0時間)、0.5時間後、3時間後、8時間後、14時間後、18時間後のブロットを示している。図2のいずれのところにもcPLA2αの位置にプロットがみられるが、海馬(図2の左側)におけるカイニン酸処理3時間後の箇所にのみcPLA2αの位置のみならずその下側により短い鎖長のプロットを観察することができた。
さらに、インサイチュハイブリダイゼーション(in situ hybridization)を行うと、海馬の歯状回に特異的な発現が認められた。この結果を図3に図面に代わる写真で示す。図3の左側は、脳の断面のものであり、図3の右側は脳の縦断面からのものである。図3において黒く見える部分が発色している部分である。発色している場所は、海馬の歯状回である。
この結果を拡大して示したものが図4の図面に代わる写真である。図4の左側はカイニン酸処理をしていないものであり、右側はカイニン酸処理3時間後のものである。海馬の歯状回に沿って発色を観察することができる。この発色は海馬の歯状回の外側において強く発色しており、また、海馬の歯状回には神経幹細胞が多数存在することから、これは海馬の歯状回に存在する神経幹細胞によるものと推定される。
そこで、cPLA2の全長をプローブとして、海馬歯状回のライブラリーより、目的cDNAを得た。このcDNAをタンパクに翻訳し、酵素活性を見ると、ホスホリパーゼA2活性が認められた。
この構造解析より、細胞質型ホスホリパーゼA2(cytosolic phospholipase A2,cPLA2と略記)の短縮型ホスホリパーゼA2分子であることがわかった。ラットのcDNAは1,842塩基対、翻訳領域は1,335塩基対で、445のアミノ酸からなる分子量50810.6のタンパクであった。この短縮型ホスホリパーゼA2は、カイニン酸で刺激した後の、脳の海馬歯状回に特異的に発現するので、kainate-inducible dentate gyrus specific cPLA2(KIDS cPLA2)と名付けた。
得られたKIDS cPLA2のアミノ酸配列をアミノ酸の1文字コードで次に示す。
ヒトのKIDS cPLA2は、
MNTTLSSLKEKVNTAQCPLP 20
LFTCLHVKPDVSELMFADWV 40
EFSPYEIGMAKYGTFMAPDL 60
FGSKFFMGTVVKKYEENPLH 80
FLMGVWGSAFSILFNRVLGV 100
SGSQSRGSTMEEELENITTK 120
HIVSNDSSDSDDESHEPKGT 140
ENEDAGSDYQSDNQASWIHR 160
MIMALVSDSALFNTREGRAG 180
KVHNFMLGLNLNTSYPLSPL 200
SDFATQDSFDDDELDAAVAD 220
PDEFERIYEPLDVKSKKIHV 240
VDSGLTFNLPYPLILRPQRG 260
VDLIISFDFSARPSDSSPPF 280
KELLLAEKWAKMNKLPFPKI 300
DPYVFDREGLKECYVFKPKN 320
PDMEKDCPTIIHFVLANINF 340
RKYKAPGVPRETEEEKEIAD 360
FDIFDDPESPFSTFNFQYPN 380
QAFKRLHDLMHFNTLNNIDV 400
IKEAMVESIEYRRQNPSRCS 420
VSLSNVEARRFFNKEFLSKP 440
KA 442
ラットのKIDS cPLA2は、
MSTTLSSLKEKVSAARCPLP 20
LFTCLHVKPDVSELMFADWV 40
EFSPYEIGMAKYGTFMTPDL 60
FGSKFFMGTVVKKYEENPLH 80
FLMGVWGSAFSILFNRVLGV 100
SGSQNKGSTMEEELENITAK 120
HIVSNDSSDSDDEAQGPKGT 140
ENEDAEREYQNDNQASWVHR 160
MLMALVSDSALFNTREGRAG 180
KEHNFMLGLNLNTSYPLSPL 200
RDFSPQDSFDDDELDAAVAD 220
PDEFERIYEPLDVKSKKIHV 240
VDSGLTFNLPYPLILRPQRG 260
VDLIISFDFSARPSDTSPPF 280
KELLLAEKWAKMNKLPFPKI 300
DPYVFDREGLKECYVFKPKN 320
PDVEKDCPTIIHFVLANINF 340
RKYKAPGVLRETKEEKEIAD 360
FDIFDDPESPFSTFNFQYPN 380
QAFKRLHDLMYFNTLNNIDV 400
IKDAIVESIEYRRQNPSRCS 420
VSLSNVEARKFFNKEFLSKP 440
TAESI 445
マウスのKIDS cPLA2は、
MSMTLSSLKEKVNAARCPLP 20
LFTCLHVKPDVSELM FADW 40
VEFSPYEIGMAKYGTFMAPD 60
LFGSKFFMGTVVKKYEENPL 80
HFLMGVWGSAFSILFNRVLG 100
VSGSQNKGSTMEEELENITA 120
KHIVSNDSSDSDDEAQGPKG 140
TENEEAEKEYQSDNQASWVH 160
RMLMALVSDSALFNTREGRA 180
GKVHNFMLGLNLNTSYPLSP 200
LRDFSSQDSFDDELDAAVAD 220
PDEFERIYEPLDVKSKKIHV 240
VDSGLTFNLPYPLILRPQRG 260
VDLIISFDFSARPSDTSPPF 280
KELLLAEKWAKMNKLPFPKI 300
DPYVFDREGLKECYVFKPKN 320
PDVEKDCPTIIHFVLANINF 340
RKYKAPGVLRETKEEKEIAD 360
FDIFDDPESPFSTFNFQYPN 380
QAFKRLHDLMYFNTLNNIDV 400
IKDAIVESIEYRRQNPSRCS 420
VSLSNVEARKFFNKEFLSKP 440
TV 442
ヒトのKIDS cPLA2のアミノ酸配列を配列表の配列番号1に示す。ヒトのKIDS cPLA2のcDNAの翻訳領域の塩基配列を配列表の配列番号2、3及び4に示す。配列番号2は5’UTRの配列をタイプIにしたものであり、配列番号3は5’UTRの配列をタイプIIにしたものであり、配列番号4は5’UTRの配列をタイプI、タイプIIに分けない場合のものである。
ラットのKIDS cPLA2のアミノ酸配列を配列表の配列番号5に示す。ラットのKIDS cPLA2のcDNAの翻訳領域の塩基配列を配列表の配列番号6及び7に示す。配列番号6はタイプIのものであり、配列番号7はタイプIIのものである。
マウスのKIDS cPLA2のアミノ酸配列を配列表の配列番号8に示す。マウスのKIDS cPLA2のcDNAの翻訳領域の塩基配列を配列表の配列番号9、10及び11に示す。配列番号9は5’UTRの配列をタイプIにしたものであり、配列番号10は5’UTRの配列をタイプIIにしたものであり、配列番号11は5’UTRの配列をタイプI、タイプIIに分けない場合のものである。
本発明のKIDS cPLA2を特異的に認識するポリクローン抗体(断端抗体)を作成した。この抗体を用いて免疫組織化学分析による目的タンパクの発現を確認した。結果を図5に図面に代わる写真で示す。図5の上段の左側は、カイニン酸未処理の場合で、上段の右側はカイニン酸処理後3時間のものである。抗体による発色を確認することができる。図5の下段の左側は抗KIDS cPLA2抗体(IgG)未処理の場合の対照である。図5の下段の右側は、カイニン酸処理後3時間の抗KIDS cPLA2抗体(IgG)不存在下(図5の下段右側の左側の(−))及び存在下(その右側の(+))でのクロマトの結果である。
次に、cPLA2及び本発明のKIDS cPLA2をコードするcDNAを発現ベクターpTracerEFに組み込み、その発現を検討した。結果を図6に図面に代わる写真で示す。図6のレーン1はコントロールベクターの場合であり、レーン2はcPLA2α/pTracerEFの場合であり、レーン3はKIDS cPLA2/pTracerEFの場合である。図6に左側は、抗V5エピトープIgGを用いた場合であり、真ん中は抗cPLA2αIgYを用いた倍委であり、右側は抗KIDS cPLA2IgGを用いた場合である。
抗V5エピトープIgGによる各スポット、及び抗KIDS cPLA2IgGによるKIDS cPLA2のスポットが確認され、KIDS cPLA2の発現が確認された。
次に、cPLA2α及び本発明のKIDS cPLA2の酵素活性を検討した。基質として、1−Pam−2−[14C]アラキドノイル−PC(図7中における黒丸印(●))、1−Pam−2−[14C]リノレオイル−PC(図7中における黒三角印(▲))、1−Pam−2−[14C]オレオイル−PC(図7中における黒四角印(■))、及び1−Pam−2−[14C]パルミトイル−PC(図7中におけるアスタリスク印(*))を用いて、それぞれの酵素活性を試験した。結果を図7に示す。図7の左側は、本発明のKIDS cPLA2のものであり、右側はcPLA2αのものである。いずれの酵素もアラキドン酸リン脂質に対する酵素活性が極めて高く、ホスホリパーゼA2としてはほぼ同等の活性をゆうしていることがわかる。
これらの酵素活性の値(pmol/分)を次の表1に示す。
表1 KIDS cPLA2とcPLA2αの酵素活性
────────────────────────────────
ホスホリパーゼA2活性(pmol/min)
─────────────────
基 質 KIDS cPLA2 cPLA2α
─────────────────────────────────
1-Pam-2-[14C]アラキト゛ノイル-PC 35.6±3.8 24.4±1.4
1-Pam-2-[14C]リノレオイル-PC 20.1±1.7 11.9±1.8
1-Pam-2-[14C]オレオイル-PC 14.3±1.5 9.1±1.1
1-Pam-2-[14C]ハ゜ルミトイル-PC 9.4±1.0 9.8±1.
─────────────────────────────────
なお、ホスホリパーゼA2活性はコントロールとの差によるものである。
次に、基質として1−Pam−2−[14C]アラキドノイル−PCを用いて、cPLA2α及び本発明のKIDS cPLA2の酵素活性に及ぼすカルシウム依存性を検討した。
結果を図8及び図9に示す。図8の実線は本発明のKIDS cPLA2の場合であり、破線はcPLA2αの場合である。それぞれ、黒丸印(●)はEDTAの不存在下のものであり、白丸印(○)はEDTA存在下のものである。cPLA2αの場合の場合には、EDTAによるカルシウムの非存在により急激な活性の低下がみられるが、本発明のKIDS cPLA2の場合にはそれほどの活性の低下はみられないことがわかる。
図9は前記の結果を相対比で表したものである。本発明のKIDS cPLA2の場合には、カルシウムの非存在下であっても40%程度の活性を維持しているが、cPLA2αの場合の場合には、カルシウムの非存在下ではその活性は10〜15%程度に低下していることがわかる。
このように、本発明のKIDS cPLA2は、従来のcPLA2αに比べてカルシウム非依存性であることを特徴とするものである。
次に、清水等の作成したcPLA欠損マウス(Uozumi,N. et al. Nature 390, 618-622, 1997)での本発明のKIDS cPLA2の発現を検討した。結果を図10の図面に代わる写真に示す。図10の上段はノックアウトマウスの(+/+)のもので、下段はノックアウトマウスの(−/−)のものである。図10の左側はカイニン酸未処理(KA(−))を、右側はカイニン酸処理後3時間(KA(+))のものを示す。いずれのノックアウトマウスにおいてもカイニン酸処理により本酵素の発現を確認することができた。
このことは、本発明のKIDS cPLA2は、その全長であるcPLA2とは異なるプロモーターを用いて発現していることを示している。
図11は、cPLA2とKIDS cPLA2の発現状況を図示したものである。図11の上段は、ゲノム遺伝子におけるcPLA2のエキソンとイントロンとを模式的に示している。全長のcPLA2は全てのエキソンから生成させらたものであり、最初のエキソンの上流にプロモーター領域を含む調節遺伝子が存在している。これに対して、本発明のKIDS cPLA2は、図11において「M308」と記された308番目のメチオニンから始まるタンパク質であり、このタンパク質がcPLA欠損マウス、即ち最初のエキソンの上流にプロモーター領域を含む調節遺伝子の機能が破壊されているマウスにおいて発現が確認されたことから、本発明のKIDS cPLA2は、「M−308」の上流にプロモーター領域を含む調節遺伝子領域を持っていることがわかった。しかし、この調節遺伝子は通常の状態では機能されないようになっており、カイニン酸刺激などの刺激に応じてしか機能しないものであることもわかる。
そこで、「M−308」の上流のイントロンの塩基配列をラット、マウス及びヒトについて解析した。結果を並べて図12に示す。
このイントロンのヒトの塩基配列を配列表の配列番号7に示す。ラットの塩基配列を配列表の配列番号8に示す。さらに、マウスの塩基配列を配列表の配列番号9に示す。
図12は、ラット(上段)、マウス(中段)、及びヒト(下段)の「M−308」を含むエキソンの直前のイントロンの最初の塩基からの塩基配列を、全長のcPLA2のエキソン領域が開始する塩基を1番として番号を付したものである。この番号で92番目(ヒト)からのATGがKIDS cPLA2の翻訳開始コドンである。
次に、脳の海馬歯状回における神経細胞を用いて、本発明のKIDS cPLA2の発現を検討した。結果を図13に図面に代わる写真で示す。
図13の上段は対照としてのネスチン(Nestin)であり、中段は神経幹細胞を用いた場合であり、下段は神経の成熟細胞を用いた場合である。左側のAは各細胞の位置を示し、中央のBは本発明のKIDS cPLA2の発現を示す発色であり、右側は左側のAと中央のBを重ね合わせて両者の位置を確認したものである。
この結果、本発明のKIDS cPLA2は神経成熟細胞では明瞭な発現は観察されず、神経幹細胞において明瞭に発現を観察することができることがわかる。これは本発明のKIDS cPLA2が神経幹細胞において特異的に発現する物質であること、及び神経幹細胞においては成熟細胞におけるイントロンが特異的にプロモーターの役割を担っていることを示唆するものである。
次に神経幹細胞を用いて、カイニン酸刺激(10μM)、カイニン酸とCNQXによる刺激(KA10μM+CNQX20μM)、及びグルタミン酸(50μM)による刺激その発現を検討した。
結果を図14に図面に代わる写真で示す。図14の上段はプローブとしてP90−P27の252bpのもの(この配列は全長のcPLA2と共通する部分の配列である。)、上から2段目はP19−P27の290bpのもの(この配列は本発明のKIDS cPLA2に特異的な配列を含むものである。)、下の2段はコントロールのためのG3PDH及びNestinのものである。図14はその下にKIDS cPLA2の5’側の転写開始位置と図14の上2段で用いたプローブの配列位置を示している。
図14の各レーンは、左からコントロール、カイニン酸刺激(KA(10μM))、カイニン酸とCNQXによる刺激(KA(10μM)+CNQX(20μM))、及びグルタミン酸(Glu(50μM))を示す。
この結果、カイニン酸刺激(10μM)の刺激のときに特異的に本発明のKIDS cPLA2の発現が確認された。
したがって、本発明は、本発明のKIDS cPLA2の発現により神経幹細胞を特異的に探索する方法を提供する。即ち、本発明のこの方法によれば、カイニン酸により候補となる細胞を刺激して、本発明のKIDS cPLA2に発現を観察することにより神経幹細胞を特異的に、且つ簡便に捜し出すことができる。
さらに、本発明者らは、本発明のKIDS cPLA2がリゾホスホリパーゼA1活性を有していることを見出した。
リゾホスホリパーゼA1は、グリセロリン脂質の1位の飽和脂肪酸によるアシル基を特異的に分解する酵素である。そこで、本発明者らは、グリセロリン脂質の1位のパルミトイル基を14Cでラベルしたリゾホスファチジルコリン(lysoPC)を基質として、本発明のKIDS cPLA2のリゾホスホリパーゼA1活性を測定した。結果を図15に示す。図15の縦軸はdmpで示されるリゾホスホリパーゼA1活性であり(平均値±標準偏差、n=3)、横軸は時間(分)である。各時間における活性値は左側から、cPLA2α(黒塗)、本発明のKIDS cPLA2(薄い黒)、及びlacZ(灰色)である。横軸の時間が40分の箇所の右端(白色)は、バッファーを示している。図15中のpの値はt−テストにより本発明のKIDS cPLA2(薄い黒)とlacZの間に有意差があることを示している。
この結果、本発明のKIDS cPLA2は優れたリゾホスホリパーゼA1活性を有していることがわかった。
次に、本発明のKIDS cPLA2のリゾホスホリパーゼA1活性を動力学的解析を行った。結果を図16に示す。図16の縦軸はdmpで示されるリゾホスホリパーゼA1活性であり(平均値±標準偏差、n=3)、横軸は基質のリゾホスファチジルコリン(lysoPC)の濃度(μM)を示す。図16の黒丸印はcPLA2αを示し、薄い黒丸印は本発明のKIDS cPLA2を示し、濃い灰色の丸印はlacZを示し、薄い灰色の丸印はバッファーを示している。図16の上側の小さいグラフは、動力学的解析結果を示すものであり、上側のy=85.784x+0.378の式で示されるのが本発明のKIDS cPLA2であり、下側のy=59.441x+0.898の式で示されるのはcPLA2αである。
さらに、本発明のKIDS cPLA2のリゾホスホリパーゼA1活性におけるカルシウムイオン及びAEBSF(4−(2−アミノエチル)−ベンゼンスロニルフルオライド:セリンプロテアーゼの阻害剤)の影響について検討した。
カルシウムイオンの影響の試験の結果を図17に示す。図17の縦軸はdmpで示されるリゾホスホリパーゼA1活性であり(平均値±標準偏差、n=3)、横軸は5mMのEDTAの不存在(−)の場合と存在(+)の場合を示している。各場合の活性値は左側から、cPLA2α(黒塗)、本発明のKIDS cPLA2(薄い黒)、lacZ(灰色)、及びバッファー(白色)である。図17中のpの値はt−テストにより本発明のKIDS cPLA2(薄い黒)とlacZの間に有意差があることを示している。
この結果、cPLA2α(黒塗)は、EDTAの存在(+)によりカルシウムイオンが非存在となると活性が低下するのに対して、本発明のKIDS cPLA2(薄い黒)はカルシウムイオンの存在(EDTA不存在(−))の場合も、非存在(EDTA存在(+))の場合もいずれの場合においても同程度の活性が維持されていることがわかる。
次に、AEBSFの存在による影響の結果を図18に示す。図18の縦軸はdmpで示されるリゾホスホリパーゼA1活性であり(平均値±標準偏差、n=3)、横軸はAEBSFの濃度(mM)を示す。図18の黒丸印はcPLA2αを示し、薄い黒丸印は本発明のKIDS cPLA2を示し、濃い灰色の丸印はlacZを示し、薄い灰色の丸印はバッファーを示している。この結果、いずれの酵素もAEBSFの存在により活性を失うことがわかった。
最近になって、リゾホスファチジルコリン(以下LPC)が、免疫調節受容体であるG2Aのリガンドであることが見出された(Janusz H., et al., Science, 293, 702-705 (2001))。また、免疫調節受容体G2A欠損マウスにおける研究からG2Aは末梢リンパ球のホメオスタシスを制御する際に重要な役割をはたしていることがわかってきている(Lu Q. Le, et al., Immunity, 14, 561-571 (2001))。したがって、LPCは生体内、特に末梢系における免疫、細胞増殖などの調節因子と考えられ、LPCが過剰になると細胞死がおこり、また、動脈硬化、免疫能の低下などが発症することになる。本発明のKIDS cPLA2は、ホスホリパーゼA2活性及びリゾホスホリパーゼA1活性を有し、このLPCのレベルを適切に調節する作用を有するものである。本発明のKIDS cPLA2により、過剰に存在しているLPCを除去することができ、アポトーシスの抑制や免疫機能の改善、動脈硬化などの予防や治療に使用することができる。
したがって、本発明は、本発明のKIDS cPLA2によるリゾホスファチジルコリン(LPC)調節剤を提供するものである。
本発明は、カイニン酸刺激やてんかん発作などで、海馬歯状回に特異的な細胞死がおこる原因と考えられる、新規な酵素を提供するものである。この酵素の阻害剤を作成することで、細胞死を予防することが可能となる。
また、本発明は、ホスホリパーゼA2活性を有し、かつカルシウム非依存性の新規な酵素を提供するものである。
さらに、本発明は、イントロン中に外的刺激によりRNAの転写開始を可能する機能があることを初めて明らかにするものである。ゲノムにおけるイントロンの新たな機能を解明すると同時に、外的刺激によりプロモーターあるいは調節遺伝子として機能する新たなタイプの遺伝子を提供するものである。本発明のプロモーターあるいは調節遺伝子として機能する新たなタイプの遺伝子は、イントロンとしての機能を有するのみならず、外的刺激に応じた時期特異的な目的遺伝子の発現を可能し、また組織に応じた部位特異的な目的遺伝子の発現を可能するものである。したがって、本発明のプロモーターあるいは調節遺伝子は、遺伝子の発現調整に使用することができ、トランスジェニック動物やノックアウト動物などに応用することができる。
また、本発明のKIDScPLA2は、カルシウム非依存的にリゾホスホリパーゼA1活性を有し、リン脂質のレベル調節剤として有用であり、免疫性疾患や動脈硬化などの予防・治療に有用である。
本発明のKIDS cPLA2は、全長のcPLA2の部分長のものであるが、このものがホスホリパーゼA2を活性を保持し、かつカルシウム非依存性であることを特徴するものであり、必ずしも配列表の配列番号1、3又は5に記載されているアミノ酸配列を有するものに限定されるものではない。ホスホリパーゼA2を活性を保持し、かつカルシウム非依存性であれば、配列表の配列番号1、3又は5に記載されているアミノ酸配列のうちの1〜20個程度のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されていてもよいし、欠失していてもよいし、また付加されていてもよい。又は、これらの置換、欠失、及び付加が同時に組み合わされて行われたものであってもよい。
本発明のKIDS cPLA2は本明細書において開示した方法にしたがって発現させて製造することもできるが、本発明のKIDS cPLA2のcDNAを用いて通常の遺伝子組換え技術により製造することができる。
本発明のKIDS cPLA2は、その全長又は一部、好ましくは5アミノ酸以上、又は10アミノ酸以上からなる部分長のペプチドを抗原として、それに対する抗体を製造することができる。本発明の抗体は通常の方法で製造することができ、必要に応じてポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体とすることができる。
また、カイニン酸刺激やてんかん発作などで、海馬歯状回に特異的な細胞死がおこることが知られている。本発明はカイニン酸刺激やてんかん発作などにより海馬歯状回にKIDS cPLA2が発現していることを見出した。してみれば、本酵素の阻害剤を作成することで、海馬歯状回における細胞死を予防することが可能であり、本酵素はその阻害剤の開発のためにも有用なものである。
また、本発明は、イントロンの中に外的刺激に応じて活性化される調節遺伝子としての機能を有するものがあることを初めて見出したものであり、イントロンの塩基配列中に外的刺激に応じてプロモーターとしても機能を有する塩基配列が少なくとも存在していることを明らかにしたものである。
したがって、本発明は、イントロン中に存在する塩基配列であって、外的刺激によりRNAの転写開始を可能にし得る塩基配列を有する遺伝子を提供するものである。本発明の当該遺伝子は少なくとも6塩基からなる、好ましくは配列表の配列番号7、8又は9に示される塩基配列の中の少なくとも4塩基以上、好ましくは6塩基以上からなる、イントロン中に存在する塩基配列であって、外的刺激によりRNAの転写開始を可能にし得る塩基配列を有するオリゴヌクレオチドである。
また、本発明の当該遺伝子は少なくともRNAの転写開始に関与するプロモーターとしての機能を有するものであるから、本発明は当該遺伝子又はその部分長からなる外的刺激によりRNAの転写開始を可能にし得るプロモーターを提供するものである。本発明のプロモーターは、成熟した細胞の通常の条件下ではRNAの転写開始を生起させることは無く、特定の外的刺激により初めてRNAの転写開始を生起させ得るものであることを特徴とするものである。さらに、本発明のプロモーターは、その塩基配列がイントロン中に存在している塩基配列であることを特徴とするものである。さらに好ましくは、RNAの転写開始を可能にする部位が特異的であることを特徴とするものである。本発明のプロモーターは、4〜20塩基以上、好ましくは6〜20塩基以上の長さを有するものが好ましいが、これに限定されるものではない。
本発明のプロモーターは、これを単独で使用することもできるが、エンハンサーなどの調節エレメントと一緒にして使用するのが好ましい。調節エレメントはシスに位置しているものが好ましいが、トランスであってもよい。本発明は、本発明の前記したプロモーターと調節エレメントがセットになった調節遺伝子を提供するものでもある。このような調節遺伝子は、調節エレメントがシスエレメントである場合には1本鎖であってもよく、また2本鎖であってもよい。調節エレメントがトランスエレメントの場合には2本鎖として使用される。
あるイントロンが、外的刺激によりRNAの転写開始を可能にし得る塩基配列を有するものであることがわかった場合であって、そのイントロン中のどの塩基配列がプロモーターなどの役割を担っているのかと言うことが充分にわかない場合には、当該イントロンの塩基配列の全長を本発明の調節遺伝子として使用することもできる。
本発明おける「外的刺激」とは、通常の成熟細胞の生育条件においては生起しない刺激であって、好ましくはこれらの刺激により細胞死が誘発されるような刺激である。例えば、カイニン酸などの化学物質による刺激、電気ショックや温度変化などの物理的な刺激、てんかん発作などの他の器官の異常による刺激などが挙げられる。
また、本発明における「部位特異的」とは、生体における組織、器官、又は細胞の種類、状態、若しくは生育度などにより他と区別可能なもの部位に特異的であることをいう。本発明の外的刺激によりRNAの転写開始を可能にし得るプロモーターや遺伝子などは、必ずしも部位特異的でなくてもよいが、部位特異的であってもよい。本明細書の配列表の配列番号7、8及び9に示されるイントロンの塩基配列は、海馬の歯状回に特異的なものと考えられるが、本発明のプロモーターや遺伝子はこれに限定されるものではない。
本発明は、生物のイントロンにおいて外的刺激によりRNAの転写開始を可能にし得る塩基配列が存在していることを明らかにするものであり、本発明のこのような遺伝子の利用範囲は極めて広い。第一の特徴に、イントロンとして存在するものであるから、この遺伝子を導入しても通常はイントロンとしてしか機能せず、生物の通常の生育に影響を与えないということである。第二の特徴は、本発明の調節遺伝子は通常の状態ではRNAの転写に関しては不活性であり、その下流にコードされているタンパク質を発現しないということである。第三の特徴は、部位特異的に発現させることも可能であるということである。
本発明のプロモーター及び調節遺伝子ははこのような特徴を有しているために、その目的に応じた応用が可能である。例えば、特定の外的刺激により、有るタンパク質の部分長のものを発現させて、その生理活性を生体内で観察したい場合には、開始コドンとなるメチオニンを含むエキソンの直前に本発明の遺伝子を導入することにより、生体に特定の外的刺激を与えることにより目的の部分長のタンパク質の発現を促すことができる。また、適当なメチオニンが無い場合には、イントロン領域の中にメチオニンをコードする塩基配列を導入することも考えられる。
第二の特徴によれば、目的のタンパク質の上流に本発明のプロモーター、調節遺伝子を結合させた遺伝子を生体に導入することにより、特定の外的刺激を与えることにより目的の導入タンパク質の発現を外的刺激を与えた時期だけに発現させることができる。例えば、本発明のプロモーターの先に生理活性タンパク質をつけ、特定の外的刺激を与えたときだけに当該生理活性タンパク質を発現させ一時的に細胞に当該生理活性を与えるということも可能である。生理活性タンパク質としてジフテリア毒素などの毒素を用いれば、一過性で細胞を殺すということも可能になる。あるいは、本発明のプロモーターの下流にCRE遺伝子をついないだ遺伝子を導入し、グルタミン酸受容体などの特定の遺伝子をlox−P配列で取り巻いたトランスジェニックマウスを作成する。こうすることで、特定の外的刺激を与えると、CRE遺伝子が発現し、lox−P配列で取り巻まかれたグルタミン酸受容体などの特定の遺伝子を相同組換えにより除去してしまうので、特定の外的刺激を与えたときからグルタミン酸受容体などの特定の遺伝子を欠失したマウスを作成することができる。このようなトランスジェニックマウスにより、成熟した生体におけるグルタミン酸受容体などの特定の遺伝子を欠失した病態を詳細に解析することが可能となる。
さらに、前記した第三の特徴によれば、前記した特徴を生体の部位特異的におこすことが可能になる。例えば、海馬歯状回で特異的に、特定の遺伝子を破壊するということも可能となる。
したがって、本発明は、本発明のプロモーター、調節遺伝子を用いて生体に導入したタンパク質をコードしている遺伝子の発現を、特定の外的刺激により調節する方法を提供するものである。前述してきたように、本発明のこの方法によれば、導入したタンパク質の発現の長さ、発現の時期、発現の部位を調節することが可能となる。
本発明のこの方法において導入されるタンパク質としては、何らかの生理活性を有するタンパク質であれば特に制限はなく、ゲノムの状態又はcDNAの状態で導入することができる。生理活性を有するタンパク質としては、例えば、ホルモンやサイトカインのようにいわゆる生理活性を有するものであってもよいし、ジフテリア毒素のように毒素であってもよいし、CRE遺伝子のように相同組換えを誘発するようなものであってもよい。
また、本発明は、タンパク質をコードしている遺伝子の上流に本発明のプロモーター、調節遺伝子を導入してなる生物を提供するものである。本発明の生物は、試験動物として有用であり、例えば、マウス、ラット、ウサギ、サルなどに適用することができる。また、植物に適用することも可能である。
従来、このような試験動物としては、トランスジェニックマウスやノックアウトマウスなどが開発されてきている。ノックアウトマウスについては、コンディショナルターゲティング法の開発が求められており、組織特異的に発現するプロモーターやテトラサイクリン感受性のプロモーターなども開発されてきているように組織特異的で時期特異的なプロモーターの開発が求められている。本発明のプロモーターや調節遺伝子はこのような要求を満たすものであり、しかもイントロンとしての機能も有するものであるから、試験動物に本発明のプロモーターや調節遺伝子は広く適用されることができる。
本発明のKIDS cPLA2をリゾホスファチジルコリン(LPC)などのリン脂質のレベル調節剤として使用する場合には、静脈投与、筋肉投与、粘膜投与などの方法により投与することができる。投与量は、患者の状態や疾患の症状にもよるが、10nM−100mMを数回に分けて投与する。本発明の医薬組成物としては、通常使用される製薬上の担体を用いて、静脈投与製剤や筋肉投与製剤に製剤化することができる。また、凍結乾燥製剤とすることもできる。
本発明のリン脂質のレベル調節剤用の医薬組成物は、アポトーシスの抑制や免疫機能の改善、動脈硬化などの予防や治療に使用することができる。
次に実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1 (cPLA2の種々のプローブを用いたノーザンブロット)
ラットcPLA2aのcDNAを5’末端から大きく4つの領域A、B、C、Dに分けた。それぞれの領域の長さは300−500bp程度の長さとし、これらのcDNAフラグメントをリボプローブ合成ベクターに組み込んだ後、インヴィトロトランスクリプション(in vitro transcription)法により放射標識リボプローブを合成した。カイニン酸刺激を行ったラットの海馬、および海馬歯状回のpoly(A)RNAをブロットしたメンブレンと、A、B、C、Dそれぞれのリボプローブを用いてハイブリダイゼーション反応を行い、いずれのプローブがKIDScPLA2を検出しうるか確かめた。その結果、KIDScPLA2 mRNAはAをのぞく、B、C、Dのリボプローブで検出されることがわかった。
結果を図1及び図2に示す。
実施例2 (インサイチュハイブリダイゼーション)
カイニン酸刺激を行った3週令ウイスターラットの脳を4%パラホルムアルデヒドで固定した後、凍結切片を作成した。放射標識リボプローブB、C、Dを別々に凍結切片とハイブリダイゼーション反応させ、それぞれのプローブによる切片の標識像が同じであることを確認した。次にリボプローブCを用いてカイニン酸刺激の有無で再び脳凍結切片を作成し、KIDScPLA2 mRNAの発現パターンを調べた。その結果、KIDScPLA2 mRNAは海馬歯状回に劇的に誘導されることがわかった。顕微鏡による強拡像を観察すると、KIDScPLA2 mRNAはなかでも歯状回の最内層に豊富に発現していることがわかった。
結果を図3及び図4に示す。
実施例3 (免疫組織化学的染色)
カイニン酸刺激を行った3週令ウイスターラット、および6−10週のC57/Black6Jマウス、cPLA2aノックアウトマウスの脳を4%パラホルムアルデヒドで固定した後、凍結切片を作成した。抗KIDScPLA2特異的断端抗体と脳切片の免疫反応を4度で一晩行った後、金コロイド標識二次抗体で KIDScPLA2蛋白の発現を確認した。その結果、KIDScPLA2はmRNAと同様、海馬歯状回に劇的に誘導され、しかも、その発現はcPLA2aノックアウトマウスの海馬歯状回にも観られることがわかった。このことから、KIDScPLA2のプロモーターがcPLA2aノックアウトマウスで破壊をしたcPLA2aの第8エクソンの下流に存在することが示唆され、急性の神経刺激により、cPLA2aのアイソフォームが誘導されてくることがわかった。
結果を図5に示す。
実施例4 (ラットのKIDS cPLA2のcDNAのクローニング)
2種類の方法でその存在を確認し、クローンを単離した。
(1)カイニン酸刺激後のラット海馬から精製したpoly(A)RNAを用いて、cDNAライブラリーを作成し、KIDScPLA2を検出しうるcPLA2aの翻訳開始点から1,365(Rsa I)−1,925(Bal I)のcDNA配列をプローブとしてポジティブクローンを選択した。
400万個のクローンより12個のポジティブクローンを選択した。そのうちの2個は全長のホスホリパーゼA2のものであり、残り10個のうちの6個と4個はタイプが異なり、前者をタイプIIとし、後者をタイプIとした。
(2)ラットKIDScPLA2 cDNAの5’末端を確認するために、カイニン酸刺激後のラット海馬から精製したポリ(A)RNAを用いて5’RACE法(5'-rapid amplification of cDNA ends)を行った。上記、1,365 (Rsa I)−1,925(Bal I)の配列内に存在するプライマーから5’上流に増幅させた配列は、cDNAライブラリーから選択したクローンの配列と一致した。
以上のことから、KIDScPLA2はカイニン酸刺激後の海馬に誘導される新規遺伝子であることがわかった。
得られたラットのKIDS cPLA2のアミノ酸配列を配列表の配列番号5に示す。ラットのKIDS cPLA2のcDNAの翻訳領域の塩基配列を配列表の配列番号6(タイプI)及び配列番号7(タイプII)に示す。
また、マウスのKIDS cPLA2のアミノ酸配列を配列表の配列番号8に示す。マウスのKIDS cPLA2のcDNAの翻訳領域の塩基配列を配列表の配列番号9(5’UTRをタイプIにした場合)、配列番号10(5’UTRをタイプIIにした場合)及び配列番号11(5’UTRをタイプI、タイプIIに分けない場合)に示す。
ヒトのKIDS cPLA2のアミノ酸配列を配列表の配列番号1に示す。ヒトのKIDS cPLA2のcDNAの翻訳領域の塩基配列を配列表の配列番号2(5’UTRをタイプIにした場合)、配列番号3(5’UTRをタイプIIにした場合)及び配列番号4(5’UTRをタイプI、タイプIIに分けない場合)に示す。
これらの配列は、ヒト、マウス及びラットのcDNA配列を同時にアライメントプログラムにかけ、転写開始位置、タイプI、タイプIIそれぞれの転写開始位置と推定されるヌクレオチドの一、タイプIの配列とタイプIIの配列を結ぶジャンクション配列、総合的な配列ホモロジーなどの条件を当てはめて最も妥当な配列から選択してきたものである。
実施例5(KIDS cPLA2の抗体の製造)
ラットcPLA2aのMet−308の配列から全く同一の配列をもつKIDScPLA2を特異的に検出するために、このMet−308から始まる7個のアミノ酸配列(MSTTLSS)をもつ合成ペプチドをウサギに免疫し、その血清画分を調整した。さらにこの画分より、免疫グロブリン(IgG)を精製し、最終標品とした。なお、この断端抗体はラットKIDScPLA2ばかりでなく、マウスKIDScPLA2も特異的に認識することを確認している。
実施例6 (イントロンの塩基配列の解析)
ラット、およびマウスKIDScPLA2のイントロン配列(推定されるプロモーター領域)の解析を次の方法により行った。
ラット、およびマウスKIDScPLA2の5’UTRを含む上流約9kbにわたる領域(cPLAαのノックアウトマウスで破壊されているエクソンまでの領域)に関して、基本的な転写活性が存在するかどうか検討した。まず、この領域の約9kbの配列、および5’UTRの上流約1,000bpを含む配列、ヒト・ラット・マウス間でホモロジーの高い約500bpを含む配列、5’UTRを含む約700bpの配列のそれぞれをルシフェラーゼ遺伝子の上流に組み込んだレポーターベクターを構築した。これらのレポーターベクターを培養細胞株に導入後、その細胞上清を調整し、基本転写活性の指標としてそのルシフェラーゼ活性を測定した。その結果、5’UTRを含む約700bpの配列が特に高い転写活性をもっていることがわかった。
結果を図12に示す。また、各動物の塩基配列を配列表の配列番号12(ヒト)、13(ラット)及び14(マウス)に示す。
実施例7 (リゾホスホリパーゼA1活性の測定)
1−(1−14Cパルミトイル)−リゾホスファチジルコリンを、標準緩衝液(50mM Tris Cl,(PH8.0)、2mM EDTA(pH8.0)、10mM CaCl、30%グリセリン、1mM トリトンX−100)で10μMに調整し、61,400dpm/0.5nmol/50μLで、ラット組換えKIDScPLA2、cPLA2α、及びlacZの各酵素反応を行った。反応時間は、0分、10分、20分、及び40分の4点で、それぞれの時間で反応を停止させて検定を行った。
反応の停止は、50mLの反応系に対して氷冷した停止液(イソプロパノール/n−ヘプタン/1N HSO:78/20/2)を250mL加え、ボルテツクスを行った。次いで150mLのn−ヘプタン100mLのHOをカロえて、5分間激しくボルテツクスを行った。この液を15,000rpmで5分間、遠心を行って、上層の有機層を活性化シリカゲル(20mg)を入れたチューブに加える。150mLのn−ヘプタンを足し、再度5分間激しくポルテツクスを行った後、15,000rpmで5分間、遠心を行った後、各反応チューブから等量の有機層をとりカウティングした。
結果を図15に示す。
実施例8 (リゾホスホリパーゼA1活性の動力学的測定)
標準緩衝液を用いて基質の1−(1−14Cパルミトイル)−リゾホスファチジルコリンの濃度を、0、7μM、10−100μMに変化させて、実施例7と同様にして各酵素の反応を行った。
結果を図16に示す。
実施例9(リゾホスホリパーゼA1活性のCaイオンによる影響の測定)
緩衝液として5mMのCaClを含有するものを使用して、EDTAを添加しない場合と5mMのEDTAを添加した場合を、実施例7と同様にして各酵素反応を行った。
結果を図17に示す。
実施例10 (リゾホスホリパーゼA1活性のAEBSFによる影響の測定)
緩衝液として標準緩衝液を使用して、AEBSFを添加しない場合と1mM、2mM、20mM、及び55mMのAEBSFを添加した場合を、実施例7と同様にして各酵素反応を行った。
結果を図18に示す。
図1は、cPLA2の種々の部位をプローブとして用いた場合のノーザンブロットの結果を示す、図面に代わる写真である。図1の上段は、cPLA2αの塩基配列を示している。A、B、C 、及びD はプローブを示す。 図1の中段は、カイニン酸処理をしていない場合(KA(−))のものであり、図1の下段は、カイニン酸処理をしたときの処理後3時間の場合(KA(+)、3h)のものである。 図2は、海馬及び小脳について、経時的なノーザンブロットを行った結果を示す、図面に代わる写真である。図2の左側は海馬で、右側は小脳である。各々カイニン酸処理後から(0時間)、0.5時間後、3時間後、8時間後、14時間後、18時間後のブロットを示している。 図3は、ラットの脳におけるインサイチュハイブリダイゼーション(in situ hybridization)の結果を示す、図面に代わる写真である。図3の左側は、脳の断面のものであり、図3の右側は脳の縦断面からのものである。図3において黒く見える部分が発色している部分である。 図4は、図3の結果における海馬の歯状回の部分を拡大して示した、図面に代わる写真である。図4の左側はカイニン酸処理をしていないものであり、右側はカイニン酸処理3時間後のものである。 図5は、本発明のKIDS cPLA2を特異的に認識する抗体を用いて免疫組織化学分析による目的タンパクの発現を確認した結果を示す、図面に代わる写真である。図5の上段の左側は、カイニン酸未処理の場合で、上段の右側はカイニン酸処理後3時間のものである。図5の下段の左側は抗KIDS cPLA2抗体(IgG)未処理の場合の対照である。図5の下段の右側は、カイニン酸処理後3時間の抗KIDS cPLA2抗体(IgG)不存在下(図5の下段右側の左側の(−))及び存在下(その右側の(+))でのクロマトの結果である。 図6は、本発明のKIDS cPLA2及びcPLA2αをコードするcDNAを発現ベクターpTracerEFに組み込みその発現を検討した結果を示す、図面に代わる写真である。図6のレーン1はコントロールベクターの場合であり、レーン2はcPLA2α/pTracerEFの場合であり、レーン3はKIDS cPLA2/pTracerEFの場合である。図6の左側は、抗Val 5エピトープ IgGを用いた場合であり、真ん中は抗cPLA2α IgYを用いた場合であり、右側は抗KIDS cPLA2 IgGを用いた場合である。 図7は、本発明のKIDS cPLA2及びcPLA2αの酵素活性の結果を示す。図7の左側は、本発明のKIDS cPLA2のものであり、右側はcPLA2αのものである。基質として、1−Pam−2−[14Cys ]アラキドノイル−PC(黒丸印(●))、1−Pam−2−[14Cys ]リノレオイル−PC(黒三角印(▲))、1−Pam−2−[14Cys ]オレオイル−PC(黒四角印(■))、及び1−Pam−2−[14Cys ]パルミトイル−PC(アスタリスク印(*))を用いた。 図8は、基質として1−Pam−2−[14Cys ]アラキドノイル−PCを用いて、本発明のKIDS cPLA2及びcPLA2αの酵素活性に及ぼすカルシウム依存性の試験の結果を示す。図8の実線は本発明のKIDS cPLA2の場合であり、破線はcPLA2αの場合である。それぞれ、黒丸印(●)はEDTAの不存在下のものであり、白丸印(○)はEDTA存在下のものである。 図9は、前記の図8に示される結果を相対比で表したものである。 図10は、cPLA2欠損マウスでの本発明のKIDS cPLA2の発現を検討した結果を示す、図面に代わる写真である。図10の上段はノックアウトマウスの(+/+)のもので、下段はノックアウトマウスの(−/−)のものである。図10の左側はカイニン酸未処理(KA(−))を、右側はカイニン酸処理後3時間(KA(+))のものを示す。 図11は、cPLA2とKIDS cPLA2の発現状況を図示したものである。図11の上段は、ゲノム遺伝子におけるcPLA2のエキソンとイントロンとを模式的に示している。 図12は、ラット(上段)、マウス(中段)、及びヒト(下段)の「Met −308」を含むエキソンの直前のイントロンの最初の塩基からの塩基配列を、全長のcPLA2のエキソン領域が開始する塩基を1番として番号を付したものである。 図13は、神経幹細胞及び成熟した神経細胞を用いて、本発明のKIDS cPLA2の発現を検討した結果を示す、図面に代わる写真である。 図13の上段は対照としてのネスチン(Nestin)であり、中段は神経幹細胞を用いた場合であり、下段は神経の成熟細胞を用いた場合である。左側のAは各細胞の位置を示し、中央のBは本発明のKIDS cPLA2の発現を示す発色であり、右側は左側のAと中央のBを重ね合わせて両者の位置を確認したものである。 図14は、神経幹細胞を用いて、カイニン酸刺激、カイニン酸とCNQXによる刺激、及びグルタミン酸による刺激における本発明のKIDS cPLA2の発現を検討した結果を示す、図面に代わる写真である。図14の上段はプローブとしてP90−P27の252bpのもの、上から2段目はP19−P27の290bpのもの、下の2段はコントロールのためのG3PDH及びNestinのものである。図14の下は、KIDS cPLA2の5’側の転写開始位置と図14の上2段で用いたプローブの配列位置を示している。図14の各レーンは、左からコントロール、カイニン酸刺激(KA(10μM))、カイニン酸とCNQXによる刺激(KA(10μM)+CNQX(20μM))、及びグルタミン酸(Glu(50μM))を示す。 図15は、本発明のKIDS cPLA2のリゾホスホリパーゼA1活性を測定した結果を示すものである。図15の縦軸はdmpで示されるリゾホスホリパーゼA1活性であり(平均値±標準偏差、n=3)、横軸は時間(分)である。各時間における活性値は左側から、cPLA2α(黒塗)、本発明のKIDS cPLA2(薄い黒)、及びlacZ(灰色)である。横軸の時間が40分の箇所の右端(白色)は、バッファーを示している。図15中のpの値はt−テストにより本発明のKIDS cPLA2(薄い黒)とlacZの間に有意差があることを示している。 図16は、本発明のKIDS cPLA2のリゾホスホリパーゼA1活性を動力学的解析を行った結果を示すものである。図16の縦軸はdmpで示されるリゾホスホリパーゼA1活性であり(平均値±標準偏差、n=3)、横軸は基質のリゾホスファチジルコリン(lysoPC)の濃度(μM)を示す。図16の黒丸印はcPLA2αを示し、薄い黒丸印は本発明のKIDS cPLA2を示し、濃い灰色の丸印はlacZを示し、薄い灰色の丸印はバッファーを示している。図16の上側の小さいグラフは、動力学的解析結果を示すものであり、上側のy=85.784x+0.378の式で示されるのが本発明のKIDS cPLA2であり、下側のy=59.441x+0.898の式で示されるのはcPLA2αである。 図17は、本発明のKIDS cPLA2のリゾホスホリパーゼA1活性におけるカルシウムイオンの影響について検討した試験の結果を示すものである。図17の縦軸はdmpで示されるリゾホスホリパーゼA1活性であり(平均値±標準偏差、n=3)、横軸は5mMのEDTAの不存在(−)の場合と存在(+)の場合を示している。各場合の活性値は左側から、cPLA2α(黒塗)、本発明のKIDS cPLA2(薄い黒)、lacZ(灰色)、及びバッファー(白色)である。図17中のpの値はt−テストにより本発明のKIDS cPLA2(薄い黒)とlacZの間に有意差があることを示している。 図18は、本発明のKIDS cPLA2のリゾホスホリパーゼA1活性におけるAEBSF(4−(2−アミノエチル)−ベンゼンスロニルフルオライド:セリンプロテアーゼの阻害剤)の影響について検討した試験の結果を示すものである。図18の縦軸はdmpで示されるリゾホスホリパーゼA1活性であり(平均値±標準偏差、n=3)、横軸はAEBSFの濃度(mM)を示す。図18の黒丸印はcPLA2αを示し、薄い黒丸印は本発明のKIDS cPLA2を示し、濃い灰色の丸印はlacZを示し、薄い灰色の丸印はバッファーを示している。

Claims (5)

  1. 細胞質型ホスホリパーゼA2遺伝子のイントロン中に存在する塩基配列であって、かつ転写活性を有する塩基配列を含み、以下の(a)又は(b)の塩基配列及び/又はその相補配列からなるポリヌクレオチド、
    (a)配列表の配列番号12、13若しくは14に示された塩基配列、
    (b)(a)の塩基配列の1個ないし数個が欠失、付加、置換されてなる塩基配列。
  2. 請求項1のポリヌクレオチドからなるプロモーター。
  3. 請求項2に記載のプロモーターの上流に調節エレメントを設けた調節遺伝子。
  4. タンパク質をコードしている遺伝子の上流に請求項2又は3に記載のプロモーター又は調節遺伝子を導入してなる生物(ヒトを除く)。
  5. 生物が試験動物である請求項4に記載の生物。
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