JP4162105B2 - 船外機 - Google Patents

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  • Control Of Throttle Valves Provided In The Intake System Or In The Exhaust System (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、下部から吸い込んだ冷却水でエンジンが冷却されているとともに、このエンジンの燃焼室に吸気通路を通って空気が供給され、この吸気通路の空気にインジェクターが燃料を噴射している船外機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のエンジンの吸気通路は、燃焼室の吸気口とサージタンクとの間に配設され、このサージタンクの空気の流入部にスロットルボディーが設けられている。そして、スロットルボディーでサージタンクに流入する空気の量を調整し、この空気を、サージタンクから吸気通路を介して燃焼室に供給している。また、吸気通路の空気に燃料を噴射するインジェクターは、燃焼室の吸気口付近に設けられている。そして、船外機の下部から吸い込んだ冷却水で、エンジンが冷却されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、船外機の下部から吸い込まれた冷却水は、エンジンの下部から上下に蛇行しながら流れており、エンジンの下部の温度が上部の温度よりも低くなっている。したがって、インジェクターから噴射された燃料は、上側の吸気通路の方が、下側の吸気通路よりも蒸発し易く、空気により良く拡散し混合されて燃焼効率が向上する。その結果、上側のシリンダの方が、下側のシリンダよりも出力が増大する傾向があり、エンジン出力が、シリンダにより比較的大きく異なることがある。
【0004】
本発明は、以上のような課題を解決するためのもので、上側のシリンダの燃焼効率と下側のシリンダの燃焼効率との差が少ない船外機を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の船外機は、下部から吸い込んだ冷却水でエンジン(9)が冷却されているとともに、このエンジンをカウリング(1,2)が覆っている。そして、エンジンのクランクシャフト(10)は上下方向に配置され、このクランクシャフトの後方にシリンダ(11)が上下方向に複数配置され、このシリンダの燃焼室(11a)側がシリンダヘッド(22)で覆われている。このシリンダヘッドには、シリンダの燃焼室に開口している吸気口(33)が燃焼室毎に形成されており、カウリング内の前部にはサイレンサー(51)が設けられ、このサイレンサーとシリンダヘッドの吸気口との間には、燃焼室毎に吸気通路(53)が設けられている。この吸気通路の中間部には、燃料を噴射するインジェクター(56)が取り付けられている。このインジェクターよりも下流側において、下側の吸気通路の傾斜が、上側の吸気通路の傾斜よりも大きくなっており、下側の吸気通路におけるインジェクターと吸気口との距離が、上側の吸気通路におけるインジェクターと吸気口との距離よりも長くなっている。
【0006】
また、吸気通路の中間部に、スロットルボディー(41)が設けられ、このスロットルボディーにインジェクターが取り付けられている場合がある。
【0007】
さらに、吸気口が、各燃焼室毎に上下一対形成されている場合がある。
【0008】
そして、クランクシャフトの後方に、シリンダが左右に略V字状に振り分けて配置されているとともに上下方向に複数配置され、かつ、吸気通路の中間部には、スロットルボディーが設けられ、このスロットルボディーに、燃料を噴射するインジェクターが取り付けられており、スロットルボディーのスロットル弁(42)の弁軸は、上下方向に配置されているとともに、最上段のスロットル弁の弁軸は、エンジンケースよりも上方に突出し、左右のスロットル弁の弁軸の上端が、エンジンケースよりも上方に配置されている連動機構(66,67)により連結されて連動している場合がある。
【0009】
なお、この明細書においては、クランクシャフトに対してシリンダ配置側を、「後側」としている。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明における船外機の実施の第1の形態を図1ないし図7を用いて説明する。図1は本発明における船外機を横から見た断面図である。図2は図1の要部拡大図である。図3は実施の第1の形態の船外機の上部の平断面図である。図4は実施の第1の形態の船外機の内部の平面図である。図5は冷却水の流れの概略図である。図6は吸気通路の要部拡大図である。図7はスロットル弁の駆動機構の平面図で、(a)が実施の第1の形態の図、(b)が変形例の図である。なお、図1および図2において、エンジンは一部切欠き側面図で図示されている。また、図3および図4において、ベーパーセパーレータータンクは破線で図示されている。図4において、スロットル弁の駆動機構は図示が省略されている。
【0011】
船外機は、上側から順番にアッパーカウリング1、ロワーカウリング2、アッパーケーシング3およびロワーケーシング4からなるハウジングで覆われている。ロワーケーシング4には、冷却水取入口5が形成されている。そして、船外機を小型船舶に装着するための取り付けブラケット6は、小型船舶のトランサム7などに取り付けられて固定されている。この取り付けブラケット6の後部に、ピボット軸8などを介して船外機本体が回動自在に取り付けられている。
【0012】
アッパーカウリング1およびロワーカウリング2からなるカウリング1,2の内部には、内燃機関である燃料噴射式のV型6気筒の4サイクルエンジン9が配置されている。この4サイクルエンジン9のクランクシャフト10はその軸が略垂直すなわち上下方向に設けられており、クランクシャフト10の後方には、左右一対のシリンダ11が左右方向にV字状になるように振り分けて配置されている。この左右一対のシリンダ11が上下方向に3段設けられて、シリンダ11は計6気筒配置されている。また、クランクシャフト10には、6個のピストン13が各々コンロッド14を介して連結されており、このピストン13が各シリンダ11の内部に摺動可能に配置されている。また、エンジン9のケース17は、前述の6個のシリンダ11を形成するシリンダブロック20と、シリンダブロック20のクランクシャフト10側を覆うクランクケース21と、シリンダブロック20の燃焼室11a側を覆って閉塞する左右一対のシリンダヘッド22とからなっている。
【0013】
そして、クランクシャフト10の下端は、エンジンケース17から突出して延在しており、アッパーケーシング3内に配置されているドライブシャフト26に連結されている。このドライブシャフト26の回転は、傘歯車などを介して、ロワーケーシング4の後端部に回転自在に設けられているプロペラ28に伝達されている。ドライブシャフト26の中間部には冷却水ポンプ29が設けられ、ドライブシャフト26の回転により駆動されている。
【0014】
また、シリンダヘッド22には、シリンダ11に空気を供給する吸気路31および、シリンダ11の燃焼ガスを排気する排気路32とがシリンダ11毎に形成されている。各吸気路31の先端の吸気口33は、上下一対設けられ、燃焼室11aに開口している。同様に、各排気路32の先端の排気口34は、上下一対設けられ、燃焼室11aに開口している。そして、燃焼室11aの吸気口33を吸気弁35が、また、燃焼室11aの排気口34を排気弁36が開閉している。また、各吸気路31は、吸気口33側すなわち下流側が、二股に分岐して各々吸気口33に連通しており、一方、上流側は合流して一本となっている。シリンダヘッド22の排気路32は、上下方向に延在している集合排気通路38に連通し、上下の排気路32を流れる燃焼ガスがこの集合排気通路38に流れ込み合流している。この集合排気通路38は、左右一対設けられ、シリンダヘッド22の後部に配置されている。
【0015】
そして、シリンダヘッド22の各吸気路31の上流側の端部には、インテークマニホールド37を介して、スロットルボディー41が接続されている。このスロットルボディー41には、スロットル弁42が弁軸を上下方向にして設けられ、流れる空気の量を調整している。スロットルボディー41には、樹脂製の吸気管46の後端部が接続されている。この吸気管46はスロットルボディー41から前方に延在し、前端部は、カウリング1,2内の前部に配置されている樹脂製のサイレンサー51に接続されている。吸気管46は左右に各々3本ずつ上下方向に設けられている。この樹脂製の吸気管46とサイレンサー51とは、溶着、嵌合や接着剤などで接続された後に、エンジン本体に組み付けられている。
【0016】
この様にして、シリンダヘッド22の吸気路31、インテークマニホールド37、スロットルボディー41および吸気管46で、サイレンサー51から燃焼室11aの吸気口33までの吸気通路53は構成されている。この吸気通路53は、平面図において(すなわち、クランクシャフト10の先端側から見て)、燃焼室11aの吸気口33から一旦外側へ延在して張出通路部53aが形成され、ついで、サイレンサー51に向かって延在して前端がサイレンサー51に接続される接続通路部53bとからなっている。そして、張出通路部53aはシリンダヘッド22の吸気路31およびインテークマニホールド37で構成されている。接続通路部53bはスロットルボディー41および吸気管46で構成されている。
【0017】
そして、吸気通路53は、側面図において、張出通路部53aが燃焼室11aの吸気口33から前上がりに傾斜し、スロットルボディー41では略水平に、吸気管46は、スロットルボディー41から前上がりに傾斜している。この張出通路部53aおよび吸気管46における傾斜は、上側の吸気通路53の方が、下側の吸気通路53よりも緩くなっている。
【0018】
また、スロットルボディー41には、電子制御されているインジェクター56が各吸気通路53毎に設けられている。インジェクター56は、噴射口が吸気通路53と連通しているとともに、エンジンケース17と吸気通路53との間に配置されている。そして、このインジェクター56から、ガソリンなどの燃料が吸気通路53内の空気に供給されている。ところで、前述の様に、インジェクター56よりも下流側において、吸気通路53は後下がりに傾斜し、その傾斜は、下側の吸気通路53の方が、上側の吸気通路53よりも大きい。したがって、インジェクター56と吸気口33との間の距離すなわち流路の長さは、下側の吸気通路53の方が、上側の吸気通路53よりも長くなっている。また、インジェクター56の軸心同士の上下の間隔は、燃焼室11a毎の吸気口33の中心同士の上下の間隔よりも小さくなっている。
【0019】
そして、アイドル時に回転変動を小さくするために空気の流量を調整する吸気系部品であるISC(アイドルスピードコントロール)57が、エンジンケース17の上側に取り付けられ、ISC57からの空気供給流路58が、各スロットルボディー41に接続されている。そして、アイドル時には、ISC57から空気がスロットルボディー41内に供給されている。なお、符号61はスターターモーター、符号62はベーパーセパーレータータンク、また、符号63は点火プラグである。
【0020】
スロットルボディー41は、エンジンケース17の左右に各々3個ずつ上下に配置されており、上下のスロットルボディー41のスロットル弁42の弁軸は、互いに連結されて連動している。そして、最上段のスロットル弁42の弁軸の上端部は、エンジンケース17よりも上方に突出しているとともに、レバー65が固定されており、このレバー65がリンク66などを介して、回動板67に連結されている。この回動板67は、エンジンケース17の上側に回動自在に取り付けられている。そして、図示しないスロットルレバーが操作されると、図5(a)に図示するように、駆動機構であるスロットルケーブル101、カムレバー102、L型摺動レバー103、およびロッド104などを介して、回動板67が回動される。この回動板67の回動が、左右のリンク66を介して、左右のスロットル弁42の弁軸に固定されているレバー65に伝達されて、スロットル弁42の弁軸が回動する。この様にして、スロットル弁42の弁軸が回動すると、スロットルボディー41に流れる空気の量が調整される。
また、駆動機構の変形例が、図5(b)に図示されている。この変形例においては、スロットルレバーが操作されると、スロットルケーブル101、カムレバー102、摺動レバー106、および一対のワイヤ107などを介して、回動板67が回動される。
【0021】
クランクシャフト10の上端部には、カムシャフト用駆動プーリー71が、また、排気弁36を駆動するカムシャフト72の上端部には、被駆動プーリー73が設けられている。このカムシャフト用駆動プーリー71および被駆動プーリー73には、ベルト76が掛け渡されている。また、テンショナー78が設けられ、ベルト76にテンションを付加している。そして、スロットル弁42の弁軸を駆動するスロットル用連動部材の一部を構成する前述のリンク66は、エンジンケース17とベルト76との間の空間に配置されている。
【0022】
この様に構成されている船外機において、クランクシャフト10が回転すると、カウリング1,2内の空気がサイレンサー51内に吸い込まれ、この吸い込まれた空気が吸気管46、スロットルボディー41、インテークマニホールド37およびシリンダヘッド22の吸気路31を通り、シリンダ11の燃焼室11a内に流入している。そして、スロットルボディー41において、インジェクター56から噴射されたガソリンなどの燃料が、スロットルボディー41、インテークマニホールド37や吸気路31を流れる空気に混合されている。また、燃焼室11a内に流入した燃料混合気体は、点火プラグ63で点火されて燃焼しており、この際に生じる排気ガスはシリンダヘッド22の排気路32、集合排気通路38やケーシング3,4などを通って、プロペラ28のボスなどから排出されている。そして、燃料混合気体が燃焼した際の膨張力により、ピストン13が往復動し、このピストン13の往復動によりコンロッド14を介してクランクシャフト10が回転する。
【0023】
また、クランクシャフト10の回転により、冷却水ポンプ29が稼働し、図5に図示する様に、ロワーケーシング4の冷却水取入口5から船外機外の水すなわち冷却水を吸い込んでいる。この吸い込まれた冷却水は、上がり流路81を通ってエンジン9に向かって上昇する。この上がり流路81の途中には、プレッシャーコントロールバルブ83が連通して設けられている。このプレッシャーコントロールバルブ83は、冷却水の圧力が設定圧力以上になると、上がり流路81の冷却水を排出し、上がり流路81の圧力を設定圧力にしている。そして、エンジン9に流入した冷却水は、シリンダヘッド22における各燃焼室11a毎の排気路32の周囲の排気路用冷却水路86、ついで、集合排気通路38の周囲の集合排気通路用冷却水路87、シリンダヘッド22の燃焼室11aの周囲の燃焼室用冷却水路88、シリンダブロック20の内部のVバンクジャケット89、シリンダブロック20のシリンダ11の周囲のシリンダ用冷却水路91を流れて、サーモスタット93に達している。このサーモスタット93は、冷却水の温度が設定温度以上になると、冷却水の流れを許容しており、設定温度未満の際には、冷却水の流れを略遮断している(微量は流れている)。このサーモスタット93により、エンジン9が冷却水により冷却され過ぎることを防止している。そして、サーモスタット93から流れだした比較的高温(たとえば、60℃以上)の冷却水は、冷却後水路96を通って船外機の外に排出されている。この様にして、船外機の外から吸い込まれた比較的温度の低い冷却水は、エンジン9の下部から流入し、上下に蛇行してから、船外機の外に排水されている。そのため、エンジン9は上部の温度よりも下部の温度の方が、低くなっている。
【0024】
前述のように、実施の第1の形態においては、インジェクター56の噴射口から燃焼室11aの吸気口33までの距離すなわち流路の長さが、一番上の吸気通路53が一番短く、順次下側に行くほど長くなっている。したがって、インジェクター56から噴射された燃料の吸気口33までの到達時間は、上側の吸気通路53の方が下側の吸気通路53よりも短くなっている。また、エンジン9は、冷却水が下側から流入して上下に蛇行しており、エンジン9の上部の温度の方が、エンジン9の下部の温度よりも高くなっており、上側の吸気通路53の方が、燃料が蒸発しやすい。したがって、インジェクター56から噴射された燃料が空気中に拡散する単位時間当たりの割合は、上側の吸気通路53の方が、下側の吸気通路53よりも大きくなっている。しかしながら、前述の様に、吸気口33までの到達時間は、上側の吸気通路53の方が下側の吸気通路53よりも短くなっており、吸気口33に達した時点での燃料の拡散の割合は、上側の吸気通路53と下側の吸気通路53とで大きな差が生じることが減少する。その結果、上側のシリンダ11における出力と、下側のシリンダ11における出力とに大きな差を生じることを防止でき、エンジン9が安定して稼働することができる。
【0025】
しかも、燃焼室11aの吸気口33が上下一対設けられ、かつ、上側の吸気通路53の方が下側の吸気通路53よりも傾斜が小さい。したがって、図6に図示する様に、各燃焼室11aにおける上側の吸気口33aと下側の吸気口33bとの風量の差は、上側の吸気通路53の方が小さくなっている。そのため、燃焼室11a内における上側の吸気口33aから下側の吸気口33bに向かう渦状の流れ(いわゆるスワール)は、上側の吸気通路53の方が小さくなっている。このスワールは大きいほど、シリンダ11の燃焼室11a内における燃料の燃焼効率が高くなるので、スワールのみを考慮すると、下側のシリンダ11の方が上側のシリンダ11よりも燃焼効率が高くなる。このスワールの差により、エンジン9の上部と下部との温度差によるシリンダ11間の燃焼効率の差を極力補償することができる。
【0026】
また、スロットルボディー41よりも下流側において、吸気通路53は後下がりに傾斜し、その傾斜は、下側の吸気通路53の方が、上側の吸気通路53よりも大きい。したがって、吸気口33の配置に合わせて、上側の吸気通路53と下側の吸気通路53とを略平行に配置した場合と比して、スロットルボディー41の上下の間隔を小さくすることができる。その結果、最下段のスロットルボディー41から最上段のスロットルボディー41までのスロットルボディーアセンブリー全体は、その高さを小さくすることができ、コンパクトとなる。
【0027】
さらに、吸気管46は後下がりに傾斜しているとともに、下側の吸気管46の傾斜が、上側の吸気管46の傾斜よりも大きいので、吸気管46の前部の下側に、比較的大きな空間を形成することができる。したがって、吸気管46の前部の下方に、ベーパーセパーレータータンク62などの部品などを配置することができる。その結果、吸気管46の下方のスペースを有効利用することができる。
【0028】
そして、スロットルボディー41が吸気通路53の中間部に設けられており、スロットルボディー41の前側すなわち上流側には、樹脂製の吸気管46およびサイレンサー51が取り付けられている。この様に、流れる空気の量を調整するスロットルボディー41が、吸気管46やサイレンサー51の下流側に配置されているので、吸気管46とサイレンサー51との接続部分などから外気が、吸気管46やサイレンサー51内に流入しても、スロットルボディー41よりも下流側における空気の流量は、殆ど変動しない。したがって、吸気管46やサイレンサー51などの取付精度を低くすることができ、取付作業や加工作業が容易となる。
【0029】
また、吸気管46とサイレンサー51とを組み立てた後に、組み立てられた吸気管46およびサイレンサー51をエンジン本体に取り付けている。したがって、吸気管46とサイレンサー51とがユニット化され、エンジン9の組み付け作業が容易となる。
【0030】
さらに、インジェクター56はスロットルボディー41に取り付けられているので、スロットルボディー41とインジェクター56とをユニット化することができる。したがって、インジェクター56およびスロットルボディー41をユニット化した状態で取り付けることができ、エンジン9の組み立て作業に要する時間を短縮することができる。その結果、エンジン組み立てラインにおける工数を減少させることができる。
【0031】
そして、ISC57がエンジンケース17の上側に配置され、このISC57から空気供給流路58を介して左右の各スロットルボディー41に空気が供給されている。したがって、一個のISC57で、アイドル時に、多数のスロットルボディー41に空気を供給することができる。
【0032】
また、スロットルボディー41のスロットル弁42の弁軸を上下方向に配置するとともに、左右の最上段のスロットルボディー41の弁軸が、エンジンケース17上方の連動機構(回動板67やリンク66など)を介して連動している。したがって、連動機構がエンジン9の横側から外側へ張り出すことが少なく、カウリング1,2の横幅をコンパクトとすることができる。
【0033】
次に、本発明における船外機の実施の第2の形態について説明する。図8は実施の第2の形態の船外機の上部の平断面図である。なお、この実施の第2の形態の説明において、前記実施の第1の形態の構成要素に対応する構成要素には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0034】
図8は、実施の第1の形態の図3に対応する図であり、インジェクター56が、スロットルボディー41ではなく、吸気管46に取り付けられている。また、インジェクター56の噴射口が、実施の第1の形態では、スロットル弁42よりも下流側で吸気通路53と連通しているが、この実施の第2の形態では、スロットル弁42よりも上流側で連通しており、インジェクター56は、スロットルボディー41の内面とスロットル弁42との間の隙間に向かって燃料を噴射している。このスロットルボディー41の内面とスロットル弁42との間の隙間では、空気の流れが早いので、インジェクター56から噴射された燃料は効率よく飛散することができる。また、インジェクター56の噴射方向は上方に向いておらず、インジェクター56の噴射口付近に燃料などが溜まることはない。
【0035】
また、ISC57は、各スロットルボディー41に設けられている。
さらに、インジェクター56は吸気管46に取り付けられているので、インジェクター56と吸気管46とをユニット化することができる。したがって、インジェクター56および吸気管46をユニット化した状態で取り付けることができ、エンジン9の組み立て作業に要する時間を短縮することができる。
なお、インジェクター56の噴射口から吸気口33までの到達時間に関する点や、スワールに関する点など他の点は、実施の第1の形態と略同じである。
【0036】
次に、本発明における船外機の実施の第3の形態について説明する。図9は実施の第3の形態の船外機の上部の平断面図である。なお、この実施の第3の形態の説明において、前記実施の第1の形態の構成要素に対応する構成要素には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、図9において、ベーパーセパーレータータンクは破線で図示されている。
【0037】
図9は、実施の第1の形態の図3に対応する図であり、実施の第3の形態においては、インテークマニホールド37の部分はシリンダヘッド22に一体に形成されている。また、吸気通路53は、平面図において(すなわち、クランクシャフト10の先端側から見て)、燃焼室11aの吸気口33から一旦外側へ延在して張出通路部53aが形成され、ついで、湾曲しながら内側に延びて引込通路部53cが形成されており、この引込通路部53cからサイレンサー51に向かって延在するサイド通路部53dとからなっている。そして、張出通路部53aはシリンダヘッド22の吸気路31で構成されている。引込通路部53cはスロットルボディー41で構成されているとともに、シリンダ11の壁49に略沿って、後に行くほど外側となる様に傾斜して配置されている。サイド通路部53dは吸気管46で構成されているとともに、クランク室47の外壁48に略沿って(すなわち、略前後方向に)配置されている。
【0038】
そして、インジェクター56は、スロットルボディー41に取り付けられているとともに、その軸線が前後方向(すなわちクランク室47の外壁48に沿って略平行)に配置されており、インジェクター56が外側に張り出していない。したがって、カウリング1,2の横幅を小さくすることができる。
【0039】
また、インジェクター56は吸気通路53よりも外側に配設されており、交換などのメンテナンスを容易に行うことができる。
なお、インジェクター56の噴射口から吸気口33までの到達時間に関する点や、スワールに関する点など他の点は、実施の第1の形態と略同じである。
【0040】
次に、本発明における船外機の実施の第4の形態について説明する。図10は実施の第4の形態の船外機の上部の平断面図である。なお、この実施の第4の形態の説明において、前記実施の第3の形態の構成要素に対応する構成要素には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、図10において、ベーパーセパーレータータンクは破線で図示されている。
【0041】
図10は、実施の第3の形態の図9に対応する図であり、実施の第4の形態においては、インジェクター56が、スロットルボディー41ではなく、吸気管46に取り付けられている。また、インジェクター56の噴射口が、実施の第3の形態では、スロットル弁42よりも下流側で吸気通路53と連通しているが、この実施の第4の形態では、スロットル弁42よりも上流側で連通しており、インジェクター56は、スロットルボディー41の内面とスロットル弁42との間の隙間に向かって燃料を噴射している。このスロットルボディー41の内面とスロットル弁42との間の隙間では、空気の流れが早いので、インジェクター56から噴射された燃料は効率よく飛散することができる。また、インジェクター56の噴射方向は上方に向いておらず、インジェクター56の噴射口付近に燃料などが溜まることはない。
なお、インジェクター56の噴射口から吸気口33までの到達時間に関する点や、スワールに関する点など他の点は、実施の第1の形態と略同じである。
【0042】
次に、本発明における船外機の実施の第5の形態について説明する。図11は実施の第5の形態の冷却水の流れの概略図である。なお、この実施の第5の形態の説明において、前記実施の第1の形態の構成要素に対応する構成要素には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0043】
図11は、実施の第1の形態の図5に対応する図であり、実施の第5の形態においては、Vバンクジャケット89が隔壁121で左右に仕切られており、左右一対の流路89a,89bが形成されている。したがって、左右のサーモスタット93で、シリンダ11の温度管理を左右独立に行うことができる。なお、左右一対の流路89a,89bは、上部および下部で相互に連通している。また、このVバンクジャケット89には、パイロット水路122が接続されており、冷却水が正常に供給されている時には、このパイロット水路122の端部から微量の水が流れ出している。この様に、パイロット水路122の端部から水が流れ出している事により、冷却水が正常に供給されていることが分かるようになっている。たとえば、冷却水ポンプ29が故障したり、上がり流路81などの流路が詰まると、パイロット水路122からの流出は止まり、冷却水の供給が異常であることが分かる。
【0044】
さらに、エンジン9の停止時に、冷却水路86,87,88,89,91から水抜きができるように、エア抜き通路123a,123bおよび水抜き通路124a,124b,124cが形成されている。このエア抜き通路123a,123bおよび水抜き通路124a,124b,124cは、冷却水路86,87,88,89,91よりも横断面が小さく形成されている。そして、第1のエア抜き通路123aは燃焼室用冷却水路88の上部とシリンダ用冷却水路91の上部とを連通し、第2のエア抜き通路123bは燃焼室用冷却水路88の上部と集合排気通路用冷却水路87の上部とを連通している。第1の水抜き通路124aは燃焼室用冷却水路88の下部とシリンダ用冷却水路91の下部とを連通し、第2の水抜き通路124bはシリンダ用冷却水路91の下部と冷却後水路96とを連通し、第3の水抜き通路124cはVバンクジャケット89の下部と上がり流路81とを連通している。また、上がり流路81にはエキゾーストパイプ冷却水路126が接続され、このエキゾーストパイプ冷却水路126の冷却水がエキゾーストパイプ127を冷却している。このエキゾーストパイプ127は、オイルパン128の中央部に形成されている上下方向の空間に設けられている。なお、実施の第5の形態は、冷却水路以外に関しては、実施の第1の形態と略同じである。
【0045】
以上、本発明の実施の形態を詳述したが、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例を下記に例示する。
(1)前記実施の形態においては、エンジンはV型6気筒4サイクルエンジンであるが、その形式や気筒数などは適宜変更可能である。たとえば、L型エンジンであることも可能である。
【0046】
(2)左右方向の配置の関係は、反転させることも可能である。
(3)サイレンサー51および吸気管46の材質は、必ずしも樹脂である必要はなく、アルミダイカストなどで形成することも可能である。
(4)駆動機構が、右または左の一方のスロットル弁42の弁軸に直接連結されており、スロットルケーブル101からの駆動力が、右または左のスロットル弁42の弁軸に伝達され、ついで、連動機構66,67を介して、他方のスロットル弁42の弁軸に伝達されていることも可能である。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、エンジンが、船外機の下部から吸い込んだ冷却水で冷却されており、エンジンの下部の温度が、エンジンの上部の温度よりも低くなっている。したがって、インジェクターから噴射された燃料は、下側の吸気通路の方が上側の吸気通路よりも拡散の効率が低くなっている。しかしながら、インジェクターよりも下流側において、下側の吸気通路におけるインジェクターと吸気口との距離が、上側の吸気通路におけるインジェクターと吸気口との距離よりも長くなっており、インジェクターから噴射されてから吸気口に達するまでの到達時間が、下側の吸気通路の方が長くなっている。したがって、燃料が拡散している時間が長くなり、拡散量を増大させることができる。その結果、エンジンの上部と下部との温度の差による拡散量の差を、極力小さくすることができる。そして、シリンダ間の燃焼効率の差を極力小さくすることができる。
【0048】
また、吸気通路の中間部に、スロットルボディーが設けられ、このスロットルボディーにインジェクターが取り付けられている場合には、インジェクターとスロットルボディーとをユニット化することができ、エンジンの組み立てが容易となる。
【0049】
さらに、吸気口が、各燃焼室毎に上下一対形成されている場合がある。そして、インジェクターよりも下流側において、下側の吸気通路の傾斜が、上側の吸気通路の傾斜よりも大きくなっており、下側の吸気通路に通じる燃焼室のスワールが、上側の吸気通路に通じる燃焼室のスワールよりも大きくなり、燃焼効率を向上させることができる。このスワールの差により、エンジンの上部と下部との温度差によるシリンダ間の燃焼効率の差を極力補償することができる。
【0050】
そして、船外機にV型エンジンを採用した際に、左右のスロットル弁の弁軸の上端が、エンジンケースよりも上方に配置されている連動機構により連結されて連動している場合には、左右のスロットル弁の弁軸を連動させるための連動機構が、横側に張り出すことが少なく、船外機のカウリングの横幅を極力小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明における船外機を横から見た断面図である。
【図2】図2は図1の要部拡大図である。
【図3】図3は実施の第1の形態の船外機の上部の平断面図である。
【図4】図4は実施の第1の形態の船外機の内部の平面図である。
【図5】図5は冷却水の流れの概略図である。
【図6】図6は吸気通路の要部拡大図である。
【図7】図7はスロットル弁の駆動機構の平面図で、(a)が実施の第1の形態の図、(b)が変形例の図である。
【図8】図8は実施の第2の形態の船外機の上部の平断面図である。
【図9】図9は実施の第3の形態の船外機の上部の平断面図である。
【図10】図10は実施の第4の形態の船外機の上部の平断面図である。
【図11】図11は実施の第5の形態の冷却水の流れの概略図である。
【符号の説明】
1 アッパーカウリング
2 ロワーカウリング
9 エンジン
10 クランクシャフト
11 シリンダ
11a 燃焼室
22 シリンダヘッド
33 吸気口
41 スロットルボディー
42 スロットル弁
51 サイレンサー
53 吸気通路
56 インジェクター
66 リンク(連動機構)
67 回動板(連動機構)

Claims (4)

  1. 下部から吸い込んだ冷却水でエンジンが冷却されているとともに、このエンジンをカウリングが覆っている船外機において、
    エンジンのクランクシャフトは上下方向に配置され、
    このクランクシャフトの後方にシリンダが上下方向に複数配置され、
    このシリンダの燃焼室側がシリンダヘッドで覆われており、
    このシリンダヘッドには、シリンダの燃焼室に開口している吸気口が燃焼室毎に形成されており、
    カウリング内の前部には、サイレンサーが設けられ、
    このサイレンサーとシリンダヘッドの吸気口との間には、燃焼室毎に吸気通路が設けられており、
    この吸気通路の中間部には、燃料を噴射するインジェクターが取り付けられており、
    このインジェクターよりも下流側において、下側の吸気通路の傾斜が、上側の吸気通路の傾斜よりも大きくなっており、
    下側の吸気通路におけるインジェクターと吸気口との距離が、上側の吸気通路におけるインジェクターと吸気口との距離よりも長いことを特徴とする船外機。
  2. 前記吸気通路の中間部に、スロットルボディーが設けられ、このスロットルボディーにインジェクターが取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の船外機。
  3. 前記吸気口が、各燃焼室毎に上下一対形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の船外機。
  4. 下部から吸い込んだ冷却水でエンジンが冷却されているとともに、このエンジンをカウリングが覆っている船外機において、
    エンジンのクランクシャフトは上下方向に配置され、
    このクランクシャフトの後方に、シリンダが左右に略V字状に振り分けて配置されているとともに、上下方向に複数配置され、
    このシリンダの燃焼室側がシリンダヘッドで覆われており、
    このシリンダヘッドには、シリンダの燃焼室に開口している吸気口が燃焼室毎に形成されており、
    カウリング内の前部には、サイレンサーが設けられ、
    このサイレンサーとシリンダヘッドの吸気口との間には、燃焼室毎に吸気通路が設けられており、
    この吸気通路の中間部には、スロットルボディーが設けられ、
    このスロットルボディーに、燃料を噴射するインジェクターが取り付けられており、
    スロットルボディーのスロットル弁の弁軸は、上下方向に配置されているとともに、最上段のスロットル弁の弁軸は、エンジンケースよりも上方に突出し、
    左右のスロットル弁の弁軸の上端が、エンジンケースよりも上方に配置されている連動機構により連結されて連動しており、
    スロットルボディーよりも下流側において、下側の吸気通路の傾斜が、上側の吸気通路の傾斜よりも大きくなっており、
    下側の吸気通路におけるインジェクターと吸気口との距離が、上側の吸気通路におけるインジェクターと吸気口との距離よりも長いことを特徴とする船外機。
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