JP4161580B2 - 振動ドリルドライバ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は締め付けトルク調整が可能なトルク調整モードと、締め付けトルク調整用クラッチが作動しないドリルモードと、締め付けトルク調整用クラッチが作動せず且つ振動駆動を付加することになる振動モードとを切り替えることができる振動ドリルドライバに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
振動ドリルドライバでは、締め付けトルクの調整が可能なトルク調整モードと、締め付けトルクを無限大に設定したドリルモードと、該ドリルモードに軸方向振動を付加した振動モードの3つのモードを得られるようにしているが、この場合、単一の切替ハンドルで上記3つのモードの切り替えを行うものと、2つのハンドルで3つのモードの切り替えを行うものとがある。
【0003】
前者の単一の切替ハンドルで3つのモードを切り替えるものでは、トルク調整のために切替ハンドルに螺合する調整部材を設けて、切替ハンドルの回転で調整部材を進退させることでトルク調整を行うようにしたものでは、振動モードの際の振動で上記調整部材が動いてしまい、これが原因で振動モードが解除されて非振動モードになることがあり、使い勝手を損ねるという問題がある。
【0004】
後者では、締め付けトルクを調整するトルク調整モードとドリルモードとの切替を行うトルク調整ハンドルと、回動操作によって非振動モードと振動モードとの切替を行う振動モード切替ハンドルとを設けるために、トルク調整のための上記調整部材が振動モード切替ハンドルに影響を与えることがないものとすることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、振動ドリルとして使用するために振動モードで駆動する時は、トルク調整ハンドルがドリルモード位置になっていなくてはならないのに対して、振動モード切替ハンドルを振動モード位置にしていても、トルク調整ハンドルはドリルモードとトルク調整モードとの切替操作が可能となっていることから、使用上、問題が多い上に、ユーザを混乱させてしまう事態が生じる。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みなされたものであって、その目的とするところはトルク調整モードとドリルモードと振動モードとの使い分けを2つの切替ハンドルで適切に行うことができる振動ドリルドライバを提供するにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
しかして本発明は、回動操作によって締め付けトルクの調整が可能なトルク調整モードと締め付けトルクを無限大に設定したドリルモードとの切替を行うトルク調整ハンドルと、回動操作によって出力部に軸方向振動を付加しない非振動モードと出力部に軸方向振動を付加する振動モードとの切替を行う振動モード切替ハンドルとを備えた振動ドリルドライバーであって、軸方向に並ぶ上記トルク調整ハンドルと上記振動モード切替ハンドルの間に軸方向移動が自在な係合リングを備えており、上記係合リングと上記トルク調整ハンドルとはトルク調整ハンドルがトルク調整モード位置にある時に係合リングを振動モード切換ハンドル側に移動させるとともにトルク調整ハンドルがドリルモード位置にある時に係合リングのトルク調整ハンドル側への移動を許して互いに係合自在となる凹凸係合部を備え、上記係合リングと上記振動モード切換ハンドルとは振動モード切換ハンドルが振動モード位置にある時に係合リングをトルク調整ハンドル側に移動させるとともに振動モード切換ハンドルが非振動モード位置にある時に係合リングの振動モード切換ハンドル側への移動を許して互いに係合自在となる凹凸係合部を備えて、上記係合リングは上記トルク調整ハンドルがドリルモード位置にあり且つ振動モード切換ハンドルが非振動モード位置にある時のみ、上記軸方向移動が可能であり、上記係合リングと上記トルク調整ハンドルとの凹凸係合部は、振動モード切換ハンドルが振動モード位置にある時に互いの係合でトルク調整ハンドルの回転を不能とし、上記係合リングと上記振動モード切換ハンドルとの凹凸係合部は、トルク調整ハンドルが締め付けトルク調整モード位置にある時に互いの係合で振動モード切替ハンドルの回転を不能とするものであることに特徴を有しており、上記に加えてトルク調整ハンドルのドリルモード位置からトルク調整モード位置への切り替えに際して振動モード切替ハンドルを振動モード位置から非振動モード位置に連動回転させる連動手段を備えていることに他の特徴を有している。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下本発明を実施の形態の一例に基づいて詳述すると、図1において、2はハウジング1から突出しているスピンドルでその先端にはドリルビット(図示せず)装着用のチャック3が取り付けられている。ここにおけるスピンドル2は、ハウジング1内に配設されたギアボックス4およびケーシング5に軸受7を介して軸回り回転と軸方向の移動とが自在となるようにされたもので、その後端には減速機構との連結部としてのスプラインが形成されている。そして中程には回転カム8が固着されている。
【0009】
上記減速機構は、モータ9の回転出力を3段の遊星機構によって減速するもので、モータ9の出力軸に固着された太陽ギア10、この太陽ギア10に噛合う複数個の遊星ギア11、これら遊星ギア11が噛み合うインターナルギア12、上記遊星ギア11を支持しているキャリア13、キャリア13に形成されている太陽ギアと噛合う複数個の遊星ギア14、遊星ギア14が噛み合うインターナルギア15、遊星ギア14を支持しているキャリア16、キャリア16に形成されている太陽ギアと噛合う複数個の遊星ギア17、遊星ギア17が噛み合うインターナルギア18、遊星ギア17を支持しているキャリア19とからなり、キャリア19は上記スピンドル2のスプラインと軸方向摺動自在に結合するスプライン孔を備えた回転部材6に結合されている。
【0010】
なおこの減速機構における各インターナルギア12,15,18のうちインターナルギア12がギアボックス4に固着されているのに対して、インターナルギア15は軸方向に摺動自在とされ、ハウジング1外面に配された変速操作子20のスライド操作に伴って、ギアボックス4との係合で回転不能となる位置と、キャリア13と係合してキャリア13と一体に回転する位置との間で移動する。このために変速操作子20の操作で減速機構の減速比が変化する。また、インターナルギア18は、締め付けトルクの調整の際のトルクリミット用クラッチとして機能するもので、クラッチ調整ばね35の圧力を受ける係合子(図示せず)と係合することで回転が止められてキャリア19側に動力を伝達するものの、負荷トルクが増大した時には係合子をクラッチ調整ばね35に抗して押し戻すことで空転を始めてキャリア19への動力伝達を遮断するという周知の締め付けトルク調整用クラッチの構造のものとなっている。
【0011】
前記回転カム8は、スライドカム21とともにスピンドル2に振動駆動を与える振動駆動部材であって、回転カム8に対向するスライドカム21は、回転部材6と回転カム8との間にスピンドル2への遊嵌で配設されており、その外周面がケーシング5と係合することで回り止めがなされている。また、回転部材6との間に配されたばね23によって回転カム8側に向けてばね付勢されている。
【0012】
さらに、スライドカム21の外周前端面に後端が当接する切替板24が配設してある。図1に示すように、切替板24が後退した位置にある時、スライドカム21のばね付勢による前進は該切替板24によって所定位置で規制される上に、スライドカム21と回転カム8との間に空打ち防止ばね25が介装されていることから、この状態ではスライドカム21と回転カム8とが互いに接触することがない。なお、この状態が非振動モード(トルク調整モード及びドリルモード)である。
【0013】
一方、ハウジング1の先端部には軸回りの回転が自在となるようにトルク調整ハンドル26と振動モード切替ハンドル27とが装着されている。
【0014】
前方側に位置する振動モード切替ハンドル27は、図3及び図4に示すように、その内面複数箇所にテーパ面271が設けられており、上記切替板24の前端に設けたテーパ面241が当接している。振動モード切替ハンドル27を非振動モード位置から振動モード位置に回転によって切り替えると、切替板24との上記当接が解除され、切替板24が前方に移動し、これに伴ってスライドカム21の位置がスピンドル2の軸方向において変化して、図2に示すように回転カム8と係合し、スピンドル2及び回転カム8の回転に伴ってスライドカム21が軸方向振動を付加する振動モードとなる。振動モード切替ハンドル27を振動モード位置から非振動モード位置に回転によって切り替えると、逆に上記テーパ面271,241によって切替板24が後方へと移動してスライドカム21を後退させることから、図1に示す非振動モードに復帰する。
【0015】
一方、トルク調整ハンドル26はその回転で内面に螺合している調整部材36を軸方向前後に移動させて前記クラッチ調整ばね35の圧縮量を変化させることで、トルク調整を行うとともに、クラッチ調整ばね35の圧縮量を最大にした時、トルク調整動作がなされないように、つまりは滑り出しトルク(締め付けトルク)を無限大にしてドリルモードとするもので、このトルク調整ハンドル26と上記振動モード切替ハンドル27との間には、ギアケース5外面の突条50と係合する溝295を内周面に備えて軸方向移動のみが可能となっている係合リング29が配設されている。
【0016】
そして、上記トルク調整ハンドル26が多段のトルク調整モードの位置にある時、振動モード切替ハンドル27との間に配設されている付勢ばね28で後方へと付勢されている係合リング29は、トルク調整ハンドル26から突出している凸部261の上に乗り上げており、このために係合リング29は図5に示すように、付勢ばね28に抗して前進した位置にあって前端面から突出させた突部291を振動モード切替ハンドル27の内部に構成されている凹部272に係合させている。このために、振動モード切替ハンドル27を回転させることはできない。つまり、トルク調整ハンドル26がトルク調整モード位置にある時、振動モード切替ハンドル27を非振動モード位置から振動モード位置に切り替えることはできない。
【0017】
トルク調整ハンドル26をトルク調整モード位置から更に回転させてドリルモード位置にセットすると、トルク調整ハンドル26から突出している凸部261が係合リング29に設けた凹部292に嵌り込むために、図6に示すように係合リング29は付勢ばね28の付勢で後退し、振動モード切替ハンドル27内部の凹部272から突部291を離脱させる。従って振動モード切替ハンドル27の非振動モード位置から振動モード位置への切り替え並びに振動モード位置から非振動モード位置への切り替えが可能となる。そして、振動モード切替ハンドル27を振動モード位置にセットしている時には、突部291が凹部272両側の凸面に乗り上げており、係合リング29を付勢ばね28に抗して前方に移動させることができないために、係合リング29の凹部292に凸部261を係合させているトルク調整ハンドル26を回転させることはできない。
【0018】
逆に振動モード切替ハンドル27を非振動モード位置に戻すと、上記切替板24が後退して非振動モードの状態に切り替えると同時に、係合リング29の前方への移動が可能な状態となることから、この時点でトルク調整ハンドル26をドリルモード位置からトルク調整モード位置に回すと、トルク調整ハンドル26の凸部261が係合リング29の凹部292から抜け出すとともに係合リング29を前方に移動させ、係合リング29の突部291を振動モード切替ハンドル27の凹部272に係合させるために振動モード切替ハンドル27の振動モード位置への切替操作ができなくなる。なお、上記動作から明らかなように、突部291と凹部272とが振動モード切替ハンドル27と係合リング29との凹凸係合部を形成し、凸部261と凹部292とがトルク調整ハンドル26と係合リング29との凹凸係合部を形成しているものである。
【0019】
上記の実施例では、上述のように、トルク調整ハンドル26をドリルモード位置にセットしていないと振動モード切替ハンドル27を非振動モード位置から振動モード位置に回転させることができず、また振動モード切換ハンドル27を非振動モード位置にセットしていないとトルク調整ハンドル26をドリルモードか位置からトルク調整モード位置に回転させることができず、このために振動モードから非振動モードにおけるトルク調整モードに移行するには、振動モード切替ハンドル27を振動モード位置から非振動モード位置に切り替えた後、さらにトルク調整ハンドル26をドリルモード位置からトルク調整モード位置に切り替えることになる。
【0020】
図7及び図8に示すものは、振動モードから非振動モードにおけるトルク調整モードに移行するにあたり、振動モード切替ハンドル27を振動モード位置から非振動モード位置に切り替えなくても、トルク調整ハンドル26をドリルモード位置からトルク調整モード位置に切り替える時、振動モード切替ハンドル27が振動モード位置にあれば、振動モード位置から非振動モード位置に連動して切り替えられるようにしたもので、板状のクリック板30をトルク調整ハンドル26の先端の取付け部31に配設して振動モード切替ハンドル27の内周部に設けられた凹部272にクリック板30を係合させている。トルク調整ハンドル26をドリルモードからトルク調整モードに切り替える時、クリック板30を介してトルク調整ハンドル27と振動モード切替ハンドル27とが連結されているために、振動モード切替ハンドル27も同時に回転して振動モードから非振動モードへ移行する。
【0021】
この時、係合リング29の外周部に突出した凸部293と振動モード切替ハンドル27の内部に切り欠いた凹部273とが振動モード切替ハンドル27の回転範囲を規制しているために、振動モード切替ハンドル27は振動モードから非振動モードとの切替範囲内でのみ回動し、トルク調整ハンドル26のトルク調整モード内での回動には連動しない。
【0022】
【発明の効果】
以上のように本発明においては、トルク調整ハンドルがトルク調整モード位置にある時は振動モード切換ハンドルは非振動モード位置から振動モード位置に動かすことができず、振動モード切換ハンドルが振動モード位置にある時はトルク調整ハンドルはドリルモード位置からトルク調整モード位置に動かすことができないために、振動モードにあるにもかかわらずトルク調整モードにセットされてしまったりするようなことがないものであり、ユーザの使い勝手を損なうことなく操作を混乱させる事態を解消することができる。
【0023】
そして、トルク調整ハンドルのドリルモード位置からトルク調整モードへの切り替えに際して振動モード切替ハンドルを振動モード位置から非振動モード位置に切り替える連動手段を備えていると、切替ハンドルを2つ設けているものの、振動モードからトルク調整モードへの移行をトルク調整ハンドルを操作するだけで行うことができて使い勝手が良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態の一例の断面図である。
【図2】 同上の振動モードにセットした状態の断面図である。
【図3】 同上の分解斜視図である。
【図4】 同上の分解斜視図である。
【図5】 同上の部分断面図である。
【図6】 同上の部分断面図である。
【図7】 他例の斜視図である。
【図8】 同上の部分正面図である。
【符号の説明】
26 トルク調整ハンドル
27 振動モード切替ハンドル
29 係合リング
Claims (2)
- 回動操作によって締め付けトルクの調整が可能なトルク調整モードと締め付けトルクを無限大に設定したドリルモードとの切替を行うトルク調整ハンドルと、回動操作によって出力部に軸方向振動を付加しない非振動モードと出力部に軸方向振動を付加する振動モードとの切替を行う振動モード切替ハンドルとを備えた振動ドリルドライバーであって、
軸方向に並ぶ上記トルク調整ハンドルと上記振動モード切替ハンドルの間に軸方向移動が自在な係合リングを備えており、
上記係合リングと上記トルク調整ハンドルとはトルク調整ハンドルがトルク調整モード位置にある時に係合リングを振動モード切換ハンドル側に移動させるとともにトルク調整ハンドルがドリルモード位置にある時に係合リングのトルク調整ハンドル側への移動を許して互いに係合自在となる凹凸係合部を備え、
上記係合リングと上記振動モード切換ハンドルとは振動モード切換ハンドルが振動モード位置にある時に係合リングをトルク調整ハンドル側に移動させるとともに振動モード切換ハンドルが非振動モード位置にある時に係合リングの振動モード切換ハンドル側への移動を許して互いに係合自在となる凹凸係合部を備えて、
上記係合リングは上記トルク調整ハンドルがドリルモード位置にあり且つ振動モード切換ハンドルが非振動モード位置にある時のみ、上記軸方向移動が可能であり、
上記係合リングと上記トルク調整ハンドルとの凹凸係合部は、振動モード切換ハンドルが振動モード位置にある時に互いの係合でトルク調整ハンドルの回転を不能とし、
上記係合リングと上記振動モード切換ハンドルとの凹凸係合部は、トルク調整ハンドルが締め付けトルク調整モード位置にある時に互いの係合で振動モード切替ハンドルの回転を不能とするものであることを特徴とする振動ドリルドライバ。 - トルク調整ハンドルのドリルモード位置からトルク調整モード位置への切り替えに際して振動モード切替ハンドルを振動モード位置から非振動モード位置に連動回転させる連動手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の振動ドリルドライバ。
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