JP4159702B2 - キャピラリーカラムへのゲル充填装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はマルチキャピラリー電気泳動装置において使用される複数本のキャピラリーカラムに、試料が電気泳動する媒体となるゲルを充填するためのゲル充填装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気泳動装置は核酸、タンパク質、ぺプチド、糖などを分離分析するために使用されており、特に、DNAの塩基配列の解析には重要な役割を果たしている。
ヒトゲノムのような長大な塩基配列をもつDNAの塩基配列決定には、高感度で、高速で、かつ大処理能力をもったDNAシーケンサが必要となる。その1つの方法として、平板状のスラブゲルを用いたものに代わってゲルを充填したキャピラリーカラムを複数本配列したマルチキャピラリー電気泳動装置が提案されている。キャピラリーカラムは、スラブゲルに比べて、試料の取扱いや注入が容易であるだけでなく、高速に泳動させて高感度で検出できる。つまり、スラブゲルで高電圧を印加すれば、ジュール熱の影響によりバンドが広がったり、温度勾配が生じるなどの問題が生じるが、キャピラリーカラムではそのような問題は少なく、高電圧を印加して高速泳動をさせても、バンドの広がりが少なく高感度検出ができるのである。
【0003】
内径が10〜200μmのガラスキャピラリーカラム内に分子ふるい効果を有する支持体(分離媒体)を導入したキャピラリーゲル電気泳動では、分離媒体の分子ふるい効果により核酸やタンパク質などの分離を行なう。分離媒体としては、架橋されたポリアクリルアミドなど、キャピラリーカラム中でcross-linkゲルを重合させたものや、リニアポリアクリルアミドやハイドロキシエチルセルロースなど、予め重合させた高分子ポリマーをキャピラリーカラムに充填するものがある。
【0004】
キャピラリー電気泳動装置の初期のものは1本のキャピラリーカラムを用いるものである。その場合にはキャピラリーカラムへのゲルの充填方法として、キャピラリーカラムの一端を容器内のゲルに浸し、その容器を密閉してその容器内を加圧することによりゲルをキャピラリーカラムに押し込んで充填している。他の方法として、キャピラリーカラムの一端をゲルに浸し、キャピラリーカラムの他端を減圧してゲルをキャピラリーカラムに吸引することにより充填することも行なわれている。
マルチキャピラリー電気泳動装置において、複数本のキャピラリーカラムは、試料注入側では二次元的に配列され、検出側では平面上に一列に配列された状態で電気泳動装置に装着される。その複数本のキャピラリーカラムは、操作性の観点から、ホルダによって配列が固定されたキャピラリーカセットとすることが好ましい。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
キャピラリーカセットとした状態でキャピラリーカラムの1本ずつにゲルを充填することは非常に手間がかかり、また、現実的には不可能である。そこで、キャピラリーカセットを単位としてそれに含まれるすべてのキャピラリーカラムにゲル充填を簡便に行なえるようにすることが望まれている。
【0006】
また、キャピラリーカラム内でゲルを重合させる種類の分離媒体では、キャピラリーカラムの内壁面の状態がゲルの重合状態に影響する。内壁面の状態が悪いとゲルの重合状態が悪くなり、電気泳動中にキャピラリーカラム内に気泡が発生する頻度が増加する。さらに、キャピラリーカラムの内壁面の状態が悪いと、cross-linkゲル、高分子ポリマーにかかわらず、キャピラリーカラムの試料注入側の端部からゲルがずり出す頻度が増加する。そのため、泳動結果の再現性が悪くなるという問題があった。
この問題を解決するには、キャピラリーカラム内に酸性溶液を導入するなどの前処理を施す必要があるが、キャピラリーカセットとした状態でキャピラリーカラムの1本ずつに前処理を施すことは非常に手間がかかり、また、現実的には不可能である。
【0007】
そこで、本発明は、そのようなキャピラリーカセットに含まれるすべてのキャピラリーカラムへの前処理及びゲルの充填を簡便にできるとともに、キャピラリー電気泳動における泳動結果の再現性を向上させることができるゲル充填装置を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、マルチキャピラリー電気泳動装置に装着される複数のキャピラリーカラムの試料注入側の端部がホルダの保持部材を貫通して2次元的に配列されその保持部材との間に気密を保って固定されたキャピラリーカセットのキャピラリーカラムにゲルを充填するための装置である。
キャピラリーカラムへのゲル充填は吸引又は加圧のいずれによっても行なうことができる。ゲル充填の際、それぞれのキャピラリーカラムを1本ずつシールして吸引又は加圧を行なうのではなく、キャピラリーカラムを気密を保って固定しているホルダにより、そのキャピラリーカセットのすべてのキャピラリーカラムをシールし、同時にゲル充填を行なうようにする。
【0009】
また、ガラスキャピラリーカラムの内壁面にはシラノール基(−SiOH)が多数存在する。それらのシラノール基の状態はキャピラリーカラムごとに異なる。シラノール基の状態はゲルの重合状態に大きく影響するので、キャピラリーカラムごとのシラノール基の状態の差は、ゲルの重合状態に差を生ずる。
そこで、本発明にかかる装置では、ゲルやポリマーを充填する前に、キャピラリーカラムに酸を導入して、キャピラリーカラムの内壁面のシラノール基の状態を整えて(以下、酸処理という)、シラノール基の状態をゲルの重合に対して適した状態にする。その結果、キャピラリーカラム内でのゲルの重合状態を安定させることができる。一方、酸はゲルの重合を阻害するので、キャピラリーカラムに酸処理を施した後、純水によりキャピラリーカラム内の洗浄を行なう。さらに、キャピラリーカラム内に水分が残留するとゲルの重合が阻害されたり、ゲル濃度が低下したりするので、不活性ガスによりキャピラリーカラム内の乾燥を行なう。
【0010】
吸引によりゲル充填を行なう方式では、本発明は、上面に開口が設けられ、その開口にはキャピラリーカラムの試料注入側の端部を内側に入れてホルダによりその開口を密閉する密閉手段が設けられ、さらに気体出口が設けられたチャンバと、不活性ガスを供給する不活性ガス供給機構と、不活性ガス供給機構から不活性ガスが供給される不活性ガス供給口、酸性溶液を収容する酸性溶液容器、純水を収容する純水容器及びゲルを収容するゲル容器が配置され、キャピラリーカラムの試料注入側とは反対側の検出側の端部が不活性ガス供給口、酸性溶液容器、純水容器又はゲル容器のいずれかに挿入されるように、不活性ガス供給口、酸性溶液容器、純水容器及びゲル容器並びにキャピラリーカラムの検出側の端部を移動させる導入物質選択機構と、チャンバの気体出口に設けられた減圧手段と、を備えている。
【0011】
まず、チャンバの開口をキャピラリーカセットのホルダを用いて密閉手段により密閉し、キャピラリーカセットの検出側を導入物質選択機構に固定し、酸性溶液容器、純水溶液、ゲル容器及び不活性ガス供給口を導入物質選択機構の所定の位置に配置する。
導入物質選択機構により、キャピラリーカセットの検出側のすべてのキャピラリーカラムの先端を酸性溶液容器に収容された酸性溶液に浸す。減圧手段によりチャンバ内を減圧してキャピラリーカラムに酸性溶液を吸入し、キャピラリーカラムの内壁面に酸処理を施す。
次に、導入物質選択機構により、キャピラリーカセットの検出側のすべてのキャピラリーカラムの先端を純水容器に収容された純水に浸す。減圧手段によりチャンバ内を減圧してキャピラリーカラムに純水を吸入し、キャピラリーカラム内の酸性溶液を排出する。
【0012】
次に、導入物質選択機構により、キャピラリーカセットの検出側のすべてのキャピラリーカラムの先端を不活性ガス供給口に挿入して不活性ガス供給機構から供給される不活性ガスに接触させる。減圧手段によりチャンバ内を減圧してキャピラリーカラムに不活性ガスを吸入し、キャピラリーカラム内を乾燥させる。
次に、導入物質選択機構により、キャピラリーカセットの検出側のすべてのキャピラリーカラムの先端をゲル容器に収容されたゲルに浸す。減圧手段によりチャンバ内を減圧してキャピラリーカラムにゲルを吸入する。
【0013】
加圧によりゲル充填を行なう方式では、本発明は、上面に開口が設けられ、その開口にはキャピラリーカラムの試料注入側の端部を内側に入れてホルダによりその開口を密閉する密閉手段が設けられ、さらに気体出入口が設けられたチャンバと、チャンバの開口がホルダにより密閉された状態でキャピラリーカラムの試料注入側の端部が浸される位置にゲルを収容し、チャンバの内部に着脱可能に配置されるゲル容器と、不活性ガスを供給する不活性ガス供給機構と、不活性ガス供給機構から不活性ガスが供給される不活性ガス供給口、酸性溶液を収容する酸性溶液容器、純水を収容する純水容器及びドレイン容器が配置され、キャピラリーカラムの試料注入側とは反対側の検出側の端部が不活性ガス供給口、酸性溶液容器、純水容器又はドレイン容器のいずれかに挿入されるように、不活性ガス供給口、酸性溶液容器、純水容器及びドレイン容器並びにキャピラリーカラムの検出側の端部を移動させる導入物質選択機構と、チャンバの気体出入口に設けられた加圧・減圧手段と、を備えている。
【0014】
まず、ゲル容器をチャンバ内に配置していない状態で、チャンバの開口をキャピラリーカセットのホルダを用いて密閉手段により密閉し、キャピラリーカセットの検出側を導入物質選択機構に固定し、酸性溶液容器、純水溶液、不活性ガス供給口及びドレイン容器を導入物質選択機構の所定の位置に配置する。
導入物質選択機構により、キャピラリーカセットの検出側のすべてのキャピラリーカラムの先端を酸性溶液容器に収容された酸性溶液に浸す。加圧・減圧手段によりチャンバ内を減圧してキャピラリーカラムに酸性溶液を吸入し、キャピラリーカラムの内壁面に酸処理を施す。
次に、導入物質選択機構により、キャピラリーカセットの検出側のすべてのキャピラリーカラムの先端を純水容器に収容された純水に浸す。加圧・減圧手段によりチャンバ内を減圧してキャピラリーカラムに純水を吸入し、キャピラリーカラム内の酸性溶液を排出する。
【0015】
次に、導入物質選択機構により、キャピラリーカセットの検出側のすべてのキャピラリーカラムの先端を不活性ガス供給口に挿入して不活性ガス供給機構から供給される不活性ガスに接触させる。加圧・減圧手段によりチャンバ内を減圧してキャピラリーカラムに不活性ガスを吸入し、キャピラリーカラム内を乾燥させる。
次に、チャンバの開口からホルダを一旦外し、チャンバ内にゲル容器を配置した後、チャンバの開口をホルダにより再度密閉する。導入物質選択機構により、キャピラリーカセットの検出側のすべてのキャピラリーカラムの先端をドレイン容器に挿入する。その後、加圧・減圧手段によりチャンバ内を加圧してキャピラリーカラムにゲルを注入する。検出側のキャピラリーカラム端からあふれ出す過剰量のゲルはドレイン容器によって受けられる。
【0016】
【発明の実施の形態】
ガラスキャピラリーカラムを繰返し使用していると、キャピラリーカラムの内壁面に、前の測定におけるゲルの残留物などの汚れが付着している場合がある。かかる場合、そのままキャピラリーカラム内でゲルの重合を行なうと、ゲルの重合状態が悪くなる。
そこで、キャピラリーカラムにゲルを充填する前に、キャピラリーカラムにアルカリ溶液を導入して、キャピラリーカラムの内壁面に付着している汚れを除去する(以下、アルカリ処理という)ことが好ましい。その結果、キャピラリーカラム内でのゲルの重合状態を安定させることができる。一方、アルカリ溶液もゲルの重合を阻害するので、アルカリ処理を施した後、純水によりキャピラリーカラム内の洗浄を行なう。キャピラリーカラム内に水分が残留するとゲルの重合が阻害されたり、ゲル濃度が低下したりするので、この場合も不活性ガスによりキャピラリーカラム内の乾燥を行なう。
【0017】
そのため、吸引によりゲル充填を行なう方式では、本発明の導入物質選択機構は、アルカリ溶液を収容するアルカリ溶液容器をさらに備え、キャピラリーカラムの検出側の端部が不活性ガス供給口、酸性溶液容器、アルカリ溶液容器、純水容器又はゲル容器のいずれかに浸されるように、不活性ガス供給口、酸性溶液容器、アルカリ溶液容器、純水容器及びゲル容器並びにキャピラリーカラムの検出側の端部を移動させるものであることが好ましい。
【0018】
また、加圧によりゲル充填を行なう方式では、本発明の導入物質選択機構は、アルカリ溶液を収容するアルカリ溶液容器をさらに備え、キャピラリーカラムの検出側の端部が不活性ガス供給口、酸性溶液容器、アルカリ溶液容器、純水容器又はドレイン容器のいずれかに浸されるように、不活性ガス供給口、酸性溶液容器、アルカリ溶液容器、純水容器及びドレイン容器並びにキャピラリーカラムの検出側の端部を移動させるものであることが好ましい。
【0019】
吸引によりゲル充填を行なう方式又は加圧によりゲル充填を行なう方式のいずれにおいても、酸処理前又は酸処理後、かつゲル充填前に、導入物質選択機構により、キャピラリーカセットの検出側のすべてのキャピラリーカラムの先端をアルカリ溶液容器に収容されたアルカリ溶液に浸し、減圧手段又は加圧・減圧手段によりチャンバ内を減圧してキャピラリーカラムにアルカリ溶液を吸入し、キャピラリーカラムの内壁面にアルカリ処理を施す。
その後、キャピラリーカラムに純水を吸入してキャピラリーカラム内のアルカリ溶液を排出し、さらに不活性ガスを吸入してキャピラリーカラム内を乾燥させる。
そして、上記のゲル充填の動作と同様にして、加圧又は吸引によりゲルの充填を行なう。
アルカリ処理と酸処理をともに施す場合は、上記のアルカリ処理、酸処理、洗浄及び乾燥を行なった後、加圧又は吸引によりゲル充填を行なう。
【0020】
チャンバを複数個備え、複数のチャンバで減圧手段又は加圧・減圧手段を共有し、異なるチャンバに装着されるキャピラリーカラムについて、導入物質選択機構の不活性ガス供給口、酸性溶液容器、アルカリ溶液容器、純水容器、ドレイン容器又はさらにゲル容器を共有することが好ましい。その結果、複数のキャピラリーカセットに同時に前処理及びゲルの充填を行なえるとともに、装置全体の構成を簡潔にすることができる。
不活性ガス供給機構、導入物質選択機構、及び減圧手段又は加圧・減圧手段の動作を自動で制御する制御部を備え、前処理及びゲルの充填における、キャピラリーカラム端を浸入させる溶液容器の交換、溶液容器へのキャピラリーカラム端の浸入、減圧手段又は加圧・減圧手段の動作及び不活性ガス供給機構の動作を制御部により制御して、前処理及びゲルの充填を自動で行なうことが好ましい。その結果、オペレータの省力化が図れる。
【0021】
【実施例】
マルチキャピラリー電気泳動装置の一例の概略斜視図を図1に示す。
キャピラリーカセット2は複数本のキャピラリーカラム、例えば384本のキャピラリーカラム4が配列され、試料注入側ホルダ6及び検出側ホルダ8により固定されてキャピラリーアレイを構成したものである。そのキャピラリーアレイの一端2aが試料注入側となって試料注入側ホルダ6により16×24の二次元的に配列されて固定されており、試料注入後に泳動用のリザーバ10に収容された泳動用のバッファ液と接触する。そのキャピラリーアレイの終端(検出側の端部)2bはキャピラリーカラム4が一列に配列されており、リザーバ12に収容されたバッファ液と接触する。キャピラリーアレイ端2b側にはキャピラリーカラム4が一列に配列されて検出側ホルダ8により支持されている被検出部2cが設けられている。
【0022】
キャピラリーカラム4は破損から守るために被膜により被覆されている。泳動してきた試料を検出するのに蛍光検出法が用いられる場合、その被膜が蛍光を発するものであるときは、被検出部2cではその被膜を除去しておく。キャピラリーカラム4として、無蛍光材質の被膜により被覆されているものを使用すれば、被検出部2cでもキャピラリーカラム4の被膜は除去する必要がない。
各キャピラリーカラム4には異なる試料がそれぞれ注入され、同時に電気泳動がなされる。
【0023】
試料又は試料を標識した蛍光物質を励起するための励起光源14として、例えばアルゴンガスレーザ装置が設けられている。16は励起・受光光学系であり、被検出部2cのキャピラリーカラム4に励起光のビームを照射し、試料からの蛍光を検出するものであり、図示しない走査機構により、被検出部2cでのキャピラリーカセットの配列面に平行で泳動方向に直交する走査方向に走査される。励起光源14からの励起光ビームが励起・受光光学系16の走査によってもずれないようにするために、ここでは一例として励起光源14からのレーザビームがカップラーにより結合された光ファイバ18を経て励起・受光光学系16に導かれている。
【0024】
リザーバ10にはバッファ液が収容され、試料注入側のキャピラリーアレイ端2aがそのバッファ液に浸され、そのバッファ液を通してキャピラリーアレイ端2aのキャピラリーカラム端に泳動用電圧が印加される。リザーバ12にはバッファ液が収容され、検出側のキャピラリーアレイ端2bがそのバッファ液に浸され、そのバッファ液を通してキャピラリーアレイ端2bのキャピラリーカラム端に泳動用電圧が印加される。リザーバ12のバッファ液には上側電極22が浸されて接触し、リザーバ10のバッファ液には下側電極20が浸されて接触し、両電極20,22には高圧電源24から泳動電圧が印加される。その電源電圧は例えば30kVで、電流容量は10〜30mAである。
泳動される試料はタンパク質試料や、蛍光物質で標識されたDNAフラグメント試料などである。
【0025】
図2、図3及び図4に本発明によるゲル充填装置に装着されるキャピラリーカセットの一例の概略構成図を示す。図2は正面図、図3は左側面図、図4は上面図である。図1と同じ役割をする部分には同じ符号を付す。
試料注入側ホルダ6は、被膜を有し、例えば外径300μm、内径100μmの石英ガラスキャピラリーカラム4を2次元的に配列するための樹脂製のホルダ板6a,6bの間に、キャピラリーカラム4を穴で挟持して固定するシリコーンゴム製のゴム板26が挾み込まれ、固定ネジ6cにより一体化されたものである。ホルダ板6a,6bには、試料導入に使用する384穴マイクロプレートの各穴の位置に対応して、384個のキャピラリーカラム4を通す穴が16×24箇所に設けられている。それらのホルダ板6a,6bの穴はキャピラリーカラム4の外径よりも大きく設定されている。キャピラリーカラム4は両ホルダ板6a,6b及びその間に挾まれたゴム板26を貫通し、ゴム板26の穴内にゴムの弾性により挟持されることによりホルダ6との間に気密を保って固定されている。
【0026】
検出側のホルダ8は、密着して平面上に並べられたキャピラリーカラム4を下側からはホルダ板8aにより、上側からはシリコーンゴム製のゴム板28により挾むことによって固定している。ゴム板28によりキャピラリーカラム4をホルダ板8aに押しつけて固定するために、キャピラリーカラム4の配列の両側部でゴム板28をホルダ板8aに固定するホルダ板8bが設けられている。ホルダ板8aと8bは固定ネジ8cにより固定されている。
【0027】
キャピラリーカラム4の全長は約500mmであり、試料注入側の端部から約400mmの位置に被検出部2cが設けられている。被検出部2cに検出用ウィンドウを形成するために、ホルダ板8a,8b及びゴム板28にはキャピラリーカラム4の配列方向に沿った開口30がそれぞれ開けられ、開口30の重なった部分が被検出部2cとなっている。電気泳動の際の信号検出は、その開口30を通して行なわれる。
また、本発明によるゲル充填装置には、後述のように、ホルダ6を案内する位置決めピン32aと、ホルダ6を固定するクランプ11が設けられており、ホルダ6にはその位置決めピン32aが通る位置決め穴32bと、そのクランプ11と係合するように4隅の厚さが外方向に向かって薄くなるように傾斜した固定部6dが設けられている。
【0028】
図5及び図6は、本発明によるゲル充填装置の一実施例を表す概略構成図であり、図5は装置全体を表す斜視図、図6はその装置の導入物質選択機構のリザーバステージ周辺を表す斜視図である。図7はその装置の流路構成を表す配管図である。
基板1上に、図2、図3及び図4に示す試料注入側ホルダ6が固定されて密閉空間を作る4つのチャンバ3と、そのチャンバ3内を加圧又は減圧する加圧・減圧手段を内部に備えるコントロールボックス5と、検出側ホルダ8を固定し、上下移動させる2つの検出側ホルダ昇降手段7と、リザーバを移動させるリザーバ移動機構9とが備えられている。
【0029】
チャンバ3は、上部及び底部を閉じるためのアクリル板3a、3c、及び側部を閉じるためのアクリルパイプ3bから構成されている。アクリルパイプ3bの両断面とアクリル板3a,3cとの間はシリコーンゴムパッキンを挾んでシールされている。アクリル板3aには開口13が設けられており、ここに試料注入側ホルダ6が装着される。その開口13の周りには溝が掘られ、その溝には環状で断面が円形のシリコーンスポンジ13aが篏め込まれている。シリコーンスポンジ13aはアクリル板3aの表面より約半分が出ており、アクリル板3aとホルダ6との間をシールする。各アクリル板3a上にはホルダ6をアクリル板3aに固定するための4個のクランプ11がそれぞれ備えられており、ホルダ6の4隅の固定部6dと係合し、このクランプ11を締めつけることにより、ホルダ6がスポンジ13aに押しつけられてチャンバ3の空間を密閉する。
【0030】
検出側ホルダ昇降手段7は、検出側ホルダ昇降機構7a及び検出側ホルダ固定部材7bにより構成される。各チャンバ3に対応する位置に、検出側ホルダ8をそれぞれ固定するホルダ固定部材7bが4つ設けられている。隣り合う2つのホルダ固定部材7b,7bが一体化され、それらのホルダ固定部材7b,7bに共通のホルダ昇降機構7aが備えられて、ホルダ昇降手段7を構成しており、そのようなホルダ昇降機構7aが2台設けられている。各ホルダ固定部材7bは、ホルダ昇降機構7aに設けられたレール7cに沿って上下に移動可能にホルダ昇降機構7aに設置されている。ホルダ固定部材7bにホルダ8が固定されたとき、キャピラリーアレイ端2bは、ホルダ昇降機構7aにより、ホルダ固定部材7bとともに上下移動させられる。
【0031】
リザーバ移動機構9は、リザーバステージ移動機構9a及びリザーバステージ9bにより構成される。ホルダ昇降機構7a,7a間の基板1上に、リザーバステージ移動機構9aによりホルダ昇降機構7a,7a方向に移動させられるリザーバステージ9bが配置されている。
リザーバステージ9bには、ドライチャンバ15並びに図示しない酸性溶液リザーバ、アルカリ溶液リザーバ、清浄水リザーバ及びドレインリザーバを1組として、2組のリザーバがリザーバステージ9bの移動方向に1組ずつ並べられている。ドライチャンバ15には窒素ガスライン17を介して窒素ガスが供給され、酸性溶液リザーバには酸性溶液が収容され、アルカリ溶液リザーバにはアルカリ溶液が収容され、清浄水リザーバには純水が収容される。これらのリザーバはキャピラリーアレイ端2bより大きい幅寸法をもち、ホルダ固定部材7bの下降時には、いずれかのリザーバにキャピラリーアレイ端2bが挿入される。各リザーバは対向した位置のホルダ固定部材7b,7bに固定されるキャピラリーアレイ端2b,2bで共通である。
【0032】
また、ドライチャンバ15は、上面開口がカバーで被われており、そのカバーにキャピラリーアレイ端2bを挿入するためのスリットを設けて、大気と、供給される窒素ガスとの混合が抑制されている。ドライチャンバ15には、図示しない窒素ガス供給機構から、窒素ガスライン17に備えられたフィルタ19及び二方電磁弁SV8を介して、電磁弁SV8の切換えにより窒素ガスが適宜供給される(図7参照)。フィルタ19は例えば10μm程度のものであり、配管やボンベなどからの塵や埃の混入を防いでいる。これは、ドライチャンバ15内の窒素ガスをキャピラリーカラム4内に吸引した際にキャピラリーカラム4が目詰まりを起こすのを避けるためである。
【0033】
本発明の導入物質選択機構は、検出側ホルダ昇降手段7、リザーバ移動機構9、ドライチャンバ15、酸性溶液リザーバ、アルカリ溶液リザーバ、清浄水リザーバ及びドレインリザーバから構成される。
また、ホルダ固定部材7b及びステージ9bの移動は、例えばホルダ昇降機構7a及びステージ移動機構9aそれぞれに設けられたモータ及びベルトにより実現される。また、ホルダ固定部材7b及びリザーバステージ9bの移動は、例えば窒素ガスライン17の窒素ガス圧力を利用したエアシリンダにより実現してもよい。
【0034】
次に、チャンバ3内を加圧・減圧するための流路構成を図5及び図7を参照して説明する。
4つのチャンバ3には、アクリルパイプ3bの側面(円筒面)にジョイント(気体出入口)21がそれぞれ設けられている。各ジョイント21からの流路は、基板1内に設けられたそれぞれの配管を介して、コントロールボックス5内に導かれ、コントロールボックス5内に設けられた三方電磁弁SV1,SV2,SV3又はSV4のNO(常開)側に接続されている。電磁弁SV1,SV2,SV3及びSV4の残りのポートのうち、COM(共通)側はこれらの電磁弁に共通の流路23に接続され、各電磁弁のNC(常閉)側は一対のスピードコントローラSC1及びSC2、SC3及びSC4、SC5及びSC6又はSC7及びSC8を介してそれぞれ大気に開放されている。スピードコントローラはチャンバ3にキャピラリーカセットが装着されている場合と同じ大きさの流路抵抗になるように調整しておく。
【0035】
流路23は三方電磁弁SV6のNC側に接続され、その電磁弁SV6を介してポンプ27の排出側に接続され、また流路23は三方電磁弁SV7のNO側に接続され、その電磁弁SV7を介してポンプ27の吸入側に接続されている。ポンプ27は電磁弁SV6,SV7のそれぞれのCOM側に接続されている。電磁弁SV6のNO側と電磁弁SV7のNC側にはそれぞれサイレンサS2,S3が接続されてる。電磁弁SV6,SV7をNO側にすることにより流路23がポンプ27により排気され、電磁弁SV6,7をNC側にすることにより流路23がポンプ27により加圧される。
流路23には電磁弁SV5を介してサイレンサS1が接続され、電磁弁SV5を開くことにより流路23を大気に開放することができる。さらに流路23には流路23内の圧力を測定する連成計25が接続されている。
コントロールボックス5には、ポンプ27、電磁弁SV1、SV2、SV3、SV4、SV5、SV6、SV7及びSV8、検出側ホルダ昇降機構7a並びにリザーバステージ移動機構9aの動作を制御する図示しないマイクロプロセッサが内蔵されている。
【0036】
次に、動作について説明する。実施例では図2、図3及び図4に示す384本のキャピラリーカラム4を備えたキャピラリーカセットを用いた。
リザーバステージ9bの所定位置に、塩酸溶液を収容した酸溶液リザーバ、水酸化ナトリウム溶液を収容したアルカリ溶液リザーバ、純水を収容した清浄水リザーバ及び空のドレインリザーバを配置する。
検出側ホルダ昇降手段7のホルダ固定部材7bを上方位置にした状態で、検出側ホルダ8をホルダ固定部材7bに固定する。さらに、ホルダ6の4隅の固定部6dをアクリル板3a上に設けられた4個のクランプ11によって固定し、クランプ11を締め付けることによってホルダ6をシリコーンスポンジ13aに押し当て、アクリル板3aに密着固定する。
【0037】
まず、アルカリ処理を施すべく、リザーバステージ移動機構9aにより、リザーバステージ9bを移動させて、アルカリ溶液リザーバをキャピラリーアレイ端2bの下方位置に移動させる。
ホルダ昇降機構7aにより固定部材7bを下降させて、キャピラリーアレイ端2bを下方位置に移動させ、キャピラリーアレイ端2bをアルカリ溶液リザーバの水酸化ナトリウム溶液に浸す。
【0038】
電磁弁SV1、SV2、SV3、SV4のうち、キャピラリーカセット2のホルダ6を装着したチャンバ3に接続された電磁弁をNO側に接続し、キャピラリーカセットを装着していないチャンバ3の電磁弁をNC側に接続し、電磁弁SV6及びSV7をNO側に接続してポンプ27を作動させ、チャンバ3内部を減圧する。
このとき、使用しないチャンバ3に接続された電磁弁SV1、SV2、SV3又はSV4をNC側に接続してスピードコントローラSC1及びSC2、SC3及びSC4、SC5及びSC6又はSC7及びSC8を介して大気に開放する。これにより、スピードコントローラによりキャピラリーカセットを装着したチャンバ3と同等の配管抵抗が得られる。このような構成により、常に4個のチャンバ3にキャピラリーカセットを装着した時と同じ圧力が発生するようにしている。
【0039】
チャンバ3内部を減圧することにより、キャピラリーアレイ2のキャピラリーカラム4内部が減圧され、キャピラリーアレイ端2b側から水酸化ナトリウム溶液が吸引される。キャピラリーカラム4に水酸化ナトリウム溶液が導入され、水酸化ナトリウムとともにキャピラリーカラム4内の汚れが試料注入側からチャンバ3内に排出される。
所定時間経過後、ポンプ27を停止し、電磁弁SV5を開けてチャンバ3内を大気に開放する。その後、ホルダ昇降機構7aによりキャピラリーアレイ端2bを上方位置に移動させて、キャピラリーアレイ端2bをアルカリ溶液リザーバから引き抜く。
これらの動作にて、アルカリ処理を完了する。
【0040】
次に、清浄水による洗浄を行なうべく、リザーバステージ移動機構9aにより、リザーバステージ9bを移動させて、清浄水リザーバをキャピラリーアレイ端2bの下方位置に移動させる。
ホルダ昇降機構7aにより固定部材7bを下降させて、キャピラリーアレイ端2bを下方位置に移動させ、キャピラリーアレイ端2bを清浄水リザーバの純水に浸す。
その後、アルカリ処理時と同様にして、チャンバ3内を減圧し、キャピラリーアレイ端2b側から純水を吸引させる。キャピラリーカラム4に純水が導入され、キャピラリーカラム4内の水酸化ナトリウムが純水とともにチャンバ3内に排出される。
所定時間経過後、ポンプ27を停止し、チャンバ3内を大気に開放する。その後、ホルダ昇降機構7aにより、キャピラリーアレイ端2bを上方位置に移動させて、キャピラリーアレイ端2bを清浄水リザーバから引き抜く。
これらの動作にて、洗浄を完了する。
【0041】
次に、乾燥を行なうべく、リザーバステージ移動機構9aにより、リザーバステージ9bを移動させて、ドライチャンバ15をキャピラリーアレイ端2bの下方位置に移動させる。
ホルダ昇降機構7aにより固定部材7bを下降させて、キャピラリーアレイ端2bを下方位置に移動させ、キャピラリーアレイ端2bをスリットを介してドライチャンバ15内に挿入する。
窒素ガスライン17の電磁弁SV8を開き、フィルタ19を介して、ドライチャンバ15に窒素ガスを供給する。
その後、アルカリ処理時と同様にして、チャンバ3内を減圧し、キャピラリーアレイ端2b側から窒素ガスを吸引させる。キャピラリーカラム4に窒素ガスが導入され、キャピラリーカラム4内が乾燥される。
所定時間経過後、ポンプ27を停止し、チャンバ3内を大気に開放する。その後、窒素ガスライン17の電磁弁SV8を閉じ、ホルダ昇降機構7aにより、キャピラリーアレイ端2bを上方位置に移動させて、キャピラリーアレイ端2bをドライチャンバ15から引き抜く。
これらの動作にて、乾燥を完了する。
【0042】
次に、酸処理を施すべく、リザーバステージ移動機構9aにより、リザーバステージ9bを移動させて、酸性溶液リザーバをキャピラリーアレイ端2bの下方位置に移動させる。
ホルダ昇降機構7aにより固定部材7bを下降させて、キャピラリーアレイ端2bを下方位置に移動させ、キャピラリーアレイ端2bを酸性溶液リザーバの塩酸溶液に浸す。
その後、アルカリ処理時と同様にして、チャンバ3内を減圧し、キャピラリーアレイ端2b側から塩酸溶液を吸引させる。キャピラリーカラム4に塩酸溶液が導入され、塩酸溶液によりキャピラリーカラム4の内壁面に存在するシラノール基の状態が整えられる。
所定時間経過後、ポンプ27を停止し、チャンバ3内を大気に開放する。その後、ホルダ昇降機構7aにより、キャピラリーアレイ端2bを上方位置に移動させて、キャピラリーアレイ端2bを塩酸溶液リザーバから引き抜く。
これらの動作にて、酸処理を完了する。
【0043】
次に、上記のアルカリ処理後の洗浄と同様の動作を行ない、キャピラリーカラム4内から塩酸溶液を排出させた後、上記の洗浄後の乾燥と同様の動作を行ない、キャピラリーカラム4内を乾燥させる。
これらの動作の後、クランプ11を緩めてホルダ6をアクリル板3aから外し、チャンバ3内に溜った液をアスピレータ等で排出する。また、チャンバ3内部に図示しない容器を備えておき、溜った液をその容器ごとチャンバ3内から取り出すようにしてもよい。
次に、ゲルを収容した図示しないゲル容器をチャンバ3内部に配置する。その後、ホルダ6をアクリル板3aに再度装着し、クランプ11を締め付けてチャンバ3内を密閉する。このとき、ゲル容器のゲル中に試料注入側の全てのキャピラリーカラムの先端が浸かるように、ホルダ6から突出するキャピラリーカラムの長さ、及びゲルを収容したゲル容器の高さを調整しておく。
【0044】
次に、ゲルの充填を行なうべく、リザーバステージ移動機構9aにより、リザーバステージ9bを移動させて、ドレインリザーバをキャピラリーアレイ端2bの下方位置に移動させる。
ホルダ昇降機構7aにより固定部材7bを下降させて、キャピラリーアレイ端2bを下方位置に移動させ、キャピラリーアレイ端2bをドレインリザーバ内に挿入する。
電磁弁SV1、SV2、SV3、SV4のうち、キャピラリーカセット2のホルダ6を装着したチャンバ3に接続された電磁弁をNO側に接続し、キャピラリーカセットを装着していないチャンバ3の電磁弁をNC側に接続し、電磁弁SV6及びSV7をNC側に接続してポンプ27を作動させ、チャンバ3内部を加圧する。このときも、チャンバ3内部減圧時と同様に、使用しないチャンバ3に接続された電磁弁SV1、SV2、SV3又はSV4をNC側に接続してスピードコントローラSC1及びSC2、SC3及びSC4、SC5及びSC6又はSC7及びSC8を介して大気に開放する。これにより、スピードコントローラにより、ホルダ6を装着したチャンバ3と同等の配管抵抗が得られる。
【0045】
チャンバ3内部を加圧することにより、ゲルをキャピラリーカラム内部に押し込む。キャピラリーカラム4にゲルが充填され、検出側からあふれ出す過剰量のゲルは、ドレインリザーバによって受ける。
所定時間経過後、ポンプ27を停止し、チャンバ3内を大気に開放する。その後、ホルダ昇降機構7aにより、キャピラリーアレイ端2bを上方位置に移動させて,キャピラリーアレイ端2bをドレインリザーバから引き抜く。
これらの動作にて、ゲルの充填を完了する。
【0046】
この実施例では、ゲルの充填を加圧により圧入して行なっているが、ゲルを収容したゲル容器をリザーバステージ9bに配置して、減圧によりゲルを吸引して充填するようにしてもよい。
さらに、上記の酸処理、アルカリ処理、洗浄及び乾燥の動作は、ポンプ27、電磁弁SV1〜SV7、検出側ホルダ昇降機構7a及びリザーバステージ移動機構9aの動作を自動で制御して行なうことが好ましい。その結果、オペレータの省力化を図ることができる。
この実施例はポンプ内蔵タイプであるが、充填するゲルが高分子ポリマーなど粘性の高いものであり高圧を発生する必要がある場合には、圧力発生源を別途備えた高圧ボンベや真空ポンプとすることが好ましい。
【0047】
【発明の効果】
マルチキャピラリー電気泳動装置に装着されるキャピラリーアレイを構成する複数本のキャピラリーカラムにゲル溶液を充填するとき、それぞれのキャピラリーカラムを直接密着固定するのではなく、複数本のキャピラリーカラムを気密性よく固定した試料注入側カセットホルダを用いて密着手段にシールしてゲルの充填を行なうので、複数本のキャピラリーカラムのゲル充填を同時に行なうことができる。また、簡便な装着と、装着した際の気密性を両立することができる。
複数本のキャピラリーカラムへのゲル溶液の充填を同時に行なうことができるため、マルチキャピラリー電気泳動の複数試料の泳動を同時に行なうことによる処理能力の向上という最大のメリットをその前処理であるゲル作成のプロセスで損なうことがない。
さらに、アルカリ溶液によりキャピラリーカラム内の汚れを除去したり、酸性溶液によりキャピラリーカラムの内壁面のシラノール基の状態を整えるようにしたので、ゲルの充填及びゲルの重合に関し、キャピラリーカラムの内壁面の状態を最適なものにすることができる。その結果、ゲル重合時の重合状態が向上し、泳動電圧印加時の気泡発生率が減少し、さらにゲルのずり出しが低減するので、泳動結果の再現性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明によりゲルを充填されるキャピラリーカセットを装着するマルチキャピラリー電気泳動装置の一例の概略斜視図である。
【図2】 本発明によりゲルを充填されるキャピラリーカセットの一例の正面図である。
【図3】 同キャピラリーカセットの左側面図である。
【図4】 同キャピラリーカセットの上面図である。
【図5】 一実施例の全体を表す概略構成図である。
【図6】 同実施例のの導入物質選択機構のリザーバステージ周辺を表す斜視図である。
【図7】 同実施例の流路構成を表す配管図である。
【符号の説明】
1 基板
2 キャピラリーカセット
2b 検出側キャピラリーアレイ端
3 チャンバ
4 キャピラリーカラム
6 試料注入側ホルダ
7 検出側ホルダ昇降手段
8 検出側ホルダ
7a 検出側ホルダ昇降機構
7b 検出側ホルダ固定部材
9 リザーバ移動機構
9a リザーバステージ移動機構
9 リザーバステージ
11 クランプ
15 ドライチャンバ
27 ポンプ
Claims (6)
- マルチキャピラリー電気泳動装置に装着される複数のキャピラリーカラムに試料が電気泳動する媒体となるゲルを充填するためのゲル充填装置であって、
それらのキャピラリーカラムは、その試料注入側の端部がホルダの保持部材を貫通して2次元的に配列され、その保持部材との間に気密を保って固定されてキャピラリーカセットを構成しており、
このゲル充填装置は、上面に開口が設けられ、その開口には前記キャピラリーカラムの試料注入側の端部を内側に入れて前記ホルダによりその開口を密閉する密閉手段が設けられ、さらに気体出口が設けられたチャンバと、
不活性ガスを供給する不活性ガス供給機構と、
前記不活性ガス供給機構から不活性ガスが供給される不活性ガス供給口、酸性溶液を収容する酸性溶液容器、純水を収容する純水容器及びゲルを収容するゲル容器が配置され、前記キャピラリーカラムの試料注入側とは反対側の検出側の端部が前記不活性ガス供給口、前記酸性溶液容器、前記純水容器又は前記ゲル容器のいずれかに挿入されるように、前記不活性ガス供給口、前記酸性溶液容器、前記純水容器及び前記ゲル容器並びに前記キャピラリーカラムの検出側の端部を移動させる導入物質選択機構と、
前記チャンバの気体出口に設けられた減圧手段と、を備えたことを特徴とするゲル充填装置。 - 前記導入物質選択機構は、アルカリ溶液を収容するアルカリ溶液容器をさらに備え、前記キャピラリーカラムの検出側の端部が前記不活性ガス供給口、前記酸性溶液容器、前記アルカリ溶液容器、前記純水容器又は前記ゲル容器のいずれかに浸されるように、前記不活性ガス供給口、前記酸性溶液容器、前記アルカリ溶液容器、前記純水容器及び前記ゲル容器並びに前記キャピラリーカラムの検出側の端部を移動させる請求項1に記載のゲル充填装置。
- マルチキャピラリー電気泳動装置に装着される複数のキャピラリーカラムに試料が電気泳動する媒体となるゲルを充填するためのゲル充填装置であって、
それらのキャピラリーカラムは、その試料注入側の端部がホルダの保持部材を貫通して2次元的に配列され、その保持部材との間に気密を保って固定されてキャピラリーカセットを構成しており、
このゲル充填装置は、上面に開口が設けられ、その開口には前記キャピラリーカラムの試料注入側の端部を内側に入れて前記ホルダによりその開口を密閉する密閉手段が設けられ、さらに気体出入口が設けられたチャンバと、
前記チャンバの前記開口が前記ホルダにより密閉された状態で前記キャピラリーカラムの試料注入側の端部が浸される位置にゲルを収容し、前記チャンバの内部に着脱可能に配置されるゲル容器と、
不活性ガスを供給する不活性ガス供給機構と、
前記不活性ガス供給機構から不活性ガスが供給される不活性ガス供給口、酸性溶液を収容する酸性溶液容器、純水を収容する純水容器及びドレイン容器が配置され、前記キャピラリーカラムの試料注入側とは反対側の検出側の端部が前記不活性ガス供給口、前記酸性溶液容器、前記純水容器又はドレイン容器のいずれかに挿入されるように、前記不活性ガス供給口、前記酸性溶液容器、前記純水容器及び前記ドレイン容器並びに前記キャピラリーカラムの検出側の端部を移動させる導入物質選択機構と、
前記チャンバの気体出入口に設けられた加圧・減圧手段と、を備えたことを特徴とするゲル充填装置。 - 前記導入物質選択機構は、アルカリ溶液を収容するアルカリ溶液容器をさらに備え、前記キャピラリーカラムの検出側の端部が前記不活性ガス供給口、前記酸性溶液容器、前記アルカリ溶液容器、前記純水容器又は前記ドレイン容器のいずれかに浸されるように、前記不活性ガス供給口、前記酸性溶液容器、前記アルカリ溶液容器、前記純水容器及び前記ドレイン容器並びに前記キャピラリーカラムの検出側の端部を移動させる請求項3に記載のゲル充填装置。
- 前記チャンバを複数個備え、複数のチャンバで前記減圧手段又は前記加圧・減圧手段を共有し、異なるチャンバに装着されるキャピラリーカラムについて、前記導入物質選択機構の前記不活性ガス供給口、前記酸性溶液容器、前記アルカリ溶液容器、前記純水容器、前記ドレイン容器又はさらに前記ゲル容器を共有する請求項1から4のいずれかに記載のゲル充填装置。
- 前記不活性ガス供給機構、前記導入物質選択機構、及び前記減圧手段又は前記加圧・減圧手段の動作を自動で制御する制御部を備えた請求項1から5のいずれかに記載のゲル充填装置。
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