JP4157400B2 - 抗原抽出液の製造方法。 - Google Patents

抗原抽出液の製造方法。 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗抽出液の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
臨床検査、食品分析、環境分析等において、例えば微生物等の抗原又は抗体の保持物を含有する被検体液から、該抗原又は抗体の保持物を抽出し、分析試料とすることが行われている。この被検体液からの抗原又は抗体の保持物の抽出は、濾過法、即ち、被濾過液供給室と濾過液排出口とが濾過膜を介して連通する濾過装置を用い、その被濾過液供給室に被検体液を供給して濾過して、該抗原又は抗体の保持物を濾過膜上に捕捉し、液成分を濾過液排出口から排出させる方法が汎用されている。かかる濾過法は、遠心分離法等と比較して特別な装置を必要とせず、迅速且つ簡便に抗原又は抗体の保持物を捕捉・濃縮できるため大変効率的である。
【0003】
このようにして捕捉された抗原又は抗体の保持物は、そのまま分析試料として用いても良いが、分析の感度や特異性を向上させるためには、このものに抽出用液を作用させ、抗原または抗体のみを分離・回収して用いるのが有効である。その場合、この抽出操作は、前記濾過法により、抗原又は抗体の保持物が捕捉された濾過膜に、抗原又は抗体の抽出用液を被濾過液供給室側から流し、濾過液排出口から排出される抽出液を回収する方法が一般的に採用されてきた(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特表平08−502413号公報
【特許文献2】
特表2002−519649号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記方法は、抽出用液と抗原又は抗体の保持物の接触時間が限られる。さらには、濾過膜状に、多量の抗原又は抗体の保持物が保持されていたり、該抗原又は抗体の保持物が粘着質のものであったり、さらには、これら抗原又は抗体の保持物の他に粘着質等の共雑物が含有されている場合には、捕捉されている該抗原又は抗体の保持物の内部まで抽出用液が十分に作用し難くなり、満足できる抽出効率が得られない問題があった。このため、上記抽出方法では、抗原又は抗体の抽出用液を流す操作を加圧下に行い、その流通性を向上させることが行われているが、根本的な解決に至っていないのが実状である。
【0006】
しかして、この問題は、特に、ムチン等の粘着性多糖を含有する唾液や、不溶性、粘着性多糖を含有する微生物を含有する試料が被検体液の場合には、特に顕著に発生しており、そのさらなる改善が望まれていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究を続けてきた。その結果、▲1▼抽出用液を、濾過膜に対して被検体液の濾過方向とは逆方向に通過させることで、該保持物に保持された抗原において抽出効率が向上すること、▲2▼このような抽出用液の濾過装置内への導入は、被濾過液供給室の上流に陰圧手段を備えれば簡単に実現できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、被濾過液供給室と濾過液排出口とが濾過膜を介して連通しており、被濾過液供給室の上流に陰圧手段を備えた濾過装置により、抗の保持物を含有する被検体液を濾過して、該抗の保持物を濾過膜上に捕捉し、次いで、上記陰圧手段により濾過装置内を陰圧にして、濾過液排出口より抽出用液を吸液して該濾過装置内を逆流させ、被濾過液供給室に抗抽出液を貯留することを特徴とする抗抽出液の製造方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の抗抽出液の製造方法は、被濾過液供給室と濾過液排出口とが濾過膜を介して連通しており、被濾過液供給室の上流に陰圧手段を備えた濾過装置を用いて実施する。該濾過装置に関して、以下で図面を使用し説明する。図1は、本発明で使用する濾過装置の代表的態様を示した斜視図である。
【0010】
この濾過装置は、被濾過液供給主室1と濾過液排出口2とを備えている。また、濾過膜3は、濾過膜収納部4内に収納されており、前記被濾過液供給主室1は、接続部5により該濾過膜収納部4に接続されている。したがって、被濾過液供給主室1と濾過液排出口2とは、該濾過膜3を介して互いに連通した構造をしている。この装置は、上記濾過液排出口2と後述する被濾過液供給主室1の上流に設けられる陰圧手段への接続口以外には他に開口部はなく密閉系である。
【0011】
本発明において、被濾過液供給室は、濾過膜より上流に設けられた、被濾過液の一定量が貯留される空隙の全てをいう。したがって、濾過膜収納部4内において、濾過膜3の上部には、該濾過膜収納部に流入した被検体液を一時的に貯留する小空間6が設けられているが、この小空間6も、本発明における被濾過液供給室の一部をなす。
【0012】
一方、本発明において濾過液排出口2は、濾過液等の排出及び後述する抽出溶液の吸液の操作性から、管状等の凸部として形成されているのが好ましい。
【0013】
被濾過液供給主室1の上流には、シリンジ外筒7とプランジャー8で構成されたシリンジ9からなる陰圧手段が設けられている。陰圧手段は、装置内を陰圧にする機能を有するものであれば良いが、このシリンジ9のように加圧機能を備えたものであるのが、被検体液が濾過性の悪い液である場合において、加圧濾過により効率的な濾過を可能にできるため好ましい。
【0014】
本発明の抗抽出液の製造方法では、上記構造の濾過装置を用い、まず、その被濾過液供給主室1に、抗の保持物を含有する被検体液を供給する。この供給操作は、シリンジ9との接続部を濾過液供給主室1から外した後、ピペット等の器具を使用して、濾過液供給主室1に供給すること等により適宜に行えばよい。
【0015】
次いで、この被検体液を、濾過膜3まで下方に流し、自然濾過又はシリンジ9において、プランジャー8を押して装置内を加圧することにより加圧濾過する。この濾過により、被検体液に含まれる抗の保持物は、濾過膜3の上面や内部の細孔に捕捉される。他方、濾過膜3を通過し、抗の保持物から分離された濾過液は、濾過液排出口2から装置外へ排出される。なお、濾過膜3上に捕捉された抗の保持物は、必要に応じて適当な洗浄用溶液(例えば純水、緩衝液、酸溶液、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等を例示できる)で洗浄することもできる。洗浄は、洗浄用溶液を、自然濾過又は加圧濾過することにより行っても良いし、濾過液排出口2より吸液して、濾過装置内を逆流させた後に排出することにより行っても良い。
【0016】
そして、本発明では、シリンジ9において、プランジャー8を引いて濾過装置内を陰圧にして、濾過液排出口2より、抗の保持物から該抗を抽出する作用を有する抽出用液を吸液して、該濾過装置内を逆流させる。それにより、濾過膜3に捕捉される抗の保持物に、該抽出用液が接触し抗が抽出される他、この抽出用液の濾過装置内を逆流する流れに随伴して、該濾過膜3に捕捉されていた抗の保持物の多くが、再度、小空間6を経て被濾過液供給主室1に吸い上げられる。この逆流する流れの過程や、被濾過液供給主室1内に貯留された状態で一定時間、好適には1時間以内、より好適には10秒〜20分放置することにより、抗の保持物に対して抽出用液を十分に作用させることができる。したがって、かかる本発明の方法によれば、抗の抽出効率を大きく向上させることができる。
【0017】
抽出効率をより高めるためには、被濾過液供給主室1内に抽出用液を貯留した後、被濾過液供給主室1を一定時間振動等して、抽出用液に液流を生じさせても良い。
【0018】
本発明では、この被濾過液供給主室1内に貯留され、抗原又は抗体の十分な抽出が終了した抗原又は抗体抽出液を、該被濾過液供給主室1より採取して分析試料として用いても良い。この採取操作は、接続部5を濾過膜収納部4から外して抽出液を排出させたり、シリンジ9との接続部を濾過液供給主室1から外した後、ピペット等の器具を使用して採取すること等により適宜に行えばよい。
【0019】
一方向のみから、1回の吸引操作により抽出用溶液を濾過膜に通過させる方法では、被検体液に含有されていた抗の保持物が粘着質のものであったり、さらには、これら抗の保持物の他に粘着質等の共雑物が含有されている場合等においては、これらが濾過膜3内部の細孔を閉塞し、その奥に詰まった抗の保持物にまで上記抽出用溶液が十分に作用しないことがある。したがって、このような場合には、被濾過液供給主室1及び小空間6に貯留された抗抽出液を、貯留後すぐにまたは一定時間保持後、自然濾過又は加圧濾過し、反対方向からの液流を作用させ、濾過液排出口2から排出される抽出液を分析試料として用いるのが好ましい。なお、このように濾過液排出口2から排出される抽出液を分析試料として用いれば、抗が抽出された後のこれらの保持物の残渣や共雑物が濾過により取り除かれるため、これらが分析時の抗原抗体反応に悪影響を及ぼすおそれがある場合には有意義である。
【0020】
さらに、上記操作でも、満足できるだけの抽出が行えない場合には、上記により濾過液排出口2から排出された抽出液を再度、濾過液排出口より吸液して濾過装置内を逆流させ、被濾過液供給室1に貯留すればよく、本発明では、所望の抽出効率が達成されるまで、該抽出液の濾過、吸液操作を必要回数、通常は濾過を1〜10回、吸液を0〜10回繰り返して行えばよい。
【0021】
さらに、他の方法としては、前記被濾過液供給主室1及び小空間6に貯留された抗抽出液を、自然濾過又は加圧濾過して、抗の保持物を再度、濾過膜3上に捕捉した後、一定時間放置し、膜に残存する抽出液により十分な抽出を遂行することもできる。この場合、抗の保持物は、抽出液と混ざり合った状態で、濾過膜3上の内部細孔に捕捉されていくので、微細部分に捕捉されたものまで抗の保持物は抽出液に良く浸っており、抗の抽出は、効果的に進行する。濾過膜3に含まれる抗抽出液は、▲1▼使用した抽出用液と同じ組成液等の回収用液を、被濾過液供給主室1に供給して自然濾過、加圧濾過したり、濾過液排出口2か吸液して逆流させることにより回収するか、▲2▼濾過膜収納部4を解体して濾過膜3を取り出し、抽出液を回収する等の方法により採取すればよい。このような方法によれば、抽出液量を必要最小限にできる、または、回収溶液を適宜選択することで抽出液の組成を適宜に調整することができる。上記方法では、好適には1時間以内、より好適には10秒〜20分放置することにより、抗の保持物に対して抽出用液を十分に作用させることができる。
【0022】
図2は、本発明で使用する濾過装置の別の態様を示した側面図である。この濾過装置は、濾過膜収納部4内において、濾過膜3の上下に空間がほとんど形成されておらず、この濾過膜収納部4の上面に直接、陰圧手段であるシリンジ9の先端部が脱着可能に接続されたものであり、被濾過液供給室はシリンジ外筒7の内空部に形成される。このような装置は、構造が簡単である他、吸液された抗抽出液のほぼ全てが、該シリンジ外筒7の内空部に貯留されるため、これを分析試料として用いる場合には、操作上効率的である。
【0023】
勿論、濾過装置の形状は図1、図2に限定されない。
【0024】
以上のような構造の、本発明で用いる濾過装置において、濾過膜3は、材質、孔径、形状等は特に限定されず、従来公知の濾過膜を使用することができる。被検体液中の抗の保持物に対し実用上十分な捕捉能が得られるように、孔径や材質の異なる複数の膜を組合わせて使用することも可能である。抗の保持物が微生物である場合には、孔径は0.1μm〜5μmであるのが好ましい。尚、本発明における孔径とは、濾過膜3が多孔質膜である場合は、バブルポイント法(JIS K 3832に記載の方法)により測定される孔径を、また、濾過膜3が濾紙等である場合は、硫酸バリウム等を自然濾過した際の漏洩粒子経を求める方法(JIS P 3801に記載の方法)により測定される保留粒子径を指す。
【0025】
濾過膜3の材質としては、被検体液や抽出用溶液に対する耐薬品性等を考慮し、ガラス繊維;ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリサルフォン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド等のプラスチック類;セルロース、ニトロセルロース、アセチルセルロース等のセルロース類等を使用することができる。また、ガラス繊維濾紙の細片や活性炭等の集合体も使用することができる。
【0026】
濾過膜収納部4の形状は特に限定されず、濾過膜3の形状に応じて適宜選択すればよい。濾過膜収納部4の材質は特に限定されず、量産の容易さや耐薬品性等を考慮し、ポリプロピレンやポリエチレン等のプラスチック材料を使用することができる。吸液や濾過時の濾過膜3の変形や破損を防止する目的で、濾過膜3の上面又は下面には、放射状、格子状、点状等の各種パターン構造を有す板状構造体;ナイロンネット等の網目状材料;多孔性材料;ガラス繊維やポリプロピレン不織布等の繊維材料等を介在させても良い。また、濾過膜3の上面には、濾過を容易にする目的で活性炭や濾紙粉末等の濾過助剤を添加することもできるし、或いはガラスフィルター、ポリプロピレン不織布等のプレフィルターを設置することもできる。
【0027】
陰圧手段としては、濾過装置内部を装置外部に対して陰圧状態とすることができる手段であれば、従来公知の陰圧手段を使用することができる。このような陰圧手段としては、シリンジ、スポイト、ゴム球等の各種手動器具や、真空ポンプ、アスピレーター等の各種装置を使用することができる。このうちシリンジ、スポイト等は、前記した図2の濾過装置のように、被濾過液供給室の機能を兼ねることができるため特に有用である。被検体の濾過を加圧下に行う場合において、加圧を陰圧手段とは別の独立した手段で行うことも適宜に可能である。こうした加圧手段としては、ボンベ、加圧用ポンプ等が挙げられる。
【0028】
次に、本発明において被検体液は、抗の保持物を懸濁状態で含む液体であれば特に限定されず、従来公知の懸濁液を使用できる。このような懸濁液としては、微生物(酵母、カビ、キノコ、細菌、放線菌、単細胞藻類、ウイルス、原生動物、動物または植物の分化してない細胞及び組織培養物等を例示できる)の培養液;飲食物;咽頭ぬぐい液、唾液、血漿、血清、尿等の体液;河川水、下水、工業用水等の環境水;或いは微生物、飲食物、糞便、歯垢等の固形物を水性液体(純水、生理食塩水等の塩溶液、リン酸緩衝液等の緩衝溶液等を例示できる)に適宜懸濁した懸濁液等が挙げられる。
【0029】
上記抗は、公知のものが制限無く対象になる。例えば、細胞膜タンパク質、細胞壁タンパク質、リポ多糖等のタンパク質や糖タンパク質或いは脂質タンパク質;グリコシルトランスフェラーゼ等の酵素タンパク質;莢膜多糖や血清型多糖等の各種糖類;核酸;レセプター等が例示される
【0030】
特に好適な被検体液としては、唾液や歯垢等の口腔内試料を含む被検体液を例示できる。該口腔内試料を含む被検体液には、口腔内細菌等の微生物、及び唾液ムチンや口腔内細菌の産生する不溶性・粘着性グルカン等の粘着性物質が含まれるため、濾過時に濾過膜が閉塞し易い。このような被検体液を抽出処理する場合には、本発明の製造方法を使用することで特に迅速且つ簡便に高濃度の抗原抽出液を製造することができる。
【0031】
近年、歯牙の齲蝕のリスクを診断するために、口腔内より採取した唾液や歯垢を含む中に存在する齲蝕関連菌の濃度を測定することが試みられている。このような齲蝕関連菌を例示すれば、ミュータンスレンサ球菌に属する細菌(ストレプトコッカス・ミュータンスやストレプトコッカス・ソブリヌスを例示できる)、ラクトバチルス属に属する細菌、アクチノミセス属に属する細菌を例示できる。これらの齲蝕関連菌の多くは、糖鎖抗原(血清型多糖抗原)を有する微生物であるが、唾液や歯垢中に10〜10個/ml程度に微量にしか含まれておらず、さらに通常は、不溶性グルカンに覆われた凝集状態で存在しているため、該齲蝕関連菌を直接分析する方法は限定される。このような状況にあって、本発明の方法は、かかる唾液や歯垢中に存在する齲蝕関連菌を高精度で分析するに際して、糖鎖抗原を抽出する方法として適用できる。
【0032】
の保持物に対して使用する抽出用液は、中島暉躬等編(1988年):抽出・精製・分析I:14−38.新基礎生化学実験法2.丸善株式会社、小川智也等編(1992):糖鎖工学:282−321.株式会社産業調査会等に記載されている従来公知の可溶化法や溶媒抽出法において使用される抽出用液や、その他、化学的或いは生物学的切断・分解方法において使用される抽出用液が制限なく使用できる。具体的には、可溶化法や溶媒抽出法に使用する、塩化マグネシウム水溶液、チオシアン酸ナトリウム水溶液、グアニジン塩酸水溶液等の塩溶液;塩酸等の酸溶液;水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ溶液;デオキシコール酸ナトリウム水溶液、オクチルグルコシド水溶液、セチルトリメチルアンモニウムブロミド水溶液、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホン酸水溶液等の界面活性剤溶液;n−ブタノール等の有機溶媒;グリシン塩酸緩衝液等の緩衝溶液等が、また、化学的或いは生物学的切断・分解方法に使用する、亜硝酸水溶液;塩酸等の酸溶液;水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ溶液、プロテアーゼ、ホスホリパーゼ等の酵素を含む溶液等が例示できる。
【0033】
前記した唾液や歯垢等の口腔内試料を含む被検体液から齲蝕関連菌の糖鎖抗原を抽出する場合においては、いわゆる亜硝酸抽出法で使用される抽出用液が使用される。亜硝酸抽出法は、短時間に且つ高い効率で、微生物から血清型多糖抗原等の特異性の高い糖鎖抗原を抽出できる(武井勉.阪大医学雑誌.35:93−109,1990.)。しかしながら、微生物を捕捉した濾過膜上に亜硝酸溶液を添加し流下させる方法では、亜硝酸溶液を濾過膜の細部に浸透させることが困難であるため、十分な抽出効率が達成されない場合があり、本発明の方法を適用するのに特に適している。
【0034】
上記亜硝酸抽出法を実施する場合において抽出用液となる亜硝酸溶液は、一般的には亜硝酸塩溶液と酸溶液とを適宜混合することで調製できる。亜硝酸塩溶液としては、亜硝酸ナトリウムや亜硝酸カリウム等の水溶液が使用でき、酸溶液としては酢酸、プロピオン酸、クエン酸等の有機酸水溶液や硝酸、塩酸等の無機酸水溶液が使用できる。亜硝酸塩溶液と酸溶液との混合時において、亜硝酸塩の濃度は、0.1〜8Mになる濃度であり、酸の濃度は0.1〜16Mになる量であるのが好ましい。
【0035】
上記亜硝酸溶液の液温は、通常、10〜60℃が好ましい。また、抽出操作全体を通じて、かかる亜硝酸溶液と抗の保持物が接触している時間は、少なくとも0.5分以上、好適には0.5〜10分であるのが好ましい。
【0036】
亜硝酸抽出法により得られた抽出液は、残留する酸により酸性を呈しているため、該抽出液を免疫学的測定方法等に適用する場合は、塩基性溶液により中和して分析試料として使用することが好ましい。該塩基性溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液やトリス水溶液等の各種塩基を含む水溶液、或いはトリス−塩酸緩衝液等の各種緩衝液を使用することができる。これら中和用液は、被濾過液供給室に直接的に供給して抽出液に混合したり、濾過装置外に取り出した抽出液に加えて混合しても良いが、濾過液排出口2より吸液して混合するのが好ましい。なお、前記したように、抗原又は抗体の保持物を濾過膜3上に捕捉した後、膜に残存する抽出液により十分な抽出を遂行する場合は、この中和用液を、該抽出液の回収用液として利用すればよい。
【0037】
以上により得られた抗の抽出液から該抗原量または抗体量を測定する方法は、抗の化学的、物理的、生物学的、或いは免疫学的性質を利用した公知の測定方法が適宜に採用される。具体的には、抗を構成する元素を分析する方法としては、放射化学分析法、有機元素分析法、原子スペクトル分析法、蛍光X線分析法等が例示できる。官能基や分子の化学的性質を利用する方法としては、pH測定法、イオン電極法、電気化学分析法、固定化酵素法、化学修飾による各種官能基の分析法が例示できる。またマススペクトロメトリー法やNMR法が例示できる。また、固定相と移動相との交換反応を利用した各種クロマトグラフィー法が例示できる。また、分子量や荷電状態といった性質を利用する電気泳動法が例示できる。
【0038】
生化学的性質を利用する方法としては、各種酵素活性測定法やPCR(ポリメラーゼ鎖反応)法等が例示できる。免疫学的性質を利用する方法としては、ラテックス法等の凝集法、放射免疫測定法、酵素免疫測定法、標識抗体法、ウエスタンブロット法等の各種イムノブロット法、イムノクロマトグラフィー法等が例示できる。(中島暉躬等編(1988年):抽出・精製・分析I.新基礎生化学実験法2.丸善株式会社、中島暉躬等編(1988年):抽出・精製・分析II.新基礎生化学実験法2.丸善株式会社、大沢利昭等編(1992年):分子免疫学III.新生化学実験講座12.株式会社東京化学同人)。
【0039】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
【0040】
製造例1
〔ストレプトコッカス・ミュータンスに対する精製ポリクローナル抗体の作製〕
(1)[菌体試料懸濁液の調製]
ブレインハートインフュージョン(以下「BHI」と略すこともある)(DIFCO社)3.7gを100mlの純水に溶解後、オートクレーブ処理し、BHI液体培地を調製した。BHI液体培地2ml中でIngbritt(ストレプトコッカス・ミュータンス、血清型c)を37℃、5時間、嫌気条件下(N:H:CO=80:10:10)で培養した後、培養液を4000g、5分遠心処理し、上清の培地成分を除去し菌体沈殿を回収した。
【0041】
次いで、沈殿物を5mlのリン酸生理食塩緩衝液(pH7.4)(以下PBSと略すこともある)に懸濁し、同様の遠心分離をする操作を3回行い、沈殿物を洗浄した。その後得られた菌体沈殿をPBSに懸濁し、A600=1.0に調整しIngbritt菌体試料懸濁液とした。なお、該菌体試料懸濁液を超音波処理後、適宜希釈した後にBHI培地プレート上に添加し、生じたコロニー数を計数し菌体試料懸濁液の希釈倍率を乗じることで該菌体試料懸濁液の菌体濃度を求めたところ、約1×10個/mlであった。
【0042】
(2)〔ストレプトコッカス・ミュータンスに対する抗血清の作製〕
免疫は以下のように実施した。
【0043】
第1週は0.5mlのIngbritt菌体試料懸濁液を、5日連続で5回ウサギに対し耳介静脈注射した。第2週は1.0mlの該菌体試料懸濁液を、5日連続で5回ウサギに対し耳介静脈注射した。第3週は2.0mlの該菌体試料懸濁液を、5日連続で5回ウサギに対し耳介静脈注射した。第4週は第3週と同様に免疫した。力価の上昇をスライドグラスを利用した菌体の凝集反応の程度により確認後、最終免疫より1週間後に、定法に従い採血しストレプトコッカス・ミュータンスに対する抗血清を得た。
【0044】
(3)〔ストレプトコッカス・ミュータンスに対するポリクローナル抗体の精製〕
オートクレーブ処理したBHI液体培地1L中でIngbrittを37℃、12時間、嫌気条件下で培養した。培養液を4000g、5分遠心処理し、上清の培地成分を除去し菌体沈殿を回収した。次いで、沈殿物を100mlのPBSに懸濁させて、同様の遠心分離をする操作を3回行い、沈殿物を洗浄した。
【0045】
Ingbritt菌体を洗浄した後、0.1M トリス塩酸緩衝液(pH8.0)に懸濁しA600=15に調整した。ここにプロナーゼ(和光純薬社)を5mg/mlとなるように添加し、37℃で1時間保温した。反応終了後、遠心分離し菌体沈殿を回収した。次いで、沈殿物を20mlのPBSに懸濁して、同様の遠心分離をする操作を3回行い、沈殿物を洗浄した。次いで20mlの0.1M グリシン塩酸緩衝液(pH2.0)で3回洗浄し、更に20mlのPBSで3回洗浄し、プロテアーゼ処理菌体懸濁液(A600=12.5)を調製した。
【0046】
次いで、該プロテアーゼ処理菌体懸濁液と(2)で調製した抗血清0.5mlとを混合し、4℃、60分反応させた。混合液を4000g、5分遠心分離し、菌体を回収した。この菌体を10mlのPBSに懸濁し、同様の遠心分離をする操作を3回行い洗浄した。
【0047】
次いで、0.5mlの0.1M グリシン塩酸緩衝液(pH2.0)に菌体を懸濁し、吸着した抗体を溶出し、遠心分離により上清を回収し、1Mトリス−塩酸(pH9.0)を添加しpH7.4に調整した。同様の溶出操作を4回行い、各画分のタンパク質量を280nmの吸光度により測定した。
【0048】
次いで、あらかじめPBSで平衡化した1mlのプロテインA−セファロース(アマシャムファルマシアバイオテク社)を充填したカラムに上記溶出液を添加し、5ml洗浄後、5mlの0.1Mグリシン−塩酸緩衝液(pH3.0)にて溶出し、直ちに1Mトリス−塩酸(pH9.0)を添加しpH7.4に調整した。IgGの溶出画分は、A280を測定することで確認した。
【0049】
以上により、抗血清(0.5ml)をプロテアーゼ処理菌体により精製したポリクローナル抗体を1mg得た。
【0050】
製造例2
〔ストレプトコッカス・ミュータンス測定用免疫クロマトグラフィー法テストストリップの作製〕
(1)〔金コロイド標識されたストレプトコッカス・ミュータンスに対する精製ポリクローナル抗体の調製〕
コロイド粒径が40nmの市販金コロイド溶液(British BioCell International社)10mlに100mMKCOを2μl添加し、pHを9.0に調製後、0.22μmフィルター処理した。金コロイド溶液の520nmの吸光度を測定したところ、A520=1.0であった。
【0051】
次いで、1mg/mlに調整した製造例1(3)で調製したポリクローナル抗体の2mMホウ酸緩衝溶液(pH9.0)64μlを、上記金コロイド溶液に撹拌しながら添加し、室温下5分放置した。次いで、10%スキムミルク−2mMホウ酸緩衝液(pH9.0)を1.1ml撹拌しながら添加し(スキムミルク終濃度1%)、室温下30分放置した。次いで、反応溶液を10℃、10000g、30分遠心処理し、上清を除去後、2mlの2mMPBS(pH7.4)を添加し、下層の金コロイド画分を再懸濁した。該再懸濁した画分の520nmの吸光度を測定したところ、A520=4.9であった。得られた金コロイド画分(以下、「金コロイド標識抗体」と表記することもある)は、4℃にて保存した。
【0052】
(2)〔免疫クロマトグラフィー法テストストリップの作製〕
以下の方法に従い、図3、図4に示す免疫クロマトグラフィー法テストストリップを作製した。
【0053】
ニトロセルロースメンブレン11(MILLIPORE社、Hi−Flow Plus Membrane、HF180、25mm×6mm)上の検出部位15及びコントロール判定部位16上に、それぞれ1mg/mlの製造例1(3)で調製した精製ポリクローナル抗体及び抗ウサギIgG(H+L)ポリクローナル抗体(ICNファーマシューティカルズ社)1μlをスポットし、インキュベーター内で37℃、60分乾燥し抗体を固定化した。該抗体固定化メンブレン11を1%スキムミルク−0.01%TritonX100水溶液中で室温下、5分振とうした。次いで、該メンブレン11を10mMリン酸緩衝液(pH7.4)中で室温下、10分振とう後取り出し、真空ポンプで吸引しながら60分間デシケーター中で乾燥した。
【0054】
また、コンジュゲートパッド12(MILLIPORE社、7.5mm×6mm)を0.5%PVA−0.5%ショ糖水溶液中で1分間振とう後取り出し、真空ポンプで吸引しながら60分間デシケーター中で乾燥した。該コンジュゲートパッド12にA520=1.0に調整した製造例2(1)で調製した金コロイド標識抗体を25μl添加し、真空ポンプで吸引しながら60分間デシケーター中で乾燥した。更に、サンプルパッド13(MILLIPORE社、17mm×6mm)を1%Tween20−PBS水溶液中で1分間振とう後取り出し、真空ポンプで吸引しながら60分間デシケーター中で乾燥した。尚、展開終了後の被検液を保持するための吸収パッド14(MILLIPORE社、20mm×6mm)は未処理のまま用いた。
【0055】
このように調製した、図3に示すような免疫クロマトグラフィーテストストリップの各構成部分をプラスチックの支持台上に配置し、図4に示すような免疫クロマトグラフィーテストストリップを組み立てた。
【0056】
実施例1
〔ストレプトコッカス・ミュータンスの糖鎖抗原抽出液の調製と免疫クロマトグラフィー法テストストリップを使用したストレプトコッカス・ミュータンスの検出(1)〕
(1)〔唾液の採取と培養法による唾液中のストレプトコッカス・ミュータンス濃度の測定〕
異なる17人の被験者にパラフィンペレットを5分間噛ませ、分泌された唾液を滅菌容器に吐き出させることで回収した。
【0057】
得られた唾液を40W、10秒間超音波処理した後、適宜希釈して、100μlをミチス・サリバリウス・バシトラシン(以下、「MSB」と表記することもある。)固体培地上に添加し、37℃、嫌気条件下、48時間培養した。MSB固体培地上に生じるコロニー数を計数し、唾液の希釈率から、ストレプトコッカス・ミュータンス濃度を個/mlとして算出した。MSB固体培地上には主としてストレプトコッカス・ミュータンスとストレプトコッカス・ソブリヌスが、また、一部の口腔内細菌が生育する。
【0058】
コロニーの形態学的分類、及び形態学的に識別不可能なコロニーに関しては、該コロニーを純粋培養後、ミュータンスレンサ球菌の血清型特異的な抗体を利用した免疫学的測定方法及び、糖発酵試験等の生化学的方法により、ストレプトコッカス・ミュータンスをストレプトコッカス・ソブリヌス及び他の口腔内細菌と識別し、ストレプトコッカス・ミュータンス濃度を測定した。
【0059】
(2)〔濾過装置を使用した抗原抽出液の調製〕
シリンジフィルター10(ワットマン社、13mmシリンジフィルタ、ガラス繊維濾紙GF/C、粒子保持能1.2μm)にシリンジ9(テルモ社、2.5ml)をセットし、図2の構造の濾過装置を作製した。
【0060】
プランジャー8を濾過装置より引き抜き、実施例1(1)で採取した唾液0.5mlをシリンジ外筒7内に添加し、プランジャー8を装着後、該プランジャー8を押し下げ加圧することで唾液を濾過した。濾過液排出口2から排出された濾過液は廃棄した。
【0061】
0.5mlの0.1M NaOH水溶液を、シリンジフィルター10の濾過液排出口2より、プランジャー8を引き上げ陰圧とすることで吸液しシリンジ外筒7内まで流入させ、直ちにプランジャー8を押し下げ加圧することで濾過し、濾過液を廃棄した。次いで、0.12mlの1M亜硝酸ナトリウム−0.5M酢酸水溶液を吸液し、シリンジ外筒7内まで流入した上記液をそのまま室温下、2及び5分間保持した。次いで、0.38mlの0.5Mトリス−塩酸緩衝液(pH9.0)を、同様に濾過液排出口2より吸液し、シリンジ外筒7内に抽出液(約0.5ml)を回収し十分に混合した。
【0062】
(3)〔免疫クロマトグラフィー法テストストリップによるストレプトコッカス・ミュータンスの測定〕
上記(2)で使用したシリンジ9からシリンジフィルター10を外した。製造例2(2)で作製した免疫クロマトグラフィー法テストストリップのサンプルパッド13に、該シリンジ9内の抽出液を0.15ml添加し、10分後の検出部位15及びコントロール判定部位16の発色の有無と強度を判定した。判定は、検出部位15の発色強度を4段階(+++:発色強度が強い、++:発色強度が中程度、+:発色強度が弱い、−:発色しない)に目視で識別した。尚、コントロール判定部位16が発色しない場合は、金コロイド標識抗体の展開が不良であることを示すので、再度分析した。
【0063】
免疫クロマトグラフィー法テストストリップの判定結果と、実施例1(1)の培養法により得られた唾液中のストレプトコッカス・ミュータンス濃度とを比較した。結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
Figure 0004157400
【0065】
表1に示したように、培養法により得られたストレプトコッカス・ミュータンスの濃度と相関する判定結果が得られた。本発明の抽出液の製造方法を使用することで、糖鎖抗原を含む抽出液を迅速(抽出処理に要する時間は5分以内)、且つ簡便に調製できた。
【0066】
比較例1
〔抽出用溶液を逆流させない方法によるストレプトコッカス・ミュータンスの糖鎖抗原抽出液の調製と免疫クロマトグラフィー法テストストリップによる検出(1)〕
(1)〔唾液の採取と培養法による唾液中のストレプトコッカス・ミュータンス濃度の測定〕
実施例1(1)の方法に従った。
【0067】
(2)〔濾過装置を使用した抗原抽出液の調製〕
実施例1(2)と同様の濾過装置を作製した。
【0068】
実施例1(2)と同様にして、実施例1(1)で採取した唾液0.5mlを濾過し、次いで0.5mlの0.1M NaOH水溶液を吸液・濾過した。プランジャー8を引き抜き、0.12mlの1M亜硝酸ナトリウム−0.5M酢酸水溶液をシリンジ外筒7内に添加した。プランジャー8を装着後、該プランジャー8を軽く押し下げ液体が滴下しない程度に加圧することで、濾紙に上記亜硝酸水溶液を含ませ、室温下、2及び5分間反応させた。次いで、0.38mlの0.5Mトリス−塩酸緩衝液(pH9.0)を濾過液排出口2より吸液し、シリンジ外筒7内に抽出液(約0.5ml)を回収し十分に混合した。
【0069】
(3)〔免疫クロマトグラフィー法テストストリップによるストレプトコッカス・ミュータンスの測定〕
上記(2)で使用したシリンジ9からシリンジフィルター10を外した。製造例2(2)で作製した免疫クロマトグラフィー法テストストリップのサンプルパッド13に、該シリンジ9中の抽出液を0.15ml添加し、10分後の検出部位15及びコントロール判定部位16の発色の有無と強度を実施例1(3)と同様に判定した。
【0070】
免疫クロマトグラフィー法テストストリップの判定結果と、実施例1(1)の培養法により得られた唾液中のストレプトコッカス・ミュータンス濃度とを比較した。結果を表2に示す。
【0071】
【表2】
Figure 0004157400
【0072】
表2に示したように、被検体液(唾液)を濾過した方向と同一方向に抽出用溶液(亜硝酸水溶液)を通過させる方法で濾過膜に添加した場合は、実施例1と比較して、2分間の抽出では感度及び発色強度が不十分な検体が4検体もあった。また、抽出試薬の添加が煩雑であった。
【0073】
実施例2
〔ストレプトコッカス・ミュータンスの糖鎖抗原抽出液の調製と免疫クロマトグラフィー法テストストリップを使用したストレプトコッカス・ミュータンスの検出(2)〕
(1)〔唾液の採取と培養法による唾液中のストレプトコッカス・ミュータンス濃度の測定〕
実施例1(1)の方法に従った。
【0074】
(2)〔濾過装置を使用した抗原抽出液の調製〕
実施例1(2)と同様の濾過装置を作製した。
【0075】
実施例1(2)と同様にして、実施例1(1)で採取した唾液0.5mlを濾過し、次いで0.5mlの0.1M NaOH水溶液を吸液し、すぐに濾過した。次いで、0.12mlの1M亜硝酸ナトリウム−0.5M酢酸水溶液を吸液し、そのまま室温下、2及び5分間保持した。次いで、シリンジ9内の溶液を全量濾過することによりサンプリングチューブに回収した。排出された液量は約0.12mlであった。次いで、0.38mlの0.5Mトリス−塩酸緩衝液(pH9.0)を添加し、抽出液(約0.5ml)を十分に混合した。
【0076】
(3)〔免疫クロマトグラフィー法テストストリップによるストレプトコッカス・ミュータンスの測定〕
製造例2(2)で作製した免疫クロマトグラフィー法テストストリップのサンプルパッド13に、上記(2)で調製した抽出液0.15mlを添加し、10分後の検出部位15及びコントロール判定部位16の発色の有無と強度を実施例1(3)と同様に判定した。
【0077】
免疫クロマトグラフィー法テストストリップの判定結果と、実施例1(1)の培養法により得られた唾液中のストレプトコッカス・ミュータンス濃度とを比較した。結果を表3に示す。
【0078】
【表3】
Figure 0004157400
【0079】
表3に示したように、抽出液を濾過して回収した場合は、実施例1と比較して発色強度が向上した検体が2検体あった。抽出液中の不溶物の影響が除去できる為、免疫クロマト法における金コロイド標識抗体の展開性が向上した為と考えられた。
【0080】
実施例3
〔ストレプトコッカス・ミュータンスの糖鎖抗原抽出液の調製と免疫クロマトグラフィー法テストストリップを使用したストレプトコッカス・ミュータンスの検出(3)〕
(1)〔唾液の採取と培養法による唾液中のストレプトコッカス・ミュータンス濃度の測定〕
実施例1(1)の方法に従った。
【0081】
(2)〔濾過装置を使用した抗原抽出液の調製〕
実施例1(2)と同様の濾過装置を作製した。
【0082】
実施例1(2)と同様にして、実施例1(1)で採取した唾液0.5mlを濾過し、次いで0.5mlの0.1M NaOH水溶液を吸液・濾過した。次いで、0.12mlの1M亜硝酸ナトリウム−0.5M酢酸水溶液を吸液し、すぐに濾過した。直ちに、該濾液を再度吸液し、そのまま室温下、2及び5分間保持した。次いで、0.38mlの0.5Mトリス−塩酸緩衝液(pH9.0)を濾過液排出口2より吸液し、シリンジ外筒7内に抽出液(約0.5ml)を回収し十分に混合した。
【0083】
(3)〔免疫クロマトグラフィー法テストストリップによるストレプトコッカス・ミュータンスの測定〕
上記(2)で使用したシリンジ9からシリンジフィルター10を外した。製造例2(2)で作製した免疫クロマトグラフィー法テストストリップのサンプルパッド13に、該シリンジ9内の抽出液を0.15ml添加し、10分後の検出部位15及びコントロール判定部位16の発色の有無と強度を実施例1(3)と同様に判定した。
【0084】
免疫クロマトグラフィー法テストストリップの判定結果と、実施例1(1)の培養法により得られた唾液中のストレプトコッカス・ミュータンス濃度とを比較した。結果を表4に示す。
【0085】
【表4】
Figure 0004157400
【0086】
表4に示したように、抽出液を吸液・濾過する操作を繰り返した場合は、実施例1と比較して感度及び発色強度が向上した検体が4検体あった。抽出効率が向上したためと考えられた。
【0087】
実施例4
〔ストレプトコッカス・ミュータンスの糖鎖抗原抽出液の調製と免疫クロマトグラフィー法テストストリップを使用したストレプトコッカス・ミュータンスの検出(4)〕
(1)〔唾液の採取と培養法による唾液中のストレプトコッカス・ミュータンス濃度の測定〕
実施例1(1)の方法に従った。
【0088】
(2)〔濾過装置を使用した抗原抽出液の調製〕
実施例1(2)と同様の濾過装置を作製した。
【0089】
実施例1(2)と同様にして、実施例1(1)で採取した唾液0.5mlを濾過し、次いで0.5mlの0.1M NaOH水溶液を吸液・濾過した。次いで、0.12mlの1M亜硝酸ナトリウム−0.5M酢酸水溶液を吸液し、すぐに濾過し、そのまま室温下、2及び5分間保持して、ガラス繊維濾紙に残留する上記水溶液による抗原の抽出を遂行した。ガラス繊維濾紙に残留した亜硝酸溶液は約0.045mlであった。次いで、0.15mlの0.5Mトリス−塩酸緩衝液(pH9.0)を濾過液排出口2より吸液し、シリンジ外筒7内に抽出液(約0.15ml)を回収し十分に混合した。
【0090】
(3)〔免疫クロマトグラフィー法テストストリップによるストレプトコッカス・ミュータンスの測定〕
上記(2)で使用したシリンジ9からシリンジフィルター10を外した。製造例2(2)で作製した免疫クロマトグラフィー法テストストリップのサンプルパッド13に、該シリンジ9中の抽出液の全量(約0.15ml)をシリンジ9にて添加し、10分後の検出部位15及びコントロール判定部位16の発色の有無と強度を実施例1(3)と同様に判定した。
【0091】
免疫クロマトグラフィー法テストストリップの判定結果と、実施例1(1)の培養法により得られた唾液中のストレプトコッカス・ミュータンス濃度とを比較した。結果を表5に示す。
【0092】
【表5】
Figure 0004157400
【0093】
表5に示したように、吸液・濾過後に濾過膜に残存する抽出用溶液(亜硝酸水溶液)にて抽出した場合は、実施例1と比較して発色強度が向上した検体が2検体あった。抽出液中の抗原濃度を約3.3倍に濃縮可能であった為と考えられた。
【0094】
比較例2
〔抽出用溶液を逆流させない方法によるストレプトコッカス・ミュータンスの糖鎖抗原抽出液の調製と免疫クロマトグラフィー法テストストリップによる検出(2)〕
(1)〔唾液の採取と培養法による唾液中のストレプトコッカス・ミュータンス濃度の測定〕
実施例1(1)の方法に従った。
【0095】
(2)〔濾過装置を使用した抗原抽出液の調製〕
実施例1(2)と同様の濾過装置を作製した。
【0096】
実施例1(2)と同様にして、実施例1(1)で採取した唾液0.5mlを濾過し、次いで0.5mlの0.1M NaOH水溶液を吸液・濾過した。プランジャー8を引き抜き、0.12mlの1M亜硝酸ナトリウム−0.5M酢酸水溶液をシリンジ外筒7内に添加した。プランジャー8を装着後、該プランジャー8を押し下げ加圧することで濾過し、室温下、2及び5分間保持した。次いで、0.15mlの0.5Mトリス−塩酸緩衝液(pH9.0)を濾過液排出口2より吸液し、シリンジ外筒7内に抽出液(約0.15ml)を回収し十分に混合した。
【0097】
(3)〔免疫クロマトグラフィー法テストストリップによるストレプトコッカス・ミュータンスの測定〕
上記(2)で使用したシリンジ9からシリンジフィルター10を外した。製造例2(2)で作製した免疫クロマトグラフィー法テストストリップのサンプルパッド13に、該シリンジ9中の抽出液の全量(約0.15ml)をシリンジ9にて添加し、10分後の検出部位15及びコントロール判定部位16の発色の有無と強度を実施例1(3)と同様に判定した。
【0098】
免疫クロマトグラフィー法テストストリップの判定結果と、実施例1(1)の培養法により得られた唾液中のストレプトコッカス・ミュータンス濃度とを比較した。結果を表6に示す。
【0099】
【表6】
Figure 0004157400
【0100】
表6に示したように、被検体液(唾液)を濾過した方向と同一方向に抽出用液(亜硝酸水溶液)を通過させる方法で濾過膜に添加し、濾過膜に残存する抽出用溶液にて抽出した場合は、実施例1と比較して、抽出液中の抗原濃度を約3.3倍に濃縮可能であるにも関わらず、2分間の抽出では感度および発色強度が不十分な検体が3検体あった。また、抽出試薬の添加が煩雑であった。
【0101】
【発明の効果】
本発明の方法により、被検体液中の抗の保持物を濾過、抽出処理することで、該抗抽出液を迅速、且つ簡便に製造することができる。該抽出液を各種分析に適用することで、被検体液中の抗抗体を高感度に分析できる。特に、齲蝕のリスク診断等が歯科医院等における繁忙な日常現場で実施されることを考慮すれば、本発明で達成される操作の簡便化、抽出時間の短時間化の効果は計り知れない程大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本図は、本発明に使用する濾過装置の代表的態様を示す斜視図である。
【図2】本図は、本発明に使用する濾過装置の別の態様を示す側面図である。
【図3】本図は、実施例で使用した免疫クロマトグラフィー法テストリップの各部材の概略図である。
【図4】本図は、実施例で使用した免疫クロマトグラフィー法テストリップの側面図である。
【符号の説明】
1・・・被濾過液供給主室
2・・・濾過液排出口
3・・・濾過膜
4・・・濾過膜収納部
5・・・接続部
6・・・小空間
7・・・シリンジ外筒
8・・・プランジャー
9・・・シリンジ
10・・・シリンジフィルター
11・・・ニトロセルロースメンブレン
12・・・コンジュゲートパッド
13・・・サンプルパッド
14・・・吸収パッド
15・・・検出部位
16・・・コントロール判定部位

Claims (5)

  1. 被濾過液供給室と濾過液排出口とが濾過膜を介して連通しており、被濾過液供給室の上流に陰圧手段を備えた濾過装置により、抗の保持物を含有する被検体液を濾過して、該抗の保持物を濾過膜上に捕捉し、次いで、上記陰圧手段により濾過装置内を陰圧にして、濾過液排出口より抽出用液を吸液して該濾過装置内を逆流させ、被濾過液供給室に抗抽出液を貯留することを特徴とする抗抽出液の製造方法。
  2. 請求項1の方法を実施した後、被濾過液供給室に貯留された抗抽出液を濾過し、排出された抽出液を、濾過液排出口より吸液して濾過装置内を逆流させ、被濾過液供給室に貯留する操作を少なくとも1回繰り返すことを特徴とする抗抽出液の製造方法。
  3. 濾過装置が、被濾過液供給室の上流に陰圧手段と共に加圧手段も備えたものであり、濾過を加圧下に行う請求項1または請求項2記載の抗抽出液の製造方法。
  4. 抗原の保持物が糖鎖抗原を有する微生物であり、抗原の抽出用液が亜硝酸抽出試薬である請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗抽出液の製造方法。
  5. 抗原の保持物を含有する被検体液が、口腔内試料の含有液であり、該抗原が齲蝕関連菌の抗原である請求項1〜4のいずれか一項に記載の抗抽出液の製造方法。
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