JP3713276B2 - 炎症反応の軽減のためのヘパリナーゼの使用 - Google Patents

炎症反応の軽減のためのヘパリナーゼの使用 Download PDF

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Description

発明の分野
本発明は医学的治療の分野に属し、局所的炎症反応を軽減する治療または予防としてのヘパリナーゼ酵素の使用を指向する。
発明の背景
炎症反応は毛細血管拡張、白血球浸潤、発赤、発熱、および疼痛によって明らかになる細胞損傷に対する局所的反応であり、有害作用物質および損傷組織の除去を開始するメカニズムとして役立つ。
組織内の広汎性炎症反応は、白血球の組織への動員によっておきる。細菌、異物および/または損傷細胞の破壊は、食作用および/または細胞外脱顆粒(分解性酵素、抗細菌性蛋白質およびミエロペルオキシダーゼを分泌し、ミエロペルオキシダーゼは分泌されたH22からスーパーオキサイドを形成する)によっておきる。ほとんどの局所的炎症反応は好都合であるが、有害な炎症反応もおこり得る。多くの有害な炎症反応には、組織内への白血球の蓄積も含まれる。この蓄積は生細胞および組織の破壊をおこす。組織の損傷に加えて、これらの反応は攻撃を受けた人にも有害であるか、または衰弱させる。有害な炎症反応の例には下記を含める;心筋梗塞後の虚血/再灌流損傷、ショック、発作、臓器移植、心肺バイパス手術、同種移植片拒絶、リウマチ性関節炎、抗原誘発性喘息、アレルギー性鼻炎、および糸球体腎炎(ハーラン(Harlan)ら、Immunol.Rev.114巻、5−12ページ、1990;カルロス(Carlos)&ハーラン、Blood、84巻、2068−2101ページ、1994を参照のこと)。
白血球動員は、内皮に隣接する損傷−または感染組織による血管内皮の活性化で始まる一連の細胞性事象のカスケードを含む。内皮の活性化は白血球の内皮細胞への粘着を高め、結合白血球による損傷組織への経内皮的遊走(管外遊走)をおこす。内皮の活性化は、内皮細胞の短期間の速やかな、および/または長期間の刺激によってあらわれる。
トロンビン、化学誘引性ロイコトリエン類のB4、C4およびD4(LTB4、LTC4およびLTD4)、およびヒスタミンなどの活性剤は、蛋白質合成には無関係に、速やかな一過性の(<30分)内皮細胞活性化をもたらし、化学誘引物質、例えば血小板活性化因子(PAF;グリセロリン脂質)やLTB4ヒスタミンで示される)など、および粘着分子;ICAM−1(トロンビンで示される)およびP−セレクチンの内皮細胞表面レベルを高めることができる(チンマーマン(Zimmerman)ら、J.Cell Biol.110巻、529−540ページ、1990;スガマ(Sugama)ら、J.Cell Biol.119巻;935−944ページ、1992;マックインタイヤ(McIntyre)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83巻、2204−2208ページ、1986;ローラン(Lorant)ら、J.Cell Biol.115巻、223−234ページ、1991)。内皮細胞の速やかな活性化の結果は、白血球の内皮への粘着増加である(フーバー(Hoover)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81巻 2191−2194ページ、1984;チンマーマンら、J.Cell Biol.110巻、529−540ページ、1990;ハナハン(Hanahan)ら、Ann.Rev.Biochem.55巻、483−509ページ、1986)。しかし、増加したLTB4表面レベルが好中球の経内皮遊走を直接的に増加することは証明されておらず(ヒュー(Hughs)ら、Prost.Leuk.Essent.F.A.45巻、113−119ページ、1992)、場合によっては、活性化された内皮への白血球の粘着にはPAFは必要でない(キュジパーズ(Kuijipers)ら、J.Cell Biol.117巻、565−574ページ、1992)。
長期(時間単位の存続期間)蛋白質合成依存性の内皮細胞活性化はIL−1bおよびTNF−aのようなサイトカイン類、およびリポ多糖体(LPS)によってもたらされ、粘着分子:E−セレクチン、P−セレクチン、ICAM−1およびVCAM−1の表面レベルを高く維持する(カルロスおよびハーランの研究、Blood、84巻、2068−2101ページ、1994)。IL−1bおよびTNF−aは内皮細胞によるPAFの合成も高める(キュジパーズら、J.Cell Biol.117巻、565−574ページ、1992)。その上、IL−1b、TNF−a、LPSおよびヒスタミンによる内皮細胞の活性化は、ケモカイン、IL−8、の合成および分泌を高めることが証明された(ストリーター(Strieter)ら、Science 243巻、1467−1469ページ、1989;ジーニン(Jeannin)ら、Blood 84巻、2229−2233ページ、1994)。
ケモカイン類、IL−8およびMCP−1、は内皮細胞表面で産生され、そこに存在することが判明した(フーバー(Huber)ら、Science 254巻、99−102ページ、1991;スプリンガー(Springer)、Nature、346巻、425−434ページ、1990)。ケモカイン、MIP−1b、はin vivoでリンパ筋内皮上に存在することが示された(タウブ(Taub)ら、Science、260巻、355−359ページ、1993;タナカら、Nature 361巻、79−82ページ、1993)。ケモカイン類;RANTES、MIP−a、MIP−b、MCP−1およびIL−8はすべてヘパリン結合蛋白質であり、それは分泌後、ヘパリンおよびヘパラン硫酸部分をもつ細胞表面および細胞外基質プロテオグリカン類に結合する(ミラーらの研究、Crit.Rev.Immunol.12巻、17−46ページ、1992)。
ヘパリンおよびヘパラン硫酸は、分枝していない同じ炭水化物鎖上に散らばって見いだされる類似のグリコサミノグリカンである。それらはプロテオグリカンの蛋白質バックボーンに共有結合している。これらの2つの名前が意味するものとは異なり、ヘパリンはヘパラン硫酸より高度に硫酸化されている。プロテオグリカンは細胞表面上および細胞外基質中(例えば内皮の基底膜中)に存在する。同じ炭化水素鎖上のヘパリンおよびヘパラン硫酸の領域を区別するのは難しいため、ケモカイン類がヘパリンかヘパラン硫酸部分のどちらに好んで結合するかについてはほとんどデータがない。ケモカイン類IL−8およびGROがヘパリンよりもヘパラン硫酸により大きい親和性をもって結合し、PF4およびNAP−2はヘパリン部分により大きい親和性をもって結合することが示唆されている(ウィット(Witt)およびランダー(Lander)、Curr.Biol.4巻、394−400ページ、1994)。概して、ケモカイン類はヘパリン結合蛋白質と言われている。ケモカインIL−8、PF4、MCP−1およびNAP−2のC末端領域はα−ヘリックスを形成し、ヘパリン/ヘパラン硫酸に結合することが示された(ウェブ(Webb)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90巻、7158−7162ページ、1993;ツッカー(Zucker)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、86巻、7571−7574ページ、1989;マツシマら、in Interleukins:Molec.Biol.Immunol.編集 キスチモト(Kistimoto)、カーガー(Karger)、バーゼル(Basel)、236−265ページ、1992)。これはケモカインのすべてに共通の構造のようである。
活性化内皮細胞によって発現される上記のすべての分子(PAF、LTB4、セレクチン、CAMsおよびケモカイン類)は内皮細胞表面上に存在し、損傷組織部位に隣接する血管内皮に局在する。これらの分子と相互作用する血液運搬(blood-borne)白血球も損傷組織領域に結合して局在する。内皮の長期活性化の結果、白血球の粘着および管外遊走が増加し、隣接組織における白血球の顕著な局部的蓄積がおきるが、これは短期間の活性化中には起こり得ない(エビサワら、J.Immunol.149巻、4021−4028ページ、1992;フーバー、およびワイス、J.Clin.Invest.83巻、1122−1129ページ、1989;オッペンハイマー−マークスら、J.Immunol.145巻、140−148、1990)。
内皮への白血球の粘着は、2段階プロセスでおこると考えられる(カルロス、およびハーランの研究、Blood、84巻、2068−2101ページ、1994)。最初に、白血球は血管表面に沿って回転(roll)する。回転の増加は、最初は血管内皮上で(最初の30分以内)、白血球表面のSialyl Lewisx構造と、活性化内皮細胞上で増加したP−セレクチンおよびE−セレクチンとの相互作用によって仲介される(リー(Ley)ら、Blood 85巻、3727−3735ページ、1995)。増加した回転は、白血球の細胞膜上のL−セレクチンと、血管内皮上のヘパリン様分子(これはサイトカイン誘導性である(カリン(Karin)ら、Science 261巻、480−483ページ、1993))との相互作用によって、またはリンパ球上のL−セレクチンと、リンパ系組織の高内皮細静脈(HEVs)上の血管アドレッシン類(addressins);GlyCAM−1、CD34およびMAdCAM−1との間の相互作用によっても仲介される(40分後)。第2段階−白血球が内皮細胞にしっかり粘着することは、白血球インテグリン(例えばLFA−1、Mac−1、VLA−4)と内皮細胞粘着分子(CAMs;例えばICAM−1、ICAM−2、VCAM−1、MAdCAM−1)との相互作用に基づく。白血球は内皮表面上で平らになり、確実な粘着と同時にL−セレクチンを発生する(キシモトら、Science 245巻、1238−1242ページ、1989;ジュティラ(Jutila)ら、J.Immunol.143巻、3318−3324ページ、1989;スミス(Smith)ら、Clin.Invest.87巻、609−618ページ、1991)。
セレクチンおよびCAMレベルは内皮表面で多くのサイトカインおよび化学誘引物質に反応して増加する。これらの増加は細胞表面上での付加的セレクチンおよびCAM分子の合成および/または分泌に依存しておきる。それとは異なり、確実な粘着のための白血球の活性化は数秒以内に(Bargatzeら、J.Exp.Med.、178巻、367−373ページ、1993)、インテグリンの分泌増加によって、そしてより重要なことには、細胞表面インテグリンおけるコンフォメーション変化(インテグリンの活性化)の誘導によっておき、この結果、インテグリンのCAMsへの確実な結合が可能になることがわかった。(チンマーマンの研究、Immunol.Today 13巻、93−99ページ、1992)。
PAFおよびE−セレクチンはインテグリンを活性化して内皮細胞へ粘着させることができる(ロラント(Lorant)ら、J.Biol.Chem.115巻、223−234ページ、1991;ロ(Lo)、J.Exp.Med.173巻、1493−1500ページ、1991)。CD44(ヘパリン/ヘパラン硫酸部分を所有する)またはヘパリンBSA結合体に結合することによって固定されたMIP−1bの存在が、固定化VCAM−1分子とCD8+T細胞の結合のために必要であることが示された。この結合は、VLA−4に対する抗体によってブロックされることがわかり、MIP−1bがT−細胞表面上のVLA−4を活性化することが示唆された(タナカら、Nature 361巻、79−82ページ、1993)。好中球表面のインテグリンCD18(Mac−1の部分)のレベルの増加は、IL−1bによって刺激された内皮に好中球が接触したときにおきることがわかった。IL−8に対する抗体はCD18アップレギュレーションを阻止し、好中球粘着も阻止した(フーバー、Science 254巻、99−102ページ、1991)。こうしてケモカイン類は白血球粘着の直接的活性剤として作用し得る。対照的に、ルシナスカス(Luscinaskas)ら(J.Immunol.149巻、2163−2171ページ、1992)は、好中球のIL−8による前処理が好中球付着を阻止し、外因性IL−8の添加が活性化内皮細胞に粘着した好中球を脱着することを示した。ロート(Rot)(Immunol.Today 13巻、291−294ページ、1992)は、内皮細胞表面に結合したIL−8は粘着を促進するが、溶解性IL−8はそれを阻止し得るということを提案することによって、これらの矛盾する結果を説明した。
異なるケモカイン類は異なる白血球を活性化する。IL−8は好中球、好酸球およびT細胞を活性化する。RANTESは単球、好酸球およびT細胞を活性化する。MCP−1は単球を活性化する。MIP−1aはCD4+T細胞、単球、およびB細胞を活性化し、一方MIP−1bは単球およびCD8+T細胞を活性化する(ラスキーの研究、Current Biol 3巻、366−378ページ、1993)。セレクチン、インテグリン、CAMsおよびケモカインの異なる組み合わせが選択され、異なる炎症組織に認められる白血球サブタイプを粘着および遊走させると考えられる(ブッチャー(Butcher)、Cell 67巻、1033−1039ページ、1991)。
白血球の粘着および管外遊走におけるインテグリン、CD11/CD18(Mac−1)、およびICAMsの重要性は、多くの系でこれらの分子に対する抗体の使用によって示された。抗体は粘着分子の機能を妨害し、白血球動員をブロックまたは減少させる。白血球粘着性欠乏(LAD)I型症候群は罹患患者の白血球上のインテグリン、CD18、を部分的または完全に消失させる。炎症部位への好中球の動員は無視できる。しかし単球および好酸球動員は正常であり、粘着分子の別の組、多分VLA−4およびVCAM−1、がこれらの細胞の動員のために機能することを示唆している(ハーラン、Clin.Immunol.Immunopath.67巻、S16−S24ページ、1993)。VLA−4は好中球によっては発現されない(ウィンおよびハーラン、J.Clin.Invest.92巻、1168−1174ページ、1993)。既述のように、ケモカインは白血球上のインテグリンVLA−4およびCD18の活性化および表面レベル増加にとって重要である。ポリカルボネート フィルター上に固体したIL−8は、好中球のフィルターを通過する遊走を方向づけるのに適することがわかった(ロート、Immunol.Today 13巻、291−294ページ)。フーバーら(Science 254巻、99−102ページ、1991)は、IL−1bで刺激された内皮細胞単層に産生した結合IL−8の経内皮勾配が好中球の管外遊走のために必要であることを示した。これらの好中球はIL−8で予備活性化され、内皮細胞に結合したが、IL−8勾配が生じる程には遊走しなかった。この勾配は内皮細胞内腔表面から内皮細胞単層の下にある基底膜を通して広がる。活性化内皮細胞の下にある基底膜から結合IL−8を洗い去ると、その単層を通過する遊走は阻止された。その上、IL−8に対する抗体は好中球遊走の70−80%を阻止した。キュジパーズら(J.Cell Biol.117巻、565−572ページ、1992)は抗IL−8抗体を用いて、IL−1bおよびTNF−aで活性化した内皮を通過する好中球の遊走を60%減少させ、PAF受容体拮抗物質の添加は遊走を85−90%減少させた。これらの結果は、IL−8前処理好中球では活性化内皮細胞単層を通過するそれらの遊走能力が阻害されることを示した実験とは対照的である(ルシナスカスら、J.Immunol.149巻、2163−2171ページ、1992)。こうして、ケモカインは白血球の粘着を活性化するのみならず、ケモカインの結合勾配は白血球の管外遊走においても重要であるらしい。溶解性ケモカインが存在すると、粘着および結合ケモカイン勾配に沿う遊走が妨害されることがある。以下で論ずるように、溶解性ケモカインのin vivo局所的濃度の上昇は、血流によって最小になるであろう。
ひとたび活性化された白血球が損傷組織内に蓄積し始めたならば、それらはサイトカイン、ケモカインおよびLTB4の合成および分泌によってその他の白血球の蓄積を増大することができる。LPSは単球IL−1bの発現を直接増加することが判明した(ポラト(Porat)ら、FASEB J,6巻;2482−2489ページ、1992)。IL−8、IL−1bおよびTNF−aはGM−CSFで活性化された好中球によって産生され、その他のサイトカインは活性化マクロファージ、内皮およびT−細胞によって産生される(マッケインら、Am.J.Respir.Cell Molec.Biol.,8巻、28−34ページ、1993;リンデマンら、J.Immunol.140巻、837−839、1988;リンデマンら、J.Clin.Invest.83巻、1308−1312ページ、1989)。IL−1bおよびTNF−aは単球を刺激し、それによってケモカイン類、IL−8およびMIP−1aの発現を増加することがわかった(ルカスら、Blood、82巻、3668−3674ページ、1993)。活性化された好中球および単球は、LTB4産生の主要ソースであることがわかった(サミュエルソンら、Science 237巻、1171−1176ページ、1987;ブラハ(Brach)ら、Eur.J.Immunol.22巻、2705−2711ページ、1992)。既述のように、LTB4は白血球のその後の動員に直接関係しないが、LTB4で刺激された好中球がIL−8を産生するため、LTB4−刺激された好中球は、IL−8勾配の形成を通して間接的に、さらに好中球動員を促進することができる(マッケインら、Am.J.Respir.Cell Molec.Biol.10巻、651−657ページ、1994)。これらの白血球誘導性活性剤による白血球の連続動員は媒介として血管内皮を用いることを必要とする。内皮細胞と基底膜は、好中球誘導性ケモカインと結合し、好中球誘導性ケモカインの勾配を生成する、または白血球誘導性サイトカインは内皮を活性化し、それもケモカイン勾配を生成せしめる。
血管内の血流は、組織局在的炎症反応によっておきる溶解性活性化因子(サイトカイン、ケモカインおよび化学誘引物質)の局所的濃度の増大を阻止する。もしも局所的炎症が活性化剤の高血中濃度をもたらすならば、白血球の全身的活性化が起こり得る(フィン(Finn)ら、J.Thorac.J.Surg.105巻、234−241ページ、1993)。活性化白血球は次いで不活性化内皮に一過性に結合し、および/または脱顆粒し、敗血症をおこす(ソーヤー(Sawyer)ら、Rev.Infect.Dis.11巻、S1532−1544ページ、1989)。若干の血液運搬白血球が局所的炎症によって活性化されている場合(活性化白血球のすべてが管外遊走するわけではない)、活性化白血球は付加的サイトカイン、ケモカイン、およびLTB4を産生し血液中に分泌する。この活性化剤濃度の上昇が不活性化細胞をアップレギュレートし、全身反応を増幅するかも知れない。
炎症反応のメカニズムがいくらか詳細になっているとはいえ、まだ、局所的炎症反応を軽減または阻止するための有効な治療および薬物学的組成物の必要性がある。
発明の概要
本発明はヘパリナーゼ分解酵素類を個々にまたは一緒に用いて局所的炎症反応を軽減するのに用いることができるような発見を指向する。本発明に有用なヘパリナーゼは種々のソースから得られる:グラム陰性菌Flavobacterium heparinumからのヘパリナーゼI、II、およびIII、バクテロイデス属(Bacteroides)菌株からのヘパリナーゼ、フラボバクテリウム(Flavobacterium)Hp206からのヘパリナーゼ、シトファーガ属(Cytophagia)菌種からのヘパリナーゼ、および哺乳類細胞からのヘパリナーゼ。これらの酵素は単独で、または組み合わせて、ヘパリナーゼまたはヘパリナーゼ酵素としてここでは記述される。
ヘパリンおよびヘパラン硫酸部分は、内皮細胞表面上および基底膜からヘパリナーゼの適用によって分解される。活性化内皮細胞上のアップレギュレートされたプロテオグリカンからヘパリンおよびヘパラン硫酸部分を除去すると、白血球上で見られるL−セレクチンとプロテオグリカンとの相互作用が阻止される。L−セレクチン−プロテオグリカン相互作用を減らすことによって、活性化内皮上を回転する白血球を阻止することができる。
その上、ヘパリンおよびヘパラン硫酸部分を活性化内皮細胞表面から、およびそれらの基底膜から除去する場合、ヘパリンおよびヘパラン硫酸部分に結合しているケモカイン類は細胞表面および基底膜から放出される。結合ケモカインの喪失はケモカインの局所的濃度を減少させ、活性化内皮によって生成したケモカイン勾配を崩壊させ、それによって、確実な粘着のために必要な、回転白血球のケモカインによる活性化を阻止し、ケモカイン勾配に沿った白血球の管外遊走を防止する。本発明による、白血球の回転(rolling)、活性化および管外遊走の減少は、白血球動員の基本的メカニズムを妨害することによって、局所的組織炎症反応を阻止することができる。
ヘパリナーゼ酵素は、酵素を局所的高濃度で運搬するか、またはその酵素の拡散を物理的に制限するという選択された投与法によって、特異的細胞タイプ、組織または器官を標的にすることができる。その上、本発明により、ヘパリナーゼは酵素を抗体、増殖因子または粘着分子からの結合ドメインに融合することによって標的化することができる。融合蛋白質は、組換え微生物における遺伝子融合物の作成および発現によって産生される。例えば、結合ドメインは、活性化内皮上(例えばICAM−1、VCAM−1、P−セレクチン、E−セレクチン)または内皮細胞サブタイプ上(例えばGlyCAM−1)の細胞表面分子を識別することができる。標的融合酵素はインディケーションの数および特異性を高めることができ、一方では、治療に起因する効果および起こり得る副作用の点から酵素の必要量を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、1.0IU/mlのヘパリナーゼIIIによって内皮細胞表面から放出された35S−ヘパリン/ヘパラン硫酸のカウント数のグラフであり、ゲル濾過カラムで、そのサイズによって分離したものである。ダイアモンドは5分間の消化によって放出されるカウント数、四角は30分の消化によって放出されるカウント数、三角は60分間消化によって放出されるカウント数を示す。擬似(mock)消化の各フラクションからのバックグラウンドカウント数をヘパリナーゼIII消化から誘導されるフラクションから差し引いてある。
図2Aおよび図2Bは0.1IU/mlのヘパリナーゼI、II、またはIIIで1時間処理後、指示された時刻における不活性化(2A)−およびIL−1b活性化(2B)ヒト内皮細胞系に存在するヘパリン/ヘパラン硫酸のパーセントのグラフである。細胞表面ヘパリンに結合する125I−bFGFを用いて存在するヘパリン/ヘパラン硫酸の量を測定した。ヘパリナーゼI、II、またはIII処理細胞の結果は、ダイアモンド、四角または三角でそれぞれ示す。垂直線は平均値の標準誤差である。
図3Aおよび図3Bは、1.0IU/mlのヘパリナーゼIで処理後、指示された時刻における不活性化(3A)−およびIL−1b活性化(3B)ヒト内皮細胞系上に存在したヘパリン/ヘパラン硫酸のパーセントを示すグラフである。細胞表面ヘパリンに結合する125I−bFGFを用いて、存在するヘパリン/ヘパラン硫酸の量を測定した。1、3または5時間処理細胞の結果をそれぞれダイアモンド、四角または三角であらわす。垂直線は平均値の標準誤差である。
図4Aおよび図4Bは、1.0IU/mlのヘパリナーゼIIIで処理後、指示された時刻における不活性化(4A)およびIL−1b活性化(4B)ヒト内皮細胞系上に存在するヘパリン/ヘパラン硫酸のパーセントのグラフである。細胞表面ヘパリンに結合する125I−bFGFを用いて存在するヘパリン/ヘパラン硫酸の量を測定した。1、3または5時間処理細胞の結果をそれぞれダイアモンド、四角または三角であらわす。垂直線は平均値の標準誤差である。
図5は、1.0IU/mlのヘパリナーゼ;I(5A)、II(5B)、I+III(斜線を含む棒;5B)、およびIII(5C)で処理することによってIL−1b活性化ヒト内皮細胞層から放出されるIL−8のレベルをあらわすグラフである。棒は、ヘパリナーゼで処理した活性化内皮層からの上澄液 対 活性化内皮層からの未処理上澄液(分泌されたIL−8のみを含む)に見いだされるIL−8の濃度のパーセント差をあらわす。これらのパーセント差の標準誤差は垂直線によって示される。棒に重なって描かれている線はヘパリナーゼ処理細胞層からの上澄液中のIL−8の濃度を示す。これらの測定値の標準誤差も垂直線によって示される(全部見えるわけではない)。
図6は、活性化されていない内皮細胞、IL−1b活性化内皮細胞、またはIL−1b活性化後に0.1IU/mlのヘパリナーゼI、IIまたはIIIで処理した内皮細胞への好中球の粘着レベルである。粘着レベルは粘着している好中球の、加えた好中球に対するパーセントとしてあらわされる。
図7A、図7Bおよび図7CはIL−1b活性化内皮細胞層を通る好中球管外遊走の阻止パーセントのグラフである。斜線を含む棒は、1.0IU/mlのヘパリナーゼで1時間処理した結果をあらわす。白い棒は0.1IU/mlのヘパリナーゼで1時間処理した結果をあらわす。黒い棒は0.1IU/mlのヘパリナーゼIまたはIIIで15分間処理した結果をあらわす。そして垂直線を含む棒は1.0IU/mlのヘパリナーゼIIで15分処理した結果をあらわす。阻止パーセントの標準偏差は垂直線によってあらわす。小さい星印は1時間処理の結果が、同じヘパリナーゼで15分処理した結果と有意に異なることを示す(p<0.05)。大きい星印は1.0IU/mlのヘパリナーゼで1時間処理した結果が0.1IU/mlの同じヘパリナーゼで1時間処理した結果と有意に異なることを示す。棒の下の括弧内の数字は、各データセットに含まれる実験数である。
図8は、pH5.8および7での、ECM上のヒトヘパリナーゼ(β−トロンボグロブリン)の活性を示すグラフである。黒棒は1μgヒトヘパリナーゼで処理したECMから放出される35SO4 対 未処理ECMから放出される35SO4のパーセント差をあらわす。斜線を含む棒は、5μgのヒトヘパリナーゼで処理したECMから放出される35SO4 対 未処理ECMから放出される35SO4のパーセント差をあらわす。平均値の標準偏差は垂直線によって示される。
図9は、HUVEC層をIL−1bで活性化時、および活性化HUVEC層をヒトヘパリナーゼ(hhep)で処理した後、の好中球の管外遊走レベルの変化をあらわすグラフである。平均値の標準偏差は垂直線によって示される。
図10は、5時間の注入期間にわたるラット血漿ヘパリナーゼIII濃度のグラフである。プロトコル中の時点は矢印によって示され、その矢の上に説明がある。垂直線は平均値の標準誤差を示す。
図11は、3時間の虚血後の再灌流中のラット微小血管系における白血球回転のレベルのグラフである。丸印は未処理ラットにおけるレベルを示し、四角は虚血状態にした疑似処理ラットにおけるレベルを示し、三角形は虚血状態にしたヘパリナーゼ処理ラットのレベルを示す。垂直線は平均値の標準誤差を示す。
図12は、3時間虚血後の再灌流中のラット微小血管系における白血球粘着レベルのグラフである。丸印は未処理ラットのレベルを示し、四角は虚血状態にした疑似処理ラットのレベルを示し、三角形は虚血状態にしたヘパリナーゼ処理ラットのレベルを示す。垂直線は平均値の標準誤差を示す。
図13は、3時間の虚血後の再灌流中のラット微小血管系における白血球管外遊走レベルのグラフである。丸印は虚血状態にしたヘパリナーゼ処理ラットにおけるレベルを示す。垂直線は平均値の標準誤差を示す。
図14は、2時間虚血後の再灌流中のラット微小血管系における白血球管外遊走レベルのグラフである。白棒は疑似処理ラットのレベル 対 未処理ラットのレベルのパーセント差である。斜線を含む棒はヘパリナーゼ処理ラットのレベル 対 未処理ラットのレベルのパーセント差である。垂直線は平均値の標準誤差を示す。
図15は、3時間虚血後の再灌流中のラット後毛細管細静脈における灌流レベルのグラフである。丸印は未処理ラットのレベル、四角は虚血状態にした疑似処理ラットにおけるレベル、三角は虚血状態にしたヘパリナーゼ処理ラットにおけるレベルを示す。垂直線は平均値の標準誤差を示す。
図16は、ヘパリナーゼ処理をした場合としない場合における、虚血および再灌流中のウサギの心拍数と血圧の積のグラフである。白丸および白四角は、それぞれ生理的食塩液前処理ラットおよび再灌流処理ラットのデータである。白いピラミッド形および黒丸は、それぞれヘパリナーゼ前処理ウサギおよび、再灌流処理したウサギのデータである(ヘパリナーゼIIIの標的血漿レベル25μg/ml)。黒い四角、黒いピラミッド形および黒いダイアモンド形は、ヘパリナーゼIIIの標的血漿レベルがそれぞれ5、1.25および0.25μg/mlで、ヘパリナーゼ再灌流処理したウサギのデータである。BASEはベースラインレベルを示す。30Iは虚血30分でのレベルを示す。30R、60R、120Rおよび180Rは、再灌流30、60、120および180分でのレベルを示す。垂直線は平均値の標準偏差を示す。
図17は、異なるヘパリナーゼ処理を受けたウサギの心臓における虚血および再灌流後の梗塞の大きさ 対 リスクゾーンのパーセントのグラフである。黒丸は各処理群の平均レベルを示す。白い形は個々のウサギにおけるレベルを示す。CPTおよびCRTはそれぞれ生理的食塩水前処理および再灌流処理ウサギを示す。DPTおよびDRTはそれぞれヘパリナーゼ前処理および再灌流処理ウサギを示す。DPTおよびDRTの下の数字は血漿中のヘパリナーゼIIIの標的レベルを示す。垂直線は平均値の標準偏差を示す。
図18は、ヘパリナーゼ処理ウサギに注入したヘパリナーゼIIIの濃度のグラフである(IU/ml)。DPTおよびDRTはそれぞれヘパリナーゼ前処理および再灌流処理ウサギを示す。DPTおよびDRTの下の数字は血漿中のヘパリナーゼIIIの標的レベルを示す(μg/mg)。Conは生理的食塩液を注入した対照ウサギを示す。垂直線は平均値の標準偏差を示す。
図19は、前処理および再灌流中のウサギ血漿中に測定されたヘパリナーゼIIIの濃度のグラフである。丸印は血中ヘパリナーゼIII濃度25μg/mlを標的としたヘパリナーゼ前処理ウサギで測定した実際の濃度を示す。四角、ピラミッド形、三角およびダイアモンドは、それぞれ25、5、1.25および0.5μg/ml血漿ヘパリナーゼIII濃度を標的とするヘパリナーゼ再灌流処理ウサギで測定した実際の濃度を示す。BASEはベースライン濃度を示す。30Pおよび60Pは前処理30分および60分での濃度を示す。15R、30R、60R、120Rおよび180Rは、それぞれ再灌流15、30、60、120および180分での濃度を示す。垂直線は平均値の標準偏差を示す。
本発明の詳細な説明
白血球と内皮との相互作用は、局所的炎症反応の進行に重要である。これらの重要な相互作用としては、内皮結合ケモカインと白血球ケモカイン受容体との間、および白血球L−セレクチンと内皮上のヘパリン/ヘパラン硫酸プロテオグリカン類との間の機能的接触を含む。本発明はこの発見に基づき、ヘパリナーゼ酵素およびヘパリナーゼ融合蛋白質を使用して、白血球−ケモカインおよび白血球内皮細胞プロテオグリカン相互作用を減らし、それによって局所的炎症を阻止することを指向する。
ヘパリンおよびヘパラン硫酸は、多くの異なる細胞タイプの表面上にあるプロテオグリカンのグリコサミノグリカン部分であり、多くの細胞によって産生された細胞外基質中にも見いだされた。内皮細胞は、主としてそれらの基底膜と呼ばれる管腔外部上に、細胞外基質を作り出す。或る種のサイトカイン類またはその他の炎症反応刺激物質によって活性化された内皮細胞は、それら表面のヘパリンおよびヘパラン硫酸プロテオグリカンレベルを高め(高内皮細静脈は除く)、それは炎症粘着分子としてはたらき、回転白血球上のL−セレクチンと相互作用する。この相互作用は白血球と内皮との接触を増やし(白血球回転の増加)、それは白血球動員のひき続く段階のために必要である。活性化された内皮はケモカインの合成および分泌も増加させる。ケモカインの分泌はそれはそれで、同じケモカインの局所的濃度を高める、なぜならばそれらケモカインは内皮細胞表面上および基底膜中のプロテオグリカンのヘパリンおよびヘパラン硫酸部分に結合するからである。この局所的濃度勾配は、白血球が活性化されてしっかり粘着し、管外遊走するために必要であり、炎症部位への白血球動員をおこす。
ヘパリナーゼ酵素はFlavobacterium heparinum(ローズ(Lohse)およびリンハルト(Linhardt)、J.Biol.Chem.267巻、2437−24355ページ、1992)、バクテロイド属菌株(セイラーズ(Saylers)ら、Appl.Environ.Microbiol.33巻、319−322ページ、1977;ナカムラら、J.Clin.Microbiol.26巻、1070−1071ページ、1988)、フラボバクテリウムHp206(ヨシダら、第10回糖結合体に関するシンポジウム、エルサレム 1989)、およびシトファーガ属菌株(ボーン(Bohn)ら、Drug Res.41(I)、No.4:456−460ページ、1991)を含める微生物にみいだされた。哺乳類細胞からのヘパリナーゼも報告されている(フックス(Fuks)ら、米国特許第5362641号、1994;フジワーフ(Hoogewerf)ら、J.Biol.Chem.270巻、3268−3277ページ、1995)。Flavobacterium heparinumからのヘパリナーゼI(EC4.2.2.7)、およびヘパリナーゼIIはヘパリンを分解し、他方ヘパリナーゼIIもヘパリナーゼIII(EC4.2.2.8)と同様にヘパラン硫酸を分解する。これらの酵素による完全消化産物は主として二糖類である;ただし少量の四糖およびオリゴ糖も存在するかも知れない。これらの酵素を用いて細胞表面および基底膜のグリコサミノグリカン類、ヘパリンおよびヘパラン硫酸を除去することができる。
内皮細胞からのヘパリンおよびヘパラン硫酸の除去は、L−セレクチンと内皮との相互作用を妨害し、白血球回転の増加防止する。内皮細胞および基底膜からのグリコサミノグリカンの除去は、白血球動員のために重要なグリコサミノグリカン結合ケモカインも除去する。内皮細胞結合ケモカインの消失は白血球インテグリンの活性化を弱め、白血球のしっかりした粘着を阻止する。それは白血球の管外遊走をも阻止する、なぜならば白血球は遊出するためにケモカインの結合勾配の存在を必要とするからである。非結合の化学誘引物質が血流によって内皮層からなくなり、顕著な溶解性化学誘引物質勾配の形成を阻止すると考えられている。
概して、1時間のヘパリナーゼ処理後、消化された細胞表面および基底膜のヘパリンおよびヘパラン硫酸の50%が2ないし4時間以内に置換され、12ないし16時間以内には完全に置換される。処理時間がより長くなると(3および5時間)、同量のヘパリン/ヘパラン硫酸の置換に必要な時間が著しく延びる。細胞表面ヘパリン/ヘパラン硫酸の緩徐な置換によって炎症反応は著しく減少する。ヘパリナーゼの適切な投与は弱められた炎症反応の持続時間を延ばすことができる。
ヘパリナーゼの調製法
本発明に用いる個々のヘパリナーゼまたはそれらの組み合わせは、種々のソースから作ることができる。ヘパリナーゼは細菌または哺乳動物細胞から分離することによって作られる。これらの細菌または細胞は、その酵素を天然に産生するか、または公知の方法に記載されたように遺伝子工学的操作によって酵素を産生する。さらに、ヒト細胞からの哺乳動物ヘパリナーゼは、フックらにより記載された精製手順によって分離することもできる(米国特許第5362641号、1994)。
Flavobacterium heparinumからのヘパリナーゼの分離
ヘパリナーゼ酵素を下記のようにしてFlavobacterium heparinum培養物から精製できる。F.heparinumは、ガリエル(Galliher)らのAppl.Environ.Microbiol.41巻(2)360−365ページ、1981に記載された規定栄養培地の変法中で15Lコンピューター制御発酵槽において培養する。ヘパリンリアーゼを産生するように設計された発酵では、ヘパリナーゼ合成誘導剤として半精製ヘパリン(Celsus Laboratories社製)を1.0g/Lの濃度で培地に含む。細胞を遠心分離によって収穫し、細胞周辺腔から放出される所望の酵素をチンマーマンらの米国第5169772号(1992)に報告された浸透性ショック法の変法によって収穫する。
粗浸透法産物(osmolate)からの蛋白質を陽イオン交換樹脂(CBX、J.T.Baker)に1ないし7mhosの伝導度で吸着する。抽出物からの未結合蛋白質を棄て、その樹脂をクロマトグラフィーカラム(5.0cm内径×100cm)に充填する。結合蛋白質は0.01M燐酸塩、0.01M燐酸塩/0.1M塩化ナトリウム、0.01M燐酸塩/0.25M塩化ナトリウムおよび0.01M燐酸塩/1.0M塩化ナトリウム(全部pH=7.0±0.1である)の段階グラジエントで、直線的流速3.75cm・min-1で溶出する。ヘパリナーゼIIは0.1MNaClフラクション中に溶出し、一方ヘパリナーゼIおよびIIIは0.25Mフラクション中に溶出する。別法として、0.1M塩化ナトリウム段階を省き、3つのヘパリナーゼを0.25M塩化ナトリウムで同時に溶出させる。ヘパリナーゼフラクションをセルフィン(cellufine)硫酸を含むカラム(5.0cm内径×30cm.アミコン(Amicon))に直接載せ、0.01M燐酸塩、0.01M燐酸塩/0.2M塩化ナトリウム、0.01M燐酸塩/0.4M塩化ナトリウムおよび0.01M燐酸塩/1.0M塩化ナトリウム(全部pH=7.0±0.1)の段階グラジエントで、直線的流速2.50cm・min-1で溶出する。ヘパリナーゼIIおよびIIIは0.2M塩化ナトリウムフラクション中に溶出し、ヘパリナーゼIは0.4Mフラクション中に溶出する。セルフィン硫酸カラムからの0.2M塩化ナトリウムフラクションを0.01M燐酸ナトリウムで希釈すると5mhos未満の伝導度が得られる。その物質をヒドロキシアパタイトカラム(2.6cm内径×20cm)に載せ、結合蛋白質を0.01M燐酸塩、0.01M燐酸塩/0.35M塩化ナトリウム、0.01M燐酸塩/0.45M塩化ナトリウム、0.01M燐酸塩/0.65M塩化ナトリウムおよび0.01M燐酸塩/1.0M塩化ナトリウム(全部pH7.0±0.1)の段階グラジエントで1.0cm・min-1の直線的流速で溶出することによってその溶液をさらに精製する。ヘパリナーゼIIは0.45M塩化ナトリウムフラクション中に単一の蛋白質ピークとなって溶出し、一方ヘパリナーゼIIIは0.65M塩化ナトリウムフラクションに単一の蛋白質ピークとして溶出する。ヘパリナーゼIは、セルフィン硫酸カラムからの物質をヒドロキシアパタイトカラム(2.6cm内径×20cm)に載せ、伝導度5mhos未満に希釈し、結合蛋白質を直線的流速1.0cm・min-1で、燐酸塩(0.01ないし0.25M)および塩化ナトリウム(0.0ないし0.5M)の直線的勾配で溶出する。ヘパリナーゼIはグラジエントのほぼ真ん中で単一蛋白質ピークに溶出する。
この方法によって得られたヘパリナーゼ酵素は逆相HPLC分析(BioCad,POROS II)によって測定して98.5%を超える純度である。ヘパリナーゼ酵素の精製結果を表Aに示す。
Figure 0003713276
組換え酵素の分離
グリコサミノグリカン分解酵素を下記のような組換え発現系から分離することもできる:サシセカラン(Sasisekharan)らが報告したヘパリナーゼI発現系(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90巻、8660−8664ページ、1993);1994年6月10日に出願されたスー(Su)らの同時係属米国特許出願第08/258,639号、「Flavobacterium heparinumから誘導されるヘパリナーゼIIおよびヘパリナーゼIIIの核酸配列および発現系」に記載されたヘパリナーゼIIおよびIII発現系。これらの教示は本明細書に組み込まれている。これらの発現系では、Flavobacterium heparinum遺伝子は単離され、誘導性プロモーターから下流にプラスミドにクローン化される。プラスミドを大腸菌(E.coli)に挿入し温度シフト、または培地へのIPTG添加などの適切な誘導法、によって所望酵素を発現させる。
酵素はここに記載の方法の変法によって精製した形で回収できる。細胞破壊は、ホモジナイゼーション、超音波処理または酵素処理によって、細胞壁を破壊し、細胞質成分を放出することによって達成する。もしも酵素合成が凝集をおこしたならば、その凝集物をその後変性剤、3ないし6MグアニジンHClまたは4ないし8M尿素によって溶解することができ、透析または希釈によってその変性剤を除去して蛋白質を再生させることができる。再生酵素は上記の液体クロマトグラフィーを用いてさらに精製することができる。
融合蛋白質の構成
特異的結合特性をもつ蛋白質に融合したヘパリナーゼ酵素を組み込んだ融合蛋白質は組換え分子生物学的技法によって作ることができる。適した結合蛋白質を選択することによって、ヘパリナーゼ活性をin vivoの特異的部位に標的化することができる。ICAM−1は活性化内皮細胞表面に発現させるのが好ましいことがわかった(ダスチン(Dustin)ら、J.Immunol.137巻、245−254ページ、1986)。融合蛋白質の例としては下記のものがある;ヘパリナーゼ酵素またはその活性部分に融合したとき活性化した内皮の内腔および外腔表面近くにヘパリナーゼ活性を局所化する、ICAM−1、VCAM−1またはP−セレクチンに特異的な抗体、Fabフラグメントまたは可変部。ヘパリンおよびヘパラン硫酸部分はこの領域で取り出され、その内皮によって生じるケモカイン勾配の破壊をおこす。その他の例として、ヘパリナーゼ酵素またはその活性部分の、LFA−1またはMac−1(両方共ICAM−1に結合する)のI−ドメインへの融合は、活性化内皮を標的とし、ヘパリンおよびヘパラン硫酸を除去し、白血球回転およびケモカイン勾配形成を阻止する。IL−1bのようなサイトカインの受容体は活性化内皮上でアップレギュレートされ、融合蛋白質の結合のためのもう一つの標的となる。IL−1bまたはIL−1bの受容体結合ドメインをヘパリナーゼに融合することによっても標的化は実現する。融合蛋白質は、未融合ヘパリナーゼを用いた場合に匹敵する分だけ減少させるのに必要である濃度よりも低い血中濃度で炎症反応を減らすことができる。その上、血管系のその他の細胞は融合蛋白質の酵素活性によって比較的影響を受けにくく、治療による考えられる副作用を減らすことができる。
遺伝子工学によって作りだされたヘパリナーゼ融合蛋白質は、ヘパリナーゼおよびヘパリナーゼが融合している蛋白質の結合および触媒特性を保有する。3つのヘパリナーゼをF.heparinumから均質になるまで精製し、大腸菌中で組換え型として産生した。抗体または粘着分子の結合ドメインと一緒になったヘパリナーゼ酵素からなる融合蛋白質は、組換え宿主において遺伝子融合によって作ることができ、個々の蛋白質の結合機能および酵素活性は保持されたままである。これらの分子も、融合蛋白質の個々の部分の精製に通常用いる方法(例えばアフィニティークロマトグラフィー、ヘパリナーゼ精製プロトコールなど)によって均質になるまで精製することができる。Flavobacterium heparinumから精製した天然ヘパリナーゼとは異なり、組換え酵素はアミノ末端ピログルタメートまたは炭水化物部分を含まないかも知れない。すべての組換えヘパリナーゼは欠失、付加および/または変化したアミノ酸を含むことがあり、それらは天然酵素の酵素活性または結合ドメインの機能を変化させる。ヘパリナーゼおよび融合ヘパリナーゼをポリエチレングリコール、架橋剤とのコンプレックス形成および微小被包形成(microencapsulation)によって、in vivo使用のために安定化することができる。
例えば、ヘパリナーゼIの遺伝子は、サシセカランら、Proc.Natl.Acad.Sci.90巻、3660−3664ページ、1993に記載されたようにF.heparinumら分離した。そしてEcoR I制限部位を、ポリメラーゼ鎖反応によって、グルタミン−21残基をコードするコドンの5’側に挿入した。ヘパリナーゼI遺伝子含有フラグメントを制限エンドヌクレアーゼ;EcoR IおよびBamH Iで消化することによって作り、EcoR I/BamH I切断pMALc2プラスミド(New England Biolabs社製)に結合した。得られたプラスミドは、ヘパリナーゼI遺伝子に5’側に融合したマルトース結合蛋白質(MalB)を組込む82,000−85,000ダルトンの蛋白質をコードするハイブリッド遺伝子を含んでいた。このプラスミドを、コーエンらがProc.Natl.Acad.Sci.69巻、2110−211ページに報告した塩化カルシウム仲介性方法を用いて大腸菌HB101細胞に挿入した。これらの細胞は、誘導剤IPTG0.1mMを増殖培地に添加することによって融合蛋白質を合成することができ、tacプロモーターのコントロール下でヘパリナーゼ活性をあらわす。
HB101(pMALc2−HEP1Q21)細胞を、37℃で0.1mM IPTGを含むM9培地500ml中に1.0g/L乾燥細胞重量の細胞密度まで増殖させ、10,000g×10分の遠心分離によって濃縮した。細胞ペレットを0.025Mトリス、pH7.7、10mlに懸濁し、それら細胞をヒートシステムズ(Heat Systems)XL2020型を用いて、4.5分間、出力3で、30秒オン−30秒オフのサイクルで超音波処理することによって破壊した。細胞かすを10,000g×10分の遠心分離によって除去し、上澄液をアミロース フィニティー樹脂カラム(1.0cm内径×2cm、New England Biolabs)に入れた。結合蛋白質をPH7.5で、0.01Mマルトースを含む0.025Mトリス、pH7.5、の段階グラジエントで溶出した。融合蛋白質は、ヘパリナーゼ比活性23.77IU/mgをあらわす蛋白質ピークに溶出した。
ヘパリナーゼ−マルトース結合融合蛋白質もヘパリナーゼ特性に基づく標準的蛋白質分離法によって精製することができる。細胞超音波処理物を硫酸アンモニウム沈殿によって分画化した。非特異的蛋白質を1.7M硫酸アンモニウムによる沈殿段階で除去し、上澄液を、硫酸アンモニウム濃度を3.2Mまで高めることによって沈殿させた。沈殿物質は融合蛋白質を含んでおり、0.025M燐酸ナトリウム、pH6.5、に再懸濁した。その物質を弱い陽イオン交換カラム(1.6cm内径×10cm、CBX、J.T.Baker)に入れ、0.0M塩化ナトリウム、0.01M塩化ナトリウム、0.25M塩化ナトリウムおよび1.0M塩化ナトリウム(全て0.025M燐酸ナトリウム中)の逐次的段階グラジエントで溶出した。融合蛋白質は0.25M塩化ナトリウム溶出フラクションに溶出し、ヘパリナーゼ非活性29.95IU/mlを示した。これら二つの精製法は、機能的ヘパリナーゼ融合蛋白質が、所望の結合特性をもつ蛋白質をヘパリナーゼのN−末端に遺伝子的に結合することによって作られ、生成した融合蛋白質は、ヘパリナーゼとそれが融合した蛋白質両方の機能を保有することを示している。
融合蛋白質のもう一つの例として、Flavobacterium heparinumからのヘパリナーゼIII遺伝子を含むpGBH3からのBamH I/Sal H制限フラグメントを、pMALc2に挿入し、マルトース結合蛋白質をヘパリナーゼIIIと融合させる遺伝子を形成した。融合遺伝子プラスミドを含む大腸菌株DH5a抽出物を最後の例に記載のように作り、これらの抽出物はヘパリナーゼIII活性18.7IU/ml/O.D.を含んでいた。その抽出物もアミロースアフィニティー樹脂と結合させ、その後その樹脂を遠心分離によって抽出物から分離した。その樹脂を0.025Mトリス(pH7.5)溶液で1回洗い、その樹脂に結合した蛋白質をSDS−PAGEサンプル緩衝液に再懸濁し、7.5%SDS−ポリアクリルアミドゲルでサイズによって分離した。そのゲルを抗ヘパリナーゼIII特異的抗体でウェスターンブロット分析すると、116,000Da.蛋白質が同定された。それは融合蛋白質の予想サイズに一致する。この分析は、融合蛋白質は機能性マルトース結合ドメインを有することを示す。この例は、ヘパリナーゼIII蛋白質は結合ドメインに融合して二官能価融合酵素を作り出すこともできることを示している。
In vivoでの蛋白質の保護
特に酵素の場合は、in vivo半減期を延ばす方法は公知であり、日常的に用いられている。適切な方法の1例は、ポリエチレングリコール部分を蛋白質に付加することであり、これは細網内皮系による取り込みを阻止する。このような非免疫原性蛋白質の製法および特徴はルー(Lu)ら(Pept.Res.6(3)、140−146、1993)、デルガド(Delgado)ら(Critical Rev.Ther.Drug Carrier Syst.9(3−4)、249−304ページ、1992)およびデイビス(Davis)ら(米国特許第4179337号、1979)によって報告されており、これらの教示は本明細書に組込まれている。適した方法のもう一つの例は、二官能価架橋剤を使用し、蛋白分解に対して酵素を安定化することである。グルタールアルデヒドは二官能価架橋剤の1種である。Novo Nordisk A/SによるPCT WO95/00171は、その他の有用な二官能価架橋剤のリストを含み、それらの使用を教示しており、これは本明細書に組込まれている。
薬剤学的組成物の製法
ヘパリナーゼ酵素は局所的に、または全身的に投与することができる。局所的投与はより大きいコントロールが可能である。ヘパリナーゼを適した薬剤学的または獣医学的担体と混合し、次いで当業者には公知の方法、例えば局所的適用、灌流の使用、注射またはカテーテルなどを用いて処理細胞に所望の効果をもたらす有効量を投与する。
上述のように標的化酵素を作成するか、またはカテーテルまたは局所注射、などの標的化ビヒクルを用いて、酵素の制御部位特異的デリバリーを実現するという方法で、標的化および有効濃度の投与が成し遂げられる。
放出調節性マトリックスまたは注射による酵素の投与
ヘパリン酵素を標準的方法論を用いる注射による投与のために、担体中に例えば生理的食塩液または水性緩衝液中に配合するか、またはポリマーのマトリックス中に封入することができる。ヘパリナーゼを放出調節性処方に封入することは公知であり、材料としては(これらに制限されるものではないが)リポソーム、リポスフェア(liposphere)、生体内分解性ポリマーマトリックスおよび小胞がある。これらの被包物は一般的には直径60nmから100ミクロンまでの微粒子であるが、10ミクロン未満であるのが好ましく、直径1ミクロン以下であるのがより好ましい。
プロテオソームは髄膜炎菌(Meningococcal bacteria)の外側膜蛋白質から作られ、疎水性アンカーを含む蛋白質に結合することがロウェル(Lowell)らによって報告された(Science、240巻、800ページ、1988)。プロテオソーム蛋白質は高度に疎水性で、膜透過(transmembrane)蛋白質およびポーリンとしてのそれらの役割を反映している。分離すると、それらの疎水性蛋白質−白質相互作用のために、それらの分離のために使用した界面活性剤の強度に依って、多分子膜性の60から1000nmの小胞、または膜性小胞フラグメントを自然に形成する。ヘパリナーゼは、ミラーらのJ.Exp.Med.176巻、1739−1744ページ、1992年に記載されているように、プロテオリポソーム内に被包することもできる(プロテオソームの参考として上述のように本明細書に組み込まれる)。或いは、ヘパリナーゼはNovasome(登録商標)脂質小胞(Micro Vescular Systems, Inc.社,Nashua, NH)のような脂質小胞内に被包することができる。もう一つの担体はNova PharmaceuticalsによるPCT US90/06590(この教示は本明細書に組込まれている)に記載されているもので、固体コアおよびリン脂質からなる外殻層を有するリポスフェアーと呼ばれるものである。
担体はポリマーの徐放系であってもよい。生体内分解性合成ポリマー類はヘパリナーゼの調節性放出をおこすのに特に有用である。微小被包された(microencapsulated)薬剤の注射のために微小被包(microencapsulatation)を用い、調節性放出を与えることができる。微小被包のための特定のポリマーの選択には多数の要因が寄与する。ポリマー合成および微小被包過程の再現性、微小被包物質およびそのプロセスのコスト、毒物学的プロフィール、種々の放出動態のための要求事項およびポリマーと抗原との物理化学的適合性が考慮しなければならない全要因である。有用ポリマーの例はポリカルボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオルトエステルおよびポリアミドで、特に生体内分解性のこれらのものである。
薬剤の担体として選択されることが多いのはポリ(d、1−ラクチド−コーグリコライド)(PLGA)である。これは、侵食性縫合糸、骨板およびその他の一時的人工補装具に医学的に使用された長い歴史をもつ生体内分解性ポリエステルであって、毒性は現れていない。ペプチドおよび抗原を含める非常に種々様々の医薬品がPLGAマイクロカプセルに処方されてきた。PLGA微小被包プロセスは油中水形乳剤の相分離を利用する。ヘパリナーゼは水溶液として作られ、PLGAは塩化メチレンおよび酢酸エチルのような適した有機溶媒に溶解する。これら2つの混合することのできない溶液を高速撹拌機によって共乳化する。次いでポリマーのための非溶剤を加え、水性滴の周囲にポリマーを沈殿させて、初期マイクロカプセルを形成する。そのマイクロカプセルを集め、1群の作用物質(ポリビニルアルコール(PVA)、ゼラチン、アルギネート、ポリビニルピロリドン(PVP)、メチルセルロース)の1つで安定化し、真空乾燥かまたは溶媒抽出によって溶媒を除去する。被包のためのその他の手段は、噴霧乾燥、共沈殿および溶媒抽出を含める。
投与方法
ヘパリナーゼ酵素は注射、注入または灌流によって投与できる。典型的には注射器かカテーテルを用いて注射を行う。注射器かカテーテルを用いて、ヘパリナーゼを血管、組織または器官の諸領域に局所的に投与することができる。局所的炎症と診断された患者を、これらの方法によってヘパリナーゼを彼らの脈管系に導入することによって治療することができる。ヘパリナーゼを手術の前または手術と同時に投与して、生成する炎症反応を減らすこともできる。その上、移植手術に先立って、ドナー臓器にヘパリナーゼ製剤を灌流し、移植後の再灌流時の炎症を減らすことができる。
本発明は下記の非制限的例を参照することによってより詳細に理解できる。
実施例
実施例1:ヘパリン/ヘパラン硫酸を放出させるための内皮細胞のヘパリナーゼによる処理
ヘパリナーゼはヘパリンおよびヘパラン硫酸部分を細胞表面および細胞外基質プロテオグリカンから切断することによって細胞表面および基底膜を変化させる。これらのグリコサミノグリカンの除去は、白血球上のL−セレクチンの内皮プロテオグリカンへの結合を減らすことによって白血球−内皮相互作用(白血球回転)を減らす。その上、ヘパリンおよびヘパラン硫酸の除去は、ケモカインの内皮への結合を減らし、それは白血球の活性化、粘着(sticking)および管外遊走を減らす。35S−ヘパリン/ヘパラン硫酸プロテオグリカンを有するウシ角膜内皮細胞を生成し、その後、これらの放射性標識プロテオグリカンをフラボバクテリウム ヘパリナーゼIIIで消化すると、その酵素の細胞表面に与える効果の定性的評価ができる。細胞表面プロテオグリカンをヘパリナーゼIIIで消化すると、ヘパリンもヘパラン硫酸部分も放出される、なぜならばこれらの部分は同じ、分岐していない炭水化物鎖上に散在しているからである。35S−ヘパリン/ヘパラン硫酸の著量がヘパリナーゼIIIの処理によって溶解性になった。
24ウェル皿に一次ウシ角膜内皮細胞を播種することによって35S硫酸含有内皮細胞層を作った。これらを、10%ウシ胎児血清および5%子ウシ血清を含むDMEM中で集密する1日前まで増殖させた。集密の1日前に、細胞を10%ウシ胎児血清、5%ウシ血清、4%デキストラン、および25mCi/mlNa2 35SO4を補充したフィッシャー培地に入れて10倍に希釈し、1日あたり0.5ng/mlのbFGFを添加して3日間培養した。近集密細胞による標識の導入は、その標識を細胞内および細胞上に局在し、基底膜に取り込まれる35S−標識を最小にする。
35S−硫酸塩を含む内皮細胞を、二重ウェル中で、600μlの燐酸緩衝食塩液、または燐酸緩衝食塩液中1.0IU/ml濃度のヘパリナーゼIIIで処理した。消化は37℃で5、30または60分間行った。指示された消化時間後、消化溶液400μlを各ウェルから取り出し、オートサンプラーを備えた、ベックマンシステムゴールド(Beckman System Gold)HPLCによってコントロールされたBio−sil SEC125−5ゲル濾過カラムで分画化した。流速は1ml/分で、1mlフラクションを集めた。各フラクション中にある35S−硫酸塩の量を、各フラクションのアリコートをパッカード1600TR液体シンチレーションカウンターで測定することによって決定した。標識化、未処理対照溶液を分画化し、同じ方法で測定した、そして各フラクション中の放射性物質量(バックグラウンド)をヘパリナーゼ消化サンプルからのフラクション中に存在する量から引いた。ヘパリナーゼIII処理によって放出された各フラクション中の細胞表面35S−標識ヘパリン/ヘパラン硫酸の量を図1に示す。
実施例2:ヘパリナーゼ処理した内皮細胞上および基底膜中のヘパリン/ヘパラン硫酸部分の除去程度および置換速度の決定
増殖因子、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)は十分特徴づけられたヘパリン結合蛋白質であり、それは細胞表面および細胞外基質中のプロテオグリカンのヘパリン部分に結合することが知られている(マッカラナ(Maccarana)ら、J.Biol.Chem.268巻、23898−23905ページ、1993)。125I−標識bFGFの細胞表面および基底膜プロテオグリカンへの結合を用いて、不活性化およびIL−1b活性化内皮細胞層およびそれらの基底膜からヘパリナーゼI、II、またはIIIによって除去されるヘパリン/ヘパラン硫酸の量を測定した。細胞表面および基質膜のヘパリナーゼ消化はヘパリン部分とヘパラン硫酸部分の両方を除去する、なぜならばこれらの部分は同じ、分枝していない炭化水素鎖上に散在しているからである。125I−標識bFGF結合をこの実験にも用い、ヘパリン/ヘパラン硫酸部分がヘパリナーゼI、II、またはIIIで処理した内皮の細胞表面および基底膜上で置換される速度を測定した。ヘパリン/ヘパラン硫酸の大部分はヘパリナーゼを用いて除去することができた(70から90%;図2、図3、および図4)。これは、ヘパリナーゼの使用によって内皮からほぼ完全にヘパリン/ヘパラン硫酸をなくすことができることを示すものである。1時間のヘパリナーゼ処理では、ヘパリン/ヘパラン硫酸の置換速度は本来二相性である。消化したヘパリン/ヘパラン硫酸の40から50%の置換が数時間以内におきる。涸渇したヘパリン/ヘパラン硫酸のさらなる置換が残りの実験時間中、より遅い速度でおき、完全な置換は12から16時間でおきる。3および5時間のヘパリナーゼ処理は細胞表面上のヘパリン/ヘパラン硫酸の置換をより遅い速度でおこした(図3および図4)。これは不活性化内皮で最も顕著であった。IL−1活性化内皮で図3および4に描かれた実験結果では、3つの処理時間(1、3および5時間)すべてが、図2に描かれた実験結果に認められるものより低い置換率を与えた。
このデータは、ヘパリナーゼ処理によってL−セレクチン結合および固定化ケモカイン勾配形成の顕著な阻害がおきることを示し、これは局所的炎症反応の顕著な阻止を導く。また、3および5時間の処理期間はヘパリン/ヘパラン硫酸置換速度を低下させて、軽減された炎症反応の期間を著しく延ばすことができる。
ヒト内皮細胞系を、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、および20%胎児血清を含むRPMI培地、0.25ml/ウェルの48ウェル皿で、集密的となるまで増殖させた。半数のウェル中細胞を50ng/mlのIL−1bを10μlで4時間活性化した。活性化後、全ウェルをHBSSで3回洗い、培養培地(RPMI培地、25mMトリスHCl pH8、25mM HEPES pH7.4、および0.1%BSA)または培養培地で薄めた0.1IU/mlのヘパリナーゼI、IIまたはIIIで、37℃で5%CO2中で60分間処理した実験結果が図2に描かれ、あるいは、培養培地で希釈した1.0IU/mlのヘパリナーゼIまたはIIIで、37℃、5%CO2中、60分間処理(酵素のとりかえなし)したもの、1時間毎の酵素のとりかえを3または5回行った結果が図3および4に描かれた。酵素処理後、ウェルをHBSSで3回洗い、1%ペニシリン/ストレプトマイシンおよび20%胎児血清を含むRPMI培地で、±IL−1b、37℃、5%CO2中で図2に示す時間培養した。ウェルを再びHBSSで3回洗い、培養培地0.1mlを各ウェルに加え、プレートを氷上で5分間冷やした。すべてのウェルに125ng/mlの125I−bFGFを20μl、および20μg/ml未標識bFGFを20μl加えた。若干の対照ウェルに、10mg/mlヘパリン15μlも加え、非特異的バックグラウンド結合を測定した。プレートを氷上で40分間インキュベートし、冷HBSSで2回洗った。0.25mlのLAB(25mM HEPES pH7.4および2M NaCl)を各ウェルに加えてbFGFを可溶化し、その後それをチューブに集めた。この段階を繰り返し、チューブの内容物をガンマ計数管でカウントした。非特異的バックグラウンド結合の量を各未処理対照および処理サンプルから差し引いた。サンプルのカウントを対照カウントで割り、結合の起こったパーセントを決定した。結果±標準誤差(SE)を図2、図3、および図4に示している。
実施例3:ヘパリン/ヘパラン硫酸結合ケモカイン、IL−8を放出させるための活性化内皮細胞層および基底膜のヘパリナーゼによる処理。
炎症組織に隣接する活性化内皮によって形成される結合ケモカイン勾配の除去は、この組織内の好中球の蓄積を阻止し、そして炎症反応を軽減する。ケモカイン、IL−8は、炎症組織から分泌されるIL−1bおよびその他のサイトカインおよび化学誘引物質によって活性化された内皮によって産生される。もしも内皮に結合したIL−8がヘパリナーゼ処理によって可溶化し得るならば、それは炎症領域から血流によって除去され、局所的炎症反応は阻止される。In vitroでの0.5から3倍を超える内因性、固定化IL−8(分泌されるIL−8に対し)が、ヘパリナーゼI、IIまたはIIIによって、またはヘパリナーゼIおよびIIIによって活性化内皮から除去され、可溶化されることは、結合ケモカイン勾配をヘパリナーゼ処理によって破壊することができることを示している。
ヒトコラーゲンの3mg/ml溶液、1mlを用いて12ウェルプレートのウェルを覆った。残っているコラーゲン溶液を吸引により除去した。集密な10mlプレートからのヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC;1ないし8継代培養したものを用いた)をトリプシン処理し、20%胎児血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、100μg/mlヘパリン、10μg/ml上皮成長因子および200μg/ml内皮細胞増殖因子を含むRPMI培地で1から7倍に希釈した。希釈細胞1mlをコラーゲン被覆12ウェルプレートの各ウェルに加えた。細胞を37℃で、5%CO2中で集密的となるまで増殖させた。増殖期間中、培養培地を1日おきに変えた。ケモカイン−アッセイの前日に、培地をヘパリンを含まないRPMI培地1mlと交換した。
内皮層を活性化するために、RPMI培地(胎児血清、上皮成長因子、内皮細胞増殖サプリメントおよびヘパリンを除く)で希釈した50μg/mlのヒト組換えIL−1bおよび2%BSAを非対照(non-control)ウェルに最終濃度2ng/mlになるまで加えた。そのマルチウェル プレートを37℃で5%CO2中、4時間インキュベートした。培地をすべてのウェルから除去し、ウェルをHanks Balanced Salt Solution(HBSS)で2回洗った。0.5mlのRPMI培地(胎児血清、上皮成長因子、内皮細胞増殖サプリメントおよびヘパリンを除く)および2%BSAを図3に示された時点でウェルに加えた。指示された時間後、ウェルを空にし、1mlのHBSSで1回洗った。ヘパリナーゼI、II、またはIIIまたはヘパリナーゼIおよびIIIを1IU/ml含む、または含まない0.5mlのHBSSをウェルに加えた。プレートをヒートブロック上で時々撹拌しながら15分間37℃でインキュベートした。15分後、上澄液を集め、IL−8をアッセイした。Perseptive Diagnostics社の酵素結合免疫測定(ELISA)システムを用いて上澄液のIL−8濃度を測定した。メーカーの推薦するプロトコルにしたがった。ELISAプレートの各ウェルに上澄液90μlおよび5M塩化ナトリウム10μlを用いた。各洗浄段階に、ウェルあたり150μl洗浄溶液を3回繰り返して用い、各反復の間に2−3分撹拌した。IL−1b誘導性ヘパリナーゼI、IIまたはIII処理内皮 対 IL−1b誘導性未処理内皮からの上澄液のIL−8濃度のパーセント差を図5に示す。その他に、IL−1b誘導性、ヘパリナーゼI、IIまたはIII処理内皮からの上澄液中のIL−8濃度も図5に示す。
実施例4: 好中球粘着を阻止するための内皮細胞層のヘパリナーゼによる処理
炎症部位に好中球を集中させるために、内皮細胞表面分子は回転する好中球を活性化して、後毛細管細静脈の壁にしっかり結合させる。ヘパリン/ヘパラン硫酸に結合するケモカイン類が好中球を活性化してミクロキャピラリーにしっかり結合させる重要なシグナル分子として確認された。下記のin vitroでの好中球粘着アッセイシステムは、好中球の内皮細胞への粘着に影響する条件を分析するのに一般に用いられている。このアッセイに用いられる活性化ヒト内皮細胞層のヘパリナーゼI、IIまたはIIIによる処理は、好中球の内皮への粘着レベルの有意な減少を起こした。これらの結果は、脈管構造のヘパリナーゼ処理がミクロキャピラリーにおける局所的好中球蓄積を阻止し、炎症反応を阻止することを示している。
ヒト好中球の分離
静脈血25mlを健康ドナーから採取し、1/10容量の0.1Mクエン酸ナトリウム、pH7.4、に加え、塩化カルシウムおよび塩化マグネシウムを含むダルベッコ(Dulbecco)の燐酸緩衝食塩液(D−PBS)25mlで希釈した。希釈した血液10mlアリコートを50mlチューブ中のFicoll-Paque 10ml上に重層にした。このチューブを400×gで30分間20℃で遠心分離し、ブレーキをかけずに自然に停止させた。上層を除去し、155mM NH4Cl、10mM KHCO3および0.1mM EDTAの溶液(pH7.4)3容量中に4℃でペレットを再懸濁し、赤血球を溶解した(lyse)。数分後チューブを逆さにし、7から8分後に内容物は黒変した。10分後、チューブを400×gで4℃で5分間再び遠心分離した。上澄液を吸引し、ペレットを0.5%ヒトアルブミンを含むNH4Cl溶液に再懸濁した。上澄液を集め、容量を50mlにした。細胞懸濁液を氷上で15分間インキュベートし、400×g、4℃で5分間遠心分離した。上澄液を吸引し、ペレットを、0.5%ヒトアルブミンを含むNH4Cl溶液に再懸濁した。その懸濁液を集め、容量を50mlにした。その細胞懸濁液を氷上で15分間インキュベートし、4℃で400×gで5分間遠心分離した。上澄液を除去し、もしもペレットがまだ赤かったならば、それを再び0.5%ヒトアルブミンを含むNH4Cl溶液で洗った。最後に細胞を、5mg/mlのヒトアルブミンを含むD−PBS中に再懸濁し、使用するまで冷蔵した。懸濁液の10μlアリコートをトリパンブルー10μlで希釈し、細胞を血球計でカウントし、懸濁液の体積あたりの生細胞の数を測定した。
好中球の標識化
10×106好中球の懸濁液を、5mg/mlヒトアルブミンを含むPBS(CaもMgも含まず)2ml中に作った。BCECF−AM(分子プローブ)を懸濁液に加え、最終濃度46μMとした。好中球を設定温度37℃の水浴で30分間インキュベートし、その後それらを遠心分離し、5mg/mlヒトアルブミンを含むPBS(Ca、Mg含まず)で2回すすいだ。それらを最後に10mlのRPMI+20%ウシ胎児血清中に37℃で再懸濁した。
内皮細胞のヘパリナーゼ処理
継代数3のHUVECをトリプシン処理し、数えた。細胞を96ウェルプレート中のRPMI+20%ウシ胎児血清+95μg/mlヘパリン+ECGS+EGFに1ウェルあたり5×104個の細胞を平板培養した。それらを37℃、5%CO2で18時間増殖させた。その時点で増殖培地をRPMI+20%ウシ胎児血清(2ng/ml IL−1b)に代え、4時間増殖させた。それから細胞をHBSSですすぎ、37℃、5%CO2でHBSS中の0.1IU/mlのヘパリナーゼI、IIまたはIIIで1時間処理した。
好中球粘着アッセイ
処理期間後、HUVECをHBSSで1回洗った。好中球懸濁液200μl(200,000好中球に相当する)を処理または対照HUVECの各ウェルに加えた。プレートを30分間、37℃、5%CO2に保った。そのプレートを逆さにして250×gで5分間遠心分離することによって粘着期間を停止させた。200μlのPBS(CaもMgもなし)+5mg/mlヒトアルブミンを各ウェルに加え、プレートをFluorolite 1000蛍光プレートリーダーで電圧2.5Vで読んだ。放射フィルターは535nm±35、励起フィルターは485±22であった。
データ分析
標準曲線は、PBS(CaもMgも含まず)+5mg/mlヒトアルブミンに再懸濁した既知量のBCECF−AM−染色好中球を、集密HUVEC層を含む別の96ウェルプレートのウェルに入れることによって作成した。蛍光単位を好中球の量に対してプロットし、勾配を計算した。標準曲線を用いて対照およびヘパリナーゼ処理ウェル中の結合好中球の数を決定した。ヘパリナーゼI、IIおよびIIIで処理したIL−1b活性化HUVEC層と比較HUVEC層のパーセント差を図6に示す。
実施例5:好中球管外遊走を阻止するための内皮細胞層および基底膜のヘパリナーゼによる処理
血液からの白血球が隣接内皮を通って遊出すること(管外遊走)により炎症組織に蓄積する。内皮細胞層は炎症組織によって活性化され(サイトカインおよび化学誘引性物質を媒介し)、変化した内皮は炎症組織に白血球蓄積が起きるように作用する。白血球を活性化して管外遊走させるために、そして白血球の遊走を炎症組織に向けるために、活性化内皮はその細胞表面上およびその基底膜中に固定化ケモカイン勾配を形成する。下記のin vitroでの好中球遊出アッセイシステムは好中球管外遊走に影響を与える条件を分析するために一般的に用いられる。このシステムに用いる活性化ヒト内皮細胞層のヘパリナーゼI、IIまたはIIIでの処理は内皮を通過する好中球遊走レベルを著しく減少させる。これらの結果は、脈管構造のヘパリナーゼ処理が局所的好中球の蓄積および炎症反応の阻止することを示している。
好中球管外遊走アッセイ
好中球を実施例4に記載したように分離した。ヒトフィブロネクチンを血清を含まないRPMI培地中に0.4mg/mlとなるよう溶解した。孔の大きさ3μmまたは8μmのフィルターインサート(inserts)(6.25mm)を4μg/cm2のヒトフィブロネクチンで室温で1時間被覆し、蒸留水ですすいだ。24ウェルプレートのウェルに、20%ウシ胎児血清、95μg/mlヘパリン、200μg/mlECGSおよび10ng/mlEGFを含むRPMI培地0.3mlを充填した。被覆したフィルターインサートをそれらのウェルに置き、完全RPMI培地0.3ml中8×104個のヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC;継代1ないし7で用いる)を被覆フィルターインサート上で平板培養した。細胞を48から65時間37℃、5%CO2中で増殖させた。フィルターインサートおよびウェルからの培養培地を、増殖期間中1回、ヘパリンを含まないRPMI培地に変えた。増殖期間後、陰性対照インサートを除くすべてのインサートの下の培養培地を除去し、ヘパリンおよび増殖因子を含まないがヒト組換えIL−1b2ng/mlは含む新鮮培養培地に置き換えた。陰性対照インサート下の培養培地を新鮮培養培地に置き換えた。マルチウェルプレートを37℃、5%CO2で4時間インキュベートした。培地をインサートおよびウェルから除去し、細胞をHank's Balanced Salt Solution(HBSS)で1回すすいだ。フィルターおよびウェルを0.3mlのHBSS溶液で満たし、処理インサートはHBSSの代わりにヘパリナーゼI、IIまたはIIIを含むHBSSを受けとった。この処理は図1に示す時間に、37℃で5%CO2中で行われた。溶液を除去し、細胞をHBSSで1回すすいだ。ヘパリンおよび増殖因子を含まない新鮮培養培地0.3mlをウェルに加え、ヘパリンおよび増殖因子を含まない培養培地0.3ml中に調製したばかりのヒト好中球1.5×106をすべてのインサートに加えた。プレートを37℃で5%CO2中で図3に示す時間インキュベートした。この時間の後、インサートを除去し、底を0.3mlD−PBSで1回すすいだ。ウェルの内容物を除去し、ウェルをD−PBS 0.3mlで洗った。すすいだ液をウェル内容物に加え、合一した内容物を容量1mlにした。これらのサンプルを、ミエロペルオキシダーゼ活性アッセイにかけるまで、16時間まで冷凍した。
ミエロペルオキシダーゼアッセイ
好中球懸濁液のアリコートをD−PBSで希釈することによって、容量1ml中に1×105および1×106の間の好中球を含む標準を作った。0.5%臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムおよび0.5%トリトンを含む50mM燐酸カリウム、pH6.7、4mlを各標準および解凍サンプルに加えた。各サンプルまたは標準0.1mlをプラスチックキュベットに加えた。0.167mg/mlのo−ジアニシジン塩酸および0.0005%過酸化水素を含む50mM燐酸緩衝液、pH6.0、2.9mlをキュベットに加えた。460nmにおける吸光度の変化を30秒ごとに3分間、分光光度計を用いてモニターした。
標準から得られた比率の変化を用いて、吸光度 対 好中球数の増加速度曲線を作成した。この曲線を用いて各サンプル中の、処理または未処理内皮層を通って遊走した好中球数を定量化した。遊走する好中球の数を1.5×106で割り、好中球遊走パーセンテージを決めた。
データ分析
このアッセイにおけるヘパリナーゼ処理の効果は、HUVECのフィルター表面の被覆程度に依存した。被覆の程度は、管外遊走実験後に行った色素排除試験に基づいており、それは1回の実験でフィルターごとに若干の変動があった。一般に、フィルターが、すき間なく詰まったHUVEC層で密に覆われている場合、管外遊走する好中球のパーセンテージは低く(<10%)、処理および未処理ウェルの差は統計的に有意ではなかった(ウェル間変動性が大きい)。フィルターの広い面積がHUVEC層で覆われていない場合(フィルターの30−40%と推定)、好中球の多数(40−60%)がフィルターを通って遊走するが、1時間のヘパリナーゼ処理ではその遊走を阻止するほど有効ではない。この遊走は管外遊走(近隣内皮細胞間に押し出される好中球として機能的には説明される)には匹敵しない。もしもフィルターの75から90%がHUVECで覆われるならば、一般に好中球の15から30%が管外遊走し、これらの条件下では1時間のヘパリナーゼ処理が最も有効であることがわかった。スチュデントのt検定を用いて、実験を分析して1時間のヘパリナーゼ処理で有意な効果(p<0.5)が認められるかどうかを分析した。これらの実験のデータをまとめ、図7に示す。図7に示される15分間のヘパリナーゼ処理のデータは1時間の処理と同じ実験から誘導される。スチュデント−ニューマン−クールズ検定(Student-Newman-Keuls test)を用いて同じ酵素を用いる異なる処理間の差の有意性(p<0.05)を調べた。図7では有意差は星印(*)で示される。
実施例6:好中球管外遊走を阻止するための内皮層および基底膜のヒトヘパリナーゼ(β−トロンボグロブリン)による処理
β−トロンボグロブリンの市販製剤はケモカインCTAP−IIIおよびNAP−2の混合物である。非生理学的pH(pH5.8−6)では、これらのケモカインはヘパリナーゼ活性を有し、一方pH7ではそれらはヘパリンに結合し、白血球に対する化学走性サイトカインとして作用する。市販のβ−トロンボグロブリン製剤のヘパリナーゼ活性をpH5.8およびpH7での放射性35SO4標準ECMの消化によって分析した。これらの製剤はpH5.8においてのみ顕著なヒトヘパリナーゼ活性を示した。次いで後実施例5に記載したin vitroでの管外遊走アッセイシステムにそれらを用いて、そのヒトヘパリナーゼ活性が内皮細胞層を横切る好中球の管外遊走を阻止できるかどうかを調べた。活性化ヒト内皮細胞層のヒトヘパリナーゼ(β−トロンボグロブリン)による処理は好中球管外遊走の顕著な減少をおこした。これらの結果は、脈管構造をヒトヘパリナーゼで処理すると局所的好中球蓄積および炎症反応が阻止されることを示した。
標識化基質上のβ−トロンボグロブリンの活性
市販のβ−トロンボグロブリンのpH5.8およびpH7におけるヘパリナーゼ活性を、35SO4−標識化ヘパリン/ヘパラン硫酸のEMCからの放出によって試験した。1から8継代でのウシ角膜内皮細胞を集密的プレートから1:10に分離し、4ウェルプレートにおいて10%ウシ胎児血清、5%ウシ血清および4%デキストランを加えたDMEM低グルコースに播種した。それらの皿に、集密に達する1週間前に1ng/ml bFGFを3回加えた。集密に達する直前に、H2O中のNa2 35SO4を1mCi/mlになるようにDMEM低グルコースで希釈したものを細胞に加え、10%ウシ胎児血清、5%子ウシ血清および4%デキストランを含むフィッシャー培地中での最終濃度を25μCi/mlとした。3ないし4日後、再び標識を与えた。プレートは集密後12から14日間は乱さないようにした。基質を収穫するために、培地を除去し、0.5%トリトン、0.02M NH4OHのPBS溶液(CaもMgも含まず)に代えた。この溶液を除去し、基質をPBS(CaもMgも含まず)で3回洗った。プレートを4℃で保存し、PBSで覆った。これらの基質を1年以内に使用した。
ウェルマーク(Wellmark)(製品♯41705)またはカルビオケム(Calbiochem)(製品#605165)からのβ−トロンボグロブリンを標識ECMの消化のために使用した。酵素100μgを水(ウェルマーク)またはPBS(カルビオケム)1mlに溶解した。その後の希釈はpH5.8または7のPBSで行った。基質をPBSのみ、または1または5μgのβ−トロンボグロブリンを含むPBS250μlで覆った。基質をCO2インキュベーター中で3時間インキュベートした。100μlアリコートを各ウェルから取り、計数した。各酵素処理基質から放出される放射能の量を未処理基質と比較し、結果を図8に示す。
β−トロンボグロブリン処理をしたHUVECを通過する好中球の遊走
HUVECをフィルターインサート上に増加させ、実施例5に記載したように活性化した。pH5.8のPBS中の5μgのβ−トロンボグロブリン、またはPBSのみをHUVEC層に1時間適用した。好中球をフィルターの上に加え、管外遊走好中球の数を実施例5に記載のように定量化した。ヒトヘパリナーゼ処理の好中球管外遊走への影響を図9に示す。
実施例7:虚血/再灌流後の白血球−内皮細胞相互作用を阻止するラットのヘパリナーゼによる処理
この実施例はin vivoにおける白血球挙動に与えるヘパリナーゼIIIの影響を示す。炎症性組織における白血球蓄積の3つの重要なメカニズム;白血球回転、粘着、および管外遊走、を虚血後のラット骨格筋微小血管系において分析した。虚血前に血管系をヘパリナーゼIIIで前処理し、ヘパリナーゼIIIの血漿濃度を再灌流中一定に維持すると、白血球回転、粘着および管外遊走を有意に減らせることがわかった。この実施例は、血管系のヘパリナーゼ処理がミクロキャピラリーおよびその周囲組織における好中球蓄積を阻止することを示す。In vivoヘパリナーゼ処理は炎症反応の減少をもたらす。この実施例によっても証明されるように、ヘパリナーゼ処理は虚血後再灌流された筋肉内の微小血管系の灌流を有意に増加させた。好中球蓄積の減少に加えて、増加した微小血管系の灌流は筋肉組織の回復にプラスの影響を与え、虚血/再灌流(すなわち炎症)事象の結果にプラスの影響を与える。
包括的解説
約1IU/mlの血漿中レベルを確立するために、パイロット研究を行い、我々のin vivo研究に必要な5時間にわたってヘパリナーゼを注入する影響を試験した。前に報告した3時間の虚血後の白血球挙動に関する文献(フォルブス(Forbes)ら、1996、Microvascular Research 51巻;275−287ページ)は、完全無傷および疑似処理ラットに関するデータを含む。方法および時期はこの以前の研究および本研究の3時間虚血で同じだったから、ヘパリナーゼ処理の効果はこれまでに公表された結果から得られた完全無傷試験結果および疑似試験結果に匹敵するであろう。2時間の虚血プロトコールでは、追加の完全無傷および疑似処理ラットを分析した。
ヘパリナーゼのin vivo効果を直接研究するために、我々は生体内ビデオ顕微鏡をラット後肢の長指伸筋に用いた。この分析はそれぞれ2または3時間の無流(no-flow)虚血の後におきた105または90分の再灌流の期間中に行った。このような虚血/再灌流(I−R)期間は、白血球−内皮細胞相互作用をおこすのに十分な炎症反応を骨格筋におこす。
方法
225から250gの体重の雄ウィスターラットをハロタン(1%−1.5%)吸入によって麻酔し、頸動脈および頸静脈にカニューレを挿入し、それぞれ血圧を検査し、液体を注入した。ラット後肢の長指伸(EDL)筋を生体内顕微鏡のために準備した。つまり、顕微鏡の台の上に横たわっている麻酔ラットで、覆っている皮膚を反転し、前脛骨筋と腓腹筋とを分離することによってEDL筋を露出させた。縫合糸を筋肉の遠位腱の回りに結び、顕微鏡台上に置かれた生理食塩液浴中に筋肉を反転させた。正常な筋肉温度および体温をヒートランプによって維持した(すなわち、筋肉は32℃;体温は37℃)。筋肉をガラスカバースリップによって覆い、露出したすべての組織をサランラップで覆い、脱水を防いだ。生体内ビデオ顕微鏡のためにEDL筋を準備し、標本作製法によって生じた充血後に微小血管血流が正常に戻るため30分間回復させた後、2本以上の後毛細管細静脈を各々含む1−2視野を選んだ。これらの視野を実験期間中用い、白血球フロー挙動の一過性変化を測定できた。低倍率を用いて、これらの視野の1分間の記録を作り、個々の毛細血管内のRBCフローに関する情報とした。低倍率記録後、後毛細管細静脈の視野を高倍率で1分間記録した。このような視野のビデオ記録は、微小循環パラメーターの“オフライン”分析を可能にする。こうして灌流毛細血管密度および白血球のフロー挙動(単位面積あたりの粘着、回転および管外遊走数)のコントロール値が測定された。
ヘパリナーゼIIIの血漿レベルをヘパリナーゼIII ELISAを用いて測定する。ヘパリナーゼIII ELISAは定量的2抗体サンドウィッチ検定法である。親和性精製抗ヘパリナーゼIII ウサギ抗体をミクロタイタープレート上にコーティングする。ウェルを洗い、37℃、ブロッキング緩衝液(TBS、1%BSA+1%Tween20)で2時間インキュベートする。3回洗った後、標準およびサンプルをウェルに加え、存在するすべてのヘパリナーゼIIIを固定抗体によって結合する。未結合物質をそれから洗い去り、ビオチン標識抗ヘパリナーゼIII ウサギ抗体をウェルに加える。過剰の抗体を洗浄によって除去する。ペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジンを加え、ウェルに存在するすべてのビオチンコンプレックスに結合させる。全ての未反応ストレプトアビジンを洗い流した後、TMBペルオキシダーゼEIA基質キット(Biorad, CA)の説明書に記載の方法によって、水性DMF中の過酸化水素および3、3’、5、5’テトラメチルベンチジンを含む基質溶液をウェルに加え、サンプル中のヘパリナーゼIIIの量に比例して発色する。1N H2SO4溶液は反応を停止し、450nmでの吸光度を測定する。
特定プロトコル
1組のラットに静脈カテーテルを介してヘパリナーゼIIIを3ml/hrの速度で5時間注入し、血液中のヘパリナーゼレベルを1.0IU/mlに維持した。そのようなパイロット研究により0.33IU/g体重/hrがこの目的には適していることが確認された。
微小血管血流および白血球挙動を合計90から105分の再灌流期間中15分毎に記録した。血液サンプルをヘパリナーゼ投与前と再灌流中に取り、正しい血漿ヘパリナーゼ濃度を確かめた。
統計的分析
すべての場合に平均値はそれらの推定値の標準誤差と共にあらわされる。分散分析(ANOVA)を用いて比較し、その後、適していれば、シェフェの検定を臨時目的の分析として用いた。p<0.05を有意と仮定した。
結果
約1IU/ml(活性に調整)の血漿濃度が注入中に得られた、そして最後の2時間の注入の期間中血漿レベルの増加傾向があるとはいえ、血漿濃度は一定のままであった(図10)。ヘパリナーゼIIIの長期注入は少なくとも血圧または呼吸速度に関しては不都合な副作用をもたないようにみえる。
虚血3時間後、回転白血球(Lr)の数は疑似I−Rラットでは(14.77±1.33)、完全無傷ラット(5.66±0.11)に比較して有意に増加した。これらの再灌流中の濃度では、平均回転白血球数は疑似および完全無傷ラットで90分間の再灌流期間中一定のままであった(図3)。3時間の虚血にもかかわらず、ヘパリナーゼIII処理ラットの後毛細管細静脈内の白血球回転の変化は認められなかった。実際、ヘパリナーゼ処理後の回転白血球の平均数(2.81±0.64)は、90分間の観察期間中、完全無傷ラットにおけるよりも少ない傾向があった(図11)。
後毛細管細静脈の壁に粘着する白血球数(Ls)は疑似I−Rラットでは漸増し、止血帯を緩めて45分以内には一定レベルに達する(3時間虚血)。しかし、ヘパリナーゼIII処理ラットにおける粘着白血球数は虚血後変化を示さず、そして完全無傷ラットとの有意差はなかった(図12)。
ヘパリナーゼIII処理後の粘着白血球の少ない数に基づいて予想されるように、管外遊走白血球の数(Le)は3時間の虚血後の再灌流中に変化なかった(図13)。疑似および完全無傷ラットのLeは3時間虚血プロトコール中は得られなかった。2時間の虚血プロトコール中、ヘパリナーゼ処理ラットのLeは完全無傷ラットのそれより高かったが、疑似処理動物におけるLeよりは有意に低かった。このデータは図14にヘパリナーゼおよび疑似処理ラット 対 完全無傷ラットのLeにおけるパーセント差として示される。
3時間の虚血後の止血帯を緩めた後、疑似およびヘパリナーゼIII処理ラット両方の微小血管灌流(CDper)は完全無傷ラットで測定された灌流に比較して有意に減少した。しかし疑似ラットにおける灌流とは異なり、ヘパリナーゼIII処理筋での微小血管灌流は止血帯を緩めた30分以内に正常に戻った(図15)。
実施例8: 虚血/再灌流損傷のウサギ標本におけるヘパリナーゼIIIの心臓保護効果
序文
虚血は冠状血管床内に、筋細胞および内皮細胞レベルで顕著な損傷をおこす;これは血漿、およびその他の血液および細胞成分の間質腔への管外遊走に導き得る。多形核白血球は内皮細胞層を通って遊走することができ、好中球のこの結合組織障壁を通る遊走は血漿抗プロテアーゼが存在する場合でさえ、好中球由来蛋白分解酵素の作用に依存する。血流の回復は危険にさらされている(jeopardized)心筋に炎症細胞を速やかに近づける。内皮細胞への好中球の粘着は内毒素IL−1b(血管内皮を活性化し、白血球のための粘着分子を産生する)、または腫瘍壊死因子によって刺激される。多数の研究が、特に再灌流相中の血管または心筋細胞への好中球の粘着を阻止するために、モノクローナル抗体を含める種々の薬物学的介入方法を用いる可能性を模索している。好中球−細胞相互作用(好中球回転、粘着および管外遊走)の妨害は、虚血/再灌流後の細胞損傷程度を著しく減らすことがわかった。これは、虚血誘導性細胞損傷の病態生理学において炎症細胞が重要な役割を演ずることを示唆する。炎症細胞は、虚血発作中におきるものを超えて広がる筋細胞損傷(すなわち再灌流損傷)においても役割を演ずる。ヘパリナーゼ処理は好中球−内皮相互作用を防止するのに有効であるので(上の実施例を参照されたし)、ヘパリナーゼ処理によるウサギ心筋の再灌流損傷の防止をこの実施例で説明する実験で研究した。ヘパリナーゼIIIは、標的量25μg/mlを冠状動脈閉塞開始前または再灌流開始時に投与すると、組織壊死程度を減少させることがわかった。それより少量のヘパリナーゼIIIはこの動物標本の虚血−再灌流損傷には心臓保護効果をもたらさなかった。しかし、5μg/mlの標的量では梗塞の大きさの減少傾向があった。心臓血液動態または経壁的血流分布の顕著な変化なしに保護効果が得られた。
炎症反応が虚血エピソード、例えば(非制限的例ではあるが)心臓発作および卒中、の結果であるとき、この実施例は、炎症性事象の前または炎症時のヘパリナーゼ処理は組織損傷を減らすことができることを示す。その上、この実施例は、炎症性事象の最中に白血球蓄積から起きる組織損傷はヘパリナーゼ処理または前処理によって減らすことができることを示す。
方法
雄ニュージーランド白ウサギ(2.2−3.0Kg体重)をこれらの研究に用いた。ウサギをカナダ動物ケア委員会(Canadian Council on Animal Care)の実験動物のケアおよび使用の指針(Guide to the Care and Use of Experimental Animal)(1および2巻)にしたがって世話をした。それらに筋注用アセプロマジンマレート(5mg/Kg;オースチン研究所)を前投与し、ペントバルビタールナトリウムで麻酔した(25mg/Kg;i.v.;MTC Pharmaceuticals)。1時間おきに麻酔を追加した。気管にカニューレを挿入し、ウサギを室内空気で機械的に換気した。右頸静脈に薬剤(ヘパリナーゼIIIまたはビヒクル)投与のためのカニューレを挿入した;左頸静脈にカニューレを挿入して、血漿ヘパリナーゼレベル測定のための血液を採取するためのカニューレを挿入した。カニューレ(PE−90)を左頸動脈に置き、放射性標識ミクロスフェアーの注入中に基準とする動脈血を採取した。
左開胸術によって心臓を露出し、係蹄(4−0絹)を房室間溝と尖端との間の左回旋冠動脈中心の第一前側枝の周囲に置いた。絹縫合糸をタイゴン チューブ(Tygon tubing)を通し、冠動脈閉塞のための係蹄とした。尖端を介して置かれた液体充填カテーテルで左心室圧を得た。心臓血液動態を20分間安定させた。
縫合糸をプラスチックチューブを通して引っ張り、モスキート止血鉗子でクランプすることによって部分的心筋虚血をおこした。虚血は、部分的心外膜部チアノーゼの出現と、心電図(導出II)のST部の上昇によって、視覚的に検証した。心室細動が発生した心臓では、LVのおだやかなフリッキングによって正常な洞リズムが回復し(これらの実験では電気的除細動は用いなかった)、2回試みて除細動できなかった心臓はデータ分析から排除した。Gould(TA240)EasyGraph 4−チャンネル生理形態学的(physiograph)記録器(Interfax Inc.,Montreal,Quebec)を用いて、導出II心電図およびLV圧を実験中記録した。
実験プロトコル
ウサギを7種類の投与群に割り当てた;第1群ウサギには虚血開始前60分間生理的食塩液を与えた(i.v.);第2群ウサギには冠状動脈再灌流の開始時に生理的食塩液を与えた(r,v.);第3群ウサギには虚血開始前60分間ヘパリナーゼIIIを与えた(25μg/ml標的濃度、i.v.);第4群ウサギには冠状動脈再灌流開始時にヘパリナーゼIIIを投与した(25μg/ml標的濃度、i.v.);第5、6および第7群ウサギには0.25、1.25、または5.0g/mlのヘパリナーゼIIIのいづれかの標的レベルをそれぞれ冠状動脈再灌流の開始時に投与した。2つの処理群(第1群および第3群)では心筋虚血開始前60分間薬剤または生理的食塩液を静脈内注入し(4.0ml/hr)、それからハーバード注入ポンプ(Ealing Scientific,Montreal,Canada)を用いて連続的に注入した。残る実験群では、ビヒクルまたは薬剤注入を再灌流時に開始し、再灌流中に3時間続けた。7種類の処理プロトコルの薬剤を回転させる(rotating)処理を逐次的実験を行う特別の群にウサギを割り当てた。すべてのウサギは45分間の部分的冠状動脈閉塞にさらされ、その後180分間再灌流を受けた。
血漿ヘパリナーゼIII測定
第1および第3群ウサギでビヒクルまたは薬剤注入後ベースライン、30分および60分後に右頸静脈から血液サンプルを採取し、冠状動脈再灌流15、30、60、120および180分にも血液を採取した。残る実験群では血液をベースラインおよび冠状動脈再灌流15、30、60、120および180分に血液を採取した。血液サンプルを4℃で1500rpmで15分間遠心分離し、血漿を凍結し、その後の分析まで−20℃で保存した。ヘパリナーゼIII血漿レベルを実施例7に記載したように測定した。
経壁的血流
虚血性および非虚血性血管床への血流を、標準離脱法により、放射性標識ミクロスフェア(±15μm;NEN、ボストン、MA)を用いて測定した。各血流測定では、113Sn、46Sc、または85Sr(使用直前に渦巻きミキサーで機械的に撹拌した)のいずれかで標識した0.4−0.6×106ミクロスフェアを血液動態的定常状態の条件下で左心房に注入し、その後3mlの温生理的食塩液により2回フラッシュした(ミクロスフェアの左心房への注入はLV室における十分な混合を確実にし、ミクロスフェアの冠状循環への直接注入でおきる人為的流れを防ぐ)。頸動脈から基準動脈血サンプルをミクロスフェア注入の10秒前に開始し、その後2.6ml/分の速度で2分間続けて集めた。心筋血流分布を次のように評価した;1−ベースライン、2−冠動脈再灌流開始30分後、3−冠動脈再灌流180分後。組織および基準血液放射能を多チャンネル波高分析器(Cobra II,Canberra Packard)を用いて測定し、同位元素スペクトルの重なりを補正した。
梗塞の大きさの分析
実験プロトコルの終わりに、飽和塩化カリウム10mlの静脈注射によって心臓を拡張期で停止させ、心臓をすばやく摘出し、生理的食塩液中ですすぎ、ランゲンドルフ灌流装置上で大動脈を経てカニューレを挿入した。心臓を75mmHgで2、3、5−トリフェニルテトラゾリウムクロライドで37℃で20分間大動脈を経てex vivo灌流した。引き続き、動脈縫合糸を再び結び、モナストラルブルーを大動脈カニューレを介して逆行性に注入し、解剖学的リスクゾーンを描写できるようにした。心臓を次いで灌流装置から取り出し、その心房および右心室を切り取り、左心室を秤量し、緩衝10%ホルマリン中に浸漬することによって固定した。
死後研究
本研究の主な目的は、薬剤処理が梗塞の大きさ(解剖学的リスクゾーンの大きさに標準化する)に及ぼす影響をテトラゾリウム染色を用いて評価することであった。心臓の2mm切片を作り、LVスライスのアウトラインおよびテトラゾリウム陰性(すなわち梗塞)領域のアウトラインを透明なアセテートシート上にトレースした。解剖学的リスクゾーンの輪郭をモナストラルブルー色素の欠如によって描写し、透明なアセテートシート上にトレースした。各心臓で梗塞を解剖学的リスクゾーンの大きさに標準化した。総LV横断面積、リスク面積、梗塞面積は、トレースを拡大したもの(1.5×)から、IBM S/2コンピューターに連結したSummagraphics Summasketch Plus Bitpadを用いるコンピューター面積測定法(Sigma Scan;Jandel Scientific Inc.,Calif.)によって測定した。各スライスにおけるリスク容量、梗塞容量、およびLV容量をコンピューター面積測定法によって得た面積と、各心室切片の厚さとの和として計算した。系列的切片からの数値を合計してLV、リスクゾーンおよび梗塞ゾーンの総容量とした。
データ分析
冠状動脈閉鎖の前および後の血液動態的データの差を一元ANOVAを用いて検定した。心拍数・血圧積を心臓の代謝的要求の指標として用いた。梗塞容量、リスク容量、梗塞の大きさ、およびLV容量を一元ANOVAによって比較した。全体的群の差が検出される場合、ダンネットの多重比較検定を用いて対照との比較を行った。すべての統計的比較はパーソナルコンピューター用統計分析システムプログラム(SAS Institute,Cary,NC)で行った。確率(p)水準が0.5未満の場合を統計的有意と考えた。この研究のためのサンプルの大きさを決めるために、梗塞の大きさの最低15%減少(予想標準偏差8%)を検出するために0.90の検出力をもたらす“n/群”値を計算した。
結果
130匹のウサギを本研究に使用した;5匹のウサギが呼吸不全(n=1)、手術の失敗(n=1)、または回復不可能の心室細動(n=3)のために死亡した。36匹のウサギを用量−反応研究に含み、別の28匹を生化学的評価(心臓血液動態および血漿ヘパリナーゼIIIレベルは全体的統計分析に含んだ)に割り当てた。したがって、61匹のウサギを梗塞サイズ−データ分析に含んだ。
心臓血液動態変数を表1にまとめる。冠状動脈閉鎖開始前の心拍数、左心室収縮期および拡張期血圧および心拍数・血圧積(心筋酸素要求の指標)を投与群のすべてで比較した。再灌流60分の心拍数・血圧積(図16)は、再灌流時にヘパリナーゼIII(25μg/ml標的濃度)で処理したウサギにおいて比較的高いようにみえた(第4群)。しかし心臓血液動態は本研究の終わりには全動物で同様であった。
左心室重量、梗塞およびリスク容量、LV容量のパーセントとしてあらわした梗塞の大きさおよび解剖学的リスク面積を表3にまとめる。リスクゾーンの大きさに標準化した梗塞の大きさ(図17)は、ビヒクル前処理をした対照およびこの前処理をしなかった対照ではそれぞれ42.3±4.8(平均値±1SD)および40.0±5.3パーセント(p=NS)であった。ヘパリナーゼIII前投与および再灌流時におけるヘパリナーゼIII投与(25μg/ml標的濃度)は、それぞれ26.1±5.2および24.7±5.1パーセントの筋細胞壊死の有意な減少をおこした(ビヒクル処理対照に対しp=0.01)。虚血前に投与するか、または冠動脈再灌流時に投与した群の間では差は検出されなかった。0.5、1.25または5.0μg/ml標的濃度のヘパリナーゼIIIの投与は梗塞の大きさを制限しなかった;それらはそれぞれ42.8±6.5、39.1±5.4、および37.9±4.6パーセントであった。5.0μg/ml投与群でより梗塞が小さい傾向がわずかに見られた(p値は0.066)。
それぞれの投与群で投与したヘパリナーゼIII注入物レベルを図18に示す。25μg/mlの初回ヘパリナーゼIII標的量(すなわち治療量)を調べ、その後希釈を生理的食塩液で行い、それぞれの薬剤の希釈1:5、1:20、および1:100を行った。実際の血漿ヘパリナーゼIII濃度の時間的経過を図19に示す;ヘパリナーゼIII前処理および再灌流時処理は第3群および第4群において同様な血漿中薬剤濃度を示した。最初に前投与したウサギ(実験プロトコルの最初の3時間の間のみ薬剤を投与)では3時間の冠動脈再灌流後には、血漿ヘパリナーゼIII濃度は、かなり低めであった;最も重要なことは、その薬剤が冠動脈再灌流時に与えられていたということである。これは梗塞の大きさに関して第3群および第4群で得られた同様な結果を説明することができる。
Figure 0003713276
Figure 0003713276
数値は平均値±1SD。HR=心拍数、LVPsys=収縮期左心室圧、LVPdias=拡張期左心室圧、RPP=心拍数・血圧 積
Figure 0003713276
数値は平均値±1SD。1p(第6群に対して0.05)。
BASE=ベースライン流量測定値(すなわち虚血前)、RP=冠動脈再灌流。データはml/分/g湿重量であらわされている。
Figure 0003713276
数値は平均値±1SD。1p(対照に対して0.05)。Htwt=心室重量;AN=壊死面積、AR=リスク面積、ANAR=解剖学的リスク面積に標準化された壊死、ARLV=総LV面積に標準化されたリスクゾーン。
これらのデータは、局所的炎症反応を軽減するためにヘパリナーゼを含有する組成物の有用性を示す。
本発明の組成物および使用法の変更および変形は、この詳細な説明から当業者には明らかである。このような変更は次の請求の範囲内にあるものとする。

Claims (6)

  1. 虚血または再灌流損傷により生じる局所的炎症反応を軽減するための、脈管内投与用の、ヘパリナーゼ酵素と薬学的または獣医学的に許容可能な担体とを共に含むことを特徴とする医薬組成物。
  2. 前記担体がリポソーム、リポスフェア、プロテオソオーム、ミクロクフェア、マイクロカプセル、および生体内分解性ポリマーマトリックスよりなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 患者の組織での虚血または再灌流損傷から生じる局所的炎症反応を軽減する脈管内投与用の医薬の調製におけるヘパリナーゼ酵素の使用。
  4. 前記ヘパリナーゼ酵素が、フラボバクテリウム ヘパリナム(Flavobacterium heparinum)またはエシェリキア コリ(Escherichia coli)から過剰発現されたものであることを特徴とする請求項3に記載の使用。
  5. 前記ヘパリナーゼ酵素がヘパリナーゼIIIであることを特徴とする請求項3または4に記載の使用。
  6. 虚血または再灌流損傷が、心筋梗塞、発作、臓器移植、ショック、または心肺バイパス手術によるものであることを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の使用。
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