JP4154698B2 - 車両の後側面部構造 - Google Patents

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本発明は、車両の後側面部構造に関する。
車両の後側面を構成するクォーターインナパネルの下端縁と、ホイールハウスの上端縁とを接合する自動車の後側面部構造が知られている。
特許第3210897号 特許第3307849号
ところで、一般に車室内の後部にリヤシートを有する車両は、リヤシートに着座した乗員を拘束して衝突時に乗員の安全性を確保するためのシートベルトを備えている。また、レイアウト等の理由から、シートベルトの一端を、クォーターインナパネルとホイールハウスとの接合部分によって支持したものがある。シートベルトの一端にはシートベルトリトラクタ等のシートベルト支持部材が連結され、上記接合部分には取付プレートが固着され、シートベルト支持部材が取付プレートに結合されている。車両の衝突時には、乗員からシートベルトを介してシートベルト支持部材及び取付プレートに大きな負荷が加わる。
しかし、上記構造では、乗員からシートベルトを介して伝達される負荷により、クォーターインナパネルとホイールハウスとの接合部分に生じる応力が過大となり、接合部分の破損によりシートベルトの移動が許容されて乗員の拘束状態が解除されてしまう可能性が生じる。
そして、上記不都合を解消するため、クォーターインナパネル全体の板厚を増大させると重量の増大を招くことになる。また、クォーターインナパネルとホイールハウスとの接合部分を補強部材により補強すると、部品点数の増加、重量の増大、構造の複雑化、及び取付作業性の煩雑化を招く。
更に、上記接合部分に取付プレートを別途設ける必要があるため、この点においても、部品点数の増加、重量の増大、構造の複雑化、及び取付作業性の煩雑化を招く。
そこで、本発明は、構造の複雑化及び重量の増加を抑えることができ、且つ十分な取付強度を確保してシートベルトの移動を阻止することが可能な車両の後側面部構造の提供を目的とする。
上記目的を達成すべく、本発明に係る車両の後側面部構造は、クォーターインナパネルと、ホイールハウスと、クォーターウタパネルと、プレートと、を備える。
クォーターインナパネルは、車両の後側面に形成される。ホイールハウスは、クォーターインナパネルの下方に配置され、車幅方向内側のホイールハウスインナパネルと車幅方向外側のホイールハウスアウタパネルとを有し、ホイールハウスインナパネルの車幅方向外側の上縁部とホイールハウスアウタパネルの車幅方向内側の上縁部とが接合されてタイヤの収納空間を区画する。クォーターウタパネルは、クォーターインナパネルの車幅方向外側に配置され、クォーターインナパネルの上縁部とホイールハウスアウタパネルの車幅方向外側の外縁部とに接合される。プレートは、ホイールハウスとクォーターインナパネルとの間に配置され、ホイールハウスインナパネルとホイールハウスアウタパネルとの接合部分とクォーターインナパネルの下縁部とに接合され、且つシートベルト支持部材のための取付部を有する。
上記構成では、シートベルト支持部材のための取付部を有するプレートは、クォーターインナパネル及びホイールハウスの双方に比較的広範囲で接合される。このため、車両の衝突時等において、乗員からシートベルトを介して伝達される負荷は、特定の部分に集中して作用することなく、プレートとクォーターインナパネルとの接合部分及びプレートとホイールハウスとの接合部分に良好に分散して作用し、これらの接合部分での過大な応力の発生が確実に抑えられる。従って、クォーターインナパネルとホイールハウスとの間にプレートを介在させるという簡単な構造によって、車両の衝突時等におけるシートベルト支持部材の取付強度を十分に確保して、シートベルトの移動を阻止することができる。
また、プレートは、クォーターインナパネル及びホイールハウスとは別体であるため、クォーターインナパネル又はホイールハウスの厚肉化による重量の増大を伴うことなく、プレートの板厚のみを、負荷に耐え得る最小限の大きさに設定することが可能である。また、シートベルト支持部材は、プレートに直接取り付けられるので、シートベルト支持部材をプレートに取り付けるためのブラケット等の部材が不要である。従って、重量の増大及び部品点数の増大を最小限に抑えた構造とすることができる。
更に、クォーターインナパネルとホイールハウスとの間にプレートを介在させているので、プレートの相当分だけクォーターインナパネルを小型化することができる。(材料の削減は実施例で述べる)
本発明によれば、複雑化及び重量の増加を抑えた構造により、十分な取付強度を確保してシートベルトの移動を阻止することができる。
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態に係るクォーターインナパネルとホイールハウスとの間にプレートを接合した状態を表す斜視図、図2は図1のII−II矢視断面図である。なお、図中FRは車両前方を、UPは車両上方をそれぞれ示している。
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る車両1は、車室内の後部にリヤシート(図示省略)が設けられた車両であり、車両1の後部の車幅方向両側には、車室内側の側面で上下方向に延びるクォーターインナパネル2と、クォーターインナパネル2の下方に配置され、後車輪(図示省略)を上方から覆うホイールハウス3と、クォーターインナパネル2の車幅方向外側に配置されるクォーターウタパネル4と、クォーターインナパネル2とホイールハウス3との間に配置されるプレート5とを備えている。
クォーターインナパネル2は、上下方向に僅かに円弧を描きながら延びる側面部10と、側面部10に形成されるリヤウィンドウ取付用の開口部11と、側面部10の下端から車幅方向内側に向けて曲折して延びる上面部12と、上面部12の車幅方向内側の端部から下方へ円弧を描きながら延びる下縁部13と、側面部10の上方に形成される上縁部(図示省略)とを有する。
ホイールハウス3は、車室内側に配置されるホイールハウスインナパネル6と、ホイールハウスインナパネル6の車幅方向外側に配置されるホイールハウスアウタパネル7とを備えている。ホイールハウスインナパネル6は、上方へ膨出し且つ車幅方向内側に向けて下方へ傾斜する上面部30と、上面部30の車幅方向内側の端部から下方へ円弧状に曲がって延びる延出部31と、上面部30の車幅方向外側の端部から上方へ曲折して延びる上縁部32と、延出部31の下端である下縁部33とを有する。ホイールハウスアウタパネル7は、上方へ膨出する上面部40と、上面部40の車幅方向内側の端部から上方へ曲折して延びる上縁部41と、上面部40の車幅方向外側の端部から下方へ曲折して延びる外縁部42とを有する。ホイールハウスインナパネル6とホイールハウスアウタパネル7とは、それぞれの上縁部32と上縁部41とが溶接等により接合されている。これにより、後車輪が上方から覆われている。
また、車室内の後部の底面にはリヤフロアパネル61が配置されている。このリヤフロアパネル61は、車幅方向両側の端部から下方に曲折して延びる外縁部62を有する。リヤフロアパネル61とホイールハウスインナパネル6とは、それぞれの外縁部62と下縁部33とが溶接等により接合されている。これにより、車室内の後部の床が形成されている。
クォーターウタパネル4は、クォーターインナパネル2に対面し上下方向に僅かに円弧を描きながら延びる側面部20と、側面部20に形成されクォーターインナパネル2の開口部11と略同一の開口を有する開口部(図字省略)と、側面部20の下端である下縁部22と、下縁部22から車幅方向内側に向けて曲折して延びる水切部23と、側面部20の上方に形成される上縁部(図示省略)とを有する。クォーターウタパネル4とホイールハウスアウタパネル7とは、それぞれの下縁部22と外縁部42とが溶接等により接合され、その接合部分は水切部23により車幅方向外側からは視認できなくなっている。また、クォーターインナパネル2とクォーターウタパネル4とは、それぞれの上縁部と上縁部とが溶接等により接合されている。なお、この接合部分の上方には、ルーフパネル(図字省略)が配置されている。
プレート5は、略板状形状からなり、上端で略水平な面を有する上縁部50と、下端で上方へ向けて膨出する面を有する下縁部51と、プレート5の下方で車両前方へ向けて延びるシートベルト取付部(シートベルト支持部材の取付部)53とを有する。シートベルト取付部53は、リヤシート用シートベルト63を固定するボルト取付用孔52が形成されている。プレート5とクォーターインナパネル2とは、それぞれの上縁部50と下縁部13とが比較的広範囲で溶接等により接合されている。また、プレート5とホイールハウスアウタパネル7とは、それぞれの下縁部51と上縁部41とが比較的広範囲で溶接等により接合されている。これにより、クォーターインナパネル2とホイールハウスアウタパネル7とクォーターウタパネル4とプレート5との間には、車両前後方向に沿った閉断面が形成される。また、リヤシート用シートベルト63は、シートベルトリトラクタ64に形成される孔65を挿通してプレート5のボルト取付用孔52と螺合するボルト66により、プレート5に対して固定されている。
図2に示すように、クォーターインナパネル2、ホイールハウス3及びクォーターウタパネル4のそれぞれの板厚は、張り剛性等の基本的性能を満足させる大きさに設定されている。これに対し、プレート5の板厚は、車両の衝突時等に乗員からリヤシート用シートベルト63を介して加わる負荷に耐え得る強度が必要なことから、クォーターインナパネル2、ホイールハウス3及びクォーターウタパネル4のそれぞれの板厚に比して厚肉に設定されている。
このように本実施形態によれば、シートベルトリトラクタ64が固定されたプレート5は、クォーターインナパネル2及びホイールハウス3の双方に比較的広範囲で接合されている。このため、車両1の衝突時等において、乗員からリヤシート用シートベルト63を介して伝達される負荷は、特定の部分に集中して作用することなく、プレート5の上縁部50とクォーターインナパネル2の下縁部13との接合部分及びプレート5の下縁部51とホイールハウスアウタパネル7の上縁部41との接合部分に良好に分散して作用し、これらの接合部分での過大な応力の発生が確実に抑えられる。従って、クォーターインナパネル2とホイールハウス3との間にプレート5を介在させるという簡単な構造によって、車両1の衝突時等におけるシートベルトリトラクタ64の取付強度を十分に確保して、リヤシート用シートベルト63の移動を阻止することができる。
また、プレート5は、クォーターインナパネル2及びホイールハウス3とは別体であるため、クォーターインナパネル2又はホイールハウス3の厚肉化による重量の増大を伴うことなく、プレート5の板厚のみを、負荷に耐え得る最小限の大きさに設定することが可能である。また、シートベルトリトラクタ64は、プレート5に直接取り付けられるので、シートベルトリトラクタ64をプレート5に取り付けるためのブラケット等の部材が不要である。従って、重量の増大及び部品点数の増大を最小限に抑えた構造とすることができる。
そして、プレート5は、クォーターインナパネル2及びホイールハウス3の双方に比較的広範囲で接合されているので、シートベルト取付部53にシートベルトリトラクタ64を取り付けた状態でプレート5をクォーターインナパネル2及びホイールハウス3の双方に接合しても溶接等の接合作業に支障をきたすことがない。従って、組付順序の自由度が増すと共に、組付工程の簡略化を図ることができる。
更に、クォーターインナパネル2とホイールハウス3との間にプレート5を介在させているので、プレート5の相当分だけクォーターインナパネル2を小型化することができる。また、これに伴なって、クォーターインナパネル2の製作に要する投入材料の低減を図ることができる。
なお、本実施形態では、リヤシート用シートベルト63を支持する部材として、シートベルトリトラクタ64を使用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、シートベルトアンカーを使用したものでもよい。
このように、本実施形態によれば、クォーターインナパネル2とホイールハウス3との間にプレート5を接合することで、複雑化及び重量の増加を抑えた構造により、十分な取付強度を確保し、且つリヤシート用シートベルト63の移動を阻止することができる。
本実施形態に係るクォーターインナパネルとホイールハウスとの間にプレートを接合した状態を表す斜視図である。 図1のII−II矢視断面図である。
符号の説明
1 車両
2 クォーターインナパネル
3 ホイールハウス
4 クォーターウタパネル
6 ホイールハウスインナパネル
7 ホイールハウスアウタパネル
13 下縁部
22 下縁部
32 上縁部
41 上縁部
42 外縁部
50 上縁部
51 下縁部
53 シートベルト取付部(シートベルト支持部材の取付部)
63 リヤシート用シートベルト(シートベルト)

Claims (1)

  1. 車両の後側面を形成するクォーターインナパネルと、
    前記クォーターインナパネルの下方に配置され、車幅方向内側のホイールハウスインナパネルと車幅方向外側のホイールハウスアウタパネルとを有し、前記ホイールハウスインナパネルの車幅方向外側の上縁部と前記ホイールハウスアウタパネルの車幅方向内側の上縁部とが接合されてタイヤの収納空間を区画するホイールハウスと、
    前記クォーターインナパネルの車幅方向外側に配置され、前記クォーターインナパネルの上縁部と前記ホイールハウスアウタパネルの車幅方向外側の外縁部とに接合されるクォーターアウタパネルと、
    前記ホイールハウスと前記クォーターインナパネルとの間に配置され、前記ホイールハウスインナパネルと前記ホイールハウスアウタパネルとの接合部分と前記クォーターインナパネルの下縁部とに接合され、シートベルト支持部材の取付部を有し、且つ前記クォーターインナパネル及び前記ホイールハウスよりも厚い略板状形状であるプレートと、を備えた
    ことを特徴とする車両の後側面部構造。
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