JP4161692B2 - インバータ検査装置及びインバータ検査方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インバータの検査装置、制御装置及びインバータの検査方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば電気自動車(ハイブリッド車を含む)を駆動するモータとして交流モータを使用する場合、その電気自動車に搭載されたバッテリから供給される直流電力を交流電力に変換した上でモータに供給する必要がある。直流電力を交流電力に変換するために、インバータ(直流電力を交流電力に変換する電力変換手段)が使用されている。そして、このインバータを検査するためのインバータ検査装置が従来から用いられている。
【0003】
(第1従来技術) 図16は、従来のインバータ検査装置210と、これに接続された検査対象であるインバータ228の構成図を示す。
インバータ検査装置210は、大型の直流電源装置(直流電力供給手段)214と、計測器232と、LR負荷部236と、統合制御用コンピュータ(以下では「制御コンピュータ」という)224を備えている。直流電源装置214と、計測器232と、LR負荷部236は、インバータ228に接続されている。直流電源装置214と、計測器232は、制御コンピュータ224に接続されている。直流電源装置214は、商用交流電源238にも接続されている。LR負荷部236は、電気自動車を駆動する交流モータと等価的な役割を果たす。
制御コンピュータ224は、直流電源装置214とインバータ228をオンさせる。すると、直流電源装置214からインバータ228に直流電力が供給される。計測器232は、インバータ228に直流電力が供給されたことでインバータ228に現れる検査用データ(3相交流電流等)を計測する。この検査用データは計測器232から制御コンピュータ224に送られる。制御コンピュータ224は、この検査用データに基づいてインバータ228が正常か異常かを判別する。
【0004】
この検査装置による検査は、インバータ228から交流電力を負荷部236に供給した状態で行われる。この検査を行うためには、インバータ228に相当程度の大きな電力をある程度の期間供給する必要がある。このような相当程度の大きな電力をインバータ228に供給するためには、大型でコストの高い直流電源装置214を用いなければならないという問題があった。
【0005】
(第2従来技術) ところで、特許文献1には、インバータ検査装置の中でも、インバータの構成部品(ダイオード等)の電気的特性を検査するための検査装置が示されている。具体的には、直流電源装置から供給される直流電力によって電解コンデンサを充電し、その電解コンデンサに充電された電荷を放電してインバータの構成部品であるダイオードに通電し、通電中のダイオードの両端電圧とそのダイオードに流れる電流から、そのダイオードが正常か異常かを判別するという構成が示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−128399号公報(第5頁、第9図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
第2従来技術の検査装置は、ダイオード等のインバータの構成部品の電気的特性を検査するものである。このような検査は、ダイオード等の構成部品に、微小な電流(例えば数μA〜数A程度)を微小な時間(例えばパルス幅が数m秒〜数μ秒程度のパルス波で)通電すれば行える。よって、電解コンデンサのような蓄電できる電気量(電力量)が小さいものを使用しても充分に対処できると考えられる。
【0008】
これに対し、第1従来技術の検査装置による検査は、相当程度大きな電流(例えば数十A以上)をある程度の期間(例えば数秒以上)インバータ228に通電して、実際に負荷部236に交流電力を供給した状態で行われる。この検査によると、より実際の使用状態に則した検査を行えるため、インバータ228の構成部品のみの検査では検出できないようなインバータ228の異常も検出できる。また、インバータ228の構成部品のみの検査では検査できない部位の検査や、インバータ全体のシステムとしての検査も行うことができる。
【0009】
しかしながら、第1従来技術のような負荷部に交流電力を供給した状態で行われる検査は、先に述べたようにインバータに対し、相当程度の大きな電力をある程度の期間供給する必要がある。よって、第1従来技術のような検査装置に、第2従来技術に示される構成(直流電源装置から供給される直流電力によって電解コンデンサを充電し、その電解コンデンサに充電された電荷を放電してインバータに供給するという構成)を適用しても、検査を適切にしかも充分に行うことは困難である。仮に、相当程度の大きな電力を供給するために電解コンデンサを多数設けることで対応したとしても、これらの電解コンデンサの占める部分が大きくなってしまう等の問題が生じる。
【0010】
また、第1従来技術や第2従来技術に例示されるような、インバータに電力を供給して行われるインバータ検査は、種々のバリエーションの検査に対応できるものであることが望まれる。
【0011】
本発明は、負荷部に交流電力を供給して行われるインバータ検査において、直流電力供給手段の小型化、ひいては低コスト化を実現することを目的とする。
本発明はまた、種々のバリエーションのインバータ検査に対応できる技術を実現することを他の目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段及び作用と効果】
本発明を具現化したインバータ検査装置は、供給された交流電力を直流電力に変換する直流電力供給手段と、直流電力供給手段からの直流電力を充電可能であるとともに、充電した直流電力をインバータに供給可能な少なくとも一つの蓄電部を有する蓄電手段と、少なくとも一つの蓄電部に充電された直流電力をインバータに供給する通電検査状態と、全ての蓄電部をインバータに非接続とするとともに少なくとも一つの蓄電部を直流電力供給手段からの直流電力によって充電する非通電検査状態を実現可能な制御手段と、インバータからの交流電力が供給される負荷部と、通電検査状態でインバータに現われる検査用データと非通電検査状態でインバータに現われる検査用データで計測する計測手段を備えている。
【0013】
この検査装置は、直流電力供給手段からの直流電力を充電可能であり、充電した直流電力をインバータに供給可能な蓄電手段を有する。よって、この検査装置によると、直流電力供給手段からインバータに直接に電力を供給しなくてもよく、直流電力供給手段から蓄電手段に充電された電力量の中からインバータに電力を供給できる。
この検査装置では、蓄電手段がバッテリ又は電気化学キャパシタを有するとよい。バッテリは、充電できる電気量(電力量)が大きい。電気化学キャパシタは、電解コンデンサに比べて、単位体積当りに蓄積できる電荷量(電力量)が大きい。よって、インバータから負荷部に交流電力を供給して行う検査であり、インバータに大きな電力を供給する必要のある検査であっても、蓄電手段からインバータに電力を充分に供給できる。しかも、蓄電手段の占める部分を小さくできる。
【0014】
この検査装置によると、インバータへの直流電力の供給を伴わないインバータ検査と並行して、直流電力供給手段から蓄電手段への直流電力の供給を行うことができる。
また、この検査装置によると、直流電力供給手段から蓄電手段に充電された電力量の中からインバータに電力を供給できるから、直流電力供給手段からインバータに直接に電力を供給する場合に比べて、直流電力供給手段から供給が必要な電力(供給の必要な単位時間当りのエネルギー)を小さくできる。直流電力供給手段の大きさは、供給可能な電力の大きさと相関があり、供給可能な電力が小さくなるにつれて小さくなる。このため、この検査装置によると、直流電力供給手段を小型化できる。従って、直流電力供給手段のコストを低くでき、検査装置のコストを低くできる。
【0015】
本発明を具現化したインバータ検査装置は、蓄電手段の出力電圧を昇圧する昇圧手段と、昇圧手段の出力電圧を制御可能な電圧制御手段をさらに備えていることが好ましい。
この検査装置によると、インバータに入力する電圧を、昇圧手段で昇圧可能な電圧以下の範囲で制御できる。よって、種々のバリエーションの電圧をインバータに入力できる。このため、種々のバリエーションのインバータ検査に対応できる。
【0016】
蓄電手段は、複数の蓄電部を有することが好ましい。この場合、制御手段は、通電検査状態を実現している期間に、インバータに非接続とした蓄電部の少なくとも一つを直流電力供給手段からの直流電力によって充電可能である接続することが好ましい。
【0017】
制御手段は、複数の蓄電部のうち並列接続又は直列接続された2つ以上の蓄電部から直流電力をインバータに供給可能であることが好ましい。
複数の蓄電部のうち並列接続された2つ以上の蓄電部から直流電力をインバータに供給可能であると、例えば、1つの蓄電部のみでは対応できない電力量の供給が必要なインバータ検査にも対応できる。
複数の蓄電部のうち直列接続された2つ以上の蓄電部から直流電力をインバータに供給可能であると、例えば、複数のインバータ検査を行うときに、各々のインバータ検査においてインバータに入力を必要とする電圧が異なっていても対応できる。この場合、蓄電手段の各蓄電部の出力電圧値を異ならせると、より多段階の電圧をインバータに出力できる。
【0019】
制御手段は、所定の蓄電部の充電率が所定条件を満たさない場合、その蓄電部と異なる蓄電部をインバータに接続することが好ましい。
これによると、複数の蓄電部のより適切な利用を行える。
【0020】
制御手段は、インバータの検査を所定回数又は所定時間行う毎に、インバータに接続する蓄電部を複数の蓄電部の中から所定順序で切換えることが好ましい。
これによると、複数の蓄電部のうち特定の蓄電部だけが集中して使用されることを回避できるので、複数の蓄電部の寿命を均等に長く保つことができる。
【0021】
直流電力供給手段から出力される直流電圧を交流電圧に変換して出力する交流電圧出力手段をさらに備え、複数の蓄電部は直列接続された第1蓄電部と第2蓄電部を有し、交流電圧出力手段から出力される交流電圧が正の値のときにその電圧に基づく電力が第1蓄電部に供給され、交流電圧出力手段から出力される交流電圧が負の値のときにその電圧に基づく電力が第2蓄電部に供給されることが好ましい。
これによると、直流電力供給手段から第1蓄電部と第2蓄電部に電力を供給するときに、リレーの制御を行う必要がない。また、直列接続された第1蓄電部と第2蓄電部を実質的に同時に充電することが可能であり、しかも、各蓄電部に交流電圧出力手段の出力電圧と同じ大きさの電圧が印加される形で充電できる。
【0023】
本発明を具現化したインバータ検査方法は、直流電力供給手段からの直流電力を充電可能であるとともに、充電した直流電力をインバータに供給可能な少なくとも一つの蓄電部を有する蓄電手段を用いるものであり、少なくとも一つの蓄電部を直流電力供給手段に非接続とするとともにその蓄電部をインバータに接続する電力供給状態でインバータに現われる検査用データを計測する工程と、少なくとも一つの蓄電部を直流電力供給手段に接続するとともに全ての蓄電部をインバータに非接続とする電力非供給状態でインバータに現われる検査用データを計測する工程を有する。
【0024】
【発明の実施の形態】
後述する実施例から把握される技術的思想を列挙する。
(形態1) 直流電力供給手段と、
直流電力供給手段からの直流電力を各々独立して充電可能であるとともに、充電した直流電力をインバータに供給可能な複数の蓄電部を有する蓄電手段を備えたインバータ検査装置。
(形態2) 複数の蓄電部のうち並列接続又は直列接続された2つ以上の蓄電部に対して直流電力供給手段からの直流電力を充電可能である形態1に記載のインバータ検査装置。
これらによると、1つ以上の蓄電部を必要なときに必要な期間だけ選択的に充電できる。よって、効率的な充電を行える。また、蓄電手段の寿命を長く保つことができる。
【0025】
(形態3) 蓄電手段からインバータに直流電力が供給されたことでインバータ又はその接続部位に現れるデータに基づいてインバータの異常を検出する異常検出手段を備えたインバータ検査装置。
これによると、インバータの異常検出を自動化して行うことができる。
(形態4) 直流電力供給手段から蓄電手段、及び/又は蓄電手段からインバータへの直流電力の供給と非供給を制御する制御手段を備えたインバータ検査装置。
これによると、直流電力の供給と非供給の切換えを自動的に、しかも精度良く行うことができる。
【0026】
(形態5) 直流電力供給手段から蓄電手段への直流電力の供給と、蓄電手段からインバータへの直流電力の供給を異なる時期に行うように制御する制御手段を備えたインバータ検査装置。
これによると、蓄電手段が充電と放電を同時に行うことが困難な構成のものであっても、適切に対処できる。
(形態6) インバータ検査の1サイクル中において、直流電力供給手段から蓄電手段への直流電力の供給時間(充電時間)が、蓄電手段からインバータへの直流電力の供給時間(放電時間)よりも長くなるように制御する制御手段を備えたインバータ検査装置。
これによると、複数サイクルのインバータ検査を連続的に行う場合でも、直流電力供給手段から供給の必要な電力を小さくして検査を行える。
【0027】
(形態7) 所定回数の検査終了毎又は所定時間間隔毎に、直流電力供給手段から蓄電手段に直流電力を供給するように制御する制御手段を備えたインバータ検査装置。
これによると、直流電力供給手段から蓄電手段への直流電力の供給をシンプルな制御で行うことができる。
(形態8) 形態4〜7のいずれかに記載の制御手段を備えたインバータ検査用の制御装置。
【0028】
本明細書において上記した「制御手段」や「異常検出手段」は、ハードウェアに限られず、その手段の機能がソフトウェアによって実現される場合も含む。また、「制御手段」又は「異常検出手段」の機能が2つ以上のハードウェア又はソフトウェアによって実現されていてもよい。さらに、上記した複数の「制御手段」の機能や、「制御手段」と「異常検出手段」の機能が1つのハードウェア又はソフトウェアによって実現されていてもよい。
【0029】
【実施例】
(第1実施例) 図1は、第1実施例のインバータ検査装置10と、これに接続された検査対象であるインバータ28の構成図を示す。
このインバータ検査装置10は、電源部12と、インバータ制御ECU30と、計測器32と、LR負荷部36と、統合制御用コンピュータ(以下では「制御コンピュータ」という)24を備えている。
【0030】
電源部12は、小型の直流電源装置14と、蓄電部18と、電源制御ECU22と、第1リレー16と、第2リレー20を有する。
直流電源装置14は、商用交流電源38(本実施例では200V電源)に接続されている。直流電源装置14は、商用交流電源38から供給される交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を蓄電部18に供給する。なお、これに代えて、他の電源から電力が供給されなくても直流電力を供給可能な装置を用いてもよい。
蓄電部18は、バッテリ19を有する。バッテリ19は、化学変化を利用して電気エネルギーを蓄積するものである。バッテリ19としては、鉛蓄電池、ニッケル水素バッテリ、ニッケルカドミウムバッテリ、リチウムイオンバッテリ、リチウムポリマバッテリ等の各種の二次電池が挙げられる。
【0031】
また、蓄電部18は、バッテリ19に代えて、図2に示すように、電気化学キャパシタ41を有していてもよい。電気化学キャパシタ41は、電気化学的な電荷貯蔵現象を利用したものである。電気化学キャパシタ41としては、電気二重層キャパシタや、レドックスキャパシタ等が挙げられる。電気二重層キャパシタは、二種の異なる物質の境界面(電極と電解質の界面)に生じる電気二重層の電気蓄積現象を利用するものである。レドックスキャパシタは、金属酸化物や導電性高分子の表面の酸化還元反応(疑似電気二重層容量)利用するものである。
1つの蓄電部18が、直列接続又は並列接続された電気化学キャパシタを複数有していても勿論よい。例えば、1つの蓄電部18が200個程度直列接続された電気化学キャパシタを有していてもよい。
【0032】
直流電源装置14と蓄電部18の間には両者の接続線17が設けられており、その接続線17の中間部には、第1リレー16が設けられている。直流電源装置14と蓄電部18の間は第1リレー16を接続(オン)・開放(オフ)することで接続・非接続が切換可能となっている。蓄電部18と検査対象であるインバータ28の間には両者の接続線26が設けられており、その接続線26の中間部には、第2リレー20が設けられている。蓄電部18とインバータ28の間は第2リレー20を接続(オン)・開放(オフ)することで接続・非接続が切換可能となっている。
以上により、蓄電部18は、直流電源装置14からの直流電力を充電可能であるとともに、充電した直流電力をインバータ28に供給可能となっている。
【0033】
電源制御ECU22は、直流電源装置14と、蓄電部18と、制御コンピュータ24に接続されている。電源制御ECU22は、直流電源装置14に対し、直流電源装置14をオンさせるオン指令信号や、その他の制御信号を送信可能となっている。電源制御ECU22は、蓄電部18から充電率(SOC(State Of Charge))のデータを受信可能となっている。電源制御ECU22は、制御コンピュータ24との間で各種データや制御信号の送受信が可能となっている。例えば、電源制御ECU22は制御コンピュータ24に対し、蓄電部18から受信した充電率データを送信可能となっている。また例えば、制御コンピュータ24は電源制御ECU22に対し、直流電源装置14の制御信号を送信可能となっている。
【0034】
インバータ制御ECU30は、インバータ28と、制御コンピュータ24に接続されている。インバータ制御ECU30は、インバータ28との間で各種データや制御信号の送受信が可能となっている。例えば、インバータ制御ECU30はインバータ28に対し、インバータ28をオンさせるオン指令信号を送信可能となっている。インバータ制御ECU30は、制御コンピュータ24との間で各種データや制御信号の送受信が可能となっている。例えば、制御コンピュータ24はインバータ制御ECU30に対し、インバータ28をオンさせるための制御信号を送信可能となっている。
【0035】
計測器32も、インバータ28と、制御コンピュータ24に接続されている。計測器32は、インバータ28又はその接続部位に現れる各種の検査用データ(インバータ28の各部又はインバータ28に接続された部位の電流や電圧等(典型的には、インバータ28から出力される3相交流電流))を計測可能となっている。なお、検査用データには、本来電流が流れるべき箇所に電流が流れていない、といったデータも含まれる。計測器32は、計測した各種の検査用データを制御コンピュータ24に送信可能となっている。
【0036】
LR負荷部36は、3本の接続線34を介してインバータ28に接続されている。LR負荷部36は、インバータ28から3相交流電力が供給される。LR負荷部36は、電気自動車を駆動する交流モータと等価的な役割を果たす。
上記した接続線17,26,34は数十A以上の高電流が流れる電力供給ラインである。これらの接続線以外の図1に示す接続線は、制御信号やデータ信号が流れる信号ラインである。
【0037】
制御コンピュータ24(統合制御用コンピュータ)は、検査装置10全体を統合的に制御する役割を果たす。制御コンピュータ24は、第1リレー16の接続・開放を切換制御可能であり、直流電源装置14のオン・オフを切換制御可能である。これにより、制御コンピュータ24は直流電源装置14から蓄電部18への直流電力の供給と非供給を制御可能となっている。制御コンピュータ24による直流電源装置14のオン・オフの切換制御は、電源制御ECU22を介して行われる。また、制御コンピュータ24は、直流電源装置14に関するその他の制御も可能である。
なお、直流電源装置14から蓄電部18への直流電力の供給(蓄電部18の充電)は、第1リレー16が接続され、かつ、直流電源装置14がオンされたときに行われる。これ以外のときには直流電源装置14から蓄電部18には直流電力は供給されない。例えば、第1リレー16が接続されていても、直流電源装置14がオンしていなければ、直流電源装置14から蓄電部18には直流電力は供給されない。
【0038】
制御コンピュータ24は、第2リレー20の接続・開放を切換制御可能であり、インバータ28のオン・オフを切換制御可能である。これにより、制御コンピュータ24は蓄電部18からインバータ28への直流電力の供給と非供給を制御可能となっている。制御コンピュータ24によるインバータ28のオン・オフの切換制御は、インバータ制御ECU30を介して行われる。また、制御コンピュータ24は、インバータ28に関するその他の制御も可能である。
なお、蓄電部18からインバータ28への直流電力の供給(蓄電部18の放電)は、第2リレー20が接続され、かつ、インバータ28がオンされたときに行われる。これ以外のときには蓄電部18からインバータ28には直流電力は供給されない。例えば、第2リレー20が接続されていても、インバータ28がオンしていなければ、蓄電部18からインバータ28には直流電力は供給されない。
【0039】
制御コンピュータ24は、上記した計測器32から送られてきたインバータ28に現れる各種の検査用データに基づいてインバータ28の正常・異常を判別し、インバータ28の異常を検出する。このように、制御コンピュータ24は異常検出手段としても機能する。
【0040】
図3は、第1実施例のインバータ検査装置10の動作の一例を示すフローチャートである。なお、以下では「通電検査」とは、蓄電部18からインバータ28に直流電力を供給している状態で行われる検査をいう。「通電を伴わない検査」とは、蓄電部18からインバータ28に直流電力を供給しない状態で行われる検査をいう。「通電を伴わない検査」としては、典型的には、制御信号やデータ信号の検査等の信号系の検査が挙げられる。
【0041】
インバータ検査が開始されると(S10)、図1に示す制御コンピュータ24は、通電検査をするか否かを判別する(S12)。通電検査をするか否かの決定は検査装置10の使用者が適宜行ってもよいし、予め制御コンピュータ24に入力しておいてもよい。
S12において制御コンピュータ24が通電検査をすると判別した場合は、電源制御ECU22から受信した蓄電部18の充電率データから、充電率が所定値(本実施例では70%)以上か否かを判別する(S14)。充電率が上記所定値以上の場合は、制御コンピュータ24は直ちに、第1リレー16を開放させ(S16)、第2リレー20を接続させる(S18)。制御コンピュータ24はさらにインバータ28をオンさせて、蓄電部18からインバータ28に直流電力を供給させることで、インバータ28の通電検査を実行する(S20)。充電率が上記所定値より小さい場合は、制御コンピュータ24は、第1リレー16を接続させ(S22)、直流電源装置14をオンさせ(S24)、蓄電部18を充電する。そして、上記したS16以降に進む。この場合、蓄電部18の充電率が上記所定値となるまで充電するようにしてもよいし、上記所定値よりも高い値となるまで充電するようにしてもよい。
【0042】
一方、S12において制御コンピュータ24が通電検査をしないと判別した場合は、制御コンピュータ24は、通電を伴わない検査をするか否かを判別する(S26)。通電を伴わない検査をするか否かの決定は、通電検査の場合と同様に、検査装置10の使用者が適宜行ってもよいし、予め制御コンピュータ24に入力しておいてもよい。
【0043】
S26において制御コンピュータ24が通電を伴わない検査をすると判別した場合は、第1リレー16と第2リレー20を開放させる(S28,S30)。制御コンピュータ24はさらにインバータ28をオンさせて、インバータ28への通電を伴わない検査を実行する(S32)。また、この通電を伴わない検査と並行して、制御コンピュータ24は、蓄電部18の充電率が所定値(本実施例では70%)以上か否かを判別する(S36)。充電率が上記所定値より小さい場合は、制御コンピュータ24は、第1リレー16を接続させ(S38)、直流電源装置14をオンさせ(S40)、通電を伴わない検査と並行して、蓄電部18を充電する。
一方、S26において制御コンピュータ24が通電を伴わない検査をしないと判別した場合は、通電検査も通電を伴わない検査もしないと判別されたことになるから、検査を終了させる(S34)。
【0044】
図4(a)(b)は、第1実施例のインバータ検査装置10の動作のさらに他の一例のタイムチャートを示す。この例では、制御コンピュータ24は、通電検査と通電を伴わない検査を交互に行うとともに、通電を伴わない検査を行うときには、蓄電部18を充電するように制御する。図4(a)は、蓄電部18の出力電流のタイムチャートを示す。図4(b)は蓄電部18の充放電のタイムチャートを示す。図4(a)(b)は、インバータ検査の1サイクル(本実施例では240秒としている)におけるタイムチャートである。
【0045】
図4(a)において、蓄電部18の出力電流が100Aの期間(10秒が2回)と140Aの期間(6秒が2回)は、通電検査が実行されている。このように、通電検査の実行期間は、1サイクル240秒中、10秒×2+6秒×2=32秒間である。蓄電部18の出力電流が0Aの期間は、通電を伴わない検査が実行されている。このように、通電を伴わない検査の実行期間は、1サイクル240秒中、240秒−32秒=208秒である。通電検査の実行期間(32秒)中は、図4(b)に示すように蓄電部18は当然ながら放電している。通電検査を伴わない検査の実行期間(208秒)中は、図4(b)に示すように蓄電部18は直流電源装置14によって充電されている。
【0046】
この例では、蓄電部18の充電時間(208秒)の方が、蓄電部18の放電時間(32秒)よりも6倍以上も長く設定されている。
図4(a)のようなタイムチャートの場合、検査1サイクルで蓄電部18が放電する電気量は、次式のように、1.02〔Ah〕となる。
140〔A〕×12/3600〔h〕+100〔A〕×20/3600〔h〕=1.02〔Ah〕
この電気量を上記した208秒の間に直流電源装置14によって充電するとした場合、直流電源装置14は、次式のように、約18〔A〕程度の電流を出力できるものであればよい。
1.02〔Ah〕÷(208/3600〔h〕)=17.7〔A〕
【0047】
このような蓄電部18を備えない従来のインバータ検査装置によって上記図4(a)に示すタイムチャートのような検査を行う場合、直流電源装置は、通電検査時に要求される最大電流140〔A〕を出力できるようなものでなければならない。しかしながら、直流電源装置の大きさは、出力できる電力が大きくなるにつれて大きくなってしまう。出力最大電流が140〔A〕程度の直流電源装置は、現存するものでは、幅と高さが1〜2m程度と大型であり、コストも非常に高い。
これに対し、本実施例のような蓄電部18を備えたインバータ検査装置10の場合、上記図4(a)に示すタイムチャートのような検査を行う場合でも、直流電源装置14は、上記したように約18〔A〕程度の電流を出力できればよい。出力最大電流が18〔A〕程度の直流電源装置14は、現存するものでは、幅と高さが数十cm程度と小型であり、上記した大型の直流電源装置14に比べると、コストを大幅に低減できる。
【0048】
図3のフローチャートにおいて、充電率が所定値(本実施例では70%)以上か否かを判別し、所定値以上の場合は充電を行わないようにしたのは、蓄電部18の寿命を考慮したことが1つの要因である。バッテリ19等は一般に、充電が充分になされている状態でさらに充電を行うと、寿命が短くなってしまうからである。しかしながら、蓄電部18の寿命に重点が置かれていない場合は、図5のフローチャートに示すように、通電検査が所定回数(図5では1回)終了する毎に蓄電部18に充電を行うような簡便な制御動作であってもよい。
【0049】
図5のフローチャートに示すように、インバータ28の検査が開始されると(S50)、制御コンピュータ24は、第1リレー16を開放させ(S52)、第2リレー20を接続させ(S54)、通電検査を実行する(S56)。通電検査が終了すると(S58)、制御コンピュータ24は、第1リレー16を接続させ(S60)、第2リレー20を開放させる(S62)、直流電源装置14をオンさせ(S64)、蓄電部18の充電を開始する。そして、制御コンピュータ24は、所定時間(本実施例では5分間)を計時すると(S66)、直流電源装置14をオフさせ(S68)、蓄電部18の充電を終了する。そして、通電検査を行う場合は再度通電検査を行い(S70)、通電検査を行わない場合はインバータ検査を終了する(S72)。
なお、上記のような制御に代えて、所定時間間隔で蓄電部18に充電を行うように制御してもよい。
【0050】
(第2実施例) 以下の実施例では、第1実施例と概ね同様の構成及び作用効果については必要部分以外は原則として説明を省略する。
第1実施例では、図1に示すように、蓄電部18から直流電源装置14、及びインバータ28から蓄電部18への逆流のより確実な防止や、より高い信頼性・安全性の確保等の観点から、リレー16,20を用いていた。しかし、制御構成をシンプルにしたい場合等は、図6に示す第2実施例のように、リレー16,20に代えてそれぞれ、ダイオード(42a,42b)、(44a,44b)を用いてもよい。
【0051】
(第3実施例) 図7に示す第3実施例のインバータ検査装置10は、蓄電部18(第2リレー20)とインバータ28の間に設けられた昇圧コンバータ70を備えている。昇圧コンバータ70は、制御コンピュータ24に接続されている。制御コンピュータ24は、昇圧コンバータ70に昇圧コンバータ70の出力電圧の制御信号を送信可能となっている。
【0052】
昇圧コンバータ70の上アーム部74のトランジスタ78がオフされた状態で下アーム部80のトランジスタ84をオンする。すると、蓄電部18の正極、第2リレー20の上側部、コイル72、下アーム部80のトランジスタ84、第2リレー20の下側部、蓄電部18の負極の順に電流が流れ、蓄電部18から放電される。次に、下アーム部80のトランジスタ84をオフする。すると、上記した電流経路が遮断される。しかし、コイル72には電流が流れ続けようとするため、コイル72に逆起電力が発生する。この結果、下アーム部80と上アーム部74の接続点85における電圧は、蓄電部18の出力電圧に対し、L×di/dtだけ高くなる。この状態でインバータ28をオンさせると、上アーム部74のダイオード76を通じてインバータ28に電流が流れ込む。これにより、蓄電部18の出力電圧よりも高い電圧をインバータ28に入力できる。
上記した下アーム部80のトランジスタ84のオン・オフ動作を数十kHz程度の周期で繰返すことで、蓄電部18の出力電圧よりも高電圧でほぼ平坦な直流波形が得られる。制御コンピュータ24は、制御信号によってトランジスタ84のオン・オフ動作の周期を調整することで、昇圧コンバータ70の出力電圧を制御している。
【0053】
第3実施例によると、インバータ28に入力する電圧を、昇圧コンバータ70で昇圧可能な電圧以下の範囲で無段階に制御できる。よって、インバータ28に対し、所望の値からのずれがほとんどない電圧を入力できる。このため、種々のバリエーションのインバータ検査にきめ細かく対応できる。
また、蓄電部18の出力電圧は、充電率によって変動する。これに対し、第3実施例によると、蓄電部18の出力電圧が変動する場合であっても、インバータ28に入力する電圧をほぼ一定に制御できる。よって、蓄電部18の出力電圧に変動があっても、インバータ検査を適切に行うことができる。
【0054】
(第4実施例) 図8に示す第4実施例のインバータ検査装置10は、2つの蓄電部18,48を備えている。第1蓄電部18は、第1実施例の蓄電部18と同様に設けられている。第2蓄電部48は、直流電源装置14とインバータ28の間に、第1蓄電部18と並列接続可能に設けられている。
直流電源装置14と第2蓄電部48の間には両者の接続線45が設けられており、その接続線45の中間部には、第3リレー46が設けられている。直流電源装置14と蓄電部18の間は第3リレー46を接続(オン)・開放(オフ)することで接続・非接続が切換可能となっている。第2蓄電部48とインバータ28の間には両者の接続線51が設けられており、その接続線51の中間部には、第4リレー50が設けられている。蓄電部18とインバータ28の間は第4リレー50を接続(オン)・開放(オフ)することで接続・非接続が切換可能となっている。第2蓄電部48は、第1蓄電部18と同様に、電源制御ECU22に接続されている。第3及び第4リレー46,50は、第1及び第2リレー16,20と同様に、制御コンピュータ24に接続されている。
制御コンピュータ24は、上記各リレー16,20,46,50の接続・開放と、直流電源装置14とインバータ28のオン・オフの切換制御が可能となっている。
【0055】
以上により、第1蓄電部18と第2蓄電部48は、各々独立にも、並列接続された状態でも、直流電源装置14からの直流電力を充電可能であるとともに、充電した直流電力をインバータ28に供給可能となっている。また、制御コンピュータ24は、直流電源装置14から各蓄電部18,48、及び各蓄電部18,48からインバータ28への直流電力の供給と非供給を制御可能となっている。
【0056】
従って、第4実施例によると、種々のバリエーションのインバータ検査に対応できる。第1蓄電部18と第2蓄電部48を並列接続すると、第1蓄電部18又は第2蓄電部48のみでは対応できない電力量の供給が必要なインバータ検査にも対応できる。また、各蓄電部18,48を必要なときに必要な期間だけ選択的に充電できる。よって、効率的な充電を行える。また、各蓄電部18,48の寿命を長く保つことができる。
【0057】
第4実施例の検査装置10の使用態様としては、例えば、(1)第1蓄電部18と第2蓄電部48を常時並列接続して、インバータ28に直流電力を供給するという態様が挙げられる。また、(2)主として第1蓄電部18によってインバータ28に直流電力を供給し、第1蓄電部18の充電率が低下したときに第2蓄電部48からインバータ28に直流電力を供給するという態様が挙げられる。
さらに、(3)インバータの検査を所定回数又は所定時間行う毎に第1蓄電部18からインバータ28への直流電力の供給と、第2蓄電部48からインバータ28への直流電力の供給を切換えるという態様が挙げられる。
【0058】
図9は、上記(2)の態様の一例のフローチャートを示す。インバータ検査が開始されると(S80)、制御コンピュータ24は、通電検査をするか否かを判別する(S82)。制御コンピュータ24が通電検査をすると判別した場合は、第1実施例と同様の方法で、第1蓄電部18の充電率が所定値(本実施例では70%)以上か否かを判別する(S84)。制御コンピュータ24は、第1蓄電部18の充電率が上記所定値以上と判別した場合は、第1リレー16を開放させ(S86)、第2リレー20を接続させる(S88)。制御コンピュータ24はさらにインバータ28をオンさせて、第1蓄電部18からインバータ28に直流電力を供給させることで、インバータ28の通電検査を実行する(S90)。制御コンピュータ24は、第1蓄電部18の充電率が上記所定値よりも小さいと判別した場合は、第1リレー16を接続させ(S92)、直流電源装置14をオンさせ(S94)、第1蓄電部18を充電する。この場合、第1蓄電部18の充電率が上記所定値となるまで充電するようにしてもよいし、上記所定値よりも高い値となるまで充電するようにしてもよい。これと並行して、制御コンピュータ24は、第2蓄電部48の充電率が所定値(本実施例では70%)以上か否かを判別する(S96)。
【0059】
制御コンピュータ24は、第2蓄電部48の充電率が上記所定値以上と判別した場合は、第3リレー46を開放させ(S98)、第4リレー50を接続させる(S100)。制御コンピュータ24はさらにインバータ28をオンさせて、第2蓄電部48からインバータ28へ直流電力を供給させることで、インバータ28の通電検査を実行する(S90)。制御コンピュータ24は、第2蓄電部48の充電率が上記所定値よりも小さいと判別した場合は、第3リレー46を接続させ(S102)、直流電源装置14をオンさせ(S104)、第2蓄電部48を充電する。そして、制御コンピュータ24は再度、第1蓄電部18の充電率が所定値(本実施例では70%)以上か否かを判別する(S84)。
【0060】
このS84の再度の判別においては、先にS94に示したように第1蓄電部18は充電され、その充電率は上記所定値以上の値となっているから、S86以降に進み、通電検査が実行される(S90)。通電検査を行う場合は、第1蓄電部18からの直流電力の供給は、S84において第1蓄電部18の充電率が所定値より小さくなったと判別されるまで繰返し行われる。そして、第1蓄電部18の充電率が所定値より小さくなった場合に補助的に第2蓄電部48から直流電力が供給される(S98,S100)。
【0061】
また、S82において、制御コンピュータ24が通電検査をしないと判別した場合は、さらに、通電を伴わない検査をするか否かを判別する(S106)。制御コンピュータ24が通電を伴わない検査をすると判別した場合は、第2リレー20と第4リレー50を開放させ(S108)、さらに、インバータ28をオンさせて、通電を伴わない検査を実行する(S110)。これと並行して、制御コンピュータ24は、第1蓄電部18と第2蓄電部48の充電率が所定値以上か否かを判別する(S112,S118)。第1蓄電部18の充電率が所定値より小さいと判別した場合は、第1リレー16を接続させ(S114)、直流電源装置14をオンさせ(S116)、第1蓄電部18を充電する。第2蓄電部48の充電率が所定値より小さいと判別した場合は、第3リレー46を接続させ(S118)、直流電源装置14をオンさせ(S120)、第2蓄電部48を充電する。そして、制御コンピュータ24は再度、通電検査をするか否かを判別する(S82)。
【0062】
上記(2)の態様は、同じ寿命の蓄電部18,48を用意するよりも、高寿命の第1蓄電部18と、低寿命の第2蓄電部48を用意する方がコストを低減でき、しかも、上記(2)の態様のように制御することで蓄電部全体としての寿命を長くできるという場合等に有効である。
【0063】
図10は、上記(3)の態様の一例のフローチャートを示す。インバータ検査が開始されると(S130)、制御コンピュータ24は、まずNを1だけインクリメントし(S132)、このときのNが奇数か否かを判別する(S134)。Nが奇数の場合は、制御コンピュータ24は、第1リレー16を開放させ(S136)、第2リレー20を接続させる(S138)。制御コンピュータ24はさらにインバータ28をオンさせて、第1蓄電部18からインバータ28へ直流電力を供給させることで、インバータ検査(通電検査)を実行する(S140)。これと並行して、第3リレー46を接続させ(S146)、直流電源装置14をオンさせて(S148)、第2蓄電部48を充電する。
【0064】
S134において、Nが奇数でない場合は、制御コンピュータ24は、第3リレー46を開放させ(S154)、第4リレー50を接続させる(S156)。制御コンピュータ24はさらにインバータ28をオンさせて、第2蓄電部48からインバータ28に直流電力を供給させることで、インバータ検査(通電検査)を実行する(S140)。これと並行して、第1リレー16を接続させ(S150)、直流電源装置14をオンさせて(S152)、第1蓄電部18を充電する。S140においてインバータ検査を実行した後は、制御コンピュータ24は、インバータ検査を終了するか否かを判別し、終了しない場合は、Nを1だけインクリメントし(S132)、S134以降に進む。終了する場合は、インバータ検査の終了となる(S144)。
【0065】
上記(3)の態様のように制御すると、2つの蓄電部18,48のうち一方の蓄電部だけが集中して使用されることを回避できるので、2つの蓄電部18,48の寿命を均等に長く保つことができる。
【0066】
(第5実施例) 図11に示す第5実施例のインバータ検査装置10は、2つの蓄電部18を備えている点では第4実施例と同様であるが、リレーを介しての接続態様が第4実施例とは異なる。
第5実施例では、電源部12に、8つのリレーが設けられている。第1蓄電部18と第2蓄電部48は直列に接続されている。第1蓄電部18のバッテリ19の正極と直流電源装置14の間には、第1リレー52が設けられている。第1蓄電部18のバッテリ19の正極とインバータ28の間には、第2リレー54が設けられている。第2蓄電部48のバッテリ49の正極(第1蓄電部18のバッテリ19の負極)と直流電源装置14の間には、第3リレー56が設けられている。第2蓄電部48のバッテリ49の正極(第1蓄電部18のバッテリ19の負極)とインバータ28の間には、第4リレー58が設けられている。第2蓄電部48のバッテリ49の正極と負極に並列な箇所であって、直流電源装置14側には第5リレー60が設けられ、インバータ28側には第6リレー62が設けられている。第2蓄電部48のバッテリ49の負極と直流電源装置14の間には、第7リレー64が設けられている。第2蓄電部48のバッテリ49の負極とインバータ28の間には、第8リレー66が設けられている。
これらの8つのリレーは、制御コンピュータ24に接続されている。これらの8つのリレーは各々別個に、制御コンピュータ24から送られる制御信号によって接続と開放が切換可能となっている。
【0067】
以上により、第1蓄電部18と第2蓄電部48は、各々独立にも、直列接続された状態でも、直流電源装置14からの直流電力を充電可能であるとともに、充電した直流電力をインバータ28に供給可能となっている。また、制御コンピュータ24は、直流電源装置14から各蓄電部18,48、及び各蓄電部18,48からインバータ28への直流電力の供給と非供給を制御可能となっている。
【0068】
図12は、第5実施例のインバータ検査装置10のリレー切換状態の一覧を示す。図11に示す第5実施例の構成の場合、直流電源装置14がオンし、インバータ28がオンしているという前提の下では、(1)第1、4、5、7、8リレー52,58,60,64,66が接続され、その他のリレー54,56,62が開放されると、第1蓄電部18が充電され、第2蓄電部48が放電される(図12の上段参照)。(2)第2、3、6〜8リレー54,56,62,64,66が接続され、その他のリレー52,58,60が開放されると、第1蓄電部18が放電され、第2蓄電部48が充電される(図12の中段参照)。(3)第2、8リレー54,66が接続され、その他のリレー52,56,58,60,62,64が開放されると、第1蓄電部18と第2蓄電部48が共に放電される(図12の下段参照)。
よって、第5実施例によると、第1蓄電部18と第2蓄電部48の出力電圧が異なっていれば、電源部12としては3種類の電圧を出力できることになる。
【0069】
従って、第5実施例によると、種々のバリエーションのインバータ検査に対応できる。第1蓄電部18と第2蓄電部48を直列接続すると、複数のインバータ検査を行う場合に、各々のインバータ検査においてインバータ28に入力を必要とする電圧が異なる場合にも対応できる。
【0070】
(第6実施例) 図13に示す第6実施例のインバータ検査装置10は、2つの蓄電部18を有し、第1蓄電部18と第2蓄電部48が直列に接続されている点では第5実施例と同様である。しかし、直流電源装置14と、直列接続された第1及び第2蓄電部18,48の間に方形波発信部86が設けられている点で第5実施例と異なる。
方形波発信部86は、振幅一定の正の電圧と、振幅一定の負の電圧を交互に出力する。方形波発信部86のプラス側出力部と第1蓄電部18のバッテリ19の正極の間は、第1ダイオード88を介して接続されている。第1ダイオード88は、方形波発信部86のプラス側出力部側がアノードとなり、第1蓄電部18の正極側がカソードとなるように接続されている。また、方形波発信部86のプラス側出力部と第2蓄電部48のバッテリ49の負極の間は、第2ダイオード90を介して接続されている。第2ダイオード90は、方形波発信部86のプラス側出力部側がカソードとなり、第2蓄電部48の負極側がアノードとなるように接続されている。第1蓄電部18のバッテリ19の負極(第2蓄電部48のバッテリ49の正極)は、方形波発信部86のマイナス側出力部に接続されている。方形波発信部86と第1蓄電部18の間には第1コンデンサ92が並列に接続されている。方形波発信部86と第2蓄電部48の間には第2コンデンサ94が並列に接続されている。これらのコンデンサ92,94は、方形波発信部86から出力される電圧のリップル成分除去用のコンデンサである。
【0071】
第6実施例では、方形波発信部86から出力される方形波電圧が正の値(+250V)のときには、その電圧に基づく電力が第1蓄電部18に供給され、充電される。一方、方形波発信部86から出力される方形波電圧が負の値(−250V)のときには、その電圧に基づく電力が第2蓄電部48に供給され、充電される。
【0072】
先に述べた第5実施例の場合、直流電源装置14から第1蓄電部18と第2蓄電部48に電力を供給するときに、リレー(第1,3,5,7リレー)の制御を行う必要がある。また、第5実施例では、直列接続された第1蓄電部18と第2蓄電部48を同時に充電することも可能であるが、この場合、各蓄電部18,48には直流電源装置14の出力電圧の半分の大きさの電圧が印加される形でしか充電できない。
これに対し、第6実施例によると、直流電源装置14から第1蓄電部18と第2蓄電部18に電力を供給するときに、リレーの制御を行う必要がない。また、直列接続された第1蓄電部18と第2蓄電部48を実質的に同時に充電することが可能であり、しかも、各蓄電部18,48に方形波発信部86の出力電圧と同じ大きさの電圧が印加される形で充電できる。また、方形波発信部86は、振幅一定の正の電圧と、振幅一定の負の電圧を交互に出力するから、振幅が常時変動する電圧が出力される場合に比べて、各蓄電部18,48に効率的に電力を供給できる。
【0073】
第6実施例のインバータ検査装置10の方形波発信部は、例えば図14に示すように構成するとよい。図14に示す方形波発信部86aは、トランジスタとダイオードを有する4つのアーム部96a〜96dを有する。第1アーム部96aと第2アーム部96bは直列接続されている。第3アーム部96cと第4アーム部96dは直列接続されている。そして、第1及び第2アーム部96a,96bと、第3及び第4アーム部96c,96dは並列接続されている。直列接続された第1及び第2アーム部96a,96b(第3及び第4アーム部96c,96d)の両端が入力端子に接続されている。第1アーム部96aと第2アーム部96bの接続点が出力端子の一方に接続され、第3アーム部96cと第4アーム部96dの接続点が出力端子の他方に接続されている。方形波発信部86aの入力端子には、蓄電部18の出力電圧(250V)と同じ出力電圧の直流電源装置14aが接続されている。制御コンピュータ24によって第1〜第4アーム部96a〜96dのトランジスタのオン・オフを所定のパターンで制御することで、方形波発信部86aから方形波電圧が出力される。
【0074】
また、図15に示すように構成してもよい。図15に示す方形波発信部86bは、トランジスタを有する第1〜第4アーム部98a〜98dに加えて、第1〜第4アーム部98a〜98dで生成された方形波電圧を昇圧する昇圧トランス100を備えている。方形波発信部86bの入力端子には、蓄電部18の出力電圧(250V)よりも低い出力電圧(30V)の直流電源装置14bが接続されている。
【0075】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施例のインバータ検査装置と、これに接続されたインバータの構成図を示す。
【図2】 電気化学キャパシタを有する蓄電部の構成図を示す。
【図3】 第1実施例のインバータ検査装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【図4】 (a)は蓄電部の出力電流(=インバータの入力電流)のタイムチャートを示し、(b)は蓄電部の充放電のタイムチャートを示す。
【図5】 第1実施例のインバータ検査装置の動作の他の一例を示すフローチャートである。
【図6】 第2実施例のインバータ検査装置と、これに接続されたインバータの構成図を示す。
【図7】 第3実施例のインバータ検査装置と、これに接続されたインバータの構成図を示す。
【図8】 第4実施例のインバータ検査装置と、これに接続されたインバータの構成図を示す。
【図9】 第4実施例のインバータ検査装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【図10】 第4実施例のインバータ検査装置の動作の他の一例を示すフローチャートである。
【図11】 第5実施例のインバータ検査装置と、これに接続されたインバータの構成図を示す。
【図12】 第5実施例のインバータ検査装置のリレー切換状態の一覧を示す。
【図13】 第6実施例のインバータ検査装置と、これに接続されたインバータの構成図を示す。
【図14】 第6実施例のインバータ検査装置の方形波発信部の回路例を示す。
【図15】 第6実施例のインバータ検査装置の方形波発信部の他の回路例を示す。
【図16】 従来のインバータ検査装置と、これに接続されたインバータの構成図を示す。
【符号の説明】
10:インバータ検査装置
12:電源部
14:直流電源装置(直流電力供給手段の一例)
16:第1リレー
18:蓄電部
20:第2リレー
22:電源制御ECU
24:統合制御用コンピュータ(制御手段、電圧制御手段、異常検出手段の一例)
28:インバータ
30:インバータ制御ECU
32:計測器
36:LR負荷部
Claims (8)
- 供給された交流電力を直流電力に変換する直流電力供給手段と、
直流電力供給手段からの直流電力を充電可能であるとともに、充電した直流電力をインバータに供給可能な少なくとも一つの蓄電部を有する蓄電手段と、
少なくとも一つの蓄電部に充電された直流電力をインバータに供給する通電検査状態と、全ての蓄電部をインバータに非接続とするとともに少なくとも一つの蓄電部を直流電力供給手段からの直流電力によって充電する非通電検査状態を実現可能な制御手段と、
インバータからの交流電力が供給される負荷部と、
通電検査状態でインバータに現われる検査用データと非通電検査状態でインバータに現われる検査用データを計測する計測手段と、
を備えたインバータ検査装置。 - 蓄電手段の少なくとも一つの蓄電部の出力電圧を昇圧する昇圧手段と、
昇圧手段の出力電圧を制御可能な電圧制御手段をさらに備えた請求項1に記載のインバータ検査装置。 - 蓄電手段は、複数の蓄電部を有し、
制御手段は、通電検査状態を実現している期間に、インバータに非接続とした蓄電部の少なくとも一つを直流電力供給手段からの直流電力によって充電可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインバータ検査装置。 - 制御手段は、複数の蓄電部のうち並列接続又は直列接続された2つ以上の蓄電部から直流電力をインバータに供給可能である請求項3に記載のインバータ検査装置。
- 制御手段は、所定の蓄電部の充電率が所定条件を満たさない場合、その蓄電部と異なる蓄電部からインバータへ直流電力を供給することを特徴とする請求項3又は4に記載のインバータ検査装置。
- 制御手段は、インバータの検査を所定回数又は所定時間行う毎に、インバータに直流電力を供給する蓄電部を複数の蓄電部の中から所定順序で切換えることを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載のインバータ検査装置。
- 直流電力供給手段から出力される直流電圧を交流電圧に変換して出力する交流電圧出力手段をさらに備え、複数の蓄電部は直列接続された第1蓄電部と第2蓄電部を有し、
交流電圧出力手段から出力される交流電圧が正の値のときにその電圧に基づく電力が第1蓄電部に供給され、
交流電圧出力手段から出力される交流電圧が負の値のときにその電圧に基づく電力が第2蓄電部に供給される請求項3から6のいずれか一項に記載のインバータ検査装置。 - 供給された交流電力を直流電力に変換する直流電力供給手段と、直流電力供給手段からの直流電力を充電可能であるとともに充電した直流電力をインバータに供給可能な少なくとも一つの蓄電部を有する蓄電手段を用い、
少なくとも一つの蓄電部に充電された直流電力を負荷部に接続されたインバータに供給する通電検査状態でインバータに現われる検査用データを計測する工程と、
全ての蓄電部をインバータに非接続とするとともに少なくとも一つの蓄電部を直流電力供給手段からの直流電力によって充電する非通電検査状態でインバータに現われる検査用データを計測する工程と、
を有するインバータ検査方法。
Priority Applications (1)
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