JP4165260B2 - センサ付き転がり軸受ユニット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、転がり軸受と転がり軸受の各種情報を検出するセンサ装置とが一体化されたセンサ付き転がり軸受ユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
このようなセンサ付き転がり軸受ユニットとして、特許文献1には、固定側軌道部材、回転側軌道部材および転動体を有する転がり軸受と、固定側軌道部材の外側に設けられた荷重および温度測定用歪みゲージとを備えているものが開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平1−206113号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のセンサ付き転がり軸受ユニットでは、荷重および温度の両方を1つのセンサ(歪みゲージ)で測定できる利点を有しているが、転動体が軌道部材に及ぼす力については、測定誤差が大きく、歪みゲージの測定値から精度よく軌道部材に作用する力を得ることができないという問題があった。また、回転速度を求めるには、回転センサが、軸方向の変位を求めるには、変位センサがそれぞれ別途必要であった。
【0005】
また、転がり軸受においては、両軌道部材間に金属片等の異物が混入すると、転動体や軌道部材が損傷して転動体が両軌道部材間を公転する速度が軌道部材の回転速度に比べて遅くなる等の異常が起きるので、転がり軸受の状態を監視するために転動体の公転速度を検出することが求められることがあるが、この場合にも別途のセンサが必要となる。
【0006】
この発明の目的は、軸受の軌道部材に作用する力を精度よく求めることができるとともに、軸方向の変位、径方向の変位、荷重および回転情報のすべてを1つのセンサで検知することが可能なセンサ付き転がり軸受ユニットを提供することにある。
【0007】
また、この発明の目的は、軸受の軌道部材に作用する力を精度よく求めることができるとともに、軸の偏心あるいは膨張量を1つのセンサで検知することが可能なセンサ付き転がり軸受ユニットを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
第1の発明によるセンサ付き転がり軸受ユニットは、固定側軌道部材、回転側軌道部材および転動体を有する転がり軸受と、センサ装置とを備えているセンサ付き転がり軸受ユニットにおいて、センサ装置は、軸方向の検知面および径方向の検知面を有する磁歪センサを有しており、前記軸方向の検知面によって検出される出力の低周波成分のシフト量から回転側軌道部材の軸方向の変位が、前記径方向の検知面によって検出される出力の低周波成分のシフト量から回転側軌道部材の径方向の変位が、前記軸方向または径方向の検知面によって検出される出力の高周波成分の振幅から回転側軌道部材への作用力が、前記軸方向または径方向の検知面によって検出される出力の周波数から回転情報がそれぞれ求められることにより、回転側軌道部材の軸方向の変位、回転側軌道部材の径方向の変位、回転側軌道部材への作用力および回転情報のすべてが1つの磁歪センサによって検知されることを特徴とするものである。
【0009】
磁歪センサは、逆磁歪効果(物質が歪むあるいは変形すると磁力が現れる現象)を計測するセンサであり、磁歪センサとしては、例えば、透磁率の高い磁性線に高周波電流を印加したときの磁性線両端間のインピーダンスが外部磁場によって変化する電磁気現象を利用して外部磁場を計測する磁気インピーダンスセンサ(MIセンサ)、インピーダンスが応力により変化することを利用した応力インピーダンスセンサ(SIセンサ)などが挙げられる。磁歪センサは、方向性を有しており、軸方向の検知面および径方向の検知面を有する磁歪センサは、例えば、X軸方向の検知素子とY軸方向の検知素子とを方形の基盤に装着することにより得ることができる。
【0010】
転がり軸受としては、深みぞ玉軸受、アンギュラ玉軸受、ころ軸受、ニードル軸受、スラスト軸受などのいずれの転がり軸受でも使用可能であり、また、単列のものだけでなく、複列のものにも適用できる。
【0011】
固定側軌道部材は、ハウジングなどに取り付けられ、回転側軌道部材は、回転軸などに取り付けられる。磁歪センサは、一般的には、固定側軌道部材またはこれが固定されるハウジングなどの固定側部材に取り付けられる。なお、固定側部材とは、回転側部材と相対回転する部材の意であり、必ずしも固定されている必要はなく、固定側部材という語には、それ自体が回転する場合が含まれているものとする。
【0012】
回転側軌道部材の軸方向の変位は、磁歪センサの軸方向の検知面(X軸方向に臨まされた検知素子)によって検知されるX軸信号出力値から求められる。
【0013】
回転側軌道部材の径方向の変位は、磁歪センサの径方向の検知面(Y軸方向に臨まされた検知素子)によって検知されるY軸信号出力値から求められる。径方向の変位からは、径方向の偏心および遠心力による膨張量を求めることもできる。
【0014】
回転側軌道部材の荷重等の作用力は、磁歪センサの軸方向の検知面または磁歪センサの径方向の検知面によって検知される逆磁歪効果(X軸信号またはY軸信号の出力値)から求められる。回転側軌道部材に固定された主軸等の回転体が回転したり、回転体に荷重がかかると、転動体と軌道部材の軌道面や肩部との間に作用する力が変化し、この結果、軌道部材の軌道面や肩部の歪み量が変動し、逆磁歪効果が得られる。この場合の逆磁歪効果は、ミリガウス程度の小さいものであるが、磁歪センサは、歪み変動量を磁歪変動量として検知することができ、この歪みの変動量から逆算して、軌道部材への作用力の変動量を求めることができる。
【0015】
回転情報は、磁歪センサの軸方向の検知面または磁歪センサの径方向の検知面によって検知されるX軸信号またはY軸信号の周波数から求められる。
【0016】
磁歪センサによって得られる波形には、転動体から受ける力に起因する高周波のサイン波と回転側軌道部材の回転に起因する低周波のサイン波との合成波形となり、高周波のサイン波の周波数から転動体の公転速度が、高周波のサイン波の振幅から荷重等の作用力がそれぞれ求められ、また、低周波のサイン波の周波数から回転側軌道部材の回転速度が、低周波のサイン波の振幅から回転側軌道部材の径方向偏心量または端面振れ量がそれぞれ求められる。
【0017】
第1の発明のセンサ付き転がり軸受ユニットによると、磁歪センサによって、軌道部材に作用する力を非接触で精度よく検出することができるとともに、軌道部材への作用力の他に、軸方向の変位、径方向の変位および回転情報のすべてをこの磁歪センサから得ることができる。したがって、省スペース化および低コスト化が可能となる。
【0018】
回転情報として、回転側軌道部材の軸方向の変位または径方向の変位の時間変化から求められる回転側軌道部材の回転速度と、転動体から受ける力によって生じる回転側軌道部材の歪みの変化の繰り返し数から求められる転動体公転速度とが検知されることが好ましい。
【0019】
上記磁歪センサによると、回転側軌道部材の回転情報(回転速度、回転総数など)だけでなく、軌道部材への作用力を求めるために使用される歪みの変化から、転動体の公転速度すなわち保持器の回転速度を求めることができる。したがって、この転動体公転速度から、転動体の公転周波数の異常な遅れを検出することが可能となり、転がり軸受の異常なすべり等の異常や異物混入等の異常を検知することができる。
【0020】
回転側軌道部材の軸方向の変位および径方向の変位の検知は、回転側軌道部材の残留磁束の変化を検知するものであることが好ましい。回転側軌道部材の残留磁束としては、軌道部材の加工時に発生したものを利用できる。
【0021】
このようにすると、磁歪センサに検出される被検知部(着磁部など)を軌道部材に別途設けたり検知のための加工を施したりすることなく、上記項目(軸方向変位、径方向変位、荷重および回転速度の4項目、または、これらに転動体公転速度を加えた5項目)を検知することができる。
【0022】
第2の発明によるセンサ付き転がり軸受ユニットは、固定側軌道部材、回転側軌道部材および転動体を有する転がり軸受と、センサ装置とを備えているセンサ付き転がり軸受ユニットにおいて、センサ装置は、径方向の検知面を有する磁歪センサを有しており、前記径方向の検知面によって検出される出力の低周波成分シフト量により求められる径方向変位から回転側軌道部材の偏心が、前記径方向の検知面によって検出される出力の高周波成分の振幅から回転側軌道部材への作用力がそれぞれ求められることにより、回転側軌道部材の偏心および回転側軌道部材への作用力が1つの磁歪センサによって検知されることを特徴とするものである。
【0023】
また、第3の発明によるセンサ付き転がり軸受ユニットは、固定側軌道部材、回転側軌道部材および転動体を有する転がり軸受と、センサ装置とを備えているセンサ付き転がり軸受ユニットにおいて、センサ装置は、径方向の検知面を有する磁歪センサを有しており、前記径方向の検知面によって検出される出力の低周波成分シフト量により求められる径方向変位から回転側軌道部材の膨張量が、前記径方向の検知面によって検出される出力の高周波成分の振幅から回転側軌道部材への作用力がそれぞれ求められることにより、回転側軌道部材の膨張量および回転側軌道部材への作用力が1つの磁歪センサによって検知されることを特徴とするものである。
【0024】
第2および第3の発明によるセンサ付き転がり軸受ユニットで使用される磁歪センサは、第1の磁歪センサのY軸方向の検知素子だけを含むものとされ、これにより、上記第1の発明によるセンサ付き転がり軸受ユニットで検知される情報から回転側軌道部材の軸方向の変位を除いた情報が検知される。
【0025】
第2の発明のセンサ付き転がり軸受ユニットによると、磁歪センサによって、軌道部材に作用する力を非接触で精度よく検出することができるとともに、回転側軌道部材の偏心情報もこの磁歪センサから得ることができる。偏心情報は、転がり軸受の異常の監視等に使用することができる。こうして、1つの磁歪センサで、軌道部材に作用する力と転がり軸受の異常監視用データとを得ることができ、省スペース化および低コスト化が可能となる。なお、同じ磁歪センサによって、回転側軌道部材の偏心および回転側軌道部材への作用力以外の物理量が合わせて検出されるようにしてももちろんよい。
【0026】
第3の発明のセンサ付き転がり軸受ユニットによると、磁歪センサによって、軌道部材に作用する力を非接触で精度よく検出することができるとともに、回転側軌道部材の膨張量もこの磁歪センサから得ることができる。膨張量は、遠心力(回転速度)や熱によって変化することから、転がり軸受の回転速度異常や温度異常の監視等に使用することができる。こうして、1つの磁歪センサで、軌道部材に作用する力と転がり軸受の異常監視用データとを得ることができ、省スペース化および低コスト化が可能となる。なお、同じ磁歪センサによって、回転側軌道部材の膨張量および回転側軌道部材への作用力以外の物理量が合わせて検出されるようにしてももちろんよい。
【0027】
この発明によるセンサ付き軸受ユニットは、工作機械およびハブユニットの他、転がり軸受を使用する種々の装置に適用することができる。径方向の変位・偏心・膨張量の検知は、ハブユニットや工作機械等においてより有用であり、軸方向の変位の検知は、工作機械(例えば、切削歯の制御)においてより有用である。
【0028】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。
【0029】
図1および図2は、第1の発明のセンサ付き転がり軸受ユニットの1実施形態を示している。以下の説明において、左右は図1の左右をいうものとする。
【0030】
図1に示すように、センサ付き転がり軸受ユニットは、転がり軸受(1)およびそれに設けられたセンサ装置(2)を備えている。
【0031】
転がり軸受(1)は、ハウジング(3)に固定されている固定側軌道部材(外輪)(5)、回転軸(4)に固定されている回転側軌道部材(内輪)(6)、これらの間に配置された複数の転動体(玉)(7)、および転動体(7)を保持する保持器(8)からなる。
【0032】
この実施形態では、固定側軌道部材(5)および回転側軌道部材(6)は、高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)製、転動体(7)は、セラミック製、保持器(8)は、黄銅製とされており、固定側軌道部材(5)および回転側軌道部材(6)が磁性を有しているのに対し、転動体(7)および保持器(8)は、非磁性材料によって形成されている。
【0033】
センサ装置(2)は、固定側軌道部材(5)に取付部材(13)を介して取り付けられた磁歪センサ(11)と、磁歪センサ(11)の出力信号を処理する処理手段(12)(図1には現れず、図2参照)とを備えている。
【0034】
この実施形態では、磁歪センサ(11)は、軸方向(X軸方向)の検知面および径方向(Y軸方向)の検知面を有する磁気インピーダンスセンサとされており、そのセンシング部(11a)は、回転側軌道部材(6)の肩部に設けられたテーパ部(6a)に臨まされている。この肩部(6a)に対向する固定側軌道部材(5)の肩部には、カウンタボア(5a)が形成されている。
【0035】
信号処理手段(12)は、図2に示すように、磁歪センサ(11)のY軸信号の高周波成分の振幅から回転側軌道部材(6)の荷重を求める荷重演算部(12a)と、磁歪センサ(11)のY軸信号の低周波成分の振幅から回転側軌道部材(6)の径方向変位を求める径方向変位演算部(12b)と、磁歪センサ(11)のY軸信号の高周波成分の周期から転動体(7)の公転速度(したがって保持器(8)の回転速度)を求める保持器回転速度演算部(12c)と、磁歪センサ(11)のY軸信号の低周波成分の周期から回転側軌道部材(6)の回転速度、回転数などを求める回転速度演算部(12d)と、磁歪センサ(11)のX軸信号の低周波成分の振幅から回転側軌道部材(6)の軸方向変位を求める軸方向変位演算部(12e)とを有している。
【0036】
荷重および保持器回転速度は、転動体(7)が内輪(6)の肩部(6a)を歪ませたときの磁歪(逆磁歪効果)を磁力源として検知されており、肩の歪み量変化から荷重変化が求められている。また、径方向の変位(偏心および膨張量を含む)、回転側軌道部材(6)の回転速度および軸方向の変位(軸方向の振れを含む)は、内輪(6)の加工時に発生して被加工物に残留する微小な残留磁束を磁力源として検知されており、いずれも上記変位や膨張量と回転に伴う磁歪センサ(11)〜被検知面(内輪肩部)(6a)のエアギャップ変化に伴う磁束変化から求められている。
【0037】
上記センサ付き転がり軸受ユニットによると、回転側軌道部材(内輪)(6)が回転して、転動体(7)が磁歪センサ(11)のセンシング部(11a)が臨まされている内輪肩部(6a)を歪ませると、逆磁歪効果により、この内輪肩部(6a)に微小磁力が生じ、磁歪センサ(11)の出力が上昇する。そして、転動体(7)と転動体(7)の間がセンシング部(11a)に来ると、内輪肩部(6a)の歪みが減り、磁力が低下する。よって、磁歪センサ(11)の出力も低下する。この変化は、転動体(7)の公転周波数×転動体数に等しい周波数のサイン波(第1のSIN波)となり、その振幅の変化は、径方向荷重と相関がある。一方、内輪(6)の偏心により、磁歪センサ(11)のセンシング部(11a)と内輪肩部(6a)の被検知面とが接近する時には、磁歪センサ(11)の出力が増加し、磁歪センサ(11)のセンシング部(11a)と内輪肩部(6a)の被検知面とが離れる時には、磁歪センサ(11)の出力が減少する。この変化は、内輪回転周波数に等しい周波数のサイン波(第2のSIN波)となる。通常、転動体(7)の公転周波数<内輪(6)の回転周波数となっている。
【0038】
磁歪センサ(11)の径方向(Y軸方向)の検知素子は、生波形として、図3(a)に示すような第1のSIN波と第2のSIN波との合成波を出力する。図3(a)において、Aで示す各波の振幅は、内輪(6)にかかる荷重に相当している。この合成波の出力信号をFFT処理すると、図3(b)に示すように、第1のSIN波の周波数および第2のSIN波の周波数が求まる。この際、フィルタ条件が「第1のSIN波の周波数×0.9より小さい。」というLPF(ローパスフィルタ)を信号にかけることにより、図3(c)に示すグラフが得られる。図3(c)において、Bは、内輪(6)の偏心量や遠心力による膨張量を示し、Cは、内輪(6)の径方向の変位を示している。また、Dは、内輪(6)の回転周波数の逆数となっている。
【0039】
磁歪センサ(11)の軸方向(X軸方向)の検知素子についても、同様であり、図4(a)に示すように、検知素子は、生波形として、転動体(7)の公転に起因する第1のSIN波と内輪(6)の回転に起因する第2のSIN波との合成波を出力する。図4(a)において、Eで示す各波の振幅は、内輪(6)にかかる荷重に相当している。この合成波に対し、フィルタ条件が「第1のSIN波の周波数×0.9より小さい。」というLPFを信号にかけることにより、図3(b)に示すグラフが得られる。図3(b)において、Fは、内輪(6)端面の加工のうねりに対応し、Gは、内輪(6)の軸方向の変位を示している。
【0040】
信号処理手段(12)の荷重演算部(12a)は、図3(c)のグラフの破線で示された各波の振幅(磁歪センサ(11)のY軸信号の高周波成分の振幅)から回転側軌道部材(6)の荷重を求めるものである。信号処理手段(12)の径方向変位演算部(12b)は、図3(c)のグラフにおけるC(磁歪センサ(11)のY軸信号の低周波成分波形のシフト量)から回転側軌道部材(6)の径方向変位を求めるものであり、この際、図3(c)のグラフにおけるB(偏心量)も求めることができる。信号処理手段(12)の保持器回転速度演算部(12c)は、図3(b)の第1のSIN波の周波数(磁歪センサ(11)のY軸信号の高周波成分の周期の逆数)から転動体(7)の公転速度(したがって保持器(8)の回転速度)を求めるものである。信号処理手段(12)の回転速度演算部(12d)は、図3(b)の第2のSIN波の周波数(磁歪センサ(11)のY軸信号の低周波成分の周期の逆数)から回転側軌道部材(6)の回転速度、回転数などを求めるものである。信号処理手段(12)の軸方向変位演算部(12e)は、図4(b)のグラフにおけるG(磁歪センサ(11)のX軸信号の低周波成分波形のシフト量)から回転側軌道部材(6)の軸方向変位を求めるものであり、この際、図4(b)のグラフにおけるF(端面の加工のうねり)も求めることができる。
【0041】
なお、磁歪センサ(11)のX軸信号からは、回転側軌道部材(6)の軸方向変位のみしか求めていないが、このX軸信号に基づいて、Y方向と同様に、回転側軌道部材(6)への作用力、保持器回転速度・数および回転側軌道部材(6)の回転速度・数を求めることもできる。また、端面加工のうねりを利用して、他の物理量を求めることもできる。
【0042】
こうして、第1の発明のセンサ付き転がり軸受ユニットによると、磁歪センサ(11)によって、回転側軌道部材(6)の軸方向変位、回転側軌道部材(6)の径方向変位、回転側軌道部材(6)の荷重、回転側軌道部材(6)の回転速度(回転数を含む)および転動体(7)の公転速度の5つの物理量が求められ、回転側軌道部材(6)の軸方向変位、回転側軌道部材(6)の径方向変位、回転側軌道部材(6)の荷重および回転側軌道部材(6)の回転速度に基づいて、回転軸(4)に適正な制御が施されるとともに、転動体(7)の公転速度や偏心あるいは膨張量に基づいて、転がり軸受(1)の異常が監視される。
【0043】
上記第1の発明のセンサ付き転がり軸受ユニットでは、磁歪センサ(11)は、軸方向(X軸方向)の検知面および径方向(Y軸方向)の検知面を有する磁気インピーダンスセンサとされているが、上記磁歪センサ(11)のうちの径方向(Y軸方向)の検知面を有する磁気インピーダンスセンサだけを含む磁歪センサを使用することにより、以下に示すように、異なる複数の情報を1つのセンサで検知することができる。
【0044】
第2の発明によるセンサ付き転がり軸受ユニットは、図1と同じ構成であり、センサ装置(2)が、径方向の検知面を有する磁歪センサ(11)を備えており、この磁歪センサ(11)によって、回転側軌道部材(6)の偏心および回転側軌道部材(6)への作用力が検知されるものである。
【0045】
第2の発明のセンサ付き転がり軸受ユニットにより得られる情報は、回転側軌道部材(6)の軸方向の変位に関するものを除いて、図2に示したものと同じであり、その詳細説明は省略するが、このセンサ付き転がり軸受ユニットによると、磁歪センサ(11)によって、回転側軌道部材(6)に作用する力を非接触で精度よく検出することができるとともに、回転側軌道部材(6)の偏心情報も得ることができる。偏心情報は、転がり軸受(1)の異常の監視等に使用することができる。こうして、1つの磁歪センサ(11)で、軌道部材に作用する力と転がり軸受の異常監視用データという異なる性質の情報を得ることができる。
【0046】
第3の発明によるセンサ付き転がり軸受ユニットは、図1と同じ構成であり、センサ装置(2)が、径方向の検知面を有する磁歪センサ(11)を備えており、この磁歪センサ(11)によって、回転側軌道部材(6)の膨張量および回転側軌道部材(6)への作用力が検知されるものである。
【0047】
第3の発明のセンサ付き転がり軸受ユニットにより得られる情報は、回転側軌道部材(6)の軸方向の変位に関するものを除いて、図2に示したものと同じであり、その詳細説明は省略するが、このセンサ付き転がり軸受ユニットによると、磁歪センサ(11)によって、回転側軌道部材(6)に作用する力を非接触で精度よく検出することができるとともに、回転側軌道部材(6)の膨張量も得ることができる。膨張量は、遠心力(回転速度)や熱によって変化することから、転がり軸受(1)の回転速度異常や温度異常の監視等に使用することができる。こうして、1つの磁歪センサ(11)で、軌道部材に作用する力と転がり軸受の異常監視用データという異なる性質の情報を得ることができる。
【0048】
なお、本実施形態では、転動体(7)や保持器(8)に非磁性材料を用いているため、ノイズとしての周辺磁束を最小にすることができ、逆磁歪効果による微小な磁束変化を精度よく検知できる。また、本実施形態では、センサ装置(2)を外輪(5)に固定する例を示したが、内輪やハウジング等他の部材に固定してもよい。軌道部材に固定する場合では、転がり軸受ユニットとしてハウジング等とは独立した構成となり、取扱いが容易になる。また、適宜な信号処理手段の追加により、前記偏心量や膨張量、端面加工うねりを利用した物理量の検出も同時に可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるセンサ付き転がり軸受ユニットの1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】この発明によるセンサ付き転がり軸受ユニットのセンサ装置のブロック図である。
【図3】この発明によるセンサ付き転がり軸受ユニットの径方向の信号の処理過程を示す図である。
【図4】この発明によるセンサ付き転がり軸受ユニットの軸方向の信号の処理過程を示す図である。
【符号の説明】
(1) 転がり軸受
(2) センサ装置
(5) 外輪(固定側軌道部材)
(6) 内輪(回転側軌道部材)
(7) 玉(転動体)
(11) 磁気インピーダンスセンサ(磁歪センサ)
Claims (6)
- 固定側軌道部材、回転側軌道部材および転動体を有する転がり軸受と、センサ装置とを備えているセンサ付き転がり軸受ユニットにおいて、
センサ装置は、軸方向の検知面および径方向の検知面を有する磁歪センサを有しており、前記軸方向の検知面によって検出される出力の低周波成分のシフト量から回転側軌道部材の軸方向の変位が、前記径方向の検知面によって検出される出力の低周波成分のシフト量から回転側軌道部材の径方向の変位が、前記軸方向または径方向の検知面によって検出される出力の高周波成分の振幅から回転側軌道部材への作用力が、前記軸方向または径方向の検知面によって検出される出力の周波数から回転情報がそれぞれ求められることにより、回転側軌道部材の軸方向の変位、回転側軌道部材の径方向の変位、回転側軌道部材への作用力および回転情報のすべてが1つの磁歪センサによって検知されることを特徴とするセンサ付き転がり軸受ユニット。 - 回転情報として、回転側軌道部材の軸方向の変位または径方向の変位の時間変化から求められる回転側軌道部材の回転速度と、転動体から受ける力によって生じる回転側軌道部材の歪みの変化の繰り返し数から求められる転動体公転速度とが検知される請求項1のセンサ付き転がり軸受ユニット。
- 回転側軌道部材の軸方向の変位および径方向の変位の検知は、回転側軌道部材の残留磁束の変化を検知するものである請求項1または2のセンサ付き転がり軸受ユニット。
- 前記回転側軌道部材の肩部に設けられたテーパ部に前記磁歪センサが臨まされている請求項1または2のセンサ付き転がり軸受ユニット。
- 固定側軌道部材、回転側軌道部材および転動体を有する転がり軸受と、センサ装置とを備えているセンサ付き転がり軸受ユニットにおいて、
センサ装置は、径方向の検知面を有する磁歪センサを有しており、前記径方向の検知面によって検出される出力の低周波成分シフト量により求められる径方向変位から回転側軌道部材の偏心が、前記径方向の検知面によって検出される出力の高周波成分の振幅から回転側軌道部材への作用力がそれぞれ求められることにより、回転側軌道部材の偏心および回転側軌道部材への作用力が1つの磁歪センサによって検知されることを特徴とするセンサ付き転がり軸受ユニット。 - 固定側軌道部材、回転側軌道部材および転動体を有する転がり軸受と、センサ装置とを備えているセンサ付き転がり軸受ユニットにおいて、
センサ装置は、径方向の検知面を有する磁歪センサを有しており、前記径方向の検知面によって検出される出力の低周波成分シフト量により求められる径方向変位から回転側軌道部材の膨張量が、前記径方向の検知面によって検出される出力の高周波成分の振幅から回転側軌道部材への作用力がそれぞれ求められることにより、回転側軌道部材の膨張量および回転側軌道部材への作用力が1つの磁歪センサによって検知されることを特徴とするセンサ付き転がり軸受ユニット。
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