JP4156383B2 - 蓄熱システムおよびその蓄熱システムを備えた構造物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、蓄熱システムおよびその蓄熱システムを備えた構造物に関し、より詳細には、隣接する温度成層を良好に分離できる蓄熱効率に優れた蓄熱システムと、前記蓄熱システムを備えたエネルギーを有効に利用できる構造物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、集合住宅やビルなどの構造物に備えられ、空調などに利用される熱エネルギーを貯蔵する様々な蓄熱システムが提案されている。エネルギーを効率よく利用できる蓄熱システムとしては、段階的に熱を利用する温度成層型の蓄熱システムが挙げられる。温度成層型の蓄熱システムは、蓄熱媒体である水の温度による密度差を利用して、蓄熱槽内に垂直方向に温度成層を形成させて蓄熱するものであり、蓄熱槽内の温度レベルが均一化してしまうことによる熱効率の低下を防止することができる。
【0003】
しかしながら、従来の温度成層型の蓄熱システムでは、高温層の水と低温層の水とが混合し、隣接する温度成層間に混合域が形成されて、温度成層が乱されることにより、熱効率が低下してしまうことが問題となっている。
この問題を解決する方法として、高温層の水と低温層の水とが混合されるのを防ぐことができるS字型連通管を利用して、蓄熱槽の流通口を形成する方法がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、S字型連通管を利用しても、隣接する温度成層間に混合域が形成されてしまう場合があり、熱効率を向上させる効果が十分に得られなかった。また、S字型連通管を利用しても、熱効率を向上させる効果が十分に得られないため、蓄熱槽の全ての流通口を、S字型連通管を利用して形成する必要があった。このため、蓄熱槽が複数の槽からなる場合には、使用するS字型連通管の数が非常に多くなり、蓄熱システムの設置や管理に要する手間や費用も非常に多くなってしまうことが問題となっていた。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、混合域が形成されにくく、隣接する温度成層を良好に分離できる蓄熱効率に優れた蓄熱システムを提供することを目的としている。
また、上記の蓄熱システムを備えたエネルギーを有効に利用できる構造物を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明の蓄熱システムは、媒体が入出可能な上部流通口と下部流通口とが鉛直方向に離間して設けられ、内部に温度が異なる媒体からなる温度成層が形成される蓄熱槽と、前記蓄熱槽に供給される前記媒体を設定温度とする熱源機器と、前記蓄熱槽から供給される熱を利用する熱利用手段と、前記蓄熱槽に前記媒体を供給する供給手段に設けられ、前記蓄熱槽に供給される前記媒体の流量を制御する流量制御手段とを備え、前記流量制御手段は、前記蓄熱槽内に配置された制御弁を備え、前記制御弁は、前記制御弁を取り囲む前記媒体の温度に応じて開閉されるものであり、前記制御弁の開閉により前記流量が制御されることを特徴とする。
本明細書において「設定温度」とは、蓄熱槽に畜冷または蓄熱させる場合に予め設定される温度であり、蓄熱槽に供給される媒体に熱源機器が与える温度である。
本明細書において「流量」とは、一定の時間内に流される媒体の容量のことを意味する。
【0007】
上記の蓄熱システムによれば、蓄熱槽に媒体を供給する供給手段に、蓄熱槽に供給される媒体の流量を制御する流量制御手段が備えられているので、蓄熱槽に供給される媒体の流量を制御することができ、上部流通口または下部流通口での媒体の流速を制御することができる。
混合域は、主に、媒体が貯留されている蓄熱槽に、貯留されている媒体と異なる温度の媒体が流入されて、蓄熱槽に貯留されていた媒体からなる温度成層が乱され、蓄熱槽に流入された媒体と蓄熱槽に貯留されていた媒体とが混合されることによって形成され、媒体が供給される上部流通口または下部流通口での媒体の流速が速くなればなるほど多く形成される。
したがって、上部流通口または下部流通口での媒体の流速を制御することで、蓄熱槽に媒体が流入されることによって生じる混合域の形成を抑止することができる。よって、従来の蓄熱システムと比較して、優れた熱効率を得ることが可能となる。
【0008】
また、上記の蓄熱システムにおいて、流量制御手段は、蓄熱槽に媒体を流入し始めてから、蓄熱槽に流入された媒体からなる温度成層が形成されるまでの間が、蓄熱槽に流入された媒体からなる温度成層が形成された後よりも少なくなるように、流量を制御するものとしてもよい。
本発明者らは、鋭意研究を重ね、上記の蓄熱システムにおいて、形成される混合域の量が、蓄熱槽に流入される媒体の流量を多くすればするほど多くなり、少なくすればするほど少なくなるという知見を得た。したがって、形成される混合域の量を少なくするには、蓄熱槽に流入される媒体の流量を少なくすればよい。しかし、蓄熱槽に流入される媒体の流量を少なくすると、蓄熱に要する時間が長くなってしまうという不都合が生じてしまう。
【0009】
そこで、本発明者らは、さらに鋭意研究を重ね、混合域が形成されるのは、主に、蓄熱槽に媒体を流入し始めてから、蓄熱槽に流入された媒体が蓄熱槽に貯留されていた媒体と分離されて新たな温度成層を形成するまでの間であることを見いだし、上記の蓄熱システムを見いだした。
すなわち、上記の蓄熱システムによれば、混合域が主に形成される間の流量を少なくすることができるので、効果的に混合域の形成を防ぐことができる。しかも、蓄熱槽に流入された媒体からなる温度成層が形成された後に、流量を多くすることで、混合域の形成を防ぐために長くなる蓄熱時間を抑制することができる。
【0010】
このような蓄熱システムとすることで、制御弁を取り囲む媒体の温度が設定温度でないときは、制御弁が自動的に閉じられて、制御弁が開かれたときよりも流量が少なくなるように制御され、制御弁を取り囲む媒体の温度が設定温度であるときは、制御弁が自動的に開かれて流量が多くなるように制御される蓄熱システムを実現することができる。
【0011】
例えば、蓄熱槽に媒体を流入し始めてから、蓄熱槽に流入された媒体が蓄熱槽内の制御弁が配置された高さに到着するまでの間は、自動的に流量が少なくなるように制御され、蓄熱槽内の制御弁が配置された高さに、蓄熱槽に流入された媒体が到着した段階で、自動的に流量が多くなるように制御される蓄熱システムを実現することができる。
よって、上記の蓄熱システムによれば、効果的に混合域の形成を防ぐことができ、なおかつ、混合域の形成を防ぐために長くなる蓄熱時間を効果的に抑制することができる。
【0012】
また、上記の蓄熱システムにおいては、制御弁が、温度変化に対応する形状記憶合金の変形を利用して開閉されるものとすることができる。
このような蓄熱システムとすることで、制御弁を取り囲む媒体の温度に応じて自動的に開閉される制御弁を備えた蓄熱システムを容易に得ることができる。
【0013】
また、上記の蓄熱システムにおいて、蓄熱槽は、複数の槽からなり、複数の槽は、媒体が流入される槽から媒体が流出する槽まで直列に連結されているものであってもよい。
本明細書において「直列に連結された」とは、連通管を適切な位置に設ける方法などにより各槽間が連結され、蓄熱槽内に鉛直方向に形成される温度成層を保ったまま、高温側から低温側に向かって、または低温側から高温側に向かって、媒体が各層間を移動可能とされていることを意味する。
【0014】
このような蓄熱システムとすることで、蓄熱槽の高さを鉛直方向に高くすることなく蓄熱槽の容量を増大させることができ、しかも、蓄熱槽の高さを鉛直方向に高くした場合と同様に温度成層が形成される蓄熱システムとすることができる。このため、構造物に蓄熱システムを設置する際に、蓄熱槽を設ける場所を容易に確保することができる。例えば、構造物の基礎部の空間などを利用して蓄熱槽を設けることが可能である。
また、上記の蓄熱システムにおいては、蓄熱槽に畜冷させるか蓄熱させるかを、蓄熱槽に貯留される媒体の温度と熱利用手段によって利用される熱の温度との関係によって決定することができる。また、蓄熱槽に畜冷させるか蓄熱させるかは、季節や用途などに応じて選択することができ、適宜変更することができる。
【0015】
また、上記のいずれかの蓄熱システムにおいては、媒体は、利用可能なものであればいかなるものであってもよく、特に限定されないが、取り扱い易さや、蓄熱温度範囲の任意性、比熱の大きさなどの観点から、水であることが望ましい。
【0016】
また、上記の課題を解決するために、本発明の建造物は、上記のいずれかの蓄熱システムを備えたことを特徴とする。
このような建造物とすることで、熱効率に優れた蓄熱システムを備えたエネルギーを有効に利用できる構造物を実現することができる。
また、上記の建造物では、特に、熱利用手段が空調設備である場合に、エネルギーの有効利用が効果的に実現される。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の蓄熱システムおよび構造物をより詳細に説明する。
図1は、本発明の蓄熱システムの一例を説明するための概略図である。図1に示す蓄熱システム1は、媒体が入出可能な上部流通口82と下部流通口81とを備え、媒体である水を貯留することによって蓄熱する蓄熱槽10と、蓄熱槽10に供給される水を設定温度とするものであり、ヒートポンプなどが用いられる熱源機器20と、蓄熱槽10から供給される熱を利用する熱利用手段である空調設備30と、熱源機器20または空調設備30と上部流通口82または下部流通口81との間を接続する供給手段71、72とを備えている。
【0018】
さらに、図1に示す蓄熱システム1は、蓄熱時に使用される蓄熱用ポンプ21と、熱利用時に使用される熱利用手段用ポンプ31と、蓄熱システム1の利用状況に応じて水の流れを制御するための弁61、62、63、64、65、68とを備えている。
【0019】
蓄熱槽10は、第1槽11と第2槽12と第3槽13と第4槽14とを備え、第1槽11と第2槽12と第3槽13と第4槽14とが、連通管41、42、43によって直列に連結されている。また、第1槽11の底部には、上部流通口82が配置され、第4槽14の水面近くには、下部流通口81が配置され、第1槽11が低温側、第4槽14が高温側となるように、各槽の間を貫通して隣接する低温側の槽の水面近くと高温側の槽の底部とを連結する連通管41、42、43が形成され、水が流入される槽から水が流出する槽に向かって、温度成層を保ったまま水が移動できるようにされている。
【0020】
また、上部流通口82および下部流通口81は、一対の平面視円形の整流板123、124を備え、対向する整流板123、124の間の隙間を介して水が入出されるようになっている。整流板123、124の寸法は、特に制限されるものではない。
【0021】
供給手段71、72は、熱源機器20から蓄熱槽10に供給される設定温度とされた水(以下、「設定温度媒体」という)の流量を制御する制御弁51、52(特許請求の範囲における「流量制御手段」に相当する)を備えている。制御弁51は、第1槽11に配置され、下部流通口81から蓄熱槽10に供給される設定温度媒体の流量を制御するものである。
【0022】
また、制御弁52は、第4槽14に配置され、上部流通口82から蓄熱槽10に供給される設定温度媒体の流量を制御するものである。また、制御弁51、52は、完全に閉じた状態で得られる最小流量が混合域の形成を抑止可能な流量となり、完全に開かれた状態で得られる最大流量が熱源機器20のエネルギー供給能力を最大限使用した場合の流量となるように、予め設定されている。
【0023】
制御弁51、52は、制御弁51、52を取り囲む水の温度に応じて開閉されるものであり、制御弁51は、設定温度以下である場合に開かれ、制御弁52は、設定温度以上である場合に開かれる。
なお、図1に示す蓄熱システムを利用して空調する場合、制御弁51における設定温度は、畜冷時に熱源機器20によって低温度とされる設定温度媒体の温度に応じて決定され、制御弁52における設定温度は、蓄熱時に熱源機器20によって高温度とされる設定温度媒体の温度に応じて決定される。
【0024】
制御弁51、52は、図1に示すように、温度変形バネ112を備えたものであり、温度変形バネ112の変形を利用して開閉される。温度変形バネ112は、形状記憶合金からなり、所定の範囲内の温度変化に対応して長さが著しく変化するものである。温度変形バネ112の長さが著しく変化する温度の範囲は、形状記憶合金の材質によって決定される。したがって、温度変形バネ112は、使用する形状記憶合金の材質を適切に選択することによって、制御弁51にも制御弁52にも好ましく使用される。
【0025】
次に、図1に示す蓄熱システムを利用して空調する方法の一例を説明する。
はじめに、図1に示す蓄熱システムを利用して畜冷、冷房する場合について説明する。図1に示す蓄熱システムを利用して畜冷、冷房する場合には、弁64、65が閉じられ、弁62、63が開けられる。
【0026】
(畜冷時)
畜冷する場合には、弁68が閉じられ、弁61が開けられ、蓄熱用ポンプ21が機動される。そして、蓄熱用ポンプ21の搬送動力により、熱源機器20によって例えば5℃程度の所定の低温度とされた設定温度媒体が下部流通口81から供給される。
【0027】
畜冷が開始されると、図2に示すように、設定温度媒体91と蓄熱槽10に貯留されていた蓄熱槽10に熱源機器20から流入される設定温度媒体と異なる温度の水(以下、「設定温度外媒体」という)である貯留媒体92とによって温度成層が形成される。
【0028】
制御弁51は、設定温度媒体91の流入が開始されてから、制御弁51を構成する温度変形バネ112が配置された位置に設定温度媒体91が到着するまで自動的に閉じられる。また、設定温度媒体91が、制御弁51を構成する温度変形バネ112が配置された位置に到着すると、制御弁51が自動的に開かれる。制御弁51が開かれた時点では、図3に示すように、蓄熱槽10内に設定温度媒体91からなる温度成層が形成されている。
そして、供給された設定温度媒体91が、上部流通口82が配置された位置に到着することにより、蓄熱槽10内の換水が終了し、畜冷が完了する。
【0029】
(冷房時)
冷房する場合には、弁68が開けられ、弁61が閉じられ、熱利用手段用ポンプ31が機動される。そして、熱利用手段用ポンプ31の搬送動力により、設定温度媒体91が下部流通口81から空調設備30に供給され、蓄熱槽10から空調設備30に畜冷された熱が供給されるとともに、空調設備30に利用されることよって熱エネルギーが消費されて設定温度外の温度とされた例えば15℃程度の設定温度外媒体であって、畜冷時における貯留媒体92が上部流通口82から供給される。
【0030】
次に、図1に示す蓄熱システムを利用して畜熱、暖房する場合について説明する。図1に示す蓄熱システムを利用して畜熱、暖房する場合には、弁64、65が開けられ、弁62、63が閉じられる。
【0031】
(畜熱時)
畜熱する場合には、弁68が閉じられ、弁61が開けられ、蓄熱用ポンプ21が機動される。そして、蓄熱用ポンプ21の搬送動力により、熱源機器20によって例えば50℃程度の所定の高温度とされた設定温度媒体が上部流通口82から供給される。
【0032】
暖房する場合の畜熱時と上述した冷房する場合の畜冷時とでは、蓄熱槽10に流入された設定温度媒体の移動方向が反対方向となるが、暖房する場合も畜熱が開始されると、上述した冷房する場合の畜冷時と同様に、温度成層が形成される。
【0033】
制御弁52は、設定温度媒体の流入が開始されてから、制御弁52を構成する温度変形バネ112が配置された位置に設定温度媒体が到着するまで自動的に閉じられる。また、設定温度媒体が、制御弁52を構成する温度変形バネ112が配置された位置に到着すると、制御弁52が自動的に開かれる。制御弁52が開かれた時点では、蓄熱槽10内に設定温度媒体からなる温度成層が形成されている。
そして、供給された設定温度媒体が、下部流通口81が配置された位置に到着することにより、蓄熱槽10内の換水が終了し、蓄熱が完了する。
【0034】
(暖房時)
暖房する場合には、弁68が開けられ、弁61が閉じられ、熱利用手段用ポンプ31が機動される。そして、熱利用手段用ポンプ31の搬送動力により、設定温度媒体が上部流通口82から空調設備30に供給され、蓄熱槽10から空調設備30に蓄熱された熱が供給されるとともに、空調設備30に利用されることよって熱エネルギーが消費されて設定温度外の温度とされた例えば40℃程度の設定温度外の温度とされた設定温度外媒体であって、蓄熱時における貯留媒体が下部流通口81から供給される。
【0035】
なお、図1に示す蓄熱システムにおいて、設定温度媒体と設定温度外媒体との温度差は、特に限定されないが、図1に示す蓄熱システムを利用して空調する場合、優れた熱効率を得るために、5℃〜20℃の範囲とすることが望ましく、10℃〜15℃の範囲とすることがより望ましい。
【0036】
このような蓄熱システムにおいては、完全に閉じた状態で得られる最小流量が混合域の形成を抑止可能な流量となる制御弁51、52が備えられ、設定温度媒体の流入が開始されてから、制御弁51、52を構成する温度変形バネ112が配置された位置に設定温度媒体が到着するまで、制御弁51、52が自動的に閉じられる。よって、蓄熱槽10に設定温度媒体が流入されることによって貯留媒体92からなる温度成層が乱されて生じる混合域の形成を抑止することができ、従来の蓄熱システムと比較して、優れた熱効率が得られる。
【0037】
また、制御弁51、52を温度変化に対応する形状記憶合金の変形を利用して開閉されるものとしたので、制御弁51、52を取り囲む水の温度に応じて自動的に開閉されるものとなる。
また、制御弁51、52が、設定温度媒体の流入が開始されてから温度変形バネ112が配置された位置に設定温度媒体が到着するまで自動的に閉じられ、設定温度媒体が温度変形バネ112が配置された位置に到着すると自動的に開かれるので、設定温度媒体を流入し始めてから設定温度媒体からなる温度成層が形成されるまでの間の流量が、混合域の形成を抑止可能な最小流量となり、設定温度媒体からなる温度成層が形成された後の流量が、熱源機器20のエネルギー供給能力を最大限使用した最大流量となる。
よって、蓄熱槽10に畜冷させる場合であっても、蓄熱槽10に蓄熱させる場合であっても、効果的に混合域の形成を防ぐことができ、なおかつ、混合域の形成を防ぐために長くなる蓄熱時間を抑制することができる。
【0038】
また、蓄熱槽10が、第1槽11と第2槽12と第3槽13と第4槽14の4槽からなり、第1槽11と第2槽12と第3槽13と第4槽14とが、連通管41、42、43によって直列に連結されているので、構造物に蓄熱システムを設置する際に、蓄熱槽10を設ける場所を容易に確保することができる。
【0039】
また、上部流通口82および下部流通口81が、対向する整流板123、124の間の隙間を介して水が入出されるようになっているので、例えば、対向する整流板123、124のうちのいずれか一方を取り外した状態で水が入出される場合と比較して、上部流通口82および下部流通口81の開閉が蓄熱槽10内の温度成層の形成に支障をきたすことを防止できる。
【0040】
なお、本発明の蓄熱システムは、上述した例に限定されるものではなく、例えば、上述した例における制御弁に代えて、設備機器などにおける凍結防止弁や過熱防止弁などに使用され、温度変化に対応する容積変化を利用して開閉されるワックス弁と呼ばれるタイプのものを使用してもよい。
【0041】
また、本発明の蓄熱システムにおいては、槽の数は何槽でもよく、蓄熱槽の容量や設置場所の条件などに応じて決定することができ、特に限定されない。
また、上部流通口82および下部流通口81の形状も、上述した例に限定されるものではなく、例えば、供給手段を構成する配管を単に切断した形状とされていてもよい。
また、整流板123、124の形状は、蓄熱槽10内に形成される温度成層への影響を防ぐために、平面視円形であることが望ましいが、対向する整流板123、124のうちのいずれか一方または両方が、矩形など他の形状とされていてもよい。
【0042】
さらに、上述した例においては、本発明の蓄熱システムの一例として、畜冷時および蓄熱時に、蓄熱槽に供給される媒体の流量を制御する蓄熱システムを例に挙げて説明したが、例えば、より一層熱効率を高めるために、畜冷時および蓄熱時だけでなく、畜冷時および蓄熱時と同様にして冷房時および暖房時も蓄熱槽に供給される媒体の流量を制御するものとしてもよい。また、畜冷時および蓄熱時でなく冷房時および暖房時に、蓄熱槽に供給される媒体の流量を制御するものとしてもよい。この場合にも、従来の蓄熱システムと比較して、優れた熱効率を得ることが可能となる。
【0043】
図4は、本発明の建造物の一例を説明するための概略図である。
図4に示す建造物は、図1に示す蓄熱システムを備えたものである。図4において、符号G.Lは地表面の位置を示し、符号201は基礎部に設けられた地下ピットを示している。地下ピット201には、蓄熱システムを構成する蓄熱槽が設けられ、蓄熱槽から供給される熱が各階に備えられた空調設備30によって利用されるようになっている。
【0044】
このような建造物は、上述した蓄熱システムを備えたものであるので、エネルギーを有効に利用できる。
また、地下ピット201を利用して蓄熱槽を設けることができる。
【0045】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、蓄熱槽に供給される媒体の流量を制御することができ、上部流通口または下部流通口での媒体の流速を制御することができるので、蓄熱槽に媒体が流入されることによって生じる混合域の形成を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の蓄熱システムの一例を説明するための概略図である。
【図2】図1に示す蓄熱システムを利用して空調する方法の一例を説明するための図である。
【図3】図1に示す蓄熱システムを利用して空調する方法の一例を説明するための図である。
【図4】本発明の建造物の一例を説明するための概略図である。
【符号の説明】
1…蓄熱システム
10…蓄熱槽
11…第1槽
12…第2槽
13…第3槽
14…第4槽
20…熱源機器
21…蓄熱用ポンプ
30…空調設備
31…熱利用手段用ポンプ
41、42、43…連通管
51、52…制御弁
61、62、63、64、65、68…弁
71、72…供給手段
81…下部流通口
82…上部流通口
91…設定温度媒体
92…貯留媒体
112…温度変形バネ
123、124…整流板
201…地下ピット
G.L…地表面の位置
Claims (7)
- 媒体が入出可能な上部流通口と下部流通口とが鉛直方向に離間して設けられ、内部に温度が異なる媒体からなる温度成層が形成される蓄熱槽と、
前記蓄熱槽に供給される前記媒体を設定温度とする熱源機器と、
前記蓄熱槽から供給される熱を利用する熱利用手段と、
前記蓄熱槽に前記媒体を供給する供給手段に設けられ、前記蓄熱槽に供給される前記媒体の流量を制御する流量制御手段とを備え、
前記流量制御手段は、前記蓄熱槽内に配置された制御弁を備え、
前記制御弁は、前記制御弁を取り囲む前記媒体の温度に応じて開閉されるものであり、前記制御弁の開閉により前記流量が制御されることを特徴とする蓄熱システム。 - 前記流量制御手段は、前記蓄熱槽に前記媒体を流入し始めてから、前記蓄熱槽に流入された前記媒体からなる前記温度成層が形成されるまでの間が、前記蓄熱槽に流入された前記媒体からなる前記温度成層が形成された後よりも少なくなるように、前記流量を制御するものであることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱システム。
- 前記制御弁が、温度変化に対応する形状記憶合金の変形を利用して開閉されることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱システム。
- 前記蓄熱槽は、複数の槽からなり、
前記複数の槽は、媒体が流入される槽から媒体が流出する槽まで直列に連結されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の蓄熱システム。 - 前記媒体が水であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の蓄熱システム。
- 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の蓄熱システムを備えたことを特徴とする建造物。
- 前記熱利用手段が、空調設備であることを特徴とする請求項6に記載の建造物。
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JP2004212008A (ja) | 2004-07-29 |
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