JP4155558B2 - ロール状導電性部材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真装置用のロール状導電性部材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真複写機または電子写真印刷機などの電子写真装置は、感光ドラム表面を一様に帯電させ、次に感光ドラムの表面に印刷・複写パタ−ンを露光し静電潜像を形成し、この潜像にトナーを付着させてトナー像を形成して、このトナー像を複写用紙または印刷用紙に転写することにより印刷または複写する機構を有するものである。電子写真装置には、前記感光ドラムの表面を一様に帯電させるための帯電ロール、トナー像を形成(現像)するための現像ロールなどとして発泡ロール状の導電性部材が使用されている。
【0003】
従来、前記発泡ロールは、ウレタンフォームからなるものが一般的であった。その後、ラテックスタイプのゴムを機械的発泡した弾性層を有する導電性部材が提案されており(特許文献1)、ここでは導電性材料として金属や金属酸化物の粉末やウイスカー、カーボンブラックなどを添加することが開示されている。さらに、発泡体の硬度を下げ、また電気抵抗のコントロールを容易にする目的で、ラテックスを原料とし、アスカー硬度Fが30〜90(好ましくは40〜85とされ、実際に得られているものは50以上)、アスカー硬度Cが0.1〜20である半導電性発泡ロールが提案されている(特許文献2)。 発泡ロールの製造工程において、ラテックス組成物は、強攪拌して空気を導入し、発泡倍率3〜7倍にすることが特徴になっている。また、特定割合量のクロロプレンゴムを、溶解性の異なる他の2種以上のゴムに含有させて、従来よりも低硬度で電気抵抗が安定な導電性発泡ロールを得ることも提案されている(特許文献3)。
【0004】
次に、導電性芯材の外周に導電性発泡弾性体が被覆された半導電性ロールにおいて、その発泡体は溶解度パラメータ値が異なる3種のゴムの海島構造からなり、かつ、吸油性の異なる2種類のカーボンブラックが分散されている半導電性ロールが提案されており、2種類のカーボンブラックとしてケッチェンブラックとサーマルブラックが例示されている(特許文献4)。このときの発泡は、3種のゴムのブレンド物を化学的または真空または空気機械発泡させて独立気泡あるいは連続気泡の状態にするとし、発泡剤も用いられている。この発泡体はゴム材料としてラテックスタイプのゴムを用いるものではない。
【0005】
また、軸体の外周面に、少なくとも二層が形成され、その一層が特定粘度領域のエチレンプロピレンジエン共重合体(EPDM)と二重結合を有する高分子量化合物を含有する発泡性ゴム組成物により帯電ロールを形成し、このとき導電剤としてアセチレンブラックおよびケッチェンブラックを含有させることが記載されている(特許文献5)。この発泡性ゴム組成物の場合も、ゴムに混練りする方法でアセチレンブラックおよびケッチェンブラックが添加されており、発泡には重曹、OBSH性などの発泡性材料が用いられている。ゴムラテックスを原料とするものではない。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−281758号公報(請求項1、段落[0026]〜[0028])
【特許文献2】
特開平9−226036号公報(請求項1〜5、段落[0008])
【特許文献3】
特開平9−314694号公報(請求項1、段落[0014]〜[0020]、実施例)
【特許文献4】
特開平10−254215号公報(請求項1および6、段落[0020]〜[0024]、実施例)
【特許文献5】
特開2000−75600号公報(請求項1および4、段落[0011]、[0025]〜[0027])
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、電子写真装置用の導電性発泡部材は、これまでに種々の方法で製造されているが、本来の機能を充分に果たすためにはできるだけ柔軟であることが好ましく、アスカー硬度F表示でいえば30未満にすること、より好ましくは27以下にすることが目標になる。このためには、ゴム材料の使用形態や導電性物質の種類、発泡方法など、多方面からの検討が必要である。たとえば、導電性性物質としては、カーボンブラックがよく用いられているものの、従来は電気抵抗を十分に下げる目的で15phr以上も多量に添加する場合が多く、このことが導電性発泡体を硬くする原因の一つになっている。
【0008】
一方、カーボンブラックのなかでも、ケッチェンブラックはその導電性がよいことが知れられており、前記の特許文献4または5においてもこの効果を期待して、ゴムに他のカーボンブラックと共にケッチェンブラックを混練りしたものと考えられる。しかし、ゴムにケッチェンブラックを混練りしたものを調べると、ゴム粒子の内部にまでケッチェンブラックが入り込んでおり導電性を付与する面からみるとロスがあり、また9phr程度の添加量であっても全面にわたって黒く覆われる現象が認められることから、利用方法に改善の余地を残している。
【0009】
一方、ゴム材料としてラテックスを用いるときのフォームラバーの製造方法としては、ラテックス配合物を物理的(機械的)に起泡させ、常温で凝固(ゲル化)させるダンロップ法と、起泡を化学的に行い、ゲル化を凍結で行うタラレイ法とが知られている。因みに、前記の特許文献1では、ラテックスタイプのゴム発泡体が用いられているものの、単に機械的攪拌により発泡しており、ダンロップ法およびタラレイ法のいずれの方法も用いられていない。
【0010】
ところで、導電性発泡ロールの製造において、フォームラバーを珪フッ化ソーダ等で凝固させるダンロップ法によって調製しようとすると、凝固が突然起こるので制御が難しく、発泡体ができても裂けやすくなる傾向がある。また、タラレイ法を用いる方法は、芯金がない場合には有効であるが、芯金が入った状態では金型の外部から冷却し凍結する関係上、発泡体は芯金より離れて金型の方に収縮する傾向があるため、発泡ロールの外周は硬く、一方芯金の周囲は疎な状態になりやすく時として穴を生ずることもある。このように、フォームラバーを利用する導電性発泡ロールはその製造上においても改善すべき問題点を残している。
【0011】
そこで、本発明の目的は、ラテックスフォ−ムラバーで構成され、導電性物質としてケッチェンブラックを利用し、より低硬度で柔軟性があり電気抵抗が抑えられている導電性部材、およびこれらの性能に優れていると共に芯金との接着がよく均一性の高いラテックスフォームラバーで構成されている導電性部材の製造方法を提供しようとするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前述のように、ケッチェンブラックをゴムに混練りしても問題が多いことから、本発明者らはその添加方法につき種々検討していたところ、ゴム原料としてゴムラテックスを選択しこれにケッチェンブラックを添加してそのまま凝固・加硫して透過型電子顕微鏡像(TEM像)で観察すると図4の状態が認められた。この図のように、ケッチェンブラックは、ラテックスの表面に存在するものが大部分であり、ゴム粒子(図4における白い部分)の内部までは入り込むことが殆どない、というまことに意外な知見を得たのである。その結果、ゴムに混練りする方法に比べると、明らかに少量でも電導パスが可能になり、電気抵抗の低下と柔軟性の付与を両立させ得るとの知見も得たのである。
【0013】
これらの知見を基に、導電性物質としてケッチェンブラックを含むゴムラテックスの起泡工程を機械的攪拌による発泡に加えてさらに真空引き(減圧)して発泡倍率を上げ、また機械的攪拌して得られた発泡液の金型への充填と芯金の挿入、−10℃ 〜 −50℃凍結し固定することを経て、凝固工程、加硫工程を実施するとにより、アスカー硬度Fが30未満、好ましくは27以下であるラテックスフォームラバーよりなる導電性部材を得ることに成功したものである。
【0014】
すなわち、本発明は、次のロール状導電性部材の製造方法を提供するものである。
【0015】
1)導電性剛性体からなる芯金および該芯金の外周面に導電性発泡層を積層してなる電子写真装置用の導電性部材を製造するに際し、( 1 )加硫用薬剤と導電性物質としてケッチェンブラックとを含有するゴムラテックス配合物を機械的攪拌により空気を混入し発泡化して、ラテックス配合物に対する発泡倍率を3〜7倍にする工程、( 2 )前記発泡液の金型への充填と芯金挿入工程、( 3 )前記金型中の発泡液を真空引きして発泡倍率をさらに1.2〜2倍に引き上げて高発泡化する工程、( 4 )前記高発泡体を−10℃〜−50℃で凍結し固定する工程、( 5 )前記凍結物に炭酸ガスを注入して連続気泡状に凝固する工程、および( 6 )前記凝固物を加硫する工程に付し、前記芯金の外周面にアスカー硬度F30未満である導電性ラテックスフォームラバー層を形成させることを特徴とするロール状導電性部材の製造方法。
【0016】
2)前記ケッチェンブラックの配合量が5〜12phrである上記1)項記載のロール状導電性部材の製造方法。
3)前記ゴムラテックス配合物が天然ゴムラテックスを20phr以上含むものである上記1)項または2)項記載のロール状導電性部材の製造方法。
4)前記高発泡体を真空下で凍結する上記1)〜3)項のいずれかに記載のロール状導電性部材の製造方法。
【0017】
本発明の導電性部材は、導電性良好であると共に、アスカー硬度Fが30未満、好ましくは27以下であることから、柔軟性が高く、複写機、レーザープリンタ、ファクシミリなどの電子写真用装置に用いる導電性部材として好適である。また、本発明の製造方法によると、アスカー硬度Fが30未満、好ましくは27以下の柔軟性が高くて画像形成能が向上したものであり、またラテックスフォームラバー層と芯金との接着性が密であり、発泡状態が均一な導電性発泡ロールを作製することができる。
【0018】
なお、「phr」は、配合剤の質量をゴム100部に対する部数で示すときの記号であり、parts per hundred parts of rubberの略である。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明における導電性部材は接触帯電方式として使用され、被帯電体に接触するものであればその形状は特に限定されるものではなく、例えばロール状、プレート状、ブロック状のものが挙げられるが、通常はロール状であるものが好ましい。本発明の製造方法は、導電性剛性体からなる芯金および該芯金の外周面に導電性発泡層を積層してなるロール状の導電性部材が対象である。
【0020】
本発明において、導電性部材が導電性発泡ロールである一例を図1に示す。同図に示すように、本発明の導電性発泡ロールは、導電性剛性体からなる芯金および該芯金の外周面に少なくとも1層の導電性弾性層を有する導電性発泡ロールであって、前記導電性弾性層は導電性物質としてケッチェンブラックを含み、アスカー硬度F30未満、好ましくは27以下であるラテックスフォームラバー(そのゴム分の20phr以上が天然ゴムであることが好ましい)で構成されているものである。アスカー硬度Fは、その値が小さいほど柔軟性が増すが、強度の面も考慮すると、通常は10以上であることが好ましい。また、前記ラテックスフォームラバーは、その形状を良好に維持するためには、見かけ密度が0.045〜0.10g/cm3の範囲であることが好ましい。
【0021】
前記芯金2としては、従来、導電性ロールのシャフトとして用いられているものがいずれも使用可能であり、例えば銅、アルミニウム、炭素鋼、ステンレスなどの金属シャフトがあげられる。
本発明では、前記ラテックスフォームラバー層に導電性を付与する物質としてケッチェンブラックを必須成分として含むものである。ケッチェンブラックの添加量は5〜12phrの範囲が好ましく、5〜9phrの範囲であればより好ましい。ケッチェンブラックの添加量をこの範囲にすることにより、導電性部材の電気抵抗が印加電圧に大きく依存することなく、しかも柔軟性を有するものにすることができる。
【0022】
ケッチェンブラックとしては、中空のシェル状粒子が存在し、高表面積、高吸油能を有する従来のものであればよく、例えばケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックEC−600、ケッチェンブラックEC−600JDと称する市販品(いずれもライオンアクゾ社製)を用いることができる。
本発明では、導電性物質としてケッチェンブラックを添加することを必須とするが、補助的に他の導電性物質を添加することを妨げるものではない。ただ、その補助的添加は導電性発泡体の柔軟性をできるだけ保持できる程度の量に抑えることが好ましい。例えば、補助的導電性物質として、グラファイト、金属酸化物などを使用してもよい。金属酸化物としては、例えば酸化スズ、酸化チタン(表面が酸化スズ被覆されたものも含む)などがあげられる。
【0023】
前記ラテックスフォームラバーの原料となるゴム材料には、天然ゴムおよび/または合成ゴムのラテックス、すなわち水性コロイド分散液が用いられる。合成ゴムとしては、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、あるいはクロロプレンゴム(CR)などが挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。ここで、ゴム材料全体における天然ゴムの割合を20phr以上にすることが好ましく、これによって例えば芯金の周辺におけるフォームラバーの密度が増し密着性をより高くすることができる。
【0024】
本発明において使用するゴム材料は、ゴム成分のみで、体積固有抵抗が1012Ω・cm以下、好ましくは109 〜1012Ω・cmであるのが好ましい。上記体積固有抵抗は、JIS K 6911に規定の「抵抗率」に準拠して求められる。すなわち、直径約100mm、厚さ2mmの円板形試験片の両面にそれぞれ表面電極および裏面電極を設け、印加電圧10Vで印加し、印加から60秒経過後に体積抵抗Rv(Ω)を測定する。このとき、測定環境は23.5℃で湿度55%RHとし、この測定環境になじませるためのシーズニングは90時間とする。かくして体積固有抵抗ρvを次式より求める。
【0025】
【数1】
【0026】
ただし、d:表面電極の外径(cm)
t:試験片の厚さ(cm)
次に、本発明の導電性部材の製造方法を工程順に説明する。
( 1 ) ケッチェンブラックおよび加硫用薬剤を含有するゴムラテックス配合物を機械的攪拌により空気を混入し発泡化する工程:
ゴムラテックス(そのうち20phr以上が天然ゴムラテックスであることが好ましい)に、ケッチェンブラック、加硫用薬剤(加硫剤および加硫促進剤とを含み、必要により加硫促進助剤を含む)と、さらに必要に応じて、老化防止剤、充填剤などを加え、機械的攪拌することにより空気を混入し発泡させる工程である。ゴムラテックス以外の添加成分は、通常、水溶液あるいは分散液を調製してゴムラテックスに加えることが好ましく、配合物の固形分が約40〜55%となるように調整する。配合の順序や機械攪拌の仕方は、通常のフォームラバーの調製法に準じて実施することができる。この工程では、ゴムラテックス配合物量に対する発泡倍率が約3〜7倍となるように発泡させる。
【0027】
前記加硫剤としては、例えばイオウ、有機含イオウ化合物などが用いられる。有機含イオウ化合物としては、例えばテトラメチルチウラムジスルフィド、N,N'−ジチオビスモルホリンがあげられる。加硫剤の添加量は、0.3〜4phr、好ましくは1.0〜3.5phrとするのが適当である。
前記加硫促進剤としては、従来使用されている種々の加硫促進剤が使用可能であり、例えばチアゾール類[例:2−メルカプト・ベンゾチアゾールの亜鉛塩(促進剤MZ)など]、ジチオ・カーバメート類[例:ジエチル・ジチオカーバミン酸亜鉛(促進剤EZ)など]、スルフェンアミド類[例:N−tert−ブチル−2−べンゾチアゾリルスルフェンアミド(大内新興化学工業社製のノクセラーNS等)、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(同社製のノクセラーMSA−G等)、N,N−ジシクロヘキシル−2−べンゾチアゾリルスルフェンアミド(同社製のノクセラーDZ等)]などがあげられ、これらは単独で用いるほか、2種以上を混合して用いてもよい。加硫促進剤は、0.3〜4phr、好ましくは0.5〜3phrの割合で添加するのが適当である。
【0028】
また、加硫促進助剤として、例えば亜鉛華などの金属酸化物、ステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸などの脂肪酸、その他の従来公知ものを適宜添加してもよい。
前記老化防止剤としては、例えば2−メルカプトべンゾイミダゾールなどのイミダゾール類、フェニル−α−ナフチルアミン、N,N'−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N'−イソプロピル−p−フェニレンジアミンなどのアミン類、ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、スチレン化フェノールなどのフェノール類などがあげられる。
【0029】
前記の充填剤としては、例えば炭酸カルシウム、クレー、硫酸バリウム、ケイ藻土などがあげられる。
( 2 ) 前記発泡液の金型への充填と芯金挿入工程:
前記工程で得られた発泡液を所望形状のロール状金型に、余分の空気が入らないように流し込みまたは吸引し、中心部に芯金を挿入して固定する。この順序は、芯金を固定した金型に発泡液を流し込みまたは吸引する順序に変えてもよい。しかし、芯金を、次工程の高発泡体に挿入することは、出来上がりの導電性発泡ロールと芯金との密着状態が悪くなるので避けねばならない。金型中の発泡液の充填は、次工程で高発泡化することから、その発泡増加分に相当するスペース量を少なくとも有するように計算した量を流し込むようにする。
【0030】
( 3 ) 金型中の発泡液を真空下で高発泡化する工程:
この高発泡化は、上記工程で得られた発泡液の発泡倍率をさらに1.2〜2.0倍程度引き上げる工程である。この高発泡化工程は、以後の( 4 )および( 5 )工程と共に、本発明の目的とするアスカー硬度F30未満、好ましくは27以下で柔軟な発泡ロールを得る上で重要である。また、前記の倍率まで高発泡化することによって、ラテックスフォームラバーの見かけ密度を0.045〜0.10g/cm3の範囲に仕上げることができ、良好な発泡ロールの形状が維持される。この工程は、芯金が挿入された状態で、金型の上部から真空ポンプを用いて真空度を上げていき(減圧化)、これによって高発泡化させ、前記の発泡倍率となるまで引き上げる。
【0031】
( 4 ) 前記高発泡体を凍結する工程:
前記高発泡体の水を凍結し、発泡体を固定する工程である。凍結温度は、−10℃〜−50℃の範囲とする。具体的には、高発泡体を含む金型を前記温度範囲の冷媒に浸漬するか、あるいは金型のジャケットに冷媒を通すことにより、中心まで凍結させる。この凍結が十分でないとき、例えば凍結温度が高かったり、冷却時間が短すぎたりすると、後の工程で炭酸ガスを注入して室温付近に戻したときに発泡状態が崩れる原因になる。この工程において、前記の高発泡化における発泡倍率を一旦、1.2〜2倍程度まで引き上げてから、凍結処理を開始しその後真空度を徐々に下げていき、発泡体の中心部まで冷却が進み凝固するまでに、発泡倍率を1.2〜1.7倍程度に下げるようにすると、ラテックスフォームラバーを芯金の周囲に充分に密着させることができるのでより好ましい。
【0032】
( 5 ) 前記凍結物に炭酸ガスを注入して連続気泡状に凝固する工程:
前記の凍結物の系に炭酸ガスを注入して連続気泡状に凝固させる。その後、室温または40℃程度の温浴中で放置し、炭酸ガスでラテックスを完全に凝固させる。
( 6 ) 前記凝固物を加硫する工程
前記凝固物を105〜130℃に加熱して加硫する。これによって、金型の形状に即して、芯金が挿入された発泡ロールが成形される。このときの加硫方法や加硫条件は従来の手段に従ってよい。
【0033】
上記の( 1 )〜( 6 )工程を経ることによって、気泡の維持が容易になり均一な発泡構造の導電性発泡ロールが得られる。これによって、本発明の目的とするアスカーF硬度が30未満、好ましくは27以下の柔軟性があり、しかも芯金の周りにフォームラバーが均一に密着した導電性発泡ロールが得られる。
本発明の導電性部材である導電性発泡ロールは、芯金2に電圧を印加して、ロール表面を被帯電体に接触させることにより帯電または放電を行わせるものである。この電気抵抗は、図2に示すようにして測定される。すなわち、導電性発泡ロール1が接触するように導電性発泡ロールをアルミニウム板3上に設置し、さらに導電性シャフト2の両端にそれぞれ500gの荷重Wを与え、1000Vの電圧を印加したときの電流値を測定し、オームの法則により電気抵抗を求める。このときの電気抵抗は102〜1010Ω・cm、好ましく103〜109Ω・cmの範囲とするのが適当である。
【0034】
ロ−ルの電気抵抗が102Ω・cmを下回ると、リーク、紙汚れなどの画像上の問題が発生する。一方、電気抵抗が1010Ω・cmを超えると、転写効率が悪くなり、実用に適さなくなる。前記導電性発泡ロール1は、表面の硬度がアスカーF35以下、好ましくは30以下であり、通常は10以上の範囲にある。硬度がこの範囲にあるとき、転写ローラ等に使用した場合、被帯電体上で充分な接触状態が得られ画像形成が従来よりも鮮明になる。しかし、アスカーF10に達しないときは、ロールのヘタリが生じやすくなり、磨耗も悪化し、耐久性に欠ける。
【0035】
また、前記導電性発泡ロールは、比重が0.04〜0.10、ロールの外表面のセル径が500μm以下であるのが好ましい。これらの特性値はいずれも電子写真装置の転写ローラとして本発明の導電性部材を使用したときに最適な画像を得るうえで好適な範囲を示している。すなわち、外表面のセル径が前記範囲を超えると、転写ロールとして使用した画像にピンホールが生じやすくなる。ただし、最適な画像を得るための条件は、使用する電子写真装置の種類や稼働条件などにより変動するため、必ずしもこれらの範囲に限定されるものではない。
【0036】
【実施例】
次に、実施例および比較例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。
(配合組成)
以下の実施例および比較例においては、次の配合1〜7のいずれかを用いた。この配合中、SBRラテックスはJSR製の「SBラテックス0561」を、NRラテックスはハイアンモニアラテックスを、ケッチェンブラックは御国色素製のケッチェンブラックの水分散体である「SAブラック#0077」をそれぞれ用いた。
【0037】
【表1】
【0038】
実施例1〜4
実施例1〜4として、表1に記載の配合1〜4の組成物をそれぞれ用いた。この組成中、ゴムラテックス以外は水溶液または分散液とし、上記配合の固形分が45%となるように調整した。ゴムラテックスを安定化させるために少量のアンモニア水を加えて配合物を調製した。
上記の配合物を泡立て器のようなミキサーを用いて、機械的に攪拌することにより空気を抱き込ませて、ラテックス配合物量の約7倍となるまで発泡させた。この発泡液を用いて、図3の模式図に示す工程順に従って導電性発泡ロールを作製した。
【0039】
金型を用意し、芯金を挿入した(図3a)。ここに、前記の機械攪拌により得られた発泡液を、発泡液以外の空気が入らないように、芯金の高さの2/3まで流し込んだ(図3b)。次に、密閉状態下、真空ポンプを用いて、金型の上側から真空引きして、発泡液量を約1.5倍になるまで引き延ばした(ゴムラテックス配合物に対する発泡倍率:7×1.5=10.5)(図3c)。真空引きしたまま、このガラス管を−20℃のメタノール中に浸漬し、発泡液の水分を凍結させて形を固定した(図3d)。その後、この系に炭酸ガスを導入し、炭酸ガスでラテックスを凝固させ(図3e)、そのまま炭酸ガスを導入しながらガラス管の外側を室温に放置した(図3f)。次いで、120℃で30分加熱して加硫し(図3g)、金型から脱型し、芯金が挿入されていない部分を切り離し、芯金が挿入された導電性発泡ロールを得た(図3h)。なお、図(c)〜(g)では芯金を図示していない。配合1〜5のいずれを用いた導電性発泡ロールも、芯金の周りにラテックスフォームラバーが完全に密着しており良好であった。
【0040】
比較例1〜3
実施例1において、表1の配合5(比較例1)、配合6(比較例2)または配合7(比較例3)を用いた以外は、実施例1と同様に処理して導電性発泡ロールを得た。
(評価試験)
実施例1〜4と比較例1〜3の導電性発泡ロールについて、アスカーF硬度と電気抵抗を評価した結果を表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
表2の結果、実施例1〜4に示されるように、ケッチェンブラックの添加量が3〜12phrと多くするにつれて電気抵抗が少なくなっており導電性物質としての効果が顕著に現れておりしかもアスカーF硬度が30未満であって、適当な柔軟性に保たれている。ただ、ケッチェンブラックの量が12phrを超えると、比較例1のようにアスカーF硬度が大きくなる傾向がある。これに対して、導電性物質としてアセチレンブラックを用いた場合、比較例2では同量添加のケッチェンブラック(実施例4)に比べてアスカー硬度が高く電気抵抗も大きくなっている。すなわち、導電性物質としてケッチェンブラックを配合することにより、ラテックスフォームラバーで構成されている導電性発泡部材の性能がよりよく向上している。
【0043】
【発明の効果】
以上のように、本発明によると、ゴムにケッチェンブラックを混練りするという従来法に比較して、その添加量が少なくても導電性が良好であり柔軟性のよい導電性部材が提供できる。これは、ラテックスフォームラバーという特定のゴム材料から構成される導電性部材においてケッチェンブラックという特定の導電性物質を配合することによるものであって、この導電性部材は、複写機、レーザープリンタ、ファクシミリなどの電子写真用装置に用いるとき、画像形成性に極めて優れている。また、本発明の製造方法よると、アスカー硬度Fが30未満の柔軟性があり、しかも芯金との接着がよく、発泡状態が均一な導電性発泡ロールを作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の導電性部材としての発泡性ロールの一形態を示す、
【図2】本発明における導電性部材の電気抵抗値の測定方法を示す説明図である。
【図3】本発明の導電性部材の製造方法を示す模式的工程図である。
【図4】ゴムラテックスにケッチェンブラックを配合したときの、透過型電子顕微鏡像(TEM像)である。
【符号の説明】
1:導電性発泡ロール
2:芯金
Claims (4)
- 導電性剛性体からなる芯金および該芯金の外周面に導電性発泡層を積層してなる電子写真装置用の導電性部材を製造するに際し、( 1 )加硫用薬剤と導電性物質としてケッチェンブラックを含有するゴムラテックス配合物を機械的攪拌により空気を混入し発泡化して、ラテックス配合物に対する発泡倍率を3〜7倍にする工程、( 2 )前記発泡液の金型への充填と芯金挿入工程、( 3 )前記金型中の発泡液を真空引きして発泡倍率をさらに1.2〜2倍に引き上げて高発泡化する工程、( 4 )前記高発泡体を−10℃〜−50℃で凍結し固定する工程、( 5 )前記凍結物に炭酸ガスを注入して連続気泡状に凝固する工程、および( 6 )前記凝固物を加硫する工程に付し、前記芯金の外周面にアスカー硬度F30未満である導電性ラテックスフォームラバー層を形成させることを特徴とするロール状導電性部材の製造方法。
- 前記ケッチェンブラックの配合量が5〜12phrである請求項1記載のロール状導電性部材の製造方法。
- 前記ゴムラテックス配合物が天然ゴムラテックスを20phr以上含むものである請求項1または2記載のロール状導電性部材の製造方法。
- 前記高発泡体を真空下で凍結する請求項1〜3のいずれかに記載のロール状導電性部材の製造方法。
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