JP4157247B2 - フラッシュ溶接の方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、建築用大断面鋼製部材を突き合わせて溶接接合するフラッシュ溶接の技術分野に属する。
【従来の技術】
【0002】
従来、フラッシュ溶接の方法及び装置は広く知られ実用に供されている。例えば、特開昭61−30287号、特開昭62−286682号、及び特開昭64−66073号公報などに種々なフラッシュ溶接装置が開示されている。
従来一般のフラッシュ溶接の方法は、図12Aに示したように、対向配置した二つの被溶接材a、bをそれぞれ固定クランプc及び移動クランプdで掴み、更に固定電極e及び移動電極fを取り付けて二つの被溶接材a、b間に大電流を断続的に流し、図12Bのように二つの被溶接材aとbの端部を突き合わせて行うフラッシュにより加熱し(フラッシュ工程)、次いで加熱された被溶接材aとbの端部を材軸方向に加圧すること(アプセット工程)により溶接する。
【0003】
前記のようなフラッシュ溶接を実施する装置として、従来はクランプフレームを使用し、同フレームに設置したクランプ用ジャッキの働きで被溶接材を掴み、フラッシュ工程及びアプセット工程を実行する構成とされている。図13にはクランプフレームにより被溶接材を掴み加圧する方法の概念図を示している。
【0004】
【本発明が解決しようとする課題】
従来のフラッシュ装置の適用対象は、パイプライン、鉄道レール、或いは機械部品など、云うなれば比較的断面が小さい部材が通例である。、しかも製品の平滑性が要求され、短時間に大量の溶接が要求されることなどから、図13に示したように、二つの被溶接材a、bはクランプc、dで強固に掴み(クランプし)、その摩擦力(による反力)を前提として、アプセット工程の加圧力を油圧ジャッキで付与している。前記アプセット工程における加圧力は、50N/mm2程度が一般的に必要とされている。
【0005】
しかし、建築用の柱や梁のごとき建築用大断面鋼製部材のフラッシュ溶接を行う場合には、非常に大きな加圧力が必要となり、必然的に被溶接材を掴む力も部材断面積の大きさに比例して大きくなる。
【0006】
それを具体的に説明すると、掴み部分の摩擦係数が0.3の場合は、フラッシュ溶接のアプセット工程に必要な加圧力Pの3.3倍の掴み力Qが必要となる。高層鉄骨構造の一例では、鋼製部材の断面積は1000cm2程度であるから、この部材に必要な加圧力Pは5000KN程度となる。従って、この場合に必要な掴み力Qは16000KN程度と非常に大きなものとなる。
【0007】
一般的に被溶接材の掴み機構には油圧装置が使用される。したがって、前記のように大きな掴み力Qを得るためには、大容量のポンプ油圧ユニット、または大型の倍力装置が必要となり、経済的負担が大きいものとなる。その一方で、建築部材は中空構造で薄肉の部材が大多数であり、前記のように大きな掴み力を作用させると、局部的に座屈する問題もある。
【0008】
本発明の目的は、建築用大断面鋼製部材のフラッシュ溶接を、建築の現場で例えば鉄骨柱の建て方作業に適用して柱の溶接接合を行えるようにすると共に、掴み機構を無用にして大容量のポンプ油圧ユニットや大型の倍力装置を必要なくし、ひいては溶接する建築部材の局部的な座屈の問題を解決し、軽便に実施できて施工性と精度に優れ、経済性も高い、建築用大断面鋼製部材のフラッシュ溶接の方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記従来技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係るフラッシュ溶接の方法は、建築用大断面鋼製部材をフラッシュ溶接で接合する方法であって、
溶接する建築用大断面鋼製部材に反力板または反力帯を取付け、溶接する二つの建築用大断面鋼製部材の反力板または反力帯の間を複数の直線駆動型アクチュエータで相互に連結し、各建築用大断面鋼製部材へ給電用の電極を取り付け、前記直線駆動型アクチュエータによるフラッシュ工程及びアプセット工程用の同期した変位制御により加圧して接合面の突き合わせ溶接を行うことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載したフラッシュ溶接の方法における反力板または反力帯を建築用大断面鋼製部材へ溶接またはボルト止めの手段で取り付けることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載したフラッシュ溶接の方法において、
建築用大断面鋼製部材が柱である場合、反力板はエレクションピースを兼用するものとし、前節の柱上端の反力板に直線駆動型アクチュエータの一端を連結しておき、次節の柱の建て方時に同柱下端の反力板と前記直線駆動型アクチュエータの他端とを連結して接続を行い、次節の柱の建て入れ調整は前記直線駆動型アクチュエータを使用して行い、その後突き合わせ溶接を行うことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施形態及び実施例】
図1〜図3は、請求項1〜3に記載した発明に係るフラッシュ溶接方法のH形鋼対応の実施形態を示している。これは建築用大断面鋼製部材の突き合わせ溶接に適用するフラッシュ溶接、特に溶接する建築用大断面鋼製部材がH形鋼柱1、2である場合を示している。
【0013】
フラッシュ溶接装置の構成としては、上下のH形鋼柱1、2の溶接部10近傍のフランジ中央の位置にそれぞれ材軸方向に垂直に立つ反力板3を取付け、上下に対向配置された反力板3、3同士を相互に直線駆動型アクチュエータ5(以下、単にアクチュエータ5と云う。)とピン機構4で連結している。各H形鋼柱1、2へ給電する電極6は別途に直接取り付けている。
【0014】
図示例の場合、反力板3は溶接7により取り付けているが、アプセット時の加圧力に対する反力を確保できるかぎり、高力ボルト止め等の手段で取り付けることもできる(請求項2記載の発明)。
【0015】
前記ピン機構4に関しては、アクチュエータ5を通じて電流が流れることのないように、アクチュエータ5と反力板3との連結部は電気的に絶縁処理されている。その手段としては、絶縁材料であるセラミックまたはエポキシ樹脂等により被覆された絶縁ピンまたは絶縁ボルトが使用されている。前記の絶縁ピンまたは絶縁ボルトは、火花発生を防ぎ、アクチュエータ5による微妙な変位制御を可能ならしめるように、アクチュエータ5の軸方向にガタを生じない構成で反力板3と緊結される。
【0016】
前記アクチュエータ5は、一例として、同期制御による変位制御が可能な例えば油圧シリンダーであり、フラッシュ工程及びアプセット工程用の同期した変位制御が可能な構成とされている。H形鋼柱1、2の位置ズレも各アクチュエータ5の変位制御により防止する。
【0017】
具体的には図4に制御系を例示したように、アクチュエータ5はサーボ弁11及びストローク検出用のポテンショメータのような変位センサー12を備えている。前記変位センサー12の計測信号を処理するパーソナルコンピュータの如き処理装置13、及び前記処理装置13の指令にしたがい全てのアクチュエータ5の変位が同一となるようにサーボ制御するサーボコントローラ14とで制御装置が構成されている。フラッシュ工程では、10Hz程度の振動を与える必要があるが、その際も同一変位となるように制御する。但し、H形鋼柱1、2の位置ズレの修正、建込み精度の調整時にはアクチュエータ5の個別の変位制御も可能とされている。
【0018】
電極6は、図示例の場合は直接H形鋼柱1、2の外周へ巻き付けたバンド型の構成とし、前記反力板3よりも接合面(溶接位置)10へ近い部位へ取り付けているが、例えば洗濯挟みのごとき構造で実施することもできる。
【0019】
上記のように構成するフラッシュ溶接装置は、建築用大断面鋼製部材が柱である場合、各反力板3はエレクションピースを兼用するものとする。そして、前節(下位)のH形鋼柱2の上端の反力板3には予めアクチュエータ5の下端をピン連結しておき、次節(上位)のH形鋼柱1の建て方時に同柱下端の反力板3とアクチュエータ5の上端とを連結して接続を行う。次節の柱1の建て入れ調整も各アクチュエータ5の変位制御により行い、その後アクチュエータ5の同期した変位制御により加圧してフラッシュ工程及びアプセット工程を行い、接合面10の突き合わせ溶接を行うのである(請求項3記載の発明)。
【0020】
無論、必要があれば、水平な鉄骨梁同士の突き合わせ溶接を、上述したフラッシ溶接の方法で同様に行うことができる。
図5と図6は円形鋼管対応の実施形態を示している。基本的構成は上述した図1〜3の例と変わらないが、円形鋼管柱1A及び2Aの外周の直角4方向に1個づつ反力板3が溶接7で取り付けられ、相対向する配置の反力板3、3同士が4基のアクチュエータ5で連結されている。
【0021】
図7と図8は角鋼管対応の実施形態を示している。やはり基本的構成は図1〜6の例と変わらないが、角鋼管柱1B及び2Bの四周辺の各中央位置に1個づつ反力板3が溶接7で取り付けられ、相対向する配置の反力板3、3同士が4基のアクチュエータ5で連結されている。
【0022】
次に、図9と図10は円形鋼管対応で、しかも反力帯13を使用する実施形態を示している。
反力帯13は、厚さが10mm程度の帯鋼を鋼管柱1A、2Aの外周へ巻き付けて連続隅肉溶接で固着されている。但し、高力ボルト止め等を採用できることは上述した通りである。
【0023】
上下の鋼管柱1A、2Aに取り付けられた反力帯13、13が複数のアクチュエータ5のクランプ14により相互に連結されている。その詳細を図11に示したように、反力帯13の幅寸より少し大きい受け口を有するクランプ14が反力帯13へ食い付き、両者の幅寸の相違による隙間Sを調整する手段としてアクチュエータ5の長手方向と平行に調整ボルト15がねじ込まれ、きっちりと密着した剛接合が行われている。アクチュエータ5と反力帯13の間を電気的に絶縁処理する手段としてクランプ14の受け口と反力帯13との間に絶縁材16が敷き込まれ、調整ボルト15に絶縁ボルトが使用されている。場合によってはクランプ14を絶縁材料で作ることも行われる。
【0024】
したがって、アクチュエータ5を通じて電流が流れることは防止され、火花発生を防ぎ、アクチュエータ5による微妙な変位制御を可能ならしめる。
なお、反力帯13に、クランプ14の食い付きを確定、強固にする凸部を設けておくことも好ましい。
【0025】
【本発明が奏する効果】
請求項1〜3に記載した発明に係るフラッシュ溶接の方法によれば、建築用大断面鋼製部材のフラッシュ溶接を、建築の現場で例えば鉄骨柱の建て方作業に適用して柱の溶接接合を軽便に行えることはもとより、被溶接材の掴み機構を無用にして大容量のポンプ油圧ユニットや大型の倍力装置を必要なくしたので、溶接する建築部材の局部的な座屈の問題が生じない。
【0026】
しかも、建築の現場で例えば鉄骨柱の建て方作業に軽便に適用できる結果、建て方作業と建て入れ調整及び溶接接合の作業を合理的に関連づけて集約化し効率的に進められ、施工性と精度の向上、並びに経済性の向上に大きく寄与するのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るフラッシュ溶接方法の第1の実施形態を示した立面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】アクチュエータの同期した変位制御の説明図である。
【図5】本発明に係るフラッシュ溶接方法の異なる実施形態を示した立面図である。
【図6】図5のC−C断面図である。
【図7】本発明に係るフラッシュ溶接方法の異なる実施形態を示した立面図である。
【図8】図7のD−D断面図である。
【図9】本発明に係るフラッシュ溶接方法の異なる実施形態を示した立面図である。
【図10】図9のE−E断面図である。
【図11】図10のクランプ機構の詳細図である。
【図12】A〜Cは従来一般のフラッシュ溶接の主要工程を示した説明図である。
【図13】被溶接材の掴み機構の概念図である。
【符号の説明】
1、2 H形鋼(建築用大断面鋼製部材)
1A、2A 円形鋼管(建築用大断面鋼製部材)
1B、2B 角形鋼管(建築用大断面鋼製部材)
3 反力板
13 反力帯
5 アクチュエータ
6 電極
Claims (3)
- 建築用大断面鋼製部材をフラッシュ溶接で接合する方法であって、
溶接する建築用大断面鋼製部材に反力板または反力帯を取付け、溶接する二つの建築用大断面鋼製部材の反力板または反力帯の間を複数の直線駆動型アクチュエータで相互に連結し、各建築用大断面鋼製部材へ給電用の電極を取り付け、前記直線駆動型アクチュエータによるフラッシュ工程及びアプセット工程用の同期した変位制御により加圧して接合面の突き合わせ溶接を行うことを特徴とする、フラッシュ溶接の方法。 - 反力板または反力帯は建築用大断面鋼製部材へ溶接またはボルト止めの手段で取り付けることを特徴とする、請求項1に記載したフラッシュ溶接の方法。
- 建築用大断面鋼製部材が柱である場合、反力板はエレクションピースを兼用するものとし、前節の柱上端の反力板に直線駆動型アクチュエータの一端を連結しておき、次節の柱の建て方時に同柱下端の反力板と前記直線駆動型アクチュエータの他端とを連結して接続を行い、次節の柱の建て入れ調整は前記直線駆動型アクチュエータを使用して行い、その後突き合わせ溶接を行うことを特徴とする、請求項1に記載したフラッシュ溶接の方法。
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