JP4162141B2 - 水溶液中の金属元素イオンの分離方法および装置 - Google Patents

水溶液中の金属元素イオンの分離方法および装置 Download PDF

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Description

本発明は概して、クロマトグラフィーによる水溶液中の金属元素イオンの分離方法および装置に指向される。分離すべき元素は、長周期表(long periodic table)の主族元素、遷移金属、ランタニドおよびアクチナイドを含め、同じまたは異なる族に属しうる。本発明はより詳しくは、90Yおよび201Tlなどの放射性同位体のイオンをその親元素から分離し、および医療用途の場合と同じマルチ・キューリーレベルをもたらし、かつ廃物の生成を最小限に止める装置および方法に関する。
多くの金属元素の放射性同位体は、病気の診断や処置において、潜在的な用途を有する。たとえば、64時間の半減期を有しかつ強いβ粒子を放射する(Emax=2.28MeV)イットリウム−90同位体は、ヒトの多くの病気の処置における有望さに優れ、そして、放射性同位元素標識免疫療法やペプチド標的放射線療法での最近の進歩において、90Yの需要が増しつつある。他の放射性同位体の、73時間の半減期を有しかつ135および167keVの光子を放射するタリウム−201は、心筋灌流の画像化剤として広く使用されている。他の放射性同位体の数多くの具体例や、それらの放射性薬品としての潜在的使用については、当業者にとって周知である。
放射性薬品としての潜在的用途を持つ放射性同位体を生成する1つの方法は、周期表の隣接族元素の放射性種の壊変による。たとえば、90Yは90Srの28年半減期壊変から生成させることができる。同様に、201Tlはその親201Pb(T1/2=9.33時間)から壊変される。
標的同位体を放射性薬品として使用するためには、一般に、親化合物から分離することが必要である。放射性同位体の分離に多くの異なる技法が用いられており、該技法として沈殿、溶剤抽出およびイオン交換クロマトグラフィーが挙げられ、また幾つかの有機リン抽出剤の使用が記載されている。稀土類やイットリウムの抽出技術において、1957年のPeppardらの出版以来[D.F.Peppardらの「J.Inorg.Nucl.Chem.」(4:334、1957年)]、ジ−2−エチルヘキシルリン酸(DEHPA)が広く使用されている。
またDEHPAは、1959年オーク・リッジ・ナショナル・ラボラトリー(Oak Ridge National Laboratory)で、稀土類や90Yの核分裂生成元素の高レベル分離にも使用された。1962年から1990年、オーク・リッジ・ナショナル・ラボラトリー(ORNL)で、ミリ・キューリー量の90Yに対し小規模の手順が用いられた[N.Caseらの「ORNL Radioisotope Manual,U.S.A.E.C.Report ORNL−3633,TID4500」(30版、1964年6月)]。この手順は、試薬精製のため後に変更されたが、現在は商業上、90Yの供給に使用されている[J.A.Patridgeらの「J.Inorg.Nucl.Chem.」(31:2587−2589、1969年);およびLane A.BrayらのU.S.特許No.5512256(1996年4月30日)]。
また他の有機リン化合物として、Peppardによって2−エチルヘキシル−2−エチルヘキシルリン酸(EHEHPA)が開発された[D.F.Peppardらの「J.Inorg.Nucl.Chem.」(18:245、1961年)および「J.Inorg.Nucl.Chem.」(27:2065、1965年)]。この抽出剤は、イットリウム、他の稀土類や三価アクチナイドの回収に広く使用されるようになったが、それは、希酸によって容易にストリッピングできるからである。幾人かの研究者は、イットリウム回収の場合DEHPAに比しEHEHPAが明確に優先することを報告している[Y.Moriらの「Proc.Symp.Solvent.Extr.」(119−124、Jpn.Assoc.Solvent Extr.、日本国浜松市、1984年);K.Inoueらの「日本工業会誌」(102:491−494、1984年);D.Liらの「Int.Solvent Extr.Conf.(proc.)」(3:80−202、1980年);D.Liらの「New Frontiers in Rare Earth Science and Applications」(1:463−467、1985年);およびP.V.Achuthanらの「Separation Science and Technology」(35:261−270、2000年)]。
ウラン、アクチナイドおよび稀土類の回収や精製のため、中性有機リン化合物の使用が、トリ−n−ブチルホスフェート(TBP)と共に1950年に始まった[J.C.Warfの「J.Am.Chem.Soc.」(71:3257、1949年)]。他の抽出剤がホスフィン群と共に1960−1970年に試験され、多少の成功を収めた。カルバモイルメチルホスフィンオキシド・タイプの幾種かの化合物の開発におけるアルゴンヌ・ナショナル・ラボラトリー(Argonne National Laboratory)の研究は、硝酸溶液から三価、四価および六価イオンを除去する一部類の抽出剤を導いた[R.C.Gatroneらの「Solvent Extr.and Ion Exch.」(5:1075−1116、1987年)]。
また1980−1983年の期間にわたるアルゴンヌ・ナショナル・ラボラトリーおよびUSSRの幾つかの研究論文によって、このタイプの抽出剤の使用が証明された[D.G.Kalinaらの「Sep.Sci.Technol.」(17:859、1981年);T.Y.Medvedらの「Acad.Sci.U.S.S.R.,Chem.Series」(1743、1981年);E.P.Horwitzらの「Sep.Sci.Technol.」(17:1261、1982年);M.K.Chmutovaらの「Sov.Radiochem.Eng.Transl.」(24:27、1982年);E.P.Horwitzらの「Proceedings ISEC’83」(1983年);M.K.Chmutovaら「J.Radioanal.Chem.」(80:63、1983年);A.C.Muscatelloらの「Proceedings ISEC’83」(72頁、1983年);E.P.Horwitzらの「Solvent Extr.Ion Exch.」(3:75、1985年);W.W.Shultzらの「J.Less−Common Metals」(122:125、1986年);J.N.Mathurらの「Talanta」(39:493−496、1992年);J.N.Mathurらの「Waste Management」(13:317−325、1993年)]。この技法を用いると、硝酸溶液からイオンが金属硝酸塩として抽出される。次いで、イオンと共に装填される抽出剤は、希酸または塩溶液(0.01〜0.1N)で逆抽出され、抽出剤からイオンのストリッピングを起すことによって、酸を煮詰めることなく容易に回収することができる。
上述の如く、201Tlはその親同位体,201Pbの壊変(電子捕獲)によって生成される。201Pbは一般に、サイクロトロンにて203Tlに〜30MeVプロトンを照射することによって生成される(203Tl(p,3n)201Pb)。照射標的から201Tlの分離は伝統的に、2工程で行なわれる。最初に、203Tl標的から放射性鉛を分離し、増成(build up)を行なうのに最適な待機期間後、蓄積した201Tl娘核種を親鉛同位体から分離する。該分離を行なうのに種々の方法が報告されている。たとえば、E.Lebowitzらの「J.Nucl.Med.」(16:151−155、1975年)に、タリウム標的から鉛活性(activities)を分離するのに先ず、EDTA錯化剤のヒドラジン硫酸塩とイオン交換カラムを用いる生成法の記載がある。
次に、アニオン交換カラムを用いて、201Tl+3を付着し(NaClOで酸化)、鉛活性を溶離せしめる。最後に201Tl活性を温ヒドラジン−硫酸塩溶液で溶離し、Tl+3をTl+1に還元する。S.M.Qaimらの「Int.J.Appl.Radiat.Isot.」(30:85−95、1979年)で、先ずFe(OH)でキャリヤーの無い鉛活性を沈殿させた後、201Tlのアニオン交換カラム分離を行なう手順が報告された。
M.D.Kozlovaらの「Int.J.Appl.Radiat.Isot.」(35:685−687、1984年)で、硫酸ストロンチウムとして鉛活性の共沈殿、次いで酢酸ブチルを用いKBrO溶液を加える溶剤抽出を包含する手順が報告された。J.L.Q.de Brittoらの「J.Radioanal.Nucl.Chem.Letters」(96:181−186、1985年)で、pH4.5にて鉛を保持するが、タリウムを容易に溶離する、キレートカルボン酸イオン交換樹脂カラムの性質に基づく分離が報告された。
J.A.Campbellらの「J.Labelled Compounds and Radiopharmaceuticals」(13:437−443、1977年)およびM.C.Lagunas−Solarらの「Int.J.Appl.Radiat.Isot.」(33:1439−1443、1982年)の両方で、Dowex50W−X8システムを用いて、鉛とタリウム(I)イオンを吸着するが、タリウム(III)イオンを、0.1%塩素ガス含有の0.005N塩酸で溶離することが提案された。これらの方法は全て、時間の消費、危険および高価となる傾向にある。
放射性薬品での使用に好適であるためには、一般に、親化合物から放射性同位体を高度な純度になるまで分離すべきことが重要である。たとえば、90Y含有生成物の場合、90Srの量をCi90Y当り10−6Ci以下に保持すべきである。またFe、Cu、ZnおよびCaなどの他の金属による汚染も縮小すべきであるが、それは、医薬製品に使用しうるキレート化剤に対し、異質の金属イオンがY+3と競合しうるからである。しかしながら、放射性同位体の分離の数多くの種々の技法は、不完全な分離、および/または他の金属による汚染の傾向がある。当然の結果として、従来技術では、これらの品質基準に適合する良質放射性同位体を生成する簡単な分離法を提供することができなかった。
また公知技法の多くは、分離に用いる物質や器具への放射線損傷のため、分離法のスケールアップに欠けている。たとえば、J.S.Wikeらの「Appl.Radiat.Isot.」(41:861−865、1990年)に、90Yの抽出にDEHPA/ドデカンを用いる分離技法の開示がある。しかしながら、該方法の、有機抽出剤を繰返しストリッピングしなければならないという複雑さが、90Srストック溶液または90Y生成物のいずれかにおいて、抽出剤の放射線分解生成物の蓄積を導く。DEHPAおよび有機抽出剤の放射線分解フラグメントは共に、方法で用いるガラス容器の壁に90Yがくっつくのを引起し、その結果、90Yの貧回収をもたらすものと思われる。当然の結果として、この方法は、良質90Yを高収率で生成する簡単な90Sr/90Y分離法を提供することができない。
HorwitzらのU.S.特許No.5368736に、90Yの高除染要因を提示しうる別の分離技法が開示されている。この技法は、疎水性クラウンエーテルカルボン酸のストロンチウム−選択的抽出剤をポリマー樹脂に固定して、90Sr/90Y混合物を該クラウンエーテルカラムに通した後、90Yから90Srを選択的にストリッピングすることを必要とする。90Y流出液はさらに、稀土類選択的抽出剤を含浸した樹脂で精製され、上記抽出剤はオクチル−(フェニル)−N,N−ジイソブチルカルバモイルメチルホスフィンオキシド(CMPO)とトリ−ブチルホスフェート(TBP)の混合物である。
上記分離技法は、有機溶剤の使用を回避するが、90Srの完全保持のため少なくとも3つのストロンチウム−選択的カラムを要し、これは、マルチ・キューリーのスケールアップの可能性を制限しうる。加えて、この技法はpH調整と、クラウンエーテルおよびCMPO/TBPカラム間の90Yの容量濃縮を要し、これはさらに、マルチ・キューリーレベルの方法を複雑にする。
他の現在の商業的な90Yの供給方法は、90Yのストリッピングに高濃度のHNOまたはHCl(8〜10N)を要するDEHPA溶剤抽出法を用いる、90Yおよび90Sr混合物からの90Yの抽出を必要とする。過剰の酸を蒸発させると、90Yは90Y生成物中の痕跡量(1〜2mg/L)のDEHPAと再結合する結果、ガラス製品[J.S.Wikeらの「J.Appl.Radiat.Isot.」(41:861−865、1990年)]上と、積荷容器中の生成物の損失をもたらす。また90Yと痕跡量のDEHPAの再結合は、沈殿と、90Yを持つ標的分子の不完全な標識(tagging)をもたらしうる。当然の結果として、該従来技術は、良質90Yを高収率で生成する簡単な90Sr/90Y分離法を提供することができない。
必要なものは、水溶液中の金属元素イオンの簡単低コスト分離、特にその親化合物からの放射性同位体の分離用の改良方法および装置である。たとえば、90Srから90Yを分離して、放射性療法における使用で純度、濃度および収率を改良した90Yイオンの提供に使用しうる方法である。また該方法は、いずれの有機溶剤の使用も必要とすべきでなく、かつ液体廃物排出を最小化しおよび放射性親元素(parent)の廃物も最小化すべきである。
(発明の概要)
本発明の1つの具体例において、水溶液中の金属元素のイオンを分離する方法が提供される。この方法は、疎水性キレート化抽出剤を含浸したカーボンまたはグラファイト基体からなるイオン交換体(exchange)を準備する工程を包含する。抽出剤は、選択的pHで、第1金属元素のイオンに対する方が第2金属元素のイオン(ここで、第1金属元素と第2金属元素は異なる)に対するより親和力が大きいものである。この方法はさらに、上記第1および第2金属元素のイオンを含有する溶液を準備し;次いでイオン交換体を溶液と選択的pHで十分な時間接触せしめ、第1金属元素のイオンが該イオン交換体に結合するようにする工程を必要とする。
本発明の他の具体例は、酸水溶液中の金属元素のイオンをクロマトグラフィーで分離する方法を提供する。この方法は、以下の工程を包含する。
(A)2つの分離カラムを含有するクロマトグラフィーシステムを形成する工程。各カラムは、選択的pHで、第1金属元素のイオンに対する方が第2金属元素のイオンに対するより親和力が大きいイオン交換体を有する。この具体例で、2つのイオン交換体の選択的pHは、同じでない。
(B)第1および第2金属元素のイオンを含有する、選択的pHの供給溶液を準備する工程。
(C)該供給溶液を第1分離カラムに十分な時間装填して、第1金属元素のイオンの少なくとも一部が第1イオン交換体に結合するのを可能ならしめる工程。
(D)第1イオン交換体から第1金属元素のイオンを、第1イオン交換体が第1金属元素のイオンに対する親和力を実質的に有さないpHを持つ溶液で溶離する工程。
(E)工程(D)からの溶出液を必要に応じて、第2イオン交換体が第1金属元素のイオンに対し親和力を有する第2選択的pHに調整する工程。
(F)次いで該溶出液を第2分離カラムに十分な時間装填して、第1金属元素のイオンの少なくとも一部が第2イオン交換体に結合するのを可能ならしめる工程。
(G)第2イオン交換体から第1金属元素のイオンの少なくとも一部を、第2イオン交換体が第1金属元素のイオンに対する親和力を実質的に有さないpHを持つ水溶液で溶離することにより、第2溶出液を調製する工程。
本発明の他の具体例において、金属元素を分離する分離カラムを提供する。この分離カラムは、
(a)入口と出口の両方を有する本体部;
(b)該本体部の中に収容され、選択的pHで、第1金属元素のイオンに対する方が第2金属元素のイオンに対するより親和力が大きい疎水性キレート化抽出剤を含浸したカーボンまたはグラファイト基体からなるイオン交換体;および
(c)上記第1および第2金属元素のイオンを含有する上記選択的pHの溶液
から成る。
さらに本発明の他の具体例は、
(a)入口と出口を有する本体部;および
(b)該本体部の中に収容されるイオン交換体
から成る201Tl発生器である。
上記イオン交換体は、DEHPA、EHEHPA、またはジ(2,4,4−トリメチル−ペンチル)ホスフィン酸(DTMPPA)などの酸性有機リン抽出剤を含浸したカーボンまたはグラファイト繊維からなる。さらに該イオン交換体は上記抽出剤に結合した201Pbのイオンを含有する。
さらに本発明の具体例は、(a)第1カラムと(b)第2カラムから成るクロマトグラフィー抽出システムであって、
第1カラム(a)は、
(1)入口と出口を有する第1本体部;
(2)該第1本体部の中に収容され、第1選択的pHで、第1金属元素のイオンに対する方が第2金属元素のイオンの対するより親和力が大きい第1イオン交換体
からなり;
第2カラム(b)は、
(1)入口と出口を有する第2本体部(ここで、第2カラムの入口は第1カラムの出口と流通している);
(2)該第2本体部の中に収容される第2イオン交換体
からなることを特徴とするクロマトグラフィー抽出システムを提供する。
この具体例において、第2イオン交換体もまた、第1選択的pHとは異なるpHで、第1金属元素のイオンに対する方が第2金属元素のイオンの対するより親和力が大きい。
本発明のさらに他の具体例において、90Y発生器が提供される。この発生器は、(a)第1カラムと(b)第2カラムから成り、
第1カラム(a)は、
(1)入口と出口を有する第1本体部;
(2)該第1本体部の中に収容され、酸性有機リン抽出剤を含有する第1イオン交換体;
(3)該第1本体部の中にありかつ第1イオン交換体と接触し、90Srイオンを含有しかつ約1.5〜2.5のpHを有する供給溶液
からなり;
第2カラム(b)は、
(1)入口と出口を有する第2本体部(ここで、第2カラムの入口は第1カラムの出口と流通している);
(2)該第2本体部の中にあり、カーボンまたはグラファイト基体に中性または二官能性有機リン抽出剤が吸着してなる第2イオン交換体
からなることを特徴とする。
本発明の付加的な具体例については、本明細書を再考すれば、当業者にとって容易に明らかとなろう。
本発明の数多くの目的および利点については、以下に記載の詳細な説明や添付図面を参照することにより、当業者によって良好に理解されうる。
なお、図1は90Srから90Yを分離する方法の概要図である。
(発明の詳細)
本発明は、水溶液中の金属元素のイオンを分離する改良方法および装置を提供するもので、これによって、鉱業、環境除染、医薬産業を含む広範囲の産業での、および病気の処置や診断での幅広く変化する用途に使用される、所望金属元素の比較的純粋なサンプルを付与する。イオンの分離は、一元素のイオンを優先的に結合するが、他の元素のイオンを溶解状態で残存させる、イオン交換体の使用によって達成される。
本明細書で用いる“分離”とは、水溶液中に存在する一金属元素のイオンの少なくとも約90%、好ましくは約90%より多く、より好ましくは約95%より多く、さらにより好ましくは約99%より多くが該水溶液からイオン交換によって除去することができ、かつ別の異なる金属元素のイオンの少なくとも約90%、好ましくは約90%より多く、より好ましくは約95%より多く、さらにより好ましくは約99%より多くが該水溶液に残存することを意味する。
好ましい具体例において、約10以上、より好ましくは約10以上、さらにより好ましくは約10の分離が達成しうる溶液を調製することができる。換言すれば、本明細書記載の方法および装置を用いて、一例として90Srから90Yの分離を行なうと、90Sr/90Y比が好ましくは約10−6以下、より好ましくは約10−8以下である、精製した90Yのサンプルを得ることが可能である。
多くの用途で、かかる方法および装置は、長周期表の異なる族に属する金属元素の分離に使用される。しかして、かかる方法はなお、同じ族に属する元素の分離にも適応させることができる。長周期表の族は、IA,IIA,IIIB,IVB,VB,VIB族を含む主族元素、IIIA,IVA,VA,VIA,VIIA,VIIIA,IBおよびIIB族を含む遷移金属、原子番号57〜71の元素を含むランタニド、および原子番号89〜103の元素を含むアクチナイドを包含する。
このように、本発明の方法およびシステムを用いて分離しうる適当な元素としては、たとえばLi、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Po、Fr、Ra、Ac、Ku、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Th、Pa、U、Np、Pu、Am、Cm、Bk、Cf、Es、Fm、Md、No、およびLwが挙げられる。
本発明は、このような目的を達成するため、疎水性キレート化抽出剤を使用する。本発明での使用に好適な抽出剤としては、酸性有機リン抽出剤、たとえばDEHPA、EHEHPAおよびDTMPPA;中性有機リン抽出剤、たとえばTBPおよびトリ−n−オクチルホスフィンオキシド(TOPO);二官能性有機リン抽出剤、たとえばCMPOおよびN,N,N’,N’−テトラオクチル−3−オキサメンタンジアミド(TOGDA);塩基性抽出剤、たとえばトリ−n−オクチルアミン(TOA)およびトリカプリルメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。また当業者にとって公知の他の抽出剤も使用でき、たとえば5,8−ジエチル−7−ヒドロキシ−6−ドデカンオキシムや2−ヒドロキシ−5−ノニルアセトフェノンオキシムなどのヒドロキシオキシム;ジ−t−ブチル−ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6などのクラウンエーテル;およびジチオセミカルバゾンが挙げられる。
本発明において好ましくは、疎水性キレート化抽出剤は基体に吸着されて、イオン交換体を付与する。好ましい具体例において、イオン交換体はカラムに収容される。カラムは、少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口を有する。以下により十分に記載の、2つのカラムシステムにおいて、第1カラムの出口は第2カラムの入口と流通しうる。なお、リンス溶液、過剰の供給溶液等を加えたりあるいは回収するのに、両カラムのいずれかまたは両方に追加の入口および/または出口を存在させてもよい。
イオン交換体への使用に適当な幅広く変化する種々の基体が当該分野で知られているが、本発明者らは、カーボンやグラファイトからなる基体が特に、本発明の方法や装置に有利に適合することを見出した。本発明を限定すると解釈すべきでないが、上記抽出剤とカーボンまたはグラファイト基体間の疎水性相互作用は、格別に強く、抽出剤のキレート化部分を妨害しないと思われる。またカーボンおよびグラファイト基体は、強い酸および塩基中で高い安定性を有すると思われ、かつ本発明の方法や装置を用いて放射性金属元素を分離するときに存在しうる、放射線の場に対し他種の基体よりも抵抗性があるかも知れない。
かかるカーボンおよびグラファイト基体として、成形カーボンまたはグラファイト、ガラス質(ガラス状)カーボン、熱分解カーボンまたはグラファイト、カーボン複合材料、カーボンまたはグラファイト粉末、カーボンまたはグラファイト粒子、およびカーボンまたはグラファイト繊維を含む、種々のものが使用できる。疎水性抽出剤の普通の基体は、温度600℃ガス流中の有機化合物の分解によって調製される無機物質、たとえばZrOを被覆したカーボンである。
有機イオン透過担体のZrO被覆カーボンへの結合は、疎水性誘引を必要とするばかりでなく、有機イオン透過担体のグラファイト平削り構造(planer structure)への電子(pi−pi)相互作用も必要とすることが提案されている[Paul T.Jacksonらの「Anal.Chem.」(69:416−425、1997年)]。この強い結合は、ポリマーマトリックス、たとえばChromosorbもしくはXAD吸着剤、または架橋ポリブタジエン被覆の物質の場合に見られるよりはるかに良好に、有機イオン透過担体の浸出を防止する。
>1500℃で形成した純粋なカーボンまたはグラファイト繊維は、本発明の溶剤抽出で普通に用いる疎水性抽出剤のほとんどに対し非常に良好な基体を付与することがわかり、かつカーボンまたはグラファイト基体を利用する本発明の具体例で選ばれる。好ましい具体例において、カーボンまたはグラファイト繊維は、カーボンまたはグラファイトのフェルト形状にある。好ましくは、このカーボンまたはグラファイトフェルトは、他の基体を用いずに使用される。
この製品の約50mg/cmの低い嵩密度および大きい表面積(概算:30〜40m/gm)、並びに有機リン抽出剤を選択的に結合できる能力は、速い流速、たとえば約1〜10mL/cm/分で作動でき、かつ性能が良好なカラムの調製を可能ならしめる。さらに、フェルトは切断およびカラムへの詰込みが容易で、計量が容易で、かつ粉末状または粒状の材料よりも有機リン抽出剤の特定量を予言して吸着する。
本発明での使用に好適なカーボンまたはグラファイトフェルトは、商売人から(たとえばメイン州ビッドフォードのファイバー・マティリアルズ・インコーポレイテッドから)1/8インチ厚シートの形状で入手することができる。これらの低密度軟質フェルト材料は、細長い小径の有機レーヨンフィラメントの2300℃での炭化および黒鉛化で、純度>99.7%のグラフアイトフェルトを生成することによって生産される。この材料は、わずかppm量のCuおよびS不純物しか有さない。
HNO溶液による予備浸出で、これらの不純物を除去する。フェルトを110℃で乾燥し、次いでメタノール溶液中の所定の抽出剤を装填する。風乾後、カラムの直径に匹敵またはやや大きめの直径を有するShimカッターを用い、グラファイトフェルトを円形パッドに切断する。カラムの大きさに応じて、たとえば約5〜15またはそれ以上の幾つかのグラファイトフェルトパッドを、各カラムに用い、わずかに圧縮することにより、いずれの空隙も除くことができる。
また本発明者らは、異なる金属元素に対する種々の化学的な有機リン抽出剤の親和力がpH−依存であることを見出した。たとえば、DEHPAなどの一般式:(RO)P(O)(OH)の有機リン酸化合物、EHEHPAなどの一般式:(RO)RP(O)(OH)の有機ホスホン酸化合物、およびDTMPPAなどの一般式:RP(O)(OH)の有機ホスフイン酸化合物は、比較的低い酸濃度で90Yに対して著しい親和力を有することにより、これらの条件下90Srから90Yの抽出に使用することができる。
同じく、本発明者らは、DEHPAが2.5に匹敵(等しい)もしくは大なるpHで、201Pbに対して親和力を有することにより、かかるpHレベルの溶液中の201Tlから201Pbを容易に分離するのに使用しうることを見出した。しかしながら、濃酸溶液の存在下では、酸性有機リン抽出剤はこれらのイオンに対する親和力を失う。すなわち、濃酸溶液、たとえば塩酸、過塩素酸、硫酸または硝酸の濃溶液は、高いpHで抽出剤に結合するようになるイオンの溶離に使用することができる。本明細書使用の、酸に関する語句“濃”とは、少なくとも約4Nの酸濃度を有する溶液を指称する。
これに対し、本発明者らは、他の有機リン化合物、たとえばCMPOやTBPは、90Yを保持するのにはるかに高い酸濃度を要することを見出した。すなわち、濃酸溶液中で90YはCMPOに結合するようになり、そして結合した90Yは希酸溶液の存在下抽出剤から溶離される。本明細書使用の、酸溶液に関する語句“希”とは、約0.1N以下の酸濃度を有する溶液を指称する。これらのユニークな化学特性の発見によって、本発明者らは、90Srから90Yを分離する方法において、濃縮(蒸発)や90Srから90Yのカラム分離での酸性度調整を全く要しない、かかる分離方法および装置を開発することができた。
本発明において、抽出剤として、選択的pHで、一金属元素のイオンに対する方が、第2金属元素(長周期表の異なる族に任意に属する)に対するより親和力が大きいものを使用する。本明細書使用の“親和力が大きい”とは、第1金属元素のイオンに対する抽出剤の親和力が、第2金属元素のイオンに対する親和力と比較して、約10:1より大、好ましくは約100:1より大、より好ましくは約1000:1より大、さらにより好ましくは約10000:1より大であることを意味する。
本発明の特定具体例において、第1金属元素は、抽出剤が第1金属元素のイオンに対する親和力を実質的に有さない第2pHを持つ溶液によって、抽出剤から溶離される。本明細書使用の語句“親和力を実質的に有さない”とは、かかるpHで、いずれの結合イオンの少なくとも約75%が溶離されるであることを意味する。好ましくは、かかるpHで、いずれの結合イオンの少なくとも約85%が溶離され、より好ましくは、いずれの結合イオンの少なくとも約95%が溶離されるであろう。特に好ましい具体例において、約95%以上、さらに約99%以上のいずれの結合イオンもが溶離されるであろう。
抽出剤を含浸した基体のカラムへの装填があまりに少ないと、第1金属元素の不十分な結合が起こりうる。装填があまりに多いと、抽出剤からの溶離が不完全となりうる。最も好ましくは、抽出剤を含浸した基体をカラムに装填して、選択的pHで第1金属元素の約99%以上の保持、および第2pHで第1金属元素の約97%以上の溶離を付与する。抽出剤の装填濃度は、各抽出剤の場合の実験に基づき決定されるが、代表例として、グラファイトフェルト1g当り、約0.1〜1.0g抽出剤で変化する。
たとえば、本発明の一具体例において、EHEHPAの場合の最適装填量は、カーボンまたはグラファイトフェルト1g当り約0.1gであり、またCMPOの場合では、カーボンまたはグラファイトフェルト1g当り約0.25gである。この具体例において、グラファイトフェルト上のEHEHPAはpH1.5〜2.5にて、3/8インチカラムを用い、pH1.75〜2.0のSr(NO溶液の90Srから90Yを回収率>99%および90Srからの10分離で回収することができ、濃HNO溶液による溶離後、カラム上に<1%の90Yが残存する。DEHPAは、EHEHPAと同様にしてグラファイトフェルト上で使用できるが、90Yの溶離に高濃度の酸を要することがわかった。他の抽出剤の最適装填量や、他の基体についての決定は、当業者によって容易に行なうことができる。
またカーボンまたはグラファイトフェルトは、CMPOなどの二官能性有機リン抽出剤の好適な基体であることもわかった。CMPOをメチルアルコールに溶解し、基体上で乾燥する。カーボンまたはグラファイト繊維は、CMPOと強固に結合し、TBPはCMPOを保持する必要がない。本発明実施態様の一例において、1/8インチ厚の15のグラファイトフェルトパッドから調製した直径0.325インチ(8mm)カラムに、カーボンまたはグラファイトフェルト1g当り0.2〜0.25gのCMPOを装填したものを、約1.25インチ長さに圧縮する。8N−HNO溶液中の90Yを装填すると、流れ抵抗は全くほとんどなく、トータル約30mLの8N−HNOで洗う。
カラムをポンプで吸引して乾燥させる。含浸したフェルトは非常に疎水性なので、カラムを有効に脱水する。最小限(3〜8mL)の溶出液(eluant)を用い、90Yを流速0.5mL/分で溶離する。実際には、約15mLを用いる。小径(0.325インチ)、長さ1.0インチのXAD−4カラムに、溶出液を通していずれの有機物もの除去を確実にし、次いで0.45ミクロンフィルターで濾過して、いずれの粒子をも除去する。このように首尾よく用いた溶出液は、希塩酸(たとえば0.05N−HCl)、希硝酸(たとえば約0.01〜0.05N−HNO)、水、0.9%NaCl、および各濃度の酢酸アンモニウム溶液を含有した。なお、生化学溶液と相溶すれば他の多くの溶出液も使用できる。
このように、本発明の好ましい具体例において、有機抽出剤を詰め込んだ2つのカラムから成る発生器システムは、ストロンチウム−90からイットリウム−90を分離することができる。該発生器に用いるクロマトグラフィー抽出システムは、第2カラムと流通する、DEHPA、EHEHPAまたはDTMPPAなどの酸性有機リン抽出剤を含有するイオン交換カラムから成り、上記第2カラムはCMPOなどの二官能性有機リン抽出剤またはTBP(トリ−n−ブチルホスフェート)などの中性有機リン抽出剤を含有する第2イオン交換体を有する。軽量多孔質の化学的に不活性なカーボンまたはグラファイトフェルトは、有機抽出剤の吸収に使用され、カラムマトリックスとして役立つ。
分離方法において、約0.2Mの90Sr(NO硝酸塩溶液(pH約1.75)を、EHEHPAカラムに装填する。90Srイオンは直ちに通過するが、90Yは保持される。90Sr溶液を集め、後の分離のため90Y生長(grow−in)用の遮蔽容器に貯蔵する。pH約1.75の硝酸溶液によるリンス後、90Yを濃酸、たとえば約8N−HNOで溶離し、次いで直列に接続した第2カラムに通す。溶離した90Yイオンを第2カラムの第2イオン交換体に保持せしめ、さらに別途濃酸でリンスする。
次いで90Yイオンを、希酸(たとえば約0.01N−HNO)または酢酸アンモニウム緩衝液で溶離する。残余の90Srに対し、pH1.75と8N硝酸洗液の両方を分離する。各カラムの除染要因は、約10以上である。第2溶出液の90Sr/90Y比は、製造日の時で約10−8の範囲にある。上記分離によって得られる90Yは、高い化学的および放射性核種純度を有することが認められ、かつEDTA、DTPAおよびDOTAなどの支持キレート化剤を有する標的分子の標識付けに使用することができる。
また、DEHPAおよびDTMPPAなどの他の酸性有機リン抽出剤も、90Srから90Yを分離する試験を行った。90Srから90Yの分離は、DEHPA、EHEHPAおよびDTMPPAを用いるときそれぞれ、pH約1、約2および約3で達成することができ、これらはDEHPA、EHEHPAおよびDTMPPAの酸性強さに一致する。
カラムから90Y活性の溶離は、使用される有機抽出剤のいずれに拘らず、量的に類似する。また、EHEHPAカラムから90Yを溶離し、これをCMPOカラムに保持するのに、約8N−HNOの使用が好ましく、それは、低濃度のHNOでは両カラムにおいて若干の90Yのロスをもたらすからである。
本発明の方法および装置について、この分野で公知の抽出方法と比べて幾つかの利点がある。第1に、90Y活性と有機抽出剤の接触時間が短く、このため、有機抽出剤の放射線分解が排除される。第2に、グラファイトフェルトは、化学的および放射線損傷の両方に対する高い抵抗性のため、ポリマー樹脂よりも良好な吸収剤である。
第3に、EHEHPAはpH約1.75のHNO90Yを保持しおよびCMPOは濃硝酸を用いて90Yを保持するので、分離はとぎれない方法であり、かつ2つの有機抽出カラム間にpH調整や容量濃縮が存在せず、このことは方法時間を短縮する。第4に、開示の方法で有機溶剤の必要が全くなく、水性放射線廃物の生成もはるかに少ない。
上記方法によって得られる90Yの品質は、治療用途に好適である。両EHEHPAおよびCMPOカラムの除染要因は、約10の程度にあり、方法全体で約10除染要因を得ることができる。ICP分析により、低い金属イオン汚染が認められる。DOTA誘導生物学的分子の90Y放射線標識付けの放射化学純度は、市販の90Y活性(放射能)と同等である。
本発明の他の具体例は、201Tlを付与する発生器システムおよび方法を必然的に伴う。上述の如く、201Tlは201Pbの放射性壊変によって付与しうる。本発明者らは、DEHPA、EHEHPAおよびDTMPPAなどの酸性有機リン抽出剤が、約2.5より大またはこれに匹敵するpHで、201Pbに対しては強い親和力を有するが、201Tlに対してはそうでないことを発見した。すなわち、提供される本発明の具体例は、本明細書記載の如く、酸性有機リン抽出剤をカーボンまたはグラファイト基体に含浸して含有するクロマトグラフィーカラムを包含する。
約2.5より大またはこれに匹敵するpHを有する201Pbの溶液を装填すると、201Pbはカラム上に保持される。親同位体の壊変によって201Tlが発生するので、それは抽出剤から溶液に放出される。システムは、201Tlの所定部分を付するのに十分な時間にわたる壊変が可能となり、次いで約2.5より大またはこれに匹敵するpHの水溶液でリンスされる。適当なリンス液としては、就中、水、希塩酸もしくは硝酸、またはいずれかの生物学的適合性緩衝液が挙げられる。
好ましくは、pH約5.5の約0.9%NaCl溶液を用いる。この発生器システムの効率と、単にHOまたは0.9%NaClによって201Tlを溶離できるという事実は、前述の201Tl生成用の発生器システムにまさる利点を付与する。
次に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。実施例の全ては、実際の例である。実施例は、本発明の例示を目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
実施例1
17mCi90Sr/90Y発生器から90Yの分離:
2週間の90Y増成(build−up)後、17mCi90Srを含有する0.2M−Sr(NO(pH1.75)を、EHEHPAカラム(グラファイトフェルト、0.1g/g−wt.)に流速2.0mL/分で装填する。溶離した90Srイオンを、遮蔽容器に集める。吸着した90Yイオンを、30mLのHNO(pH1.75)で2.0mL/分にて洗う。
最初の3mL洗液を90Sr溶液に加え、残りの洗液を残余の90Srのリサイクルのため、別の廃物ビンに集める。15mLの8N−HNOを用い、EHEHPAカラムからCMPOカラム(グラファイトフェルト、0.25g/g−wt.)へ、吸着した90Yを0.5mL/分で溶離する。さらに15mLの8N−HNOを用いて、CMPOカラムをリンスする。15mLの0.001N−HNOを0.5mL/分で用いて、90Yを溶離し、15.77mCiを集める。8N−HNO装填液または洗液には、いずれの90Yも含有せず。
実施例2
85Srの分離:
2.22mCi85Srを含有する0.2M−Sr(NO(pH1.75)を、EHEHPAカラム(グラファイトフェルト、0.1g/g−wt.)に流速2.0mL/分で装填する。2.17mCi85Srを溶離し、遮蔽容器に集める。EHEHPAカラムを30mLのHNO(pH1.75)で2.0mL/分にて洗い、最初の3mL洗液をカウントし、これは0.047mCi85Srを含有し(〜2%);次の12mL洗液には0.0021mCi(〜0.1%)および次の15mL洗液には0.0002mCi(〜0.01%)を含有する。
EHEHPAカラムからCMPOカラム(グラファイトフェルト、0.25g/g−wt.)へ0.5mL/分の溶離に、15mLの8N−HNOを用いる。さらに15mLの8N−HNOを用いて、CMPOカラムをリンスする。最後に、15mLの0.01N−HNOを0.5mL/分で用いて、CMPOカラムを溶離する。CMPOカラム洗液には、検出できる85Sr活性(放射能)は全くなかった。
実施例3
90Yの分離:
1.31mCi90Yを含有する0.2M−Sr(NO(pH1.75)を、EHEHPAカラム(グラファイトフェルト、0.1g/g−wt.)に流速2.0mL/分で装填する。Sr(NO溶液を集め、これは90Yを全く有しない。EHEHPAに吸着した90Yを、30mLのHNO(pH1.75)で2.0mL/分にてリンスする。洗液は90Yを全く有しない。15mLの8N−HNOを用いて、吸着した90YをEHEHPAカラムからCMPOカラム(グラファイトフェルト、0.25g/g−wt.)へ0.5mL/分で溶離する。さらに15mLの8N−HNOを用いて、CMPOカラムをリンスする。装填液あるいは8N−HNO洗液のいずれにも、90Yを全く含有せず。15mLの0.5M酢酸ナトリウム(pH6)を0.5mL/分で用いて、集めた1.0mCiの90Yを溶離する。
実施例4
6.5Ci90Sr/90Y発生器から90Yの分離:
1週間の90Y増成後、6.5Ci90Srを含有する0.2M−Sr(NO(pH1.75)を、EHEHPAカラム(グラファイトフェルト、0.1g/g−wt.)に流速2.0mL/分で装填する。溶離した90Srを遮蔽容器に集める。吸着した90Yを、30mLのHNO(pH1.75)で2.0mL/分にて洗う。15mLの8N−HNOを用いて、吸着した90YをEHEHPAカラムからCMPOカラム(グラファイトフェルト、0.25g/g−wt.)へ0.5mL/分で溶離する。さらに15mLの8N−HNOを用いて、CMPOカラムをリンスする。15mLの0.01N−HNOを0.5mL/分で用いて、90Yを溶離し、4.9Ciを集める。生成物の90Sr/90Y比は〜10−8であった。
実施例5
Tl−201のDEHPAカラムによる抽出:
DEHPA(10パッド、直径0.325”、0.6g/グラファイトg)を、0.75”×2.75”ガラスカラムに詰め込んだ後、5mL硝酸(pH2.5)で状態調節し、5mLのエアーでブロードライする。10mLのpH2.5硝酸に、200μCiの201Tlを加える。201TlのpHを測定し、NaOHでpH2.5に調整する。10mLの装填後のカラムに保持される201Tlは全くなく、次いで10mL水洗液をぜん動ポンプで流速2mL/分にて吸込む。他のpH、たとえば3、4および5では、カラムに201Tlは全く保持されない。
実施例6
Pb−203のDEHAカラムによる抽出:
DEHPA(10パッド、直径0.325”、0.6g/グラファイトg)を、0.75”×2.75”ガラスカラムに詰め込んだ後、5mL硝酸(pH2.5)で状態調節し、5mLのエアーでブロードライする。10mLのpH2.5硝酸に、80μCiの203Pbを加え、203Pb溶液のpHを測定し、NaOHでpH2.5に調整する。10mLの装填後カラムに〜80μCiの203Pbが保持され、次いで10mL水洗液をぜん動ポンプで流速2mL/分にて吸込む。他のpH、たとえば3、4および5でも、同様な結果が見られる。pHが2より小さいと、カラムに80μCi以下の203Pbが吸着した。
実施例7
Tl−201発生器から娘Tl−201の溶離:
放射線照射203Tl標的溶液のアリコートを含有する20mLのpH2.5硝酸を、DEHPAカラム(10パッド、直径0.325”、0.6g/グラファイトg)に装填した後、カラムを20mLの水でリンスして、201Tl発生器を調整する。カラム調整において、流速を2mL/分に保持する。照射203Tl標的溶液は、20μLの201Pb溶液(〜2.38mCiのPb−201、Ge(Li)で測定)からなる。18時間後、40mLの水溶出液に221μCiの201Tlを集める。さらに24時間後、同じ発生器からの40mLの水溶出液中に、56μCiの201Tlを集める。
本発明で引用した刊行物、特許および特許資料の全てを、参考として本明細書に導入する。本発明については、種々の特別なかつ好ましい具体例および技法を参考にして説明した。しかしながら、本発明の精神および技術的範囲を逸脱せずに、多くの変更および改変を成しうることを理解すべきである。
本発明における、90Srから90Yを分離する方法を示す概要図である。

Claims (23)

  1. 水溶液中の金属元素のイオンを分離する方法であって、
    選択的pHで、第1金属元素のイオンに対する方が第2金属元素のイオン(ここで、第1金属元素と第2金属元素は異なる)に対するより親和力が大きい疎水性キレート化抽出剤を含浸したカーボンまたはグラファイト基体からなるイオン交換体を準備し;
    上記第1および第2金属元素のイオンを含有する溶液を準備し;次いで
    上記イオン交換体を溶液と上記選択的pHで十分な時間接触せしめ、第1金属元素のイオンの少なくとも一部が該イオン交換体に結合するようにする
    ことを特徴とする分離法。
  2. カーボンまたはグラファイト基体が、カーボンまたはグラファイトのフェルト形状にあるカーボンまたはグラファイト繊維である請求項1に記載の分離法。
  3. 疎水性キレート化抽出剤が、DEHPA、EHEHPAおよびDTMPPAからなる群から選ばれる酸性有機リン抽出剤である請求項1に記載の分離法。
  4. 第1金属元素が201Pbで、第2金属元素が201Tlであり、酸性有機リン抽出剤がDEHPAであり、水溶液のpHが2.5より大きいかまたはこれに等しい請求項3に記載の分離法。
  5. 第1金属元素が90Yで、第2金属元素が90Srであり、酸性有機リン抽出剤がEHEHPAであり、水溶液のpHが1.5〜2.5である請求項3に記載の分離法。
  6. イオン交換体から第1金属元素のイオンの少なくとも一部を、イオン交換体が第1金属元素のイオンに対する親和力を実質的に有さない第2pHを持つ第2溶液で溶離することにより、溶出液を調製する工程をさらに包含する請求項1に記載の分離法。
  7. 第1金属元素が90Yである請求項6に記載の分離法。
  8. 溶出液を第2イオン交換体と接触せしめる工程をさらに包含し、第2イオン交換体が、第2pHで第1金属元素のイオンに対し親和力を有する第2有機リン抽出剤を含有する請求項6に記載の分離法。
  9. 第2イオン交換体が、二官能性有機リン抽出剤、中性有機リン抽出剤またはこれらの混合物を含浸したカーボンまたはグラファイト基体からなる請求項8に記載の分離法。
  10. 第2有機リン抽出剤が、CMPOおよびTBPからなる群から選ばれる請求項9に記載の分離法。
  11. カーボンまたはグラファイト基体が、カーボンまたはグラファイトのフェルト形状のカーボンまたはグラファイト繊維である請求項10に記載の分離法。
  12. 溶出液を、カーボンまたはグラファイトフェルトにCMPOが吸着してなる第2イオン交換体と接触せしめる工程をさらに包含する請求項7に記載の分離法。
  13. 第2イオン交換体から第1金属元素のイオンの少なくとも一部を、第2イオン交換体が第1金属元素のイオンに対する親和力を実質的に有さない第3pHを持つ第3溶液で溶離することにより、第2溶出液を調製する工程をさらに包含する請求項8に記載の分離法。
  14. 第2イオン交換体から90Yを、希硝酸、希塩酸、酢酸アンモニウム緩衝液、0.9%NaClおよび水からなる群から選ばれる第3溶液で溶離することにより、第2溶出液を調製する工程をさらに包含する請求項12に記載の分離法。
  15. 第2溶出液中の90Sr/90Y比が、10−6以下である請求項14に記載の分離法。
  16. 金属元素を分離する分離カラムシステムであって、
    (a)入口と出口を有する本体部;
    (b)該本体部の中に収容され、選択的pHで、第1金属元素のイオンに対する方が第2金属元素のイオン(ここで、第1金属元素と第2金属元素は異なる)に対するより親和力が大きい疎水性キレート化抽出剤を含浸したカーボンまたはグラファイト基体からなるイオン交換体;
    (c)上記第1および第2金属元素のイオンを含有する上記選択的pHの溶液
    から成る分離カラムシステム。
  17. カーボンまたはグラファイト基体が、カーボンまたはグラファイトのフェルト形状にあるカーボンまたはグラファイト繊維である請求項16に記載の分離カラムシステム。
  18. 疎水性キレート化抽出剤が、DEHPA、EHEHPAおよびDTMPPAからなる群から選ばれる酸性有機リン抽出剤である請求項16に記載の分離カラムシステム。
  19. 第1金属イオンが201Pbで、第2金属イオンが201Tlであり、水溶液のpHが2.5より大きいかまたはこれに等しい請求項18に記載の分離カラムシステム。
  20. (a)入口と出口を有する本体部;および
    (b)該本体部の中に収容されるイオン交換体
    から成る201Tl発生器であって、
    上記イオン交換体は、DEHPA、EHEHPAおよびDTMPPAからなる群から選ばれる酸性有機リン抽出剤を含浸したカーボンまたはグラファイト繊維からなり、かつ該イオン交換体が上記抽出剤に結合した201Pbのイオンをさらに含有することを特徴とする201Tl発生器。
  21. さらに(c)本体部の中にありかつイオン交換体と接触する、2.5より大きいかまたはこれに等しいpHを有する水溶液を含有し、該水溶液は201Pbの放射性壊変によって生成した201Tlを含有する請求項20に記載の201Tl発生器。
  22. (a)第1カラムと(b)第2カラムから成る90Y発生器であって、
    第1カラム(a)は、
    (1)入口と出口を有する第1本体部;
    (2)該第1本体部の中に収容され、カーボンまたはグラファイト基体に酸性有機リン抽出剤が吸着してなる第1イオン交換体;
    (3)該第1本体部の中にありかつ第1イオン交換体と接触し、90Srイオンを含有しかつ1.5〜2.5のpHを有する供給溶液
    からなり;
    第2カラム(b)は、
    (1)入口と出口を有する第2本体部(ここで、第2カラムの入口は第1カラムの出口と流通している);
    (2)該第2本体部の中に収容され、中性または二官能性有機リン抽出剤を含有する第2イオン交換体
    からなることを特徴とする90Y発生器。
  23. 第1イオン交換体が、カーボンまたはグラファイト繊維にEHEHPAが吸着してなり、第2イオン交換体が、カーボンまたはグラファイトフェルトにCMPOが吸着してなる請求項22に記載の90Y発生器。
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