JP4154037B2 - 電解コンデンサの駆動用電解液 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐電圧を改善した電解コンデンサの駆動用電解液(以下、電解液と称す)の改良に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
従来、エチレングリコールを主成分とする溶媒に高級二塩基酸またはそのアンモニウム塩、及びホウ酸またはそのアンモニウムを溶解した電解コンデンサ用電解液にポリエチレングリコールや、ポリビニルアルコール等の合成高分子を添加すると電解液の耐電圧を向上できることが知られている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
平均分子量が１０００以下の比較的重合度の小さいポリエチレングリコールは、電解液に対する溶解性が高いが耐電圧向上の効果が小さい。平均分子量が１０００以上のものは耐電圧向上の効果が大きいが、大幅な比抵抗の上昇を伴う。ポリビニルアルコールは、３次元網目構造を有するため、比抵抗を大幅に上昇させずに耐電圧を向上できるが、エチレングリコールを主溶媒とする電解液に対して溶解性が非常に低いためごく少量しか溶解せず、溶解しても製品中の発熱等により、ポリビニルアルコールの主鎖の切断が生じるため耐電圧向上の効果が減少してしまう問題があった。
本発明は上記の欠点を改善し、電解液の比抵抗の上昇を抑制しつつ、耐電圧の向上及び耐電圧の維持を図ることができ、かつ、溶解性の向上も可能な電解コンデンサ用電解液を提供するものである。
【０００４】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の課題を解決するために、各種検討した結果、見出されたものである。ポリビニルアルコールをポリエチレングリコールジアクリレートで架橋して形成した架橋型ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコールジアクリレート共重合体は、エチレングリコールに対する溶解性が高いポリエチレングリコール部分と、耐電圧に効果のあるポリビニルアルコール部分を併せて活用できる。そして、上記の共重合体を使用すると、ポリビニルアルコールを単独で用いたときより、エチレングリコールを主溶媒とする電解液に対する溶解性を向上でき、かつ架橋構造による効果−耐熱性、耐薬品性に優れる特性を利用できることが判明した。
【０００５】
すなわち、エチレングリコールを主成分とする溶媒に、高級二塩基酸またはそのアンモニウム塩、およびホウ酸またはそのアンモニウム塩を溶解してなる電解コンデンサの駆動用電解液に、ポリビニルアルコールの重合度（ｎ）が２００〜１５００であり、ポリエチレングリコールの重合度（ｍ）が４〜８００である架橋型ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコールジアクリレート共重合体（化２）を０．１〜１０．０ｗｔ％添加することを特徴とする電解コンデンサの駆動用電解液である。
【化２】

【０００８】
ポリビニルアルコールをポリエチレングリコールジアクリレートで架橋して形成した架橋型ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコールジアクリレート共重合体は化２に示したように、ポリビニルアルコール部分とポリエチレングリコール部分を有し、ポリビニルアルコール部分とポリエチレングリコール部分がともに耐電圧向上の効果を示し、ポリエチレングリコール部分によりエチレングリコールに対する溶解性を向上させ、ポリビニルアルコール部分が有する３次元網目構造により比抵抗の上昇を抑制できる。またアクリル酸による架橋構造のため、熱分解が生じにくく、耐熱性に優れるため、ポリビニルアルコールの主鎖切断による分子量低下を抑えることができ、高温下における電解液の耐電圧低下を防止できる。
【０００９】
【実施例】
以下、実施例の具体的内容について説明する。
溶媒にエチレングリコール、溶質にホウ酸と、高級二塩基酸としてはアジピン酸、セバシン酸を用いた。添加剤としてはマンニトール、オルトリン酸を用いた。そして耐電圧向上を目的として架橋型ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコールジアクリレート共重合体、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールを添加した。ｐＨ調整剤としてアンモニア水を用いた。表１に電解液の組成、３０℃の比抵抗、８５℃の火花発生電圧（以下、火花電圧と称す）の測定結果を示した。
【００１０】
【表１】

【００１１】
従来例、比較例１〜３に示すように、平均分子量１０００のポリエチレングリコールを添加すると火花電圧は上昇するが、同時に比抵抗も上昇し、添加量１０．０ｗｔ％では火花電圧は４３５Ｖまで達するが、比抵抗は７８０Ω・ｃｍまで上昇した。比較例４〜６の平均分子量２００００のポリエチレングリコールでは、平均分子量１０００と比べ、火花電圧の上昇は大きいが５．０ｗｔ％添加した場合、完全に溶解できなかった。
【００１２】
次にポリビニルアルコールの添加についての検討結果を、比較例７〜９に示した。ポリエチレングリコールに比べ、比抵抗の上昇がほとんどなく火花電圧は上昇しているが、２．０ｗｔ．％の添加では完全に溶解できなかった。
【００１３】
そこで、実施例１〜３に示すように架橋型ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコールジアクリレート共重合体を添加すると、火花電圧が４２５Ｖの場合でも比抵抗は６６５Ω・ｃｍに抑えられ、１０．０ｗｔ％添加しても完全に溶解可能で、火花電圧は４４０Ｖまで上昇させることができ、比抵抗の上昇も６９０Ω・ｃｍ程度であった。
【００１４】
尚、このとき架橋型ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコールジアクリレート共重合体の添加量が０．１０ｗｔ％未満では耐電圧向上の効果がなく、１０．０ｗｔ．％を超える場合では完全に溶解できなくなるため不適である。さらに、ポリビニルアルコールの重合度ｎが２００未満、もしくはポリエチレングリコールの重合度ｍが４未満の場合、耐電圧向上の効果がなく、ポリビニルアルコールの重合度ｎが１５００、もしくはポリエチレングリコールの重合度ｍが８００を超える場合、完全に溶解することができないため不適である。
【００１５】
【発明の効果】
上記の通り、架橋型ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコールジアクリレート共重合体をエチレングリコールを主体とした電解液に添加した場合、比抵抗を上昇させずに耐電圧の改善を図ることができる。

Claims (1)

1. エチレングリコールを主成分とする溶媒に、高級二塩基酸またはそのアンモニウム塩、およびホウ酸またはそのアンモニウム塩を溶解してなる電解コンデンサの駆動用電解液に、
   ポリビニルアルコールの重合度（ｎ）が２００〜１５００であり、ポリエチレングリコールの重合度（ｍ）が４〜８００である架橋型ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコールジアクリレート共重合体（化１）を０．１〜１０．０ｗｔ％添加することを特徴とする電解コンデンサの駆動用電解液。