JP4159216B2 - 静電吸着装置、真空処理装置、及び静電吸着方法 - Google Patents

静電吸着装置、真空処理装置、及び静電吸着方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、処理対象物を吸着して温度制御を行う技術にかかり、特に、処理対象物の吸着状態を判断できる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
真空雰囲気中で行われる薄膜形成やエッチングには、処理対象の基板の温度を精密に制御する必要があり、そのため、従来より図7の符号114で示すような静電吸着装置が用いられている。
【0003】
図7の符号110は真空装置であり、真空槽111を有している。上述の静電吸着装置114は、その真空槽111内部の底壁上に配置されている。
【0004】
静電吸着装置114は、誘電体材料121と、該誘電体材料121内に埋め込まれた正負の吸着電極1221、1222及びヒータ123とで構成されている。各吸着電極1221、1222は、真空槽111外に配置された電源131に接続されており、それぞれ正電圧と負電圧が印加されるように構成されている。
【0005】
また、この真空装置110はエッチング装置であり、真空槽111の天井側に、カソード電極123が配置されている。
【0006】
この静電吸着装置114上に基板112を配置し、真空槽111内を真空排気しながら電源131を起動し、吸着電極1221、1221に正負の電圧を印加すると、基板112と吸着電極1221、1222の間にクーロン力が生じると共に、吸着電極1221、1222間に、基板112を介して微小電流が流れ、ジョンソン・ラーベック効果による吸着力が生じる。
【0007】
この状態では、クローン力及びジョンソン・ラーベック効果による吸着力により、基板112の裏面が静電吸着装置114表面に強く密着される。従って、基板112と静電吸着装置114との間の熱伝導性が非常に高くなっており、基板112を吸着しながらヒータ123に通電して発熱させると、基板112は真空槽内でも素早く昇温する。
【0008】
次いで、真空槽113に接続されたガス導入系113からエッチングガスを導入し、カソード電極に電圧を印加してプラズマを生成し、基板112表面をエッチングする。
【0009】
この場合、基板112が静電吸着装置114表面に正常に吸着されていないと、正常にエッチングすることができない。
【0010】
そこで、上記真空装置110では、吸着電極1221、1222と電源131の間に、電流計1061、1062が挿入されており、基板112の処理中に吸着電極1221、1222と基板112の間に流れる電流を測定し、その値から、静電吸着が正常に行われたか否かを判断していた。
【0011】
しかしながら、上記のように、電流を測定することで基板112の静電吸着の状態を検出しようとすると、処理温度や基板112の種類が異なると、流れる電流の大きさが変わってしまうという問題がある。
【0012】
また、ジョンソン・ラーベック力を用いず、基板112に微小電流を流さずにクーロン力だけで吸着する場合には、電流測定では吸着状態が検出できないという問題がある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、真空雰囲気で基板を静電吸着する際に、基板の吸着状態を判断できる技術を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の発明者等は、高温に加熱された静電吸着装置上に比較的低温の処理対象物を配置し、静電吸着装置表面に静電吸着すると、静電吸着装置の熱が処理対象物側に移動し、静電吸着装置の温度が一時的に低下することを見出した。そして、処理対象物が正常に吸着された場合と、正常に吸着されなかった場合とでは、静電吸着装置の温度低下に差があることが分かった。
【0015】
また、処理対象物が正常に吸着された場合と、正常に吸着されなかった場合とでは、静電吸着後の処理対象物の昇温速度に差があることが分かった。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明はこれらの知見に基いて創作されたものであり、請求項1記載の発明は、吸着電極と、ヒータとが誘電体内に配置され、前記誘電体上に処理対象物を配置し、前記吸着電極に電圧を印加すると、前記処理対象物が前記誘電体上に吸着されるように構成された静電吸着装置であって、前記誘電体の温度と前記処理対象物の温度を測定する測定装置を有し、前記測定装置は、前記ヒータによって昇温された前記誘電体上に前記処理対象物を配置した後、前記処理対象物の静電吸着をした時の前記誘電体の温度低下を測定し、前記温度低下が第一の基準値よりも小さかった場合は前記処理対象物が正常に吸着されていないと判断し、前記処理対象物の静電吸着後の昇温速度が第二の基準値よりも小さかった場合は、前記処理対象物が正常に吸着されていないと判断するように構成され、前記誘電体には貫通孔が設けられ、前記誘電体上に前記処理対象物を配置すると、前記貫通孔の一方の開口部分に前記処理対象物表面が露出するように構成され、前記測定装置は、前記処理対象物の前記開口部分に露出する表面から放射された赤外線を検出し、前記処理対象物の温度を測定するように構成された静電吸着装置である。
請求項2記載の発明は、前記貫通孔内に配置された光路体と、該光路体の端部に設けられ、前記処理対象物表面から放射され、前記光路体を通過した赤外線を検出する赤外線受光部とを有する請求項1記載の静電吸着装置である。
請求項3記載の発明は、前記光路体の前記端部に設けられ、前記光路体を介して前記処理対象物表面に赤外線を照射する赤外線放射部を有する請求項2記載の静電吸着装置である。
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の静電吸着装置と真空槽とを有し、少なくとも前記静電吸着装置の前記誘電体が前記真空槽内に配置された真空処理装置である。
請求項5記載の発明は、前記処理対象物と前記誘電体の温度差が、第三の基準値よりも小さくなった後、プラズマを生成させるように構成された請求項4記載の真空処理装置である。
請求項6記載の発明は、吸着電極と、ヒータとが誘電体内に配置され、前記誘電体上に処理対象物を配置し、前記吸着電極に電圧を印加すると、前記処理対象物が前記誘電体上に吸着されるように構成された静電吸着装置上に配置された処理対象物を静電吸着し、前記処理対象物の温度制御を行う際に、前記処理対象物が正常に吸着されたか否かを判断する吸着状態判断方法であって、前記ヒータによって昇温された前記誘電体上に前記処理対象物を配置した後、前記処理対象物の静電吸着をした時の前記誘電体の温度を測定し、前記誘電体の温度低下が第一の基準値よりも小さかった場合は前記処理対象物が正常に吸着されなかったと判断し、前記処理対象物の静電吸着後の昇温速度が第二の基準値よりも小さかった場合は、前記処理対象物が正常に吸着されなかったと判断する静電吸着方法である。
【0017】
本発明は上記のように構成されており、静電吸着装置の誘電体内に配置されたヒータに通電し、静電吸着装置を予め昇温させておき、その表面に処理対象物を吸着する前後で、誘電体の温度を測定し、誘電体の温度低下の程度から処理対象物の静電吸着状態を判断することができる。また、誘電体の温度とは別に処理対象物の温度を測定し、処理対象物の昇温速度や誘電体との温度差を監視することで、処理対象物の吸着状態や、真空処理の開始時期を判断することができる。
【0018】
処理対象物や静電吸着装置の誘電体の温度測定は赤外線を用いて行うことが出来る。その測定原理を説明すると、測定対象物から放出される電磁波の波長は、測定対象物の温度と一定の関係があることが知られている。完全放射体(黒体)の場合、その表面から放出される電磁波は、下記プランクの公式で表される。
【0019】
【数1】
Figure 0004159216
【0020】
図4のグラフに黒体の分光放射輝度を示す。この図から以下のことが分かる。
(1)温度が低いほど熱放射エネルギーが減少する。
(2)温度が低くなるほど熱放射エネルギーの波長分布が長波長側にずれる。
【0021】
実際の測定対象物は不完全放射体であり、測定対象の放射率をεとすると、放射温度形の見かけの指示温度Sと実温度Tは、下記式、
L(λ,S) = ε・L(λ,T)
で関係付けられる。従って、波長λ、測定対象物の指示温度S、放射率εが分かれば、測定対象物の実温度Tを求めることができる。
【0022】
他方、測定対象物の吸収率αと、反射率ρと、透過率τとの間には、次式の関係がある。
α + ρ + τ = 1
【0023】
熱放射平衡状態でのKirchhoffの法則によれば、物質の放射率εは吸収率αに等しい。更に、測定対象物が不透明の場合、τ=0であるから、放射率εは、下記式で表せる。
ε(=α) = 1 − ρ
【0024】
結局、測定に用いる赤外線波長に対し、測定対象物の透過率τがゼロであれば、測定対象物の反射率ρを測定すると放射率εを求められ、その結果、物体の実温度を求めることができる。
【0025】
処理対象物には熱電対を取り付けることができないから、処理対象物の温度は上記のように赤外線を用いて測定することが望ましい。他方、静電吸着装置(誘電体)の温度は赤外線を用いて測定してもよいし、熱電対等を誘電体に取り付け、又は誘電体中に埋め込んで測定してもよい。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
図1を参照し、符号10は、本発明の一例の真空処理装置を示しており、ここではエッチング装置が例示されている。
【0027】
この真空処理装置10は真空槽11を有しており、該真空槽11内部の天井側にはカソード電極23が配置され、底壁上には本発明の一例の静電吸着装置30が配置されている。
【0028】
該静電吸着装置30は、誘電体31と、2枚の吸着電極321、322と、ヒータ33とを有している。誘電体31は電気絶縁性の材料(例えばアルミナ、アルミニウムナイトライド等)で構成されており、吸着電極321、322は、その内部の表面近傍位置に配置されている。また、ヒータ33は、誘電体31内部の吸着電極321、322よりも下方位置に配置されている。
【0029】
誘電体31は全体が板状に成形されており、その表面がカソード電極13と平行に対向するように配置されている。
【0030】
誘電体31には、表面から裏面まで貫通する貫通孔15が設けられている。また、誘電体31には、その裏面側に開口部が配置され、底面に誘電体31が露出する有底孔25とが設けられている。
【0031】
貫通孔15と有底孔25内には、誘電体31の底面側から円柱状の石英から成る光路体14、24がそれぞれ挿入されている。
【0032】
貫通孔15内の光路体14は、上端部分が誘電体31表面よりも僅かに低い位置に配置されており、従って、静電吸着装置30表面に基板12を処理対象物として配置した場合には、光路体14の上端部分と基板12の裏面とが、非接触の状態で近接するようになっている。ここでは、基板12裏面と光路体14の上端部分の間の間隔(静電吸着装置30の表面と光路体14の上端部分との間の間隔)は、約0.2mm〜1.0mmにされている。
【0033】
また、有底孔25内に挿入された光路体24は、その先端部分が有底孔25の底面に近接するように配置されている。
【0034】
他方、各光路体14、24の全長は誘電体31の厚みよりも大きくなっており、その下端部は、真空槽11外部に気密に導出されている。各光路体14、24の下端部には、それぞれ赤外線装置16、26が取り付けられている。
【0035】
真空槽11外部には、測定装置7が配置されており、各赤外線装置16、26は、測定装置7に電気的に接続されている。
【0036】
赤外線装置16、26は、それぞれ赤外線放射部161、261と赤外線受光部162、262とを有しており、赤外線放射部161、261は測定装置7によって制御され、赤外線を放射するようになっている。
【0037】
第1、第2の孔15、25内の光路体14、24はいわゆる光ファイバーであり、赤外線放射部161、261が赤外線を放射すると、その赤外線は光路体14、24内を直進し、光路体14、24の先端部分から放射されるようになっている。
【0038】
基板12が静電吸着装置30上に載置された状態では、貫通孔15内の光路体14から放射された赤外線は、基板12裏面に照射され反射される。反射光は光路体15中に入射し、内部を逆進して赤外線受光部162で受光される。
【0039】
他方、有底孔25内の光路体24から放射された赤外線は、有底孔25の底面を構成する誘電体31で反射され、同様に、赤外線受光部262で受光されるようになっている。
【0040】
赤外線受光部162、262はそれぞれ測定装置7に接続されており、各赤外線受光部162、262が受光した赤外線の光量は、電気信号に変換されて測定装置7に送信される。
【0041】
赤外線放射部161、261が赤外線を射出していない状態では、赤外線受光部162、262は、ヒータ33によって加熱された基板12と誘電体31とが自ら放射する赤外線をそれぞれ受光しており、基板12と誘電体31とで反射された赤外線の光量と、基板12と誘電体31とが放射する赤外線の光量とが、それぞれ測定装置7に送信されると、測定装置7は、それらの光量から、後述するように基板12と誘電体31の温度を算出するようになっている。
【0042】
このような静電吸着装置30を用い、基板12をエッチング処理する場合には、先ず、真空槽11内を予め真空雰囲気にし、ヒータ33に通電して静電吸着装置30を昇温させておく。
【0043】
その状態で静電吸着装置30上に基板12を配置し、吸着電極321、322に電圧を印加せず、また、赤外線放射部161、261から赤外線を放射させずに、赤外線受光部162によって赤外線の光量を測定する(ここでは波長0.95×10-6mの赤外線の光量を測定した)。
【0044】
この状態では、基板12は静電吸着されておらず、昇温していないから、貫通孔15内の光路体14に設けられた赤外線受光部162では、貫通孔15の壁面を構成する誘電体31から放射された赤外線の光量が測定される。このときの赤外線の受光量をバックグラウンド量とする。
【0045】
また、このときに有底孔25内の光路体24に取り付けられた赤外線受光部262により、光路体24の先端部分と対向する誘電体31(有底孔25の底面を構成する部分の誘電体31)から放射される赤外線の光量を測定し、誘電体31の測定温度を求める(ここでは波長0.95×10-6mの赤外線の光量を測定して温度を求めた)。
【0046】
次に、吸着電極321、322に電圧を印加し、基板12を静電吸着装置30表面に静電吸着すると、基板12と誘電体31表面の間の熱伝導性が向上し、その結果、誘電体31の温度が基板12に移り、基板12が昇温する。
【0047】
この場合、基板12が昇温中でその温度が比較的低い状態では、基板12が放射する赤外線の光量は少ない。従って、基板12が放射する赤外線として測定される光量は、実際には、基板12が放射する赤外線の光量と、貫通孔15壁面を構成する誘電体31が放射する赤外線の光量とが合計された値になる。
【0048】
従って、赤外線受光部162が受光した光量から、基板12の静電吸着前に測定した光量(バックグラウンド量)を差し引くと、基板12が放射した赤外線(波長0.95×10-6mの赤外線)の光量を求めることができる。
【0049】
次に、赤外線放射部161、261から、赤外線受光部162、262が受光したのと同じ波長の赤外線(波長0.95×10-6mの赤外線)を射出し、光路体14、24を直進させ、基板12裏面と、有底孔25の底面を構成する誘電体31に照射する。
【0050】
この赤外線は、基板12裏面と誘電体31とでそれぞれ反射され、返光された赤外光は光路体14、24を逆進し、赤外線受光部162、262でそれぞれ受光される。
【0051】
ここで、赤外線放射部161、261が放射し、基板12表面及び有底孔25の底面を構成する誘電体31に照射される赤外線の光量は予め分かっているから、反射赤外線の光量が分かると、(反射赤外光量)/(射出赤外光量)で定義される反射率ρが求められ、その結果、基板12と誘電体31の実温度が求められる。この計算は、測定装置17によって自動的に行われる。
【0052】
ところで、基板12が静電吸着され、基板12裏面が誘電体31表面に密着されると、誘電体31の熱が基板12側に移動し、誘電体31の温度が一時的に低下する。
【0053】
図2は、基板12を静電吸着装置30上に配置した時刻をゼロとして基板12と誘電体31(静電吸着装置30)の温度変化を表したグラフである。基板12の配置後、10秒経過した時に吸着電極321、322に電圧を印加しており、それにより、誘電体31の温度が低下し、誘電体31の温度を示すグラフの符号Aで示す部分が凹んでいる。
【0054】
上記のような赤外線放射量と反射率ρの測定とを繰り返し行い(例えば1秒間に数回〜30回程度)、基板12と誘電体31の温度を測定し、監視することで、ヒータへの通電量を制御し、基板12の温度を正確に制御することができる。
【0055】
図2のグラフでは、誘電体31の温度は再び上昇し、また、基板12の温度は、吸着電極321、322に電圧を印加してから20秒後には、誘電体31の温度である300℃程度まで昇温しており、基板12がその温度で安定した後、真空槽11に接続されたガス導入系19からエッチングガスを導入すると共に、カソード電極23に電圧を印加し、基板12表面にプラズマを生成させ、基板12のエッチングを行う。
【0056】
以上は、基板12が静電吸着装置30上に正常に吸着された場合であったが、正常に吸着されなかった場合は、図2に示したグラフのような結果は得られない。例えば、静電吸着装置30上にパーディクルが付着したため、基板12裏面が誘電体31表面に密着できず、基板12へ加わる静電吸着力が弱かった場合、又は吸着電極321、322に電圧を印加しても、基板12がほとんど吸着されなかった場合には、吸着時の誘電体31の温度低下は僅かである。また、基板12の昇温速度が遅く、誘電体31の温度である300℃まで達しない。
【0057】
このように、基板12が正常に静電吸着されなかった場合の基板12及び誘電体31の温度変化を図3、4に示す。図3のグラフは、静電吸着力が弱い場合であり、吸着開始時の誘電体31の温度低下は正常な場合に比べると小さく、グラフ上のへこみは小さい(符号Bで示した部分)。
【0058】
また、吸着開始後の基板12の昇温速度は正常な場合に比べると小さく、吸着開始20秒後には210℃までしか昇温しない。
【0059】
また、基板12がほとんど吸着されていない場合、図4のように、誘電体31の温度低下はなく、基板12の昇温速度は非常に遅い。このように、図4のグラフから分かるように、基板12がほとんど吸着されていない場合には、凹みは観察されない。
【0060】
本発明では、上記のように測定装置7が誘電体31の温度を監視し、吸着時の誘電体31の温度変化の大小で基板12の吸着状態を判断している。即ち、吸着時の誘電体31の温度低下が所定値よりも小さかった場合、基板12が正常に吸着されなかったと判断し、警報を発してプロセスの進行を停止させる。
【0061】
また、本発明では、上記のように測定装置7が基板12の温度を監視し、吸着後の基板12の昇温速度の大小で基板12の吸着状態を判断している。即ち、吸着後の基板12の昇温速度が所定値よりも小さかった場合は、基板12が正常に吸着されなかったと判断し、警報を発してプロセスの進行を停止させる。
【0062】
従って、本発明によれば、真空処理装置10内に基板12を搬入し、真空処理を行う前に基板12の吸着状態を判断することができる。
【0063】
また、基板12と誘電体31の温度を測定することで、基板12と誘電体31との間の温度差が分かる。この場合、基板12と誘電体31の間の温度差が、所定値よりも小さくなった後、プラズマを生成させるようにすると、基板12のエッチング処理などの真空処理を確実に行うことができる。
【0064】
また、真空処理中も基板12と誘電体31の温度を監視し、ヒータ33への通電量を制御することで基板12の温度低下や過熱を防止することができる。
【0065】
なお、測定対象物の基板がシリコン単結晶の場合には、赤外線の波長が1.0×10-6m以上の場合と、1.0×10-6m未満の場合とでは、基板の透過率が大きく変化することが知られている。
【0066】
図5に示したグラフは、シリコン基板の温度と放射率の関係である。波長が1.0×10-6mよりも大きい赤外線に対しては、特に低温では基板が半透明の状態になっている。
【0067】
つまり、波長が長い赤外線は基板を透過してしまうため、基板12表面上にプラズマが生成されている状態で、赤外線受光部162によって基板12の温度測定を行う場合には、波長の長い赤外線を用いると、プラズマが放射する赤外線も赤外線受光部162に到達してしまうため、基板12の温度測定を正確に行うことができない。
【0068】
従って、真空処理中に基板12の温度を測定する場合には、波長1.0×10-6m未満、好ましくは波長0.95×10-6m以下の赤外線を用いるとよい。赤外線放射部161が基板12裏面に照射する赤外線の波長も、1.0×10-6m未満、好ましくは波長0.95×10-6m以下のものを用いるとよい。
【0069】
吸着前と吸着直後の基板12の温度を測定する際にもその波長の赤外線を用いることができる。
【0070】
測定対象物がガリウム・ひ素基板等の他の材料で構成されている場合には、用いる赤外線の波長は変えるとよい。
【0071】
なお、上記実施例では、石英性の棒を光路体に用いたが、サファイヤの棒を用いてもよい。要するに、基板裏面が放射又は反射した赤外線を減衰させない材料であればよい。
【0072】
また、上記実施例では、誘電体31の温度を測定するために、赤外線測定装置26を用いたが、誘電体内部に熱電対を埋め込み、熱電対の起電力によって温度測定を行ってもよい。
【0073】
更にまた、上記の真空処理装置10はエッチング装置であったが、本発明の真空処理装置は、スパッタリング装置、CVD装置、蒸着装置等の真空雰囲気中で基板を処理する真空処理装置を広く含むものであり、本発明の静電吸着装置は、それらの真空処理装置に広く使用することができるものである。
【0074】
【発明の効果】
真空雰囲気中で基板を静電吸着する場合に、処理対象物の吸着状態を正確に判断することができる。処理対象物の温度を測定すると、吸着状態の判断は一層正確になる。
また、処理対象物の昇温中や真空処理中でも、静電吸着装置と処理対象物の温度を測定できるので、処理対象物の状態を正確に判断することができる。
特に、処理対象物に流れる電流で吸着状態を判断するのではないから、処理対象物が絶縁性物質である場合にも吸着状態を判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の真空処理及び静電吸着装置を説明するための図
【図2】基板が正常に吸着された場合の基板及び静電吸着装置の温度変化を説明するためのグラフ
【図3】基板の吸着が弱かった場合の基板及び静電吸着装置の温度変化を説明するためのグラフ
【図4】基板がほとんど吸着されなかった場合の基板及び静電吸着装置の温度変化を説明するためのグラフ
【図5】シリコン基板の赤外線波長と放射率との関係を示すグラフ
【図6】黒体の赤外線波長と放射強度の関係を示すグラフ
【図7】基板の静電吸着状態を判断する従来技術の例
【符号の説明】
12……処理対象物(基板)
14……光路体
15……貫通孔
161、261……赤外線放射部
162、262……赤外線受光部
30……静電吸着装置
31……誘電体
321、322……吸着電極
33……ヒータ

Claims (6)

  1. 吸着電極と、ヒータとが誘電体内に配置され、前記誘電体上に処理対象物を配置し、前記吸着電極に電圧を印加すると、前記処理対象物が前記誘電体上に吸着されるように構成された静電吸着装置であって、
    前記誘電体の温度と前記処理対象物の温度を測定する測定装置を有し、
    前記測定装置は、前記ヒータによって昇温された前記誘電体上に前記処理対象物を配置した後、前記処理対象物の静電吸着をした時の前記誘電体の温度低下を測定し、前記温度低下が第一の基準値よりも小さかった場合は前記処理対象物が正常に吸着されていないと判断し、
    前記処理対象物の静電吸着後の昇温速度が第二の基準値よりも小さかった場合は、前記処理対象物が正常に吸着されていないと判断するように構成され
    前記誘電体には貫通孔が設けられ、前記誘電体上に前記処理対象物を配置すると、前記貫通孔の一方の開口部分に前記処理対象物表面が露出するように構成され、
    前記測定装置は、前記処理対象物の前記開口部分に露出する表面から放射された赤外線を検出し、前記処理対象物の温度を測定するように構成された静電吸着装置。
  2. 前記貫通孔内に配置された光路体と、該光路体の端部に設けられ、前記処理対象物表面から放射され、前記光路体を通過した赤外線を検出する赤外線受光部とを有する請求項1記載の静電吸着装置。
  3. 前記光路体の前記端部に設けられ、前記光路体を介して前記処理対象物表面に赤外線を照射する赤外線放射部を有する請求項2記載の静電吸着装置。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の静電吸着装置と真空槽とを有し、少なくとも前記静電吸着装置の前記誘電体が前記真空槽内に配置された真空処理装置。
  5. 前記処理対象物と前記誘電体の温度差が、第三の基準値よりも小さくなった後、プラズマを生成させるように構成された請求項4記載の真空処理装置。
  6. 吸着電極と、ヒータとが誘電体内に配置され、前記誘電体上に処理対象物を配置し、前記吸着電極に電圧を印加すると、前記処理対象物が前記誘電体上に吸着されるように構成された静電吸着装置上に配置された処理対象物を静電吸着し、前記処理対象物の温度制御を行う際に、前記処理対象物が正常に吸着されたか否かを判断する吸着状態判断方法であって、
    前記ヒータによって昇温された前記誘電体上に前記処理対象物を配置した後、前記処理対象物の静電吸着をした時の前記誘電体の温度を測定し、前記誘電体の温度低下が第一の基準値よりも小さかった場合は前記処理対象物が正常に吸着されなかったと判断し、
    前記処理対象物の静電吸着後の昇温速度が第二の基準値よりも小さかった場合は、前記処理対象物が正常に吸着されなかったと判断する静電吸着方法。
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