JP4156263B2 - 遠心鋳造設備における注湯方法及び注湯システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、遠心鋳造設備で鋳鉄管を製造するに当たり、遠心鋳造装置の鋳型へ溶湯を注入する工程に関する技術であって、配湯用取鍋から溶湯を受湯して以降、溶湯を鋳型へ注入するまでの作業効率を向上させて生産性向上を図ると共に、寸法及び品質が安定した鋳造管を得るための鋳造技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、遠心鋳造設備で鋳鉄管を製造するに当たり、遠心鋳造装置で鋳造管を鋳造する場合に、図5に例示するように、所定量の溶湯を所定の温度に保持する保持炉1から溶湯2aを配湯用取鍋3に払い出し、配湯用取鍋3から溶湯2bを指定された遠心鋳造装置13に近接して設置されている定置取鍋5に補給し、定置取鍋5から注湯用取鍋としての三角取鍋6へ、遠心鋳造装置13に設けられた鋳型7へ注湯すべき1回分の溶湯2cを出湯し、三角取鍋6は注湯トラフ8のシュート(本明細書で「注湯シュート」)25を経由して溶湯2dを水平に対して僅かな傾斜角θを有し、鋳型台車10上の高速で回転する鋳型7へ注入し、鋳造管9を遠心鋳造する。三角取鍋6から鋳型7への注湯は、三角取鍋6をその回転軸を中心として傾動させることにより行なう。図中、符号4はトラフ台車である。
【0003】
こうして、鋳造管1本の鋳造が終了後、この鋳造管9を鋳型7から引き抜いて鋳型7を整備すると共に、注湯トラフ8を整備した後、引き続き、次の鋳造管の鋳造サイクルに入る。即ち、その間に定置取鍋5から三角取鍋6に出湯された溶湯を、三角取鍋6は注湯シュート25を経由して溶湯2dを鋳型7へ注入し、次の鋳造管9を遠心鋳造する。かかる鋳造サイクルの作業を継続していくが、その間適宜、配湯用取鍋3から定置取鍋5へ溶湯2bを補給して、三角取鍋6への出湯に備えておく。
【0004】
上記遠心鋳造設備における注湯工程においては、注湯用取鍋である三角取鍋6から溶湯2dを鋳型7へ注入する操作においては、溶湯の注入流量(単位時間当たりの鋳型への溶湯2dの注入量)及び注湯温度を高精度に管理することが、鋳造管9の管厚寸法の管理上特に重要である。溶湯の注入流量が大き過ぎると管厚が厚くなり過ぎ、後工程における機械加工が必要となって工程数が増加したり、歩留が低下したりし、一方、溶湯の注入流量が小さ過ぎると管厚が薄くなり過ぎ、不良品になる。注湯温度は、溶湯の粘性を支配する要因であり、注入流量の制御に対して大きく影響すると共に、鋳造管製品の金属組織等品質に対しても影響を及ぼす。
【0005】
そこで従来、鋳型への溶湯の注入流量を制御すると共に、注湯温度を制御する技術が提案されている。特開平11−179512号公報には、注湯用取鍋としての三角取鍋6の傾動速度を制御すると共に、形成される管厚を当該傾動速度の制御により均一にするための技術として、下記技術が開示されている。即ち、三角取鍋を傾動させる駆動シリンダー装置への作動油の供給量を制御することができるように、その傾動装置を構成して、三角取鍋の傾動速度を制御することにより鋳型への溶湯の注入流量(単位時間当たりの鋳型への注湯量)の制御を可能とし、その上で、注湯温度が相対的に高く湯流れのよい注湯初期段階には溶湯の注入流量を相対的に小さくし、注湯温度が低下して湯流れが低下する注湯終期には溶湯の注入流量を相対的に大きくすることにより、管長手方向の管厚の均一化を図っている(以下、先行技術1という)。
【0006】
また、特開平5−277710号公報には、保持炉1では溶湯の温度管理を自動化しているので問題なしとしながらも、その保持炉1を出てから鋳造するまでの時間のバラツキによる注湯温度のバラツキ発生を防止するための技術として、下記技術が開示されている。即ち、保持炉より後に、自動注湯装置として、保持炉から所定量の溶湯を受け入れると共に、その溶湯を所定量切り出す取鍋装置と、この取鍋装置から供給される溶湯を受け入れてこれを昇温・保持すると共に、この昇温・保持された溶湯を、所定の切出し流量(単位時間当たりの切出し量)で、鋳型への注湯用取鍋である三角取鍋に切り出すことを可能とするように構成された昇温炉装置とを配備することにより、鋳型への注湯温度を制御すると共に、上記取鍋装置に残留する溶湯量の高精度管理を図っている(以下、先行技術2という)。
【0007】
更に、特開平9−1320号公報(特許第3079018号)には、遠心鋳造用の鋳型7への注湯用取鍋として従来用いられている三角取鍋6特有の形状のように、鋳型7への注湯時の取鍋内の溶湯の表面積が、ほぼ一定となるように、出湯口を通る鉛直断面形状が扇形となる取鍋を用いなくても、一般的な取鍋から鋳型への注湯の際に、その鋳型の上部に配置されて、これの内部に溶湯が注入される、所謂鋳型枠湯口の一定位置をめがけて溶湯を注入することを、取鍋の傾動に伴なう溶湯の注湯流線の変動に依存せずになし得るという自動注湯方法が開示されている(以下、先行技術3という)。先行技術3の方法によれば、安全で確実な自動注湯作業を行なうことができるとされている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記先行技術をもってしても、本発明者等が目的とする遠心鋳造設備における注湯方法及び注湯装置を開発するために必要な下記課題を解決するのは困難である。即ち、
遠心鋳造設備により、高生産性を確保しつつ安定した操業を行ない、且つ管厚が均一で安定した品質特性を有する鋳造管を得るためには、
(1)保持炉から払い出された所定温度範囲内に管理された溶湯を、配湯用取鍋に受け入れた後、鋳型へ注湯するまでの溶湯の温度降下を如何にして抑制するかと共に、鋳型への注湯中における溶湯温度の変動を如何に抑制するかが重要な課題であり、更に、
(2)注湯用取鍋から鋳型への注湯流を如何に制御するか、即ち、▲1▼単位時間当たりの鋳型への注湯量である注入流量(あるいは所謂鋳込速度)の制御、並びに、▲2▼注湯流線と注湯流の注湯シュートへの流入開始位置との制御を如何にして行なうか、が重要な課題である。しかも、
(3)上記(1)及び(2)の課題解決に際しては、設備コスト及び操業コストの抑制ないし低減を図ることが重要である。
【0009】
本発明者等は、上記課題の解決を図るために、鋭意検討を行なった。
【0010】
先ず、注湯用取鍋から鋳型への注湯流の制御については、先行技術1及び先行技術3に開示されている技術が効果的であるが、しかし、鋳造管1本分の溶湯を注湯用取鍋から鋳型に注入する間における末期の注湯温度の低下を十分に抑制するのは困難である。その理由は、鋳造管1本を鋳造するのに要する溶湯量が受容された注湯用取鍋、即ち所謂三角取鍋から鋳型に注湯されるので、注湯用取鍋内の溶湯の比表面積(溶湯重量/溶湯の(上表面積+取鍋内面との全接触面積))が相対的に大きくなり、その最小比表面積に限界がある。従って、溶湯からの熱放散の抑制に限界があるからである。
【0011】
この対策として、先行技術2を適用すれば、当該注入末期における注湯温度の低下抑制にかなりの効果が得られるが、注湯用取鍋として鋳造管1本分の溶湯収容能力を有する取鍋を用いる限り、なおもその効果は十分であるとはいえない。また、先行技術2によれば、上記昇温炉装置の配備により、注湯用取鍋である三角取鍋毎の溶湯温度は所定温度範囲内に制御することが可能となり、効果的であるが、昇温炉装置の取鍋本体には溶湯昇温用付帯装置、例えば高周波加熱装置を新たに設ける必要が生じるので、高価な設備コストを付加しなければならい。
【0012】
従って、この発明の目的は、上記未解決の課題を総合的に解決して、高生産性を確保しつつ安定した操業を行ない、且つ管厚が均一で品質の安定した鋳造管を得ることができる、遠心鋳造設備における注湯方法及び注湯装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記問題を解決するため鋭意試験・研究を重ねた結果、下記知見を得た。
【0014】
1.鋳型へ溶湯を注入するための注湯用取鍋の溶湯受容能力を拡大して、鋳造管を複数本鋳造するのに要する溶湯を受容することができるものに変更する。その際、注湯用取鍋の容量は、鋳造管の寸法諸元等を考慮すると共に、遠心鋳造設備全体を構成する他の関連設備・装置の設備能力及び工程計画等とのバランスも考慮する。こうすることにより、次の効果が発揮され得る。従来のように、鋳造管1本分の溶湯が収容された注湯用取鍋から注湯する場合に比べて、
▲1▼注湯用取鍋内の溶湯の比表面積は、注湯用取鍋の容量増加割合の2/3乗で算出される数値に減少するので、溶湯温度低下の経時変化量はこの算出値に応じて小さくなる。従って、鋳型への注湯末期における注湯温度降下を著しく抑制することが可能となると同時に、従来の定置取鍋(図5中、符号5参照)と三角取鍋(図5中、符号6参照、容量は鋳造管1本分の溶湯量)との2段階にわたる溶湯の熱ロスチャンスが、大容量注湯用取鍋の1段階のみにおける熱ロスチャンスで済む。よって、保持炉における溶湯温度の管理水準値を低温にすることができる可能性もある。更に、
▲2▼所定の1本の鋳造管の鋳造終了から次の鋳造管の鋳造開始可能までの所要時間が、大幅に短くなるので、従来作業形態において注湯用取鍋内の溶湯準備が、次の鋳造管の鋳造開始可能タイミングの律速となる場合における注湯待ちが解消され、鋳造サイクル時間が短縮される。このようにして、本発明者等は、従来容量の数倍であって、適切な大容量注湯用取鍋(例えば、従来の三角取鍋の5倍程度容量の注湯用取鍋)の採用とその付帯設備の改造により、あるいは、新設遠心鋳造設備の建設時における大容量注湯用取鍋方式設備の採用により、注湯温度の制御及び鋳造サイクル時間の短縮に効果を発揮し得ることに着眼した。
【0015】
2.上記1項において述べた大容量注湯用取鍋を、前回の鋳造作業に用い、所定の複数本の鋳造管を鋳造して、溶湯が空となった大容量注湯用取鍋を、所定の注湯装置から受け取り、引き続き、次回の鋳造作業に用いる溶湯入りの、同じく上記1項において述べた大容量注湯用取鍋を、上記注湯装置に引き渡すか、あるいは引き取ってもらうかの、大容量注湯用取鍋の交換操作を迅速に行なうことができるように構成された取鍋交換装置を設計・設置する。基本設計として、前回の鋳造作業に用いて空となった大容量注湯用取鍋を、取鍋交換装置が受け取った後、これを受湯が完了している次回の鋳造作業に用いる大容量注湯用取鍋と速やかに相互の配置位置を相互に交換する機構とする。例えば、円形テーブル状の台車イメージであって、円中心の周りに回転駆動する形式の取鍋交換台車とし、これら2個の大容量注湯用取鍋を円中心に対して180度方向の円周上に向き合わせて載置し得るように構成すればよい。こうすることにより、次の効果が発揮され得る。従来の定置取鍋と三角取鍋(それぞれ図5中、符号5と符号6参照)との組合せによる注湯工程に比べて、上述した取鍋交換装置のように、2個の大容量注湯用取鍋を載置するようにすれば、一方の注湯用取鍋内の溶湯を、注湯装置により鋳型に注入中に、取鍋交換装置に載置された他方の注湯用取鍋に、配湯用取鍋から溶湯を補給し、準備しておくことができる。従って、上記1項の▲2▼で述べた注湯待ちの解消に一層の効果が発揮されるチャンスが増える。また、複数ラインの注湯装置と鋳造装置とに対してこのような取鍋交換装置を設ける場合には、3個以上の大容量注湯用取鍋を配置するように設計する。
【0016】
3.上述した大容量注湯用取鍋を受け取って、これより遠心鋳造装置の鋳型に自動注入操作を可能とするための注湯装置を配設する。自動注入操作を安定して行なうためには、大容量注湯用取鍋を傾動させて、溶湯を落下注入する注湯シュート内部に、注湯流線が衝突すべき目標位置を設定し、この目標点に落下注入するような制御機構を設けることが効果的である。更に、注湯シュートを経由して鋳型に注湯される注入流量(単位時間当たりの鋳型への溶湯の注入量)の制御機構を設けることが望ましい。そして、注入流線の落下注入位置の制御及び鋳型への注入流量の制御機構を構成するためには、大容量注湯用取鍋の回転傾斜駆動手段、並びに鉛直方向及び水平方向への移動駆動手段を設けると共に、所定の上記各制御用プログラムを実行するための制御装置を設けることにより、安定した自動注入操作を行なうことができることに着眼した。
【0017】
この発明は、上記知見及び着想によりなされたものであり、その要旨は次の通りである。
【0018】
請求項1記載の遠心鋳造設備における注湯方法は、鋳鉄管製造用の遠心鋳造設備における遠心鋳造装置の鋳型への溶湯の注入工程において、配湯用取鍋から、所定の取鍋交換装置に搭載された次回の鋳造作業において用いる注湯用取鍋に溶湯を配湯し、当該配湯された注湯用取鍋内の溶湯を前記鋳型へ注入するに先立ち、前回の鋳造作業において前記鋳型への注湯に用いて溶湯が空となった注湯用取鍋を、所定の注湯装置から前記取鍋交換装置に移載して戻した後、当該取鍋交換装置に搭載されている前記次回の鋳造作業に用いる溶湯が収容されている前記注湯用取鍋を、前記注湯装置に移送し、そして、当該注湯装置に移送された前記注湯用取鍋内の溶湯を、当該注湯装置を用いて遠心鋳造装置の前記鋳型に自動操作により注入する方法であって、しかも、前記注湯用取鍋として、前記前回の鋳造作業及び前記次回の鋳造作業のいずれにおいても、鋳造管を複数本鋳造するのに必要な溶湯を収容する能力を有するものを用い、それぞれの当該複数本の鋳造管分の溶湯を鋳型に自動操作により注入することに特徴を有するものである。
【0019】
請求項2記載の遠心鋳造設備における注湯方法は、請求項1に記載の発明において、前記複数本の鋳造管を鋳造するのに必要な溶湯の収容能力を有する注湯用取鍋内の溶湯を、鋳型に注入するに際し、少なくとも1本目の鋳造管を鋳造するときには、前記注湯用取鍋を、注湯開始直前の角度まで事前に傾動させておき、直ちに前記鋳型への溶湯注入を開始することに特徴を有するものである。
【0020】
請求項3記載の遠心鋳造設備における注湯方法は、請求項1又は2に記載の発明に、更に、前記注湯用取鍋内の溶湯を前記鋳型に注入を完了した後、又は当該注入を中断した後、当該注湯用取鍋を前記遠心鋳造装置のライン長手方向に対して直角方向に移動させ、次いで当該注湯用取鍋を前記注入時の傾動方向に対して反対側に傾動し、所定の残湯ポットに、当該注湯用取鍋内の残湯及び残滓、又は前記鋳型への注入予定溶湯及び残滓を排出する操作を付加することに特徴を有するものである。
【0021】
請求項4記載の遠心鋳造設備における注湯方法は、請求項1から請求項3の何れかに記載の発明において、前記注湯装置を用いて前記注湯用取鍋内の溶湯を、前記遠心鋳造装置の前記鋳型に自動注入するに際して行なう自動制御対象は、注湯流が当該鋳型への注湯シュート内の目標位置に落下するように自動制御しつつ注入することに特徴を有するものである。
【0022】
請求項5記載の遠心鋳造設備における注湯方法は、請求項1から請求項4の何れかに記載の発明において、前記注湯装置を用いて前記注湯用取鍋内の溶湯を、前記遠心鋳造装置の前記鋳型に自動注入するに際して行なう自動制御対象は、前記鋳型内へ注入される溶湯の注入流量を自動制御しつつ注入することに特徴を有するものである。
【0023】
請求項6記載の遠心鋳造設備における注湯方法は、請求項3から請求項5のいずれかに記載の注湯方法において、前記注湯流が前記鋳型への注湯シュート内の目標位置に落下するように自動制御する方法は、前記注湯用取鍋の回転軸の軸芯線を中心とし、当該注湯用取鍋を制御回転駆動させて当該注湯用取鍋の傾斜角を制御すると共に、当該注湯開始時における当該注湯用取鍋の出湯口からの溶湯落下開始点の絶対座標軸上位置を、又は当該溶湯落下開始点に近接して設定された仮想の初期出湯中心点の絶対座標軸上位置を、当該注湯用取鍋の支持機構により鉛直方向及び水平方向、又は鉛直方向もしくは水平方向に制御移動させることにより行なうことに特徴を有するものである。
【0024】
請求項7記載の遠心鋳造設備における注湯方法は、請求項5又は請求項6に記載の注湯方法において、前記鋳型内へ注入される溶湯の注入流量を自動制御する方法は、前記注湯用取鍋内の溶湯の表面積に応じて、当該注湯用取鍋の回転角速度を自動制御することにより行なうことに特徴を有するものである。
【0025】
請求項8記載の遠心鋳造設備における注湯システムは、鋳鉄管製造用の遠心鋳造設備における注湯システムであって、下記(a)、(b)及び(c)の装置からなることを特徴とする、遠心鋳造設備における注湯システム。
(a)前回の鋳造作業において鋳型に溶湯を注入して空になった一の注湯用取鍋を、注湯装置から受け渡されて搭載すると共に、次回の鋳造作業において前記鋳型に注入するための溶湯を、配湯用取鍋から受湯し、当該受湯した溶湯が収容された他の注湯用取鍋を搭載し、そして、前記一の注湯用取鍋を前記注湯装置から受け取った後に、前記溶湯が収容された当該他の注湯用取鍋を前記注湯装置が受け取るように構成され、前記一の注湯用取鍋及び前記他の注湯用取鍋は、前記鋳造管を複数本鋳造するのに必要な量の溶湯を前記配湯用取鍋から受湯し、そして当該溶湯を前記鋳型へ注湯するまで収容しておく能力を備えたものである取鍋交換装置。
(b)前記前回の鋳造作業において前記鋳型に溶湯を注入して空になった前記一の注湯用取鍋を、前記取鍋交換装置へ引き渡し、次いで、当該取鍋交換装置から前記溶湯が収容された前記他の注湯用取鍋を受け取り、前記次回の鋳造作業において当該他の注湯用取鍋から当該溶湯を前記鋳型に所定量注入し、そして、こうして空になった当該他の注湯用取鍋を前記取鍋交換装置に引き渡すように構成された注湯装置。
(c)前記注湯装置により、前記一の注湯用取鍋内の前記溶湯が前記鋳型に注入され、次いで、前記他の注湯用取鍋内の前記溶湯が当該鋳型に注入されて、前記鋳造管が鋳造されるように構成された遠心鋳造装置。
【0026】
請求項9記載の遠心鋳造設備における注湯システムは、請求項8に記載の発明において、前記注湯装置には、前記注湯用取鍋を前記遠心鋳造装置のライン長手方向に対して直角方向に移動させる注湯用取鍋横行機構が設けられており、当該注湯用取鍋横行機構による当該注湯用取鍋の横行方向に対して直角方向であって、当該遠心鋳造装置の設置側とは反対側に、当該注湯用取鍋内の残湯及び残滓を排出する残湯ポットが配設されていることに特徴を有するものである。
【0027】
請求項10記載の遠心鋳造設備における注湯システムは、請求項8又は請求項9に記載の発明において、前記注湯装置には、受け取った前記他の注湯用取鍋を、当該注湯用取鍋の回転軸の軸芯線を中心として回転傾斜させる回転傾斜機構と、当該他の注湯用取鍋を鉛直方向及び水平方向に移動させる鉛直・水平移動機構とが設けられていることに特徴を有するものである。
【0028】
請求項11記載の遠心鋳造設備における注湯システムは、請求項10に記載の発明において、前記他の注湯用取鍋の回転傾斜機構には、当該回転傾斜の動作を制御する取鍋傾動制御装置が設けられ、そして、当該他の注湯用取鍋の鉛直・水平移動機構には、当該他の注湯用取鍋の当該それぞれの方向への動作を制御する取鍋移動制御装置が設けられていることに特徴を有するものである。
【0031】
【発明の実施の形態】
次に、この発明に係る遠心鋳造設備における注湯装置及び注湯システムの実施形態を説明する。
【0032】
図1に、この発明の望ましい実施形態における注湯システムの概略側面図を示し、図2に当該システムの概略平面図を示す。図1及び2において、11は取鍋交換装置、12は注湯装置、そして13は遠心鋳造装置である。
【0033】
所定の温度に保持された溶湯を保持炉(図5中、符号1参照)から受け容れ、そして、その溶湯を取鍋交換装置11まで搬送してきた配湯用取鍋3から、所定量の溶湯2eを大容量注湯用取鍋14aに給湯する。その際、大容量注湯用取鍋14aが受湯する溶湯量は、(遠心鋳造装置13の)鋳型7への注湯量の複数回分、例えば鋳造管を5本鋳造するのに必要な溶湯量である。ここで、大容量注湯用取鍋の形状は、前後方向の縦断面形状が3角形あるいは扇形を呈するものでなく、その他の形状の取鍋、例えば、円筒状の注湯用取鍋でもよい。その理由は、当該取鍋の傾斜角度と当該取鍋内溶湯の上表面積との関係が明らかとなっていれば、当該取鍋の傾動操作による出湯流量(鋳型への注湯時においては、注入流量に相当する)を制御することができるからである。
【0034】
上記溶湯2e入りの大容量注湯用取鍋14aを、クレーン15等所定の搬送機で、取鍋交換装置11のターンテーブル16上の所定位置(図1及び図2の位置(A))に載置する。
【0035】
取鍋交換装置11は、中心部の回転軸16aを中心として水平面内で回転するターンテーブル16と、テーブルローラー16bを介してターンテーブル16を回転駆動させる駆動部(図示省略)と、これらを搭載してレール17b上を所定方向に走行移動するテーブル台車17とからなる。この取鍋交換装置11は、ターンテーブル16上に2つの大容量注湯用取鍋を載置した状態でこのターンテーブルを180度回転させ、当該取鍋の相互位置を入れ替える。即ち、ターンテーブル16上の位置(A)に載置された上記溶湯入り大容量注湯用取鍋14aと、これに対して回転軸16aを中心としてターンテーブル16の縁部(図1及び図2中、位置(B))に対置される大容量注湯用取鍋14bとを、ターンテーブル16を180度回転させることにより、相互位置を入れ替える。但し、大容量注湯用取鍋14bは、次に述べる通りの溶湯が空となった取鍋である。
【0036】
このような、大容量注湯用取鍋の相互位置入れ替えは、次の必要性に基づくものである。即ち、鋳造作業を継続していくために、注湯装置12は、前回の鋳造作業で鋳型7に注湯した結果、溶湯が空となった大容量注湯用取鍋14b’を手渡し、次いで、次回の鋳造作業に必要な溶湯が収容された大容量注湯用取鍋14aを受け取って、鋳型7に注湯する必要がある。そこで、取鍋交換装置11は、このように注湯装置12が、空の大容量注湯用取鍋14b’の手渡し動作と、溶湯入り大容量注湯用取鍋14aの受取り動作とを、迅速に行なうことができるように、注湯装置12から受け取ったターンテーブル上の空の大容量注湯用取鍋14bと、溶湯入りの大容量注湯用取鍋14aとの位置を迅速に入れ替える装置として導入したものである。
【0037】
ここで、取鍋交換装置11が行なうターンテーブル16の回転操作は、遠隔手動操作で行なうか、あるいはターンテーブル16を搭載しているテーブル台車17の車輪17aに負荷される輪重を計測し、その測定値情報によりコンピューター制御装置(図示省略)で行なう自動操作で行なう。
【0038】
注湯装置12として、天井上架設置型のものを図1及び図2に例示するが、これは地上設置型でもよい。注湯装置12は上述したように、溶湯が空となった大容量注湯用取鍋14b’を取鍋交換装置11へ手渡すと共に、次回の鋳造作業用の溶湯入り大容量注湯用取鍋14aを受け取って、これを鋳造作業可能な位置に移動させる(同図中、大容量注湯用取鍋14a’参照)。この溶湯入り大容量注湯用取鍋14aの移動に際して、注湯装置12は、前後移動台車18に設置された昇降フレーム19及び昇降駆動部20によりそれを巻き上げ、前後移動台車18を遠心鋳造装置13の方向に前進移動させ(同図中、左方向)、所定位置でそれを巻き下げて、注湯シュート25上方近傍に大容量注湯用取鍋14a’の出湯口24を位置合わせをして、次回鋳造作業の準備態勢に入る。
【0039】
図3に、注湯装置の構成及び自動制御フロー図を示す。注湯装置には、自動注湯制御を可能とするために、大容量注湯用取鍋14の移動装置27及び移動制御手段28、並びに傾動装置29及び傾動制御手段30が設けられている。
【0040】
移動装置27は、前述したように、鋳造開始準備操作として、大容量注湯用取鍋14を所定位置へ移動させる動作機能に加えて、鋳型へ注湯中、注湯流の注湯シュート25内落下位置を所定の位置に制御するために、大容量注湯用取鍋14の位置を適切にするための移動調整機能を有するものである。その移動方向は、鉛直方向と水平面内の前後方向(鋳造ライン方向、図2中のX方向)及び左右方向(図2中のY方向)とに分けられる。鉛直移動装置27aとして、昇降フレーム19及び昇降駆動部20が設けられ、前後移動装置27bとして、前後移動台車18及び前後移動駆動部31が設けられ、そして左右移動装置27cとして、左右移動台車21及び左右移動駆動部32が設けられている。
【0041】
一方、傾動装置29は、鋳型へ注湯中、注入流量(単位時間あたりの注湯量)を制御するために、大容量注湯用取鍋14の傾斜角度及び傾動速度を制御するものであり、傾動調整機能を有するものである。
【0042】
また、注湯装置には、大容量注湯用取鍋14内の溶湯重量計測装置としてロードセル33を、そして大容量注湯用取鍋14の傾斜角度の測定器としてエンコーダー34が設けられている。そして、移動装置27及び傾動装置29は、鋳型への注湯中、移動制御手段28及び傾動制御手段30により、次のように制御される。
【0043】
移動制御手段28による移動装置27の制御動作は次の通りである。
【0044】
鍋位置検出装置36からの情報に基づき、大容量注湯用取鍋14を、注湯準備のために移動装置27で注湯シュート25上方の所定位置に移動させる。次いで、鋳型への注湯開始信号により、大容量注湯用取鍋14を、所定の傾動速度でその傾動回転軸を駆動させて傾動させる。この傾動と同時に、大容量注湯用取鍋14の傾動回転軸の傾斜角度を、傾斜角度検出用のエンコーダー34で測定し、その傾斜角度に応じて、前後移動台車18及び昇降フレーム19で大容量注湯用取鍋14を、前後方向(図1及び図2中のX方向)に距離x、鉛直方向(図1中のZ方向)に距離zだけ移動させることにより、注湯流が注湯シュート25の所定位置に落下するように調節する。ここで、傾斜角度に応じて移動制御する大容量注湯用取鍋14の鉛直方向及び前後方向への移動距離x及びzは、下記の導出式(1)及び(2)による。
【0045】
x=Lo cosθ0 −L0 cos(θ+θ0 )‥‥(1)
z=L0 sin(θ+θ0 )−L0 sinθ0 ‥‥(2)
但し、L0 、θ0 、θは後述する図4中に示す通りであり、後に(1)及び(2)式の導出過程と共に、L0 、θ0 、θを説明する。
【0046】
上記において、エンコーダー34により検出されたアナログ信号は、A−D変換器37によりディジタル信号に変換され、記憶演算装置35に送られる。記憶演算装置35には、大容量注湯用取鍋14の傾斜角度θと当該取鍋14の出湯口24近傍の後述する仮想上の定点Oi の変位との関係式(上記導出式(1)及び(2))を記憶させておき、上記傾斜角度のディジタル信号と、上記演算記憶信号とにより、大容量注湯用取鍋14の位置が補正される。補正された取鍋14の位置は、D−A変換器39を介して前後移動駆動部31及び昇降駆動部20に送信される。位置移動指令装置41が発する信号は、記憶演算装置35に入力されると、ここに記憶されている取鍋位置補正信号により補正され、D−A変換器39を介して、大容量注湯用取鍋14の前後移動駆動部31及び昇降駆動部20に伝達される。
【0047】
なお、異常ケースとして、鍋位置検出装置36からの情報により、鋳造開始時に大容量注湯用取鍋14の位置が注湯シュート25の軸芯線に対して左右方向にずれていたことが検知されたときには、記憶演算装置35’は、左右移動駆動部32に大容量注湯用取鍋14の芯合わせ信号を伝達する。以上のようにして、移動制御手段28は、移動装置27を制御する。
【0048】
図4は、初期状態が水平方向に対してθ0 の傾斜角度にある大容量注湯用取鍋14が、この取鍋14の回転軸40の中心C0 を回転中心として、更にθだけ回転してその傾斜角度がθからθ+θ0 に変化した場合の状況の説明図であって、初期位置における鋳型への注湯開始時における出湯口24からの溶湯落下開始位置に近接して設定された仮想の初期出湯中心点Oi の変位を説明する図である。図4において、(b)は(a)中の出湯口24近傍の詳細拡大図である。上記仮想の初期出湯中心点Oi を通り、前進方向(遠心鋳造装置側)水平方向をX軸方向とし、その中心点Oi を通る鉛直上方をZ軸方向とし、且つ、X−Z軸を絶対座標軸とし、上記仮想の初期出湯中心点Oi をその原点(0,0)とする。ここで、大容量注湯用取鍋14の傾斜角度がθからθ+θ0 に変化した後における初期出湯中心点Oi の位置をOi ’とし、その座標を(−x,−y)とすると、図4から明らかなように、上述した(1)及び(2)式が得られる。但し、L0 は、大容量注湯用取鍋14の回転中心C0 と仮想の初期出湯中心点Oi との間の距離である。
【0049】
一方、大容量注湯用取鍋14内溶湯の表面形状は常に実質的に水平面を呈するので、出湯口24からの出湯流の初期運動方向は、常に水平方向となる。従って、その初速が一定である場合には、傾斜角度がθ増加した場合には、大容量注湯用取鍋14の位置を、X軸方向にy、そしてZ軸方向にzだけ移動させることにより、鋳型への注湯流を、注湯シュート内の一定位置に落下させることができる。なお、この場合は、大容量注湯用取鍋14の回転中心C0 の軌跡は、仮想の初期出湯中心点Oi が点Oi ’へ変位するので、仮想の初期出湯中心点Oi を中心とする円弧Rよりも注湯シュートから遠ざかる方向(図4(b)中、右方)に後退した軌跡R1 となる。しかしながら、上記出湯口24からの出湯流の初速が、例えば、出湯流の温度低下に伴う粘性増大等により低下する場合には、上記軌跡R1 よりも注湯シュートへ近づく方向(図4(b)中、左方に前進した軌跡をとるように、上記(1)及び(2)式は修正されなければならない。
【0050】
次に、傾動制御手段による傾動装置29の制御動作は次の通りである。
【0051】
エンコーダー34により検出されたアナログ信号は、A−D変換器37’によりディジタル信号に変換され、記憶演算装置35’に送られる。記憶演算装置35’には、大容量注湯用取鍋14の傾斜角度と当該取鍋14内溶湯の表面積との関係を記憶させておき、上記傾斜角度のディジタル信号と、注湯速度指令装置38からの信号と、上記演算記憶信号とにより、当所の傾動速度が補正される。なお、当該記憶方法としては、上記溶湯の表面積の変化を計算により記憶演算装置35’にインプットする方法か、あるいは鋳型に大容量注湯用取鍋14の収容溶湯を実際に注湯し、当該注湯作業により得られた傾斜角度と注湯速度及び注湯時間との関係を記憶させておく所謂ティーチングプレイバック方式とする。
【0052】
大容量注湯用取鍋14の傾動速度は、その取鍋14から鋳型に注湯される注入流量(単位時間あたりの注湯量)が注湯中一定となるように補正される。補正された傾動速度信号は、D−A変換器39’を介して傾動駆動部23に送信される。注湯速度指令装置38が発する速度信号は、記憶演算装置35’に入力されると、ここに記憶されている傾動速度補正信号により補正され、D−A変換器39’を介して、大容量注湯用取鍋14の傾動駆動部23に伝達され、傾動装置29を制御する。
【0053】
このようにして、大容量注湯用取鍋14の傾斜角度及び傾動速度が制御されると同時に、前述した移動制御手段28による移動装置27の制御が行なわれ、図4中に示した大容量注湯用取鍋14の回転中心C0 が、出湯口 の仮想上の出湯中心点Oi の所定の円弧状軌跡(例えば、R1 あるいはR2 等)に沿って移動制御される。
【0054】
溶湯が鋳型に注入される過程において、注湯装置12に設けられている計量装置のロードセル33から、1鋳型分の注湯量に相当する大容量注湯用取鍋14内溶湯重量の変位信号を記憶演算装置35’が受けて、大容量注湯用取鍋14の傾動を停止させ、所定傾斜角度だけ反対方向に傾動させて注湯を停止する。
【0055】
前述したように、注湯装置12によって巻き上げられた水平状態の大容量注湯用取鍋14は、同じく注湯装置12によってその出湯口24が注湯シュート25の上方近傍に位置するように移動し、次いで、傾動フレーム22及び傾動駆動部23からなる傾動装置29により傾動する。これによって、注湯用取鍋14内の溶湯は、注湯シュート25及び注湯トラフ8を経て、鋳造台車10に搭載された鋳型7内に注湯される。
【0056】
この発明においては、1つの取鍋で複数本の鋳造管を製造し得る大容量注湯用取鍋14を使用している。従って、当該注湯用取鍋14内の溶湯によって1本目の鋳造管を鋳造する際、鋳型7内への注湯のために、傾動装置29によって注湯用取鍋14を水平状態から注湯角度まで傾動させることが必要であり、この取鍋傾動のために、一定の時間が必要になる。その結果、サイクルタイムが長くなって、生産能率の低下を招き、更に、放熱ロスによって、鋳型7内に注湯される溶湯温度の低下を招くおそれが生ずる。
【0057】
そこで、このような生産能率及び注湯温度の低下を防止するために、少なくとも1本目の鋳造管を鋳造する際には、注湯装置12によって巻き上げられた水平状態の大容量注湯用取鍋14a’を、図1に点線で示すように、事前に注湯開始直前の角度まで傾動させておき、鋳造台車10に搭載された鋳型7が所定位置に到着したときに、直ちに鋳型7内への注湯が開始されるようにしておくことが好ましい。
【0058】
即ち、鋳造すべき鋳造管の管径によって、鋳型7内への注湯量が変化することから、そのときの注湯量に応じ、注湯用取鍋14を、注湯開始までにその直前の角度まで傾動させておく。このようにすれば、取鍋14内の溶湯を、ほぼ定められた時間で鋳型7内に注湯することができる。
【0059】
その結果、サイクルタイムは短縮され、生産能率の低下を防止することができ、更に、放熱ロスによる溶湯温度の低下も防止される。なお、当該注湯用取鍋14の溶湯によって、2本目以降の鋳造管を鋳造する際には、注湯用取鍋14は、前回の鋳造管の鋳造のために、既に所定角度傾動しているので、通常は上述した事前傾動を行なわせなくてもよいが、必要が生じた場合には、勿論事前傾動させることが好ましい。
【0060】
次ぎに、上述した注湯用取鍋14の事前傾動角度の一例を示す。即ち、注湯装置12によって、溶湯の収容された注湯用取鍋14が注湯位置に到着したときに、注湯装置12に取り付けられたロードセル33によって取鍋総重量を測定し、その測定値に基づいて、事前傾動角度=[(取鍋総重量−溶湯重量)/(鍋の容量に応じた常数)]−(設定傾動角度)からなる式により事前傾動角度を算出する。
【0061】
例えば、取鍋総重量が1890kg、溶湯重量が1300kg、設定傾動角度が9度の場合、鍋の容量に応じた常数を50とすると、事前傾動角度は[(1890−1300)/50]−9=3度となる。
【0062】
連続したタクトサイクルタイムに従って、次の鋳型が遠心鋳造装置に準備されると、上述した手順で次の注湯を開始する。こうして、大容量注湯用取鍋14から予定された所定本数の鋳造管の鋳造が終了したら、当該大容量注湯用取鍋14に残留した溶湯及び溶滓を、図2中に符号42で示した残湯ポットに排出する。残湯ポット42は、同図に示すように、注湯装置12の一部として配設されており、大容量注湯用取鍋14を遠心鋳造装置13のライン長手方向に対して直角方向(同図中、Y軸方向)に移動させる注湯用取鍋横行機構の一部を構成する、左右移動台車レール21a敷設位置の地上対応位置の近接位置であって、当該大容量注湯用取鍋14の横行方向(上記左右方向)に対して直角方向であって、当該遠心鋳造装置13の設置側とは反対側に配設されている。なお、残湯ポット42の配設位置は、このように遠心鋳造装置13の隣接領域を避けることにより、当該遠心鋳造装置13の付帯機構の配設場所や付帯部品置場の確保上有利となる。
【0063】
注湯装置12は、残湯及び残滓が空となった大容量注湯用取鍋14を取鍋交換装置11に手渡し、次回鋳造用の溶湯入り大容量注湯用取鍋14を受け取り、次回の鋳造作業に入る。
【0064】
上記残湯ポット42は、鋳型への注湯作業異常発生時に、鋳造作業を緊急停止し、迅速に残湯処理をすることにより、大容量注湯用取鍋14溶湯の冷却・凝固等を防止するための装置としての機能も付与されている。なお、図1及び図2において、10aは鋳造台車用レール、18aは前後移動台車用レール、18bは前後移動台車上架梁、21bは左右移動台車上架梁、26はトラフ本体である。
【0065】
【実施例】
実施の形態で述べた取鍋交換装置11、注湯装置12及び遠心鋳造装置13を備えた遠心鋳造設備を用いて、鋳造管を鋳造する実施例の試験を行なった。大容量注湯用取鍋14は、形状が扇形であり、その溶湯収容能力は1350kgであり、150、200及び250mmφの各種サイズの一般管及び耐震管を対象として、5本分の溶湯収容能力を有するものである。また、これには溶湯の放熱防止用取鍋蓋を備えた。
【0066】
一方、本発明の範囲外の遠心鋳造設備を用いて鋳造管を鋳造した比較例の試験も行なった。比較例における遠心鋳造設備の主な構成及び操業条件は、図5に示した従来設備に準じた遠心鋳造設備構成を有するものであり、特に、取鍋交換装置を備えていず、鋳型への注湯用取鍋である三角取鍋6(図5参照)の容量は、各種サイズの一般管及び耐震管を対象として、1本分の溶湯収容能力を有するものであり、当該溶湯は、保持炉1から配湯取鍋3で搬送され、定置取鍋5に配湯された溶湯が、この定置取鍋5から鋳造管1本分ずつ(1鋳型注湯分ずつ)供給されたものである。そして、鋳型への注湯操作は、目視注湯で手動で行なった。
【0067】
実施例における遠心鋳造管の試験操業結果を、適宜、比較例における遠心鋳造管の試験操業結果と比較してまとめると、次の通りである。
【0068】
1.鋳造作業の安定性及び鋳造管の生産性:目視注湯から自動制御注湯へ切り替えたこと、大容量注湯用取鍋システムの開発、取鍋交換装置システムの開発等の効果が大きく、鋳造作業の安定性が著しく向上し、操業安定性が向上すると共に、遠心鋳造装置の本来の能力が十分に発揮され、鋳造サイクルタイムが短縮されて、鋳造管の生産性が向上した。
【0069】
2.鋳造管の品質、歩留:大容量注湯用取鍋システムの開発及び取鍋交換装置システムの開発による、鋳型への鋳造末期における注湯温度の低下の抑制及び鋳造どうし間の注湯温度の変動の減少、並びに、上記各システムの開発と、大容量注湯用取鍋の移動制御及び傾動制御を主体とする自動注湯システムの開発とにより、鋳型への溶湯の注入流量の一定化及び注湯量の精度向上が得られ、その結果、鋳造管の管厚精度の向上により不良品発生が減少して品質が向上すると共に、成品歩留が向上した。
【0070】
3.作業環境:本発明の自動注湯システムの開発により、注湯作業環境が著しく改善されると共に、要員の有効配置にも寄与する。
【0071】
以上の通り、実施例により、操業性、生産性、品質及び環境面において、著しく向上することが明らかとなった。
【0072】
【発明の効果】
この発明によれば、鋳造作業の安定性及び鋳造管の生産性の向上、鋳造管の不良品発生の減少、品質の向上及び成品歩留の向上、並びに、注湯作業環境の改善及び要員の有効配置化を図ることが可能となり、遠心鋳造管の製造コスト削減、製造能力の弾力性の確保、及び高熱作業環境の改善等が可能となる。このような遠心鋳造設備における注湯方法及び注湯システムを提供することができ、工業上有益な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の注湯システム例を示す概略側面図である。
【図2】図1に示すこの発明の注湯システム例の概略側面図である。
【図3】この発明における注湯装置例の構成及び自動制御フロー図である。
【図4】この発明において大容量注湯用取鍋の移動制御をするに当たり、大容量注湯用取鍋を傾動させたときに変位する出湯口基準点の前後方向及び鉛直方向への距離を説明する図である。
【図5】従来の遠心鋳造設備による鋳造管の鋳造工程概要図の例である。
【符号の説明】
1 保持炉
2a、2b、2c、2d、2e 溶湯
3 配湯取鍋
4 トラフ台車
5 定置取鍋
6 三角取鍋
7 鋳型
8 注湯トラフ
9 鋳造管
10 鋳造台車
10a 鋳造台車用レール
11 取鍋交換装置
12 注湯装置
13 遠心鋳造装置
14 大容量注湯用取鍋
14a、14a’ 大容量注湯用取鍋(溶湯入り)
14b、14b’ 大容量注湯用取鍋(溶湯空)
15 クレーン
16 ターンテーブル
16a 回転軸
16b テーブルローラー
17 テーブル台車
17a 車輪
17b レール
18 前後移動台車
18a 前後移動台車用レール
18b 前後移動台車上架梁
19 昇降フレーム
20 昇降駆動部
21 左右移動台車
21a 左右移動台車用レール
21b 左右移動台車上架梁
22 大容量注湯用取鍋傾動フレーム
23 大容量注湯用取鍋傾動駆動部
24 出湯口
25 注湯シュート
26 トラフ本体
27 移動装置
27a 鉛直移動装置
27b 前後移動装置
27c 左右移動装置
28 移動制御手段
29 傾動装置
30 傾動制御手段
31 前後移動駆動部
32 左右移動駆動部
33 ロードセル
34 エンコーダー
35、35’ 記憶演算装置
36 鍋位置検出装置
37、37’ A−D変換器
38 注湯速度指令装置
39、39’ D−A変換器
40 回転軸(大容量注湯用取鍋)
41 位置移動指令装置
42 残湯ポット
0 回転中心(大容量注湯用取鍋の回転軸の中心)
i 出湯開始時における出湯口における仮想上の初期出湯中心点

Claims (11)

  1. 鋳鉄管製造用の遠心鋳造設備における遠心鋳造装置の鋳型への溶湯の注入工程において、配湯用取鍋から、所定の取鍋交換装置に搭載された次回の鋳造作業において用いる注湯用取鍋に溶湯を配湯し、当該配湯された注湯用取鍋内の溶湯を前記鋳型へ注入するに先立ち、前回の鋳造作業において前記鋳型への注湯に用いて溶湯が空となった注湯用取鍋を、所定の注湯装置から前記取鍋交換装置に移載して戻した後、当該取鍋交換装置に搭載されている前記次回の鋳造作業に用いる溶湯が収容されている前記注湯用取鍋を、前記注湯装置に移送し、そして、当該注湯装置に移送された前記注湯用取鍋内の溶湯を、当該注湯装置を用いて遠心鋳造装置の前記鋳型に自動操作により注入する方法であって、しかも、前記注湯用取鍋として、前記前回の鋳造作業及び前記次回の鋳造作業のいずれにおいても、鋳造管を複数本鋳造するのに必要な溶湯を収容する能力を有するものを用い、それぞれの当該複数本の鋳造管分の溶湯を鋳型に自動操作により注入することを特徴とする、遠心鋳造設備における注湯方法。
  2. 前記複数本の鋳造管を鋳造するのに必要な溶湯の収容能力を有する注湯用取鍋内の溶湯を、鋳型に注入するに際し、少なくとも1本目の鋳造管を鋳造するときには、前記注湯用取鍋を、注湯開始直前の角度まで事前に傾動させておき、直ちに前記鋳型への溶湯注入を開始することを特徴とする、請求項1に記載の遠心鋳造設備における注湯方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の注湯方法に、更に、前記注湯用取鍋内の溶湯を前記鋳型に注入を完了した後、又は当該注入を中断した後、当該注湯用取鍋を前記遠心鋳造装置のライン長手方向に対して直角方向に移動させ、次いで当該注湯用取鍋を前記注入時の傾動方向に対して反対側に傾動し、所定の残湯ポットに、当該注湯用取鍋内の残湯及び残滓、又は前記鋳型への注入予定溶湯及び残滓を排出する操作を付加することを特徴とする、遠心鋳造設備における注湯方法。
  4. 前記注湯装置を用いて前記注湯用取鍋内の溶湯を、前記遠心鋳造装置の前記鋳型に自動注入するに際して行なう自動制御対象は、注湯流が当該鋳型への注湯シュート内の目標位置に落下するように自動制御しつつ注入することを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の遠心鋳造設備における注湯方法。
  5. 前記注湯装置を用いて前記注湯用取鍋内の溶湯を、前記遠心鋳造装置の前記鋳型に自動注入するに際して行なう自動制御対象は、前記鋳型内へ注入される溶湯の注入流量を自動制御しつつ注入することを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の遠心鋳造設備における注湯方法。
  6. 請求項3から請求項5のいずれかに記載の注湯方法において、前記注湯流が前記鋳型への注湯シュート内の目標位置に落下するように自動制御する方法は、前記注湯用取鍋の回転軸の軸芯線を中心とし、当該注湯用取鍋を制御回転駆動させて当該注湯用取鍋の傾斜角を制御すると共に、当該注湯開始時における当該注湯用取鍋の出湯口からの溶湯落下開始点の絶対座標軸上位置を、又は当該溶湯落下開始点に近接して設定された仮想の初期出湯中心点の絶対座標軸上位置を、当該注湯用取鍋の支持機構により鉛直方向及び水平方向、又は鉛直方向もしくは水平方向に制御移動させることにより行なうことを特徴とする、遠心鋳造設備における注湯方法。
  7. 請求項5又は請求項6に記載の注湯方法において、前記鋳型内へ注入される溶湯の注入流量を自動制御する方法は、前記注湯用取鍋内の溶湯の表面積に応じて、当該注湯用取鍋の回転角速度を自動制御することにより行なうことを特徴とする、遠心鋳造設備における注湯方法。
  8. 鋳鉄管製造用の遠心鋳造設備における注湯システムであって、下記(a)、(b)及び(c)の装置からなることを特徴とする、遠心鋳造設備における注湯システム。
    (a)前回の鋳造作業において鋳型に溶湯を注入して空になった一の注湯用取鍋を、注湯装置から受け渡されて搭載すると共に、次回の鋳造作業において前記鋳型に注入するための溶湯を、配湯用取鍋から受湯し、当該受湯した溶湯が収容された他の注湯用取鍋を搭載し、そして、前記一の注湯用取鍋を前記注湯装置から受け取った後に、前記溶湯が収容された当該他の注湯用取鍋を前記注湯装置が受け取るように構成され、前記一の注湯用取鍋及び前記他の注湯用取鍋は、前記鋳造管を複数本鋳造するのに必要な量の溶湯を前記配湯用取鍋から受湯し、そして当該溶湯を前記鋳型へ注湯するまで収容しておく能力を備えたものである取鍋交換装置。
    (b)前記前回の鋳造作業において前記鋳型に溶湯を注入して空になった前記一の注湯用取鍋を、前記取鍋交換装置へ引き渡し、次いで、当該取鍋交換装置から前記溶湯が収容された前記他の注湯用取鍋を受け取り、前記次回の鋳造作業において当該他の注湯用取鍋から当該溶湯を前記鋳型に所定量注入し、そして、こうして空になった当該他の注湯用取鍋を前記取鍋交換装置に引き渡すように構成された注湯装置。
    (c)前記注湯装置により、前記一の注湯用取鍋内の前記溶湯が前記鋳型に注入され、次いで、前記他の注湯用取鍋内の前記溶湯が当該鋳型に注入されて、前記鋳造管が鋳造されるように構成された遠心鋳造装置。
  9. 前記注湯装置には、前記注湯用取鍋を前記遠心鋳造装置のライン長手方向に対して直角方向に移動させる注湯用取鍋横行機構が設けられており、当該注湯用取鍋横行機構による当該注湯用取鍋の横行方向に対して直角方向であって、当該遠心鋳造装置の設置側とは反対側に、当該注湯用取鍋内の残湯及び残滓を排出する残湯ポットが配設されていることを特徴とする、請求項8に記載の遠心鋳造設備における注湯システム。
  10. 前記注湯装置には、受け取った前記他の注湯用取鍋を、当該注湯用取鍋の回転軸の軸芯線を中心として回転傾斜させる回転傾斜機構と、当該他の注湯用取鍋を鉛直方向及び水平方向に移動させる鉛直・水平移動機構とが設けられていることを特徴とする、請求項8又は請求項9に記載の遠心鋳造設備における注湯システム。
  11. 前記他の注湯用取鍋の回転傾斜機構には、当該回転傾斜の動作を制御する取鍋傾動制御装置が設けられ、そして、当該他の注湯用取鍋の鉛直・水平移動機構には、当該他の注湯用取鍋の当該それぞれの方向への動作を制御する取鍋移動制御装置が設けられていることを特徴とする、請求項10に記載の遠心鋳造設備における注湯システム。
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