JP4165063B2 - マイクロレンズの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロレンズ及びその製造方法の技術分野に属し、特に、液晶装置等の電気光学装置等に適用されて好適なマクロレンズ及びその製造方法の技術分野に属する。また、本発明は、そのようなマイクロレンズを備えてなる電気光学装置の技術分野にも属する。
【0002】
【背景技術】
マイクロレンズ、ないしマイクロレンズアレイは、各種の光学機器に使用されている。例えば、代表的には、マトリクス状に配列された複数の電荷結合素子(CCD;Charge Coupled Device)を利用して外界の景色ないし風景を撮像することの可能なCCDカメラや、その一方においてマトリクス状に配列された複数の電極を有する一対の基板間で液晶を挟持してなり、前記電極を利用して前記液晶に対し電圧を印加することにより画像を表示することの可能な液晶表示装置等がある。
【0003】
いずれにしても、マイクロレンズは、マトリクス状に配列された複数のCCD、あるいは複数の電極の一を単位とする画素に対応するように設けられることで、全体としてマイクロレンズアレイとして設けられ、当該複数の画素、あるいは複数の電極に対して入射すべき光を集光することにより、光の利用効率を高める作用を担う。このようなことにより、CCDカメラ等においては、取得される画像の画質向上に貢献し、液晶表示装置等においては、表示すべき画像の画質向上に貢献することになる。
【0004】
ところで、このようなマイクロレンズを製造する方法としては、従来、多数のバリエーションが提案されているが、代表的には、例えば次のような工程に沿って製造される。まず、(1)基板上にマスクを成膜し、(2)このマスクに対して、個々のマイクロレンズを形成すべき位置に対応するような開口部を形成し、(3)前記開口部を通じて前記基板に対するウェットエッチングを実施してマイクロレンズの外形形状を成形した後、(4)前記マスクを除去するとともに前記マイクロレンズの外形形状内に適当な媒質を充填する、というものである。この場合すなわち、凹状のマイクロレンズが形成されることになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来におけるマイクロレンズ及びその製造方法については、次のような一般的課題が常に認識されている。すなわち、集光特性の更なる向上である。例えば、上述した代表的なマイクロレンズの製造方法、あるいは該方法により製造されたマイクロレンズであっても、相応の集光特性は勿論発揮されうるものの、当該製造方法では、その工程(3)において、マイクロレンズの外形形状をウェットエッチングで成形することに起因する制約が伴う。すなわち、ウェットエッチングが基板を等方的に侵食していく性質をもつことにより、これにより成形されるマイクロレンズの外形形状は、あたかも前記開口部を中心とした半球状にしか成形し得ないということである。つまり、上述のような製造方法では、マイクロレンズの外形形状が半球状にしかなりえないから、そこから得られる集光特性も、自ずと限られたものしか得ることができないのである。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、従来よりも優れた集光特性を発揮しうるマイクロレンズ及びその製造方法を提供することを課題とする。また、本発明は、そのようなマイクロレンズを備えた電気光学装置を提供することも課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のマイクロレンズは、上記課題を解決するために、軸対称な立体的閉曲面を含むとともに、前記立体的閉曲面の軸を中心とした当該立体的閉曲面上の外周長が最も大きい部分における当該立体的閉曲面の平坦断面から前記立体的閉曲面上における頭頂部に至るまでの最大距離が、前記平坦断面の中央部から前記平坦断面の周辺部に至るまでの距離よりも大きい。
【0008】
本発明のマイクロレンズによれば、まず、その外形形状が、軸対称な立体的閉曲面を含む。ここにいう「立体的閉曲面」とは、基本的に、軸対称でさえあれば、その具体的な形態がどのようなものであっても、それを包含する概念である。すなわち「立体的閉曲面」とは、例えば、より一般的には、至る所に凹凸の存在するような閉曲面や、全部又は一部に「平面」を含む閉曲面等を含意することをはじめ、いわばより均整の取れた、後述する砲弾錘等の立体形状等をも当然に含意する。ただし、本発明にいう「立体的閉曲面」は、あくまでもマイクロレンズの外形形状を構成するものであるから、好ましくは、例えば上述したような砲弾錘等が想定されることになる。ただし、本発明は、不規則な立体形状等を積極的に排除する意図までは有さないことに注意されたい。
【0009】
ここで特に、本発明では、前記立体的閉曲面の軸を中心とした当該立体的閉曲面上の外周長が最も大きい部分における当該立体的閉曲面の平坦断面が想定される。
【0010】
すなわち、本発明に係るマイクロレンズの外形形状を、例えば、任意の平面形状を有する底面を備えた錐状体等として想定すれば、前記平坦断面は当該底面が該当することになる。ここに「錐状体」とは、例えば、円錐、四角錐等が想定され、また、円錐の軸に垂直な切断を行うことにより得られる立体形状(すなわち、該軸を含む断面が略台形状となる、いわば「切頭円錐」とも呼称しうる形状)や、この切頭円錐における前記切断面に生じた角部を丸めた立体形状(いわば「砲弾錐」とも呼称しうる形状)等を想定することが可能である。
【0011】
ただし、本発明に係るマイクロレンズの外形形状が上述したように平坦断面を含みうるとしても、本発明にいう「平坦断面」が、必ずしもマイクロレンズの外形形状の一部を構成している必要はない。つまり、当該「平坦断面」とは、マイクロレンズそれ自体からみて、観念上含まれるというに過ぎない、あるいは該平坦断面は想定されるに過ぎないから、例えば、上述した砲弾錐の底面に、該砲弾錐より短軸の別の砲弾錐の底面を張り合わせて形作られるような形状を最終的に有するマイクロレンズであっても、後述する「距離」に関する規定を満たす限り、それは本発明の範囲内にある。
【0012】
そして、本発明では、前記平坦断面から前記閉曲面上における頭頂部に至るまでの最大距離が、前記平坦断面の中央部から前記平坦断面の周辺部に至るまでの距離よりも大きいのである。
【0013】
例えば、上述の砲弾錐を前提とすれば、その平坦断面とは該砲弾錐の底面たる円を意味するとともに、頭頂部とは、その底面から最も離れた前記立体的閉曲面上の一点、すなわち前記した切頭に係る切断面に含まれる一点、あるいはまた前記軸と前記立体的閉曲面とが交わる一点を意味する。つまり、平坦断面から頭頂部に至るまでの最大距離とは、いわば砲弾錐の軸の高さといいうるものが該当することになる。また、前記平坦断面の中央部とは、前記底面たる円の中心を意味するとともに、平坦断面の中央部からその周辺部に至るまでの距離とは、その底面たる円の半径の長さが該当することになる。
【0014】
そして、本発明においては、前記砲弾錐を前提とすると、前記半径の長さが前記軸の高さよりも大きいのである。言い換えれば、いわば「縦に長い」、あるいは「深さの大きい」立体形状が一般的に想定されることになる。このような立体形状は、従来におけるマイクロレンズとは基本的に異なる形状であるといわなければならない。なぜなら、既に述べたように、従来のマイクロレンズは、通常、半球状、すなわち本発明に係る定義に沿っていえば、円の半径と軸の高さが等しい立体形状を有するものだからである。
【0015】
本発明では、マイクロレンズの外形形状が、上述したような、いわば「縦に長い」、あるいは「深さの大きい」立体形状によって形作られることにより、これを基本として形成されるマイクロレンズ(すなわち、前記外形形状の内部に又は周囲に、適当な媒質を配置することによって、凸レンズ又は凹レンズとして形成されるマイクロレンズ)は、従来に比べて優れた集光特性を発揮することになる。というのも、本発明に係るマイクロレンズによれば、限られた設置面積の中で、媒質中を進むべき光の経路をより長くとることが可能となるからである。また、本発明に係るマイクロレンズは、従来とは異なる形態を有するマイクロレンズとして、特異な集光特性を発揮させることも可能であると考える。
【0016】
本発明のマイクロレンズの一態様では、前記平坦断面は円形状を含む。
【0017】
この態様によれば、マイクロレンズの外形形状として、例えば典型的には、上述したような「砲弾錐」や「円錐」等を想起することが可能である。そして、このような形状は、従来のマイクロレンズの形状と類似性を有するものとして、これまで広く利用されていたCCDカメラ用のマイクロレンズや、電気光学装置用のマイクロレンズとして、好適に使用することが可能である。
【0018】
本発明のマイクロレンズの他の態様では、前記平坦断面は四辺形状を含む。
【0019】
この態様によれば、例えば、本態様に係るマイクロレンズを電気光学装置に使用する場合に好適である。というのも、電気光学装置において、マイクロレンズの一つ一つは、該電気光学装置を構成する画素の一つ一つに対応して設けられる場合が一般的に想定されるが、ここにいう画素は、通常、格子状に設置された各種配線等によって規定される略四辺形状に形成されていることが一般的だからである。
【0020】
本態様に係るマイクロレンズは、そのような画素の形状に略合致した形状となる平坦断面を有するマイクロレンズであるから、入射する光の殆どすべてを集光することが可能となり、入射光の利用効率をより高めることが可能となるのである。
【0021】
なお、本態様にいう「四辺形状」は、厳密な意味において四つの角を有する平面形状を意味することは勿論、当該角に丸みを帯びさせた形状等をも含意する。
【0022】
本発明のマイクロレンズの他の態様では、前記立体的閉曲面は、紡錘形状の軸の中心で該軸に垂直に切断した半紡錘形状及び該切断された面を含む。
【0023】
この態様によれば、例えば典型的には、既に述べた「砲弾錐」等が想起されることになる。そして、このような形態であれば、上述した作用効果を略同様に発揮させることが可能となる。
【0024】
本発明のマイクロレンズの他の態様では、基板の表面に前記外形形状を規定する凹部が形成されており、該凹部には前記基板よりも高い屈折率を有する媒質が充填されてなる。
【0025】
この態様によれば、外形形状の内部に基板よりも高い屈折率を有する媒質が充填されてなるから、光路変更特性により優れたマイクロレンズを提供することが可能となる。また、この態様のように、基板の表面に凹部を形成する方法によれば、比較的簡易に、本発明に係るマイクロレンズを形成することが可能となる。
【0026】
本発明のマイクロレンズの他の態様では、基板上に、前記マイクロレンズがアレイ状に複数形成されている。
【0027】
この態様によれば、いわゆるマイクロレンズアレイが形成されることになり、該アレイ全体として、優れた集光特性等を発揮させることが可能となる。
【0028】
本発明のマイクロレンズの製造方法は、基板上にマスクを成膜する工程と、該マスクに対して、個々のマイクロレンズを形成すべきレンズ形成用領域に対応した開口部を形成する工程と、前記開口部を通じてドライエッチングを実施する工程と、該ドライエッチングを実施する工程の後に前記開口部を通じてウェットエッチングを実施してマイクロレンズの外形形状を形成する工程とを含む。
【0029】
本発明のマイクロレンズの製造方法によれば、まず、マスクに形成された開口部を通じて、例えば反応性イオンエッチング等のドライエッチングが行われることにより、前記開口部の径に略一致した開口径を有するとともに、該開口径に比べて深さの大きい孔(以下、「基準孔」という。)が形成されることになる。より具体的には、この基準孔は、開口部の開口形状がどのようなものであるかにもよるが、例えば該開口形状が四辺形状であれば、長軸の立方体形状の孔となるし、該開口形状が円形状であれば、長軸の円柱形状の孔となる。このような「長軸の」孔が形成されるのは、ドライエッチングが、そもそも異方的に侵食を進行させる性質を有するからである。そして、本発明では、前記開口部を通じて、適当なエッチング液を利用したウェットエッチングが行われることにより、前記基準孔を基準として、等方的にエッチングが進行することになる。
【0030】
したがって、本発明に係る、このような方法によれば、上述したようなマイクロレンズの外形形状、すなわちいわば「縦に長い」、あるいは「深さの大きい」立体形状(あるいは、「立体的閉曲面」)を容易に形成することが可能となる。
【0031】
また、本発明に係る方法によれば、ドライエッチング及びウェットエッチングの程度等を適宜調整することにより、より好ましい形態となるマイクロレンズの外形形状の調整をも容易に実施しうることになる。
【0032】
なお、マイクロレンズの外形形状を具体的に調整ないし制御するにあたっては、上述したように、ドライエッチング及びウェットエッチングのそれぞれをどのように実施するか(すなわち例えば、ドライエッチング時間とウェットエッチング時間の比、あるいは一工程中におけるドライエッチングの条件変更等)や、前記開口部の開口径の大きさ等が基本的に重要なファクターになると考えられるが、それらの決定は、当該マイクロレンズの外形形状を、例えば光学的な基準からどのようにするかを決めた上で、経験的、実験的、理論的又はシミュレーション等の結果に基づいて行うことができる。
【0033】
本発明のマイクロレンズの製造方法の一態様では、前記開口部は、その辺縁にテーパが形成されている。
【0034】
この態様によれば、ドライエッチングが有する異方性により、前記開口部を通じたエッチングによって、その断面がいわば楔形状の基準孔が形成されることになる。より具体的には、開口部の開口形状が円形状であれば、円錐に近い形の基準孔が形成されることになり、四辺形状であれば、四角錐に近い形の基準孔が形成されることになる。そして、本発明に係るウェットエッチングは、この基準孔の存在を前提にして行われる。
【0035】
このような態様によれば、例えば、上述したような「砲弾錘」形状を有するマイクロレンズの外形形状を、より好適に形成することが可能であるのは明白である。
【0036】
本発明のマイクロレンズの製造方法の他の態様では、前記開口部の開口径は、前記レンズ形成用領域の大きさよりも小さい。
【0037】
この態様によれば、開口部の開口径が、個々のマイクロレンズを形成すべきレンズ形成用領域、換言すれば、個々のマイクロレンズの開口径よりも小さいことから、前記ドライエッチングを実施することにより形成される前記基準孔は、当該マイクロレンズの開口径よりも小さい開口径を有することになる。つまり、より「細長い」基準孔となるのである。そして、上述したウェットエッチングを実施する工程は、この細長い基準孔を前提として行われることになるから、本態様によれば、より好適な態様となるマイクロレンズを形成することができる。
【0038】
本発明のマイクロレンズの製造方法の他の態様では、前記ウェットエッチングを実施してマイクロレンズの外形形状を形成する工程は、前記開口部を通じて該ウェットエッチングにより形成される孔が、隣接する前記開口部を通じて該ウェットエッチングにより形成される他の孔との間で重なり合うまで、当該ウェットエッチングを進行させる工程を含む。
【0039】
この態様によれば、前記孔及び前記他の孔を平面視した場合にみられる、当該孔及び当該他の孔の輪郭線は、もはや円の一部たる曲線ではなく直線になる。なぜなら、前記孔及び前記他の孔が、いわば接触する以前においては、それらの輪郭線は、平面的にみて円の一部たる曲線を示すのに対し、隣接する孔同士間で「重なり合」いが生じると、曲線と曲線とがぶつかり合う(すなわち、孔同士の結合が生じる)ことにより、結果的に輪郭線は直線を含むことになるからである。
【0040】
そして、このような方法により製造されたマイクロレンズの外形形状においては、上述のような現象が、ある孔と、該孔に上下左右で隣接する前記他の孔で生起するため、その底面は四辺形状を有するものになる一方、残余の主要部(図7において紙面に垂直で向こう側に存在する部分)は、なお砲弾錘形状ないしはすり鉢形状を維持することになる。
【0041】
このように、本態様に係る方法によれば、その底面が四辺形状を含む錘形状を外形形状としたマイクロレンズを容易に形成することが可能となる。
【0042】
本発明の電気光学装置は、上記課題を解決するために、上述した本発明のマイクロレンズ(ただし、その各種態様を含む。)を備えた基板と、該基板に対向配置される他の基板と、前記基板及び前記他の基板の間に封入されてなる電気光学物質とを備える。
【0043】
本発明の電気光学装置によれば、集光特性の優れたマイクロレンズを備えていることにより、より明るい画像を表示することが可能となる。
【0044】
本発明の電気光学装置の一態様では、前記基板又は前記他の基板の少なくとも一方の上には、表示用電極と、該表示用電極に薄膜トランジスタを介して又は直接に接続された配線とを更に備える。
【0045】
この態様によれば、例えば、前記表示用電極が画素毎に形成された画素電極であり、該画素電極に対して、薄膜トランジスタを介して、前記配線の一例たる走査線及びデータ線が接続されることにより、いわゆるアクティブマトリクス駆動が可能となる。また、前記表示用電極がストライプ状電極であり、該ストライプ状電極に直接に配線が接続されることにより、いわゆるパッシブマトリクス駆動が可能となる。
【0046】
そして、本発明に係るマイクロレンズは、上記表示用電極等の各種構成を備えない基板側に配置され、あるいは上記表示用電極等の各種構成が備えられた他の基板側に配置されることになる。
【0047】
以上、本態様によれば、上述したような各種の駆動態様が可能な電気光学装置において、上述した本発明のマイクロレンズが備えられていることにより、例えば、該マイクロレンズが前記基板側に配置されている場合には、集光特性の向上により、より明るい画像を表示することが可能となる一方、例えば、該マイクロレンズが前記他の基板側に配置されている場合であって、該他の基板上に前記薄膜トランジスタが設置されている場合には、当該薄膜トランジスタに入射する光の進行経路を効果的に変更することが可能となり、その入射が生じることを未然に回避し、もって光リーク電流の低減を実現すること等が可能となる。
【0048】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施の形態から明らかにされる。
【0049】
【発明の実施の形態】
以下では、本発明の実施の形態について図を参照しつつ説明する。なお、本実施形態においては、説明の便宜上、まず、マイクロレンズの製造プロセスについて説明した後、該製造プロセスを経て形成されたマイクロレンズの説明を行い、その後に該マイクロレンズを適用した電気光学装置についての説明を行うこととする。
【0050】
(マイクロレンズの製造プロセス)
以下では、本実施形態に係るマイクロレンズの製造プロセスについて、図1から図4を参照して説明する。ここに、図1及び図2は、本実施形態に係るマイクロレンズの製造工程を順に追って示す断面図である。また、図3は、本製造工程で使用されるマスクに対して形成される開口部の態様を示す平面図である。さらに、図4は、本製造プロセスにより、最終的に形成されるマイクロレンズの具体的態様を示す斜視図である。
【0051】
まず、図1の工程(1)に示すように、基板10を用意する。ここで基板10の材質は、基本的に限定されないが、例えば、石英基板、ハードガラス、シリコン基板等とすればよい。次に、図1の工程(2)に示すように、該基板10に対して、例えばポリシリコン等からなるマスク401を形成した後、該マスク401に対してフォトリソグラフィ及びエッチング等を応用して、基板10全面に関して所定パターンを有する開口部401aを形成する。
【0052】
本実施形態においては、この開口部401aは、例えば図3に示すように、一つ一つのマイクロレンズを形成すべきレンズ形成用領域501a(図においては、一例のみ示した。)の各々に応じて、複数形成されることになる。このことから、本実施形態においては、基板10上に、マイクロレンズ「アレイ」が形成されることになる。
【0053】
また、この開口部401aの開口径は、図3に示すように、レンズ形成用領域501aの大きさ(すなわち、形成すべきマイクロレンズの開口径)よりも小さめになるように形成しておくとよい。これは、後に予定されるドライエッチング工程において、本発明において好適な、いわば「縦に長い」、ないしは「深さの大きい」、あるいは「細長い」基準孔を形成するための措置であり、また、後のウェットエッチング工程において、該開口部401aを通じた等方的なエッチングが進行することにより、隣接するマイクロレンズがいわば「接触」(図1の工程(4)から図2の工程(5)参照)することを見越した措置でもある。なお、どの程度小さくするかは、経験的、実験的、理論的、あるいはシミュレーション等の結果を勘案すること等によって決定することができる。
【0054】
なお、図3において、開口部401aの開口形状は、円形状とされているが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。例えば、図3に示すような形態に代えて、開口形状を、四辺形状を含むものや、場合により特殊な平面形状を含むものとしてよいことは勿論である。
【0055】
次に、図1の工程(3)に示すように、前記開口部401aを通じ、例えば反応性イオンエッチング等のドライエッチングを実施する。このドライエッチングの実施により、基板10上には、図1の工程(3)に示すように、前記開口部401aの径に略一致した開口径を有するとともに、該開口径に比べて深さの大きい基準孔501b、すなわち一言でいえば、「細長い」基準孔501bが形成されることになる。本実施形態においては、開口部401aの開口形状が、図3に示したように円形状であったから、基準孔501bは、円柱形状を有する孔となる。このような「長軸の」孔が形成されるのは、ドライエッチングが異方的に侵食を進行させる性質を有するからである。
【0056】
このドライエッチング工程が完了したら次に、図1の工程(4)に示すように、前記開口部401aを通じ、適当なエッチング液を利用したウェットエッチングを実施する。すなわち、このウェットエッチングは、前工程で形成された細長い円柱形状を有する基準孔501bを基準として行われることになる。そして、このエッチングは等方的に進行するから、図1の工程(4)に示すように、マスク401の裏面及び基板10の表面との界面においても該エッチングは進行し、また、自然に曲面が形成されるような形で該エッチングは進行することになる。なお、本実施形態では、このようなウェットエッチング工程を、図2の工程(5)に示すように、上述の曲面が隣接する同士間でいわば「接触」するようになるまで進行させる。
【0057】
以上のようなウェットエッチング工程を終了させ、最後に、図2の工程(5)に示すように、残存したマスク401を完全に除去すると、マイクロレンズ外形形状501Pの形成が完了する。続いて、このように形成されたマイクロレンズ外形形状501Pの内部に対して、図2の工程(6)に示すように、例えばSiNx又はITO等の透明材料からなる媒質511を充填すると、マイクロレンズ501が完成する。
【0058】
なお、この媒質511の充填は、より具体的には、次のように実施することができる。すなわち、まず、マイクロレンズ外形形状501Pの内部及び基板10の表面に対して、上述のような透明材料からなる膜を成膜する。つまり、該透明材料が、外形形状501Pの内部から基板10表面に、いわば「はみ出る」ような成膜を実施するのである。次に、この膜の表面に対して、CMP(Chemical Mechanical Polishing)処理等の平坦化処理を実施する。このような平坦化処理を施すことによって、図2の工程(7)に示すように、マイクロレンズ外形形状501Pの内部のみに前記膜が残存する形態、すなわちその内部に媒質511が充填されてなるマイクロレンズ501を現出させることが可能となる。そしてこの場合特に、当該媒質511の表面及び基板10の表面の両者に関して、平坦な面を容易に現出させることが可能となる。
【0059】
また、充填媒質としては光または熱硬化する高屈折率の透明有機材料を用いても良い。この場合は図2の工程(8)に示すように透明有機媒質511を塗布し、外形形状501Pの内部を充填すると共にカバーガラス201を接着する。
【0060】
以上のような製造プロセスを経て形成されたマイクロレンズ501、ないしその外形形状501Pは、図2の工程(6)又は(7)、あるいは図4の斜視図によく示されているように、いわば「砲弾錐」の形状を有することになる。
【0061】
なお、マイクロレンズ外形形状501Pを具体的に調整ないし制御するにあたっては、上述したドライエッチング及びウェットエッチングのそれぞれをどのように実施するか(すなわち例えば、ドライエッチング時間とウェットエッチング時間の比、あるいは一工程中におけるドライエッチングの条件変更等)や、前記開口部401aの開口径の大きさ等が基本的に重要なファクターになると考えられるが、それらの決定は、当該マイクロレンズ外形形状を、例えば光学的な基準からどのように調整ないし制御するかを決めた上で、経験的、実験的、理論的又はシミュレーション等の結果に基づいて行うことができる。
【0062】
(マイクロレンズの具体的態様)
このように製造されたマイクロレンズ501の具体的態様及びその作用効果は、次のようになる。すなわち、このマイクロレンズ外形形状501Pは、図4に示すように、軸550に対して対称な立体的閉曲面551を含むとともに、軸550を中心とした立体的閉曲面551上の外周長が最も大きい部分における当該閉曲面551の平坦断面552から前記閉曲面551上における頭頂部551Hに至るまでの最大距離L1が、前記平坦断面552の中央部552Cから前記平坦断面552の周辺部552Pに至るまでの距離L2よりも大きいのである。
【0063】
より具体的には、本実施形態に係るマイクロレンズ501の外形形状501Pは、上述したように砲弾錐形状を有するものであるから、平坦断面552は、図4に示すように外形形状501Pの底面を構成するとともに、その形状は円形状となる。そして、頭頂部551Hとは、この平坦断面552から最も離れた閉曲面551上の一点、あるいは軸550と閉曲面551とが交わる一点に該当する。つまり、本実施形態における平坦断面552から頭頂部551Hに至るまでの最大距離L1とは、砲弾錘の軸の高さに一致することになる。また、平坦断面552の中央部552Cとは、前記底面たる円形状の中心を意味するとともに、平坦断面の中央部552Cからその周辺部552Pに至るまでの距離L2とは、前記円形状の半径に一致することになる。そして、図2の工程(6)又は(7)として示す図、あるいは図4等からわかるように、L1>L2である。
【0064】
以上のように、本実施形態においては、マイクロレンズ外形形状501Pが、いわば「縦に長い」、あるいは「深さの大きい」立体形状によって形作られることにより、これを基本として形成されるマイクロレンズ501は、従来に比べて優れた集光特性を発揮することになる。というのも、このようなマイクロレンズ501によれば、限られた設置面積、あるいは開口径の中で、媒質中を進むべき光の経路をより長くとることが可能となるからである。また、本発明に係るマイクロレンズは、従来とは異なる形態を有するマイクロレンズとして、特異な集光特性を発揮させることも可能であると考える。
【0065】
また、このようなマイクロレンズ501を製造するためには、上述した製造方法が最も効率的な方法の一つであることがわかる。すなわち、上述した通り、本実施形態においては、開口部401aを通じたドライエッチングにより「細長い」基準孔501bを形成した後に、ウェットエッチングを実施することから、「縦に長い」外形形状501Pを、極めて自然に、かつ簡単に形成することができるからである。
【0066】
なお、本発明においては、マイクロレンズ外形形状501Pの具体的態様としては、図4に示す他に種々の形態を考えることができる。すなわち、本発明にいう「立体的閉曲面」というのは、基本的に、軸対称でさえあれば、その具体的態様がどのようなものであっても、それを包含する概念であるから、例えば図5に示すように、その底面が略四辺形状であるような、略四角錘を含む外形形状601Pであってもよい。この図において、平坦断面652は、前記底面たる略四辺形状であり、この平坦断面652から頭頂部651Hまでの最大距離L3は、この略四角錘の軸の高さに一致する。また、平坦断面652の中心部652Cからその周辺部652Pに至るまでの距離L4は、例えば図5に示すように、前記略四辺形状の対角線の一部の長さに一致することになる。そして、むろんL3>L4である。なお、周辺部652Pを、上述のような角部以外に想定する場合であっても、L3>L4が成立することが明らかである。
【0067】
ちなみに、このような形態となるマイクロレンズ外形形状601Pは、例えば次のようにして形成することが可能である。すなわち、図6に示すように、ウェットエッチングにより形成される孔Hの内面たる曲面が、隣接する同士間で「接触」するという程度を超えて、両者がいわば「重なり合う」に至るまで、ウェットエッチングを進行させるのである。ここに図6は、上述の図2の工程(5)に対応する工程を、工程(5´)として示す断面図である。
【0068】
この場合においては、図7に示すように、前記孔Hを平面視した場合にみられる、当該孔Hの輪郭線は、もはや円の一部たる曲線ではなく直線になる。なぜなら、前記「接触」以前においては、当該輪郭線は、平面的にみて円の一部たる曲線を示すのに対し(図7中破線参照)、隣接する孔同士間で「重なり合い」が生じると、曲線と曲線とがぶつかり合う(すなわち、孔同士の結合が生じる)ことにより、結果的に輪郭線は直線を含むことになるからである。そして、このような方法により製造されたマイクロレンズの外形形状においては、上述のような現象が、図7に示すように上下左右に隣接する前記孔H1乃至H4で生起するため、その底面は四辺形状を有するものになる一方、残余の主要部(図7において紙面に垂直で向こう側に存在する部分)は、なお砲弾錘形状ないしはすり鉢形状を維持することになる。なお、本発明の一態様にいう「平坦断面が四辺形状を含む」ということは、このような場合も含めていうものである。
【0069】
さて一方、本発明にいう「平坦断面」は、必ずしもマイクロレンズ501それ自体の形状の一部を構成している必要はない。つまり、該平坦断面は、該マイクロレンズ501からみれば、観念上含まれていると言えればよいから、例えば図8に示すように、砲弾錐の底面に、該砲弾錐より短軸の別の砲弾錐の底面を張り合わせて形作られるような立体形状を有するマイクロレンズ701であっても、本発明の範囲内にある。この場合でも、図4で既に説明したのと略同様に、L5>L6が成立する。なお、このようなマイクロレンズ701の場合は、図中上方に示す前記短軸の別の砲弾錘は、前記媒質511を適当な方法により塗布する等の方法により形成することが可能である。
【0070】
さらに、本実施形態においては、図4乃至図8に示したような砲弾錘形状を含む外形形状、より一般的にいえば、その先端部が比較的鋭くなるような外形形状を有するマイクロレンズを形成するためには、上述のマイクロレンズの製造プロセスにおいて、次のような処置を施すとよい。すなわち、図9の工程(2´)に示すように、マスク401に対して形成される開口部401a´について、その辺縁は基板10の表面に対して傾きを有する、すなわち辺縁にテーパを設けるようにするとよい。ここに、図9は、図1における工程(2)及び(3)に対応するものを、工程(2´)及び(3´)として示すものである。
【0071】
このような開口部401a´の辺縁におけるテーパの存在によれば、該開口部401a´を通じたドライエッチングを実施することにより、図9の工程(3´)に示すように、錐形状を有する基準孔501cが形成されることになる。つまり、開口部401a´の開口形状が図3に示すような円形状であると仮定すれば、基準孔501cは、円錐形状を有する孔となる。そして、このような基準孔501cを形成した後、ウェットエッチングを実施すると、該ウェットエッチングは、前記基準孔501cを基準として進行することになる(図1の工程(4)以降参照)。
【0072】
このようなことから、例えば、マイクロレンズ外形形状を図4に示したような砲弾錘形状を有するものとして形成したい場合に、図9に示すような方法を採用するとより好適であることが明白である。すなわち、本方法によれば、その先端が比較的鋭いマイクロレンズ外形形状を、より容易に形成することが可能となるのである。
【0073】
(電気光学装置に対するマイクロレンズの適用)
以下では、本発明のマイクロレンズを、液晶装置に適用した例について説明する。
【0074】
まず、本発明の実施形態における電気光学装置の画素部における構成について、図10から図12を参照して説明する。ここに、図10は、電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路である。また、図11は、データ線、走査線、画素電極等が形成されたTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群の平面図であり、図12は、図11のA−A´断面図である。なお、図12においては、各層・各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、該各層・各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。
【0075】
図10において、本実施形態における電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素には、それぞれ、画素電極9aと当該画素電極9aをスイッチング制御するためのTFT30とが形成されており、画像信号が供給されるデータ線6aが当該TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
【0076】
また、TFT30のゲートに走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snを所定のタイミングで書き込む。
【0077】
画素電極9aを介して電気光学物質の一例としての液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、対向基板に形成された対向電極との間で一定期間保持される。液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として電気光学装置からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射する。
【0078】
ここで保持された画像信号がリークするのを防ぐために、画素電極9aと対向電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70を付加する。また、走査線3aに並んで、蓄積容量70の固定電位側容量電極を含むとともに定電位に固定された容量線300が設けられている。
【0079】
以下では、上記データ線6a、走査線3a、TFT30等による、上述のような回路動作が実現される電気光学装置の、より現実的な構成について、図11及び図12を参照して説明する。
【0080】
まず、本実施形態に係る電気光学装置は、図11の断面図たる図12に示すように、透明なTFTアレイ基板100と、これに対向配置される透明な対向基板20とを備えている。TFTアレイ基板100は、例えば、石英基板、ガラス基板、シリコン基板からなり、対向基板20は、例えばガラス基板や石英基板からなる。また、TFTアレイ基板100上には、画素電極9aが設けられており、その上側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜16が設けられている。ここで画素電極9aは、例えばITO(Indium Tin Oxide)膜等の透明導電性膜からなり、また、配向膜16は、例えばポリイミド膜等の有機膜からなる。
【0081】
他方、対向基板20には、その全面に渡って対向電極21が設けられており、その下側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜22が設けられている。対向電極21は、例えばITO膜等の透明導電成膜からなる。また、配向膜22は、ポリイミド膜等の透明な有機膜からなる。
【0082】
そして、本実施形態においては、図12に示すように、上述したマイクロレンズ501が、対向基板20に設けられている点に特徴がある。なお、図12におけるマイクロレンズ501は、かなり誇張して描かれている点に注意されたい。
【0083】
具体的には、このマイクロレンズ501は、図11及び図12に示すように、マトリクス状に配列された画素電極9aの各々に対向するように、かつ、該画素電極9aの直下に位置するように形成されている。すなわち、本実施形態におけるマイクロレンズ501は、平面的にみて島状に複数形成されており、いわゆるマイクロレンズアレイを構成していることになる。また、このマイクロレンズ501の大きさは、概ね画素電極9aの大きさに対応するように、あるいは画素電極9aの大きさよりは若干大きめにされ、かつ、その平面形状は、図11に示すように、それぞれの角に丸みを帯びた矩形状とされている。
【0084】
また、このマイクロレンズ501は、上述したマイクロレンズの製造プロセスにより形成されており、その外形形状は、図5に示したような底面が略四辺形状となる砲弾錘形状となっている。さらに、このマイクロレンズ501の内部には、対向基板20が有する屈折率とは異なる屈折率を有する媒質511が充填されている。この媒質511の材料としては、具体的には例えば、SiNx又はITO又は透明有機材料をあてるとよい。
【0085】
なお、本実施形態においてはマイクロレンズ501の平面形状が、上述したように角に丸みを帯びた矩形状とされているが、これに代えて、図4に示したような底面が円形状たる砲弾錘としてもよい。
【0086】
ちなみに、対向基板20上で対向電極21下には、カバーガラス201が設けられており、これはマイクロレンズ501を保護する役割等を担う。そして、このカバーガラス201と、マイクロレンズ501が形成された対向基板20とは、その全面又は周辺部等において、適当な接着剤により貼着されている。
【0087】
このように、本実施形態に係る電気光学装置においては、砲弾錘形状となるマイクロレンズ501が画素毎に備えられていることから、従来よりも優れた集光特性を発揮することとなり、より明るい画像を表示することが可能となる。
【0088】
一方、図11において、上記TFTアレイ基板100上には、マトリクス状に複数の透明な画素電極9a(点線部9a´により輪郭が示されている)が設けられており、画素電極9aの縦横の境界に各々沿ってデータ線6a及び走査線3aが設けられている。
【0089】
走査線3aは、半導体層1aのうち図中右上がりの斜線領域で示したチャネル領域1a´に対向するように配置されており、走査線3aはゲート電極として機能する。すなわち、走査線3aとデータ線6aとの交差する箇所にはそれぞれ、チャネル領域1a´に走査線3aの本線部がゲート電極として対向配置された画素スイッチング用のTFT30が設けられている。
【0090】
TFT30は、図12に示すように、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有しており、その構成要素としては、上述したようにゲート電極として機能する走査線3a、例えばポリシリコン膜からなり走査線3aからの電界によりチャネルが形成される半導体層1aのチャネル領域1a´、走査線3aと半導体層1aとを絶縁するゲート絶縁膜を含む絶縁膜2、半導体層1aにおける低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c並びに高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eを備えている。
【0091】
なお、TFT30は、好ましくは図12に示したようにLDD構造をもつが、低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1cに不純物の打ち込みを行わないオフセット構造をもってよいし、走査線3aの一部からなるゲート電極をマスクとして高濃度で不純物を打ち込み、自己整合的に高濃度ソース領域及び高濃度ドレイン領域を形成するセルフアライン型のTFTであってもよい。また、本実施形態では、画素スイッチング用TFT30のゲート電極を、高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1e間に1個のみ配置したシングルゲート構造としたが、これらの間に2個以上のゲート電極を配置してもよい。このようにデュアルゲート、あるいはトリプルゲート以上でTFTを構成すれば、チャネルとソース及びドレイン領域との接合部のリーク電流を防止でき、オフ時の電流を低減することができる。さらに、TFT30を構成する半導体層1aは非単結晶層でも単結晶層でも構わない。単結晶層の形成には、貼り合わせ法等の公知の方法を用いることができる。半導体層1aを単結晶層とすることで、特に周辺回路の高性能化を図ることができる。
【0092】
一方、図11及び図12においては、蓄積容量70が、TFT30の高濃度ドレイン領域1e及び画素電極9aに接続された画素電位側容量電極としての中継層71と、固定電位側容量電極としての容量線300の一部とが、誘電体膜75を介して対向配置されることにより形成されている。この蓄積容量70によれば、画素電極9aにおける電位保持特性を顕著に高めることが可能となる。
【0093】
中継層71は、例えば導電性のポリシリコン膜からなり画素電位側容量電極として機能する。ただし、中継層71は、後に詳述する容量線300と同様に、金属又は合金を含む単一層膜又は多層膜から構成してもよい。中継層71は、画素電位側容量電極としての機能のほか、コンタクトホール83と、中継層71と画素電極9aとを接続するコンタクトホール(図12においては不図示)を介して、画素電極9aとTFT30の高濃度ドレイン領域1eとを中継接続する機能をもつ。
【0094】
このように中継層71を利用すれば、層間距離が例えば2000nm程度と長くても、両者間を一つのコンタクトホールで接続する技術的困難性を回避しつつ、比較的小径の二つ以上の直列なコンタクトホールで両者間を良好に接続することができ、画素開口率を高めることが可能となる。また、コンタクトホール開孔時におけるエッチングの突き抜け防止にも役立つ。
【0095】
容量線300は、例えば金属又は合金を含む導電膜からなり固定電位側容量電極として機能する。この容量線300は、平面的に見ると、図11に示すように、走査線3aの形成領域に重ねて形成されている。より具体的には容量線300は、走査線3aに沿って延びる本線部と、図中、データ線6aと交差する各個所からデータ線6aに沿って上方に夫々突出した突出部と、コンタクトホール85に対応する個所が僅かに括れた括れ部とを備えている。このうち突出部は、走査線3a上の領域及びデータ線6a下の領域を利用して、蓄積容量70の形成領域の増大に貢献する。
【0096】
このような容量線300は、好ましくは高融点金属を含む導電性遮光膜からなり、蓄積容量70の固定電位側容量電極としての機能のほか、TFT30の上側において入射光からTFT30を遮光する遮光層としての機能をもつ。
【0097】
また、容量線300は、好ましくは、画素電極9aが配置された画像表示領域からその周囲に延設され、定電位源と電気的に接続されて、固定電位とされる。このような定電位源としては、後述するデータ線駆動回路101に供給される正電源や負電源の定電位源でもよいし、対向基板20の対向電極21に供給される定電位でも構わない。
【0098】
誘電体膜75は、図12に示すように、例えば膜厚5〜200nm程度の比較的薄いHTO(High Temperature Oxide)膜、LTO(Low Temperature Oxide)膜等の酸化シリコン膜、あるいは窒化シリコン膜等から構成される。蓄積容量70を増大させる観点からは、膜の信頼性が十分に得られる限りにおいて、誘電体膜75は薄いほどよい。
【0099】
図11及び図12においては、上記のほか、TFT30の下側に、下側遮光膜11aが設けられている。下側遮光膜11aは、格子状にパターニングされており、これにより各画素の開口領域を規定している。また、開口領域の規定は、図11中縦方向に延びるデータ線6aと図11中横方向に延びる容量線300とが相交差して形成されることによっても、なされている。
【0100】
なお、下側遮光膜11aについても、前述の容量線300の場合と同様に、その電位変動がTFT30に対して悪影響を及ぼすことを避けるために、画像表示領域からその周囲に延設して定電位源に接続するとよい。
【0101】
また、TFT30下には、下地絶縁膜12が設けられている。下地絶縁膜12は、下側遮光膜11aからTFT30を層間絶縁する機能のほか、TFTアレイ基板100の全面に形成されることにより、TFTアレイ基板100の表面研磨時における荒れや、洗浄後に残る汚れ等で画素スイッチング用のTFT30の特性変化を防止する機能を有する。
走査線3a上には、高濃度ソース領域1dへ通じるコンタクトホール81及び高濃度ドレイン領域1eへ通じるコンタクトホール83がそれぞれ開孔された第1層間絶縁膜41が形成されている。
【0102】
第1層間絶縁膜41上には、中継層71及び容量線300が形成されており、これらの上には高濃度ソース領域1dへ通じるコンタクトホール81及び中継層71へ通じるコンタクトホール(図12においては不図示)がそれぞれ開孔された第2層間絶縁膜42が形成されている。
【0103】
なお、本実施形態では、第1層間絶縁膜41に対しては、約1000℃の焼成を行うことにより、半導体層1aや走査線3aを構成するポリシリコン膜に注入したイオンの活性化を図ってもよい。他方、第2層間絶縁膜42に対しては、このような焼成を行わないことにより、容量線300の界面付近に生じるストレスの緩和を図るようにしてもよい。
【0104】
第2層間絶縁膜42上には、データ線6aが形成されており、これらの上には中継層71へ通じるコンタクトホール(図12においては不図示)が形成された第3層間絶縁膜43が形成されている。
【0105】
以下では、以上のように構成された実施形態における電気光学装置の全体構成について、図13及び図14を参照して説明する。なお、図13は、TFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素とともに対向基板20の側からみた平面図であり、図14は図13のH−H´断面図である。
【0106】
図13及び図14において、本実施形態に係る電気光学装置では、TFTアレイ基板100と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板100と対向基板20との間には、液晶層50が封入されており、TFTアレイ基板100と対向基板20とは、画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
【0107】
シール材52は、両基板を貼り合わせるため、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、紫外線、加熱等により硬化させられたものである。また、このシール材52中には、本実施形態における液晶装置がプロジェクタ用途のように小型で拡大表示を行う液晶装置であれば、両基板間の距離(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ、あるいはガラスビーズ等のギャップ材(スペーサ)が散布されている。あるいは、当該液晶装置が液晶ディスプレイや液晶テレビのように大型で等倍表示を行う液晶装置であれば、このようなギャップ材は、液晶層50中に含まれてよい。
【0108】
シール材52の外側の領域には、データ線6aに画像信号を所定のタイミングで供給することにより該データ線6aを駆動するデータ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板100の一辺に沿って設けられており、走査線3aに走査信号を所定のタイミングで供給することにより、走査線3aを駆動する走査線駆動回路104が、この一辺に隣接する二辺に沿って設けられている。
【0109】
なお、走査線3aに供給される走査信号遅延が問題にならないのならば、走査線駆動回路104は片側だけでもよいことは言うまでもない。また、データ線駆動回路101を画像表示領域10aの辺に沿って両側に配列してもよい。
【0110】
TFTアレイ基板100の残る一辺には、画像表示領域10aの両側に設けられた走査線駆動回路104間をつなぐための複数の配線105が設けられている。また、対向基板20のコーナ部の少なくとも一箇所においては、TFTアレイ基板100と対向基板20との間で電気的に導通をとるための導通材106が設けられている。そして、図14に示すように、図13に示したシール材52とほぼ同じ輪郭を持つ対向基板20が当該シール材52によりTFTアレイ基板100に固着されている。
【0111】
図14において、TFTアレイ基板100上には、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極9a上に、配向膜が形成されている。他方、対向基板20上には、対向電極21のほか、最上層部分に配向膜が形成されている。また、液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマテッィク液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で、所定の配向状態をとる。
【0112】
なお、TFTアレイ基板100上には、これらのデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等に加えて、複数のデータ線6aに画像信号を所定のタイミングで印加するサンプリング回路、複数のデータ線6aに所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
【0113】
また、上述した実施形態においては、データ線駆動回路101及び走査線駆動回路104をTFTアレイ基板100上に設ける代わりに、例えばTAB(Tape Automated Bonding)基板上に実装された駆動用LSIに、TFTアレイ基板100の周辺部に設けられた異方性導電フィルムを介して電気的及び機械的に接続するようにしてもよい。また、対向基板20の投射光が入射する側及びTFTアレイ基板100の出射光が出射する側には、それぞれ、例えばTN(Twisted Nematic)モード、VA(Vertically Aligned)モード、PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)モード等の動作モードや、ノーマリーホワイトモード・ノーマリーブラックモードの別に応じて、偏向フィルム、位相差フィルム、偏向板等が所定の方向で配置される。
【0114】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うマイクロレンズ及びその製造方法並びに電気光学装置もまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係るマイクロレンズの製造方法をその工程順に沿って示す断面図(その1)である。
【図2】 本発明の実施形態に係るマイクロレンズの製造方法をその工程順に沿って示す断面図(その2)である。
【図3】 図1に示すマスクに形成される開口部の形状及び配置態様を示す平面図である。
【図4】 図1及び図2に示す製造方法により形成されたマイクロレンズの外形形状の概要を示す斜視図である。
【図5】 図4とは異なる態様となるマイクロレンズの外形形状の概要を示す斜視図である。
【図6】 図2の工程(5)に対応する工程を、工程(5´)として示す製造工程断面図である。
【図7】 図6に示すウェットエッチング工程により形成される孔を平面視した平面図である。
【図8】 図4及び図5とは異なる態様となるマイクロレンズの外形形状の概要を示す斜視図である。
【図9】 図1の工程(2)及び(3)に対応する工程を、工程(2´)及び(3´)として示す製造工程断面図である。
【図10】 本発明の実施形態の電気光学装置における画像表示領域を構成するマトリクス状の複数の画素に設けられた各種素子、配線等の等価回路を示す回路図である。
【図11】 本発明の実施形態の電気光学装置におけるデータ線、走査線、画素電極等が形成されたTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群の平面図である。
【図12】 図11のA−A´断面図である。
【図13】 本発明の実施形態の電気光学装置におけるTFTアレイ基板を、その上に形成された各構成要素とともに対向基板の側から見た平面図である。
【図14】 図13のH−H´断面図である。
【符号の説明】
3a…走査線
6a…データ線
10…基板
20…対向基板
30…TFT
401…マスク
401a、401a´…開口部
501、701…マイクロレンズ
501a…レンズ形成用領域
501b…基準孔
501P、601P…マイクロレンズの外形形状
511…媒質
550、650、750…軸
551、651、751…立体的閉曲面
551H、651H、751H…頭頂部
552、652、752…平坦断面
552C、652C、752C…平坦断面の中央部
552P、652P、752P…平坦断面の周辺部
L1、L3、L5…平坦断面から頭頂部に至るまでの最大距離
L2、L4、L6…平坦断面の中央部から平坦断面の周辺部に至るまでの距離
H、H1〜H4…(ウェットエッチングにより形成される)孔
Claims (5)
- 基板上にマスクを成膜する工程と、
該マスクに対して、個々のマイクロレンズを形成すべきレンズ形成用領域に対応した開口部を形成する工程と、
前記開口部を通じてドライエッチングを実施する工程と、
該ドライエッチングを実施する工程の後に前記開口部を通じてウェットエッチングを実施してマイクロレンズの外形形状を形成する工程と、
前記マイクロレンズの外形形状を形成する工程の後に前記マスクを除去する工程と、
を含むことを特徴とするマイクロレンズの製造方法。 - 前記開口部は、その辺縁にテーパが形成されていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロレンズの製造方法。
- 前記開口部の開口径は、前記レンズ形成用領域の大きさよりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロレンズの製造方法。
- 前記ウェットエッチングを実施してマイクロレンズの外形形状を形成する工程は、前記開口部を通じて該ウェットエッチングにより形成される孔が、隣接する前記開口部を通じて該ウェットエッチングにより形成される他の孔との間で重なり合うまで、当該ウェットエッチングを進行させる工程を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のマイクロレンズの製造方法。
- その外形形状が、軸対称な立体的閉曲面を含むとともに、前記立体的閉曲面の軸を中心とした当該立体的閉曲面上の外周長が最も大きい部分における当該立体的閉曲面の平坦断面から前記立体的閉曲面上における頭頂部に至るまでの最大距離が、前記平坦断面の中央部から前記平坦断面の周辺部に至るまでの距離よりも大きいマイクロレンズの製造方法であって、
基板上にマスクを成膜する工程と、
該マスクに対して、個々の前記マイクロレンズを形成すべきレンズ形成用領域に対応した開口部を形成する工程と、
前記開口部を通じてドライエッチングを実施する工程と、
該ドライエッチングを実施する工程の後に前記開口部を通じてウェットエッチングを実施してマイクロレンズの外形形状を形成する工程と、
前記マイクロレンズの外形形状を形成する工程の後に前記マスクを除去する工程と、
を含むことを特徴とするマイクロレンズの製造方法。
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JP2001388392A JP4165063B2 (ja) | 2001-12-20 | 2001-12-20 | マイクロレンズの製造方法 |
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