JP4165259B2 - 内燃機関の空燃比制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、吸気弁のバルブリフト量を変更可能なリフト・作動角可変機構(リフト可変機構)を備えた内燃機関に関し、特にその空燃比制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
特許文献1には、本出願人が先に提案した吸気弁のリフト量および作動角を連続的に変更可能なリフト・作動角可変機構が開示されている。この種のリフト・作動角可変機構によれば、スロットル弁の開度制御のみに依存せずにシリンダ内に流入する空気量を可変制御することが可能であり、特に負荷の小さな領域において、スロットル弁の開度を十分に大きく保った運転を実現でき、ポンピングロスの大幅な低減が図れる。
【0003】
また特許文献2には、気筒間の空燃比のばらつきを解消するために、空燃比センサの検出信号の時間的な変化と各気筒の排気タイミングとを照合して、各気筒の空燃比をそれぞれ検出し、気筒別に噴射量のフィードバック補正を行う技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−89341号公報
【0005】
【特許文献2】
特開平9−203337号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
アイドルを含む低回転低負荷域では、ポンプ損失を低減するために、吸気弁のバルブリフト量(最大リフト量)が例えば1mm程度の極小リフトに設定される。このような極小リフトの状態では、気筒間のバルブリフト量の僅かな誤差によってシリンダ内に流入する吸入空気量が比較的大きくばらついてしまい、このような気筒間の吸入空気量のばらつきに起因して、気筒間で出力トルクがばらついてしまい、不快な振動や騒音、エミッションの悪化等を招くおそれがある。この対策として、動弁系部品の寸法精度を極めて高くしたり、バルブクリアランスを自動的に解消する油圧ラッシュアジャスタを用いると、コストアップや構造の複雑化を招き、好ましくない。
【0007】
【課題を解決するための手段】
複数の気筒の吸気弁のバルブリフト量を変更可能なリフト・作動角可変機構(リフト可変機構)を備える。吸気弁のバルブリフト量が所定値以下の極小リフト状態では、空燃比を理論空燃比に対してリーンとするリーン運転を行う。上記吸気弁のバルブリフト量が小さくなるほど、空燃比のリーン化度合いを高めていく。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、極小リフト状態での気筒間の出力トルクのばらつきを有効に低減・解消し得る新規な内燃機関の空燃比制御装置を提供することを一つの目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
複数の気筒の吸気弁の作動角とバルブリフト量の少なくとも一方を変更可能なリフト・作動角可変機構を備える。吸気弁の作動角又はバルブリフト量が所定値以下の極小リフト状態では、空燃比を理論空燃比に対してリーンとするリーン運転を行う。
【0010】
【発明の効果】
極小リフトの状態では、空燃比を理論空燃比に対してリーンとするリーン運転が行われるために、仮に気筒間のバルブリフト特性のばらつきに起因して気筒間の吸入空気量がばらついても、各気筒の吸入空気量自体が過剰に与えられることとなるために、気筒間の出力トルクのばらつきが低減・解消され、運転性が向上する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、この発明に係る内燃機関の空燃比制御装置を示すシステム構成図である。火花点火式ガソリン機関からなる内燃機関1は、吸気弁3と排気弁4とを有し、その吸気弁3側の動弁機構として、後述する可変動弁機構2が設けられている。排気弁4側の動弁機構は、排気カムシャフト5により排気弁4を駆動する直動型のものであり、そのバルブリフト特性は、常に一定である。
【0012】
各気筒の排気を集合させる排気マニホルド6の出口側は、触媒コンバータ7に接続されている。この触媒コンバータ7の上流位置に、空燃比を検出するための空燃比センサ8が設けられている。触媒コンバータ7の下流側には、さらに、第2の触媒コンバータ10および消音器11を備えている。上記空燃比センサ8は、空燃比のリッチ,リーンのみを検出する酸素センサであってもよく、あるいは、空燃比の値に応じた出力が得られる広域型空燃比センサであってもよい。
【0013】
各気筒の吸気ポートに向かって各気筒毎に燃料を噴射供給するように、燃料供給手段としての燃料噴射弁12が配設されている。この吸気ポートには、ブランチ通路15がそれぞれ接続され、この複数のブランチ通路15の上流端が、コレクタ16に接続されている。上記コレクタ16の一端には、吸気入口通路17が接続されており、この吸気入口通路17に、電子制御スロットル弁18が設けられている。この電子制御スロットル弁18は、電気モータからなるアクチュエータ18aを備え、エンジンコントロールユニット19から与えられる制御信号によって、その開度が制御される。なお、スロットル弁18の実際の開度を検出するセンサ18bを一体に備えており、その検出信号に基づいて、スロットル弁開度が目標開度にクローズドループ制御される。また、スロットル弁18の上流に、吸入空気流量を検出するエアフロメータ20が配置され、さらに上流にエアクリーナ21が設けられている。
【0014】
また、機関回転速度およびクランク角位置を検出するために、クランクシャフトに対してクランク角センサ22が設けられている。本実施例では、このクランク角センサ22の検出信号からクランクシャフトの角速度変化を求め、爆発行程にある気筒の筒内圧変化を検出するようにしている。つまり、各気筒の筒内圧を直接に検出する筒内圧センサは具備していない。さらに、運転者により操作されるアクセルペダル開度(踏込量)を検出するアクセル開度センサ23を備えている。これらの検出信号は、上記のエアフロメータ20や空燃比センサ8等の検出信号とともに、エンジンコントロールユニット19に入力されている。エンジンコントロールユニット19では、これらの検出信号に基づいて、燃料噴射弁12の噴射量や噴射時期、点火プラグ24による点火時期、可変動弁機構2によるバルブリフト特性、スロットル弁18の開度、などを制御する。
【0015】
上記の吸気弁3側の可変動弁機構2は、例えば前述した特開2002−89341号公報によって公知のものであり、図2に示すように、吸気弁3のバルブリフト量及び作動角の双方を連続的に可変制御するリフト・作動角可変機構51と、そのリフトの中心角の位相(クランクシャフトに対する位相)を連続的に進角もしくは遅角させる位相可変機構52と、が組み合わされて構成されている。このようにリフト・作動角可変機構51と位相可変機構52とを組み合わせた可変動弁機構によれば、吸気弁開時期および吸気弁閉時期の双方をそれぞれ独立して任意に制御することが可能であり、また同時に、低負荷域ではリフト量(最大リフト量)を小さくすることで、負荷に応じた吸入空気量に制限することができる。なお、リフト量がある程度大きな領域では、シリンダ内に流入する空気量が主に吸気弁3の開閉時期によって定まるのに対し、リフト量が十分に小さい状態では、主にリフト量によって空気量が定まる。
【0016】
リフト・作動角可変機構51は、シリンダヘッドに回転自在に支持され、クランクシャフトに連動して回転する中空状の駆動軸53と、この駆動軸53に固定された偏心カム55と、上記駆動軸53の上方位置において平行に配置された制御軸56と、この制御軸56の偏心カム部57に揺動自在に支持されたロッカアーム58と、各吸気弁3上端のタペット59に当接する揺動カム60と、を備えている。上記偏心カム55とロッカアーム58とは略アーム状の第1リンク61によって連係されており、ロッカアーム58と揺動カム60とは、略リング状の第2リンク62によって連係されている。上記第1リンク61は、その環状部61aが上記偏心カム55の外周面に回転可能に嵌合している。また第1リンク61の延長部61bが上記ロッカアーム58の一端部に連係しており、このロッカアーム58の他端部に、上記第2リンク62の上端部が連係している。上記偏心カム部57は、制御軸56の軸心から偏心しており、従って、制御軸56の角度位置に応じてロッカアーム58の揺動中心は変化する。
【0017】
揺動カム60は、タペット59を押し下す一対のカム本体60aがカムジャーナル部60bにより一体的に接続された構造をなし、駆動軸53の外周に嵌合して回転自在に支持されている。一方のカム本体60aの先端部に、上記第2リンク62の下端部が連係している。各カム本体60aの外周面には、カムプロフィールをなすカム面及びベースサークル面とが形成されている。
【0018】
上記制御軸56は、一端部に設けられた例えば電動モータからなるリフト・作動角制御用アクチュエータ65によって、その回転位置が制御されている。制御軸56の回転位置に応じて偏心カム部57の初期位置が連続的に変化し、これに伴ってバルブリフト特性が連続的に変化する。つまり、リフトならびに作動角を、両者同時に、連続的に拡大,縮小させることができる。
【0019】
位相可変機構52は、上記駆動軸53の前端部に設けられたスプロケット71と、このスプロケット71と上記駆動軸53とを所定の角度範囲内において相対的に回転させる位相制御用油圧アクチュエータ72と、から構成されている。上記スプロケット71は、図示せぬタイミングチェーンもしくはタイミングベルトを介して、クランクシャフトに連動して軸回りに回転する。上記位相制御用油圧アクチュエータ72への油圧制御によって、スプロケット71と駆動軸53とを相対的に回動することにより、リフト中心角が遅進する。つまり、リフト特性の曲線自体は変わらずに、全体が進角もしくは遅角する。
【0020】
なお、リフト・作動角可変機構51ならびに位相可変機構52の制御としては、実際のリフト・作動角あるいは位相を検出するセンサを設けて、クローズドループ制御するようにしても良く、あるいは運転条件に応じて単にオープンループ制御するようにしても良い。
【0021】
上記のエンジンコントロールユニット19では、アクセルペダル開度により定まる要求トルクが得られるように目標吸入空気量が算出される。この目標吸入空気量に基づいて、電子制御スロットル弁18の開度及び可変動弁機構2のバルブリフト特性が設定される。スロットル弁18の開度は、ポンプ損失等を低減するために可変動弁機構のないものに比して全体的に低く抑制される。
【0022】
アイドル域や極低回転低負荷域等では、リフト・作動角可変機構51によって吸気弁3のリフト量が1mm程度の極小リフトに設定される。このような極小リフトでは、可変動弁機構2の部品寸法の誤差あるいは組付誤差等に起因する気筒間のリフト量の僅かなばらつきによって、例えば図3(a)に示すように、各#1〜#6気筒の吸入空気量が比較的大きくばらついてしまう。一方、燃料噴射弁の噴射量の精度は高く、上述した極小リフト状態での気筒間の吸入空気量のばらつきに比して、気筒間の燃料噴射弁の噴射量のばらつきは十分に小さい。
【0023】
図3(b)は、極小リフトの設定状態で、空燃比センサ8の検出信号に基づいて排気の空燃比を理論空燃比の近傍に維持するように燃料供給量を制御するフィードバック制御を行う比較例を示している。この比較例のように、極小リフト時にフィードバック制御を行うと、吸入空気量が目標値(平均値)よりも低い#1,#5気筒では、燃料供給量に対して吸入空気量が不足し、筒内圧Piが低くなってしまい、結果として、気筒間で筒内圧Piすなわち出力トルクが比較的大きくばらついてしまう。
【0024】
そこで本実施例では、極小リフトの状態では、気筒間のバルブリフト特性のばらつきに起因する吸入空気量のばらつきの影響を吸収・解消するように、空燃比を理論空燃比に対してリーン(大きい値)とするリーン運転を行う。つまり、全ての#1〜#6気筒で吸入空気量が過剰に供給される状態とする。これにより、燃料供給量に対して吸入空気量が不足する気筒が存在しなくなる。従って、各気筒の出力トルクに対応する筒内圧Piは、実質的に各気筒毎の燃料供給量にのみ依存することとなる。上述したように燃料噴射弁の流量ばらつきは非常に小さいため、図3(c)に示すように、仮に#1〜#6気筒間の吸入空気量がばらついても、気筒間の出力トルクのばらつきが十分に抑制・解消される。
【0025】
極小リフトの設定状態では、バルブリフト量が1mm程度以下と極めて小さいために、吸気流が吸気弁の間隙においてチョークした状態となり、シリンダへの流入速度が高まり、シリンダ内のガス流度が強化される。このため、リーン限界が伸び、上述したようにリーン運転を行っても安定した燃焼を実現できる。リーン運転による排気のリーン化によりNOxの排出が懸念されるものの、極小リフトの設定が用いられるアイドル域や極低回転低負荷域では、排気ガスのボリューム自体が小さいため、実用上影響は微小である。
【0026】
図4は、本実施例の制御の流れを示すフローチャートである。S(ステップ)1では、吸気弁のバルブリフト量(又は作動角)が所定値α以下であるかを判定する。バルブリフト量が所定値α以下の場合には、S1からS2へ進み、上述したようなリーン運転を実施する。具体的には、現在のリフト・作動角を、図5に示すような予め設定・記憶された目標空燃比の設定マップにマッピングして、目標空燃比を求める。この設定マップに示すように、リフト・作動角が所定値αよりも低い極小リフト域では、目標空燃比を理論空燃比よりもリーン化すなわち大きくし、かつ、リフト・作動角が小さくなるほど、目標空燃比が理論空燃比から徐々にリーン化すなわち大きくなるように、リーン度合いを高めていく。つまり、吸入空気量の誤差・ばらつきにかかわらず、全気筒の吸入空気量が確実に過剰(リーン)となるように、目標空燃比が設定される。例えば、吸入空気量の誤差が±20%値度の状況では、目標空燃比を理論空燃比に対して20%以上リーン化する。
【0027】
このようにして設定された目標空燃比に基づいて、スロットル弁18の開度を増加側へ補正する。つまり、空燃比をリーン化するにあたって、出力トルクが要求トルクに対して変動することのないように、燃料噴射量を変更することなく、スロットル弁18の開度を調整し、吸入空気量を増加側へ補正する。
【0028】
一方、S1でバルブリフト量が所定値αを越えていると判定された場合、S3へ進み、排気エミッションの改善等を図るために、理論空燃比へ向けたフィードバック制御を行う。具体的には、空燃比センサ8により検出される信号に基づいて、排気の空燃比を目標空燃比である理論空燃比の近傍に維持するように、燃料噴射弁12からの燃料供給量をフィードバック制御する。
【0029】
なお、空燃比センサ8として酸素センサを用いた場合、極小リフト状態では、燃料供給量の制御はオープンループ制御となる。一方、空燃比センサ8として広域型空燃比センサを用いた場合、極小リフト状態でも、排気の空燃比を目標空燃比(リーン)の近傍に維持するように燃料供給量を制御するフィードバック制御を行うことができる。
【0030】
以上のように本発明を具体的な実施例に基づいて説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変形・変更を含むものである。例えば、排気側にも位相可変機構を適用した内燃機関に本発明を適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例を示す構成説明図。
【図2】可変動弁機構の要部を示す斜視図。
【図3】気筒間の吸入空気量のばらつきを示し、(b)が比較例、(c)が本実施例に係るグラフ。
【図4】本実施例の制御の流れを示すフローチャート。
【図5】目標空燃比の設定マップ。
【符号の説明】
1…内燃機関
3…吸気弁
8…空燃比センサ
12…燃料噴射弁
51…リフト・作動角可変機構
Claims (5)
- 複数の気筒の吸気弁のバルブリフト量を変更可能なリフト可変機構と、
吸気弁のバルブリフト量が所定値以下の極小リフト域では、空燃比を理論空燃比に対してリーンとするリーン運転を行うリーン運転手段と、を有し、
このリーン運転手段は、上記吸気弁のバルブリフト量に応じて、空燃比のリーン化度合いを設定する内燃機関の空燃比制御装置。 - 各気筒へ燃料を供給する燃料供給手段と、
内燃機関の排気系に設けられた空燃比検出手段と、
少なくとも吸気弁のバルブリフト量が所定値を越える運転条件では、上記空燃比検出手段により検出される空燃比を理論空燃比に維持するように、上記燃料供給手段による燃料供給量を制御するフィードバック制御手段と、
を有する請求項1に記載の内燃機関の空燃比制御装置。 - 内燃機関の吸気系にスロットル弁が設けられ、
上記リーン運転手段は、空燃比をリーン化するにあたって、燃料噴射量を変更することなく、スロットル弁の開度を大きくして吸入空気量を増量する請求項1又は2に記載の内燃機関の空燃比制御装置。 - 上記リーン運転手段は、全気筒の空燃比をリーンとするように、吸入空気量を増量補正する請求項3に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
- 上記リーン運転手段は、上記吸気弁のバルブリフト量が小さくなるほど、空燃比のリーン化度合いを高めていく請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の空燃比制御装置。
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