ところで、内燃機関が長期間にわたって使用される際には、内燃機関の吸気系から取り入れられた吸気ガスに混入した微粒子ならびにポンプの潤滑部および駆動部から発生した微粒子が二次空気供給通路の内壁等に付着し、堆積物として堆積する。また、排気ガス中の微粒子も二次空気供給通路の内壁等に付着し、堆積物として堆積する。このような場合には、二次空気供給通路の配管抵抗が増加することによって二次空気供給通路内の圧力が上昇するために、実際には二次空気の流量は低下しているものの、二次空気の流量が増加したものと誤って判断される可能性がある。
また、二次空気はポンプを駆動することにより二次空気供給通路を通って内燃機関の排気系に供給されるが、ポンプを長期間使用する際には経年劣化によりポンプの吐出能力が次第に低下する。
しかしながら、特許文献1から特許文献3に記載される二次空気供給装置は二次空気供給通路に堆積物が堆積していなくてポンプの吐出能力も低下していない状態を想定している。このため、内燃機関を長期間にわたって使用することによって二次空気供給通路に堆積物が堆積したり、経年劣化によりポンプの吐出能力が低下したりする場合には、特許文献1における二次空気算出方法によって算出された二次空気の流量は二次空気供給通路を実際に流れる二次空気の流量とは異なる場合がある。
また、特許文献1においては流量センサを別途設ける必要があるので製造コストが増すことに加え、空燃比から二次空気供給量を算出する場合には二次空気供給量の精度が劣ることが考えられる。さらに、特許文献1に開示されるように二次空気供給通路に絞りを設けた場合には二次空気供給時の圧力損失が増大するので、実際の内燃機関に設けられた二次空気供給装置に使用するのは好ましくない。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ポンプの吐出能力と二次空気供給通路の配管抵抗とを考慮した上での正確な二次空気の流量を算出できる二次空気供給装置の流量算出方法を提供することを目的とする。
前述した目的を達成するために1番目に記載の発明によれば、内燃機関の排気通路に設けられた排気浄化装置よりも上流側に二次空気を供給する二次空気供給通路と、前記二次空気供給通路に二次空気を供給するポンプと、前記ポンプの下流に設けられていて前記二次空気供給通路を開閉する開閉手段と、前記ポンプと前記開閉手段との間に設けられていて前記二次空気供給通路の圧力を測定する圧力センサとを有する二次空気供給装置の流量算出方法において、前記開閉手段の開放時でかつ前記ポンプの駆動時に前記圧力センサにより前記二次空気供給通路における第一の圧力を計測し、前記開閉手段の閉鎖時でかつ前記ポンプの駆動時に前記圧力センサにより前記二次空気供給通路における第二の圧力を計測し、前記開閉手段の開放時でかつ前記ポンプの駆動時に前記二次空気供給通路を流れる二次空気の流量を前記第一の圧力および前記第二の圧力を用いて算出する二次空気供給装置の流量算出方法が提供される。
すなわち1番目の発明によって、二次空気供給通路の内壁等に堆積する堆積物に基づく二次空気供給通路の配管抵抗の増加度合いを第一の圧力および第二の圧力から判断するようにし、経年変化により低下するポンプの吐出能力を第二の圧力から判断しているので、ポンプの吐出能力と二次空気供給通路の配管抵抗とを考慮した上での正確な二次空気の流量を算出することが可能となる。例えば開閉手段の開放時でかつポンプの駆動時における第一の圧力が比較的大きい場合には、二次空気供給通路の内壁等に比較的多量の堆積物が堆積しているために二次空気供給通路の配管抵抗は増加していると判断し、これにより二次空気の流量は比較的小さくされる。また、開閉手段の閉鎖時でかつポンプの駆動時における第二の圧力が比較的小さい場合には、ポンプの能力が経年劣化により低下してきたと判断できるので、二次空気の流量は比較的小さくされる。なお、1番目の発明においては、第一の圧力および第二の圧力の関数としての二次空気の流量を示すマップを用意し、このマップから二次空気の流量を直接的に求めるようにしてもよい。
2番目の発明によれば、1番目の発明において、さらに、算出された前記二次空気の流量が所定の値よりも小さい場合には、前記二次空気の流量が低下していると判断するようにした
すなわち2番目の発明によって、二次空気の流量が所定の値よりも小さい場合には二次空気供給通路の内面における堆積物が多量であるために、二次空気の流量が低下していると判断することができる。
3番目の発明によれば、1番目または2番目の発明において、さらに、前記第一の圧力が所定の値よりも大きい場合には、前記二次空気の流量が低下していると判断するようにした。
すなわち3番目の発明によって、開閉手段の開放時でかつポンプの駆動時における第一の圧力が所定の値よりも大きい場合には、二次空気供給通路の内面における堆積物が多量であるために、二次空気の流量が低下していると判断することができる。なお、この場合には、算出される二次空気供給通路の流量も当然に小さくなる。
4番目の発明によれば、内燃機関の排気通路に設けられた排気浄化装置よりも上流側に二次空気を供給する二次空気供給通路と、前記二次空気供給通路に二次空気を供給するポンプと、前記ポンプの下流に設けられていて前記二次空気供給通路を開閉する開閉手段と、前記ポンプと前記開閉手段との間に設けられていて前記二次空気供給通路の圧力を測定する圧力センサとを具備し、前記開閉手段の開放時でかつ前記ポンプの駆動時に前記圧力センサにより計測される前記二次空気供給通路における圧力が所定の値よりも大きい場合には、前記二次空気供給通路を流れる二次空気の流量が低下していると判断するようにした二次空気供給装置が提供される。
すなわち4番目の発明によって、開閉手段の開放時でかつポンプの駆動時における第一の圧力が所定の値よりも大きい場合には、二次空気供給通路の内面における堆積物が多量であるために、二次空気の流量が低下していると判断することができる。また、開閉手段が閉鎖した状態でポンプを駆動させるとポンプおよび開閉手段に掛かる負荷が大きいが、4番目の発明においては開閉手段が閉鎖した状態でポンプを駆動させる必要がないので、ポンプおよび開閉手段に過大な負荷をかける可能性を排除できる。
各発明によれば、ポンプの吐出能力と二次空気供給通路の配管抵抗とを考慮した上での正確な二次空気の流量を算出することができるという共通の効果を奏しうる。
さらに、2番目および3番目の発明によれば、二次空気の流量が低下していると判断することができるという効果を奏しうる。
さらに、4番目の発明によれば、ポンプおよび開閉手段に過大な負荷をかける可能性を排除できるという効果を奏しうる。
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の図面において同様の部材には同一の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これら図面は縮尺を適宜変更している。
図1は、本発明に基づく二次空気供給装置を示す概略図である。本発明の二次空気供給装置30は内燃機関1、例えば多気筒V型ガソリンエンジンに取付られている。図1に示されるように内燃機関1の左右両バンクの気筒は相互に独立した排気マニホルド4a、4bを介して排気管7a、7bにそれぞれ連結されている。また、排気管7a、7bには酸化機能を有する触媒を担持した触媒コンバータ5a、5bがそれぞれ設けられている。これら触媒コンバータ5a、5bは排気浄化装置としての役目を果たす。さらに、排気管7a、7bの触媒コンバータ5a、5bの上流側には二次空気供給口8a、8bがそれぞれ設けられている。これら二次空気供給口8a、8bは後述する二つの分岐管23a、23bにそれぞれ接続されている。さらに、排気管7a、7bにおいてはO2センサ6a、6bが触媒コンバータ5a、5bの上流にそれぞれ設けられると共に、O2センサ16a、16bが触媒コンバータ5a、5bの下流にそれぞれ設けられている。従って、触媒コンバータ5a、5bの上流および下流のO2濃度を測定することによって、触媒コンバータ5a、5bにおいて消費されたO2量を算出することが可能となる。一方、内燃機関の左右両バンクの気筒に吸気ガスを供給する吸気管3にはスロットル弁3aが設けられており、この吸気管3はエアクリーナ2に接続されている。エアクリーナ2とスロットル弁3aとの間には空気量(一次空気量)を測定するためのエアフロメータ3bが設けられている。さらに、吸気温度を測定するための温度センサ3cが吸気管3に設けられている。
二次空気供給装置30は吸気管3のスロットル弁3aとエアクリーナ2との間の位置から延びる空気取入管21を有している。空気取入管21は電動エアポンプ9に接続されており、二次空気供給管22が電動エアポンプ9から延びている。図示されるように二次空気供給管22は二つの分岐管23a、23bに分岐しており、これら分岐管23a、23bは排気管7a、7bの二次空気供給口8a、8bにそれぞれ接続している。図1に示されるように分岐管23aには制御弁V1が設けられており、また分岐管23bには制御弁V2が設けられている。さらに、二次空気供給管22にも制御弁V0が設けられている。これら制御弁V0、V1、V2はエアスイッチングバルブ(ASV)またはバキュームスイッチングバルブ(VSV)であり、後述するECU40によって分岐管23a、23bおよび二次空気供給管22内を流れる二次空気量を制御するよう開閉する。さらに、圧力センサ33が二次空気供給管22において制御弁V0と電動エアポンプ9との間に設けられている。つまり、図示されるように、圧力センサ33は制御弁V0の上流に配置されている。
電子制御ユニット40はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス41によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)42、RAM(ランダムアクセスメモリ)43、CPU(マイクロプロセッサ)44、入力ポート45および出力ポート46を具備する。図1に示されるように触媒コンバータ5a、5bの上流に設けられたO2センサ6a、6bおよび触媒コンバータ5a、5bの下流に設けられたO2センサ16a、16bの出力信号は対応するAD変換器47を介して入力ポート45に入力される。また、エアフロメータ3bの出力信号も、対応するAD変換器47を介して入力ポート45に入力される。さらに、二次空気供給管22に設けられた圧力センサ33の出力信号も、対応するAD変換器47を介して入力ポート45に入力される。さらに、吸気通路に設けられた温度センサ3c、および機関冷却水の温度センサ(図示しない)からの出力信号も、対応するAD変換器47を介して入力ポート45に入力される。アクセルペダル50にはアクセルペダル50の踏込み量Lに比例した出力電圧を発生する負荷センサ51が接続され、負荷センサ51の出力電圧は対応するAD変換器47を介して入力ポート45に入力される。また、入力ポート45にはクランクシャフトが例えば30°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ52が接続される。さらに、入力ポート45には車速を表す車速センサ53からの出力パルスが入力される。一方、出力ポート46は対応する駆動回路48を介して内燃機関1の燃料噴射弁(図示しない)、スロットル弁3aを制御するためのステップモータ(図示しない)、二次空気供給管22の制御弁V0、分岐管23a、23bの制御弁V1、V2および電動エアポンプ9に接続される。
触媒コンバータ5a、5b内に配置されていて酸化機能を有する触媒としては、酸化触媒、三元触媒、または吸蔵されたNOxを放出し還元浄化する吸蔵還元型NOx触媒を用いることができる。なお、NOx触媒は燃焼室における平均空燃比がリッチになるとNOxを放出する機能を有する。NOx触媒は例えばアルミナを担体とし、この担体上に例えばカリウムK、リチウムLi、セシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCaのようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムYのような希土類から選ばれた少なくとも一つと、白金Ptのような貴金属とが担持されている。
この二次空気供給装置30は、主に冷間始動時等の燃料濃度が高く、空燃比が小さく、かつ排気浄化装置としての触媒コンバータ5a、5bが十分に昇温しておらず、その機能が十分に発揮されにくい状況において使用される。二次空気を触媒コンバータ5a、5bに供給することにより触媒コンバータ5a、5bにおける酸素濃度が高くなるので、排気ガス中のCO、HC、NOx等を浄化することができるようになる。
図2は、本発明に基づく二次空気供給装置の動作ルーチンを示すフローチャートである。図2における動作ルーチン100のステップ101においては、二次空気供給制御(添付図面および以下の説明では、単に「AI」と省略する)が現在実行されているか否かが判別される。ここで、AIが実行されている場合とは、下流側の制御弁V1、V2の両方が開放していると共に上流側の制御弁V0も開放しており、さらに電動エアポンプ9が駆動しているために二次空気が触媒コンバータ5a、5bに供給されている状態を意味している。ステップ101においてAI実行中であると判定された場合にはステップ102に進み、また、AI実行中でないと判定された場合には後述するステップ105に進む。ステップ102においては、制御弁V0の開放時でかつ電動エアポンプ9の駆動時、つまりAI実行時であるときの二次空気供給管22の圧力Ponが圧力センサ33によって計測される。次いで、ステップ103に進み、圧力Ponが所定の値P0よりも大きいか否か、つまりPon>P0であるか否かが判定される。ステップ103においてAI実行時の圧力Ponが所定の値P0よりも大きくないと判定された場合には、ステップ104に進んでAI終了まで待機する。そして、AIが終了すると、電動エアポンプ9が停止すると共に、上流側の制御弁V0および下流側の制御弁V1、V2が全て閉鎖され、二次空気の供給が停止される。
一方、ステップ103においてAI実行時の圧力Ponが所定の値P0よりも大きいと判定された場合には、ステップ114に進む。ステップ114においては、二次空気供給管22内を通る二次空気の量が低下しているものと判断して処理を終了する。以下、この判断について説明する。前述したように二次空気は電動エアポンプ9を駆動することによって空気取入管21、二次空気供給管22、および分岐管23a、23bを通って触媒コンバータ5a、5bまで流れる。そして、この電動エアポンプ9は所定の上限電圧で動作するように設定されている。図3を参照して後述するように所定の値P0は空気取入管21、二次空気供給管22および分岐管23a、23bの内壁に堆積物が堆積していない場合に上限電圧で電動エアポンプ9を駆動してAI実行したときの二次空気供給管22内の圧力Pjam0であるか、またはこの圧力Pjam0に近くてこの圧力Pjam0以下の値である。このため、AI実行時に計測された圧力Ponが所定の値P0よりも大きい場合には、空気取入管21、二次空気供給管22または分岐管23a、23bの内壁に堆積物が堆積しているために、これら管の配管抵抗が大きくなったものと推測できる。このため、AI実行時に計測された圧力Ponが所定の値P0よりも大きい場合には、配管系の配管抵抗が増加したために二次空気配管系を流れる二次空気の流量は実際には小さくなっていると判断できる。
次いで、ステップ105においてはAI実行時の圧力Ponが計測されているか否か、つまり後述するように制御弁V0を閉鎖した状態で電動エアポンプ9を駆動させる締切り動作を行うための実行条件が成立しているか否かが判定される。AI実行時の圧力Ponが既に計測されている場合にはステップ106に進む。また、圧力Ponが計測されていない場合には後述するステップ111に進む。
ステップ106においては、電動エアポンプ9を駆動させる。なお、前述したようにステップ106に到達したときにはAI処理は既に終了しているか、またはAI処理をもともと行っていないかであるので、電動エアポンプ9を駆動させるときには上流側の制御弁V0および下流側の制御弁V1、V2の全てが閉鎖している。つまり、ステップ106においては制御弁V0を閉鎖した状態で電動エアポンプ9を駆動させている。次いで、ステップ107に進んで、電動エアポンプ9を駆動させてから所定の時間が経過したか否かを判断する。ステップ107における所定の時間とは電動エアポンプ9を安定した状態で駆動させるのに十分な時間のことを意味する。電動エアポンプ9が安定した状態で駆動していると判断できた場合にはステップ108に進む。なお、ステップ107において所定の時間が経過していない場合には後述するステップ111に進む。
ステップ108においては制御弁V0の閉鎖時でかつ電動エアポンプ9の駆動時において制御弁V0上流における二次空気供給管22の締切り圧力Pjamが圧力センサ33によって計測される。制御弁V0を閉鎖している状態で電動エアポンプ9を駆動させているので、ステップ108において計測される締切り圧力Pjamは、後述するように制御弁V0の開放時でかつ電動エアポンプ9の駆動時、つまりAI実行時の圧力Ponよりもかなり大きくなる。次いで、ステップ109に進み、AI実行時の圧力Ponおよび締切り圧力Pjamを用いてAI実行時に実際に流れる二次空気の流量Qjamを算出する。
図3は本発明の二次空気供給通路における二次空気の圧力と流量との関係を示す図である。図3においては縦軸は二次空気供給管22における二次空気の流量Qを示しており、横軸は二次空気の圧力Pを示している。以下、図3を参照しつつ、AI実行時における二次空気の実際の流量Qjamの算出について説明する。二次空気供給通路における二次空気の圧力Pと流量Qとの間には、図3において実線X0により示されるように概ね指数関数を描くような関係がある。つまり、流量Qは、圧力Pが高くなるほど指数関数的に増大している。ところが、二次空気供給管22などの内壁に堆積物が堆積して配管抵抗が増大した場合には同じ圧力Pであっても流量Qは小さくなるので、圧力Pと流量Qとの間の関係は破線矢印Z1の方向に移動するようになる。例えば、実線X0を二次空気供給管22などの内壁に堆積物が堆積していない状態であるとすれば、堆積物が堆積するにつれて二次空気供給管22等の配管抵抗は増加し、これにより、実線X0は破線矢印Z1の方向に例えば破線X1まで変化するようになる。
一方、電動エアポンプ9を駆動しているときに制御弁V0による二次空気供給管22の閉鎖度合いを変化させたときの電動エアポンプ9駆動時における流量Qを考えると、制御弁V0が完全に閉鎖している場合には圧力Pは最大となり、流量Qは零になる。そして、制御弁V0が完全に開放している場合には流量Qは最大となり、圧力Pは零に近付く。さらに、制御弁V0が半閉じの場合であれば、流量Qおよび圧力Pのそれぞれは前述した制御弁V0完全開放時と制御弁V0完全閉鎖時との中間に位置するようになる。従って、電動エアポンプ9を駆動しているときに制御弁V0を完全に開放した状態から完全に閉鎖した状態まで徐々に変化させる場合には、圧力Pと流量Qとの間には図3に示されるP−Q特性曲線Y0のような関係が得られる。ここで、P−Q特性曲線Y0とX軸線との間の交点は締切り圧力Pjam0、P−Q特性曲線Y0とY軸線との間の交点は流量Qon0である。このP−Q特性曲線Y0が電動エアポンプ9の経年劣化が見られないときに得られるP−Q特性曲線であるとすると、P−Q特性曲線Y0とX軸線との間の交点Pjam0は制御弁V0閉鎖時に電動エアポンプ9を駆動させたときに得られる締切り圧力Pjamの最大値である。また、P−Q特性曲線Y0とY軸線との間の交点の流量Qon0は制御弁V0全開時に電動エアポンプ9を駆動させたときに得られる流量Qonの理論上の最大値である。なお、制御弁V0開放時における理論上の流量Qは図3に示される流量Qon0であるが、実際には配管系の圧損などが存在するので、二次空気供給管22等において配管抵抗の増加が見られない場合であっても、圧力Pと流量Qとは実線X0で示されるような関係となっている。
ところで、公知であるように電動エアポンプ9は経年劣化によりその吐出能力が次第に低下する。電動エアポンプ9の吐出能力が低下していくと、制御弁V0閉鎖時の締切り圧力Pjamおよび制御弁V0開放時の流量Qonの両方はそれぞれ図3に示される締切り圧力Pjam0および流量Qon0よりも小さくなる。つまり、図3に示されるように、電動エアポンプ9の吐出能力が低下していくことによって、P−Q特性曲線Y0は実線矢印Z2の方向に、例えば破線で示す別のP−Q特性曲線Y1まで次第に移動するようになる。
ここで、二次空気供給管22等の配管抵抗の増加および電動エアポンプ9の吐出能力の低下の両方が発生していない場合、例えば二次空気供給装置30の使用を開始してからほとんど時間が経過していない場合を考える。このときには、制御弁V0開放時に電動エアポンプ9を駆動することによってAI実行時の圧力Pon0が得られ、次いで制御弁V0閉鎖時に電動エアポンプ9を駆動することによって締切り圧力Pjam0が得られるものとする。そして、締切り圧力Pjam0が得られることによって、二次空気供給管22等の配管抵抗の増加および電動エアポンプ9の吐出能力の低下の両方が発生していない場合における締切り圧力Pjam0を通るP−Q特性曲線Y0が定まる。次いで、図3から分かるように、AI実行時の圧力Pon0を通る垂線とP−Q特性曲線Y0との交点W00のY座標から、AI実行時の実際の流量Qjam00が定められる。流量Qjam00は二次空気供給管22等の配管抵抗の増加および電動エアポンプ9の吐出能力の低下の両方が発生していない場合におけるAI実行時の流量Qであるので、流量Qjam00はAI実行時に実際に得られうる最大の流量である。
次に、二次空気供給管22等の配管抵抗は増加していないものの、電動エアポンプ9が経年劣化していて吐出能力が低下している場合を考える。この場合には、二次空気供給管22等の配管抵抗は増加していないので、AI実行時の圧力Ponは図3に示される圧力Pon0のままである。ところが、電動エアポンプ9の吐出能力が低下しているので、制御弁V0閉鎖時に電動エアポンプ9を駆動させるときの締切り圧力Pjamは最大締切り圧力Pjam0よりも小さくなっており、例えば締切り圧力Pjamは図3に示されるような締切り圧力Pjam1になる。そして、新たな締切り圧力Pjam1が得られたために、この締切り圧力Pjam1を通るP−Q特性曲線Y1が定まる。このP−Q特性曲線Y1は実験などにより予め求められた複数のP−Q特性曲線Yから選択される。次いで、AI実行時の圧力Pon0を通る垂線とP−Q特性曲線Y1との交点W10のY座標から、AI実行時の実際の流量Qjam10が求められる。そして当然のことながら、電動エアポンプ9の吐出能力が低下しているときの実際の流量Qjam10は流量Qjam00よりも小さくなっている。ここで、二次空気供給管22等の配管抵抗は増加していないが、電動エアポンプ9が経年劣化していて吐出能力が低下している場合に従来技術の流量算出方法によれば、圧力Pon0およびP−Q特性曲線Y0から流量Qjam00が実際の流量として求まることになる。しかしながら、本発明においては電動エアポンプ9の吐出能力の低下を考慮しているので、従来技術の場合よりも正確なAI実行時の流量Qjam10を求めることができる。
さらに、電動エアポンプ9の吐出能力は変化していないものの、二次空気供給管22等の内壁に堆積物が堆積していて配管抵抗が増加している場合を考える。電動エアポンプ9の吐出能力が変化していないので、締切り圧力Pjamは最大締切り圧力Pjam0のままである。従って、締切り圧力Pjam0を通るP−Q特性曲線Y0が採用される。次いで、制御弁V0開放時でかつ電動エアポンプ9の駆動時、つまりAI実行時には、配管抵抗が増加しているために圧力Pon0よりも大きい圧力、例えば圧力Pon1が得られる。なお、圧力Pon1は当然に最大締切り圧力Pjam0よりも小さい。そして、電動エアポンプ9の吐出能力が低下していないときのP−Q特性曲線Y0と圧力Pon1を通る垂線との交点W01のY座標から、AI実行時の実際の流量Qjam01が求められる。そして当然のことながら、流量Qjam01は流量Qjam00よりも小さくなっている。なお、電動エアポンプ9の吐出能力は変化していないが、二次空気供給管22等の内壁に堆積物が堆積していて配管抵抗が増加している場合に従来技術の流量算出方法によれば、所定の式を用いて圧力Pon1から流量Qが算出されるが、本発明においては二次空気供給管22などの配管抵抗の増加を考慮しているので、従来技術の場合よりも正確な流量Qjam01を求めることができる。
最終的に、二次空気供給管22等の配管抵抗が増加していると共に電動エアポンプ9の吐出能力も低下している場合を考えると、前述したのと同様な理由からAI実行時の圧力Ponは圧力Pon0よりも大きい圧力、例えば圧力Pon1が得られ、また締切り圧力Pjamは最大締切り圧力Pjam0よりも小さい圧力、例えば締切り圧力Pjam1が得られる。前述した場合と同様に、締切り圧力Pjam1を通るP−Q特性曲線Y1と圧力Pon1を通る垂線との交点W11のY座標から、AI実行時の実際の流量Qjam11が算出される。当然のことながら、二次空気供給管22等の配管抵抗が増加していると共に電動エアポンプ9の吐出能力も低下している場合の流量Qjamは図3に示される流量Qjam00、流量Qjam01および流量Qjam10よりも小さくなっている。前述した場合と同様に、本発明においては電動エアポンプ9の吐出能力の低下と二次空気供給管22などの配管抵抗の増加とを考慮しているので、従来技術の場合よりも正確な流量Qjam11を求めることができる。
以上、締切り圧力Pjamがポンプの吐出能力低下により締切り圧力Pjam1まで低下した場合、および/またはAI実行時における圧力Ponが二次空気供給管22の配管抵抗増加により圧力Pon1まで増加した場合について説明したが、締切り圧力Pjamおよび圧力Ponは電動エアポンプ9の吐出能力の低下度合いおよび/または二次空気供給管22の配管抵抗の増加度合いに応じて異なり、そのたびに異なるP−Q特性曲線Yが使用されることは明らかである。従って、図3においては流量Qjam01、流量Qjam10、流量Qjam11の順番で流量が小さくなっているが、電動エアポンプ9の吐出能力の低下度合いおよび/または配管抵抗の増加の度合いによってはこれら流量の大きさの順番が変わる場合もある。
このように本発明においては、制御弁V0閉鎖時でかつ電動エアポンプ9の駆動時に得られる締切り圧力Pjamによって電動エアポンプ9の吐出能力の低下度合いが判断され、また、制御弁V0開放時でかつ電動エアポンプ9の駆動時、つまりAI実行時に得られる圧力Ponと締切り圧力Pjamとによって二次空気供給管22の配管抵抗の増加度合いが判断された上でAI実行時の実際の流量Qjamを算出している。このため、これら二つの要素(電動エアポンプ9の吐出能力の低下度合いおよび二次空気供給管22の配管抵抗の増加度合い)を考慮していない従来技術の場合よりも正確にAI実行時の実際の流量Qjamを算出することが可能になる。
また、図3を参照して説明したように予め求めたP−Q特性曲線Y、例えばP−Q特性曲線Y1に基づいて流量Qjamを算出してもよいが、例えば図4に示されるようにAI実行時の実際の流量QjamをAI実行時の圧力Ponおよび締切り圧力Pjamの関数としてマップの形でROMに記憶させるようにしてもよい。この場合には、前述したような演算を行うことなしに、AI実行時の実際の流量Qjamを直接的に求めることができる。
再び図2を参照すると、ステップ109において流量Qjamを求めた後にステップ110に進んで、電動エアポンプ9を停止させる。なお、電動エアポンプ9はステップ108において締切り圧力Pjamを計測した後に停止させてもよい。次いで、ステップ111に進み、流量Qjamが算出されているか否か、つまり実際の流量Qjamを判定できる実行条件が成立しているか否かが判定される。流量Qjamが算出されている場合にはステップ112に進み、算出されていない場合には処理を終了する。
ステップ112においては、AI実行時の流量Qjamが所定の流量Q0よりも大きいか否か、つまりQjam>Q0であるか否かが判定される。ここで、所定の流量Q0は、二次空気供給管22等の配管抵抗の増加および電動エアポンプ9の吐出能力の低下の両方が発生していない場合の流量Qjam00よりも小さくて流量Qjam00に比較的近い値であるか、または所定の流量Q0が流量Qjam00に等しい値でありうる。ステップ112において流量Qjamが所定の流量Q0よりも大きいと判定された場合にはステップ113に進み、二次空気の流量は正常であると判断して処理を終了する。この場合には、算出された流量Qjamが流量Qjam00よりは小さい事態でありうるが、配管抵抗の増加および/または電動エアポンプ9の吐出能力の低下は無視できるものとして正常判断を行う。
一方、ステップ112において流量Qjamが所定の流量Q0よりも大きくないと判定された場合には、ステップ114に進み、配管抵抗の増加および/または電動エアポンプ9の吐出能力の低下が発生しているために、二次空気の流量は低下しているものと判断して処理を終了する。
なお、締切り圧力Pjamは制御弁V0閉鎖時でかつ電動エアポンプ9駆動時に計測されるので、計測時には制御弁V0および電動エアポンプ9に過大な負荷がかかりうる。このため、締切り圧力Pjamを頻繁に測定するような場合には制御弁V0および電動エアポンプ9が破損することもありうるが、図2のステップ103で圧力PonがYES判定された場合には締切り圧力Pjamを計測する必要はないので、前述したような負荷が制御弁V0および電動エアポンプ9にかかるのを避けることができる。なお、図2に示されるフローチャートにおいてはステップ103でNO判定されると、二次空気の流量が低下していると判断して処理を終了しているが、ステップ103でNO判定された後に、ステップ107に進んで、AI実行時の実際の流量Qjamを算出した上で改めてステップ112において流量Qjamが低下しているか否かの判定をするようにしてもよい。このような場合であっても、本発明の範囲に含まれるのは明らかである。
図1を参照して本発明の二次空気供給装置30について説明したが、二次空気供給装置30を搭載できる内燃機関は図1に示されるような左右両バンクに分けられる多気筒V型ガソリンエンジンに限定されない。図5は、本発明の二次空気供給装置を搭載可能な他の内燃機関を示す図である。図5に示されるように、この場合の内燃機関1は単一のバンクとなる構成であり、吸気管3から延びる吸気マニホルド3dが内燃機関1の一側に接続されていると共に排気マニホルド4が内燃機関1の他側に接続されている。図5における二次空気供給装置30’は空気取入管21と電動エアポンプ9と二次空気供給管22とを備えており、二次空気供給管22には圧力センサ33と制御弁V0とが上流側から順番に設けられている。さらに、二次空気供給管22には制御弁V3が制御弁V0の下流に設けられており、二次空気供給管22は内燃機関1の排気管7に接続している。図示されるように排気管7には酸化機能を有する触媒を担持した触媒コンバータ5が設けられており、O2センサ6、16が触媒コンバータ5の上流および下流に設けられている。なお、図5においては理解を容易にするためにECU40を省略している。図5に示されるような構成の内燃機関1および二次空気供給装置30’の場合であっても、下流側の制御弁V3を開放しつつ上流側の制御弁V0を閉鎖した状態で電動エアポンプ9を駆動することにより締切り圧力Pjamを計測し、また下流側の制御弁V3および上流側の制御弁V0を開放した状態で電動エアポンプ9を駆動することにより圧力Ponを計測できるので、このような内燃機関の場合であっても、図2を参照して前述した動作ルーチン100からAI実行時の実際の流量Qjamを正確に算出することが可能となる。
また、前述したように動作ルーチン100は、下流側の制御弁V1、V2(図1を参照されたい)、および制御弁V3(図5を参照されたい)が開放している状態で行われるために、これら制御弁V1、V2、V3が設けられていない場合であっても二次空気供給装置30の動作ルーチン100が実施可能であるのは明らかであり、このような場合も本発明の範囲に含まれる。