(無線通信システム)
図1に示すように、無線通信システム1は、無線基地局10と、複数の無線端末20a〜20cとを備える。無線端末20a〜20cは、無線基地局10に接続し、無線基地局10の配下におかれる。無線通信システム1では、無線基地局10と無線端末20a〜20cが、無線LANや無線アクセスネットワーク等の無線ネットワークを介して無線通信を行う。
無線通信システム1は、無線基地局10と無線端末20a〜20cとの間でデータを送受信する際に使用する使用伝送レートを、複数の伝送レートの中から選択して使用するマルチレート制御を行う。よって、無線基地局10、無線端末20a〜20cは、マルチレート制御対応である。又、無線通信システム1は、アクセス制御手順としてCSMA/CAを用いる。無線通信システム1は、CSMA/CAとして、例えばDCF(Distributed Coordination Function)を用いる。DCFは、無線基地局10と無線端末20a〜20cが自律分散的にデータの送受信を行うものである。より具体的には、DCFは、複数の無線端末と1つの無線基地局がデータを送受信する際に、データの衝突が起きないように、各無線端末がキャリアセンスしながらデータを送受信する手順である。
無線基地局10は、データフレーム受信部11と、データフレーム送信部12と、アクセス制御部13と、伝送レート制御部14と、接続端末管理部15とを備える。
データフレーム受信部11は、無線端末20a〜20cから、無線端末20a〜20cからのユーザデータを含むデータフレーム、無線基地局10への接続要求、無線基地局10への通知データ等を受信する。データフレーム受信部11は、データフレーム、接続要求はアクセス制御部13に、通知データは伝送レート制御部14に入力する。
データフレーム送信部12は、無線端末20a〜20cへのユーザデータを含むデータフレーム、ACK(Acknowledge)フレーム、接続許可又は接続拒否、無線端末20a〜20cへの通知データ等を、無線端末20a〜20cに送信する。データフレーム送信部12は、データフレーム、接続許可又は接続拒否、通知データをアクセス制御部13から取得する。
アクセス制御部13は、無線基地局10と無線端末20a〜20cとの通信を制御する。アクセス制御部13は、CSMA/CAに基づく制御を行う。まず、アクセス制御部13は、データフレーム受信部11から、無線端末20a〜20cからの接続要求を取得する。アクセス制御部13は、無線端末20a〜20cの接続を許可するか拒否するかを判断する。アクセス制御部13は、接続を許可すると判断した場合には接続許可を、接続を拒否すると判断した場合には接続拒否をデータフレーム送信部12に入力する。アクセス制御部13は、無線基地局10への接続を許可した無線端末(以下「接続端末」という)からの接続要求を接続端末管理部15に入力する。
又、アクセス制御部13は、伝送レート制御部14から、無線基地局10から無線端末20a〜20cにデータフレームを送信する際に使用するデータの使用伝送レートを取得する。アクセス制御部13は、無線端末20a〜20cへのユーザデータを含むデータフレームをデータフレーム受信部11から取得する。アクセス制御部13は、データフレームをデータフレーム送信部12に入力し、伝送レート制御部14から取得した使用伝送レートで送信するように指示する。又、アクセス制御部13は、伝送レート制御部14から、無線基地局10から無線端末20a〜20cへの通知データを取得する。アクセス制御部13は、取得した通知データをデータフレーム送信部12に入力する。
更に、アクセス制御部13は、無線端末20a〜20cにデータフレームの受信に成功したことを通知するACKフレームを作成し、フレーム送信部12に入力する。アクセス制御部13は、データフレームの受信に連続して成功したフレームの数(以下「連続受信成功数」という)を、無線端末20a〜20c毎に測定する。例えば、アクセス制御部13は、データフレームの受信に連続して成功している間のACKフレームの作成回数を無線端末20a〜20c毎にカウントすることにより、連続受信成功数を測定できる。尚、アクセス制御部13は、データフレームの受信に失敗した時には、作成回数のカウントをリセットする。アクセス制御部13は、測定した連続受信成功数を、伝送レート制御部14に入力する。
伝送レート制御部14は、無線端末20a〜20cと無線基地局10との間で送受信するデータの送信に使用する使用伝送レートを制御する。伝送レート制御部14は、伝送効率管理部14aと、伝送レート通知部14bと、接続端末管理テーブル14cと、伝送レート決定部14dとを備える。
接続端末管理テーブル14cは、接続端末に関する接続端末管理情報を記憶する。図2に示すように、接続端末管理テーブル14cは、接続端末管理情報として、接続端末名、MACアドレス、信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)[dBm]、通常伝送レート(Default Data Rate)[bit/s]、使用可能伝送レート(Available Data Rate)[bit/s]、使用伝送レート(Use Data Rate)[bit/s]、連続受信成功数、伝送効率状態(State)を記憶する。
接続端末名は、接続端末である無線端末20a〜20cの名称である。接続端末管理テーブル14cは、この接続端末名毎に接続端末管理情報を記憶することにより、接続端末毎に接続端末管理情報を記憶する。無線端末20a,20b,20cの名称はそれぞれ、「無線端末#201」、「無線端末#202」、「無線端末#203」である。MACアドレスは、無線端末20a〜20c毎に固有のID番号である。
信号強度は、無線端末20a〜20cから送信され、無線基地局10が受信したデータの信号強度である。本実施形態では、信号強度としてRSSIを用いる。信号強度は、無線端末20a〜20cと無線基地局10との間の電波伝搬環境を示す。無線通信システム1では、無線端末20a〜20cが移動可能であることから、無線端末20a〜20cと無線基地局10との間の距離や、無線端末20a〜20cの位置等に応じて、その電波伝搬環境が大きく変動する。
通常伝送レートは、データの伝送効率が低下していない通常時に使用する伝送レートである。使用可能伝送レートは、無線端末20a〜20cがデータを送信する際に使用可能な伝送レートである。使用可能伝送レートは、無線端末20a〜20c毎に複数設定される。通常伝送レートや使用可能伝送レートは、無線端末20a〜20c毎に、無線端末20a〜20cの通信能力や、無線ネットワークの通信能力等に応じた値が設定される。使用伝送レートは、接続端末が実際にデータの送信に使用する伝送レートである。
伝送効率状態は、無線端末20a〜20cと無線基地局10との間のデータの伝送効率の状態である。伝送効率状態には、伝送効率が低下しておらず、安定している「通常」の状態と、伝送効率が低下した状態がある。伝送効率が低下した状態には、その低下原因により、着目している無線端末と無線基地局10との間の電波伝搬環境の劣化による伝送効率の低下(以下「低下(電波伝搬環境)」と示す)と、着目している無線端末以外の他無線端末と無線基地局10との間のトラヒック増加による伝送効率の低下(以下「低下(トラヒック)と示す」がある。接続端末管理テーブル14cでは、伝送効率状態について、「通常」を「0」、「低下(電波伝搬環境)」を「1」、「低下(トラヒック)」を「2」と表す。
伝送効率管理部14aは、接続端末の伝送効率状態を管理する。伝送効率管理部14aは、接続端末に関する信号強度、連続受信成功数も管理する。具体的には、伝送効率管理部14aは、データフレーム受信部11から、無線端末20a〜20cからの通知データを取得する。通知データには、無線端末20a〜20cの伝送効率状態が含まれる。又、伝送効率管理部14aは、データフレーム受信部11が受信した無線端末20a〜20cからのデータの信号強度(RSSI)を測定する。更に、伝送効率管理部14aは、無線端末20a〜20cの連続受信成功数をアクセス制御部13から取得する。そして、伝送効率管理部14aは、通知データに含まれる伝送効率状態、測定したデータの信号強度(RSSI)、取得した連続受信成功数を接続端末管理テーブル14cに格納する。尚、伝送効率管理部14aは、接続端末の伝送効率状態、信号強度、連続受信成功数に変更があった場合には、接続端末管理テーブル14cを更新する。
伝送効率管理部14aは、無線端末20a〜20cからの通知データによらず、自ら伝送効率状態を判断し、接続端末管理テーブル14cに格納するようにしてもよい。この場合、伝送効率管理部14aは、各無線端末20a〜20cと無線基地局10との間の電波伝搬環境と、無線端末20a〜20cのいずれかに着目し、着目した無線端末以外の他無線端末と無線基地局10との間のトラヒックに基づいて、着目した無線端末と無線基地局10との間の伝送効率の低下原因を判断する判断部として機能する。
具体的には、伝送効率管理部14aは、測定したデータの信号強度(RSSI)を電波伝搬環境を示す情報として用いる。伝送効率管理部14aは、電波伝搬環境が劣化しているか否かを判断するための信号強度の閾値を記憶する。本実施形態では、信号強度の閾値は、RSSI=βに設定されている。伝送効率管理部14aは、信号強度の測定値と閾値とを比較し、測定値が閾値未満となった無線端末については、電波伝搬環境が劣化し、伝送効率が低下したと判断する。そして、伝送効率管理部14aは、接続端末管理テーブル14cに伝送効率状態として「1」を格納する。
又、伝送効率管理部14aは、無線端末20a〜20cの送信待機時間を、他無線端末と無線基地局10との間のトラヒックを示す情報として用いる。伝送効率管理部14aは、無線端末20a〜20c毎に、データフレーム受信部11が受信するデータフレームの受信間隔を測定する。伝送効率管理部14aは、着目した無線端末の受信間隔が長い場合には、その無線端末の送信待機時間が長く、他無線端末と無線基地局10との間のトラヒックが増加していると判断する。伝送効率管理部14aは、着目した無線端末の受信間隔が短い場合には、その無線端末の送信待機時間は短く、他無線端末と無線基地局10との間のトラヒックは通常であると判断する。
伝送効率管理部14aは、トラヒックが増加しているか否かを判断するための受信間隔の閾値を記憶する。本実施形態では、受信間隔の閾値は、Reception Interval=γに設定されている。伝送効率管理部14aは、まず、信号強度の測定値と閾値の比較を行って、電波伝搬環境の劣化が低下原因か否かを判断する。伝送効率管理部14aは、信号強度の測定値が閾値以上であり、電波伝搬環境の劣化が低下原因ではないと判断した場合に、受信間隔の測定値と閾値とを比較する。伝送効率管理部14aは、受信間隔の測定値が閾値を超える無線端末については、その無線端末以外の他無線端末と無線基地局10とのトラヒックが増加し、伝送効率が低下したと判断する。そして、伝送効率管理部14aは、接続端末管理テーブル14cに伝送効率状態として「2」を格納する。
伝送効率管理部14aは、このように、送信待機時間に関わらず、信号強度が小さい場合には、電波伝搬環境の劣化を低下原因と判断してもよく、反対に、信号強度に関わらず、送信待機時間が長い場合にはトラヒックの増加を低下原因と判断してもよい。又、伝送効率管理部14aは、上記のように、信号強度が高く、かつ、送信待機時間が長い場合にだけ、トラヒックの増加を低下原因と判断してもよく、反対に、送信待機時間が短く、かつ、信号強度が小さい場合にだけ、電波伝搬環境の劣化を低下原因と判断してもよい。
伝送効率管理部14aは、信号強度の測定値が閾値以上であり、かつ、受信間隔の測定値が閾値以下の場合には、伝送効率状態が安定した通常の状態であると判断する。そして、伝送効率管理部14aは、接続端末管理テーブル14cに伝送効率状態として「0」を格納する。又、伝送効率管理部14aは、伝送効率状態が「1」又は「2」の場合に、信号強度の測定値が閾値以上、かつ、受信間隔の測定値が閾値以下に回復した場合には、接続端末管理テーブル14cの伝送効率状態を「0」に更新する。このとき、伝送効率管理部14aは、所定数のデータフレームについて信号強度が閾値以上に回復した場合に、電波伝搬環境が改善されたと判断し、伝送効率状態を更新することが好ましい。このように、伝送効率管理部14aは、電波伝搬環境及びトラヒックに基づいて、伝送効率が回復したか否かを判断する。このような伝送効率管理部14aと、接続端末管理テーブル14cによれば、無線基地局10は、配下の接続端末の伝送効率状態を管理できる。
伝送レート決定部14dは、データの伝送効率の低下原因に基づいて、無線端末20a〜20cから無線基地局10にデータを送信する際に使用する使用伝送レートを決定する。伝送レート決定部14dは、無線基地局10から無線端末20a〜20cにデータを送信する際に使用する使用伝送レートも決定してもよい。
伝送レート決定部14dは、接続端末管理テーブル14cを参照し、接続端末の伝送効率状態を監視する。伝送レート決定部14dは、伝送効率の低下原因が電波伝搬環境の劣化である場合には、無線端末の使用伝送レートを現在使用中の使用伝送レートよりも低い低速伝送レートに決定する。図2の場合、伝送レート決定部14dは、無線端末名が「無線端末#203」の無線端末20cの伝送効率状態が「低下(電波伝搬環境)」を示す「1」であるため、接続端末管理テーブル14cから、無線端末20cの使用可能伝送レート1M、2M、5.5M、11M[bit/s]、現在使用中の使用伝送レート(この時点では、2M[bit/s]とする)を取得する。伝送レート決定部14dは、使用可能伝送レートと現在使用中の使用伝送レートを比較し、使用可能伝送レートの中から、現在使用中の使用伝送レート2M[bit/s]よりも低速な低速伝送レート1M[bit/s]を、新たな使用伝送レートに決定する。このように伝送レート決定部14dは、電波伝搬環境劣化時の使用伝送レートを決定する機能を有する。
伝送レート決定部14dは、伝送効率の低下原因が、他無線端末と無線基地局10との間のトラヒックの増加である場合には、無線端末の使用伝送レートを現在使用中の使用伝送レートよりも高い高速伝送レートに決定する。図2の場合、伝送レート決定部14dは、無線端末名が「無線端末#202」の無線端末20bの伝送効率状態が「低下(トラヒック)」を示す「2」であるため、接続端末管理テーブル14cから、無線端末20bの使用可能伝送レート1M、2M、5.5M、11M[bit/s]、現在使用中の使用伝送レート(この時点では、5.5M[bit/s]とする)を取得する。伝送レート決定部14dは、使用可能伝送レートと現在使用中の使用伝送レートを比較し、使用可能伝送レートの中から、現在使用中の使用伝送レート2M[bit/s]よりも高速な高速伝送レート11M[bit/s]を、新たな使用伝送レートに決定する。
あるいは、伝送レート決定部14dは、他無線端末と無線基地局10との間のトラヒックとして、着目した無線端末以外の他の無線端末いずれかと無線基地局10との間のトラヒックだけでなく、複数の他無線端末と無線基地局10との間のトラヒックを用い、無線通信システム1全体のトラヒックを用いてもよい。例えば、伝送レート決定部14dは、伝送効率状態が「低下(トラヒック)」を示す「2」の無線端末が所定数以上であるか否か、又は、「2」の無線端末が全接続無線端末に占める割合が所定割合以上であるか否かを判断し、所定数又は所定割合以上となった場合には無線通信システム1全体のトラヒックが増加したと判断する。そして、伝送レート決定部14dは、無線通信システム1全体のトラヒックが増加したと判断した場合に、無線端末の使用伝送レートを高速伝送レートに決定するようにしてもよい。
これによれば、伝送レート決定部14dは、無線通信システム1全体、即ち、BSS全体のトラヒックを反映して使用伝送レートを決定できるため、好ましい。更に、伝送レート決定部14dは、無線基地局10と無線基地局10の配下の全無線端末との間におけるトラヒックに基づいて、無線端末の使用伝送レートを決定することが、より好ましい。
更に、伝送レート決定部14dは、伝送効率状態が「低下(トラヒック)」を示す「2」の無線端末20bだけでなく、伝送効率状態が「通常」を示す「0」の無線端末20aの使用伝送レートも高速伝送レートに決定するようにしてもよい。即ち、伝送レート決定部14dは、電波伝搬環境が劣化している無線端末20cを除いた無線端末20a,20bについて、高速伝送レートを使用伝送レートに決定するようにしてもよい。これによれば、より効率的なデータの送信が可能となる。このように伝送レート決定部14dは、トラヒック増加時の使用伝送レートを決定する機能を有する。
又、伝送レート決定部14dは、伝送効率が回復した場合には、低速伝送レートや高速伝送レートに変更していた使用伝送レートを通常伝送レートに戻す。伝送レート決定部14dは、接続端末管理テーブル14cを参照し、接続端末の伝送効率状態を監視する。伝送レート決定部14dは、伝送効率状態が、「低下(電波伝搬環境)」を示す「1」、又は、「低下(トラヒック)」を示す「2」のいずれかから、「通常」を示す「0」に遷移した無線端末を検出した場合には、その無線端末の通常伝送レートを接続端末管理テーブル14cから取得し、使用伝送レートに決定する。
又、伝送レート決定部14dは、伝送効率状態が「低下(トラヒック)」を示す「2」の無線端末20bだけでなく、伝送効率状態が「通常」を示す「0」の無線端末20aの使用伝送レートも高速伝送レートに変更していた場合には、伝送効率状態が「2」から「0」に遷移した無線端末について使用伝送レートを通常伝送レートに戻す際に、伝送効率状態が「0」の無線端末の使用伝送レートも通常伝送レートに戻す。このように伝送レート決定部14dは、伝送効率状態が安定した通常時に回復した時の使用伝送レートを決定する機能を有する。
伝送レート決定部14dは、無線基地局10が無線端末20a〜20cにデータを送信する際の使用伝送レートを決定した場合には、アクセス制御部13に決定した使用伝送レートをその無線端末のMACアドレスと対応付けて入力する。伝送レート決定部14dは、無線端末20a〜20cが無線基地局10にデータを送信する際の使用伝送レートを決定した場合には、伝送レート通知部14bに決定した使用伝送レートをその無線端末のMACアドレスと対応付けて入力する。更に、伝送レート決定部14dは、決定した新たな無線端末20a〜20cの使用伝送レートを、接続端末管理テーブル14cの使用伝送レートに格納し、決定の度に更新する。
伝送レート通知部14bは、伝送レート決定部14dが決定した使用伝送レートを無線端末20a〜20cに通知する。伝送レート通知部14bは、伝送レート決定部14dから、無線端末20a〜20cが無線基地局10にデータを送信する際の使用伝送レートをその無線端末のMACアドレスと対応付けて取得する。伝送レート通知部14bは、取得した使用伝送レートを含む各無線端末20a〜20c宛の通知データを作成し、アクセス制御部13に入力する。これにより、無線基地局10は、決定した無線端末20a〜20cの使用伝送レートを無線端末20a〜20cに通知できる。
接続端末管理部15は、アクセス制御部13から、接続を許可した無線端末20a〜20cからの接続要求を取得する。接続要求には、無線端末の名称、MACアドレス、通常伝送レート、使用可能伝送レートが含まれる。そのため、接続端末管理部15は、取得した接続要求に基づいて、無線端末の名称、MACアドレス、通常伝送レート、使用可能伝送レートを接続端末管理テーブル14cに格納する。又、接続端末管理部15は、使用伝送レートの初期値として、通常伝送レートの値を接続端末管理テーブル14cに格納する。
無線端末20aは、データフレーム受信部21と、データフレーム送信部22と、アクセス制御部23と、伝送レート制御部24とを備える。尚、無線端末20b,20cも無線端末20aと同様の構成を備える。
データフレーム受信部21は、無線基地局10から、無線端末20aへのユーザデータを含むデータフレーム、ACKフレーム、接続許可又は接続拒否、無線端末20aへの通知データ等を受信する。データフレーム受信部21は、ユーザデータは出力部等に、ACKフレーム、接続許可又は接続拒否はアクセス制御部23に、通知データは伝送レート制御部24に入力する。
データフレーム送信部22は、無線端末20aからのユーザデータを含むデータフレーム、無線基地局10への接続要求、無線基地局10への通知データ等を、無線基地局10に送信する。データフレーム送信部22は、データフレーム、接続要求、通知データをアクセス制御部23から取得する。
アクセス制御部23は、無線端末20aと無線基地局10の通信を制御する。アクセス制御部23は、CSMA/CAに基づく制御を行う。まず、アクセス制御部23は、無線基地局10への接続要求を作成し、データフレーム送信部22に入力する。アクセス制御部23は、データフレーム受信部21から、無線基地局10からの接続許可を取得することにより、無線基地局10と接続を確立する。尚、アクセス制御部23は、無線基地局10から接続拒否を取得した場合には、他の無線基地局への接続を試みる。
又、アクセス制御部23は、伝送レート制御部24から、無線端末20aから無線基地局10にデータを送信する際のデータの使用伝送レートを取得する。アクセス制御部23は、無線基地局10に送信するデータフレームをデータフレーム送信部22に入力し、伝送レート制御部24から取得した使用伝送レートで送信するように指示する。このようにしてアクセス制御部23は、使用伝送レートによりデータを無線基地局10に送信するように制御する送信制御部として機能する。
更に、アクセス制御部23は、データフレーム受信部21から、無線基地局10からのACKフレームを取得する。ACKフレームにより、アクセス制御部23は、データフレームの送信成功を確認する。アクセス制御部23は、データフレーム送信後、一定時間経過しても、ACKフレームを取得できない場合には、データフレームの送信に失敗したと判断する。そして、アクセス制御部23は、データフレームを再送するために、再度、データフレーム送信部22に入力する。又、アクセス制御部23は、伝送レート制御部24から、無線端末20aから無線基地局10への通知データを取得する。アクセス制御部23は、取得した通知データをデータフレーム送信部22に入力する。
伝送レート制御部24は、無線端末20aと無線基地局10との間で送受信するデータの使用伝送レートを制御する。伝送レート制御部24は、伝送効率管理部24aと、伝送効率通知部24bと、端末管理テーブル24cと、伝送レート決定/取得部24dとを備える。
端末管理テーブル24cは、無線端末20aに関する端末管理情報を記憶する。図3に示すように、端末管理テーブル24cは、端末管理情報として、無線端末名、信号強度(RSSI)[dBm]、送信待機時間(Transmission Interval)[msec]、通常伝送レート(Default Data Rate)[bit/s]、使用可能伝送レート(Available Data Rate)[bit/s]、使用伝送レート(Use Data Rate)[bit/s]、伝送効率状態(State)を記憶する。
無線端末名は、無線端末20aの名称である。信号強度は、無線基地局10から送信され、無線端末20aが受信したデータの信号強度である。送信待機時間は、無線端末20aがデータの送信を待機している時間である。送信待機時間は、無線端末20aが前回データフレームを送信してから、次にデータフレームを送信するまでの時間である。使用伝送レートは、無線端末20aが実際にデータの送信に使用する伝送レートである。伝送効率状態は、無線端末20aと無線基地局10との間のデータの伝送効率の状態である。
伝送効率管理部24aは、無線端末20aの伝送効率状態を管理する。伝送効率管理部24aは、無線端末20aに関する信号強度、送信待機時間も管理する。具体的には、伝送効率管理部24aは、データフレーム受信部21が受信した無線基地局10からのデータの信号強度(RSSI)を測定する。更に、伝送効率管理部24aは、アクセス制御部23がデータフレームを送信する送信間隔を、送信待機時間として測定する。伝送効率管理部24aは、測定した信号強度と送信待機時間を、端末管理テーブル24cに格納する。伝送効率管理部24aは、伝送効率状態、信号強度、送信待機時間に変更があった場合には、端末管理テーブル24cを更新する。
更に、伝送効率管理部24aは、伝送効率状態を判断し、端末管理テーブル24cに格納する。即ち、伝送効率管理部24aは、無線端末20aと無線基地局10との間の電波伝搬環境と、無線端末20a自身以外の他無線端末と無線基地局10との間のトラヒックに基づいて、無線端末20a自身と無線基地局10との間の伝送効率の低下原因を判断する判断部として機能する。
具体的には、伝送効率管理部24aは、測定したデータの信号強度(RSSI)を電波伝搬環境を示す情報として用いる。伝送効率管理部24aは、電波伝搬環境が劣化しているか否かを判断するための信号強度の閾値を記憶する。本実施形態では、信号強度の閾値は、RSSI=βに設定されている。伝送効率管理部24aは、信号強度の測定値と閾値とを比較し、測定値が閾値未満となった場合には、電波伝搬環境が劣化し、伝送効率が低下したと判断する。そして、伝送効率管理部24aは、端末管理テーブル24cに伝送効率状態として「1」を格納する。
又、伝送効率管理部24aは、無線端末20aの送信待機時間を、他無線端末と無線基地局10との間のトラヒックを示す情報として用いる。伝送効率管理部24aは、無線端末20a自身の送信待機時間が長い場合には、他無線端末、例えば、無線端末20b,20cと無線基地局10との間のトラヒックが増加していると判断する。伝送効率管理部24aは、無線端末20a自身の送信待機時間が短い場合には、他無線端末、例えば、無線端末20b,20cと無線基地局10との間のトラヒックは通常であると判断する。
伝送効率管理部24aは、トラヒックが増加しているか否かを判断するための送信待機時間の閾値を記憶する。本実施形態では、送信待機時間の閾値は、Transmission Interval=αに設定されている。伝送効率管理部24aは、まず、信号強度の測定値と閾値の比較を行って、電波伝搬環境の劣化が低下原因か否かを判断する。伝送効率管理部24aは、信号強度の測定値が閾値以上であり、電波伝搬環境の劣化が低下原因ではないと判断した場合に、送信待機時間の測定値と閾値とを比較する。伝送効率管理部24aは、送信待機時間の測定値が閾値を超える場合には、無線端末20a以外の他無線端末と無線基地局10とのトラヒックが増加し、伝送効率が低下したと判断する。そして、伝送効率管理部24aは、端末管理テーブル24cに伝送効率状態として「2」を格納する。
伝送効率管理部24aは、このように、送信待機時間に関わらず、信号強度が小さい場合には、電波伝搬環境の劣化を低下原因と判断してもよく、反対に、信号強度に関わらず、送信待機時間が長い場合にはトラヒックの増加を低下原因と判断してもよい。又、伝送効率管理部24aは、上記のように、信号強度が高く、かつ、送信待機時間が長い場合にだけ、トラヒックの増加を低下原因と判断してもよく、反対に、送信待機時間が短く、かつ、信号強度が小さい場合にだけ、電波伝搬環境の劣化を低下原因と判断してもよい。
伝送効率管理部24aは、信号強度の測定値が閾値以上であり、かつ、送信待機時間の測定値が閾値以下の場合には、伝送効率状態が安定した通常の状態であると判断する。そして、伝送効率管理部24aは、端末管理テーブル24cに伝送効率状態として「0」を格納する。又、伝送効率管理部24aは、伝送効率状態が「1」又は「2」の場合に、信号強度の測定値が閾値以上、かつ、送信待機時間の測定値が閾値以下に回復した場合には、端末管理テーブル24cの伝送効率状態を「0」に更新する。このとき、伝送効率管理部24aは、所定数のデータフレームについて信号強度が閾値以上に回復した場合に、電波伝搬環境が改善されたと判断し、伝送効率状態を更新することが好ましい。このように、伝送効率管理部24aは、電波伝搬環境及びトラヒックに基づいて、伝送効率が回復したか否かを判断する。
伝送効率管理部24aは、判断した無線端末20aの伝送効率状態を伝送効率通知部24bに入力する。伝送効率通知部24bは、伝送効率管理部24aから取得した伝送効率状態を含む無線基地局10への通知データを作成し、アクセス制御部23に入力する。これにより、無線端末20aは、無線端末20aの伝送効率状態を無線基地局10に通知することができる。
伝送レート決定/取得部24dは、データの伝送効率の低下原因に基づいて、無線端末20aから無線基地局10にデータを送信する際に使用する使用伝送レートを決定する伝送レート決定部として機能する。
伝送レート決定/取得部24dは、端末管理テーブル24cを参照し、無線端末20aの伝送効率状態を監視する。伝送レート決定/取得部24dは、伝送効率の低下原因が電波伝搬環境の劣化である場合には、新たな使用伝送レートを現在使用中の使用伝送レートよりも低い低速伝送レートに決定する。図3の場合、伝送レート決定/取得部24dは、端末管理テーブル24cから、無線端末20aの使用可能伝送レート1M、2M、5.5M、11M[bit/s]、使用伝送レート5.5M[bit/s]を取得する。伝送レート決定/取得部24dは、使用可能伝送レートと使用伝送レートを比較し、使用可能伝送レートの中から、使用伝送レート5.5M[bit/s]よりも低速な低速伝送レート1M又は2M[bit/s]を、新たな使用伝送レートに決定する。このように伝送レート決定/取得部24dは、電波伝搬環境劣化時の使用伝送レートを決定する機能を有する
伝送レート決定/取得部24dは、伝送効率の低下原因が、他無線端末と無線基地局10との間のトラヒックの増加である場合には、新たな使用伝送レートを現在使用中の使用伝送レートよりも高い高速伝送レートに決定する。図3の場合、伝送レート決定/取得部24dは、使用可能伝送レートと使用伝送レートを比較し、使用可能伝送レートの中から、現在使用中の使用伝送レート5.5M[bit/s]よりも高速な高速伝送レート11M[bit/s]を、新たな使用伝送レートに決定する。このように伝送レート決定/取得部24dは、トラヒック増加時の使用伝送レートを決定する機能を有する。
又、伝送レート決定/取得部24dは、伝送効率が回復した場合には、低速伝送レートや高速伝送レートに変更していた使用伝送レートを通常伝送レートに戻す。伝送レート決定/取得部24dは、端末管理テーブル24cを参照し、無線端末20aの伝送効率状態を監視する。伝送レート決定/取得部24dは、伝送効率状態が、「低下(電波伝搬環境)」を示す「1」、又は、「低下(トラヒック)」を示す「2」のいずれかから、「通常」を示す「0」に遷移した場合には、通常伝送レートを端末管理テーブル24cから取得し、使用伝送レートに決定する。このように伝送レート決定/取得部24dは、伝送効率状態が安定した通常時に回復した時の使用伝送レートを決定する機能を有する。
更に、伝送レート決定/取得部24dは、無線基地局10が伝送効率の低下原因に基づいて決定した無線端末20aから無線基地局10にデータを送信する際に使用する使用伝送レートを、無線基地局10から取得する伝送レート取得部としても機能する。具体的には、伝送レート決定/取得部24dは、無線基地局10からの通知データをデータフレーム受信部21から取得する。伝送レート決定/取得部24dは、通知データから、無線基地局10が決定した、無線端末20aが無線基地局10にデータを送信する際の使用伝送レートを取得する。
伝送レート決定/取得部24dは、決定した使用伝送レート、又は、無線基地局10から通知され、取得した使用伝送レートを、端末管理テーブル24cに格納する。更に、伝送レート決定/取得部24dは、決定した使用伝送レート、又は、無線基地局10から取得した使用伝送レートを、アクセス制御部23に入力する。尚、伝送レート決定/取得部24dは、使用伝送レートの初期値として、通常伝送レートを端末管理テーブル24cに格納し、アクセス制御部23に入力する。このようにして、アクセス制御部23は、伝送レート決定/取得部24dが決定した使用伝送レートや、伝送レート決定/取得部24dが無線基地局10から取得した使用伝送レートを取得し、取得した使用伝送レートによりデータフレームを無線基地局10に送信するように制御できる。
次に、無線基地局10と無線端末20a〜20cとの間で行われるCSMA/CAに従ったデータフレームの送受信について詳細に説明する。図4、図5を用い、無線端末20a,20bが無線基地局10にデータフレームを送信する際のDCFに従ったアクセス制御手順を例にとって説明する。このようなアクセス制御は、無線基地局10のアクセス制御部13、無線端末20a,20bのアクセス制御部23による制御により行われる。
図4に示すように、まず、T1区間において、無線端末20a,20bは、分散制御用フレーム(DCF Interframe Space、以下「DIFS」と示す)と、無線端末20a,20b毎に与えられたバックオフ時間1b,2bの間、キャリアセンスを行う。キャリアセンス後、無線基地局10の無線チャネルがアイドル状態の場合には、無線端末20a,20bは、無線基地局10にデータフレームを送信できる。
図4では、無線端末20aに与えられたバックオフ時間1bの方が、無線端末20bに与えられたバックオフ時間2bよりも短い。そのため、無線端末20aは、バックオフ時間1b待機した後、データフレーム1dを無線基地局10に送信する。一方、バックオフ時間2bの途中の時刻t1で、無線端末20aがデータフレーム1dの送信を開始し、無線チャネルがビジー状態になる。そのため、無線端末20bは、無線チャネルの使用を検知し、データフレームの送信を待機する。無線端末20aからのデータフレーム1dを正常に受信した無線基地局10は、SIFS(Short Interframe Space)の間、待機した後、データフレーム1dに対するACKフレーム1aを無線端末20aに送信し、通信を完了する。この間、無線端末20bは、NAV(Network Allocation Vector)の間、待機する。
次に、T2区間において、無線端末20bは、T1区間において持ち越されたバックオフ時間3b(バックオフ時間2bの残り)の間、キャリアセンスを行った後、無線基地局10の無線チャネルがアイドル状態であるため、無線基地局10にデータフレーム2dを送信する。無線端末20bからのデータフレーム2dを正常に受信した無線基地局10は、SIFSの間、待機した後、データフレーム2dに対するACKフレーム2aを無線端末20bに送信する。
このバックオフ時間は、規定範囲内での乱数値によって決定される。具体的には、アクセス制御部13が、以下に示す(1)式を用いて算出する。
バックオフ時間=DIFS+(CW/2)×スロットタイム (1)式
(1)式におけるDIFSは、データフレームの送信時に最低限必要な待機時間である。又、CW(Contention Window)は、データフレームが衝突した場合の再送の回数に応じて決定される、バックオフ時間を決定するためのパラメータである。各無線端末20a,20bのアクセス制御部13は、規定範囲において、一様に分布する乱数値を発生させる。規定範囲は、0〜CWである。CWは、最小CW(CWmin)=15から最大CW(CWmax)=1023までの範囲内で決定され、データフレームが再送される毎に指数関数的に増加する。
又、(1)式におけるスロットタイムは、CWで決定された乱数値を減らしていく一定の時間である。アクセス制御部13は、スロットタイム毎に乱数値を減らす。無線端末20a,20bは、スロットタイムが0になったら、データフレームを送信する。尚、(1)式において「CW/2」としているのは、各無線端末20a,20bの乱数値の平均を「CW/2」と決定しているためである。
次に、データフレームの衝突発生時のアクセス制御手順を説明する。図5に示すように、T3区間において、無線端末20aのバックオフ時間4bと、無線端末20bのバックオフ時間5bが同一であった場合、無線端末20aと無線端末20bは、データフレーム3d,4dを同時に無線基地局10に対して送信してしまう。これにより、データフレーム3dとデータフレーム4dの衝突が発生する。衝突が発生すると、データパケット3d,4dは破棄されてしまい、無線端末20a,20bはACKフレームを受信できない。そのため、無線端末20a,20bは、データフレームの再送を行う。
T4区間において、無線端末20a,20bは、バックオフ時間を再設定する。アクセス制御部13は、再設定時には、指数関数的にCWを増加させることにより、再衝突の確率を低減する。その結果、図5に示すように、無線端末20aのバックオフ時間6bが、無線端末20bのバックオフ時間7bよりも短く設定され、データフレームの衝突を避けることができる。無線端末20aは、バックオフ時間6bの間、キャリアセンスした後、データフレーム3dを無線基地局10に再送する。これにより、無線基地局10は、データフレーム3dを正常に受信でき、ACK3aを無線端末20aに送信する。
一方、バックオフ時間7bの途中の時刻t2で、無線端末20aがデータフレーム3dの送信を開始し、無線チャネルがビジー状態になる。そのため、無線端末20bは、無線チャネルの使用を検知し、データフレームの送信を待機する。無線端末20bは、無線端末20aによるデータフレーム送信終了後、持ち越されたバックオフ時間の間、キャリアセンスを行った後に、データフレームを再送する。アクセス制御部13は、再送が繰り返される毎にCWを増加し、再衝突の確率を低減する。尚、ユニキャスト通信時には、データフレームを送信した無線基地局10又は無線端末がACKフレームを受信することにより、データフレームの送信成功となり、データフレームの衝突や干渉波の影響によるデータフレームのロスが発生した場合には、データフレームの送信失敗となる。
(無線通信方法)
次に、無線通信システム1を用いて無線通信方法について説明する。まず、図6に電波伝搬環境劣化時の無線端末20aから無線基地局10へのデータフレームの送信手順を示す。まず、無線端末20aにおいて、無線基地局10に送信するデータフレームが発生する。無線端末20aは、初期状態では、使用伝送レートを通常伝送レートに決定する。よって、無線端末20aは、図3に示す端末管理テーブル24cから通常伝送レート5.5M[bit/s]を取得し、使用伝送レートとして格納する。そして、無線端末20aは、データフレームを無線基地局10に使用伝送レートを用いて送信する(S101)。
無線端末20aは、データフレームの信号強度を測定し、監視する。又、無線端末20aは、データフレームを送信する時は送信待機時間を測定し、監視する(S102)。無線端末20aは、データフレームの送信に連続して失敗したか否かを判断する(S103)。即ち、無線端末20aは、再送したデータフレームについても、再度、送信を失敗したか否かを判断する。
無線端末20aは、失敗したと判断した場合、端末管理テーブル24cから、送信待機時間の測定値と、信号強度の測定値を取得する。そして、無線端末20aは、送信待機時間の測定値と閾値(Transmission Interval=α)を比較し、信号強度の測定値と閾値(RSSI=β)を比較する(S104)。尚、ステップ(S103)において、データフレームの送信に連続して失敗していないと判断した場合には、ステップ(S101)に戻り、無線端末20aは、新たに発生したデータフレームを送信する。
ステップ(S104)において、送信待機時間の測定値が閾値未満であり、かつ、信号強度の測定値も閾値未満の場合には、無線端末20aは、電波伝搬環境の劣化を伝送効率の低下原因と判断する(S105)。無線端末20aは、図3に示す端末管理テーブル24cから、使用可能伝送レート1M、2M、5.5M、11M[bit/s]を取得する(S106)。無線端末20aは、取得した使用可能伝送レートの中から、現在使用中の使用伝送レート5.5M[bit/s]よりも低い低速伝送レートを選択し、新たな使用伝送レートに決定する(S107)。
無線端末20aは、ステップ(S103)で送信に失敗し、再送するデータフレームの使用伝送レートに、ステップ(S107)で新たに決定した使用伝送レートを設定する(S108)。そして、無線端末20aは、再送するデータフレームを、設定した使用伝送レートで無線基地局10に送信する(S110)。
無線端末20aは、ステップ(S110)で再送したデータフレームの送信に成功したか否かを判断する(S111)。無線端末20aは、成功したと判断した場合には、電波伝搬環境の劣化に基づく使用伝送レートの制御が正しかったと判断できるため、伝送効率状態として「低下(電波伝搬環境)」を示す「1」を含む通知データを無線基地局10に送信する(S112)。無線端末20aは、このようなタイミングで伝送効率状態を無線基地局10に通知してもよい。一方、ステップ(S111)において、再送したデータフレームの送信に失敗したと判断した場合には、ステップ(S112)は行わず、ステップ(S101)に戻り、再度、データフレームの送信を繰り返す。
一方、ステップ(S104)において、送信待機時間の測定値が閾値以上、又は、信号強度の測定値が閾値以上の場合には、無線端末20aは、電波伝搬環境の劣化が伝送効率の低下原因ではないと判断し、ステップ(S103)で送信に失敗し、再送するデータフレームの使用伝送レートに、現在使用中の使用伝送レートをそのまま設定する(S109)。そして、ステップ(S110)に進む。尚、この場合、ステップ(S111)において、無線端末20aは、再送に成功したと判断した場合には、ステップ(S112)に進まずに処理を終了する。
次に、図7にトラヒック増加時の無線端末20a〜20cから無線基地局10へのデータフレームの送信手順を示す。無線端末20a〜20cは、ステップ(S101)、(S102)と同様のステップ(S201)、(S202)を行う。無線端末20a〜20cは、端末管理テーブル24cから、送信待機時間の測定値と、信号強度の測定値を取得する。そして、無線端末20a〜20cは、送信待機時間の測定値と閾値(Transmission Interval=α)を比較し、信号強度の測定値と閾値(RSSI=β)を比較する(S203)。
ステップ(S203)において、無線端末20a〜20cのうち、送信待機時間の測定値が閾値以上であり、かつ、信号強度の測定値も閾値以上の無線端末は、
無線端末自身以外の他無線端末と無線基地局10との間のトラヒックの増加を伝送効率の低下原因と判断する(S204)。トラヒックの増加を伝送効率の低下原因と判断した無線端末は、伝送効率状態として「低下(トラヒック)」を示す「2」を含む通知データを無線基地局10に送信する(S205)。
無線基地局10は、通知データに基づいて、通知データの送信元の無線端末について、接続端末管理テーブル14cの伝送効率状態を「2」に更新する(S206)。更に、無線基地局10は、接続端末の伝送効率状態を監視する。そして、無線基地局10は、伝送効率状態が「2」の無線端末が所定数又は所定割合以上になった場合には、電波伝搬環境が劣化している伝送効率状態が「1」の無線端末を除き、伝送効率状態が「2」又は「0」の全ての接続端末について、現在使用中の使用伝送レートを高速伝送レートに決定し、更新する。そして、無線基地局10は、新たに設定した使用伝送レートを、無線端末に通知する(S207)。
無線端末は、ステップ(S207)で通知された新たな使用伝送レートを、端末管理テーブル24cに格納する(S208)。そして、無線端末は、新たな使用伝送レートでデータフレームを送信する(S209)。尚、ステップ(S203)において、無線端末20a〜20cのうち、送信待機時間の測定値が閾値未満、又は、信号強度の測定値が閾値未満の無線端末は、トラヒックの増加が伝送効率の低下原因ではないと判断し、ステップ(S201)に戻って、データフレーム送信を繰り返す。
次に、図8に伝送効率状態回復時の無線端末20aから無線基地局10へのデータフレームの送信手順を示す。図6、7に示したように、伝送効率の低下が発生する(S301)。無線端末20aは、データフレームの信号強度、送信待機時間を測定し、監視する(S302)。無線端末20aは、連続して送受信されるデータフレームの送信待機時間の測定値と閾値(Transmission Interval=α)を比較し、連続して送受信されるデータフレームの信号強度の測定値と閾値(RSSI=β)を比較する(S303)。
無線端末20aは、連続して送受信されるデータフレーム全てについて、送信待機時間の測定値が閾値未満であり、かつ、信号強度の測定値が閾値以上の場合には、図6に示した電波伝搬環境劣化時の使用伝送レートの制御や、図7に示したトラヒック増加時の使用伝送レートの制御により、データフレームの伝送効率が向上し、回復したと判断する(S304)。
無線端末20aは、図3に示す端末管理テーブル24cから、通常伝送レート5.5M[bit/s]を取得する(S305)。無線端末20aは、新たな使用伝送レートを、取得した通常伝送レートに決定する。そして、無線端末20aは、次に送信するデータフレームの使用伝送レートに新たな使用伝送レートを設定する(S306)。無線端末20aは、新たな使用伝送レートでデータフレームを無線基地局10に送信する(S307)。
無線端末20aは、ステップ(S307)で送信したデータフレームに対するACKフレームを受信でき、データフレームの送信に成功できたか失敗したかを判断する(S308)。無線端末20aは、成功できたと判断した場合には、端末管理テーブル24cの伝送効率状態を「通常」を示す「0」に更新する。更に、無線端末20aは、伝送効率状態として「0」を含む通知データを無線基地局10に送信する(S309)。無線基地局10は、無線端末20aからの通知データに基づいて、接続端末管理テーブル24cの伝送効率状態を「0」に更新する(S310)。
一方、ステップ(S308)において、無線端末20aは、失敗したと判断した場合には、ステップ(S306)において、通常伝送レートに更新した使用伝送レートを、更新前の使用伝送レート、即ち、低速伝送レートや高速伝送レートに戻して、データフレームの送信を行う(S311)。そして、無線端末20aは、ステップ(S302)に戻り、送信待機時間や信号強度を測定し、監視を行う。又、ステップ(S303)において、無線端末20aは、連続して送受信されるデータフレーム全てについて、送信待機時間の測定値が閾値未満であり、かつ、信号強度の測定値が閾値以上ではない場合にも、ステップ(S302)に戻り、送信待機時間や信号強度を測定し、監視を行う。
(効果)
このような無線通信システム1、無線基地局10、無線端末20a〜20c及び無線通信方法によれば、無線端末20a〜20cと無線基地局10との間の電波伝搬環境と、他無線端末と無線基地局10との間のトラヒックとに基づいて、データの伝送効率の低下原因を判断でき、その低下原因に応じて無線端末20a〜20cから無線基地局10にデータを送信する際に使用する使用伝送レートを制御できる。無線通信システム1では、このような無線端末20a〜20cから無線基地局10にデータを送信する際に使用する使用伝送レートの制御により、無線端末20a〜20cが効率的にデータを送信でき、無線通信システム1全体の伝送効率の向上を図ることができる。即ち、無線通信システム1では、無線基地局10とその配下の各無線端末20a〜20cとの間の状況だけでなく、無線基地局10とその配下の全ての無線端末20a〜20cとの間の状況に応じて、無線端末20a〜20cの使用伝送レートを制御できる。
しかも、伝送レート決定部14d,24dは、低下原因が電波伝搬環境の劣化である場合、使用伝送レートを現在使用中の使用伝送レートよりも低い低速伝送レートに決定し、低下原因が他無線端末と無線基地局10との間のトラヒックの増加である場合、使用伝送レートを現在使用中の使用伝送レートよりも高い高速伝送レートに決定する。
そのため、電波伝搬環境が劣化している無線端末と無線基地局10間では、低速伝送レートでデータを送信することにより、データの到達確率を向上できる。更に、他無線端末と無線基地局10との間のトラヒックが増加している場合に、無線端末と無線基地局10間では、高速伝送レートでデータを送信することにより、無線端末と無線基地局10間におけるデータの送信時間を短縮できる。よって、トラヒックが増加している他無線端末の送信待機時間を低減できる。以上のことから、無線端末20a〜20cは、より効率的にデータを送信でき、無線通信システム1全体の伝送効率をより向上できる。
更に、伝送レート決定部14a,24aは、伝送効率が回復したと判断した場合、使用伝送レートを通常伝送レートに決定する。そのため、伝送効率が回復した無線端末と無線基地局10との間の使用伝送レートを通常伝送レートに戻すことができ、無線通信システム1全体の伝送効率をより向上できる。しかも、無線通信システム1、無線基地局10、無線端末20a〜20cは、電波伝搬環境を示す情報として信号強度を用い、トラヒックを示す情報として送信待機時間を用いて、容易に低下原因を判断できる。
又、無線基地局10が、伝送効率の低下原因に応じて、無線端末20a〜20cから無線基地局10にデータを送信する際に使用する使用伝送レートを制御できる。そして、無線基地局10は、決定した使用伝送レートを無線端末20a〜20cに通知することにより、無線端末20a〜20cを制御できる。よって、無線端末20a〜20cは、通知された使用伝送レートによりデータを無線基地局10に送信できる。
更に、無線端末20a〜20cは、無線端末20a〜20c自身が、伝送効率の低下原因を判断でき、その低下原因に応じて無線端末20a〜20cから無線基地局10にデータを送信する際に使用する使用伝送レートを制御できる。そして、無線端末20a〜20cは、決定した使用伝送レートによりデータを無線基地局10に送信するように制御できる。
又、無線端末20a〜20cは、無線基地局10に、伝送効率の低下原因に応じた、無線端末20a〜20cから無線基地局10にデータを送信する際に使用する使用伝送レートの制御を行ってもらい、その制御結果である決定した使用伝送レートを無線基地局20a〜20cから取得できる。そして、無線端末20a〜20cは、決定した使用伝送レートによりデータを無線基地局10に送信するように制御できる。
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。伝送レート決定部として機能する伝送レート決定部14dや伝送レート決定/取得部24dと、判断部として機能する伝送効率管理部14a,24aは、無線通信システム1内のいずれかに設けられればよい。そのため、図1に示すように、無線基地局10又は無線端末20a〜20cそれぞれが、伝送レート決定部14dや伝送レート決定/取得部24dと、伝送効率管理部14a,24aの両方を備えてもよく、無線基地局10と無線端末20a〜20cが、伝送レート決定部や伝送レート決定/取得部と伝送効率管理部とを分担して備えてもよい。
又、無線基地局10が、伝送効率の低下原因を判断する場合には、ステップ(S104)、(S203)、(S303)等で行っているような送信待機時間の測定値と閾値の比較と同様にして、受信間隔の測定値と閾値(Reception Interval=γ)との比較を行うことができる。