JP4161209B2 - 内燃機関の可変動弁装置 - Google Patents

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Description

本発明は内燃機関(以下、エンジンという)の可変動弁装置に関するものである。
運転領域に応じた最適なエンジン出力特性を実現するために、吸排気弁の開弁期間やリフト量の切換等を行う可変動弁装置を備えた種々のエンジンが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載されたエンジンの可変動弁装置では、自由ロッカアームと一対の吸気弁に連係された第1及び第2駆動ロッカアームとを吸気ロッカシャフトに支承し、第1駆動ロッカアームを低速カムにより揺動し、自由ロッカアームを高速カムにより揺動し、第2駆動ロッカアームをカムのベース円に相当する隆起部上に当接させている。各ロッカアーム内には油圧により摺動するピンを設け、ピンの摺動位置に応じて各ロッカアームを連係・解除し得るように構成している。
ピンによる連係の解除時には、自由ロッカアームを空振りさせながら第1駆動ロッカアームが低速カムの形状に倣って一方の吸気弁を開閉駆動すると共に、第2駆動ロッカアームは揺動することなく他方の吸気弁を閉弁状態に保持し、一方、ピンによる連係時には、自由ロッカアームと一体で第1及び第2駆動ロッカアームを揺動させて高速カムの形状に倣って両吸気弁を開閉駆動する。
このように構成された可変動弁装置では、連係解除時の自由ロッカアームが吸気弁のバルブスプリングの反力を得られずに高速カム上から離間してしまうことから、その対策として自由ロッカアームを高速カム上に付勢するロストモーション機構が備えられる。上記特許文献1に記載のものでは、カムシャフト及びロッカシャフトを支持している各ホルダの上部を気筒列設方向に架設した支持板で連結し、この支持板により自由ロッカアームの直上でロストモーション機構を支持している。
登録実用新案第2517078号公報(図1,2)
上記特許文献1に記載された可変動弁装置では、ロストモーション機構を支持すべく別部材として支持板を用いているため、部品点数の増加に伴って製造コストが高騰する上に、エンジンの重量を増加させる要因となっていた。
即ち、当該支持板は気筒列設方向のほぼ全体に亘って架設されて大きな面積を有する上に、特許文献1の図1から明らかなように所謂梁として各ホルダ間の略中間位置(つまり、ホルダとの連結箇所から離間した位置)でロストモーション機構を支持することから、ロストモーション機構に作用する反力に抗するために高い強度や剛性が要求される。これらの要因により必然的に支持板の重量が増加してしまい、ひいてはエンジンの重量を増加させてしまうのである。
本発明の目的は、別部材を用いることなくロストモーション機構を設置して、別部材に追加に伴う製造コストの高騰やエンジンの重量増加等を未然に防止することができる内燃機関の可変動弁装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、請求項の発明は、シリンダヘッド上の各気筒間にそれぞれ立設されてカムシャフトを回転自在に支承し、上面に配設された吸気及び排気ロッカシャフトをキャップにより固定した複数のホルダと、各ホルダにより区画された各気筒において吸気又は排気ロッカシャフトに揺動自在に支承され、それぞれ内端側に設けられた操作部をカムシャフトの第1吸気カム又は第1排気カム上に当接させる一方、外端側を吸気弁又は排気弁と連係させた第1の吸気ロッカアーム及び第1の排気ロッカアームと、各気筒において第1の吸気ロッカアーム又は第1の排気ロッカアームに対して相互に逆側に隣接して配置されて、吸気又は排気ロッカシャフトに揺動自在に支承され、それぞれ内端側に操作部が設けられた第2の吸気ロッカアーム及び第2の排気ロッカアームと、第2の吸気ロッカアーム又は第2の排気ロッカアームを付勢して、それぞれの操作部をカムシャフトの第1吸気カムとはカム形状が異なる第2吸気カム上、又は第1排気カムとはカム形状が異なる第2排気カム上に当接させる吸気側及び排気側付勢手段と、第1及び第2の吸気ロッカアームの連係の有無、又は第1及び第2の排気ロッカアームの連係の有無を切換える吸気側及び排気側切換機構とを備え、隣接する気筒の吸気側及び排気側付勢手段は、両気筒間に位置するホルダ上の共通のキャップの両側に一体的に組付けられて、対応する第2の吸気ロッカアーム又は第2の排気ロッカアームの上方に支持されたものである。
従って、内燃機関の運転中には、カムシャフトの回転に伴って吸排気の各ロッカアームが対応するカムにより操作部を介して揺動操作される。ここで、吸気側切換機構により第1及び第2の吸気ロッカアームの連係が解除されているときには、第2の吸気ロッカアームを単独で空振りさせながら第1の吸気ロッカアームは第1吸気カムの形状に倣って揺動して吸気弁を開閉駆動する。又、この状態から吸気側切換機構により第1及び第2の吸気ロッカアームが連係されると、第1の吸気ロッカアームは第2の吸気ロッカアームと共に第2吸気カムの形状に倣って揺動して吸気弁を開閉駆動する。
排気側も同様であり、排気側切換機構により第1及び第2の排気ロッカアームの連係が解除されているときには、第1の排気ロッカアームが第1排気カムの形状に倣って揺動して排気弁を開閉駆動し、第1及び第2の排気ロッカアームが連係されると、第1の排気ロッカアームが第2の排気ロッカアームと共に第2排気カムの形状に倣って揺動して排気弁を開閉駆動する。
連係解除時において吸気側及び排気側付勢手段は第2の吸気ロッカアームや第2の排気ロッカアームを付勢して、操作部を第2吸気カムや第2排気カム上に当接させる役割を果たしている。そして、当該吸気側及び排気側付勢手段は各ホルダ上のキャップに一体的に組付けられ、各キャップはホルダと協調してロッカシャフトを固定する既存のものであるため、新たな部材を追加することなく付勢手段を設置可能となり、結果として部品点数及び重量の増加が抑制される。
又、各ホルダにより区画された各気筒において、吸排気の第1のロッカアームに対する第2のロッカアームの隣接方向が逆であることから、吸排気の第2のロッカアームは各気筒の前側及び後側に位置して前後のキャップとそれぞれ隣接する。よって、キャップを主体として換言すれば、隣接する気筒の第2吸気ロッカアームと第2排気ロッカアームとがキャップを挟んで配置されることになり、このような配置状態の結果、これらのロッカアーム用の吸気側及び排気側付勢手段を共通のキャップ(隣接する気筒間に位置するキャップ)を利用して支持可能となる。従って、吸排気の各第2のロッカアーム毎に個別にキャップを設けた場合より更に部品点数が減少される。
しかも、吸排気の全ての第2のロッカアームは何れかのキャップと必ず隣接するため、各キャップから付勢手段を前後に僅かに張出すだけで第2のロッカアーム上に支持可能となり、付勢手段に作用する反力(付勢手段自体の付勢による反力やカムリフトに起因する反力)に対して各キャップが極めて近接位置で抗することになる。従って、吸気側及び排気側付勢手段を支持するためにキャップの強度や剛性を特に向上させる必要がなくなり、キャップの重量増加が抑制される。
求項の発明は、請求項において、キャップが、吸気又は排気ロッカシャフトの一方の軸方向において、所定間隔をおいて一対の締結手段によりホルダ上に固定されると共に、吸気又は排気ロッカシャフトの他方において、単一の締結手段によりホルダ上に固定されたものである。
従って、付勢手段に作用する反力によりキャップは前部又は後部を押し上げられるが、吸気又は排気ロッカシャフトの一方では軸方向に所定間隔をおいて一対の締結手段でキャップがホルダ上に固定されているため、反力が作用してもキャップの倒れが効果的に抑制され、付勢手段がロッカアームを常に確実に付勢可能となる。
請求項3の発明は、請求項1又は2において、吸気側及び排気側付勢手段が、キャップに一体成型されたシリンダ部内に設けられ、シリンダ部の外周に、キャップに対するシリンダ部の倒れを抑制するためのリブが吸気又は排気ロッカシャフトの軸方向に延びるように一体形成されたものである。
以上説明したように請求項1の発明の内燃機関の可変動弁装置によれば、別部材を用いることなく付勢手段を設置して、別部材に追加に伴う製造コストの高騰やエンジンの重量増加等を未然に防止することができる。
請求項2,3の発明の内燃機関の可変動弁装置によれば、請求項1に加えて、付勢手段に作用する反力によるキャップの倒れを抑制して、付勢手段によりロッカアームの操作部を対応するカム上に確実に当接させることができ、ひいては装置の信頼性を向上させることができる。
以下、本発明を具体化したエンジンの可変動弁装置の一実施形態を説明する。
図1は本実施形態のエンジンの可変動弁装置を示す平面図、図2は同じく可変動弁装置を示す図1のA−A線断面図、図3はロストモーション機構の構成を示す図1のB−B線断面図、図4はロッカシャフトの取付状態を示す図1のC−C線断面図である。ここで、図1において左方がエンジンの前側に相当し、右方がエンジンの後側に相当し、以下、前後方向についてはエンジンを基準として説明し、左右方向についてはエンジンを前側から見たとき(つまり、図3,4の左右方向)を基準として説明する。尚、エンジン配置は、このような縦置きエンジンに限定されるものではなく、横置きエンジンであってもよい。
本実施形態のエンジンは気筒当たり4弁を有するSOHC型の直列4気筒ガソリン機関として構成されており、単一のカムシャフトにより吸排気弁を開閉駆動している。図2,4に示すようにシリンダヘッド(図示なし)上の各気筒間と#1気筒の前側及び#4気筒の後側にはそれぞれホルダ1が立設され、各ホルダ1に形成されたカム孔1a内には前後方向に配設されたカムシャフト2が挿通されて、カムシャフト2の各ジャーナル部2aがカム孔1a内に回転自在に支承されている。各ホルダ1により区画された各気筒において、カムシャフト2上にはエンジン前側より吸気高速カム3(第2カム、第2吸気カム)、吸気低速カム4(第1カム、第1吸気カム)、排気低速カム5(第1カム、第1排気カム)、排気高速カム6(第2カム、第2排気カム)が相互に隣接して形成されている。
各ホルダ1の上面にはカムシャフト2を中心として右側に吸気ロッカシャフト7が配設され、左側に排気ロッカシャフト8が配設され、これらのロッカシャフト7,8はカムシャフト2と平行にエンジンの前後方向に延びている。各ホルダ1上にはそれぞれキャップ9〜11が配設され、各キャップ9〜11は下面を吸排気のロッカシャフト7,8上に当接させている。図1,2に示すように、各キャップ9〜11の種別はエンジンの前後方向において相違しており、以下の説明では、#1気筒の前側のキャップを前側キャップ9、気筒間(つまり、#1−#2気筒間、#2−3気筒間、#3−#4気筒間)のキャップを中間キャップ10、#4気筒の後側のキャップを後側キャップ11と区別して呼称する。
各ホルダ1の上面には吸気ロッカシャフト7と対応する1箇所、及び排気ロッカシャフト8と対応する2箇所にねじ孔1bがそれぞれ形成され、これらのねじ孔1bにはロッカシャフト7,8のボルト孔7a,8a及びキャップ9〜11のボルト孔9a〜11aを介して上方よりボルト12(締結手段)が螺合し、これにより吸排気のロッカシャフト7,8がホルダ1とキャップ9〜11との間に挟持された状態で固定されている。ここで、各ホルダ1及びキャップ9〜11の排気側は吸気側に比較して前後幅が広く設定されると共に、排気ロッカシャフト8を固定している一対のボルト12が前後方向に所定寸法だけ離間している。結果としてこれらの前後一対のボルト12により各キャップ9〜11の前後方向への倒れが効果的に抑制されている。
以下、各気筒に設けられた動弁装置を説明するが、これらの動弁装置自体の構成は各気筒共通であるため、#1気筒を例に挙げて説明する。
図1,2に示すようにホルダ1により区画された#1気筒の区間内において、吸気ロッカシャフト7の前側には吸気高速ロッカアーム13(第2のロッカアーム、第2の吸気ロッカアーム)のボス部13aが配設され、吸気ロッカシャフト7の後側には吸気低速ロッカアーム14(第1のロッカアーム、第1の吸気ロッカアーム)のボス部14aが配設され、両ロッカアーム13,14は相互に隣接した状態でそれぞれ吸気ロッカシャフト7に揺動自在に支承されている。これらのロッカアーム13,14のボス部13a,14aからは左方(一端側、内端側)に向けてローラ13c,14c(操作部)を支持したローラ支持部13b,14bが突設され、吸気高速ロッカアーム13のローラ13cはカムシャフト2上の吸気高速カム3と対応し、吸気低速ロッカアーム14のローラ14cは吸気低速カム4と対応している。
吸気低速ロッカアーム14のボス部14aからは2本のバルブアーム部14dが右方(他端側、外端側)に向けて延設され、これらのバルブアーム部14dの先端はそれぞれシリンダヘッド上に前後に配置された一対の吸気弁15と連係している。両バルブアーム部14dの基端(ボス部14a側)は相互に離間し、両バルブアーム部14d間に形成された間隙には点火プラグ16が配置されている。
そして、吸気弁15に設けられた図示しないバルブスプリングの付勢力を受けて吸気低速ロッカアーム14はローラ14cを吸気低速カム4上に常に当接させて、吸気低速カム4の形状に倣って揺動して吸気弁15を開閉駆動する。又、吸気高速ロッカアーム13は後述するロストモーション機構17(付勢手段、吸気側付勢手段、排気側付勢手段)の付勢力を受けてローラ13cを吸気高速カム3上に常に当接させている。
吸気高速ロッカアーム13と吸気低速ロッカアーム14との間には運転モードを切換えるための切換機構M(吸気側切換機構)が設けられている。図5はロッカアームの連係解除時の切換機構Mを示す図1のD−D線に相当する断面図、図6はロッカアームの連係時の切換機構Mを示す図1のD−D線に相当する断面図である。これらの図に示すように、吸気高速ロッカアーム13のボス部13a上には円筒状のシリンダ部21が一体的に形成され、シリンダ部21内に形成されたシリンダ22の上端は閉塞され、シリンダ22の下端は吸気ロッカシャフト7の外周面に対して開口している。シリンダ22内にはピストン23が配設され、ピストン23は図示しない規制ピンによりシリンダ22の軸線を中心とした回転を規制された状態でシリンダ22内を上下方向に摺動し得る。
シリンダ22内の上壁及びピストン23の上面には相対向するように凹部22a,23aが形成され、凹部22a,23a間には圧縮スプリング24が介装されている。圧縮スプリング24の付勢力によりピストン23は常に下方に付勢されて、その下面を吸気ロッカシャフト7の外周面に当接させた図5に示す下方位置に保持される一方、圧縮スプリング24の付勢力に抗してシリンダ22内でピストン23が上方に摺動すると、ピストン23は上面をシリンダ22内の上壁に当接させた図6示す上方位置に切換えられる。シリンダ部21の右側面には操作窓25が形成され、図5に示すピストン23の下方位置では、操作窓25を介してシリンダ22内が外方に向けて露出し、図6に示すピストン23の上方位置では、操作窓25を介してピストン23の外周面が外方に向けて露出する。
図1に示すように、吸気低速ロッカアーム14上の一側からは連動アーム部26が前方に延設され、連動アーム部26の先端は吸気高速ロッカアーム13のシリンダ部21の操作窓25と対応して上方位置のピストン23の外周面に当接可能となっている。吸気高速カム3及び吸気低速カム4のベース円区間(吸気高速ロッカアーム13及び吸気低速ロッカアーム14のリフト量が共に0の区間)において、図5に2点鎖線で示すように、連動アーム部16の先端が操作窓25からシリンダ22内に挿入される直前となるように、シリンダ部21と連動アーム部26との相互の位置関係が設定されている。
一方、以上の吸気側の構成に対して排気側の動弁装置は全体として前後及び左右対称に配置されているだけで、その構成自体は略同一である。概要を述べると、排気ロッカシャフト8の前側に支承された排気低速ロッカアーム27(第1のロッカアーム、第1の排気ロッカアーム)がシリンダヘッド上の一対の排気弁29と連係しながらカムシャフト2の排気低速カム5により揺動され、排気ロッカシャフト8の後側に支承された排気高速ロッカアーム28(第2のロッカアーム、第2の排気ロッカアーム)が排気高速カム6により揺動され、両ロッカアーム27,28は吸気側と同一構成の切換機構M(排気側切換機構)により連係・解除される。
次に、吸排気の高速ロッカアーム13,28を高速カム3,6上に付勢するロストモーション機構17について述べる。
上記のように吸排気の動弁装置が前後及び左右対称に配置されていることから、図1に示すように各気筒において吸気高速ロッカアーム13は動弁装置の前側に位置して直前のキャップ、つまり前側キャップ9或いは中間キャップ10と隣接し、排気高速ロッカアーム28は動弁装置の後側に位置して直後のキャップ、つまり中間キャップ10或いは後側キャップ11と隣接している。そこで、本実施形態では、各高速ロッカアーム13,28のロストモーション機構17を隣接するキャップ9〜11を利用して支持しており、以下、#1気筒を例に挙げて説明する。
#1気筒の前側には上記前側キャップ9が位置し、#1気筒の後側には中間キャップ10が位置しているため、これらのキャップ9,10がロストモーション機構17の支持に利用されている。図1〜3に示すように、前側キャップ9上にはロストモーション機構17の円筒状をなすシリンダ部31が一体的に形成され、このシリンダ部31は前側キャップ9上から後方に張出して吸気高速ロッカアーム13上に位置している。シリンダ部31には下方に開口するシリンダ32が形成され、シリンダ32内には上方に開口する有底円筒状のピストン33が上下方向に摺動可能に配設されている。尚、シリンダ部31の外周には前側キャップ9に対するシリンダ部31の倒れを抑制するためのリブ31aが適宜形成される一方、シリンダ部31の上面にはピストン33の摺動に伴ってシリンダ32内のエアを吸排するためのエア抜き孔31bが形成されている。
シリンダ32内の上壁とピストン33の内面との間には圧縮スプリング34が介装され、この圧縮スプリング34の付勢力によりピストン33は常に下方に付勢されている。ピストン33の外周面には段差部33aが形成され、この段差部33aと対応するようにシリンダ22の内周にはスナップリング35が介装され、ピストン33は段差部33aをスナップリング35に係合させてシリンダ32内から下方への離脱を防止されている。
吸気高速ロッカアーム13のローラ支持部13b上には略三角状をなす押圧部13dが一体形成され、この押圧部13d上に上記ロストモーション機構17のピストン33の先端が当接している。その結果、吸気高速ロッカアーム13はロストモーション機構17から圧縮スプリング34の付勢力を受けて常に開弁方向(図3の反時計回り)に付勢され、そのローラ13cを吸気高速カム3上に当接させている。
一方、図2に示すように、中間キャップ10上には前側の#1気筒の排気高速ロッカアーム28上に張出すようにロストモーション機構17が設けられている。当該ロストモーション機構17は図3に示した吸気側のものと同一構成のため重複する説明は省略するが、ピストン33により排気高速ロッカアーム28に形成された押圧部28dを付勢して、そのローラ28cを排気高速カム6上に当接させている。
このように#1気筒の吸排気の高速ロッカアーム13,28に対応して前側キャップ9及び中間キャップ10によりロストモーション機構17がそれぞれ支持されているが、中間キャップ10は#1気筒の動弁装置の後側に位置すると共に#2気筒の動弁装置の前側でもあるため、#2気筒の吸気高速ロッカアーム13用のロストモーション機構17も支持している。当該ロストモーション機構17は、上記した前側キャップ9と同様に中間キャップ10から後方に張出すように設けられ、ピストン33により#2気筒の吸気高速ロッカアーム13の押圧部13dを付勢して、そのローラ13cを吸気高速カム3上に当接させている。尚、以上の中間キャップ10と動弁装置との関係は、#2−3気筒間及び#3−#4気筒間の中間キャップ10に関しても全く同様である。
一方、上記後側キャップ11は前側に#4気筒の排気高速ロッカアーム28が位置しているだけのため、後側キャップ11上から前方に張出すようにロストモーション機構17が設けられ、ピストン33により#4気筒の排気高速ロッカアーム18の押圧部28dを付勢して、そのローラ28cを排気高速カム6上に当接させている。
尚、前側キャップ9と同じく、中間キャップ10及び後側キャップ11にもシリンダ部31の倒れを抑制するためのリブ31aが適宜形成されている。
又、図1に示すように、後側キャップ11上には左右方向に延びるようにオイル導入路41が形成され、オイル導入路41の右端は外方に開口して図示しないOCV(オイルコントロールバルブ)と接続されている。オイル導入路41の中間部及び左端は、それぞれ第1分配路42を介して吸気及び排気ロッカシャフト7,8内に軸方向に形成されたオイル案内路43と連通し、図5,6に示すように、両オイル案内路43は各気筒の吸排気の高速ロッカアーム13,28の箇所において第2分配路44を介して切換機構Mのシリンダ22内と連通している。OCVはエンジンに備えられた潤滑用オイルポンプと接続され、OCVの切換に応じてオイルポンプからのオイルが切換機構M用の作動オイルとしてオイル導入路41、第1分配路42、オイル案内路43、第2分配路44を経て各気筒のシリンダ22内に供給される。
次に、以上のように構成されたエンジンの可変動弁装置の作動状況を説明する。
OCVの切換制御は図示しないECU(エンジン制御ユニット)により行われ、このOCVの切換に応じてエンジンの運転モードが低速モードと高速モードとの間で切換えられる。
例えば、エンジン回転速度Neが閾値Ne0未満でエンジンへの出力要求がそれほど高くない回転域では、ECUは低速モードを実行すべくOCVを閉弁側に切換えてオイル導入路41へのオイル供給を中止する。その結果、各気筒の吸排気の高速ロッカアーム13,28では、図5に示すように圧縮スプリング24の付勢力によりピストン23が下方位置に保持され、操作窓25を介してシリンダ22内が外方に向けて露出する。
一方、エンジンの運転中には、カムシャフト2の回転に伴って吸排気の低速及び高速ロッカアーム13,14,27,28は対応するカム3〜6上でローラ13c,14c,27c,28cを転動させながらそれぞれのカム形状に倣って揺動している。ここで、低速カム4,5に対して高速カム3,6は作動角が広く且つリフト量が大きいため、低速ロッカアーム24,27に比較して高速ロッカアーム13,28が大きく揺動するが、上記のように切換機構Mのピストン23が下方位置にあるため、高速ロッカアーム13,28は、操作窓25を介してシリンダ22内に低速ロッカアーム14,27の連動アーム部26の先端を挿脱させながら単独で空振りする。つまり、このときには低速ロッカアーム14,27と高速ロッカアーム13,28との連係が解除され、低速ロッカアーム14,27は低速カム4,5の形状に倣って揺動して吸排気弁15,29を開閉駆動する。
又、エンジン回転速度Neが閾値Ne0以上で特にエンジンへの出力要求が高い回転域では、ECUは高速モードを実行すべくOCVを開弁側に切換えてオイル導入路41への作動オイル供給を行う。その結果、各気筒の吸排気の高速ロッカアーム13,28では、図6に示すように圧縮スプリング24の付勢力に抗して油圧によりピストン23が上方位置に切換えられ、操作窓25を介してピストン23の外周面が露出する。高速ロッカアーム13,28の揺動に伴って操作窓25を介してピストン23の外周面により低速ロッカアーム14,27の連動アーム部26の先端が押圧され、これにより低速ロッカアーム14,27は高速ロッカアーム13,28に対して連係されて高速ロッカアーム13,28と共に揺動し、高速カム3,6の形状に倣って吸排気弁15,29を開閉駆動する。
そして、低速モード時においてロストモーション機構17は吸排気の高速ロッカアーム13,28を付勢して高速カム3,6上にローラ13a,28aを当接させる役割を果たしているが、本実施形態では当該ロストモーション機構17を各気筒間のホルダ1上に設けられたキャップ9〜11を用いて支持している。つまり、各ホルダを支持板により連結してロストモーション機構を支持する登録実用新案第2517078号公報の先行技術のように別部材として支持板を必要とせず、且つ、各キャップ9〜11はホルダ1と協調して吸排気のロッカシャフト7,8を固定する既存のものであるため、新たな部材を追加することなくロストモーション機構17を設置できる。その結果、部品点数の増加を抑制して製造コストの高騰を未然に防止できると共に、重量物である支持板を省略することでエンジン重量の増加を未然に防止することができる。
又、吸排気の動弁装置を前後及び左右対称に配置しているため、各気筒において吸排気の高速ロッカアーム13,28は動弁装置の前側及び後側に位置して前後のキャップ9〜11と隣接する。ここで、中間キャップ10を主体として換言すれば、隣接する気筒の吸気高速ロッカアーム13と排気高速ロッカアーム28とが中間キャップ10を挟んで配置されることになり、このような配置状態の結果、共通の中間キャップ10を利用して双方の高速ロッカアーム13,28用のロストモーション機構17を支持可能としている。従って、各高速ロッカアーム13,28毎に個別にキャップを設けた場合より更に部品点数を減少でき、製造コストを一層低減することができる。
しかも、吸排気の全ての高速ロッカアーム13,28は何れかのキャップ9〜11と必ず隣接するため、各キャップ9〜11からロストモーション機構17を前後に僅かに張出すだけで高速ロッカアーム13,28上に支持できる。つまり、ロストモーション機構17に作用する反力(圧縮スプリング34の反力や高速カム3,6のリフトに起因する反力)に対して各キャップ9〜11は極めて近接位置で抗することになり、例えば各ホルダ間の略中間位置でロストモーション機構の反力に抗する先行技術の支持板に比較して力学的に有利となる。結果としてロストモーション機構17を支持するためにキャップ9〜11の強度や剛性を特に向上させる必要がなくなり、この点もキャップ9〜11の重量増加、ひいてはエンジン重量の増加を抑制できる要因となる。
一方、ロストモーション機構17に作用する反力によりキャップ9〜11は前部又は後部を押し上げられるが、上記のように各キャップ9〜11の排気ロッカシャフト8側が前後一対のボルト12によりホルダ1に対して固定されているため、反力が作用してもキャップ9〜11の前後方向への倒れが効果的に抑制される。よって、ロストモーション機構17により高速ロッカアーム13,28を常に確実に付勢でき、ひいては可変動弁装置の信頼性を向上させることができる。
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では2弁式のSOHC型エンジンに適用したが、これに限ることはなく、例えば吸排気弁を個別にカムシャフトで駆動する所謂DOHC型エンジンに適用してもよい。
又、上記実施形態では、ピストン23により連動アーム部26を押圧することでロッカアーム13,14,27,28を連係させる切換機構Mを備えたが、切換機構Mの構成はこれに限ることはなく、例えば先行技術として挙げた登録実用新案第2517078号公報のように、高速及び低速ロッカーム13,14,27,28内にロッカシャフト7,8の軸方向に摺動可能なピストンを設け、そのピストン位置に応じて両ロッカアーム13,14,27,28を連係・解除するように構成してもよい。この場合でも高速ロッカアーム13,28を付勢するためのロストモーション機構17が必要となるため、上記実施形態と同じくキャップ9〜11を利用してロストモーション機構17を支持することで同様の作用効果を得ることができる。
更に、上記実施形態では吸排気共に可変動弁装置を設けたが、吸排気の何れか一方のみを可変動弁装置として構成し、他方を切換機構Mを備えない一般的な動弁装置としてもよい。この場合でも可変動弁機構として構成した側では高速ロッカアーム13,28用のロストモーション機構17がキャップ9〜11により支持されるため、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
一方、上記実施形態では、吸排気の動弁装置を前後及び左右対称に配置することにより、隣接する気筒の吸気高速ロッカアーム13と排気高速ロッカアーム28とのロストモーション機構17を共通の中間キャップ10により支持したが、必ずしも中間キャップ10を共用する必要はないし、上記動弁装置のレイアウトに限定されることもない。よって、隣接する気筒の吸気高速ロッカアーム13と排気高速ロッカアーム28とのロストモーション機構17を異なるキャップにより個別に支持したり、各気筒内で高速ロッカアーム13,28と低速ロッカアーム14,27とを吸排気で同じ前後関係としてもよい。
実施形態のエンジンの可変動弁装置を示す平面図である。 同じく可変動弁装置を示す図1のA−A線断面図である。 ロストモーション機構の構成を示す図1のB−B線断面図である。 ロッカシャフトの取付状態を示す図1のC−C線断面図である。 ロッカアームの連係解除時の切換機構を示す図1のD−D線に相当する断面図である。 ロッカアームの連係時の切換機構を示す図1のD−D線に相当する断面図である。
符号の説明
1 ホルダ
2 カムシャフト
3 吸気高速カム(第2カム、第2吸気カム)
4 吸気低速カム(第1カム、第1吸気カム)
5 排気高速カム(第1カム、第1排気カム)
6 排気低速カム(第2カム、第2排気カム)
7 吸気ロッカシャフト
8 排気ロッカシャフト
9 前側キャップ
10 中間キャップ
11 後側キャップ
12 ボルト(締結手段)
13 吸気高速ロッカアーム(第2のロッカアーム、第2の吸気ロッカアーム)
13c,14c,27c,28c ローラ(操作部)
14 吸気低速ロッカアーム(第1のロッカアーム、第1の吸気ロッカアーム)
15 吸気弁
27 排気低速ロッカアーム(第1のロッカアーム、第1の排気ロッカアーム)
28 排気高速ロッカアーム(第2のロッカアーム、第2の排気ロッカアーム)
29 排気弁
M 切換機構(吸気側切換機構、排気側切換機構)

Claims (3)

  1. シリンダヘッド上の各気筒間にそれぞれ立設されてカムシャフトを回転自在に支承し、上面に配設された吸気及び排気ロッカシャフトをキャップにより固定した複数のホルダと、
    前記各ホルダにより区画された各気筒において前記吸気又は排気ロッカシャフトに揺動自在に支承され、それぞれ内端側に設けられた操作部を前記カムシャフトの第1吸気カム又は第1排気カム上に当接させる一方、外端側を吸気弁又は排気弁と連係させた第1の吸気ロッカアーム及び第1の排気ロッカアームと、
    前記各気筒において前記第1の吸気ロッカアーム又は第1の排気ロッカアームに対して相互に逆側に隣接して配置されて、前記吸気又は排気ロッカシャフトに揺動自在に支承され、それぞれ内端側に操作部が設けられた第2の吸気ロッカアーム及び第2の排気ロッカアームと、
    前記第2の吸気ロッカアーム又は第2の排気ロッカアームを付勢して、それぞれの操作部を前記カムシャフトの前記第1吸気カムとはカム形状が異なる第2吸気カム上、又は第1排気カムとはカム形状が異なる第2排気カム上に当接させる吸気側及び排気側付勢手段と、
    前記第1及び第2の吸気ロッカアームの連係の有無、又は前記第1及び第2の排気ロッカアームの連係の有無を切換える吸気側及び排気側切換機構と
    を備え、
    隣接する気筒の前記吸気側及び排気側付勢手段は、両気筒間に位置するホルダ上の共通のキャップの両側に一体的に組付けられて、対応する前記第2の吸気ロッカアーム又は前記第2の排気ロッカアームの上方に支持されたことを特徴とする内燃機関の可変動弁装置。
  2. 前記キャップは、前記吸気又は排気ロッカシャフトの一方の軸方向において、所定間隔をおいて一対の締結手段により前記ホルダ上に固定されると共に、前記吸気又は排気ロッカシャフトの他方において、単一の締結手段により前記ホルダ上に固定されたことを特徴とする請求項記載の内燃機関の可変動弁装置。
  3. 前記吸気側及び排気側付勢手段は、前記キャップに一体成型されたシリンダ部内に設けられ、
    前記シリンダ部の外周に、前記キャップに対する前記シリンダ部の倒れを抑制するためのリブが前記吸気又は排気ロッカシャフトの軸方向に延びるように一体形成されたことを特徴とする請求項1又は2記載の内燃機関の可変動弁装置。
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