JP4155292B2 - 楽音信号合成方法、楽音信号合成装置およびプログラム - Google Patents

楽音信号合成方法、楽音信号合成装置およびプログラム Download PDF

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Description

本発明は、音源、電子楽器、アミューズメント機器等、楽音を発生する装置に用いられる楽音信号合成方法、楽音信号合成装置およびプログラムに関し、特に電子撥弦楽器あるいは電子擦弦楽器に用いて好適な楽音信号合成方法、楽音信号合成装置およびプログラムに関する。
従来より、自然楽器や電気楽器の挙動をシミュレートすることにより楽音を発生させる物理モデル音源が知られている(特許文献1)。例えば、エレキギター(ここではエレクトリック・ギター、エレクトリック・ベースなどの総称とする)をシミュレートする物理モデル音源には、振動する弦をシミュレートする線形部と、弦に振動を与える指の挙動によってをシミュレートする非線形部とが設けられている。そして、非線形部から線形部に励起信号が供給されると、線形部に定在波が発生し、これによって、目的とする楽音信号が生成される。
特開平8−335085号公報
ところで、自然擦弦楽器において、弓を弦に当接させて弓を引くと、弦が弓の動きに追従して変位する状態(スティック状態)と、弓に対して弦がスリップして弦が基準位置み戻る状態(スリップ状態)とが交互に発生する。しかし、かかる状態をシミュレートするためには、複雑な非線形回路を用いる必要があった。
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、自然擦弦楽器の各部の挙動を忠実にシミュレートした楽音信号を簡易に得ることができる楽音信号合成方法、楽音信号合成装置およびプログラムを提供することを目的としている。
上記課題を解決するため本発明にあっては、下記構成を具備することを特徴とする。なお、括弧内は例示である。
請求項1記載の楽音信号合成方法にあっては、第1の波形信号(速度進行波VF)を遅延手段により、第1の遅延量(遅延量d)だけ遅延させ第2の波形信号(速度反射波VR44)を生成する過程と、前記第1の波形信号(速度進行波VF)を前記遅延手段により、前記第1の遅延量よりも短い第2の遅延量(遅延量t)だけ遅延させ第3の波形信号(速度反射波VR32)を生成する過程と、前記第3の波形信号(速度反射波VR32)に基づき、前記第3の波形信号(VR32)の単位時間あたりの増加量が大きくなるほど周波数が高くなる鋸歯状波状の駆動信号(S92)を生成する過程(92〜98)と、前記第2の波形信号(速度反射波VR44)および前記駆動信号(S92)を加算合成して(加算器90で加算して)前記第1の波形信号(速度進行波VF)として前記遅延手段にフィードバックする過程と前記第1の波形信号(速度進行波VF)を用いて楽音信号を出力する過程とを有することを特徴とする。
さらに、請求項2記載の構成にあっては、請求項1記載の楽音信号合成方法において、弓速度信号(Vb)および弓圧力信号(fb)を入力する過程をさらに有し、前記駆動信号(S92)を生成する過程(92〜98)は、前記弓速度信号(Vb)が大きくなるほど前記駆動信号(S92)の周波数を高くし、前記弓圧力信号(fb)が大きくなるほど前記駆動信号(S92)の振幅を大きくすることを特徴とする。
また、請求項3記載の楽音信号合成装置にあっては、第1の波形信号(速度進行波VF)を第1の遅延量(遅延量d)だけ遅延させ第2の波形信号(速度反射波VR44)を生成するとともに、前記第1の波形信号(速度進行波VF)を、前記第1の遅延量よりも短い第2の遅延量(遅延量t)だけ遅延させ第3の波形信号(速度反射波VR32)を生成する遅延手段(26)と、前記第3の波形信号(速度反射波VR32)に基づき、前記第3の波形信号(VR32)の単位時間あたりの増加量が大きくなるほど周波数が高くなる鋸歯状波状の駆動信号(S92)を生成する手段(92〜98)と、前記第2の波形信号(速度反射波VR44)および前記駆動信号(S92)を加算合成して前記第1の波形信号(速度進行波VF)として前記遅延手段(26)にフィードバックする加算手段(加算器90)とを有し、前記第1の波形信号(速度進行波VF)を用いて楽音信号を出力することを特徴とする。
また、請求項4記載のプログラムにあっては、請求項1記載の楽音信号合成方法を処理装置に実行させることを特徴とする。

このように、本発明によれば、第3の波形信号の単位時間あたりの増加量が大きくなるほど周波数が高くなる駆動信号を生成するから、これら波形信号を用いて自然擦弦楽器の挙動を忠実にシミュレートすることができる。
1.参考例1
1.1.参考例1の構成
1.1.1.線形部の構成
次に、後述する本発明の一実施例の前提として、エレキギターをシミュレートする電子撥弦楽器の構成を説明する。まず、エレキギターの奏法の中で「スラップ」と呼ばれる奏法(日本ではチョッパー奏法と呼ばれることもある)が知られている。これは、特にフュージョン系などのジャンルのベースギターでよく用いられており、演奏者が親指で叩きつけるようにして弦を弾き、あるいは人差し指等で弦を引っかけ上げるようにして弦を弾く点に特徴がある。スラップ奏法においては、弦がフレットと接触することによって、パルシブでアタック感の強い音が発生する。しかし、フレットと接触することによる弦の挙動をシミュレートできる物理モデル音源は従来は知られていなかった。参考例1,2の電子撥弦楽器は、このようなエレキギター等の挙動を忠実にシミュレートするものである。
実際のエレキギターにおいては、撥弦点に生じた弦変位によって、フレットを押える演奏者の指(またはナット)に向かう第1の速度進行波と、ブリッジに向かう第2の速度進行波とが生じる。第1の速度進行波は演奏者の指によって反射され、第1の速度反射波として撥弦点に戻る。その間にある程度の遅延時間が生じるとともに波形が変形され、さらに反射される際に位相が反転する。また、ブリッジに向かう第2の速度進行波はブリッジにおいて反射され、第2の速度反射波として擦弦点に戻る。
このように、実際のエレキギターにおいては2系統の速度進行波および速度反射波が生ずるが、本参考例においてはこれを簡略化して1系統に集約している。図1において26は遅延回路であり、入力された速度進行波VFを遅延量dだけ遅延することによって、上記各速度進行波および速度反射波の遅延時間をシミュレートする。この遅延量dは、電子撥弦楽器のサンプリング周期の倍数として表現される値であり、発生すべき楽音信号のピッチに応じて決定される。但し、遅延回路26においては厳密な遅延量としてはサンプリング周期の整数倍の遅延時間しか実現できない。従って、サンプリング周期の整数倍であって遅延量dの前後の遅延量di,di+1が求められ、各々遅延量di,di+1づつ遅延された速度進行波VF(di),VF(di+1)が遅延回路26から出力される。
40はミキサであり、速度進行波VF(di),VF(di+1)をミキシングし、その結果を速度進行波VF40として出力する。42はFIRフィルタであり、速度進行波VF40に対してフィルタリング処理を施し、その結果を速度反射波VR42として出力する。このFIRフィルタ42におけるフィルタリング特性は、ブリッジまたは演奏者の指における波形変形をシミュレートするように設定されている。
ここで、ミキサ40およびFIRフィルタ42の詳細構成を図2を参照し説明する。72,74は乗算器であり、速度進行波VF(di),VF(di+1)に対して、遅延量dの小数部dfを乗算する。76は加算器であり、「VF(di)+df・VF(di+1)−df・VF(di)=(1−df)VF(di)+df・VF(di+1)」、すなわち速度進行波VF(di),VF(di+1)を「(1−df):df」でミキシングした結果を速度進行波VF40として出力する。これにより、サンプリング周期単位の遅延量を補間し、疑似的にサンプリング周期の小数倍の遅延量を実現している。
次に、FIRフィルタ42内において78,80はラッチ回路であり、速度進行波VF40を1サンプリング周期づつ遅延させる。82,84,86は乗算器であり、速度進行波VF40、これを1サンプリング周期遅延させた信号、およびさらに1サンプリング周期遅延した信号に、各々係数s,m,sを乗算し出力する。88は加算器であり、乗算器82,84,86の出力信号を加算し、その結果を速度反射波VR42として出力する。なお、ここで、係数s,m,sはその総和が「1」になるように、換言すればFIRフィルタ42においてゲインが生じないように設定されている。
図1に戻り、44は乗算器であり、速度反射波VR42にループゲインgを乗算し、その結果を速度反射波VR44として出力する。46はミキサであり、ミキサ32から供給される速度反射波VR32(詳細は後述する)と該速度反射波VR44とをミキシングし、その結果を速度反射波VRとして出力する。24は加算器であり、駆動信号発生器22から供給される駆動信号S22と、速度反射波VRとを加算し、その結果を速度進行波VFとして出力する。この速度進行波VFは、再び遅延回路26を介してミキサ40等に供給されるとともに、楽音信号として外部のサウンドシステム(図示せず)に出力される。以上、各構成要素24,26,40,42,44,46により、本参考例1の線形部が構成されている。
1.1.2.パラメータ設定部の構成
次に、2は基本ピッチ演算部であり、図示せぬ演奏操作子の操作状態に基づいて、発生すべき楽音信号の基本ピッチPTを演算する。4はピッチ・ディレイ長変換部であり、この基本ピッチPTに基づいて、上記線形部全体のディレイ長DLを演算する。このディレイ長DLは、電子撥弦楽器のサンプリング周期の倍数として表現される。6はオーバーフロー型の減算器であり、ディレイ長DLからフィルタディレイ長DLFを減算する。このフィルタディレイ長DLFは、FIRフィルタ42の遅延時間であり、サンプリング周期を単位として表現されである。本参考例1においてはフィルタディレイ長DLFは「1」である。
上述した線形部のうち、遅延時間を生じさせる要素は遅延回路26およびFIRフィルタ42のみであり、減算器6における減算結果DL−DLFは、遅延回路26における遅延量dを与えるものになる。8はリミット部であり、遅延量dを「1」以上の値に設定する。すなわち、減算結果DL−DLFが「1」未満であれば遅延量dは強制的に「1」に設定され、減算結果DL−DLFが「1」以上であれば、この値がそのまま遅延量dがとして用いられることになる。そして、上述したように、この遅延量dの整数部diおよび小数部dfによって、遅延回路26の遅延量di,di+1およびミキサ40の混合比が決定されるのである。
1.1.3.フレット反射のシミュレーション
スラップ奏法によって弦がフレットに接触すると、撥弦点から生じた進行波が該接触点において反射され、この反射波が撥弦点に戻ることになる。この遅延時間に対応する遅延量をtとし、遅延量tの整数部をti、小数部をtfとする。上述したミキサ32は、ミキサ40と同様に構成されており、速度進行波VFを各々遅延量ti,ti+1だけ遅延させた速度進行波VF(ti),VF(ti+1)を小数部tfを混合比としてミキシングし、その結果を上記ミキサ46に供給する。
ミキサ46も上記ミキサ40と同様に構成されており、後述する反射係数rを混合比として速度反射波VR32,VR44をミキシングし、速度反射波VRとして出力する。すなわち、速度反射波VRは、「r・VR32+(1−r)VR44」になる。これにより、線形部内で伝搬される速度反射波VRは、フレットにおける反射とブリッジまたは演奏者の指における反射とをシミュレートするものになる。
1.1.4.フレット反射のパラメータ設定
上述したように、実際のエレキギターのスラップ奏法においては、弦がフレットと接触することによって、パルシブでアタック感の強い音が発生する。そのメカニズムについては以下のように考えられる。すなわち、スラップ奏法によって弦が叩かれると、最初に弦が全フレットに接触し、その後にハイポジションのフレットから順に弦が離れてゆくと考えられる。但し、この参考例1においては、ハイポジションのフレットに当たって、次々にローポジションのフレットに当たってゆき、最後に解放される、というモデリングを採用している。
図1において10はエンベロープ発生器であり、図示せぬ演奏操作子からスラップ奏法の演奏指令を受信すると、エンベロープ信号S10を出力する。12は乗算器であり、該エンベロープ信号S10に係数DPを乗算し、その結果をエンベロープ信号S12として出力する。また、14は加算器であり、エンベロープ信号S12と基本ピッチPTとを加算し、その結果をエンベロープ信号S14として出力する。
ここで、エンベロープ信号S10,S14の例を図3(a)に示す。まず、エンベロープ信号S10としは、最も単純な例として、右下がりの一次関数を採用している。但し、エンベロープ信号S10の波形はこれに限られないことは言うまでもない。エンベロープ信号S14は、エンベロープ信号S10に係数DPを乗算しさらに基本ピッチPTを加算した関数になる。ここで、エンベロープ信号S14は複数のビットから構成されるが、特定のビットを100セントの桁として定め、その桁以上の上位ビットを上位部S14i、該特定のビットより下位のビットを下位部S14rとする。上位部S14iは同図(a)に示すように階段波になり、下位部S14rは同図(b)に示すように鋸歯状波になる。
図1に戻り、16はピッチ・ディレイ長変換部であり、上位部S14iによって示される音高をサンプリング周期を単位とする遅延量tに変換する。この遅延量tによって速度進行波VFに対する速度反射波VR32の遅延時間が決定される。次に、50はモジュロ型のシフトアップ回路であり、エンベロープ信号S14の下位部S14rを図3(c)に示す信号S50に変換する。信号S50は、下位部S14rが「50」以下である場合は「S14r/50」に一致し、下位部S14rが「50」を超える場合には、「S14r/50−2」に等しい。
図1において48は全波整流部であり、信号S50の絶対値を反射係数rとして出力する。従って、反射係数rは、図3(c)に示すような三角波になる。但し、全波整流部48においては、遅延量tが遅延量d以上になると、反射係数rが「0」に固定され、これによって速度反射波VRは速度反射波VR44に等しくなる。
1.2.参考例1の動作
次に、参考例1の動作を説明する。駆動信号発生器22から駆動信号S22が加算器24に供給されると、各構成要素26,40,42,44,46から成る線形部に速度反射波VRおよび速度進行波VF等が伝搬される。また、駆動信号S22が供給されると同時に、エンベロープ発生器10、乗算器12および加算器14を介してエンベロープ信号S14が出力される。初期状態においてはエンベロープ信号S14のレベルが高いため(図3(a)参照)、ミキサ32における遅延量tは小さくなり、速度進行波VFが速度反射波VR32として速やかにミキサ46に供給されることになる。
そして、時間の経過とともに、エンベロープ信号S14の上位部S14iは階段波状に低下してゆくから、遅延量tは段階的に増加される。図3(a),(c)から明らかなように、遅延量tが変化する周期と同一周期で反射係数rは三角波状に変化するから、ある時点では速度反射波VR32が強調され、またある時点では速度反射波VR44が強調されつつ、両者がミキシングされる。ここで、速度反射波VR32が強調されている期間は、エレキギターにおいて弦がフレットに強く接触し、主にフレットからの反射によって速度反射波VRが生じている状況が模擬される。
また、速度反射波VR44が強調されている期間は、弦がフレットに弱く接触し、主にブリッジまたは演奏者の指における反射によって速度反射波VRが生じている状況が模擬される。このように、参考例1においては、主にブリッジまたは演奏者の指における反射と、フレットにおける反射とがクロスフェードされつつ交互に模擬される。その際、反射に係るフレットは、ハイポジションからローポジションに向かって順次遷移し、遅延量tが遅延量d以上になると、反射係数rが「0」に設定される。これにより、速度反射波VR32は以降は無視される。従って、以降は、弦が途中のフレットに接触しない通常の振動状態が模擬されることになる。
なお、上述した例においては、エンベロープ信号S14の100セントの桁より下位のビットを下位部S14rとし、残りを上位部S14iとしたが、50セントの桁より下位のビットを下位部S14rとし、残りを上位部S14iとしてもよい。その場合の各部の波形図を図4(a)〜(c)に示す。この例においては、反射係数rの周波数が図3の場合の2倍になり、ミキサ32から出力される速度反射波VR32の影響が楽音信号上により強く現れる。
ここで、参考例1の電子撥弦楽器をコンピュータ上でシミュレートして得られた各部の波形例を図9および図10に示す。これらの図においては、エンベロープ信号S14の100セントの桁以上のビットを上位部S14iとしている。各グラフの横軸はサンプル数であり、エンベロープ信号S10は「2048」サンプルに渡って生成されている。乗算器44におけるループゲインgは「0.95」,FIRフィルタ42内の係数mは「0.5」(従って係数sは「0.25」)、基本ピッチPTは「110Hz」とした。
次に、同一の条件において、エンベロープ信号S14の50セントの桁以上のビットを上位部S14iとした場合の各部の波形例を図11および図12に示す。図10および図12の各速度反射波VR32を比較すると、後者の方がより強く速度反射波VRに対する影響を与えることが解る。
2.参考例2
次に、参考例2の構成を図5を参照し説明する。なお、図において図1の各部に対応する部分には同一の符号を付しその説明を省略する。図において加算器14から出力されるエンベロープ信号S14のうち、参考例2においては上位部S14iのみが使用され、下位部S14rは破棄される。52はハイパスフィルタであり、この上位部S14iの高周波成分のみを信号S52として出力する。信号S50の波形を図6(b)に示す。次に、54はリミッタであり、信号S52の振幅を「±1」の範囲内に制限し、信号S54として全波整流部48に供給する。これにより、反射係数rの波形は同図(c)に示すようになる。なお、上述した以外の構成は参考例1と同様である。
本参考例2においても、時間の経過とともに、エンベロープ信号S14の上位部S14iは階段波状に低下してゆくから、遅延量tは段階的に増加される。そして、遅延量tが変化する毎に反射係数rが立ち上がるから、各立ち上がり時点において速度反射波VR32が強調され、次の立ち上がり時点まで反射係数rが減衰するから速度反射波VR44が徐々に強調される。これにより、ハイポジションからローポジションに向かって、弦がフレットに順次接触する状態がシミュレートされる。そして、本参考例2においては、遅延量tが切り替わった直後に反射係数rが最大になるため、実際のエレキギターの挙動により近いと考えられる。
以上のように、参考例1,2においては、以下の構成が開示されている。なお、括弧内は例示である。
(1)第1の波形信号(速度進行波VF)を第1の遅延量(遅延量d)だけ遅延させ第2の波形信号(速度反射波VR44)を生成する過程と、前記第1の波形信号(速度進行波VF)を、前記第1の遅延量よりも短い第2の遅延量(遅延量t)だけ遅延させ第3の波形信号(速度反射波VR32)を生成する過程と、前記第2および第3の波形信号を合成して(ミキサ46でミキシングして)前記第1の波形信号にフィードバックする過程と、時間的に変化する制御信号(エンベロープ信号S10)に応じて、前記第2の遅延量と前記第2の波形信号の信号振幅とを制御する(反射係数rを変化させる)制御過程と前記第1ないし第3の波形信号の何れかを用いて楽音信号を出力する過程とを有することを特徴とする楽音信号合成方法。
(2)前記制御過程は、時間の経過とともに増加するように前記第2の遅延量を制御するとともに、これら各段階毎に前記第2の波形信号にピークが生ずるように前記第2の波形信号の信号振幅を制御することを特徴とする(1)記載の楽音信号合成方法。
3.実施例
上記参考例1,2は、主としてエレキギターにおけるスラップ奏法をシミュレートするものであったが、同様の技術をバイオリン等の自然擦弦楽器を模擬したの電子擦弦楽器にも適用することができる。その一例として、本実施例の電子擦弦楽器の構成を図7を参照し説明する。なお、この図7においても図1の各部に対応する部分には同一の符号を付しその説明を省略する。本実施例においては、図示せぬ演奏操作子から、弓速度Vbおよび弓圧力fbが楽音パラメータとして与えられることとする。また、参考例1と同様に、演奏操作子の操作状態に基づいて基本ピッチ演算部2から基本ピッチPTが出力され、これに基づいてリミット部8を介して遅延量dが出力される。加算器14においては、基本ピッチPTとタップ位置tpとが加算され、その加算結果の上位部S14iがピッチ・ディレイ長変換部16に供給される。
98は加算器であり、所定のオフセット値Ofと、ミキサ32から出力される速度反射波VR32とを加算し、その結果を信号S98として出力する。96は乗算器であり、この信号S98と弓速度Vbとを乗算し、その結果を信号S96として出力する。94はシフトアップ回路であり、信号S96を所定値Pで除算し、その余りを「±1」の範囲に変換し信号S94として出力する。ここで、図8に示すように、信号S96がランプ信号状に上昇すると、信号S94は右上りの鋸歯状波になる。
自然擦弦楽器において、弓を弦に当接させて弓を引くと、弦が弓の動きに追従して変位する状態(スティック状態)と、弓に対して弦がスリップして弦が基準位置み戻る状態(スリップ状態)とが交互に発生する。本実施例においては、信号S94が鋸歯状波状に変化した時、信号S94が徐々に上昇する動作によってスティック状態がシミュレートされ、信号S96が所定値Pの倍数に達して信号S94が立下がる動作によってスリップ状態がシミュレートされることになる。
92は乗算器であり、この信号S94に弓圧力fbを乗算し、その結果を信号S92として出力する。すなわち、自然擦弦楽器においては、弓圧力fbを大きくするほど弦と弓との摩擦力が大きくなり、弦変位の振幅が大きくなるため、信号S92によってかかる状態がシミュレートされることになる。90は加算器であり、信号S92と速度反射波VR44とを加算し、その結果を速度進行波VFとして出力する。
速度進行波VFは、遅延回路26において遅延量dだけ遅延され、ミキサ40、FIRフィルタ42、乗算器44を介して加算器90に帰還される。これにより、各構成要素26,40,42,44,90から成る線形部に速度進行波VF等が伝搬される。一方、速度進行波VFは遅延量tだけ遅延され加算器98に帰還され、再びオフセット値Ofが加算される。これにより、信号S98は徐々に上昇する。そして、上述したように、信号S96が所定値Pの倍数に達する毎に信号S94は−1に立下がり、弦と弓とがスリップして弦が基準位置に戻る動作がシミュレートされる。
この動作から明らかなように、本実施例において遅延量tは、速度反射波VR44の増加に対して信号S98が増加するレスポンスの速さを決定する量になる。そして、速度反射波VR32あるいはオフセット値Ofの単位時間あたりの増加量が大きくなるほど信号S94の周波数が高くなる。従来の電子擦弦楽器は、自然擦弦楽器におけるスリップ状態、スティック状態をシミュレートするために複雑な非線形回路を用いていたが、本実施例においては単純な構成によってこれらの現象をシミュレートすることができる。なお、本実施例による信号S98の波形の一例を図13に示す。
4.変形例
本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、例えば以下のように種々の変形が可能である。
(1)上記実施例および参考例1,2はハードウエアによって電子弦楽器を実現した例を示したが、各構成要素を各種コンピュータ上で動作するソフトウエアによって構成してもよい。その場合、このソフトウエアをCD−ROM、フレキシブルディスク等の記録媒体に格納して頒布し、あるいは伝送路を通じて頒布することもできる。さらに、本発明は、電子弦楽器に限定されるものではなく、他の電子楽器、携帯電話器、アミューズメント機器、その他楽音を発生する装置に適用できることは言うまでもない。
(2)上記参考例1,2においては、遅延量tを段階的に増加したが、これを連続的に増加するようにしてもよい。かかる場合においても、反射係数rのピーク毎に速度反射波VR32が強調されるから、実際のエレキギターのスラップ奏法と同様の効果が得られる。
(3)上記参考例1,2においてはエンベロープ信号S10に基づいて遅延量tを求めたが、これに代えてテーブルあるいは演算等によって半音単位に離散化した遅延量tを求めるようにしてもよい。
(4)上記実施例および参考例1,2においてはサンプリング周期の小数倍のディレイを実現するためにミキサ32,40を用いたが、これに代えてオールパスフィルタを用いてサンプリング周期の小数倍のディレイを実現してもよい。また、上記実施例および参考例1,2においてはFIRフィルタ42を用いたが、これに代えてIIRフィルタを用いてもよいことは言うまでもない。
(5)また、反射係数rの生成法は上記実施例および参考例1,2で示した他に、テーブル参照による方式も採用可能であるし、種々の演算を組み合わせてさらに複雑な波形形状の反射係数rを得るようにしてもよい。また、任意の変調信号で反射係数rを変調してもよい。
参考例1の電子撥弦楽器のブロック図である。 ミキサ40およびFIRフィルタ42の詳細ブロック図である。 参考例1における各部の波形図である。 参考例1における各部の波形図である。 参考例2の電子撥弦楽器のブロック図である。 参考例2における各部の波形図である。 参考例2の電子擦弦楽器のブロック図である。 本発明の一実施例における各部の波形図である。 参考例1における各部の波形図である。 参考例1における各部の波形図である。 参考例1における各部の波形図である。 参考例1における各部の波形図である。 上記一実施例における信号S98の波形図である。
符号の説明
2:基本ピッチ演算部、4:ピッチ・ディレイ長変換部、6:減算器、8:リミット部、10:エンベロープ発生器、12:乗算器、14:加算器、16:ピッチ・ディレイ長変換部、22:駆動信号発生器、24:加算器、26:遅延回路、32,40:ミキサ、42:FIRフィルタ、44:乗算器、46:ミキサ、48:全波整流部、50:シフトアップ回路、52:ハイパスフィルタ、72,74:乗算器、76:加算器、78,80:ラッチ回路、82,84,86:乗算器、90:加算器、92:乗算器、94:シフトアップ回路、96:乗算器、98:加算器。

Claims (4)

  1. 第1の波形信号を遅延手段により、第1の遅延量だけ遅延させ第2の波形信号を生成する過程と、
    前記第1の波形信号を前記遅延手段により、前記第1の遅延量よりも短い第2の遅延量だけ遅延させ第3の波形信号を生成する過程と、
    前記第3の波形信号に基づき、前記第3の波形信号の単位時間あたりの増加量が大きくなるほど周波数が高くなる鋸歯状波状の駆動信号を生成する過程と、
    前記第2の波形信号および前記駆動信号を加算合成して前記第1の波形信号として前記遅延手段にフィードバックする過程と
    前記第1の波形信号を用いて楽音信号を出力する過程と
    を有することを特徴とする楽音信号合成方法。
  2. 弓速度信号および弓圧力信号を入力する過程をさらに有し、
    前記駆動信号を生成する過程は、前記弓速度信号が大きくなるほど前記駆動信号の周波数を高くし、前記弓圧力信号が大きくなるほど前記駆動信号の振幅を大きくすることを特徴とする請求項1記載の楽音信号合成方法。
  3. 第1の波形信号を第1の遅延量だけ遅延させ第2の波形信号を生成するとともに、前記第1の波形信号を、前記第1の遅延量よりも短い第2の遅延量だけ遅延させ第3の波形信号を生成する遅延手段と、
    前記第3の波形信号に基づき、前記第3の波形信号の単位時間あたりの増加量が大きくなるほど周波数が高くなる鋸歯状波状の駆動信号を生成する手段と、
    前記第2の波形信号および前記駆動信号を加算合成して前記第1の波形信号として前記遅延手段にフィードバックする加算手段と
    を有し、前記第1の波形信号を用いて楽音信号を出力することを特徴とする楽音信号合成装置。
  4. 請求項1記載の楽音信号合成方法を処理装置に実行させることを特徴とするプログラム。
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