JP4154663B2 - 光スイッチ - Google Patents
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Description
本発明は、キャリア注入による屈折率変化により光信号の伝送経路を切り換える光スイッチに関し、特にクロストークを低減することが可能な光スイッチに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在の通信ネットワークであるLAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)等では、通常電気信号をもって情報を伝送する通信方式となっている。
【0003】
光信号をもって情報を伝送する通信方法は大量のデータを伝送する基幹ネットワークやその他一部のネットワークで用いられているだけである。また、これらのネットワークは”point to point”の通信であり、”フォトニックネットワーク”と言える通信網までは発達していないのが現状である。
【0004】
このような”フォトニックネットワーク”を実現するためには、電気信号の送信先を切り換えるルータやスイッチングハブ等といった装置と同様の機能を有する”光ルータ”や”光スイッチングハブ”等が必要になる。
【0005】
また、このような装置では高速に伝送経路を切り換える光スイッチが必要になり、ニオブ酸リチウムやPLZT(Lead Lanthanum Zirconate Titanate)等の強誘電体を用いたものや、半導体に光路導波路を形成し半導体中にキャリアを注入して屈折率を変化させ光信号の伝送経路を切り換えるものが存在する。
【0006】
そして、従来の半導体に光路導波路を形成し半導体中にキャリアを注入して屈折率を変化させ光信号の伝送経路を切り換える光スイッチに関連する先行技術文献としては次のようなものがある。
【0007】
【特許文献1】
特開平4−320219号公報
【非特許文献1】
「2x2 Optical Waveguide Switch with Bow-Tie Electrode Based on Carrier-Injection Total Internal Reflection in SiGe Alloy」, Baojun Li and Soo-Jin Chua, p206-p208, IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS, VOL.13, NO.3, MARCH 2001
【0008】
図4及び図5はこのような従来の光スイッチの一例を示す平面図及び断面図である。図4において1はGaAsやInP等の半導体の基板、2は”X字状”の光導波路を有するn型の光導波路層、3は電子が注入されるN電極、4は正孔が注入されるP電極である。
【0009】
図4において基板1上には”X字状”の光導波路を有する光導波路層2が形成され、”X字状”の光導波路の交差部分には長方形状のN電極3が形成される。また、”X字状”の光導波路の交差部分の近傍であってN電極3に並行して長方形状のP電極4が形成される。
【0010】
一方、図5は図4中”A−A’”における断面図であり、1,2,3及び4は図4と同一符号を付してあり、5はp型のGaAs等のコンタクト層、6はn型のAlGaAs等のクラッド層、7はn型のGaAsやInGaAs等のキャップ層、8はSiO2 等の絶縁膜、9a,9b及び9cは絶縁層であるポリイミド層、10a及び10bは配線パターンである。
【0011】
基板1上にはコンタクト層5、クラッド層6及び光導波路層2が台形状になるように順次形成され、光導波路層2上の一部にはキャップ層7が形成される。
【0012】
基板1、コンタクト層5、クラッド層6及び光導波路層2上であってキャップ層7及びコンタクト層5の一部以外には絶縁膜8が形成される。また、キャップ層7及びコンタクト層5の一部にN電極3及びP電極4がそれぞれ形成される。
【0013】
絶縁膜8上にはポリイミド層9a,9b及び9cがそれぞれ形成され、配線パターン10aはポリイミド層9a上に形成されると共にN電極3に接続され、配線パターン10bはポリイミド層9c上に形成されると共にP電極4に接続される。
【0014】
ここで、図4に示す従来例の動作を図5を参照しながら説明する。光スイッチが”OFF”の場合、N電極3及びP電極4には電流が供給されない。
【0015】
このため、”X字状”の光導波路の交差部分の屈折率の変化は生じないため、例えば、図4中”PI01”から入射した光信号は交差部分を直進して図4中”PO01”に示す部分から出射される。
【0016】
一方、光スイッチが”ON”の場合、N電極3から電子が注入され、P電極4からは正孔が注入され、このため、前記交差部分にはキャリア(電子、正孔)が注入される。
【0017】
このため、プラズマ効果によって”X字状”の光導波路の交差部分の屈折率が低くなるように変化するため、例えば、図4中”PI01”から入射した光信号は交差部分に生じた低屈折率部分で全反射されて図4中”PO02”に示す部分から出射される。
【0018】
この結果、電極に電流を供給して”X字状”の光導波路の交差部分にキャリア(電子、正孔)を注入して交差部分の屈折率を制御することにより、光信号の出射される位置を制御、言い換えれば、光信号の伝播経路を切り換えることが可能になる。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、図4及び図5に示す従来例では、光スイッチが”ON”の場合、プラズマ効果によって”X字状”の光導波路の交差部分の屈折率が低くなるように変化するものの、当該低屈折率部分の屈折率は一定ではないため入射される光信号の一部が当該低屈折率部分を透過して図4中”PO01”に示す部分に漏れ出してしまう、言い換えれば、光通信におけるクロストークが発生してしまうと言った問題点があった。
従って本発明が解決しようとする課題は、クロストークを低減することが可能な光スイッチを実現することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
キャリア注入による屈折率変化により光信号の伝送経路を切り換える光スイッチにおいて、
半導体基板と、この半導体基板上に形成されたコンタクト層と、このコンタクト層上に形成されたクラッド層と、このクラッド層上であって前記光信号が一方から入射され途中で2つに分岐して出射される光導波路が形成された光導波路層と、この光導波路層上の一部に形成されたキャップ層と、このキャップ層が形成されていない前記光導波路層上に形成された絶縁膜と、前記キャップ層上であって前記光導波路の分岐部分からキャリア注入がなく光スイッチがOFF時に前記光信号が出射される側の光導波路部分の途中にかけて形成されるN電極と、前記コンタクト層上であって前記N電極に並行して形成されるP電極とを備えたことにより、光スイッチが”ON”時のクロストークを低減することが可能になる。
【0021】
請求項2記載の発明は、
キャリア注入による屈折率変化により光信号の伝送経路を切り換える光スイッチにおいて、
半導体基板と、この半導体基板上に形成されたコンタクト層と、このコンタクト層上に形成されたクラッド層と、このクラッド層上であって前記光信号が一方から入射され途中で2つに分岐して出射される光導波路が形成された光導波路層と、この光導波路層上の一部に形成されたキャップ層と、このキャップ層が形成されていない前記光導波路層上に形成された絶縁膜と、前記キャップ層上であって前記光導波路の分岐部分に形成される第1のN電極と、前記コンタクト層上であって前記第1のN電極に並行して形成される第1のP電極と、前記キャップ層上であって前記第1のN電極及び前記第1のP電極にキャリア注入があり光スイッチがON時に前記光信号が出射される側の光導波路部分の中間部分に形成され光スイッチがOFF時に電子が注入される第2のN電極と、前記コンタクト層上であって前記第2のN電極に並行して形成され光スイッチがOFF時に正孔が注入される第2のP電極とを備えたことにより、光スイッチが”OFF”時のクロストークを低減することが可能になる。
【0022】
請求項3記載の発明は、
請求項1記載の発明である光スイッチにおいて、
前記キャップ層上であって前記N電極及び前記P電極にキャリア注入があり光スイッチがON時に前記光信号が出射される側の光導波路部分の中間部分に形成され光スイッチがOFF時に電子が注入される第2のN電極と、前記コンタクト層上であって前記第2のN電極に並行して形成され光スイッチがOFF時に正孔が注入される第2のP電極とを備えたことにより、光スイッチが”ON”時のクロストーク及び”OFF”時のクロストークの双方を低減することが可能になる。
【0023】
請求項4記載の発明は、
キャリア注入による屈折率変化により光信号の伝送経路を切り換える光スイッチにおいて、
半導体基板と、この半導体基板上に形成されたコンタクト層と、このコンタクト層上に形成されたクラッド層と、このクラッド層上であって前記光信号が一方から入射され途中で2つに分岐して出射される光導波路が形成された光導波路層と、この光導波路層上の一部に形成されたキャップ層と、このキャップ層が形成されていない前記光導波路層上に形成された絶縁膜と、前記キャップ層上であって前記光導波路の分岐部分からキャリア注入がなく光スイッチがOFF時に前記光信号が出射される側の光導波路部分の途中にかけて形成されるP電極と、前記コンタクト層上であって前記P電極に並行して形成されるN電極とを備えたことにより、光スイッチが”ON”時のクロストークを低減することが可能になる。
【0024】
請求項5記載の発明は、
キャリア注入による屈折率変化により光信号の伝送経路を切り換える光スイッチにおいて、
半導体基板と、この半導体基板上に形成されたコンタクト層と、このコンタクト層上に形成されたクラッド層と、このクラッド層上であって前記光信号が一方から入射され途中で2つに分岐して出射される光導波路が形成された光導波路層と、この光導波路層上の一部に形成されたキャップ層と、このキャップ層が形成されていない前記光導波路層上に形成された絶縁膜と、前記キャップ層上であって前記光導波路の分岐部分に形成される第1のP電極と、前記コンタクト層上であって前記第1のP電極に並行して形成される第1のN電極と、前記キャップ層上であって前記第1のN電極及び前記第1のP電極にキャリア注入があり光スイッチがON時に前記光信号が出射される側の光導波路部分の中間部分に形成され光スイッチがOFF時に正孔が注入される第2のP電極と、前記コンタクト層上であって前記第2のP電極に並行して形成され光スイッチがOFF時に電子が注入される第2のN電極とを備えたことにより、光スイッチが”OFF”時のクロストークを低減することが可能になる。
【0025】
請求項6記載の発明は、
請求項4記載の発明である光スイッチにおいて、
前記キャップ層上であって前記N電極及び前記P電極にキャリア注入があり光スイッチがON時に前記光信号が出射される側の光導波路部分の中間部分に形成され光スイッチがOFF時に正孔が注入される第2のP電極と、前記コンタクト層上であって前記第2のP電極に並行して形成され光スイッチがOFF時に電子が注入される第2のN電極とを備えたことにより、光スイッチが”ON”時のクロストーク及び”OFF”時のクロストークの双方を低減することが可能になる。
【0026】
請求項7記載の発明は、
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の発明である光スイッチにおいて、
前記光導波路層が、
2本の直線の光導波路が交差した光導波路を有することにより、光スイッチが”ON”時のクロストーク、若しくは、”OFF”時のクロストークのどちらか一方を低減し、或いは、双方を低減することが可能になる。
【0027】
請求項8記載の発明は、
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の発明である光スイッチにおいて、
前記光導波路層が、
1本の直線の光導波路の途中から異なる角度で分岐する光導波路を有することにより、光スイッチが”ON”時のクロストーク、若しくは、”OFF”時のクロストークのどちらか一方を低減し、或いは、双方を低減することが可能になる。
【0028】
請求項9記載の発明は、
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の発明である光スイッチにおいて、
前記キャップ層の代わりに、
イオン注入によって前記キャップ層の機能を代替する領域を前記光導波路層に形成したことにより、光スイッチが”ON”時のクロストーク、若しくは、”OFF”時のクロストークのどちらか一方を低減し、或いは、双方を低減することが可能になる。
【0029】
請求項10記載の発明は、
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の発明である光スイッチにおいて、
イオン注入によって前記コンタクト層の機能を代替する領域をクラッド層若しくは前記半導体基板に形成したことにより、光スイッチが”ON”時のクロストーク、若しくは、”OFF”時のクロストークのどちらか一方を低減し、或いは、双方を低減することが可能になる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下本発明を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係る光スイッチの一実施例を示す平面図である。但し、断面の構造に関しては図5に示す従来例と同様であるので記載及びその説明は省略する。
【0031】
図1において1及び2は図4と同一符号を付してあり、11は電子が注入されるN電極、12は正孔が注入されるP電極である。
【0032】
図1において基板1上には”X字状”、言い換えれば、2本の直線の光導波路が交差した形状の光導波路を有する光導波路層2が形成され、当該”X字状”の光導波路の交差部分から光スイッチが”OFF”時に光信号が出射される側の光導波路部分の途中にかけてN電極11が形成される。
【0033】
また、基板1上(正確にはコンタクト層5上)であって”X字状”の光導波路の交差部分の近傍から光スイッチが”OFF”時に光信号が出射される側の光導波路部分の途中の近傍までN電極11に並行してP電極12が形成される。
【0034】
例えば、N電極11は”X字状”の光導波路の交差部分から図1中”PO21”に示す出射用の光導波路部分の途中にかけてN電極11が形成される。また、”X字状”の光導波路の交差部分に並行し、且つ、図1中”PO21”に示す出射用の光導波路部分の途中まで当該光導波路に並行してP電極12が形成される。
【0035】
ここで、図1に示す実施例の動作を説明する。光スイッチが”OFF”の場合、N電極11及びP電極12には電流が供給されない。
【0036】
このため、”X字状”の光導波路の交差部分の屈折率の変化は生じないため、例えば、図1中”PI21”から入射した光信号は交差部分を直進して図1中”PO21”に示す部分から出射される。
【0037】
一方、光スイッチが”ON”の場合、N電極11から電子が注入され、P電極12からは正孔が注入され、このため、前記交差部分にはキャリア(電子、正孔)が注入される。
【0038】
従って、プラズマ効果によって”X字状”の光導波路の交差部分の屈折率が低くなるように変化するため、例えば、図1中”PI21”から入射した光信号は交差部分に生じた低屈折率部分で全反射されて図1中”PO22”に示す部分から出射される。
【0039】
この時、”X字状”の光導波路の交差部分から図1中”PO21”に示す出射用の光導波路部分の途中までN電極11が形成されているので、当該光導波路部分の途中までプラズマ効果によって低屈折率部分が生じることになる。
【0040】
これにより、低屈折率部分の屈折率は一定ではないため入射される光信号の一部が当該低屈折率部分を透過して図1中”PO21”に示す部分に漏れ出してしまう現象を低減させることができる。すなわち、クロストークを低減することが可能になる。
【0041】
この結果、N電極11を”X字状”の光導波路の交差部分から一方の出射用の光導波路部分の途中にかけて形成し、P電極12を”X字状”の光導波路の交差部分の近傍から一方の出射用の光導波路部分の途中の近傍までN電極11に並行して形成することにより、光スイッチが”ON”時のクロストークを低減することが可能になる。
【0042】
また、図1に示す実施例では、光スイッチが”ON”時のクロストークを低減させることを可能にしているが、光スイッチが”OFF”時のクロストークを低減させることも可能である。
【0043】
図2はこのような本発明に係る光スイッチの他の実施例を示す平面図である。図2において1,2,3及び4は図4と同一符号を付してあり、13は電子が注入される第2のN電極、14は正孔が注入される第2のP電極である。
【0044】
図2において基板1上には”X字状”の光導波路を有する光導波路層2が形成され、”X字状”の光導波路の交差部分には長方形状のN電極3が形成される。また、”X字状”の光導波路の交差部分の近傍であってN電極3に並行して長方形状のP電極4が形成される。
【0045】
また、光スイッチが”ON”時に光信号が出射される側の光導波路の中間部分には長方形状のN電極13が形成され、当該N電極13の近傍にはN電極13に並行して長方形状のP電極14が形成される。
【0046】
ここで、図2に示す他の実施例の動作を説明する。但し、光スイッチが”ON”の場合の動作は従来例と同様であるので説明は省略する。
【0047】
一方、光スイッチが”OFF”の場合、N電極3及びP電極4には電流が供給されない。このため、”X字状”の光導波路の交差部分の屈折率の変化は生じないため、例えば、図2中”PI31”から入射した光信号は交差部分を直進して図2中”PO31”に示す部分から出射される。
【0048】
但し、光スイッチが”OFF”の場合、N電極13から電子が注入され、P電極14からは正孔が注入される。このため、光スイッチが”ON”時に光信号が出射される側の光導波路の中間部分(以下、単に中間部分と呼ぶ。)にはキャリア(電子、正孔)が注入される。
【0049】
従って、プラズマ効果によって中間部分の屈折率が低くなるように変化するため、例えば、図2中”PI31”から入射した光信号が図2中”PO32”に示す部分に漏れ出したとしても、中間部分に形成された低屈折率部分で全反射されて、光スイッチが”OFF”時のクロストークを低減させることが可能になる。
【0050】
この結果、光スイッチが”ON”時に光信号が出射される側の光導波路の中間部分に長方形状のN電極13を、当該N電極13の近傍にN電極13に並行して長方形状のP電極14をそれぞれ形成することにより、光スイッチが”OFF”時のクロストークを低減することが可能になる。
【0051】
また、図2では光スイッチが”OFF”時のクロストークのみを低減させているが、光スイッチが”ON”時のクロストーク及び”OFF”時のクロストークの双方を低減させても構わない。
【0052】
図3はこのようなは本発明に係る光スイッチの他の実施例を示す平面図である。図3において1,2,11及び12は図1と同一符号を付してあり、13及び14は図2と同一符号を付してある。
【0053】
図3において基板1上には”X字状”の光導波路を有する光導波路層2が形成され、”X字状”の光導波路の交差部分から光スイッチが”OFF”時に光信号が出射される側の光導波路部分の途中にかけてN電極11が形成される。また、”X字状”の光導波路の交差部分の近傍から光スイッチが”OFF”時に光信号が出射される側の光導波路部分の途中の近傍までN電極11に並行してP電極12が形成される。
【0054】
また、光スイッチが”ON”時に光信号が出射される側の光導波路の中間部分には長方形状のN電極13が形成され、当該N電極13の近傍にはN電極13に並行して長方形状のP電極14が形成される。
【0055】
ここで、図2に示す他の実施例の動作を説明する。但し、光スイッチが”ON”の場合の動作は図1に示す実施例と同様であるので説明は省略する。
【0056】
一方、光スイッチが”OFF”の場合、N電極11及びP電極12には電流が供給されない。このため、”X字状”の光導波路の交差部分の屈折率の変化は生じないため、例えば、図3中”PI41”から入射した光信号は交差部分を直進して図3中”PO41”に示す部分から出射される。
【0057】
但し、光スイッチが”OFF”の場合、N電極13から電子が注入され、P電極14からは正孔が注入される。このため、光スイッチが”ON”時に光信号が出射される側の光導波路の中間部分(以下、単に中間部分と呼ぶ。)にはキャリア(電子、正孔)が注入される。
【0058】
従って、プラズマ効果によって中間部分の屈折率が低くなるように変化するため、例えば、図3中”PI41”から入射した光信号が図3中”PO42”に示す部分に漏れ出したとしても、中間部分に形成された低屈折率部分で全反射されて、光スイッチが”OFF”時のクロストークを低減させることが可能になる。
【0059】
この結果、N電極11を”X字状”の光導波路の交差部分から一方の出射用の光導波路部分の途中にかけて形成し、P電極12を”X字状”の光導波路の交差部分の近傍から一方の出射用の光導波路部分の途中の近傍までN電極11に並行して形成することにより、光スイッチが”ON”時のクロストークを低減することが可能になる。
【0060】
また、光スイッチが”ON”時に光信号が出射される側の光導波路の中間部分に長方形状のN電極13を、当該N電極13の近傍にN電極13に並行して長方形状のP電極14をそれぞれ形成することにより、光スイッチが”OFF”時のクロストークを低減することが可能になる。
【0061】
なお、図1〜図3に示す実施例では基板1上に形成された”X字状”の光導波路を有する光導波路層2を例示しているが、勿論、出射用の光導波路を2つ有する光導波路でれば”y字状”であっても、その他の形状であっても構わない。
【0062】
ここで、”y字状”の光導波路とは、1本の直線の光導波路の途中から異なる角度で分岐する形状である。
【0063】
なお、図1〜図3に示す実施例の断面構造(図4に示す従来例と同様、)では絶縁膜8の上にポリイミド層9a,9b及び9cを形成しその上に配線パターン10a及び10bを形成している構造を例示しているがポリイミド層及び配線パターンに関しては必須の構成要素ではない。
【0064】
また、図1〜図3に示す実施例の断面構造(図4に示す従来例と同様、)では、伝播する光信号を閉じ込めるためコンタクト層5、クラッド層6や光導波路層2を台形状に形成しているが、必須の構成ではない。
【0065】
また、図1等の説明に際してはキャップ層上にN電極11等を、コンタクト層上にP電極12等を形成する構成となっているが、N電極とP電極の形成位置を入れ替えても勿論構わない。
【0066】
本願の光スイッチに関しては、光の伝播する光導波路内にキャリアを導入して、その部分での屈折率を低下させることにより光を全反射させてスイッチングを実現している。そして、当該キャリアを効果的に蓄積させるためにPN接合を形成しているので、PN接合の極性を逆にしても原理的に動作は可能である。
【0067】
具体的には、実施例の断面図に相当する図5におけるn型のキャップ層7、n型の光導波路層2、n型のクラッド層6及びp型のコンタクト層5をそれぞれ、p型のキャップ層、p型の光導波路層、p型のクラッド層6及びn型のコンタクト層として形成すれば良い。
【0068】
また、キャップ層7は電極と光導波路層との間の抵抗を低減するためのものであって、光スイッチの動作に関しては本質的な構成要素ではない。
【0069】
また、図1等に示す実施例(図5に示す断面図)ではPN接合の位置をクラッド層とコンタクト層との間に形成しているが、勿論、これに限定される訳ではなく、光導波路層とクラッド層との間にPN接合を形成しても構わない。
【0070】
図1等に示す実施例(図5に示す断面図)ではキャップ層7及びコンタクト層5を形成しているが、キャップ層7或いはコンタクト層5の機能を代替する領域を光導波路層2或いはクラッド層6等に設けることにより、当該キャップ層7及びコンタクト層5を省略しても構わない。
【0071】
具体的には、イオン注入によってキャップ層7或いはコンタクト層5の機能を代替する領域を光導波路層2或いはクラッド層6や半導体基板1等に形成するにより、当該キャップ層7及びコンタクト層5を省略することが可能になる。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば次のような効果がある。
請求項1,4,7,8,9及び請求項10の発明によれば、N電極(P電極)を光導波路の分岐部分から一方の出射用の光導波路部分の途中にかけて形成し、P電極(N電極)を光導波路の交差部分の近傍から一方の出射用の光導波路部分の途中の近傍までN電極(P電極)に並行して形成することにより、光スイッチが”ON”時のクロストークを低減することが可能になる。
【0073】
また、請求項2,5,7,8,9及び請求項10の発明によれば、光スイッチが”ON”時に光信号が出射される側の光導波路の中間部分に長方形状の第2のN電極(P電極)を、第2のN電極(P電極)の近傍に第2のN電極(P電極)に並行して長方形状の第2のP電極(N電極)をそれぞれ形成することにより、光スイッチが”OFF”時のクロストークを低減することが可能になる。
【0074】
また、請求項3,6,7,8,9及び請求項10によれば、第1のN電極(P電極)を光導波路の分岐部分から一方の出射用の光導波路部分の途中にかけて形成し、第1のP電極(N電極)を光導波路の交差部分の近傍から一方の出射用の光導波路部分の途中の近傍までN電極(P電極)に並行して形成すると共に、光スイッチが”ON”時に光信号が出射される側の光導波路の中間部分に長方形状の第2のN電極(P電極)を、第2のN電極(P電極)の近傍に第2のN電極(P電極)に並行して長方形状の第2のP電極(N電極)をそれぞれ形成することにより、光スイッチが”ON”時のクロストーク及び”OFF”時のクロストークの双方を低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光スイッチの一実施例を示す平面図である。
【図2】本発明に係る光スイッチの他の実施例を示す平面図である。
【図3】本発明に係る光スイッチの他の実施例を示す平面図である。
【図4】従来の光スイッチの一例を示す平面図である。
【図5】従来の光スイッチの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 光導波路
3,11,13 N電極
4,12,14 P電極
5 コンタクト層
6 クラッド層
7 キャップ層
8 絶縁膜
9a,9b,9c ポリイミド層
10a,10b 配線パターン
Claims (10)
- キャリア注入による屈折率変化により光信号の伝送経路を切り換える光スイッチにおいて、
半導体基板と、
この半導体基板上に形成されたコンタクト層と、
このコンタクト層上に形成されたクラッド層と、
このクラッド層上であって前記光信号が一方から入射され途中で2つに分岐して出射される光導波路が形成された光導波路層と、
この光導波路層上の一部に形成されたキャップ層と、
このキャップ層が形成されていない前記光導波路層上に形成された絶縁膜と、
前記キャップ層上であって前記光導波路の分岐部分からキャリア注入がなく光スイッチがOFF時に前記光信号が出射される側の光導波路部分の途中にかけて形成されるN電極と、
前記コンタクト層上であって前記N電極に並行して形成されるP電極と
を備えたことを特徴とする光スイッチ。 - キャリア注入による屈折率変化により光信号の伝送経路を切り換える光スイッチにおいて、
半導体基板と、
この半導体基板上に形成されたコンタクト層と、
このコンタクト層上に形成されたクラッド層と、
このクラッド層上であって前記光信号が一方から入射され途中で2つに分岐して出射される光導波路が形成された光導波路層と、
この光導波路層上の一部に形成されたキャップ層と、
このキャップ層が形成されていない前記光導波路層上に形成された絶縁膜と、
前記キャップ層上であって前記光導波路の分岐部分に形成される第1のN電極と、
前記コンタクト層上であって前記第1のN電極に並行して形成される第1のP電極と、
前記キャップ層上であって前記第1のN電極及び前記第1のP電極にキャリア注入があり光スイッチがON時に前記光信号が出射される側の光導波路部分の中間部分に形成され光スイッチがOFF時に電子が注入される第2のN電極と、
前記コンタクト層上であって前記第2のN電極に並行して形成され光スイッチがOFF時に正孔が注入される第2のP電極と
を備えたことを特徴とする光スイッチ。 - 前記キャップ層上であって前記N電極及び前記P電極にキャリア注入があり光スイッチがON時に前記光信号が出射される側の光導波路部分の中間部分に形成され光スイッチがOFF時に電子が注入される第2のN電極と、
前記コンタクト層上であって前記第2のN電極に並行して形成され光スイッチがOFF時に正孔が注入される第2のP電極とを備えたことを特徴とする
請求項1記載の光スイッチ。 - キャリア注入による屈折率変化により光信号の伝送経路を切り換える光スイッチにおいて、
半導体基板と、
この半導体基板上に形成されたコンタクト層と、
このコンタクト層上に形成されたクラッド層と、
このクラッド層上であって前記光信号が一方から入射され途中で2つに分岐して出射される光導波路が形成された光導波路層と、
この光導波路層上の一部に形成されたキャップ層と、
このキャップ層が形成されていない前記光導波路層上に形成された絶縁膜と、
前記キャップ層上であって前記光導波路の分岐部分からキャリア注入がなく光スイッチがOFF時に前記光信号が出射される側の光導波路部分の途中にかけて形成されるP電極と、
前記コンタクト層上であって前記P電極に並行して形成されるN電極と
を備えたことを特徴とする光スイッチ。 - キャリア注入による屈折率変化により光信号の伝送経路を切り換える光スイッチにおいて、
半導体基板と、
この半導体基板上に形成されたコンタクト層と、
このコンタクト層上に形成されたクラッド層と、
このクラッド層上であって前記光信号が一方から入射され途中で2つに分岐して出射される光導波路が形成された光導波路層と、
この光導波路層上の一部に形成されたキャップ層と、
このキャップ層が形成されていない前記光導波路層上に形成された絶縁膜と、
前記キャップ層上であって前記光導波路の分岐部分に形成される第1のP電極と、
前記コンタクト層上であって前記第1のP電極に並行して形成される第1のN電極と、
前記キャップ層上であって前記第1のN電極及び前記第1のP電極にキャリア注入があり光スイッチがON時に前記光信号が出射される側の光導波路部分の中間部分に形成され光スイッチがOFF時に正孔が注入される第2のP電極と、
前記コンタクト層上であって前記第2のP電極に並行して形成され光スイッチがOFF時に電子が注入される第2のN電極と
を備えたことを特徴とする光スイッチ。 - 前記キャップ層上であって前記N電極及び前記P電極にキャリア注入があり光スイッチがON時に前記光信号が出射される側の光導波路部分の中間部分に形成され光スイッチがOFF時に正孔が注入される第2のP電極と、
前記コンタクト層上であって前記第2のP電極に並行して形成され光スイッチがOFF時に電子が注入される第2のN電極とを備えたことを特徴とする
請求項4記載の光スイッチ。 - 前記光導波路層が、
2本の直線の光導波路が交差した光導波路を有することを特徴とする
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の光スイッチ。 - 前記光導波路層が、
1本の直線の光導波路の途中から異なる角度で分岐する光導波路を有することを特徴とする
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の光スイッチ。 - 前記キャップ層の代わりに、
イオン注入によって前記キャップ層の機能を代替する領域を前記光導波路層に形成したことを特徴とする
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の光スイッチ。 - 前記コンタクト層の代わりに、
イオン注入によって前記コンタクト層の機能を代替する領域をクラッド層若しくは前記半導体基板に形成したことを特徴とする
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の光スイッチ。
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