JP4152433B2 - 創傷治癒過程の減衰 - Google Patents

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Description

発明の背景
本発明は、グリコサミノグリカン分解酵素を使用して創傷治癒過程における事象を調節するための方法について記載したものである。
成長因子は、細胞の増殖および分化のホルモン型調節を誘起する天然に存在するポリペプチドである。これらの事象の発生原因となる機序は、典型的には、細胞表面上に位置する特異的なレセプターまたはレセプター系と接触している成長因子によって開始される。レセプター/成長因子相互作用に続いて起こる一連の細胞内事象が、細胞によるマイトジェン応答および分化応答を担う。これらの機序は完全には知られていないが、チロシンキナーゼの活性化、ヌクレオチド代謝および細胞電解質レベルの変化が含まれ得る(BurgessおよびMacaig, Ann. Rev. Biochem, 58:575-606, 1989)。
殆どの細胞型に関して、分裂促進および分化の事象は正常成体動物では抑制される。これらの成長因子介在事象は、より一般的には、創傷治癒過程の間、またはガンおよび血管疾患を含む様々な疾患状態において、発育中の生物と関連している。例えば、微細血管および動脈のライニングを含む内皮細胞の正常な代謝回転速度は、数千日である。しかしながら、正常な創傷治癒の間にはこれらの内皮細胞は急速に増殖し、代謝回転速度は約5日である(FolkmanおよびShing, J. Biol. Chem. 267(16): 10931-10934, 1992)。創傷治癒の間に生じる増殖の増加は、成長因子を含む様々な血管形成分子の局所的な濃度が増加するためであるように思われる。
繊維芽細胞成長因子ファミリーは、内皮細胞、繊維芽細胞、平滑筋細胞および表皮細胞を含む様々な細胞系において増殖を刺激することが分かっている少なくとも7個のポリペプチドを含む。この群に含まれるのは、酸性繊維芽細胞成長因子(FGF-1)、塩基性繊維芽細胞成長因子(FGF-2)、int-2(FGF-3)、カポジ肉腫成長因子(FGF-4)、hst-1(FGF-5)、hst-2(FGF-6)および角化細胞成長因子;(FGF-7)(BairdおよびKlagsbrun, Ann. N.Y. Acad. Sci. 638: xiv, 1991)である。これらの分子および組織成長因子(TGFαおよびTGFβ)、血小板由来増殖因子(PDGF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン3(IL-3)および血小板因子4(PF4)を含むその他のサイトカインは、ヘパリンに対する親和性の点で共通の特徴を有している(Clark, Dermatol. Clin. 11:647-666, 1993)。特異的な細胞型応答もまた特定の因子と関係している。EGFおよびTGFαは角化細胞の増殖を刺激し、TGFβはコラーゲンおよびフィブロネクチン合成を刺激し、PDGFは血管形成および顆粒化組織形成を刺激し、FGF-7は上皮細胞増殖を刺激する(Staiano-Coico,ら, J. Exp. Med. 178:865-878, 1993)。さらに、PDGF、FGF-2および最近述べられているヘパリン結合表皮成長因子(HB-EGF)(Higashiyamaら, Science 251:936-939, 1991)も血管平滑筋細胞および血管内皮細胞の増殖および移動に関与している。
細胞の代謝状態が静止から増殖または移動状態に変化したことは、細胞周辺で適当なシグナル分子の利用性が高まったことを意味する。原理的には、これは成長因子の合成の増加または貯蔵庫からの成長因子の放出のいずれかが原因となって生じ得る。実際に、どちらの機序も観察されている。FGF-1、FGF-2、FGF-5およびFGF-7の発現は全厚皮膚損傷後にアップレギュレートされる(Wernerら, Proc. Natl. Acad. Sci. 89:6896)が、TGFβ、TGF-2およびPDGFの合成は平滑筋細胞にて血管損傷に応答して増加する。成長因子は、正常成体非創傷試料から抽出された殆どの固体組織において検出されている。これらの領域に成長因子が存在するにもかかわらず、成長因子を有している細胞は増殖状態にはない。明らかに、成長因子は細胞外で基底膜および細胞外基質に格納されており、ここではそれぞれの細胞表面レセプターと接触することができない。この態様では、成長因子は創傷修復用の緊急の供給源として作用し、血管形成が機能する(Vlodavskyら, TIBS 16:268-271, 1991)。
組織または血管の損傷時の初期事象は、細胞外隙から成長因子を機械的に追い出し、この成長因子を細胞表面レセプターに対して利用可能として、細胞の増殖および別の成長因子の細胞合成を刺激することを含み得る。あるいは、ストレス下におかれた細胞が、細胞外の成長因子をこれらの貯蔵庫から移動させる分子を分泌し得る。腫瘍細胞は、プロテオグリカナーゼ、コラゲナーゼおよびメタロプロテイナーゼを含む分解酵素を、転移と同時に分泌することが知られている(Nicolson Curr. Opinion Cell Biol. 1:1009-1019, 1989)。血管を介した腫瘍の移動を容易にすることに加え、細胞外基質成分の破壊によって成長因子が放出され、それにより新たな血管の形成が促進され、この血管形成は、成長している腫瘍塊を供給する(Folkmanら, Am J Pathol 130:393-400, 1988)。
細胞外基質(ECM)は、内皮細胞、上皮細胞、表皮細胞および筋肉細胞を含む様々な細胞型によって合成され、これらの細胞型を包囲する多成分構造体である。ECMは主にコラーゲンとヘパラン硫酸プロテオグリカンとから形成されている。また、細胞外基質は、フィブロネクチン、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンおよび更に小さなタンパク質を含有する。成長因子は、ヘパラン硫酸プロテオグリカンのグリコサミノグリカン部分と結合することによって、これらの基質において分離される。ヘパリンおよびヘパラン硫酸は、ヘキスロン酸(D-グルクロン酸またはL-イズロン酸のいずれか)およびグルコサミンから交互に形成された多糖類であり、N-アセチル化またはN-硫酸化され、残基は様々な硫酸化パターンを有する。ブタの腸、ウシの肺およびヒトのマスト細胞から抽出されたヘパリンは、高度の硫酸化を示し、二糖単位あたり最大で2.6分子の硫酸基を有し、ヘパラン硫酸よりもイズロン酸含有量が高い。反対に、ヘパラン硫酸は硫酸化の程度は低く、交互の糖位置にグルクロン酸を優先的に含有している。高イズロン酸化および高硫酸化「ヘパリン様」領域は、ヒト繊維芽細胞から得られるヘパラン硫酸のbFGF結合領域と関連している(Turnbullら, J. Biol. Chem. 267(15)10337-10341, 1992)。しかしながら、細胞外基質におけるヘパラン硫酸の組成は完全には特徴付けされていない。
細胞の増殖および移動の成長因子による刺激は、生化学的媒介物、細胞外基質および実質細胞を含む多因性相互作用過程である創傷治癒過程における事象の1つとなっている。創傷治癒過程は、一般には、炎症、増殖および再構築という3つの一時的に重複する期に分けられる。炎症時、血液に運ばれる細胞は創傷部位を浸潤し、血小板由来増殖因子、フォンビルブラント因子、トロンボスポンジン、フィブロネクチン、フィブリノーゲン、5-ヒドロキシトリプトファン、トロンボキサン-A2およびアデノシン二リン酸を含む幾つかの媒介分子を放出する(KirsnerおよびEaglstein, J. Dermatol. 151:629-640, 1993)。血小板栓および血栓が形成され、単核細胞、繊維芽細胞および角化細胞に対するマトリックスを提供する。走化性分子は、マクロファージに形質転換し、そして成長因子を分泌する単核細胞を攻撃する(NathanおよびSporn, J. Cell Biol. 113:981-986, 1991)。好中球は、細胞の基底膜通過を増強する分解酵素であるエラスターゼおよびコラゲナーゼを分泌することによって、この過程に参加し得る。
角化細胞および表皮細胞は、皮膚創傷の閉塞に関与しており、増殖期の間に創傷部位まで移動する。血管形成、すなわち化学走性誘因物質および血管形成シグナル(FolkmanおよびKlagsbrun, Science 235:442-447, 1987)に応答した新たな血管の形成、ならびに繊維増殖、すなわち繊維芽細胞の蓄積および顆粒組織の形成もまた、増殖期の間に起こる。組織の再構築は、細胞移動および組織支持の足場物質として機能する、フィブロネクチン、コラーゲンおよびプロテオグリカンを含むマトリックス成分の分泌に伴って起こる。創傷治癒の早期段階において合成されるIII型コラーゲンは、タンパク質加水分解による代謝回転の過程によって、より永続性のI型コラーゲンに置換される。
虚血は、血管系の局所的な機能障害が原因で血液供給がうまくいかず、続いて組織損傷が生じる病理状態を意味する。このような場合、血管形成の刺激によるものであろうと外科的な方法によるものであろうといずれにしても、血管再生は、損傷組織の正常な創傷治癒経過よりも先に起こらなければならない。
細胞外基質および基底膜の成分を分解する酵素の作用は、ヘパラン硫酸に捕捉された結合サイトカインの放出を含む様々な機序により、かつ基質の透過性を増加させることで、媒介分子、成長因子および走化性物質、ならびに治癒過程に含まれる細胞の移動度が高まることにより、組織修復の事象を容易にし得る。グリコサミノグリカンは、種々の真核生物の酵素および原核生物の酵素による分解に供される。ヘパラン硫酸分解活性は、血小板(Oldbergら, Biochemistry, 19:5755-5762, 1980)、腫瘍細胞(Nakajimaら, J. Biol. Chem. 259:2283-2290, 1984)および内皮細胞(Gaalら, Biochem. Biophys. Res. Comm., 161:604-614, 1989)において検出されている。これらのヘパラナーゼ酵素は、ヘキスロン酸(1->4)グルコサミン結合におけるヘパラン硫酸の炭水化物バックボーンの加水分解を触媒することによって作用する(Nakajimaら, J. Cell, Biochem., 36:157-167, 1988)。哺乳類ヘパラナーゼは、典型的には、ヘパリン-ヘパラン硫酸ファミリーの高硫酸化ヘパリン形態によって阻害される。しかしながら、分子の均一な調製物を得る方法がないため、これらの酵素を生化学的な面から正確に特徴付けすることはこれまでできなかった。
ヘパリン分解酵素はまた、Flavobacterium heparinum(LohseおよびLinhardt, J. Biol. Chem. 267:2437-24355, 1992)、Bacteroides菌株(Saylersら, Appl. Environ. Microbiol. 33:319-322, 1977; Nakamuraら, J. Clin. Microbiol. 26:1070-1071, 1988)、Flavobacterium Hp206(Yoshidaら, 10th Annual Symposium of Glycoconjugates, Jerusalem 1989)およびCytophagia種(Bohnら, Drug Res. 41(I), Nr. 4:456-460, 1991)を含む微生物においても見いだされている。コンドロイチン硫酸分解酵素は、Flavobacterium heparinum(Michaleacciら, Biochem. J. 151:123, 1975)、Bacteroides種(SaylersらJ. Bacteriol. 143:781, 1980; Linnら, J. Bacteriol. 156:859, 1983; Steffenら, J. Clin. Microbiol. 14:153, 1981)、Proteus vulgaris(Uamagataら, J. Biol. Chem. 243:1523, 1968, Suzuki, Meth. Enzymol. 28:911, 1972)、Beneckea、MicrocossusおよびVibrio種(KitamikadaおよびLee, Appl. Microbiol. 29:414, 1975)およびArthrobacter aurescens(HiyamおよびOkada, J. Biol. Chem. 250:1824-1828, 1975)を含むいくつかの微生物から単離されている。
F. heparinumは、3種類の形態のヘパリナーゼ、すなわちヘパリナーゼ1、ヘパリナーゼ2、ヘパリナーゼ3(ヘパリチナーゼ)を産生する(LohseおよびLinhardt, J. Biol. Chem. 267:24347-24355, 1992)。これら3種類の酵素はいずれも、硫酸化パターンおよび特定の切断部位における特定のヘキスロン酸残基(すなわち、イズロン酸またはグルクロン酸)によって、様々な特異度で、グルコサミン(1->4)ヘキスロン酸結合を切断する(Desaiら, Arch. Biochem. Biophys. 306:461-468, 1993)。F. heparinumはまた、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ファミリーのメンバーを分解する2種類の酵素を産生する。これら2種類の酵素は、コンドロイチンリアーゼACおよびコンドロイチンリアーゼBである。コンドロイチンリアーゼACは、多糖類バックボーンにおいてガラクトサミン(1->4)グルクロン酸結合を切断することによってコンドロイチン硫酸Aおよびコンドロイチン硫酸Cの両方を分解する。コンドロイチンリアーゼBは、多糖類バックボーンにおいてガラクトサミン(1->4)イズロン酸結合を切断することによってデルマタン硫酸(コンドロイチン硫酸B)を分解する。F. heparinum酵素の酵素機序は除去反応によるものであり、これによってこの酵素と哺乳類グリコサミノグリカン分解酵素とを区別する。さらに、F. heparinumリアーゼ酵素の中には、哺乳類酵素のようにグリコサミノグリカン分子によって阻害されるものはないように思われる。
腫瘍細胞系抽出物から部分的に精製された哺乳類ヘパラナーゼ、ならびにFlavobacterium heparinumから得られるヘパリナーゼ1およびヘパリナーゼ3は、ウシの大動脈内皮細胞によりインビトロにおいて合成された細胞外基質に予め吸着させた125I放射性標識FGF-2を放出することが分かっている(BashkinらJ. Cell. Physiol. 167:126-137, 1992)。しかしながら、未分画の低分子量ヘパリンも外因的に吸着された125I放射性標識FGF-2を同様に放出させるため、これらの報告からは、測定された放出が、ECMにおけるヘパラン硫酸の酵素分解によるものなのか、あるいは負に荷電したヘパラン硫酸からのFGF-2のイオン交換型電解質置換によるものなのかは明らかではない。同じ調査グループが、ヘパリナーゼ3で処理することによって血管平滑筋細胞から増殖促進活性が放出され、そして好中球またはリンパ腫細胞の抽出物に曝露することによって細胞外基質から増殖促進活性が放出されることを報告した。しかしながら、細菌型グリコサミノグリカン分解酵素と接触することで細胞外基質から増殖促進活性が放出されることは証明されておらず、これらの酵素がインビボにおいて組織修復や新たな血管の成長を促進することも示されていない。
Hadassah Medical Organization出願の国際出願公開第WO91/02977号には、哺乳類ヘパリナーゼの精製について報告されており、ここでは、ヘパリナーゼは血管再生を促進あるいは創傷への血液供給を増加することで創傷治癒に有用であると仮定されている。
Sasisekharanら, Proc Natl. Acad. Sci. USA 91, 1524-1528(1994)およびMassachusetts Institute of Technology出願の国際公開第WO95/13830号には、Flavobacterium heparinumから得られるヘパリナーゼIおよびIIは血管新生を阻害し、過剰な血管内部成長および腫瘍増殖の阻害を含む眼疾患の治療に有用であり得ると報告されている。
International Technology Management Associates, Ltdら出願の国際公開第WO95/13091号には、プロテオグリカナーゼまたはプロテアーゼを使用して軟骨の細胞外基質物質を分解し、修復を刺激することについて開示されている。
従って、本発明の目的は、組織修復および新たな血管の増殖を増強および制御する方法および組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、組織修復を増強し、血管形成を操作することに用いられる、高純度グリコサミノグリカン分解酵素薬学的組成物を提供することにある。
発明の要旨
グラム陰性菌Flavobacterium heparinum由来のヘパリナーゼ1、2および3ならびにコンドロイチナーゼACおよびBを含むグリコサミノグリカンを別個にまたは組み合わせて使用して、細胞増殖を操作し得る。一実施態様では、ヘパリナーゼを投与して細胞外基質のヘパラン硫酸成分を分解し、これによって、細胞外基質に格納されているヘパリン結合成長因子を隣接細胞に移動させる。グリコサミノグリカン分解酵素であるコンドロイチナーゼおよびヘパリナーゼの両方で組織を処理することによって、化学走性誘因物質、成長因子および細胞の移動度もまた高め得る。コンドロイチン硫酸を細胞表面から酵素的に除去することで、細胞表面での成長因子レセプターの利用性が効率よく高められる。反対に、細胞外基質をインタクトなまま維持しながら細胞表面からヘパラン硫酸を選択的に除去することで、成長因子に対する細胞の応答がダウンレギュレートされて、細胞増殖が阻害される。これは、ヘパリンまたはヘパラン硫酸分解活性を細胞表面に標的化することによって達成される。ヘパリン分解活性の標的化は、リガンド結合機能をヘパリナーゼタンパク質中に遺伝子的に設計するか、あるいは投与方法を通して局在化した酵素濃度を物理的に調節することによって達成され得る。
グリコサミノグリカン酵素および当該酵素の遺伝子操作された誘導体の調製方法ならびに高純度グリコサミノグリカン分解酵素の薬学的調製物の生成方法を記載する。他のタンパク質の結合特性を取り入れたヘパリン分解酵素の誘導体を生成するための方法が開示されている。内因性成長因子に対する細胞の応答を阻害するこれらの分子を使用して、細胞表面にヘパリン分解活性を標的化し得る。
実施例から、グリコサミノグリカナーゼを使用することでECMおよびインタクトな細胞および組織から増殖促進活性が放出されること、グリコサミノグリカナーゼ、特にヘパリナーゼ3で処理することによってインビトロでの細胞増殖が増強されること、グリコサミノグリカナーゼで処理された細胞によって放出されたヘパラン硫酸フラグメントの増殖促進活性および動物モデルにおけるインビボでの創傷治癒を刺激する上でのヘパリナーゼ3の有用性が証明される。
【図面の簡単な説明】
図1a、1bおよび1cは、細胞外基質(ECM-上半分)および細胞表面(下半分)におけるグリコサミノグリカンの機能を示す概略図である。図1aは、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)のヘパラン硫酸成分(実曲線)が、細胞外基質および細胞表面の両方でヘパリン結合成長因子(HBGF)と結合することを示している。ヘパラン硫酸と結合していない成長因子は、その細胞表面レセプターと結合することができない。ヘパラン硫酸またはヘパラン硫酸のフラグメントは、成長因子に付着し、レセプターに対する結合を可能にする立体配座の変化を引き起こす。コンドロイチン硫酸(斜線入り曲線)プロテオグリカン(CSPG)も細胞外基質および細胞表面に位置している。細胞表面において、コンドロイチン硫酸分子はヘパリン結合成長因子レセプターの接近性を立体的に妨害し得る。図1bは、コンドロイチン硫酸分解酵素で処理することで、細胞表面レセプターへの接近性がより高まり、化学走性誘因物質、成長因子、細胞などの分子の細胞外基質を介した移動度が増すことを示している。図1cは、ヘパリンまたはヘパラン硫酸分解酵素で処理することで、ヘパラン硫酸フラグメントおよびヘパリン結合成長因子が細胞外基質から放出され、これによってヘパラン硫酸フラグメントおよびヘパリン結合成長因子の隣接細胞表面のレセプターに対する利用性が高まり、かつ化学走性誘因物質、成長因子、細胞などの分子の細胞外基質を介した移動度が増すことを示している。
図2は、存在する酵素の量を測定するための、ヘパリナーゼの半固体状ゲルへの脱着(時間(分)の経過に伴うアガロースへの浸透(mm))を示すグラフである。
図3は、未処理、ヘパリナーゼ1、ヘパリナーゼ2、ヘパリナーゼ3、コンドロイチナーゼACおよびコンドロイチナーゼBについて、酵素処理した細胞外基質から放出される相対的な増殖促進活性(×コントロール)を示すグラフである。結果を、未処理基質上清に曝露されたBalb/c 3T3繊維芽細胞によるチミジン取り込み量に対する、酵素処理基質上清に曝露されたBalb/c 3T3繊維芽細胞によるチミジン取り込み量の比として表す。
図4は、未処理、ヘパリナーゼ1、ヘパリナーゼ2およびヘパリナーゼ3について、酵素処理したウシ角膜から放出される相対的な増殖促進活性(×コントロール)を示すグラフである。結果を、未処理角膜上清に曝露されたBalb/c 3T3繊維芽細胞によるチミジン取り込み量に対する、酵素処理角膜上清に曝露されたBalb/c 3T3繊維芽細胞によるチミジン取り込み量の比として表す。
図5は、未処理、ヘパリナーゼ1、ヘパリナーゼ2、ヘパリナーゼ3、コンドロイチナーゼACおよびコンドロイチナーゼBについて、細胞外基質からの35Sの放出(cpm)を示すグラフである。
図6は、未処理、ヘパリナーゼ1、ヘパリナーゼ2およびコンドロイチナーゼACについて、酵素処理したウシ平滑筋細胞によるFGF-2の相対的な吸収(コントロールの%)を示すグラフである。
図7は、細胞表面または細胞外基質のいずれか一方または両方の酵素処理に対するBalb/c 3T3繊維芽細胞の相対的な増殖応答を示すグラフである。増殖は、3H-チミジン取り込み量によって判定し、コントロール(未処理基質から得られる上清に曝露された未処理細胞)の取り込み量に対する処理条件下で観察された取り込み量の比として表す。
図8は、ヘパリナーゼ1、2、3およびコンドロイチナーゼACについて、酵素処理した細胞外基質から放出される可溶物質に対する静止balb/C 3T3繊維芽細胞の増殖応答を示す(ハッチング入りの棒)グラフである。酵素処理した基質上清に曝露される前にヘパリナーゼ1、2、3、またはコンドロイチナーゼACで処理された細胞の増殖応答もまた示す(塗りつぶし棒)。これらの結果を、酵素処理した基質の上清に曝露されたbalb/C 3T3繊維芽細胞に取り込まれた3H-チミジンの1分あたりのカウント数として表す。ネガティブコントロールの「未処理細胞」は、未処理基質から得られる上清に曝露された細胞の増殖応答を表している。
図9は、ヘパリナーゼ3について酵素処理した細胞外基質から放出される可溶物質に対する、ヘパリナーゼ3で予め処理されたものと未処理の静止balb/C 3T3繊維芽細胞の増殖応答を示すグラフである。細胞外基質から自然に放出される物質に対する、ヘパリナーゼ3で予め処理されたものと未処理の静止balb/C 3T3繊維芽細胞の増殖応答を示す。これらの結果を、酵素処理した基質の上清に曝露されたbalb/C 3T3繊維芽細胞に取り込まれた3H-チミジンの1分あたりのカウント数として表す。未処理細胞は、未処理基質から得られる上清に曝露された細胞である。細胞+hep3は、未処理基質から得られる上清に曝露する前にヘパリナーゼ3で予め処理された細胞である。ECM+hep3は、ヘパリナーゼ3処理基質から得られる上清に曝露された細胞である。ECM+heps細胞+hep3は、ヘパリナーゼ3処理基質から得られる上清に曝露されたヘパリナーゼ3処理細胞である。
図10は、ヘパリナーゼ3の濃度が0.1、0.01、1.0IU/mlの3種類の場合について、酵素処理したウシ角膜から放出される可溶物質に対する静止balb/C 3T3繊維芽細胞の増殖応答を示すグラフである。ネガティブコントロール値「未処理細胞」は、未処理角膜から得られる上清に曝露された細胞の増殖応答を表している。
図11は、ヘパリナーゼ1、2、または3に曝露されたウシ内皮細胞(ハッチング入り棒)、ウシ平滑筋細胞(塗りつぶし棒)、細胞外基質(灰色の棒)からのbFGFの放出を示すグラフである。
図12は、ヘパリナーゼ1、ヘパリナーゼ2およびヘパリナーゼ3で細胞を処理することによる平滑筋細胞増殖の阻害を示すグラフである。結果を、未処理コントロール細胞と比較した酵素処理後の細胞増殖率として表す。未処理細胞の増殖レベルを100%とする。斜線の入った棒は酵素0.1IU/mlで処理したものを示し、塗りつぶされた棒は酵素0.5IU/mlで処理したものを示す。
図13Aは、ヘパリナーゼ1、2、または3による硫酸標識ECMの分解を示すグラフである。代謝的に硫酸標識したECMでコーティングした4ウェル組織培養プレートを0.1U/mlのヘパリナーゼ1(○)、ヘパリナーゼ2(△)、またはヘパリナーゼ3(□)と共に37℃で18時間インキュベートした。インキュベーション培地に放出された硫酸標識物質をSepharose6B上でのゲル濾過によって分析した。
図13Bは、ECM結合マイトジェン活性の放出を示すグラフである。増殖停止3T3繊維芽細胞における3H-チミジン取り込みの刺激について、プラスチック(斜線)またはECM(網状線)上のインキュベーション培地のアリコートを試験した。
図13Cは、ヘパリナーゼ1、2および3による硫酸標識ECMの分解を示すグラフである。硫酸標識ECMを0.1U/mlのヘパリナーゼ1、2または3と共に37℃で18時間インキュベートした。インキュベーション培地に放出された硫酸標識物質の総量(斜線)を計数した。残りのECMをトリプシン(5μg/ml)で37℃で1時間消化し、可溶化した放射活性(網状線)をβシンチレーションカウンターで計数した。
図14A、14B、14Cおよび14Dは、異なる表面上でヘパリナーゼ1、2、または3に曝露された細胞およびECMから放出されたヘパラン硫酸フラグメントによるF32リンパ様細胞増殖の刺激を示すグラフである。通常(プラスチック)(図14B)4ウェルプレートおよびECMコート(図14A)4ウェルプレートならびに血管内皮細胞(EC)(図14C)および平滑筋細胞(SMC)(図14D)の密集培地を0.1U/mlのヘパリナーゼ1(□)、ヘパリナーゼ2(◇)またはヘパリナーゼ3(○)と共に37℃で1時間インキュベートした。次に、5ng/mlのbFGFの存在下で96ウェルプレートに接種したF32細胞に、インキュベーション培地のアリコート(1〜40μl)を添加した。接種48時間後に3H-チミジン(1μCi/ウェル)を添加し、さらに6時間後に細胞を収集して3H-チミジン取り込み量を測定した。各データ点は6つの培養ウェルの平均±S.D.を表している。
図15Aおよび15Bは、ヘパリナーゼ3によるF32リンパ様細胞増殖の刺激を示すグラフである。図15Aは、0.1U/mlの天然(白)または熱失活(10分、95℃)(斜線)ヘパリナーゼ3の非存在下および存在下での、5ng/mlのbFGFとの96ウェルプレートにおけるF32リンパ様細胞のインキュベーションを示すグラフである。ヘパリナーゼ3酵素(0.1U/ml)をまたDEAEセルロース(0.5ml)にかけ、ロード(白)物質および素通り(斜線)物質の両方をF32リンパ様細胞に添加した。図15Bは、1μg/mlの天然(白)または熱失活(10分、95℃)(斜線)ヘパリンの非存在下および存在下での、5ng/mlのbFGFとの96ウェルプレートにおけるF-32リンパ様細胞のインキュベーションを示すグラフである。ヘパリンをまたDEAEセルロース(0.5ml)にかけ、ロード(白)物質および素通り(斜線)物質の両方をF32リンパ様細胞に添加した。接種48時間後に各ウェルに3H-チミジン(1μCi/ウェル)を添加し、さらに6時間後に細胞を収集して3H-チミジン取り込み量を測定した。各データ点は6枚の培養ウェルの平均±S.D.を表している。
図16は、ヘパリナーゼの創傷治癒を刺激する能力についてのインビボ試験を行った後に6群のラットから得た、創傷部位を含む皮膚の強度(引張り、g/mm2)を、ビヒクル、ヘパリナーゼ(1日)および1日、3日、7日目における機能障害された(熱失活された)ヘパリナーゼの作用と比較して示すグラフである。
図17は、ヘパリナーゼ3を0.02、0.2および2.0 IUの投与量で用いて創傷治癒を刺激するヘパリナーゼのインビボ試験を行った後に6群のラットから得た、創傷部位を含む皮膚の強度(引張り、g/mm2)を示すグラフである。
発明の詳細な説明
Flavobacterium heparinum遺伝子に由来する高純度グリコサミノグリカン分解酵素を使用して創傷治癒過程に関与する事象を調節するための方法を開示する。ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸およびデルマタン硫酸を含むグリコサミノグリカンは、これらの成分がサイトカインレセプターとして作用する細胞表面上と、これらの成分が細胞外基質の構造を形成し、かつ成長因子の貯蔵庫として機能する細胞外隙内とに存在するプロテオグリカンの硫酸化多糖類成分である。F. heparinumから得られるグリコサミノグリカン分解酵素であるヘパリナーゼ1(EC4.2.2.7)、ヘパリナーゼ2、ヘパリナーゼ3(EC4.2.2.8)、コンドロイチナーゼAC(EC4.2.2.5)およびコンドロイチナーゼBは、i)細胞外基質からヘパリン結合成長因子および分子を放出させ、それにより、隣接細胞に対して増殖および移動の刺激に関するこれらの因子および分子の利用性を高め、ii)細胞外基質の成分を分解し、それによりサイトカイン、化学走性誘因物質および細胞が移動しやすくし、iii)細胞表面からコンドロイチン硫酸を除去し、それにより細胞表面レセプターへの接近性を高め、iv)成長因子レセプター複合体のヘパラン硫酸成分を除去して成長因子に対する細胞の増殖応答を阻害することによって、細胞の増殖および移動に関与する相互作用を調節する。
ヘパリン結合成長因子-レセプター相互作用には、第3の成分であるヘパラン硫酸の存在が必要とされる。このヘパラン硫酸は、細胞表面に存在しているか、細胞に添加され得るか、あるいは細胞外基質からヘパラン硫酸フラグメントとして溶菌的に放出されるものである。ヘパリンまたはヘパラン硫酸分解酵素を0.001〜5IU/mlの範囲で添加することで、細胞外基質からヘパリン結合成長因子およびヘパラン硫酸フラグメントが同時に放出され、隣接細胞に対してこれらの成分の利用性が高まることにより細胞増殖が促進される。
反対に、細胞外基質をインタクトなままに維持しながら細胞表面からヘパラン硫酸を選択的に除去することで、成長因子に対する細胞の応答がダウンレギュレートされて、細胞増殖は阻害される。これは、ヘパリンまたはヘパラン硫酸分解活性を細胞表面に標的化することによって達成される。ヘパリン分解活性の標的化は、リガンド結合機能をヘパリナーゼタンパク質中に遺伝子的に設計するか、あるいは投与方法を通して局在化された酵素濃度を物理的に調節することによって達成され得る。例えば、浸透性ダブルバルーンカテーテルによって、損傷血管中の露出された血管平滑筋細胞にヘパリナーゼを優先的に送達させ得る。
グリコサミノグリカン分解酵素の調製
グリコサミノグリカンリアーゼ酵素は、細菌細胞または哺乳類細胞から単離することによって調製され得る。これらの細胞は、酵素を天然に産生するかあるいは酵素を産生するよう遺伝子操作されている。
天然産生酵素の単離
グリコサミノグリカンリアーゼ酵素は、Flavobacterium heparinumの培養物から以下のようにして精製され得る。F. heparinumを、15Lのコンピューター制御された発酵槽において、Galliherら、Appl.Environ.Microbiol. 41(2):360-365, 1981に記載の規定の栄養培地の変型培地中で培養する。ヘパリンリアーゼを生成するために設計された発酵のために、ヘパリナーゼ合成の誘導物質として、半精製ヘパリン(Celsus Laboratories)を、1.0g/Lの濃度で培地中に含有させる。コンドロイチンリアーゼを生成するために設計された発酵のために、コンドロイチナーゼACおよびコンドロイチナーゼB合成の誘導物質として、コンドロイチン硫酸A(Sigma)を、1.0g/Lの濃度で培地中に含有させる。両タイプの発酵のために細胞を遠心分離により収集し、そして所望の酵素を、Zimmermann、ら(1992)の米国特許第5,169,772号に記載の浸透ショック法(osmotic shock procedure)の変法により細胞周辺腔から放出させる。
粗オスモレート(osmolate)からのタンパク質を、伝導率1〜7μmhoで陽イオン交換樹脂(CBX, J.T. Baker)に吸着させる。抽出物からの非結合タンパク質を破棄し、クロマトグラフィーのカラム(5.0cm i.d.×100cm)に樹脂を充填する。結合タンパク質は、直線流速3.75cm・分-1にて、0.01Mリン酸、0.01Mリン酸/0.1M塩化ナトリウム、0.01Mリン酸/0.25M塩化ナトリウムおよび0.01Mリン酸/1.0M塩化ナトリウム(全てpH7.0±0.1)の段階グラジエントで溶出する。ヘパリナーゼ2は0.1M NaCl画分で溶出し、ヘパリナーゼ1および3は0.25M画分で溶出する。あるいは、0.1M塩化ナトリウム段階をなくし、0.25M塩化ナトリウムで3種類のヘパリナーゼを同時溶出させる。セルファイン硫酸(cellufine sulfate)(5.0cm i.d.×30cm, Amicon)を含有するカラムにヘパリナーゼ画分を直接仕込み、直線流速2.50cm・分-1にて、0.01Mリン酸、0.01Mリン酸/0.2M塩化ナトリウム、0.01Mリン酸/0.4M塩化ナトリウムおよび0.01Mリン酸/1.0M塩化ナトリウム(全てpH7.0±0.1)の段階グラジエントで溶出させる。ヘパリナーゼ2および3は0.2M塩化ナトリウム画分で溶出し、ヘパリナーゼ1は0.4M画分で溶出する。セルファイン硫酸カラムの0.2M塩化ナトリウム画分を0.01Mリン酸ナトリウムで希釈し、導電率を5μmhos未満にする。この物質をヒドロキシアパタイト(hydroxylapatite)カラム(2.6cm i.d.×20cm)に仕込み、直線流速1.0cm・分-1にて、0.01Mリン酸、0.01Mリン酸/0.35M塩化ナトリウム、0.01Mリン酸/0.45M塩化ナトリウム、0.01Mリン酸/0.65M塩化ナトリウムおよび0.01Mリン酸/1.0M塩化ナトリウム(全てpH7.0±0.1)の段階グラジエントで結合タンパク質を溶出させることによって、この溶液をさらに精製する。ヘパリナーゼ3は0.45M塩化ナトリウム画分の単一タンパク質ピークに溶出し、ヘパリナーゼ3は0.65M塩化ナトリウム画分の単一タンパク質ピークに溶出する。セルファイン硫酸カラムから得られて伝導率が5μmhos未満になるまで希釈した物質をヒドロキシアパタイトカラム(2.6cm i.d.×20cm)に仕込み、直線流速1.0cm・分-1にて、リン酸(0.01〜0.25M)および塩化ナトリウム(0.0〜0.5M)の直線グラジエントで結合タンパク質を溶出させることによって、ヘパリナーゼ1をさらに精製する。ヘパリナーゼ1はグラジエントのほぼ中間の単一タンパク質ピークで溶出する。
この方法によって得られるヘパリナーゼ酵素は、逆相HPLC分析(BioCad, POROS II)によって推定した純度が98.5%を上回っている。ヘパリナーゼ酵素の精製結果を表1に示す。
Figure 0004152433
コンドロイチン硫酸Aで誘導したF.heparinum発酵物から得たオスモレートを、遠心分離に供し、細胞および細胞デブリを除去し、そして上清を、10cm・分-1の直線流速で、陽イオン交換カラム(5.0cm×30cm, SepharoseTM S Big Beads, Pharmacia)に載せる。結合したタンパク質を、5.1cm・分-1の直線流速にて、0.01Mリン酸、0.01Mリン酸/0.25M塩化ナトリウムおよび0.01Mリン酸/1.0M塩化ナトリウム(全てpH7.0±0.1)の段階グラジエントで溶出させる。コンドロイチナーゼ活性は、0.25M塩化ナトリウム画分中に溶出する。このフラクションを、コンドロイチナーゼ含有画分を0.01Mリン酸ナトリウムで2倍に希釈し、そしてこの物質をセルファイン硫酸を含有するカラム(2.6cm i.d.×100cm, Amicon)にかけ、そして1.88cm・分-1の直線流速にて、塩化ナトリウムの直線グラジエント(0.0〜0.4M)で溶出させることによりさらに精製する。コンドロイチナーゼACは、主に、0.23〜0.26M塩化ナトリウムで溶出し、一方コンドロイチナーゼBは、0.27〜0.3M塩化ナトリウムで溶出する。各画分を、0.01Mリン酸ナトリウムで2倍希釈し、そしてヒドロキシアパタイトカラム(2.6cm i.d.×30cm)にかける。結合したタンパク質を、全て0.025Mリン酸ナトリウム(pH7.0±0.1)中の0.25M塩化ナトリウムの段階グラジエント、続いて0.25〜1.0M塩化ナトリウムの直線グラジエントで溶出させる。コンドロイチナーゼBは、0.25M塩化ナトリウム段階で溶出し、コンドロイチナーゼACは、0.85〜0.95M塩化ナトリウムで溶出する。コンドロイチナーゼB画分を、0.01Mリン酸ナトリウム中に2倍希釈し、そして強陽イオン交換カラム(CBX-S, J.T.Baker, 1.6cm i.d.×10cm)にかける。結合した物質を、1.0cm・分-1の流速にて、0.025Mリン酸ナトリウム(pH7.0±0.1)中の0.125〜0.325M塩化ナトリウムの直線グラジエントで溶出させる。コンドロイチナーゼBは、0.175〜0.225M塩化ナトリウムのタンパク質ピークに溶出し、そして分子量20,000ダルトンの微量混入タンパク質を含有する。このタンパク質を、SuperdexTM200カラム(1.0cm×30cm, Pharmacia)にコンドロイチナーゼB試料をロードし、そして1.25cm・分-1の直線流速にて0.05Mリン酸ナトリウム(pH7.2)で溶出し、そしてタンパク質含有画分を回収することにより、ゲル濾過クロマトグラフィーにより除去する。ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーから回収したコンドロイチナーゼAC画分を、0.01Mリン酸ナトリウム中に3倍希釈し、そして強陽イオン交換カラム(CBX-S, J.T.Baker, 1.6cm i.d.×10cm)にかける。結合した物質を、1.0cm・分-1の流速にて、0.025Mリン酸ナトリウム(pH7.0±0.1)中の0.125〜0.325M塩化ナトリウムの直接グラジエントで溶出させる。コンドロイチナーゼACは、0.175〜0.225M塩化ナトリウムの単一のタンパク質ピークに溶出する。コンドロイチナーゼ酵素についての精製結果を表2に示す。
Figure 0004152433
組換え酵素の単離
グリコサミノグリカン分解酵素も、Sasisekharanら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:8660-8664, 1993に記載のヘパリナーゼ1発現系;Suらによって1994年6月10日に出願された米国特許出願第08/258,639号「Nucleic Acid Sequences and Expression Systems for Heparinase 2 and Heparinase 3 Derived From Flavobacterium heparinum」に開示のヘパリナーゼ2および3発現系;またはBennettらによって1994年7月8日に出願された米国特許出願第08/272,247号「Chondroitin Lyase Enzymes」に開示のコンドロイチンACおよびB発現系のような組換え発現系から単離され得るこれらの特許出願の教示内容は本明細書中に参考として援用される。これらの発現系において、F. heparinum遺伝子を単離して、プラスミド中に誘導プロモーターの下流にクローニングする。このプラスミドをE. coliに導入し、温度シフトおよび培地へのIPTG添加のような適した誘導方法によって所望の酵素の発現を導く。
本明細書に記載の方法を改変することによって、これらの酵素は、精製された形態で回収され得る。細胞破壊は、均質化、音波粉砕、または酵素処理によって達成され、細胞壁を破壊して細胞質成分を放出させる。酵素合成によって凝集が生じた場合には、凝集塊を変性剤、すなわち3〜6MグアニジンHClまたは4〜8M尿素に溶解し、透析または希釈によって変性剤を除去することでタンパク質を再生させ得る。再生された酵素は、上記の液体クロマトグラフ法を使用してさらに精製され得る。
融合タンパク質の構成
特異的結合特性でタンパク質と連結したグリコサミノグリカン分解酵素を取り込んだ融合タンパク質は、組換え分子生物学技術によって生成され得る。適当な結合タンパク質を選択することで、グリコサミノグリカン分解活性はインビボで特定の部位に標的化され得る。例えば、表皮成長因子は、Pickeringら, J Clin Invest, 91:742-729, 1993に記載されているように平滑筋細胞の表面にて優先的に発現する細胞レセプターと結合する。ヘパリナーゼタンパク質と連結するこの部分を含有している融合タンパク質は、ヘパリンまたはヘパラン硫酸分解活性を平滑筋細胞の表面に供給し、それにより、利用可能なサイトカインに対するこれらの応答を減少させる。この種の融合タンパク質は、アテローム性動脈硬化症の血管状態および経皮経管腔(transluminal)環状血管形成術後の血管の再閉塞のような、平滑筋細胞の過剰成長によって生じる疾病状態を克服する上で価値のあるものである。
遺伝子操作によって生成されたヘパリナーゼ融合タンパク質は、ヘパリナーゼおよびこれに融合されるタンパク質の結合特性および触媒特性を維持している。例えば、ヘパリナーゼ1の遺伝子をSasisekharanら, Proc. Natl. Acad. Sci. 90:3660-3664, 1993によって記載されているようにF. heparinumから単離し、Eco R1制限部位をポリメラーゼ連鎖反応によってグルタミン-21残基をコードするコドンの5’側に挿入した。制限エンドヌクレアーゼEco R1およびBam H1での消化によってヘパリナーゼ1遺伝子を含有しているフラグメントを調製し、Eco R1/Bam H1切断pMALc2プラスミド(New England Biolabs)に連結した。このようにして得られたプラスミドは、ヘパリナーゼ1遺伝子の5’側に融合したマルトース結合タンパク質(MalB)を取り込んでいる82,000〜85,000タンパク質をコードするハイブリッド遺伝子を含有していた。このプラスミドをCohenら, Proc. Natl. Acad. Sci. 69:2110-211に記載の塩化カルシウム媒介法を使用して、Esherichia coli HB101細胞に挿入した。これらの細胞は、lacプロモーターの制御下でヘパリナーゼ活性を呈し、増殖培地に誘導剤IPTGを0.1mM添加することによって融合タンパク質を合成させる。
HB101(pMALc2-HEP1Q21)細胞を、37℃において0.1mMのIPTGを含有している500mlのM9培地中1.0g/L乾燥細胞重量の細胞密度に増殖させ、10,000g×10分の遠心分離によって濃縮した。細胞ペレットを0.025Mトリス(pH7.7)10mlに懸濁させ、Heat Systems Model XL2020を使用して、4.5分、出力レベル3で、30秒オンにして30秒オフにするサイクルでの音波粉砕によって細胞を破壊した。細胞デブリを10,000g×10分の遠心分離によって取り除き、上清をアミロース親和性樹脂カラム(1.0 i.d.×2cm, New England Biolabs)にかけた。0.01Mマルトースを含有している0.025Mトリス(pH7.5)の段階グラジエントによって結合タンパク質を溶出させた。融合タンパク質は、ヘパリナーゼ比活性23.77IU/mgを示すタンパク質ピークで溶出した。
ヘパリナーゼ-マルトース結合融合タンパク質もまた、標準的なタンパク質分離技術によって、ヘパリナーゼ特性に基づいて精製され得る。硫酸アンモニウム沈澱によって細胞音波粉砕物を分画した。1.7M硫酸アンモニウムでの沈澱工程で非特異タンパク質を除去し、硫酸アンモニウム濃度を3.2Mまで高めることによって上清を沈澱させた。沈澱した物質は融合タンパク質を含有しており、これを0.025Mリン酸ナトリウム(pH6.5)に再懸濁させた。この物質を弱陽イオン交換カラム(1.6 i.d.×10cm, CBX, J.T. Baker)にかけ、0.0M塩酸ナトリウム、0.01M塩酸ナトリウム、0.25M塩酸ナトリウムおよび1.0M塩酸ナトリウム(いずれも0.025Mリン酸ナトリウム中)の段階グラジエントによって溶出させた。融合タンパク質は0.25M塩化ナトリウム溶出画分に溶出し、ヘパリナーゼ比活性29.95 IU/mlを示した。これら2つの精製手順から、所望の結合特性を有するタンパク質とヘパリナーゼタンパク質のN末端とを遺伝子的に結合させることによって機能的ヘパリナーゼ融合タンパク質を生成し得、そしてこのようにして得られる融合タンパク質はヘパリナーゼとこれに融合されたタンパク質との両方の機能を維持していることが分かる。ECM分子のようなレセプターと特異的に結合する他の標的分子の例として、フィブロネクチン、ラミニン、テネイシン、トロンボスポンジン、コラーゲンが挙げられる。
過去20年間、分子レベルでの細胞外基質(ECM)における細胞接着および移動についての基礎知識は急速に拡大している。この調査領域で当初なされた努力は、接着促進ECMタンパク質フィブロネクチン(FN)に集中していた。FM細胞結合ドメインの配列分析およびペプチドマッピングによって、テトラペプチドArg-Gly-Asp-Ser(RGDS)において細胞結合活性を維持している最小配列が得られた。溶液中の合成RGDS含有ペプチドはフィブロネクチン被覆基質上に伸展している繊維芽細胞を競合阻害し得るということを証明することによって、RGDS配列の細胞表面のフィブロネクチンレセプターに対する生物学的相互作用が明らかにされた。フィブロネクチンのRGD細胞接着認識部位を同定した後、関連しているシグナルについて他の細胞接着性タンパク質の配列を試験した。RGDの機能配列を有していることが知られているその他のタンパク質としては、血小板接着性タンパク質フィブリノーゲンおよびフォンビルブラント因子、オステオポンチンおよびラミニンが挙げられる。これらの所見から、RGDは偏在性細胞接着シグナルであることが示される。フィブロネクチンを親和性リガンドとして使用することで、160kDのα-サブユニットと140kDのβ-サブユニットとを有するヘテロ二量体であるレセプターが得られた。同様のアフィニティクロマトグラフィーによる実験では、ビトロネクチンに対して特異的な異なるヘテロ二量体RGD特異的レセプターならびにフィブリノーゲンおよびフィブロネクチンに対する親和性を有する血小板レセプターとが得られている。これらのRGDレセプターは、インテグリンとして知られており、α-サブユニットが140〜160KDの範囲にあり、β-サブユニットが90〜140KDの範囲にある、RGD特異的レセプターのヘテロ二量体構造の特徴を有している。インテグリンは、その特徴として、α-サブユニットとβ-サブユニットとからなる膜を貫通するヘテロ二量体タンパク質複合体である。一般に、β1およびβ3サブユニットを含有しているインテグリン複合体は細胞外基質に対する細胞接着に関与しており、β2インテグリンは細胞間接着に関与している。
その他の結合タンパク質は、特異的な細胞マーカーを認識する抗体または抗体フラグメント、ホルモンまたは細胞表面レセプターによって結合される他の分子などである。特定の細胞型によって結合されるホルモンの例としてエストロゲンが挙げられる。エストロゲンは、特定の型のガン細胞によってより高レベルで結合される。もう1つの例はメラニンであり、これもまた、特定のガン細胞中に高濃度で存在している。多くの特定の細胞表面のマーカーに対する抗体が知られている。
インビボにおけるタンパク質の保護
インビボでの半減期を延ばすための方法は公知であって、特に酵素については日常的に使われている。適切な方法の例として、ポリエチレングリコール部分のタンパク質への付着の使用が挙げられ、これは細網内皮系による摂取を阻害する。「ペグリエート化(peglyated)」タンパク質の調製および特徴付けについては、Luら, Pept. Res. 6(3), 140-146, 1993、Delgadoら, Critical Rev. Ther. Drug Carrier Syst. 9(3-4), 249-304, 1992に記載されており、これらの教示は本明細書に引用される。
薬学的組成物の調製
この酵素は、局部的(topically)、局所的(locally)および全身に投与し得る。調節度を高めるためには局部投与または局所投与が好ましい。これらの酵素を単独または組み合わせて適当な薬学的キャリアと混合した後、例えば局部適用の場合には部位への直接適用により、局所投与の場合には注射またはカテーテルにより、当業者間で公知の方法を使用して、処置細胞に所望の効果を生み出す有効量で投与する。
上述したように標的の酵素を調製することによって、あるいはカテーテルやポリマー送達系などの標的化ビヒクルを使用することによって標的化および有効濃度用量を達成し、酵素の制御された部位特異的送達を達成し得る。
ヘパリナーゼゲルの調製
グリコサミノグリカン分解酵素を種々の一般的なゲルやクリーム、または軟膏と混合して、皮膚創傷の治療のための塗布を容易にし得る。これらのゲルまたは軟膏を、単独あるいは経皮パッチまたは包帯中で投与し、処置される細胞に対する有効量の酵素の浸透を容易にし得る。
徐放性マトリックスまたは注入による酵素の投与
酵素はまた、標準的な方法を使用して、例えば生理食塩水または緩衝液などの注入投与用キャリア中に処方するか、またはポリマー性マトリックスに封入し得る。徐放性処方物における酵素の封入(encapsulation)は周知である。物質としては、リポソーム、リポスフェア(liposphere)、生分解性ポリマー性マトリックスおよび小胞(vesicle)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの封入体は、典型的には直径60nmから100ミクロン、好ましくは10ミクロン未満、さらに好ましくは直径1ミクロン以下の微粒子である。
プロテオソームは、Meningococcal菌の外膜タンパク質から調製され、LowellらScience, 240:800(1988)によって疎水性アンカーを含むタンパク質を結合すると報告されている。プロテオソームタンパク質は、貫膜タンパク質およびポーリンとしての役割を反映して、極めて疎水性が高い。単離した場合、これらのタンパク質の疎水性タンパク質間相互作用によって、単離に用いたデタージェントの強度に応じて自然に多分子の60〜1000nmの膜様小胞または膜小胞フラグメントが形成される。酵素はまた、Millerら, J. Exp. Med. 176:1739-1744(1992)(プロテオソームに関して上述したように本明細書中に援用される)において記載されるように、プロテオリポソーム内に封入し得る。あるいは、NovasomeTM脂質小胞(Micro Vescular Systems, Inc., Nashua, NH)などの脂質小胞内に酵素を封入し得る。別のキャリアが、Nova PharmaceuticalsによってPCT US90/06590に記載されており、その教示は本明細書中で援用する。このキャリアはリポスフェアと呼ばれ、堅いコアおよびリン脂質からなる外殻層とを有する。
キャリアはまた、ポリマー性持続性放出系であってもよい。酵素の徐放性放出を行うには生分解性の合成ポリマーが特に有用である。マイクロカプセル化される薬剤の注入にマイクロカプセル化を応用して制御放出が行われている。多数の要因がマイクロカプセル化用の特定のポリマーの選択に関係する。ポリマー合成およびマイクロカプセル化プロセスの再現性、マイクロカプセル化材料およびプロセスのコスト、毒性プロファイル、種々の放出カイネティック要件およびポリマーおよび抗原の物理化学的適合性は、いずれも考慮しなければならない要因である。有用なポリマーの例としては、特に生分解性であるポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオルトエステル(polyorthoester)およびポリアミド(polyamide)が挙げられる。
薬剤用のキャリアとして頻繁に選択されるのは、ポリ(d,l-ラクチド-co-グリコリド)poly(PLGA)である。これは、徐放性縫合糸やボーンプレート、その他の一時的な補綴物における医療用途には長い歴史のある生分解性のポリエステルであり、これらの用途では毒性は全く認められていない。ペプチドおよび抗原を含有する多種多様な薬剤をPLGAマイクロカプセル中に処方する。PLGAマイクロカプセル化プロセスでは、油中水滴型エマルジョンの相分離を利用する。目的の化合物を水溶液として調製し、塩化メチレンおよび酢酸エチルなどの適切な有機溶媒にPLGAを溶解する。これら2種類の互いに混和しない溶液を高速攪拌によって共乳化する。次に、ポリマーに対する溶媒を添加せず、水滴の周囲のポリマーを沈澱させて胚性(embryonic)マイクロカプセルを形成する。このマイクロカプセルを回収し、試薬群(ポリビニルアルコール(PVA)、ゼラチン、アルギン酸塩、ポリビニルピロリドン(PVP)、メチルセルロース)のうちの1つを用いて安定化させ、減圧下で乾燥するか溶媒抽出によって溶媒を除去する。その他の封入手段として、噴霧乾燥(spray dryig)、共沈澱、溶媒抽出が挙げられる。
酵素をまた、フィルムまたはインプラントとして適用し、例えば成長を阻害しようとする組織をコートすることもできる。放出される試薬を取り込んでいるゲルまたはフィルムとして投与される徐放性放出に使用される物質の例として、PluronicsTM(BASF)、ポリエチレンオキシドとポリプロピレングリコールのコポリマーが挙げられる。
投与手段
上述したように局部的に、あるいは注入によって酵素を投与し得る。典型的には、注入はシリンジまたはカテーテルのいずれかを使用して実施される。カテーテルの利点は、手術手順の後に頻繁に見られる細胞の異常な増殖を阻害することによって、再狭窄を阻害することを目的とした血管形成などの手順時に、血管内などの表面に物質を適用し得ることである。また、創傷の治癒が増強されるよう、手術と同時に酵素を投与し得る。さらに、手術中に酵素を投与して手術による創傷の治癒を加速し得る。これは、矯正手順の最後に創傷部位に直接塗布される生体適合性のゲルや軟膏に酵素を処方することによって達成し得る。
グリコサミノグリカン分解酵素を皮内投与して、虚血領域における新たな血管の形成の加速を誘発し得る。機構的には、これは、ヘパラン硫酸プロテオグリカンによって隔離されている細胞外の成長因子の貯蔵庫からこれらの成長因子を移動させ、疾患組織領域を通る化学走性誘因物質およびサイトカインの移動度を高めることによって達成される。
以下の非限定的な実施例を参照することによって、本発明をさらに理解することができよう。
実施例1: 局部酵素組成物の調製
0.01Mリン酸ナトリウム、0.4M塩酸ナトリウムおよび本明細書中で説明したように精製した200IUのヘパリナーゼ1の溶液0.5mlを、1%カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose)(Sigma)、40%USPグリセロールおよびNanaopureTM水とからなるゲル9.5mlまたはカルボマーを主成分とするゲル(carbomerTM950, Keystone Laboratories)9.5mlのいずれかと混合した。
Yangら, J. Biol Chem. 260(3):1849-1857, 1985に記載されている分光測光法を使用して、ヘパリナーゼ活性について各混合物の一部を分析した。ZimmermannらAppl Environ. Microbiol, 56(11):3593-3594, 1990に記載されているヘパリン分解をモニターするためのアガロースプレートアッセイ系に改変を取り入れ、様々なキャリアからのヘパリナーゼの脱着をモニターした。0.25M酢酸ナトリウムおよび0.0025M酢酸カルシウム(pH7.0±0.5)中に0.5%USPヘパリンナトリウム(Celsus Laboratories)および1.0%精製アガロース(Bio-Rad)を含有する溶液を95〜100℃で混合し、45〜60℃に冷却し、3ml分を5mlのプラスチック製使い捨てキュベットに注入し、室温まで冷却して自然に固化させた。ヘパリナーゼ溶液(0.5ml、20IU/ml)およびヘパリナーゼ含有ゲル(0.3〜0.7ml)をヘパリン/アガロースゲルの上面に塗布し、37℃で1時間インキュベートした。ヘパリナーゼ処方物を破棄し、ゲルの円筒形の断片をガラス製のパスツールピペットで切り出し、シリンダーを2%プロタミン硫酸溶液(Sigma)内に置いた。4〜12時間後、不透明な白い物質としてヘパリン-プロタミン沈澱物が観察された。切り出された円筒形のゲルの上部に位置している透明領域の深さからヘパリナーゼ脱着度を測定した。
活性成分としてコンドロイチナーゼACを20IU/mlか、またはコンドロイチナーゼBを20IU/ml使用し、コンドロイチン硫酸Aまたはデルマタン硫酸Bを試験試薬として使用して、カルボキシメチルセルロース/グリセロール処方物においてこの実験を繰り返した。結果を表3に示す。
Figure 0004152433
実施例2: ヘパリナーゼまたはコンドロイチナーゼ包帯の調製
本明細書中で説明したように精製した3種類の細菌ヘパリナーゼおよび2種類のコンドロイチナーゼを、0.01Mリン酸ナトリウム、0.2M塩酸ナトリウム(pH7.0)および35IU/mlの酵素を含有している溶液内に置いた。4%ポリエチレンオキシドからなる半固体状のゲル(7.5cm×5cm×0.3cm)を酵素溶液6mlと3時間接触させたところ、この間に70%を超える酵素溶液がゲルマトリックスに吸収された。
次に、本明細書中に記載のグリコサミノグリカン-アガロースゲルのプロタミン沈澱によって酵素含有ゲルの生物学的利用能(脱着)を試験した。酵素含有パッチに37℃で90分間グリコサミノグリカン-アガロースゲルを吸収させた後、新鮮なアガロースゲルに移した。この手順を合計7.5時間繰り返した。4%ポリエチレンオキシドからなる半固体状のゲル(7.5×5×0.3cm)を35〜60IU/mlの濃度で6〜8mlのヘパリナーゼ1に3時間浸し、この間に酵素はマトリックスに吸収された。これらのマトリックスを、0.05%ヘパリンを含有している1%アガロースゲルに載せ、37℃でインキュベートした。合計7.5時間の間、酵素含有ゲルを90分毎に新鮮なアガロースゲルに移した。インキュベート後、アガロースゲルを2.0%プロタミン硫酸と接触させ、分画されなかったグリコサミノグリカンを沈澱させた。沈澱したアガロースゲルの透明領域の深さを測定して酵素の浸透を観察した。結果を図2に示す。
実施例3: 細胞外基質からの増殖促進活性の放出
フラボバクテリウムヘパリン分解酵素は、増殖促進活性を示す物質を細胞外基質から移動させ得る。一次内皮細胞をウシの角膜組織から単離し、10%ウシ胎児血清および5%仔ウシ血清を含有しているDMEM中で維持した。コンフルエントなペトリ皿からの細胞を10倍希釈し、96ウェルプレート中で10%ウシ胎児血清、4%デキストランおよび5%仔ウシ血清を含有しているDMEMにおいて、12〜14日間増殖させ、1日あたり0.5ng/mlの速度でFGF-2を補充した。リン酸緩衝化生理食塩水に0.5%Tritonと0.02M水酸化ナトリウムとを含有する溶液で0.5〜5分間処理して内皮細胞を除去し、続いてリン酸緩衝化生理食塩水で3回洗浄した。この手順によって、リン酸緩衝化生理食塩水中にて4℃で保存した場合に2年間安定な細胞外基質の層でコートされたプレートが得られる。
本明細書に記載されているように精製した種々の量のグリコサミノグリカン分解酵素を、0.16%ウシ胎児血清-DMEMを含む0.2ml/ウェルで細胞外基質に添加した。37℃で1時間、グリコサミノグリカン分解酵素と接触させた。次に、Vlodavskyら, Proc. Natl. Acad. Sci. 84:2292-2296, 1987において記載されているような静止balb/c 3T3繊維芽細胞による3H-チミジンの取り込みを測定することによって、これらの酵素-細胞外基質反応混合物から得られる上清のマイトジェン活性を試験した。
インビトロにおいて一次内皮細胞株から形成された細胞外基質を、濃度0.1IU/mlのヘパリナーゼ1、2または3、濃度1.0IU/mlのコンドロイチナーゼAC、濃度0.5IU/mlのコンドロイチナーゼBのいずれかで60分間処理した。チミジン取り込みアッセイによって反応上清のマイトジェン活性の存在について試験した。結果を図3に示す。
実施例4: ヘパリンおよびヘパラン硫酸分解酵素を使用によっても、増殖促進活性を動物のインタクトな組織から放出させ得る。
解体処理時に雌ウシからウシ角膜を採取した。各角膜を切開して2つの同一の切片に分け、各切片をDMEM0.4ml中に置いた。0.1IU/mlのヘパリナーゼを一方の角膜切片に添加し、37℃で20分間インキュベートした。同一の角膜から得られた残りの切片はコントロールとして使用した。各反応から得られたアリコート20μlを、0.2%ウシ胎児血清を含有するDMEM中に総容量200μlで飢餓3T3繊維芽細胞を含む96ウェルプレートに移した。各ウェルに3H-チミジンを添加し、細胞を37℃で48時間インキュベートした。
ウシ角膜を採取し、切開して2つの同一の部分に分け、濃度0.1IU/mlのヘパリナーゼ1、2または3のいずれかで処理した。Vlodavskyらの方法によって測定した3H-チミジンの取り込みにより、反応上清のマイトジェン活性の存在について試験した。結果を図4に示す。
実施例5: グリコサミノグリカンリアーゼによる細胞外基質の処理
グリコサミノグリカン分解酵素は、細胞外基質プロテオグリカンのグリコサミノグリカン成分を切断することによって細胞外基質を変化させる。35S-硫酸含有プロテオグリカンを使用して細胞外基質を調製し、続いてフラボバクテリウムグリコサミノグリカン分解酵素によってこの放射標識された基質を消化することで、酵素の効果を定量的に評価することができる。10%ウシ胎児血清と、5%仔ウシ血清、4%デキストランおよび、25μCi/mlのNa2 35SO4とを補充したフィッシャー培地に、10%ウシ胎児血清および5%仔ウシ血清を含有しているDMEMにてコンフルエントに増殖させ、10倍希釈したウシ角膜一次内皮細胞をディッシュに播種し、FGF-2を1日あたり0.5ng/ml添加しながら12〜14日間培養することによって、35S-硫酸含有細胞外基質を生成した。リン酸緩衝化生理食塩水中に0.5%Tritonと0.02M水酸化ナトリウムとを含有している溶液で0.5〜5分間処理した後、リン酸緩衝化生理食塩水で3回洗浄することによって、放射標識された細胞外基質から内皮細胞を除去した。
グリコサミノグリカン部分に35S-硫酸を含有している細胞外基質を、リン酸緩衝化生理食塩水を含むウェルディッシュあたり1mlの量のリン酸緩衝化生理食塩水あるいは0.1IU/mlの濃度のヘパリナーゼ1、2または3、あるいはコンドロイチナーゼACまたはBで処理し、37℃で0.5時間消化を進行させた。Packard 1600 TR液体シンチレーション計数機で上清に放出された放射標識硫酸を測定することによって、放出されたグリコサミノグリカンの量を測定した。各反応に含まれていた放射標識硫酸の推定総量は80,000cpmであった。結果を図5に示す。
フラボバクテリウムヘパリン分解酵素の作用は極めて迅速であり、これらの酵素を上述したように放射標識された細胞外基質に添加した場合、数秒後に35S-硫酸標識物質が生成される。これとは対照的に、ヒトの胎盤から単離された同量の哺乳類ヘパリナーゼは、放射標識された基質に添加した後、可溶性の35S-硫酸標識物質レベルの測定可能な増加が検出されるまでに15分から20分の時間のずれを示す。この観察によって、哺乳類酵素と細菌酵素がさらに区別される。
グリコサミノグリカン分解酵素で細胞外基質を処理することで細胞外基質プロテオグリカンのグリコサミノグリカン成分が変化するが、電子顕微鏡で観察したところ、基質全体としての構造の完全性は変化していなかった。構造的にはインタクトであるが、酵素的に処理された細胞外基質は、高分子に対する増大した透過性を示す。このような透過性の増加は、2Kbのヌクレオチドフラグメントまでの25ヌクレオチド塩基の細胞外基質でコートした0.45ミクロンポアのポリエチレンテレフタレート(PET)膜の通過を促進するフラボバクテリウムグリコサミノグリカン分解酵素の能力を試験することによって証明し得る。上述したように維持したウシ角膜の一次内皮細胞をコンフルエントなディッシュから1:10に希釈し、10%ウシ胎児血清、5%仔ウシ血清および4%デキストランを補充したDMEM中にて0.45ミクロンポアのPET膜組織培養インサート(insert)(Falcon)上に播種し、FGF-2を1日あたり0.5ng/ml添加しながら12〜14日間培養した。上述したように内皮細胞を除去し、リン酸緩衝化生理食塩水中で、37℃で1時間、細胞外基質でコートしたPETインサートを濃度0.lIU/mlのヘパリナーゼ1、2または3あるいは濃度1IU/mlのコンドロイチナーゼACまたはBのいずれかで処理し、リン酸緩衝化生理食塩水で3回リンスした。
酵素処理した細胞外基質コートPETインサートを、未処理細胞外基質コートPETインサートおよび未コートPETインサートと共に12ウェルディッシュに置き、リン酸緩衝化生理食塩水2mlを各ウェルに添加する。放射標識された高分子を各PETインサートの中に添加し、PETインサートを取り囲むウェルの中のリン酸緩衝化生理食塩水溶液のアリコート100μlを37℃で15分インキュベートした後に取り出す。Packard 1600 TRシンチレーション計数機での液体シンチレーションによってアリコートの32P-含有物質をアッセイする。
実施例6: グリコサミノグリカンリアーゼによる細胞表面の処理
グリコサミノグリカン分解酵素は、細胞表面のプロテオグリカンのグリコサミノグリカン成分を切断することによって、成長因子に対する細胞の応答を減衰させ得る。10%ウシ胎児血清を補充したDMEMにて血管平滑筋細胞を96ウェルのプレートでコンフルエントになるまで増殖させた。これらの細胞を、37℃で1時間、濃度0.1IU/mlのヘパリナーゼ1、2または3あるいはコンドロイチナーゼACで処理し、次いで氷上で冷却し、DMEM中にて0.025M HEPES、0.002MTrisおよび、0.1%BSAからなるインキュベーション培地(pH7.5)で2回洗浄した。5ngの125I-FGF-2(0.5μCi)含有しているインキュベーション緩衝液0.25mlに細胞を懸濁させ、4℃で2時間インキュベートした。0.025MのHEPESと2M塩化ナトリウムとからなるpH7.4の溶出緩衝液で細胞を洗浄し、回収された125Iをγ計数機(Wallac, 1740モデル)で測定することによって、細胞表面のグリコサミノグリカンへのFGF-2の吸着を測定した。
0.1IU/mlのヘパリナーゼ1、2または3あるいはコンドロイチナーゼACでBalb/C 3T3繊維芽細胞を処理し、125I-FGF-2に曝した。0.025MのHEPESおよび2.0M塩化ナトリウム中のグリコサミノグリカン結合画分を抽出し、γ計数機を使用してFGF-2を測定することによって、細胞表面のグリコサミノグリカンに吸着されたFGF-2量を測定した。これを未処理細胞に対する結合FGF-2の比率として表す。結果を図6に示す。
実施例7: グリコサミノグリカン処理を使用した内皮細胞増殖の制御
細胞表面をグリコサミノグリカン分解酵素で処理することで、コンドロイチン分解酵素の場合のように成長因子の結合を増強し得るか、あるいはヘパリンおよびヘパラン硫酸分解酵素の場合のように成長因子の結合を阻害し得る。細胞表面からのヘパラン硫酸の除去は、酵素処理によって細胞外基質から放出されるヘパリンまたはヘパラン硫酸フラグメントによって補償し得る。
処理血管平滑筋細胞を37℃で20分間0.1IU/mlのヘパリナーゼ2に曝した。処理基質を37℃で20分間0.1IU/mlのヘパリナーゼ2に曝した。酵素処理の後、PBS0.1mlで細胞を洗浄し、基質上清50μlに曝した。
Vlodavskyら, Proc. Nat. Acad. Sci.(USA)84:2292-6(1987)、Trends Biochem. Sci. 16:268-271(1991)に記載されているようにして測定されるインキュベーションおよび増殖時において3H-チミジンを含めた。チミジン取り込みによって血管平滑筋細胞の増殖をモニターした。これを、a)未処理ECM、未処理細胞、b)ヘパリナーゼ2処理ECM、未処理細胞、c)ヘパリナーゼ2処理ECM、処理細胞について、未処理基質に曝された細胞に対する酵素放出物質に曝した細胞の比として表す。結果を図7に示す。
これらの結果から、細胞表面から細胞基質を分離した場合、表面を処理することでレセプターを脱落させ、基質を処理することで増殖促進活性が放出されること、ならびに基質および細胞表面を処理した場合、ヘパリン結合レセプターの喪失を補償する成長因子が基質から放出されるため、増殖促進が観察されることが分かる。
実施例8: 血管再生を増強するためのヘパリナーゼの局所投与の評価。
Puら, Circulation 88:208-215, 1993に記載されているウサギ後肢虚血モデルを使用して、ヘパリナーゼ1の血管新生修復に対する効果を評価した。3つの処置グループについて研究を行った(N=4)。各グループのウサギに、生理食塩水のコントロール、1日あたり100mgのFGF-2、または1日あたり100IUのヘパリナーゼ1のいずれかを投与した。左の後肢に外科的に虚血を引き起こし、手術後11日目から開始して10日間化合物を投与した。ドップラー流量計で両肢の血圧を測定し、コントロール肢(未処置肢)の血流に対する虚血肢での血流の比を算出して、血管新生率をモニターした。
ヘパリナーゼ1およびFGF-2は、処置後30日目に血圧比の上昇および血圧比の度合いの両方を加速させた。施術後40日目に血管造影を実施して新たな血管が形成されているか否か判断した。結果を表4に示す。
Figure 0004152433
これらのデータから、Flavobacterium heparinumから得たグリコサミノグリカン分解酵素を1種類または組み合わせて含有する組成物には、ヒトにおける組織修復の加速化に対する潜在的な有用性があることが分かる。
実施例9: 細胞外基質からの増殖促進活性の放出
実施例3において説明したように調製された細胞外基質(ECM)を、37℃にて、濃度0.1IU/mlのヘパリナーゼ1、2または3あるいは濃度1.0IU/mlのコンドロイチナーゼACのいずれかで10分間処理した。酵素を含有していないコントロール溶液で未処理コントロール試料を処理した。各反応上清のうち0.01ml容量を静止balb/C 3T3繊維芽細胞に移すことにより、実施例7で説明した増殖アッセイを使用してマイトジェン活性の存在についてアッセイした。結果を図8に示す。
各々の試験処理において、ヘパリナーゼ1、2、3またはコンドロイチナーゼACにより、繊維芽細胞の増殖を刺激する可溶性物質が未処理ECMで得られるレベルを上回るレベルでECMから放出された。
実施例10: 細胞表面および細胞外基質のヘパリナーゼ処理
インビボにて創傷に投与されたヘパリナーゼは、細胞外基質だけでなく創傷治癒過程に関与している細胞の細胞表面上のグリコサミノグリカンにも作用する。この効果をインビトロでモデル化するために、細胞外基質の反応上清を得る前に細胞外基質と同じ方法で静止balb/C 3T3繊維芽細胞をヘパリナーゼ3で処理した。細胞外基質および静止balb/C 3T3繊維芽細胞を、いずれも0.1IU/mlのヘパリナーゼ3で37℃にて10分間処理した後、細胞から酵素含有上清を除去し、0.2%ウシ胎児血清を含有しているDMEMと入れ換えた。この処理に続いて、3H-チミジン取り込みをモニターすることによって3T3繊維芽細胞の増殖を測定した。結果を図9に示す。
繊維芽細胞を酵素で処理した後に処理済ECMを投与した場合の方が増殖応答は高かった。これらの結果から、創傷部位にヘパリナーゼ3を使用すると創傷治癒が刺激されることが裏付けられる。
実施例11: 動物のインタクトな組織からの増殖促進活性のヘパリナーゼ媒介放出
解体処理時に雌ウシからウシ角膜を採取し、種々の濃度のヘパリナーゼ3で処理した。それぞれの濃度ごとに3つのウシ角膜を使用し、内膜(デスメ膜)のみが露出するように角膜を24ウェルの滅菌組織培養皿に置き、リン酸緩衝化生理食塩水0.2mlを各角膜に添加した。次に、ヘパリナーゼ3を添加して最終濃度0.01、0.1または1.0IU/mlとして37℃で5分間消化を進行させた。3つの角膜からなる1つのコントロールセットには酵素を投与しなかった。次に、反応上清のアリコート0.045mlを各角膜から静止balb C 3T3繊維芽細胞に移した。実施例7で説明した増殖アッセイを使用して繊維芽細胞の増殖を測定した。結果を図10に示す。
ヘパリナーゼ3の3種類の濃度では、いずれもウシ角膜から増殖刺激化合物が放出され、最も効果が大きいのは0.1IUヘパリナーゼ3/mlで処理した場合であった。
実施例12: インビトロでの細胞および細胞外基質からのbFGFのヘパリナーゼ媒介放出
組織および細胞外基質からヘパリン結合成長因子を放出させるヘパリナーゼ1、2および3の相対的な効果を測定するために、ヘパリナーゼ1、2または3で消化した細胞または基質由来の上清を、bFGFの存在についてアッセイした。10cmの組織培養皿に維持されたコンフルエントなウシ内皮細胞および平滑筋細胞を、0.1IU/mlのヘパリナーゼ1、2または3を含有しているリン酸緩衝化生理食塩水2ml中で37℃で1時間インキュベートした。実施例3で説明したように調製された細胞外基質を同様に処理した。アリコートを除去し、ヒトbFGF用のQuantikineTM ELISA(R&D systems)を使用してbFGF濃度を測定した。結果を図11に示す。
これら3種類の細胞型すべてから最大量のbFGFを放出させたのはヘパリナーゼ3であり、次がヘパリナーゼ2、その次がヘパリナーゼ1であった。ECMは、試験した3種類の酵素のいずれ場合でもウシ内皮細胞およびウシ平滑筋細胞よりも多くのbFGFを放出する。
実施例13: インビトロにおける細胞および細胞外基質からのbFGFのヘパリナーゼ媒介放出
96ウェルのディッシュで、10%胎児血清および100ユニット/mlのペニシリン/ストレプトマイシンを補充したDMEM(高グルコースDMHG)中で、37℃、7.5%CO2環境でウシ大動脈平滑筋細胞(1〜8継代)をほぼコンフルエントになるまで増殖させた。増殖培地をDMHGおよび2%BSAに交換することによって3.5〜4日間細胞を飢餓化した。飢餓期間後、濃度0.1IU/mlまたは0.5IU/mlのヘパリナーゼ1、2、または3を含有しているDMHGおよび0.5%BSA溶液で37℃で10分間細胞を処理した。酵素溶液を除去し、カルシウムおよびマグネシウムを含有したリン酸緩衝化生理食塩水(PBS+Ca+Mg)でウェルを3回洗浄した。DMHG180μl、0.5%BSAおよび3H-チミジン1.1μCi/mlを各ウェルに添加した。さらに、20ng/mlのbFGF20μlを含むDMHGおよび0.5%BSAを誘導化ウェルに添加し、DMHG20μlおよび0.5%BSAをコントロールウェルに添加した。上述したように細胞を48時間インキュベートした。48時間後、培地を除去してウェルをPBS+Ca+Mgで1回洗浄し、100%メタノール200μlで1回洗浄し、5%TCAで2回洗浄し、水で2回洗浄した。これらの洗浄工程後、各ウェルに0.2NのNaOHを100ul添加した。室温で5分間放置した後、シンチラントを含有しているバイアルにウェルの含有物を加え、取り込まれた3Hの量を測定した。2つの別個の実験から得られた結果の平均をとった。これを図12に示す。
実施例14: 細胞および細胞外基質から放出されるヘパリン硫酸分解フラグメントによる塩基性FGFレセプターの活性化
材料および方法
Takeda Chemical Industries(Osaka, Japan)から組換えヒトbFGFを得た。SepharoseTM6BをPharmacia(Uppsala, Sweden)から入手した。ブタ腸管粘膜から得られるヘパリンナトリウム(PM-heparin, Mr 14,000, anti-FXa 165 IU/mg)をHepar Industries(Franklin, Ohio)から得た。細菌(Flavobacterium heparinum)ヘパリナーゼI(EC 4.2.2.7)、2および3はIBEX Technologies,(Montreal, Canada)によって生成された。ヘパラン硫酸分解エンドグリコシダーゼ(ヘパラナーゼ)をヒトの胎盤から精製した。酵素の精製は、硫酸アンモニウム沈澱と、カルボキシメチルSepharose、ヘパリンSepharoseおよびCon A Sepharoseでの連続クロマトグラフィを包含した。
細胞。Castellot, J.J.ら, J. Cell Biol. 102, 1979-1984(1986)、Schmidt, A.ら, J. Biol. Chem. 267, 19242-19247(1992)に記載されるようにウシ大動脈中膜から平滑筋細胞(SMC)を単離した。簡単に説明すると、腹部の大動脈セグメントを取り出し、解剖顕微鏡下で筋膜を清浄した。大動脈を長手方向に切断し、血管壁から中膜の小片を注意深くはぎ取った。平均寸法が2mm3のこのような2、3個の細片を、10%FCSとペニシリン100U/mlとストレプトマイシン100μg/mlとを補充したDMEM(4.5gグルコース/リットル)を含む100mmの組織培養皿に置いた。7〜14日の間に、外植片から多層化細胞の大きなパッチが移動した。約1週間後、細胞を100mmの組織培養プレート(4〜6×105細胞/プレート)に継代培養した。培養物(38継代)は、血管SMCの典型的な形態学的特徴を呈し、細胞をアクチンの筋肉形式を選択的に認識するモノクローナル抗体(HS-35)で特異的に染色した。この抗体は、内皮細胞や繊維芽細胞は認識しない。
Gospodarowicz, D.ら, Exp. Eye Res. 25, 75-89(1977)に記載されているようにして、去勢仔ウシ(steer)の目からウシ角膜内皮細胞の培養物を構築した。10%ウシ新生児血清、5%FCS、ペニシリン50U/mlおよびストレプトマイシン50μg/mlを補充したDMEM(1gグルコース/リットル)にて、37℃、10%CO2で加湿インキュベーターでストック培養物を維持した。Gospodarowicz, D.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 73, 4120-4124(1976)に記載されているようにウシ大動脈内皮細胞をクローニングして培養した。細胞がほぼコンフルエントになるまで1日おきに組換えbFGF(1ng/ml)を添加した。Dr. D. Ornitz(Department of Molecular Biology, Washington University in St. Louis)からBaF3細胞のクローンF32(Ornitz, D.M.ら, Mol. Cell Biol. 12, 240-247(1992))を得た。10%新生児ウシ血清、X63-IL3細胞によって産生された10%インターロイキン-3馴化培地、L-グルタミンおよび抗生物質を補充したRPM1 1640培地で細胞を増殖させた。Ornitz, D.M.ら, Mol. Cell Biol. 12, 240-247(1992)に記載されているように、Mo/mFR1/SV発現ベクターでBaF3細胞をトランスフェクトし、bFGFとヘパリンを含有している培地中で選択してマウスFGFレセプター1mRNA(mFR1)を発現するコロニーを生成した後、F32細胞を得た。
細胞増殖。 RPM1 1640培地でF32細胞を2回洗浄した。5ng/mlのbFGFの非存在下および存在下で細胞(2×104/ウェル/0.2ml)を96ウェルマイクロタイタープレートにプレートし、ヘパリナーゼ1、2または3によって細胞およびECMから放出されたHS分解フラグメントの濃度を高めた。48時間後、3H-チミジン1μCiをウェルごとに添加し、細胞をさらに6時間インキュベートした後、PHD Cell HarvesterTMで回収した。取り込まれたチミジンを液体シンチレーション計数によって測定した。
ECMコートしたディッシュの調製。 ウシ角膜内皮細胞をSTVでストック培養物(2〜5継代)から分離し、初期密度2×105細胞/mlで4ウェルプレートにプレートした。5%デキストランT-40を増殖培地に含有させ、bFGFを添加せずに細胞を12日間維持した以外は上述したように細胞を維持した。0.5%Triton X-100および20mM NH4OHを含有しているPBSで室温にて5分間細胞層を溶解することによって内皮下のECMを露出させた後、PBSで4回洗浄した。ECMは、インタクトで、細胞破片がなく、組織培養皿全体に堅固に付着したまま残った。硫酸標識したECMを調製するために、角膜内皮細胞を4ウェルプレートにプレートし、上述したようにして培養した。播種1日後および5日後にNa2[35S]O4(540-590 mCi/mmol)を添加(40μCi/ml)し、培地を変えずに標識と培養物をインキュベートした。播種10〜12日後、上述したようにして細胞単層を溶解してECMを露出させた。細菌ヘパリナーゼによる硫酸標識されたECMの分解を上述したようにして測定した。Ishai-Michaeli, R.ら, Cell Reg. 1, 833-842(1990)、Bar-Ner, M.ら, Blood 70, 551-557(1987)、Vlodavsky, I.ら, Cancer Res. 43, 2704-2711(1983)。簡単に説明すると、ECMを、37℃、pH6.2にてヘパリナーゼ1、2または3と共に24時間インキュベートし、インキュベーション培地に放出された硫酸標識物質をSepharose 6Bカラムでゲル濾過することによって分析した。空隙容量(Kav<0.2)のつぎにインタクトなヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)が溶出され、HS分解フラグメントが0.5<Kav<0.8で溶出された。
結果
ヘパリナーゼ1、2および3による硫酸標識されたECMの分解およびECM結合マイトジェン活性の放出。 ヘパリナーゼ1、2または3(0.1U/ml)を、培養したウシ角膜内皮細胞から産生された、代謝的に硫酸標識されたECMと共に37℃で1時間インキュベートすることによって、ECMにおけるHSの分解について研究した。インキュベーション培地に放出された硫酸標識分解生成物をSepharoseTM 6Bでゲル濾過して分析した。インタクトなHSPGはカラムの空隙容量の次に溶出されたが、HS側鎖の標識分解フラグメントは、カラムのVt側により近い側(0.5<Kav<0.8)に溶出された。図13Aにおいて示されるように、それぞれの細菌酵素と共にECMをインキュベートすると、低Mr硫酸標識分解生成物が放出された(ピーク11、画分20〜30)。これらのフラグメントのHS特性を、亜硝酸による脱アミノ化に対する感受性およびパパインまたはコンドロイチナーゼABCによるさらなる分解脱アミノ化に対する耐性によって確認した。これら3種類の酵素は、分解フラグメントの大きさの差異を反映した異なる溶出パターンを表した。ヘパリナーゼ1ではフラグメントの分布は広く(0.4<Kav<0.6)、平均MWはヘパリナーゼ3によって放出されたフラグメントの場合(Kav〜0.65)やヘパリナーゼ2によって放出されたフラグメントの場合(Kav〜0.8)よりも高かった(図13)。ヘパリナーゼ2は、ECM HSを小さなフラグメントに分解する。このフラグメントは、2〜6個程度の糖単位を含有しており、カラムのVtの近くに移動する。
ヘパリナーゼ1、2および3によってECMから放出された物質を増殖停止3T3繊維芽細胞に添加し、これらの細胞においてDNA合成を刺激する能力について試験した。図13Bにおいて示されるように、ヘパリナーゼ2およびいくらか程度は低いがヘパリナーゼ3によってECMから放出される物質は、同一条件下でヘパリナーゼ1によって放出される物質に比べると3T3繊維芽細胞に対するマイトジェン活性が高かった。事実、ヘパリナーゼ1によって放出されたマイトジェン活性は、PBSのみとのインキュベーションの間にECMから放出されたマイトジェン活性よりもわずかに高いだけであった。PBSのみとインキュベートしたECMからHSPGおよびマイトジェン活性の両方が自然に放出されるのは、ECMに存在する組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、ゼラチナーゼAなどのタンパク質分解酵素が原因となっている。酵素をECMではなく通常の組織培養皿でインキュベートした場合に増殖促進活性が認められないことから示されるように、ヘパリナーゼ1、2および3はマイトジェン活性を全く有していなかった。
ヘパリナーゼ1、2および3によってECMから放出されるマイトジェン活性の差異は、ECM基質に対するこれらのヘパリナーゼの分解能の差異に起因するものではなかった。何故なら、図13Cに示されるように、90%を超えるECM硫酸標識物質が各酵素によって放出され、10%未満の放射線活性がECMと会合したまま残ったからである。同様に、これら3種類の酵素は、それぞれ最初はECMと結合していた125I-bFGFの90%を超える部分を放出した。さらに、ヘパリナーゼ1および3と硫酸標識されたECMとを同時にインキュベートするか、あるいは同一または別の酵素を第二の用量で逐次添加しても、放出されるHS分解フラグメントおよびマイトジェン活性の量はわずかしか増加しなかった(15%未満)。
ヘパリナーゼ1、2および3によってECMおよび細胞から放出されるHSフラグメントの増殖促進活性
マウスFGFレセプター1を発現するように操作されたサイトカイン依存性リンパ様細胞系(Ornitz, D.M.ら, Mol. Cell Biol. 12, 240-247(1992))を細胞に適用し、ヘパリナーゼ1、2および3によってECMおよび細胞から放出されるHS分解フラグメントが、この細胞系においてbFGF誘導性分裂誘発を可能にする際に必要なヘパリンまたはヘパラン硫酸の代用となり得るか否かを調査した。mFR1を発現するようにトランスフェクトされたBaF3細胞は、ヘパリンを絶対的に必要とした上でbFGFに対して用量依存性応答を示すということは既に証明されている。これらの実験で、過剰の組換えbFGF(5ng/ml)とF32細胞をインキュベートし、ECM分解生成物によって誘導される増殖促進効果が、同一条件化で放出される相対的に無視し得る量のECM結合bFGF(0.5ng/ml未満)ではなく、ヘパラン硫酸フラグメントによって生じ得るようにした。血管内皮細胞および平滑筋細胞(それぞれECおよびSMC)ならびにインタクトな内皮下ECMを、0.1U/mlのヘパリナーゼ1、2または3とインキュベートした(1時間、37℃)。次に、これよりも多い量のインキュベーション培地を、5ng/mlのbFGFの存在下でF32細胞に添加した。48時間後、3H-チミジンを6時間かけて添加し、続いて細胞を回収して3H-チミジン取り込みを測定した。
ヘパリナーゼ3で血管内皮細胞および平滑筋細胞を予め処理すると、HS分解フラグメントが放出される。これとは対照的に、ヘパリナーゼ1または2によって放出されたフラグメントは、それぞれ図14に示されるように何ら効果を有さないか極めてわずかしか効果を有さなかった。ECMを使用して同様の研究を行ったところ、bFGFおよび細菌酵素単独の存在下で得られる3H-チミジン取り込みを基準にして、ヘパリナーゼ1、2または3によって放出されたフラグメントによるbFGF媒介細胞増殖は全く刺激されないか殆ど刺激されないということが明らかになった。
コントロール実験を実施したところ、ECMまたは細胞の非存在下で通常の組織培養皿でヘパリナーゼ3単独で誘導したF32細胞の増殖またはヘパリナーゼ3でプレインキュベートした後の細胞増殖はわずかに刺激されたが、ヘパリナーゼ1または2では何ら刺激は観察されなかった。図15に示されるように、この刺激はヘパリナーゼ3処理血管SMCから得た培地によって誘導した場合と比べて3〜4分の1であった。図14Aに示すヘパリンの効果や細胞表面から得たHS分解フラグメントの効果とは異なり、ヘパリナーゼ3の効果は、このヘパリナーゼ3酵素を最初に通常の組織培養プラスチック上でインキュベートしたかECM上でインキュベートしたかに関係なく、この酵素をF32リンパ様細胞に添加する前に95℃で10分間加熱失活することによって消滅する(図14B)。この結果から、この酵素は活性であり、そして/またはその本来の構造を保持してマイトジェン応答を誘導するに違いないということが分かる。ヘパリナーゼ3酵素がF32細胞表面から刺激性HS様フラグメントを放出しているか否かを明らかにする試みにおいて、F32細胞をまずヘパリナーゼ3で処理(30分、0.1U/ml、37℃)し、加熱失活を施した上清および加熱失活を施していない上清の、新鮮な未処理F32リンパ様細胞に対する刺激効果を試験した。これもまた、ヘパリナーゼ3を最初にF32細胞とインキュベートしたか否かとは関係なく、3H-チミジン取り込みはこの酵素によって刺激され、この刺激は加熱失活することによって消滅した。他の実験において、ヘパリナーゼ3酵素をDEAEセルロースに付与し、酵素が混入している可能性のあるヘパリンのトレースを除去した。図14Bに示されるように、この処理はヘパリナーゼ3の刺激活性には何らの効果も及ぼさないが、標準的なヘパリンの効果を完全に消滅させてしまった(図14A)。同時に、これらのコントロール実験から、天然のヘパリナーゼ3酵素自体が、bFGFレセプター結合の刺激およびF32細胞における活性化が可能であると考えられる。
ECM結合bFGFおよび細胞表面結合bFGFの放出
図13Bに示されるように、ECMをヘパリナーゼ2および3ならびにこれらよりもかなり低い度合いでヘパリナーゼ1に曝すことによって、増殖停止3T3繊維芽細胞に対する増殖促進活性が放出された。細胞およびECMヘパリナーゼ1、2および3から実際に放出されたbFGFの量をイムノアッセイ(R&D QuantikineTMヒトbFGF)によって測定した。表5に示されるように、それぞれのインキュベーション培地によって放出されるマイトジェン活性(図13B)と相関して、ヘパリナーゼ3によってECMから放出されたbFGFの量は、ヘパリナーゼ1および2によって放出された量よりもそれぞれ約2.5および15倍多かった。ヘパリナーゼ3による放出に感受性のECM結合bFGFの量は、血管内皮細胞および平滑筋細胞の表面で得られる量よりも6〜7倍多かった(表5)。ヘパリナーゼ1および2によって血管ECから放出されたbFGFの量は、血管SMCから放出された量よりも多かった。
bFGFのマイトジェン活性を促進するHS結合bFGFおよびHS分解フラグメントの両方を細胞およびECMから放出する、3種類の細菌ヘパリン/HS分解酵素の能力を比較した。増殖停止3T3繊維芽細胞およびHS欠乏F32リンパ様細胞における、放出されたbFGFおよび3H-チミジン取り込みの刺激とを実際に測定することで、ヘパリナーゼ3が最も活性の高い増殖促進酵素であることが明らかに分かった。ヘパリナーゼ3の優位性は、F32細胞系において最もよく示された。この系において、HS分解フラグメントのbFGF結合能力およびbFGFをその高親和性チロシンキナーゼレセプターに供給して、レセプターを活性化させて細胞を増殖させる能力を評価する。ヘパリナーゼ1や2ではなく、ヘパリナーゼ3によって細胞表面から放出されたHSフラグメントは、bFGFおよび他の増殖促進因子のヘパリン結合ファミリーのメンバーの特徴を有する二重(dual)レセプター機構に関与する副(accessory)レセプターとしての役割を果たし得ることが分かった。これとは対照的に、内皮下ECMからヘパリナーゼ3によって放出されたHSフラグメントに関しては、このような活性は全く認められないかわずかに認められただけであった。この結果から、ECM中のHSは、応答性細胞の近傍でbFGFに対する比較的不活性な貯蔵庫となり、細胞表面のHSは、ECM結合bFGFの実際の移動およびこれに続くその高親和性細胞表面レセプター部位への提供により、活発な役割を果たしている可能性があることを示す先の観察が証明される(Bernfield, M. ら, Ann. N.Y. Acad. Sci. 638, 182-194(1991))。
これらの研究から、i)最大量のECM結合bFGFおよびii)bFGFレセプターの結合およびHS欠乏細胞における活性化を促進し得るHS分解フラグメントを放出する際に、ヘパリナーゼ1および2に比較してヘパリナーゼ3を適用することの利点が示される。驚くべきことに、各細菌酵素を単独で適用したコントロール実験から、ヘパリナーゼ3自体がF32細胞系においてbFGFの増殖促進活性を刺激することが明らかになった。ヘパリンおよびHS分解フラグメントによる効果とは異なり、この刺激は加熱失活後に消滅し、DEAEセルロースでは除去されなかった。これは、ヘパリナーゼ3の調製物に会合している可能性のあるヘパリン様分子ではなくむしろヘパリナーゼ3タンパク質による誘導を示す。
実施例15: 正常なラットモデルおよび機能障害ラットモデルにおける創傷治癒
Mustoeら, Science 237:1333-1326(1987)のラットの機能障害免疫モデルを使用して、インビボにおいて創傷治癒を刺激するヘパリナーゼ3の効果を試験した。背側皮膚の全厚を5.0cm直線切開してSprague-Dawleyラットに創傷を形成した。ビヒクルまたは試験試薬0.2mlを創傷部位に塗布し、創傷を4本のシルク3〜0縫合糸で1cm間隔で閉じた。創傷形成の約5〜6時間後から回復後5〜7日目までエリザベスカラー(Elizabethan collar)をラットにはめた。
カルボキシメチルセルロースゲル(Carbopol)をビヒクルとして使用した。ヘパリナーゼ3を上述したようにビヒクルに添加した。表5は各試験グループに使用した治療レジュメである。
試験系グループ:
Figure 0004152433
創傷の唇縁の癒合および創傷の物理的な様相に基づいて創傷治癒を評価した。癒合について、癒合した唇縁を3点/切片とし、2mm以下の癒合を2点/切片、2mm以上の癒合を1点/切片とした。物理的な創傷様相のスコアについては、明らかに治癒されている場合および/または痂皮がなくなった場合を5点/切片とし、乾燥痂皮を4点/切片、新しい痂皮を3点/切片、湿った創傷を2点/切片、新しい創傷を1点/切片とした。1日目から屠殺まで毎日創傷の評価を記録した。
さらに、創傷の引っ張り強度に基づいて治癒の評価を行った。屠殺後、創傷部位を含む皮膚切片を被験動物から取り出した。55MN Mini MerlinTM伸び計を使用して創傷の引っ張り強度を測定した。
創傷形成2日前にメチルプレドニゾロン(30mg/kg)の単回筋肉内注射を行ったところ、図16に示されるように、機能障害グループの皮膚切片の創傷引っ張り強度(グループ2:左側:0.735±0.351g/mm2、右側:0.919±0.368g/mm2)によって測定した創傷治癒過程は、正常なグループ(グループ1:左側2.007±0.888g/mm2、右側:1.989±0.562g/mm2)(p=0.0001)と比較して、有意に短く(59%)なった。
正常なラットモデルにおいて、ビヒクルを単回量投与した場合(グループ3:左側:1.826±0.804g/mm2)と比較して、0日目にヘパリナーゼ3を単回投与した場合(グループ3:右側:1.968±0.748g/mm2)には平均創傷引っ張り強度測定値に有意な改善は見られなかった。メチルプレドニゾロンで処理した機能障害ラットモデルでは、0日目にビヒクルを単回投与した場合(グループ4:左側:0.774±0.265g/mm2)には、創傷引っ張り強度測定値が正常ラットの場合(1.941±0.752g/mm2、全ての正常な創傷引っ張り強度測定値の平均:グループ1の左側および右側とグループ3の左側)の40%となった。0日目にヘパリナーゼ3を単回投与した場合(グループ4:右側:1.253±0.623g/mm2)には、創傷引っ張り強度測定値は正常なラットの場合の65%であった。
機能障害ラットモデルにおいて、毎日連続してビヒクルを3回投与した場合(グループ5:左側:0.682±0.301g/mm2)には、創傷引っ張り強度測定値の平均値は正常なラットの場合の35%であったのに対し、ヘパリナーゼ3を3回投与した場合(グループ5:右側:1.322±0.543g/mm2)には68%であった。機能障害ラットモデルにおいて、ビヒクルを7回投与した場合(グループ6:左側:0.850±0.81 2)には、創傷引っ張り強度測定値は正常なラットの場合の44%であったのに対し、ヘパリナーゼ3を7回投与した場合(グループ6:右側:1.206±0.655g/mm2)には62%であった。
実施例16: 正常なラットモデル、およびグルココルチコイド誘導ラットモデルの創傷治癒におけるヘパリナーゼ3の比較および精製ヘパリナーゼ3の用量応答
濃度0.02、0.2、または2.0IU/創傷で異なるロットのヘパリナーゼ3酵素(lothep3.00123)を使用して、実施例15に記載の研究を繰り返した。さらに、PBSを、実施例15で使用したカルボキシメチルセルロースゲルビヒクルの代わりにビヒクルとして使用した。それぞれの動物に施した処理は以下の通りであった。
Figure 0004152433
創傷形成2日前にメチルプレドニゾロン(30mg/kg)を単回注射したところ、図17および表6において示されるように、機能障害グループの皮膚切片の平均創傷引っ張り強度(グループ2、左側:0.70±0.09、±0.28g/mm2、右側:0.99±0.09、±0.28(平均±SE、±SD))によって測定した創傷治癒過程は、正常なグループ(グループ1、左側:1.52±0.12、±0.57g/mm2、右側:1.59±0.13、±0.64g/mm2)と比較して、有意に短く(46%)なった。
機能障害ラットモデルにおいて、ビヒクルを3回投与した場合(グループ3,左側0.71±0.07、±0.32」g/mm2)には、創傷引っ張り強度測定値の平均値は正常なラットの場合(全ての創傷引っ張り強度測定値の平均値:グループ1の左側および右側:1.55±0.09、±0.60g/mm2)の54%機能障害を示していた。ヘパリナーゼ(ヘパリナーゼ3 lot HEPIII RH-67)を3回投与した場合、創傷引っ張り強度測定値の平均値は正常なラットの場合と比較して47%機能障害を示していた。図17および表6に示されるように、ヘパリナーゼを投与することによって、機能障害の逆転効果は7%となった。
機能障害ラットモデルにおいて、ビヒクルを3回投与した場合(グループ4、左側:0.89±0.09、±0.42g/mm2)には、創傷引っ張り強度測定値の平均値は正常なラットの場合と比較して43%機能障害を示していた。Hep-P(ヘパリナーゼ3 lot HEPIII.001)を用量1(0.02 IU/200μL)で3回投与した場合、創傷引っ張り強度測定値は正常なラットの場合と比較して35%機能障害を示していた。図17および表6に示されるように、Hep-P用量1を投与することで機能障害の逆転効果は8%になった。
機能障害ラットモデルにおいて、ビヒクルを3回投与した場合(グループ5、左側:0.74±0.04、±0.17g/mm2)には、創傷引っ張り強度測定値の平均値は正常なラットの場合と比較して53%機能障害を示していた。Hep-P(ヘパリナーゼ3 lot HEPIII.001)を用量2(0.20 IU/200μL)で3回投与した場合、創傷引っ張り強度測定値は正常なラットの場合と比較して26%機能障害を示していた。図17および表6に示されるように、Hep-P用量2を投与することで機能障害の逆転効果は27%になった。
機能障害ラットモデルにおいて、ビヒクルを3回投与した場合(グループ6、左側:0.72±0.10、±0.30g/mm2)には、創傷引っ張り強度測定値の平均値は正常なラットの場合と比較して54%機能障害を示していた。Hep-P(ヘパリナーゼ3 lot HEPIII.001)を用量3(2.00 IU/200μL)で3回投与した場合、創傷引っ張り強度測定値は正常なラットの場合と比較して4%機能障害を示していた。図17および表6に示されるように、Hep-P用量3を投与することで機能障害の逆転効果は50%になった。
Figure 0004152433

Claims (12)

  1. 細胞外基質からヘパリン結合成長因子および分子を放出し、細胞表面レセプターからコンドロイチン硫酸を除去し、そしてその成長因子レセプター複合体からヘパラン硫酸成分を除去することにより、正常な創傷治癒を増強するための、組成物であって、該組成物は、Flavobacterium heparinum由来のヘパリナーゼ1、Flavobacterium heparinum由来のヘパリナーゼ2、Flavobacterium heparinum由来のヘパリナーゼ3、Flavobacterium heparinum由来のコンドロイチナーゼACおよびFlavobacterium heparinum由来のコンドロイチナーゼB、Bacteroides菌株由来のヘパリナーゼ、Flavobacterium Hp206由来のヘパリナーゼ、Cytophagia種由来のヘパリナーゼ、Bacteroides種由来のコンドロイチン硫酸分解リアーゼ、Proteus vulgaris由来のコンドロイチン硫酸分解リアーゼ、Micrococcus由来のコンドロイチン硫酸分解リアーゼ、Bibrio種由来のコンドロイチン硫酸分解リアーゼ、Arthrobacter aurescens由来のコンドロイチン硫酸分解リアーゼ、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される精製された細菌型グリコサミノグリカン分解リアーゼを、有効量の該酵素の投与のための薬学的に許容可能なキャリアとの組み合わせで含む、薬学的組成物。
  2. 前記キャリアが、局所投与のための薬学的に許容可能なキャリアである、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記キャリアが、軟膏剤、ポリマー性フィルム、ゲル、微粒子、マイクロカプセル、リポソーム、プロテオソーム、リポスフェア、インプラント、経皮パッチおよび包帯からなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
  4. 前記酵素が、ポリマー性キャリアに取り込まれている、請求項3に記載の組成物。
  5. 正常な創傷治癒を増強するためのシステムであって、
    Flavobacterium heparinum由来のヘパリナーゼ1、Flavobacterium heparinum由来のヘパリナーゼ2、Flavobacterium heparinum由来のヘパリナーゼ3、Flavobacterium heparinum由来のコンドロイチナーゼAC、Flavobacterium heparinum由来のコンドロイチナーゼB、Bacteroides菌株由来のヘパリナーゼ、Flavobacterium Hp206由来のヘパリナーゼ、Cytophagia種由来のヘパリナーゼ、Bacteroides種由来のコンドロイチン硫酸分解リアーゼ、Proteus vulgaris由来のコンドロイチン硫酸分解リアーゼ、Micrococcus由来のコンドロイチン硫酸分解リアーゼ、Bibrio種由来のコンドロイチン硫酸分解リアーゼ、Arthrobacter aurescens由来のコンドロイチン硫酸分解リアーゼ、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択され、薬学的に許容可能なキャリアと組み合わせられる、精製された細菌型グリコサミノグリカン分解リアーゼと、
    細胞外基質からヘパリン結合成長因子および分子を放出し、細胞表面レセプターからコンドロイチン硫酸を除去し、そしてその成長因子レセプター複合体からヘパン硫酸成分を除去することにより、正常な創傷治癒を増強するのに有効な投薬量で、キャリアと組み合わせて該リアーゼを送達するための装置と、
    を含む、システム。
  6. 前記送達手段がカテーテルである、請求項5に記載のシステム。
  7. 前記グリコサミノグリカン分解リアーゼが、特的結合特性を有する分子に融合されている融合タンパク質である、請求項1に記載の組成物。
  8. 前記グリコサミノグリカン分解リアーゼが、標的細胞の特定の分子と結合する、タンパク質およびホルモンからなる群から選択される標的分子に融合される、請求項7に記載の組成物。
  9. 前記分子が、細胞表面分子と結合する、ホルモン、抗体、インテグリンおよび細胞外基質結合分子からなる群から選択される、請求項8に記載の組成物。
  10. 前記リアーゼが、該リアーゼを天然に発現しない生物において、組換えヌクレオチド配列から発現される、請求項1に記載の組成物。
  11. 前記組成物が、血管の正常な創傷治癒を増強する、請求項1〜4および7〜10のいずれかに記載の組成物。
  12. 前記システムは、血管の正常な創傷治癒を増強する、請求項5または6に記載のシステム。
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