JP4165849B2 - 多心光コネクタ用フェルール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、横並びの複数の光ファイバ穴の左右両側にガイドピン穴を形成したプラスチック製で嵌合ピン位置合わせ方式の多心光コネクタ用フェルールに関する。
【0002】
【従来の技術】
嵌合ピン位置合わせ方式の多心光コネクタは、MT光コネクタと通称されているが、これに用いられるフェルールはJIS C 5981にF12形光ファイバコネクタとして規定されている。図4にこの種の従来の光コネクタ(MT光コネクタ)のフェルール1を示す。このフェルール1は、やや薄い角形のフェルール本体部2の基端側に同じく角形の鍔部3を持つ輪郭形状をなし、接続端面4に開口する横一列の4つの光ファイバ穴5の左右両側にガイドピン穴6を備えた構造である。7は接着剤注入のための開口部である。この種のフェルール1は、一般に、成形材料として例えばエポキシ樹脂等が用いられ、射出成形やトランスファー成形等で成形される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、MT光コネクタでは、接続損失の少ない接続を可能にするために、フェルール1の形状寸法には高い精度と形状安定性が要求がされる。特に、光ファイバ穴の径、ガイドピン穴の径、左右のガイドピン穴中心間の距離、左右のガイドピン穴中心を結ぶ線分間の中点を基準とする各光ファイバ穴の位置について高い精度が要求される。
フェルールのプラスチック成形の際、これらについて要求される精度を満たさなければ、不良品として廃棄しなければならず、製造歩留まりが低下する。しかしながら、ファイバ穴数が増大するにつれて、フェルールが反ってしまいファイバ穴の位置の偏心が生ずるという問題があった。プラスチック成形における形状寸法不良の原因には、金型内に射出された200℃程度の成形材料が常温に冷却する際の熱収縮の不均一等があるが、図4に示した従来のフェルール1の成形では、必ずしも高精度の形状寸法を安定して得ることができず、製造歩留まりは十分高いものではなかった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明は、やや薄形のフェルール本体部12の基端側にフェルール本体部12より大径の鍔部13を持ち、先端側の接続端面14に開口する横並びの複数の光ファイバ穴15の左右両側にガイドピン穴16とフェルール後端側に開口する光ファイバ心線挿入開口部17を備えたプラスチック製で嵌合ピン位置合わせ方式の多心光コネクタ用フェルールであって、
前記多心光コネクタ用フェルールは樹脂で一体成形されており、フェルール本体部12の前端側における左右のガイドピン穴形成部23の中間部の上下面に幅広かつ底面の平坦な凹所21を上下対称に形成して、左右のガイドピン穴形成部23の幅方向の中間部を上下対称に薄肉にしたことを特徴とする。
【0005】
請求項2は、請求項1の多心光コネクタ用フェルールにおいて、左右のガイドピン穴形成部のそれぞれ外側部分を多角形ないし円形断面形状としたことを特徴とする。
請求項3は、請求項1の多心光コネクタ用フェルールにおいて、多心光コネクタ用フェルールの鍔部に凹所22と切欠き部13bを備えていることを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図3を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態の光コネクタのフェルール11の斜視図、図2は断面図である。このフェルール11は、嵌合ピン位置合わせ方式の多心光コネクタとして用いられるもので、やや薄形のフェルール本体部12の基端側に鍔部13を持ち、接続端面14に開口する横並びの複数の光ファイバ穴15の左右両側にガイドピン穴16を備えている。フェルール11の内部は、図2に示す通りであり、光ファイバ心線挿入開口部17、光ファイバガイド溝18、接着剤注入窓19が形成されている。20は挿入した光ファイバ心線の挿入口部を保護するためのゴムブーツである。図示例は4心テープ心線用のフェルールであり、横一列の4つの光ファイバ穴15を備えている。
【0007】
本発明では、多心光コネクタ用フェルールは樹脂で一体成形されており、フェルール本体部12の前端側における左右のガイドピン穴形成部23の中間部の上下面に幅広かつ底面の平坦な凹所21を上下対称に形成して、左右のガイドピン穴形成部23の幅方向の中間部を上下対称に薄肉にしている。また、鍔部13の上下面にも凹所22を形成して、やや薄肉としている。
また、フェルール本体部12の左右のガイドピン穴形成部(すなわちガイドピン穴16の周囲部分)23のそれぞれ外側部分を図示例では略八角形状にしている。このガイドピン穴形成部23は、凹所21の両側面部をテーパ状にし、図4の従来のフェルール1のフェルール本体部2の左右両端の稜線部を面取りして、前記の略八角形状に形成している。このガイドピン穴形成部23は、凹所21の両側面部をテーパ状にし、図4の従来のフェルール1のフェルール本体部2の左右両端の稜線部を面取りして、前記の略八角形状に形成している。
【0008】
また、鍔部13は、フェルール本体部12と隣接する肩部13aのみを所定の幅寸法とし、他の部分は切り欠いて(切り欠き部を13bで示す)幅狭にしている。
【0009】
上記のフェルール11の成形材料としては、例えばエポキシ樹脂やPPS(ポリフェニレンスルファイド)が用いられ、成形法としてはトランスファー成形や射出成形等が採用される。図3にこのフェルール11を成形する金型30の一例を示す。同図において、31は上型、32は下型、33は中型である。図示例では、下型32は固定、上型31は昇降可能である。中型33は下型32に嵌合する高さ位置で矢印の水平方向にスライド可能である。中型33はフェルール11の光ファイバ心線挿入開口部17や光ファイバガイド溝18や接着剤注入窓19等を形成する中子部分33a、光ファイバ穴15を形成するピン33b、ガイドピン穴16を形成するピン33c等を一体に持つ。接着剤注入窓19を形成する部分は、図には表れていないが、中子部分33aの下面側に突出部として存在する。上型31および下型32は、中型33との間にキャビティを形成する凹部31a、32a(31aは図示せず)を持つ。下型32の凹部32aには、フェルール11の凹所21を形成する突出部32f、凹所22を形成する突出部32g、ガイドピン穴形成部23を形成する傾斜部32h等を持つ。また、下型32には、光ファイバ穴用のピン33bの先端部を位置決め収容するV溝32d、前記ガイドピン穴用のピン33cの先端部を位置決め収容するV溝32eが形成されている。図示の金型30では、上型31に樹脂を注入するゲート35を設けている。
なお、図3の金型30で成形した成形品を上下反転すると、図1に示した状態となる。
【0010】
上記の金型30にゲート35から溶融樹脂を注入し、硬化後、上型31を開き、中型33を後退させて、成形品を取り出し、成形品のゲート部をゲートカッタで切断すると、図1、図2のフェルール11が得られる。
【0011】
一般に、プラスチック成形における形状寸法不良の原因の一つとして、金型内に射出された200℃程度の成形材料が常温に冷却する際の熱収縮の不均一がある。すなわち、厚肉ないし偏肉部(周囲よりボリュームが偏って大なる部分を指す)では薄肉部と比べて溶融樹脂の冷却速度が遅く、熱収縮が遅れるので、その熱収縮の不均一に起因して、成形品に歪(反りを含む)が発生する。しかし、上記フェルール1の場合、フェルール本体部12や鍔部13が部分的にでも薄肉(凹所21、22の部分)になっており、全体として厚肉ないし偏肉部分が少なくなっているので、従来のフェルール1の成形と比較して、溶融樹脂の冷却速度の不均一およびそれに伴う熱収縮の不均一は少なく、歪の発生は少ない。
また、使用樹脂の量が少ないことは、均一な成形のために良い条件であるので、この点でも、歪の抑制に有利である。
また、この実施形態では、ガイドピン穴形成部23の外側面が直角の角形のままでなく八角形状になっているので、この部分の偏肉が解消されあるいは角部が無くなり、したがって熱収縮の不均一が抑制され、歪が少なくなる。また、従来のような直角の角形では、直角部に射出圧力(または樹脂圧入の圧力)による応力集中が生じ易く、歪も発生し易いが、鈍角となっているので、この点でも歪の発生を抑制できる。
また、鍔部13に切り欠き13bを形成している点でも、熱収縮の不均一が抑制され、歪が少なくなる。
【0012】
なお、ガイドピン穴形成部23の外側部分は八角形状に限らず、六角形状、さらに多い多角形状、あるいは円形としてもよい。
また、使用する成形材料は特に限定されず、光コネクタのフェルールとして使用可能な熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂を使用できる。
【0013】
また、上述の実施形態は4心光コネクタの例であるが、2心、8心、16心、24心、その他、多心光コネクタであれば、心数は限定されない。また、通常は光ファイバ穴が横一列に並ぶ配列であるが、光ファイバ穴が2段や3段に並ぶ二次元配列の場合も考えられる。
【0014】
【発明の効果】
本発明によれば、多心光コネクタ用フェルールが樹脂で一体成形されており、フェルール本体部12の前端側における左右のガイドピン穴形成部23の中間部の上下面に幅広かつ底面の平坦な凹所21を上下対称に形成して、左右のガイドピン穴形成部23の幅方向の中間部を上下対称に薄肉にしたので、フェルールの全体形状として厚肉ないし偏肉部が少なくなり、これによりプラスチック成形時に溶融樹脂の熱収縮の不均一が抑制され、歪を少なくすることができた。これにより寸法精度が確保され、ファイバ穴偏心を抑えることができた。
【0015】
請求項2によれば、フェルールの左右のガイドピン穴形成部のそれぞれ外側部分に直角部がなくなり鈍角部ないし曲率面となるので、偏肉部が削減されて、歪が少なくなる。また、応力集中がなくなる点でも、歪の発生が抑制される。これにより、寸法精度が確保され、多心光ファイバ穴偏心を抑えることができた。
さらにまた、本発明によればフェルールの樹脂量(特にファイバ穴の位置精度に影響する接続端面側の樹脂量)を減らすことにより、樹脂硬化時に発生する歪の発生を可及的に減らすことができ、ファイバ穴の偏心を抑えることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の多心光コネクタ用フェルールの斜視図である。
【図2】図1の縦断面図である。
【図3】上記多心光コネクタ用フェルールを成形する金型の分解斜視図である。
【図4】従来の多心光コネクタ用フェルールの斜視図である。
【符号の説明】
11 フェルール(多心光コネクタ用フェルール)
12 フェルール本体部
13 鍔部
13a 肩部
13b 切り欠き部
14 接続端面
15 光ファイバ穴
16 ガイドピン穴
17 光ファイバ心線挿入開口部
21 凹所(薄肉部分)
22 凹所(薄肉部分)
23 ガイドピン穴形成部
30 金型
31 上型
32 下型
33 中型
Claims (3)
- やや薄形のフェルール本体部12の基端側にフェルール本体部12より大径の鍔部13を持ち、先端側の接続端面14に開口する横並びの複数の光ファイバ穴15の左右両側にガイドピン穴16とフェルール後端側に開口する光ファイバ心線挿入開口部17を備えたプラスチック製で嵌合ピン位置合わせ方式の多心光コネクタ用フェルールであって、
前記多心光コネクタ用フェルールは樹脂で一体成形されており、フェルール本体部12の前端側における左右のガイドピン穴形成部23の中間部の上下面に幅広かつ底面の平坦な凹所21を上下対称に形成して、左右のガイドピン穴形成部23の幅方向の中間部を上下対称に薄肉にしたことを特徴とする多心光コネクタ用フェルール。 - 左右のガイドピン穴形成部のそれぞれ外側部分を多角形ないし円形断面形状としたことを特徴とする請求項1記載の多心光コネクタ用フェルール。
- 前記多心光コネクタ用フェルールの前記鍔部に凹所22と切欠き部13bを備えていることを特徴とする請求項1記載の多心光コネクタ用フェルール。
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