JP4159886B2 - 反射体及び液晶表示装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、反射体および反射型液晶表示装置に係わり、特に反射光を特定の視角から観察したとき、他の視角より明るく見えるような反射特性を有する反射体およびこの反射体を用いた反射型液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
反射型液晶表示装置は、照明を外光に依存したり、フロントライトを用いて視認するものであり、携帯型コンピュータ、電算機、デジタル時計、通信機器、ゲーム機、計測器、電子掲示板などの電子機器の表示部として広く用いられている。
反射型液晶表示装置は、一例を図12に示すように、液晶層230を挟んで光透過性の表示側基板220と光反射性の反射側基板210とが対向配置されて概略構成されている。表示側基板220の外側面が表示面とされ、また反射側基板210には反射層212が形成されている。この反射型液晶表示装置において、表示面から入射した光は表示側基板220および液晶層230を透過して反射側基板210の反射層212によって反射され、その反射光が再び液晶層230を透過して表示面から出射することにより画像が視認される。
【0003】
図12において反射側基板210は下層から順に、ガラス基板211、反射層212、介在層213、カラーフィルタ層214、平坦化層215、ITO(Indium Tin Oxide)膜またはネサ膜などからなる透明電極216、および配向層217が積層され、また液晶層230を挟んで表示面側に対向配置される表示側基板220は、液晶層230の側から順に配向層221、絶縁層222、ITO膜またはネサ膜などからなる透明電極223、ガラス基板224、および光学変調層(偏光板、位相差板など)225が積層されてなっている。
【0004】
反射側基板210の反射層212は、大別して平滑反射型と拡散反射型とに分類できる。平滑反射型は、反射層212の反射面が平滑に仕上げられていて、表示面に垂直な法線を挟む光の入射角(絶対値)と出射角(絶対値)とが等しくなっている。従ってこの表示面を観察するとき、光源と視点との位置関係から表示面の明るさにムラが生じ、また光源や観察者の顔が映り込んで視認性を低下させるという問題が起こる。
この問題を解決するために拡散反射型では、図13に示すように、反射層212の反射面に多数の微細な凹凸(図13では凹部231…)が不規則に隣接して形成されている。このために拡散反射型では一定角度で入射した外光がこの反射層12の表面で乱反射して反射光が拡散し、視点を移動しても明るさがあまり変わらず、映り込みも少ない、いわゆる広視野角の反射型液晶表示装置が得られる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、卓上電算機や携帯式コンピュータなどの電子機器は、例えば卓上電算機の例を図14Aに、また携帯式コンピュータの例を図14Bに示すように、観察者が実際に液晶表示装置の表示面を目視する際に表示面を斜め下方から観察する場合が多い。すなわち観察者の視点Obは、表示面に垂直な法線Xに対して角θだけ表示面の下方に傾斜している。
【0006】
一方、反射型液晶表示装置においては、照明を外光に依存する場合が多く、その外光は偏光板などの光学変調層225や、2層の透明電極216,223、液晶層230、カラーフィルタ層214、その他の層を往復して通過する間に大幅に減衰し、しかも拡散反射型では反射層212によって入射光が広範囲に拡散されるので、観察する視点Obにおける表示画面は一般に相当に暗くなっている。このため外光が少ないと視認性が大幅に低下する。特に従来の反射型液晶表示装置では、できるだけ視角による明るさの変動を排除するように凹部の形状と配置とが設計されているので、法線Zに対して斜め下方という特定の視角範囲から観察する場合には十分な明るさが得られないという問題があった。また、フロントライトを用いる場合にも、外光と同様に、減衰や拡散の問題があるので、照明用の消費電力を徒に増加させることなく、特定視覚範囲の充分な明るさを確保することは、難しかった。
【0007】
そこで、広い視角範囲で映り込みを抑制しながら、しかも特定の視角範囲において表示画面が特に明るく観察できるような反射型液晶表示装置が求められていた。
本発明は前記の課題を解決するためになされたものであって、広い視角範囲で映り込みを抑制する光拡散性を有しながら、しかも特定の視角範囲において特に明るく見えるような反射体、およびこの反射体を用いた反射型液晶表示装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
本発明の反射体は、基材の表面に光反射性を有する複数の凹部が形成され、前記各凹部には、凹部の一周辺部側に位置する第1曲面と他周辺部側に位置する第2曲面とが形成されるとともに、前記第1曲面内に前記凹部の最深点が位置しており、前記第2曲面の基材表面に対する傾斜角の絶対値の最大値が、前記第1曲面の基材表面に対する傾斜角の絶対値の最大値より大きくされており、前記凹部の各々が該凹部の最深点を通過する以下の特定縦断面を有し、前記特定縦断面は、その内面の形状が、前記一周辺部から前記最深点を通過して前記第1、第2曲面の境界まで至る前記第1曲面を区画する第1区画線と、この第1区画線に連続し、前記第1、第2曲面の境界から前記の他周辺部まで至る前記第2曲面を区画する第2区画線とからなり、前記第2区画線の基材表面に対する傾斜角の絶対値の最大値が、前記第1区画線の基材表面に対する傾斜角の絶対値の最大値より大きくされており、前記第1区画線が凹曲線であり、前記第2区画線は曲率半径が略直線に近い凹曲線または直線であることを特徴とする。
【0009】
係る反射体によれば、基材の表面に光反射性を有する複数の凹部が形成され、これらの凹部が第1、第2曲面(凹面)から形成され、更に第1曲面内に前記凹部の最深点が位置しているので、光拡散性を向上させて明るい表示範囲を広く確保できると共に映り込みを抑制することができる。
【0011】
また、係る反射体によれば、特定縦断面において、第1区画線が最深点を通過してから第2区画線に接続され、更に第2区画線の傾斜が比較的急で、第1区画線の傾斜が比較的緩やかになっているので、第1区画線の方が、第2区画線よりも長くなる。このため、第1区画線側に入射する光が、第2区画線側に入射する光よりも多くなり、結果的に第1曲面による反射光量が多くなり、光拡散性を向上できる。
また、第2区画線の傾斜が比較的急なため、第2区画線側に入射した光が基材表面に対する入射角度よりも大きい角度で反射するので、通常の視角範囲よりも高角度側に反射率が高い領域ができる。
また、第2区画線を直線とした場合は、第2区画線に入射した光を特定の反射角度の方向に集中させることができ、低角度側の反射率を高めることができる。
また第2区画線を凹曲線とした場合は、第2区画線に入射した光を比較的広い範囲に拡散反射させることができ、低角度のみならず、高角度側への反射光量を増やすことができ、反射光の光拡散性を高めて広範囲で明るい表示特性を得ることができる。
【0012】
更に本発明の反射体は、先に記載の反射体であり、前記第1曲面内に、前記基材表面に対する傾斜角の絶対値の最大値が前記第1曲面と異なる第3曲面が形成されており、前記特定縦断面に、前記第1区画線を分断する前記第3曲面を区画する第3区画線が形成されており、前記第3区画線が凹曲線または直線であることを特徴とする。
【0013】
第1曲面内に第3曲面が形成されることで、第3曲面の傾斜角度に対応する方向への反射光量を増やすことができる。これにより、特定の反射角度における反射率を高めることができる。
【0016】
また、第3区画線を直線とした場合は、第3区画線に入射した光を特定の反射角度の方向に集中させることができ、特定範囲の反射率を高めることができる。
また第3区画線を凹曲線とした場合は、第3区画線に入射した光を比較的広い範囲に拡散反射させることができ、広範囲で明るい表示特性を得ることができる。
【0017】
また本発明の反射体では、前記複数の凹部が、各々の特定縦断面の方向が等しく、かつ、前記の各第2曲線が単一の方向に配向するように形成されていることが好ましい。
これにより、反射体全体として、第2区画線周辺の面である第2曲面で反射される方向の反射率が増加したものとなる。すなわち、特定の方向に向かう反射光を適度に集中させた反射特性とすることができる。
【0018】
また本発明の反射体では、前記第1区画線の基材表面に対する傾斜角の絶対値の最大値を4°〜35°の範囲内とすることが好ましい。
更に本発明の反射体では、前記第2区画線の基材表面に対する傾斜角の絶対値の最大値を5°〜90°の範囲内とすることが好ましい。
更にまた本発明の反射体では、前記第3区画線の基材表面に対する傾斜角の絶対値の最大値を5°〜20°の範囲内とすること好ましい。
【0019】
また本発明の反射体では、前記複数の凹部の深さが、0.1μm〜3μmの範囲内で不規則に形成されていることが好ましい。
凹部の深さが0.1μm未満では、光の散乱効果が不十分である。3μmを越えると、この深さを実現するための基材の厚さが過大となり、製造上も製品面でも不都合となる。複数の凹部の深さが不規則に形成されていると、凹部の深さが規則的に形成されている場合に起こりがちな光の干渉に起因するモアレ模様の発生が防止され、また特定視角における反射光量のピーク的な集中が緩和され、視界内の反射光量変化がなだらかになる。
【0020】
また前記複数の凹部は、互いに不規則に隣接して配置されていることが好ましい。
凹部の間隔が離れていると、凹部と凹部との間は平面になるので平面反射が増え、限られた画素領域内で十分な乱反射効果が得られなくなるので、凹部は互いに隣接して形成されていることが好ましい。また凹部が規則的に配列されているとモアレ模様が発生するので、凹部は不規則に配置することが好ましい。
【0021】
次に本発明の反射型液晶表示装置は、先のいずれかに記載の反射体が装着されたことを特徴とする。
また本発明の反射型液晶表示装置は、先に記載の反射型液晶表示装置であり、前記反射体が、前記複数の凹部の各々の特定縦断面の方向が等しく、各々の第1区画線が単一の方向に配向するように形成され、かつこの反射体が、それぞれの凹部における第1区画線が、観察者から見て第2区画線よりも下方に位置するように設けられたことを特徴とする。
【0022】
このように、全ての凹部の第1区画線が、観察者から見て第2区画線よりも下方に位置するように設けられていれば、通常、主として上方から入射する外光等を、観察者の足下方向よりも基材表面に対する法線方向にシフトさせることができる。
また、観察者から見て主として上方から入射する外光等が第2区画線周辺の面である第2曲面に効率的に入射するので反射光量が全体的に増加する。
このため、観察者の視線の方向に反射する光量が増加し、実用の視点において明るい画面の反射型液晶表示装置が実現する。
特に、携帯電話やノートパソコンの表示装置として使用した場合に、観察者の視線の方向に反射する光量が増加し、実用の視点において明るい面の反射型液晶表示装置が実現する。
【0023】
【発明の実施の形態】
[第1の実施形態]
次に本発明の第1の実施形態を図面を用いて具体的に説明するが、以下の実施形態は本発明を何ら制限するものではない。
図1は本実施形態の反射体を示す図である。図1に示すように、本実施形態の反射体1は、例えばアルミニウムからなる平板状の基材2の表面S(基準面)に多数の光反射性を有する凹部3a、3b、3c、…(一般に凹部3と称する)が互いに不規則に隣接して形成されている。
【0024】
これらの凹部3は、斜視図を図2に、また断面図を図3に示すように、凹部3の一周辺部S1側に位置する第1曲面A1と他周辺部S2側に位置する第2曲面B1とにより区画されてなるとともに、第1曲面A1内に凹部3の最深点D1が位置して形成されている。
また図3に示すように、凹部3の特定縦断面Xにおける内面形状は、一周辺部S1から最深点D1を通過して第1、第2曲面A1、B1の境界C1まで至る前記第1曲面A1を区画する第1区画線a1と、この第1区画線a1に連続し、第1、第2曲面A1、B1の境界C1から他周辺部S2まで至る第2曲面B1を区画する第2区画線b1とからなっている。これら第1,第2区画線a1、b1は、最深点D1よりも他周辺部S2寄りに位置する境界C1において相互につながっている。第1区画線a1と第2区画線b1は境界C1においてなだらかに連続している。また最深点D1は凹部3のほぼ中心Oに位置している。
【0025】
第1曲面A1は凹球面(凹曲面)であり、このため特定縦断面Xにおける第1区画線a1は第1曲面A1の形状を反映して凹曲線になっている。一方、第2曲面B1は単純な凹曲面であり、このため特定縦断面Xにおける第2区画線b1は第2曲面B1の形状を反映して直線になっている。
【0026】
尚、第1曲面A1の曲率半径は1〜120μm程度が好ましく、第2曲面B1の曲率半径は略直線が好ましい。
【0027】
第2区画線b1の基材表面Sに対する傾斜角は、第1区画線a1の傾斜角よりも急である。すなわち、第2区画線b1の基材表面Sに対する傾斜角の絶対値の最大値は、第1区画線a1の基材表面Sに対する傾斜角の絶対値の最大値より大きくなっている。
【0028】
また、第1区画線a1の基材表面Sに対する傾斜角の絶対値の最大値σa1は4°以上35°以下の範囲で不規則にばらついている。更に、第2区画線b1の基材表面Sに対する傾斜角の絶対値の最大値σb1は5°以上90゜以下の範囲で不規則にばらついている。
尚、第1、第2区画線a1、b1(第1、第2曲面A1、B1)の基材表面Sに対する傾斜角の絶対値とは、それぞれ図3に示すように、第1、第2区画線a1、b1(第1、第2曲面A1、B1)上の任意の点における接平面P、Qと基材表面Sとのなす角度の絶対値である。
そして、第1、第2区画線a1、b1(第1、第2曲面A1、B1)の傾斜角の絶対値の最大値σa1、σb1とは、各区画線a1、b1(各曲面A1、B1)上の任意の点における接平面P、Qの傾斜角度が最大となる角度である。
【0029】
凹部3は、その凹面が単一の最深点(傾斜角がゼロとなる曲面上の点)Dを有している。そしてこの最深点D1と基材の基材表面Sとの距離が凹部3の深さdを形成し、この深さdは、凹部3a、3b、3c、…についてそれぞれ0.1μm〜3μmの範囲内で不規則にばらついている。
【0030】
また、本実施形態においては、凹部3a、3b、3c、…における各特定縦断面Xは、いずれも同じ方向になっている。また、各々の第2区画線b1が単一の方向に配向するように形成されている。すなわち、何れの凹部でも、図2、図3に示すxの方向が同一になるように形成されている。
【0031】
本実施形態の反射体1では、各々の第2区画線b1が単一の方向に配向するように形成されているため、その反射特性は、図4に示すように、基材表面Sに対する正反射の方向からずれたものとなっている。
すなわち、図4に示すように、xの反対方向の斜め上方からの入射光Jに対する反射光Kは、正反射の方向K0よりも、基材表面Sに対する方向Hにシフトした方向に明るい表示範囲がシフトしたものとなっている。
【0032】
その結果、特定縦断面Xにおける総合的な反射特性としては、第1区画線a1側に入射する光が、第2区画線b1側に入射する光よりも多くなり、結果的に第1曲面A1による反射光量が多くなるので、光拡散性を高めることができる。
また、第2区画線b1の傾斜が比較的急なため、第2区画線b1側に入射した光は基材表面Sに対する入射角度よりも大きい角度で反射するので、通常の視角範囲(0°〜30°)よりも高い角度側に反射率が高い領域ができる。
【0033】
図5には本実施形態の反射体1(実施例1)の表示面に、入射角30°で外光を照射し、受光角を、表示面(基材表面)に対する正反射の方向である30゜を中心として、垂線位置(0°)から60°まで振ったときの受光角(θ°)と明るさ(反射率)との関係を示している。図5では、比較例として、従来から用いられている球面状凹部を有する反射体を用いた反射型液晶表示装置の受光角と反射率との関係も示した。
尚、実施例1では、第1曲面A1の曲率半径を20μmに設定し、第1区画線a1の傾斜角σa1を20°に設定し、図3における最深点D1と境界C1との距離を1.5μmに設定し、第2区画線b2の傾斜角σb1を60°に設定し、基材表面Sから最深点D1までの深さを1.2μmに設定した。
図5から明らかなように、比較例の反射率のプロファイルが受光角約30°を中心とするガウス分布形状を示したのに対して、本実施形態の反射体1(実施例1)では、受光角約5°から約35°までの広い範囲内でほぼ均一な反射率を示し、40°近傍で急激に反射率が低下する特性を示している。
【0034】
これは、第1区画線a1よりも傾斜角度が急な第2区画線b1が形成されているために、40°以上の高角度側で反射率が低くなった分、5°〜30°の低角度側で反射率が向上したためである。
また、第1区画線a1が最深点D1を通過してから第2区画線b1に接続され、更に第2区画線b1の傾斜が比較的急で、第1区画線a1の傾斜が比較的緩やかになっているので、第1区画線a1の方が第2区画線b1よりも長くなっている。このため、第1区画線a1に入射する光が、第2区画線b1に入射する光よりも多くなり、結果的に第1曲面A1による反射光量が多くなり、反射率が5°〜30°の広い範囲で高くなったのである。
【0035】
以上の結果から、本実施形態の反射体1では、角度5°〜30°の視野において、充分な明るさを達成できるものとなる。
【0036】
[第2の実施形態]
次に本発明の第2の実施形態を図面を用いて具体的に説明する。尚、以下の本実施形態の説明では、第1の実施形態と重複する説明を省略する。
図6は本実施形態の反射体の要部を示す断面図である。本実施形態の反射体10は、第1の実施形態の反射体1と同様に、例えばアルミニウムからなる平板状の基材表面S(基準面)に多数の光反射性を有する凹部13…が互いに不規則に隣接して形成されている。
【0037】
これらの凹部13…は、断面図を図6に示すように、一周辺部S1側に位置する第1曲面A2と他周辺部S2側に位置する第2曲面B2とにより区画されてなり、第1曲面A2内に凹部3の最深点D2が位置している。
また、凹部13の特定縦断面Xにおける内面形状は、一周辺部S1から最深点D2を通過して第1、第2曲面A2、B2の境界C2まで至る第1曲面A2を区画する第1区画線a2と、この第1区画線a2に連続し、第1、第2曲面A2、B2の境界C2から他周辺部S2まで至る第2曲面B2を区画する第2区画線b2とからなっている。これら第1,第2区画線a2、b2は、最深点D2よりも他周辺部S2寄りに位置する境界C2において相互につながっている。
第2区画線b2の基材表面Sに対する傾斜角は、第1の実施形態の場合と同様に、第1区画線a2の傾斜角よりも急であり、また最深点D2は凹部13のほぼ中心Oに位置している。これにより、第2区画線b2の基材表面Sに対する傾斜角の絶対値の最大値は、第1区画線a2の傾斜角の絶対値の最大値より大きくなっている。
【0038】
更に、第1曲面A2内には、基材表面Sに対する傾斜角の絶対値の最大値が第1曲面A2と異なる第3曲面E2が形成されている。そして、図6に示す特定縦断面には、第1区画線A2を分断して第3曲面E2を区画する第3区画線e2が形成されている。この第3曲面E2(第3区画線e2)は、凹部13の最深点D2よりも一周辺部S1側に位置している。
【0039】
第1曲面A2は凹球面(凹曲面)であり、このため第1区画線a2は第1曲面A2の形状を反映して凹曲線になっている。一方、第2曲面B2は単純な凹曲面であり、このため第2区画線b2は第2曲面B2の形状を反映して直線になっている。更に第3曲面E2は第1曲面A2より大きな曲率半径の凹球面であり、このため第3区画線e2は第3曲面E2の形状を反映して凹曲線になっている。
【0040】
尚、第1曲面A2の曲率半径は1〜120μm程度が好ましく、第2曲面B2の曲率半径は5μm以上が好ましく、第3曲面E2の曲率半径は5μm以上が好ましい。
【0041】
また、第1区画線a2の基材表面Sに対する傾斜角の絶対値の最大値σa2は4°以上35°以下の範囲で不規則にばらついている。更に、第2区画線b2の基材表面Sに対する傾斜角の絶対値の最大値σb2は5°以上90゜以下の範囲で不規則にばらついている。また、第3区画線e2の基材表面Sに対する傾斜角の絶対値の最大値σe2は5°以上20゜以下の範囲で不規則にばらついている。そして、第2区画線b2の最大傾斜角(絶対値)は、第1区画線a2の最大傾斜角(絶対値)よりも大きくなっている。
また、第1区画線a2と第2区画線b2とが接する境界C2においては第1区画線a2と第2区画線b2とがなだらかに連続し、更に第1区画線a2と第3区画線e2も相互になだらかに接している。
【0042】
尚、第1、第2、第3区画線a2、b2、e2(第1、第2、第3曲面A2、B2、E2)の基材表面Sに対する傾斜角の絶対値は、第1、第2、第3区画線a2、b2、e2(第1、第2、第3曲面A2、B2、E2)上の任意の点における接平面P、Q、Rと基材表面Sとのなす角度の絶対値であり、それぞれの傾斜角の絶対値の最大値σa2、σb2、σe2は、各区画線a1、b1、e2(各曲面A1、B1、E2)上の任意の点における接平面P、Q、Rの傾斜角度が最大となる角度である。
【0043】
図7には本実施形態の反射体10(実施例2)の表示面に、入射角30°で外光を照射し、受光角を、表示面(基材表面)に対する正反射の方向である30゜を中心として、垂線位置(0°)から60°まで振ったときの受光角(θ°)と明るさ(反射率)との関係を示している。図7では、比較例として、従来の球面状凹部を有する反射体を用いた反射型液晶表示装置の受光角と反射率との関係も示した。
尚、実施例2では、第1曲面A2の曲率半径を20μmに設定し、第1区画線a2の傾斜角σa2を20°に設定し、図7における最深点D2と境界C2との距離を1.5μmに設定し、第2区画線b2の傾斜角σb2を60°に設定し、第3曲面E2の曲率半径を100μmに設定し、傾斜角σe2を6〜12°の範囲とし、基材表面Sから最深点D2までの深さdを1.2μmに設定した。
【0044】
図7から明らかなように、比較例の反射率のプロファイルが受光角約30°を中心とするガウス分布形状を示したのに対して、本実施形態の反射体10(実施例2)では、受光角約5°から約35°までの広い範囲内で高い反射率を示し、40°近傍で急激に反射率が低下する特性を示している。また、実施例2では、15°付近を中心として反射率が更に高いピークが観察される。
【0045】
5°〜30°の低角度側で反射率が向上したのは、第1区画線a2よりも傾斜角度が急な第2区画線b2が形成されているために、40°以上の高角度側で反射率が低くなった分、5°〜30°の低角度側で反射率が向上したためである。また、第1区画線a2が第2区画線b2よりも長くなっているため、第1区画線a2に入射する光が、第2区画線b2に入射する光よりも多くなり、結果的に第1曲面A2による反射光量が多くなり、反射率が5°〜30°の広い範囲で高くなったのである。
【0046】
更に、15°付近を中心として反射率が更に高いピークが観察されたのは、第3曲面E2が形成されたためであり、このような第3曲面E2を形成することで、より実用的な角度での明るさを向上できる。
【0047】
以上の結果から、本実施形態の反射体10では、角度5°〜30°の視野において、充分な明るさを達成でき、さらに15°付近で更なる明るさを達成できるものとなる。
【0048】
[第3の実施形態]
次に本発明の第3の実施形態を図面を用いて具体的に説明する。尚、以下の本実施形態の説明では、第1の実施形態と重複する説明を省略する。
図8は本実施形態の反射体の要部を示す断面図である。本実施形態の反射体20は、第1の実施形態の反射体1と同様に、例えばアルミニウムからなる平板状の基材表面S(基準面)に多数の光反射性を有する凹部23…が互いに不規則に隣接して形成されている。
【0049】
これらの凹部23…は、断面図を図8に示すように、一周辺部S1側に位置する第1曲面A3と他周辺部S2側に位置する第2曲面B3とにより区画されてなり、第1曲面A3内に凹部3の最深点D3が位置している。
また、凹部23の特定縦断面Xにおける内面形状は、一周辺部S1から最深点D3を通過して第1、第2曲面A3、B3の境界C3まで至る第1曲面A3を区画する第1区画線a3と、この第1区画線a3に連続し、第1、第2曲面A3、B3の境界C3から他周辺部S2まで至る第2曲面B3を区画する第2区画線b3とからなっている。これら第1,第2区画線a3、b3は、最深点D3よりも他周辺部S2寄りに位置する境界C3において相互につながっている。
第2区画線b3の基材表面Sに対する傾斜角は、第1の実施形態の場合と同様に、第1区画線a3の傾斜角よりも急であり、また最深点D3は凹部23のほぼ中心Oに位置している。これにより、第2区画線b3の基材表面Sに対する傾斜角の絶対値の最大値は、第1区画線a3の傾斜角の絶対値の最大値より大きくなっている。
【0050】
第1曲面A3は凹球面(凹曲面)であり、このため第1区画線a3は第1曲面A3の形状を反映して凹曲線になっている。一方、第2曲面B2も凹球面(凹曲面)であり、第2区画線b3は第2曲面B3の形状を反映して凹曲線になっている。
【0051】
尚、第1曲面A3の曲率半径は1〜120μm程度が好ましく、第2曲面B3の曲率半径は5μm以上が好ましい。
【0052】
尚、第1、第2区画線a3、b3の傾斜角の絶対値の最大値σa3、σb3の好ましい範囲は、第1の実施の形態の場合と同じである。
尚、第1、第2区画線a3、b3(第1、第2曲面A3、B3)の基材表面Sに対する傾斜角の絶対値の定義は、第1の実施形態の場合と同様である。
【0053】
図9には本実施形態の反射体20(実施例3)の表示面に、入射角30°で外光を照射し、受光角を、表示面(基材表面)に対する正反射の方向である30゜を中心として、垂線位置(0°)から60°まで振ったときの受光角(θ°)と明るさ(反射率)との関係を示している。図9では、比較例として、従来の球面状凹部を有する反射体を用いた反射型液晶表示装置の受光角と反射率との関係も示した。
尚、実施例3では、第1、第2曲面A3、B3の曲率半径をそれぞれ20μmに設定し、第1区画線a2の傾斜角σa2を20°に設定し、図8における最深点D3と境界C3との距離を1.5μmに設定し、第2区画線b2の傾斜角σb2を60°に設定し、基材表面Sから最深点D3までの深さを1.2μmに設定した。
【0054】
図9から明らかなように、比較例の反射率のプロファイルが受光角約30°を中心とするガウス分布形状を示したのに対して、本実施形態の反射体20(実施例3)では、受光角約5°から約35°までの広い範囲内で高い反射率を示し、40°から60°に至るまでに反射率が徐々に低下し、40°以上では比較例よりも反射率が高くなっている。
【0055】
5°〜30°の低角度側で反射率が向上したのは、第1区画線a3よりも傾斜角度が急な第2区画線b3が形成されているために、40°以上の高角度側で反射率が低くなった分、5°〜30°の低角度側で反射率が向上したためである。また、第1区画線a3が第2区画線b3よりも長いため、第1区画線a3に入射する光が、第2区画線b3に入射する光よりも多くなり、結果的に第1曲面A3による反射光量が多くなり、反射率が5°〜30°の広い範囲で高くなっている。
【0056】
更に、40°から60°に至る間で反射率が比較例よりも高くなったのは、第2曲面B3が凹球面状に形成されたため、第2曲面B3で反射された光が比較的広い角度範囲で拡散反射したためである。このように第2曲面B3を凹球面とすることで、反射光をより広い反射角度で反射させることができる。
【0057】
以上の結果から、本実施形態の反射体20では、角度5°〜30°の視野において充分な明るさを達成でき、さらに40°以上の範囲でも従来の反射体の場合よりも明るさを達成できるものとなる。
【0058】
上記の各反射体1、10,20の製造方法は、特に限定するものではないが、例えば以下のように製造することができる。
まず、前記凹部の形状を凸面に変換した先端形状を有するポンチ(目打ち具)を作製し、このポンチの先端をアルミニウム基材に対向させ、ポンチのアルミニウム基材に対する相対的な配向方向を一定に保ったまま、打刻ストロークを不規則に変化させ、かつ打刻間隔を不規則に変化させて、アルミニウム基材の所定領域全面を打刻する。打刻ストロークは凹部の深さが所定範囲に入るように調節する。打刻間隔はモアレ模様が発生しないように調節する。
【0059】
[第4の実施形態]
次に図10には、上記の反射体1を組み込んだ第4の実施形態の反射型液晶表示装置100の層構成を示す断面図である。
図10においてこの反射型液晶表示装置100は、液晶層130を挟んで光透過性の表示側基板120と光反射性の反射側基板110とが対向配置されてなっている。表示側基板120の外側面は表示面になっていて、反射側基板110には反射体1が組み込まれている。なお、反射体として先の反射体10、20を用いても良い。
【0060】
反射側基板110は下層から順に、ガラス基板111、反射体1、透明介在層113、カラーフィルタ層114、透明平坦化層115、ITO(Indium Tin Oxide)膜またはネサ膜などからなる透明電極116、および配向層117が積層され、また液晶層130を挟んで表示面側に対向配置される表示側基板120は、液晶層130の側から順に配向層121、絶縁層122、ITO膜またはネサ膜などからなる透明電極123、ガラス基板124、および光学変調層(偏光板、位相差板など)125が積層されてなっている。
また、液晶層130を挟む透明電極116と透明電極123とは、互いに直交するストライプ状に形成されていてその交点領域が画素となる単純マトリックス型の液晶装置を構成している。
【0061】
この反射型液晶表示装置100において、反射体1は、各凹部3a、3b、3c、…の第1区画線A1が、傾斜の急な第2区画線B1よりもx方向側となるように装着されている。そして、このx方向を下側として、文字等の表示がなされるようになっている。
【0062】
図11は、かかる液晶表示装置100の使用状態を示す説明図である。なお、図11においては、説明の便宜上、反射型液晶表示装置100の第1区画線A1と第2区画線B1のみを図示し、その他の構成部材の図示を省略している。
このような反射型液晶表示装置100は、x方向を下にして携帯電話やノートパソコン等に組み込まれる。この場合反射型液晶表示装置100は、通常、図11に示すようにx方向を斜め下方として、水平面に対して斜めに設置、又は保持される。すなわち、使用時において、それぞれの凹部における第2区画線B1が、観察者から見て第1区画線A1よりも上方に位置するように設けられている。そして、観察者は、この反射型液晶表示装置100を、水平よりも斜め上方から見下ろすのが通常である。
この場合、主として上方から入射する外光(入射光J)の反射光Kは、主として第1区画線A1周辺の面で反射されるので、図5において説明したように、観察者の足下の方向には反射しにくくなり、正反射の方向K0よりも上の方向に重点的に反射するようになる。
このため、観察者の通常の観察範囲と明るい表示範囲とが一致して、実用上、明るい表示装置を実現することができる。
【0063】
図10に示した本実施形態の反射型液晶表示装置は、反射体1を透明電極116とは別の層として形成したが、透明電極116自体を反射体1により形成し、かつ透明電極116を図10の反射体1の位置に形成すれば、透明電極が反射体を兼ねることができて、反射型液晶表示装置の層構成が単純化される。
【0064】
また前記反射体を例えばハーフミラーのような半透過膜、或いは所定の開口率で開口部を反射膜に設けた半透過半反射性基材で形成し、液晶パネルの背面に照明板を配置すれば、外光が明るいときは反射型となり、外光が暗くなったとき前記照明板を点灯すれば透過型として使用できる半透過半反射型液晶表示装置が得られる。この半透過反射型液晶表示装置も本発明に含まれるものである。
【0065】
また前記表示側基板120の表示面側にフロントライトを設ければ、外光が明るいときは外光のみを利用し、外光が暗くなったとき前記フロントライトを点灯するようなフロントライト型の液晶表示装置が得られる。このフロントライト型の液晶表示装置も本発明に含まれるものである。
【0066】
本発明の液晶駆動方式は特に限定されるものではなく、前記単純マトリックス型の他に、薄膜トランジスタまたは薄膜ダイオードを用いたアクティブマトリックス型、またはセグメント型などにも同様に適用が可能である。これらの液晶表示装置はいずれも本発明に含まれるものである。
【0067】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明の反射体によれば、基材の表面に光反射性を有する複数の凹部が形成され、これらの凹部が第1、第2曲面(凹面)から形成され、更に第1曲面内に前記凹部の最深点が位置しているので、光拡散性を向上できると共に映り込みを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施形態の反射体の一部を示す斜視図。
【図2】 図1に示した反射体の凹部を示す斜視図。
【図3】 図2に示した凹部の特定縦断面における断面模式図。
【図4】 反射体の反射特性を説明する説明図。
【図5】 図1に示した反射体の受光角と反射率との関係を示すグラフ。
【図6】 本発明の第2の実施形態の反射体の凹部の特定縦断面における断面図。
【図7】 図6に示した反射体の受光角と反射率との関係を示すグラフ。
【図8】 本発明の第3の実施形態の反射体の凹部の特定縦断面における断面図。
【図9】 図8に示した反射体の受光角と反射率との関係を示すグラフ。
【図10】 本発明の第4の実施形態の反射型液晶表示装置の構成を示す断面模式図。
【図11】 図10に示した反射型液晶表示装置の使用状態を説明する説明図。
【図12】 従来の反射型液晶表示装置の一例を示す構成を示す断面模式図。
【図13】 従来の反射体の一部を示す斜視図。
【図14】 Aは卓上電算機を目視する際の視角を示す斜視図であり、Bは携帯式コンピュータを目視する際の視角を示す斜視図。
【符号の説明】
2 基材
3,13,23 凹部
100 反射型液晶表示装置
A1、A2,A3 第1曲面
a1,a2,a3 第1区画線
B1、B2、B3 第2曲面
b1,b2,b3 第2区画線
C1、C2,C3 第1、第2曲面の境界
D1、D2、D3 最深点
E2 第3曲面
e2 第3区画線
S 基材表面
S1 一周辺部
S2 他周辺部
X 特定縦断面
σa1 第1区画線の基材表面に対する傾斜角の絶対値の最大値
σb1 第2区画線の基材表面に対する傾斜角の絶対値の最大値
σe2 第3区画線の基材表面に対する傾斜角の絶対値の最大値

Claims (7)

  1. 基材の表面に光反射性を有する複数の凹部が形成され、
    前記各凹部には、凹部の一周辺部側に位置する第1曲面と他周辺部側に位置する第2曲面とが形成されるとともに、前記第1曲面内に前記凹部の最深点が位置しており、
    前記第2曲面の基材表面に対する傾斜角の絶対値の最大値が、前記第1曲面の基材表面に対する傾斜角の絶対値の最大値より大きくされており、
    前記凹部の各々が該凹部の最深点を通過する以下の特定縦断面を有し、
    前記特定縦断面は、その内面の形状が、前記一周辺部から前記最深点を通過して前記第1、第2曲面の境界まで至る前記第1曲面を区画する第1区画線と、この第1区画線に連続し、前記第1、第2曲面の境界から前記の他周辺部まで至る前記第2曲面を区画する第2区画線とからなり、前記第2区画線の基材表面に対する傾斜角の絶対値の最大値が、前記第1区画線の基材表面に対する傾斜角の絶対値の最大値より大きくされており、
    前記第1区画線が凹曲線であり、前記第2区画線は曲率半径が略直線に近い凹曲線または直線であることを特徴とする反射体。
  2. 前記第1曲面内に、前記基材表面に対する傾斜角の絶対値の最大値が前記第1曲面と異なる第3曲面が形成されており、
    前記特定縦断面に、前記第1区画線を分断する前記第3曲面を区画する第3区画線が形成されており、
    前記第3区画線が凹曲線または直線であることを特徴とする請求項1に記載の反射体。
  3. 前記第1区画線の基材表面に対する傾斜角の絶対値の最大値が、4°〜35°の範囲内とされたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の反射体。
  4. 前記第2区画線の基材表面に対する傾斜角の絶対値の最大値が、5°〜90°の範囲内とされたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の反射体。
  5. 前記第3区画線の基材表面に対する傾斜角の絶対値の最大値が、5°〜20°の範囲内とされたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の反射体。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の反射体が装着されたことを特徴とする液晶表示装置。
  7. 前記反射体が、前記複数の凹部の各々の特定縦断面の方向が等しく、各々の第1区画線が単一の方向に配向するように形成され、かつこの反射体が、それぞれの凹部における第1区画線が、観察者から見て第2区画線よりも下方に位置するように設けられたことを特徴とする請求項6に記載の液晶表示装置。
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