JP4155292B2 - 楽音信号合成方法、楽音信号合成装置およびプログラム - Google Patents
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Description
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、自然擦弦楽器の各部の挙動を忠実にシミュレートした楽音信号を簡易に得ることができる楽音信号合成方法、楽音信号合成装置およびプログラムを提供することを目的としている。
請求項1記載の楽音信号合成方法にあっては、第1の波形信号(速度進行波VF)を遅延手段により、第1の遅延量(遅延量d)だけ遅延させ第2の波形信号(速度反射波VR44)を生成する過程と、前記第1の波形信号(速度進行波VF)を前記遅延手段により、前記第1の遅延量よりも短い第2の遅延量(遅延量t)だけ遅延させ第3の波形信号(速度反射波VR32)を生成する過程と、前記第3の波形信号(速度反射波VR32)に基づき、前記第3の波形信号(VR32)の単位時間あたりの増加量が大きくなるほど周波数が高くなる鋸歯状波状の駆動信号(S92)を生成する過程(92〜98)と、前記第2の波形信号(速度反射波VR44)および前記駆動信号(S92)を加算合成して(加算器90で加算して)前記第1の波形信号(速度進行波VF)として前記遅延手段にフィードバックする過程と前記第1の波形信号(速度進行波VF)を用いて楽音信号を出力する過程とを有することを特徴とする。
さらに、請求項2記載の構成にあっては、請求項1記載の楽音信号合成方法において、弓速度信号(Vb)および弓圧力信号(fb)を入力する過程をさらに有し、前記駆動信号(S92)を生成する過程(92〜98)は、前記弓速度信号(Vb)が大きくなるほど前記駆動信号(S92)の周波数を高くし、前記弓圧力信号(fb)が大きくなるほど前記駆動信号(S92)の振幅を大きくすることを特徴とする。
また、請求項3記載の楽音信号合成装置にあっては、第1の波形信号(速度進行波VF)を第1の遅延量(遅延量d)だけ遅延させ第2の波形信号(速度反射波VR44)を生成するとともに、前記第1の波形信号(速度進行波VF)を、前記第1の遅延量よりも短い第2の遅延量(遅延量t)だけ遅延させ第3の波形信号(速度反射波VR32)を生成する遅延手段(26)と、前記第3の波形信号(速度反射波VR32)に基づき、前記第3の波形信号(VR32)の単位時間あたりの増加量が大きくなるほど周波数が高くなる鋸歯状波状の駆動信号(S92)を生成する手段(92〜98)と、前記第2の波形信号(速度反射波VR44)および前記駆動信号(S92)を加算合成して前記第1の波形信号(速度進行波VF)として前記遅延手段(26)にフィードバックする加算手段(加算器90)とを有し、前記第1の波形信号(速度進行波VF)を用いて楽音信号を出力することを特徴とする。
また、請求項4記載のプログラムにあっては、請求項1記載の楽音信号合成方法を処理装置に実行させることを特徴とする。
1.1.参考例1の構成
1.1.1.線形部の構成
次に、後述する本発明の一実施例の前提として、エレキギターをシミュレートする電子撥弦楽器の構成を説明する。まず、エレキギターの奏法の中で「スラップ」と呼ばれる奏法(日本ではチョッパー奏法と呼ばれることもある)が知られている。これは、特にフュージョン系などのジャンルのベースギターでよく用いられており、演奏者が親指で叩きつけるようにして弦を弾き、あるいは人差し指等で弦を引っかけ上げるようにして弦を弾く点に特徴がある。スラップ奏法においては、弦がフレットと接触することによって、パルシブでアタック感の強い音が発生する。しかし、フレットと接触することによる弦の挙動をシミュレートできる物理モデル音源は従来は知られていなかった。参考例1,2の電子撥弦楽器は、このようなエレキギター等の挙動を忠実にシミュレートするものである。
次に、2は基本ピッチ演算部であり、図示せぬ演奏操作子の操作状態に基づいて、発生すべき楽音信号の基本ピッチPTを演算する。4はピッチ・ディレイ長変換部であり、この基本ピッチPTに基づいて、上記線形部全体のディレイ長DLを演算する。このディレイ長DLは、電子撥弦楽器のサンプリング周期の倍数として表現される。6はオーバーフロー型の減算器であり、ディレイ長DLからフィルタディレイ長DLFを減算する。このフィルタディレイ長DLFは、FIRフィルタ42の遅延時間であり、サンプリング周期を単位として表現されである。本参考例1においてはフィルタディレイ長DLFは「1」である。
スラップ奏法によって弦がフレットに接触すると、撥弦点から生じた進行波が該接触点において反射され、この反射波が撥弦点に戻ることになる。この遅延時間に対応する遅延量をtとし、遅延量tの整数部をti、小数部をtfとする。上述したミキサ32は、ミキサ40と同様に構成されており、速度進行波VFを各々遅延量ti,ti+1だけ遅延させた速度進行波VF(ti),VF(ti+1)を小数部tfを混合比としてミキシングし、その結果を上記ミキサ46に供給する。
上述したように、実際のエレキギターのスラップ奏法においては、弦がフレットと接触することによって、パルシブでアタック感の強い音が発生する。そのメカニズムについては以下のように考えられる。すなわち、スラップ奏法によって弦が叩かれると、最初に弦が全フレットに接触し、その後にハイポジションのフレットから順に弦が離れてゆくと考えられる。但し、この参考例1においては、ハイポジションのフレットに当たって、次々にローポジションのフレットに当たってゆき、最後に解放される、というモデリングを採用している。
次に、参考例1の動作を説明する。駆動信号発生器22から駆動信号S22が加算器24に供給されると、各構成要素26,40,42,44,46から成る線形部に速度反射波VRおよび速度進行波VF等が伝搬される。また、駆動信号S22が供給されると同時に、エンベロープ発生器10、乗算器12および加算器14を介してエンベロープ信号S14が出力される。初期状態においてはエンベロープ信号S14のレベルが高いため(図3(a)参照)、ミキサ32における遅延量tは小さくなり、速度進行波VFが速度反射波VR32として速やかにミキサ46に供給されることになる。
次に、参考例2の構成を図5を参照し説明する。なお、図において図1の各部に対応する部分には同一の符号を付しその説明を省略する。図において加算器14から出力されるエンベロープ信号S14のうち、参考例2においては上位部S14iのみが使用され、下位部S14rは破棄される。52はハイパスフィルタであり、この上位部S14iの高周波成分のみを信号S52として出力する。信号S50の波形を図6(b)に示す。次に、54はリミッタであり、信号S52の振幅を「±1」の範囲内に制限し、信号S54として全波整流部48に供給する。これにより、反射係数rの波形は同図(c)に示すようになる。なお、上述した以外の構成は参考例1と同様である。
(1)第1の波形信号(速度進行波VF)を第1の遅延量(遅延量d)だけ遅延させ第2の波形信号(速度反射波VR44)を生成する過程と、前記第1の波形信号(速度進行波VF)を、前記第1の遅延量よりも短い第2の遅延量(遅延量t)だけ遅延させ第3の波形信号(速度反射波VR32)を生成する過程と、前記第2および第3の波形信号を合成して(ミキサ46でミキシングして)前記第1の波形信号にフィードバックする過程と、時間的に変化する制御信号(エンベロープ信号S10)に応じて、前記第2の遅延量と前記第2の波形信号の信号振幅とを制御する(反射係数rを変化させる)制御過程と前記第1ないし第3の波形信号の何れかを用いて楽音信号を出力する過程とを有することを特徴とする楽音信号合成方法。
(2)前記制御過程は、時間の経過とともに増加するように前記第2の遅延量を制御するとともに、これら各段階毎に前記第2の波形信号にピークが生ずるように前記第2の波形信号の信号振幅を制御することを特徴とする(1)記載の楽音信号合成方法。
上記参考例1,2は、主としてエレキギターにおけるスラップ奏法をシミュレートするものであったが、同様の技術をバイオリン等の自然擦弦楽器を模擬したの電子擦弦楽器にも適用することができる。その一例として、本実施例の電子擦弦楽器の構成を図7を参照し説明する。なお、この図7においても図1の各部に対応する部分には同一の符号を付しその説明を省略する。本実施例においては、図示せぬ演奏操作子から、弓速度Vbおよび弓圧力fbが楽音パラメータとして与えられることとする。また、参考例1と同様に、演奏操作子の操作状態に基づいて基本ピッチ演算部2から基本ピッチPTが出力され、これに基づいてリミット部8を介して遅延量dが出力される。加算器14においては、基本ピッチPTとタップ位置tpとが加算され、その加算結果の上位部S14iがピッチ・ディレイ長変換部16に供給される。
本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、例えば以下のように種々の変形が可能である。
(1)上記実施例および参考例1,2はハードウエアによって電子弦楽器を実現した例を示したが、各構成要素を各種コンピュータ上で動作するソフトウエアによって構成してもよい。その場合、このソフトウエアをCD−ROM、フレキシブルディスク等の記録媒体に格納して頒布し、あるいは伝送路を通じて頒布することもできる。さらに、本発明は、電子弦楽器に限定されるものではなく、他の電子楽器、携帯電話器、アミューズメント機器、その他楽音を発生する装置に適用できることは言うまでもない。
Claims (4)
- 第1の波形信号を遅延手段により、第1の遅延量だけ遅延させ第2の波形信号を生成する過程と、
前記第1の波形信号を前記遅延手段により、前記第1の遅延量よりも短い第2の遅延量だけ遅延させ第3の波形信号を生成する過程と、
前記第3の波形信号に基づき、前記第3の波形信号の単位時間あたりの増加量が大きくなるほど周波数が高くなる鋸歯状波状の駆動信号を生成する過程と、
前記第2の波形信号および前記駆動信号を加算合成して前記第1の波形信号として前記遅延手段にフィードバックする過程と
前記第1の波形信号を用いて楽音信号を出力する過程と
を有することを特徴とする楽音信号合成方法。 - 弓速度信号および弓圧力信号を入力する過程をさらに有し、
前記駆動信号を生成する過程は、前記弓速度信号が大きくなるほど前記駆動信号の周波数を高くし、前記弓圧力信号が大きくなるほど前記駆動信号の振幅を大きくすることを特徴とする請求項1記載の楽音信号合成方法。 - 第1の波形信号を第1の遅延量だけ遅延させ第2の波形信号を生成するとともに、前記第1の波形信号を、前記第1の遅延量よりも短い第2の遅延量だけ遅延させ第3の波形信号を生成する遅延手段と、
前記第3の波形信号に基づき、前記第3の波形信号の単位時間あたりの増加量が大きくなるほど周波数が高くなる鋸歯状波状の駆動信号を生成する手段と、
前記第2の波形信号および前記駆動信号を加算合成して前記第1の波形信号として前記遅延手段にフィードバックする加算手段と
を有し、前記第1の波形信号を用いて楽音信号を出力することを特徴とする楽音信号合成装置。 - 請求項1記載の楽音信号合成方法を処理装置に実行させることを特徴とするプログラム。
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JP2005263750A JP4155292B2 (ja) | 2005-09-12 | 2005-09-12 | 楽音信号合成方法、楽音信号合成装置およびプログラム |
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