JP4152249B2 - 電波伝搬特性推定装置、電波伝搬特性推定方法および電波伝搬特性推定プログラム - Google Patents
電波伝搬特性推定装置、電波伝搬特性推定方法および電波伝搬特性推定プログラム Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、移動体無線通信における電波伝搬特性を推定する電波伝搬特性推定装置、電波伝搬特性推定方法、および電波伝搬特性推定プログラムに関し、特に、伝搬路の途中に複数の山岳が重畳した地形(多重山岳)、または伝搬路に海面や湖面が含まれる地形(陸海混合伝搬路)における電波伝搬特性の推定処理に好適な電波伝搬特性推定装置、電波伝搬特性推定方法および電波伝搬特性推定プログラムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、地上に設置された基地局と、自動車、列車、または人間等の移動体(移動局)との間で行われる移動体無線通信では、建物や樹木等の地上妨害物(地物)、または丘陵や山岳等の地形の影響を絶えず受けるので、基地局や移動局で受信される電波の電界強度の変動が多種多様であり、このため、受信点における電界強度または送信端から受信端までの伝搬損によって評価される電波伝搬特性の理論的解析が困難である。したがって、この移動体無線通信における電波伝搬特性は、使用電波の周波数帯および地形や地物の影響を適当に分類した統計的実験試料を用いて推定しなければならない。この統計的実験試料としては、関東平野およびその周辺における詳細な実験データをもとに、上述した電波伝搬特性をあらゆる地形や地物等に応じて推定できる奥村モデルによるグラフ(奥村カーブ)がある(非特許文献1参照)。
【0003】
図11は、上述した奥村カーブの一例を示す図である。図11に示す奥村カーブは、1kWの実効放射電力で送信された周波数900MHzの電波が市街地を介して受信された場合における電界強度距離特性を示しており、この奥村カーブを用いれば、伝搬距離の値をもとに、この電波の受信点における電界強度の値を読み取ることができ、読み取られた値をもとに、送信端から受信端までの間における伝搬損を推定することができる。なお、図11における基地局アンテナの実効高htは、基地局アンテナが設置された地点から移動局方向に3〜15kmの範囲において計測される地表高の平均値(平均地表高)と、この基地局アンテナの高さとの差として定義される。
【0004】
また、上述した奥村カーブにおける準平滑地形に関するグラフをもとに、準平滑地形上の市街地、郊外地、または開放地における各伝搬損を推定する式(秦式)が考案され、この秦式を計算機等のプログラムに用いることで、準平滑地形における電波伝搬特性を容易に推定する方法もある(非特許文献2参照)。
【0005】
なお、準平滑地形は、上述した奥村モデルで分類された地形の一つであり、伝搬路の地形プロファイルから判定して、地形の起伏高が約20m以下であって、起伏のうねりが緩やかであり、しかも平均地表高が距離によって大きな差(約20m以上の差)をもたない程度の平坦な地形と定義される。また、市街地、郊外地、および開放地は、上述した奥村モデルで分類された地物であり、市街地は、ビルディングや2階以上の家屋の密集地として定義され、郊外地は、移動局近傍に妨害物はあるが、密集していない地域として定義され、開放地は、電波到来方向に高い樹木や建物等の妨害がなく、開けている地域として定義される。
【0006】
【非特許文献1】
「移動通信の基礎」奥村義久、進士昌明監修、電子情報通信学会、1986、p.25−59
【非特許文献2】
「移動通信」笹岡秀一著、株式会社オーム社、1998、p.24−29
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した非特許文献1に記載された奥村モデルでは、準平滑地形、多重山岳、または陸海混合伝搬路等の地形、あるいは市街地等の地物における電波伝搬特性を推定する場合、伝搬路における地形や地物、あるいは使用周波数帯等の各電波伝搬条件に対応する奥村カーブを選定し、さらに、選定された奥村カーブを用いて、受信電波の電界強度推定値を読み取るという作業が不可欠である。このため、計算機等を用いて、電波伝搬特性の推定値を自動的に演算出力することは困難な場合が多く、所望の電波伝搬特性の推定処理に多大な時間や労力がかかるという問題点があった。
【0008】
一方、上述した非特許文献2に記載された秦式では、準平滑地形上の市街地、郊外地、または開放地における電波伝搬特性を数式化するに留まるので、多重山岳や陸海混合伝搬路における電波伝搬特性を推定することは困難な場合が多く、上述した問題点を解決するに至らない。
【0009】
なお、上述した多重山岳および陸海混合伝搬路は、日本国内で行われる移動体無線通信の伝搬路として一般的な地形であるので、多重山岳や陸海混合伝搬路における電波伝搬特性を容易に推定することは、移動体無線通信ネットワークにおいて極めて重要な意味をもち、特に、無線アドホックネットワークの構築においては、この電波伝搬特性を容易に推定できる方法の確立が要望されている。
【0010】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、2地点間で送受信される電波の電波伝搬特性を容易に推定することができ、特に、多重山岳または陸海混合伝搬路における電波伝搬特性の推定処理を自動的に行う電波伝搬特性推定装置、電波伝搬特性推定方法および電波伝搬特性推定プログラムを得ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる電波伝搬特性推定装置にあっては、地図データをもとに2地点間の電波伝搬特性を推定する電波伝搬特性推定装置において、前記地図データをもとに前記2地点間の断面地形を求め、該断面地形が不規則地形である場合に、準平滑地形に対応した電波伝搬損失に関する第1の近似式を用いて前記2地点間の断面地形が準平滑地形である場合の電波伝搬損失に相当する基準電波伝搬損失を求めるとともに、前記不規則地形に対応した前記基準電波伝搬損失の補正値に関する第2の近似式(M=a*B+c(M:補正値、a,c:奥村カーブに近似する推定線を形成可能な任意の数値、B:不規則地形における補正パラメータ))を用いて該補正値を求め、前記基準電波伝搬損失に前記補正値を加えた推定電波伝搬損失を求める処理手段を備え、前記処理手段は、前記地図データをもとに前記2地点間の断面地形の輪郭を示す地形プロファイル情報を求める断面地形取得手段と、準平滑地形に対応した電波伝搬損失に関する第1の近似式を用いて前記2地点間の断面地形が準平滑地形である場合の電波伝搬損失に相当する基準電波伝搬損失を求める基準損失取得手段と、前記地形プロファイル情報に基づいて前記断面地形が多重山岳地形または陸海混合地形としての不規則地形であるか否かを判断する地形判断手段と、前記地形判断手段が多重山岳地形または陸海混合地形としての不規則地形であると判断した場合、多重山岳地形または陸海混合地形に対応した前記基準電波伝搬損失の補正値に関する第2の近似式をそれぞれ用いて該補正値を求める補正手段と、前記基準電波伝搬損失に前記補正値を加えた推定電波伝搬損失を求める推定手段と、を備え、前記補正手段は、前記地形判断手段が多重山岳地形としての不規則地形であると判断した場合、補正パラメータBが前記2地点間を結ぶ直線を超える山岳の各超過高さの総和ΣHi ( i=1,2,・・・n ) であり、このΣHiの値に応じた複数の前記第2の近似式を用いて前記基準電波伝搬損失の補正値を求め、前記不規則地形が陸海混合地形である場合、補正パラメータBが前記2地点間に存在する水面の割合DW/D(D;局間距離、DW;水面距離、前記c=0))であり、前記2地点間の距離の値に応じた複数の前記第2の近似式を用いて前記基準電波伝搬損失の補正値を求めることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、処理手段が、前記地図データをもとに前記2地点間の断面地形を求め、該断面地形が不規則地形である場合に、準平滑地形に対応した電波伝搬損失に関する第1の近似式を用いて前記2地点間の断面地形が準平滑地形である場合の電波伝搬損失に相当する基準電波伝搬損失を求めるとともに、前記不規則地形に対応した前記基準電波伝搬損失の補正値に関する第2の近似式(M=a*B+c(M:補正値、a,c:奥村カーブに近似する推定線を形成可能な任意の数値、B:不規則地形における補正パラメータ))を用いて該補正値を求め、前記基準電波伝搬損失に前記補正値を加えた推定電波伝搬損失を求める処理手段として、前記断面地形の輪郭を示す地形プロファイル情報を求める断面地形取得手段と、前記基準電波伝搬損失を求める基準損失取得手段と、前記地形プロファイル情報に基づいて不規則地形であるか否かを判断する地形判断手段と、前記第2の近似式を用いて前記基準電波伝搬損失の補正値を求める補正手段と、前記基準電波伝搬損失に前記補正値を加えた推定電波伝搬損失を求める推定手段とを備え、さらに前記補正手段は、多重山岳地形の場合、補正パラメータBが前記2地点間を結ぶ直線を超える山岳の各超過高さの総和ΣHiの値に応じた複数の前記第2の近似式を用いて前記基準電波伝搬損失の補正値を求め、前記地形判断手段が陸海混合地形の場合、補正パラメータBが前記2地点間に存在する水面の割合DW/D(D;局間距離、DW;水面距離)であり、前記2地点間の距離の値に応じた複数の前記第2の近似式を用いて前記基準電波伝搬損失の補正値を求めるようにしているので、準平滑地形、多重山岳、または陸海混合伝搬路等の各種地形を介して電波を送受信した場合の電波伝搬損失を自動的に演算出力でき、所望の電波伝搬特性の推定処理を容易にしている。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、この発明にかかる電波伝搬特性推定装置、電波伝搬特性推定方法および電波伝搬特性推定プログラムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によって、この発明が限定されるものではない。
【0014】
図1は、この発明の実施の形態である電波伝搬特性推定装置の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、電波伝搬特性推定装置1は、周知のパーソナルコンピュータ等を用いて実現され、入力部2、地図データベース3、制御部4、処理部5、および出力部6を有する。入力部2および出力部6は制御部4に接続され、制御部4は、入力部2、地図データベース3、処理部5、および出力部6を制御する。また、図2は、電波伝搬特性推定装置1の処理部5が、移動体無線通信における電波伝搬特性を推定するまでの各処理手順を示すフローチャートである。
【0015】
図1および図2において、入力部2は、キーボード、マウス、またはタッチパネル等の組み合わせによって実現され、常時入力依頼状態に設定され、電波伝搬特性推定対象の移動体無線通信を行う基地局および移動局の各位置を少なくとも特定する特定情報が入力される。この特定情報は、キーボード、マウス、またはタッチパネルを用いて入力することができ、特定情報の入力指示のもと、基地局および移動局の各位置を特定する住所や緯度経度等を入力し、あるいは選択することによって情報入力が行われる。一方、ディスプレイまたはタッチパネル上に表示した地図を用いて、この特定情報を入力することができ、ディスプレイに表示した地図の場合には、キーボードやマウスによって操作されるディスプレイ上のカーソールを用いて、基地局および移動局の各位置に該当する点を選択することで情報入力が行われ、タッチパネル上に表示した地図の場合には、基地局および移動局の各位置に該当する点をタッチパネルから直接選択することで情報入力が行われる。この場合、所望の地図範囲または地図スケールを指示する情報を入力部2から入力することで、この指示情報に該当する地図をディスプレイまたはタッチパネル上に表示できる。入力部2に入力された特定情報は、特定情報S1として制御部4に入力される。
【0016】
地図データベース3は、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリまたは光ディスクやハードディスク等の記憶媒体を用いて実現され、各任意位置を示す地図情報をデータベース化して格納する。この地図情報は、地図上で選択される各任意位置をそれぞれ特定する住所または緯度経度に対応付けられた任意の座標系を含む地理情報と地図上の各任意位置における標高を示す標高情報とを含んでいる。地図データベース3に格納された地図情報は、制御部4の制御のもと、地図情報S2として制御部4に入力される。なお、この地図情報は、上述した地理情報の一部として、地図上に存在する各地物の位置および分類を特定する情報を含んでもよい。ただし、ここでいう地物の分類は、上述した奥村モデルにおける開放地、郊外地、および市街地である。
【0017】
制御部4は、入力部2から入力された特定情報S1と地図データベース3から入力された地図情報S2とをもとに、所望の基地局および移動局の間で行われる移動体無線通信における電波伝搬特性を推定する処理部5を有し、処理部5に対して、この電波伝搬特性を推定する各処理を制御する。制御部4および処理部5は、この電波伝搬特性を推定するまでの各処理を実行するCPU(Central Processing Unit)、これら各処理のプログラム等の各種データを記憶するROM、および演算パラメータ等を記憶するRAM(Random Access Memory)を有することで実現され、このCPUがROMに格納されたプログラムを実行することによって、上述した電波伝搬特性を推定するまでの各処理機能を実現する。なお、制御部4のROMには、基地局および移動局の間で送受信される電波の周波数や送信電力、基地局および移動局の各アンテナ高さ等の各パラメータが予め格納されており、処理部5が上述した各処理を行う場合に、必要に応じて読み出される。
【0018】
また、制御部4は、特定情報S1として、基地局および移動局の各位置を示す住所または緯度経度を入力部2から受信した場合、地図データベース3に対して、この住所または緯度経度に対応付けられた座標系を含む地図情報S2を制御部4に送出する制御を行う。その後、制御部4は、入力部2から受信した特定情報S1と地図データベース3から受信した地図情報S2とを処理部5に送出する。この場合、制御部4は、受信した特定情報S1によって示される住所または緯度経度と地図情報S2に含まれる座標系との対応付けを確実に行う。
【0019】
一方、上述したように、ディスプレイやタッチパネル上に表示した地図を用いて特定情報S1を入力する場合、制御部4は、入力部2から受信した地図範囲または地図スケールの指示情報に対応する地図情報S2を地図データベース3から受信し、このディスプレイやタッチパネルに対して、受信した地図情報S2によって示される地図を表示する制御を行う。この場合、入力部2は、特定情報S1として、地図情報S2で示される地図上の座標を直接入力することができ、制御部4は、この座標を示す特定情報S1と地図情報S2とを処理部5に送出する。
【0020】
また、制御部4は、処理部5が所望の移動体無線通信における電波伝搬特性を推定する各処理を完了した場合、この推定結果を処理部5から受信し、出力部6に対して、受信した推定結果を出力する制御を行う。出力部6は、プリンタやディスプレイ等によって実現され、制御部4の制御のもと、処理部5による電波伝搬特性推定結果を出力する。なお、出力部6は、制御部4の制御のもと、上述した入力部2における特定情報S1の入力指示等を表示してもよいし、地図情報S2によって示される地図を表示してもよい。
【0021】
処理部5は、地図データ処理部5a、基準値推定部5b、地形判断部5c、補正値推定部5d、および伝搬損推定部5eを有する。地図データ処理部5aは、制御部4から受信した特定情報S1および地図情報S2をもとに、電波伝搬特性推定対象の基地局と移動局との距離を局間距離D[km]として演算し、電波伝搬特性推定対象の基地局と移動局とを結ぶ直線上、すなわち、この基地局と移動局との間で送受信される電波の伝搬路における起伏や傾斜等の地表断面の輪郭(地形プロファイル)を導出し、さらに、この伝搬路に存在する地物が市街地、郊外地、開放地のいずれに該当するかを判断する。ただし、上述した地形プロファイルには、伝搬路における各地点の標高情報をもとに該伝搬路における地表の起伏を示す起伏高h[m]と、該起伏の頂上付近における地表の輪郭がなす頂点角θ1[deg.]と、地表の輪郭がなす傾斜角θ2[deg.]と、局間距離Dに対する海面または湖面が占める距離(水面距離)DW[km]と、基地局および移動局の各標高情報とが含まれる。地図データ処理部5aは、基準値推定部5bに対して、演算出力した局間距離Dを示す局間距離情報S3と上述した伝搬路に存在する地物を示す地物情報S4とを送出する。一方、地図データ処理部5aは、地形判断部5cに対して、上述した地形プロファイルを示す地形プロファイル情報S5を送出する。
【0022】
基準値推定部5bは、地図データ処理部5aから受信した局間距離情報S3および地物情報S4をもとに、所望の移動体無線通信の電波伝搬特性推定処理における基準値E1を推定する(ステップS10)。この場合、基準値推定部5bは、基準値E1として、制御部4のROMが格納するプログラムに予め組み込まれた秦式に基づき、受信した地物情報S4によって示される地物を介して伝搬する電波の伝搬損を演算する。ここで、秦式は、上述したように、奥村モデルによって分類される準平滑地形上の地物、たとえば、市街地、郊外地、または開放地を介して伝搬する電波の伝搬損を演算する式であり、この秦式を用いれば、準平滑地形上に存在する市街地、郊外地、または開放地を介して行われる移動体無線通信の電波伝搬特性を推定することができる。その後、基準値推定部5bが推定した基準値E1は、基準値情報S6として伝搬損推定部5eに送出される。
【0023】
地形判断部5cは、地図データ処理部5aから受信した局間距離情報S3および地形プロファイル情報S5をもとに、電波伝搬特性推定対象の基地局および移動局の間で送受信される電波の伝搬路における地形を判断する。この地形プロファイル情報S5には、上述したように、起伏高h[m]と、頂点角θ1[deg.]と、傾斜角θ2[deg.]と、水面距離DW[km]と、基地局および移動局の各標高情報とが含まれるので、地形判断部5cは、これらのパラメータをもとに、この伝搬路における地形を判断できる。
【0024】
ただし、地形判断部5cによって判断される地形は、上述した奥村モデルで分類された準平滑地形または不規則地形に該当し、この不規則地形には、上述した多重山岳や陸海混合伝搬路以外に、丘陵地形、孤立山岳、および傾斜地形が含まれる。なお、丘陵地形は、単なる平坦な台地ではなく、不規則な起伏を有する地形であり、低い山が重ね合わさった地形も含む。孤立山岳は、伝搬路の途中に単一の山岳があり、その山岳以外の地形が電波の受信点に影響を及ぼさない地形である。また、傾斜地形は、少なくとも5km以上の範囲にわたり上り下り傾斜を有する地形である。
【0025】
たとえば、地形判断部5cは、この伝搬路における地表の起伏高hおよび傾斜角θ2が共に所定範囲内である場合、この伝搬路における地形を準平滑地形と判断し(ステップS20,No)、この起伏高hまたは傾斜角θ2が所定範囲外である場合、この伝搬路における地形を不規則地形と判断する(ステップ20,Yes)。つぎに、地形判断部5cは、所定範囲以上の起伏高hを示す地点における頂点角θ1が所定範囲以下である場合に、この地点を山岳と判断することができ、さらに、判断された山岳が伝搬路内に一つだけ存在する場合に、この伝搬路における地形を孤立山岳と判断し(ステップS30,その他)、判断された山岳が複数存在する場合に、この伝搬路における地形を多重山岳と判断する(ステップS30,多重山岳)。また、地形判断部5cは、この伝搬路において水面距離DWを検出した場合、この伝搬路における地形を陸海混合伝搬路と判断する(ステップS30,陸海混合)。さらに、起伏高hや傾斜角θ2等に所定の地形判断基準を設定することで、地形判断部5cは、この伝搬路における地形を丘陵地形または傾斜地形と判断する(ステップS30,その他)。
【0026】
その後、地形判断部5cは、上述した伝搬路における地形判断結果として、地形情報S7を補正値推定部5dに送出する。なお、地形判断部5cは、伝搬路における地形を準平滑地形と判断した場合、この地形判断結果を示す地形情報S7を基準値推定部5bに送出し、基準値推定部5bは、受信した地形情報S7をもとに、上述した基準値E1を所望の電波伝搬特性の推定結果として制御部4に送出してもよい。この場合、制御部4は、出力部6に対して、基準値推定部5bから受信した基準値E1を所望の電波伝搬特性の推定結果として出力する制御を行う。
【0027】
ただし、地形判断部5cは、伝搬路における地形を多重山岳と判断した場合、この伝搬路を伝搬する電波の送受信点間を結ぶ直線を超える各山岳の高さHi(i=1,2,…,n)の総和ΣHiを演算し、該演算結果を地形情報S7の一部として補正値推定部5dに送出する。また、地形判断部5cは、伝搬路における地形を陸海混合伝搬路と判断した場合、この伝搬路を伝搬する電波の受信点側近傍の地形が陸面または水面のいずれであるかを判断し、該判断結果と上述した水面距離DWおよび局間距離Dとを地形情報S7の一部として補正値推定部5dに送出する。
【0028】
一方、地形判断部5cは、伝搬路における地形を丘陵地形、孤立山岳、または傾斜地形と判断した場合、地形情報S7を補正値推定部5dおよび制御部4に送出する。制御部4は、地形判断部5cから受信した地形情報S7をもとに、出力部6に対して、この地形情報S7によって示される地形判断結果と、該地形判断結果による地形に対応する奥村カーブを用いて検出される補正値の入力指示とを表示する制御を行う。
【0029】
なお、地形判断部5cは、伝搬路における地形を丘陵地形、孤立山岳、または傾斜地形と判断した場合、判断した地形に関するパラメータを地形情報S7の一部として制御部4に送出することが望ましい。たとえば、地形判断部5cは、丘陵地形と判断した場合に、起伏高hを地形情報S7の一部として制御部4に送出し、孤立山岳と判断した場合に、この山岳から移動局までの距離を地形情報S7の一部として制御部4に送出し、傾斜地形と判断した場合に、傾斜角θ2を地形情報S7の一部として制御部4に送出する。この場合、制御部4は、出力部6に対して、地形情報S7による地形に関するパラメータを上述した補正値の入力指示とともに表示する制御を行い、これによって、この地形に対応する奥村カーブから容易に補正値を検出することができる。
【0030】
補正値推定部5dは、地形判断部5cから受信した地形情報S7をもとに、所望の移動体無線通信の電波伝搬特性推定処理における補正値を推定する。この補正値は、上述した準平滑地形毎または不規則地形毎に設定された補正値近似式を用いて演算され、補正値推定部5dは、地形判断部5cによって判断された地形に対応する補正値近似式を組み込んだプログラムを制御部4のROMから読み出すことで、この補正値の推定処理を実現する。たとえば、地形判断部5cが伝搬路における地形を多重山岳と判断した場合(ステップS30,多重山岳)、補正値推定部5dは、地形判断部5cから受信した地形情報S7をもとに、多重山岳に対応する電波伝搬特性推定処理の補正値Mを推定する演算処理を行う(ステップS40)。その後、補正値推定部5dによって得られた補正値Mは、補正値情報S8として伝搬損推定部5eに送出される。また、地形判断部5cが伝搬路における地形を陸海混合伝搬路と判断した場合(ステップS30,陸海混合)、補正値推定部5dは、地形判断部5cから受信した地形情報S7をもとに、陸海混合伝搬路に対応する電波伝搬特性推定処理の補正値Wを推定する演算処理を行う(ステップS50)。その後、補正値推定部5dによって得られた補正値Wは、補正値情報S8として伝搬損推定部5eに送出される。
【0031】
一方、地形判断部5cが伝搬路における地形を丘陵地形、傾斜地形、または孤立山岳等のその他の地形と判断した場合(ステップS30,その他)、制御部4は、上述したように、出力部6に対して、地形情報S7によって示される地形に対応する奥村カーブを用いて検出される補正値の入力指示を表示する制御を行い、補正値推定部5dは、この補正値の入力指示のもと、入力部2から入力された補正値情報を受信する。この場合、入力部2から入力された補正値情報は、上述したその他の地形に対応する電波伝搬特性推定処理の補正値Kに相当し、補正値推定部5dは、この補正値情報を受信することで、補正値Kの推定処理を達成する(ステップS60)。その後、補正値推定部5dに受信された補正値Kは、補正値情報S8として伝搬損推定部5eに送出される。
【0032】
他方、地形判断部5cが伝搬路における地形を準平滑地形と判断した場合(ステップS20,No)、補正値推定部5dは、地形判断部5cから受信した地形情報S7をもとに、所望の移動体無線通信における電波伝搬特性推定処理の補正値を零と推定する。この場合、補正値推定部5dは、この電波伝搬特性推定処理の補正値が零であることを示す情報として、補正値情報S8を伝搬損推定部5eに送出する。
【0033】
伝搬損推定部5eは、基準値推定部5bから受信した基準値情報S6と補正値推定部5dから受信した補正値情報S8とをもとに、所望の移動体無線通信の電波伝搬特性を推定する(ステップS70)。この場合、伝搬損推定部5eは、この電波伝搬特性を推定する推定値として、この移動体無声通信を行う基地局および移動局の間で送受信される電波の伝搬損推定値E0を演算する。
【0034】
ここで、伝搬損推定部5eによって演算される伝搬損推定値E0は、上述した市街地等の地物が存在する準平滑地形を介して伝搬した電波の伝搬損推定値を基準値とし、この基準値に対して、この電波の伝搬路における不規則地形等の各種地形に対応する補正値を加算することによって求めることができる。すなわち、伝搬損推定値E0は、基準値推定部5bによって演算された基準値E1と、補正値推定部5dが送出する補正値情報S8によって示される補正値E2とを用いて、次式で表すことができる。
E0=E1+E2 ・・・(1)
ただし、補正値E2は、上述した補正値推定部5dによって演算された推定値であり、伝搬路における地形が多重山岳である場合の補正値M、陸海混合伝搬路である場合の補正値W、多重山岳および陸海混合伝搬路以外である場合の補正値K、あるいは零に該当する。
【0035】
たとえば、電波伝搬特性推定対象の移動体無線通信を行う基地局および移動局が、多重山岳を介して電波を送受信した場合(ステップS30,多重山岳)、伝搬損推定部5eは、基準値E1を示す基準値情報S6を基準値推定部5bから受信し、さらに、補正値Mを示す補正値情報S8を補正値推定部5dから受信し、受信した基準値情報S6および補正値情報S8をもとに、伝搬損推定値E0を演算する。この場合、演算される伝搬損推定値E0は、次式によって表すことができる。
E0=E1+M ・・・(2)
【0036】
また、上述した基地局および移動局が、陸海混合伝搬路を介して電波を送受信した場合(ステップS30,陸海混合)、伝搬損推定部5eは、基準値E1を示す基準値情報S6を基準値推定部5bから受信し、さらに、補正値Wを示す補正値情報S8を補正値推定部5dから受信し、受信した基準値情報S6および補正値情報S8をもとに、伝搬損推定値E0を演算する。この場合、演算される伝搬損推定値E0は、次式によって表すことができる。
E0=E1+W ・・・(3)
【0037】
さらに、上述した基地局および移動局が、丘陵地形、傾斜地形、または孤立山岳等の多重山岳および陸海混合伝搬路以外の地形を介して電波を送受信した場合(ステップS30,その他)、伝搬損推定部5eは、基準値E1を示す基準値情報S6を基準値推定部5bから受信し、さらに、入力部2から入力された補正値Kを示す補正値情報S8を補正値推定部5dから受信し、受信した基準値情報S6および補正値情報S8をもとに、伝搬損推定値E0を演算する。この場合、演算される伝搬損推定値E0は、次式によって表すことができる。
E0=E1+K ・・・(4)
【0038】
一方、上述した基地局および移動局が、市街地等の地物が存在する準平滑地形を介して電波を送受信した場合、伝搬損推定部5eは、基準値E1を示す基準値情報S6を基準値推定部5bから受信し、さらに、補正値が零であることを示す補正値情報S8を補正値推定部5dから受信し、受信した基準値情報S6および補正値情報S8をもとに、伝搬損推定値E0を演算する。この場合、演算される伝搬損推定値E0は、次式によって表すことができる。
E0=E1 ・・・(5)
すなわち、上述した準平滑地形を介して電波の送受信が行われた場合、伝搬損推定値E0は、基準値推定部5bが推定した基準値E1と等しい値になる。
【0039】
その後、伝搬損推定部5eによって演算された伝搬損推定値E0は、所望の移動体無線通信の電波伝搬特性を推定する推定情報S9として、制御部4に送出される。この場合、制御部4は、出力部6に対して、受信した推定情報S9によって示される伝搬損推定値E0を表示する制御を行う。出力部6は、制御部4の制御のもと、所望の電波伝搬特性推定結果としての伝搬損推定値E0を画面表示またはプリント表示等によって出力する。
【0040】
つぎに、多重山岳を介して行われる移動体無線通信の電波伝搬特性を補正する補正値Mの推定処理における基本原理について詳細に説明する。図3は、移動体無線通信を行う基地局および移動局が、多重山岳を介して電波を送受信する状態を説明する図である。図3において、基地局10および移動局11が、多重山岳を介して移動体無線通信を行う場合、基地局10から送信された電波は、多重山岳MNTに含まれる各山岳Mt1,Mt2,…,Mtn(nは2以上の整数)の頂上付近を回折するように伝搬し、移動局11に受信される。
【0041】
ここで、基地局10における電波の送信点TPと移動局11における電波の受信点RPとを直線Fで結び、この直線Fを基準にして、多重山岳MNTの各山岳Mt1,Mt2,…,Mtnの各山岳高H1,H2,…,Hnを計測した場合、これらの山岳高H1,H2,…,Hnの総和ΣHiは、多重山岳MNTを介して、基地局10および移動局11の間で送受信される電波の電波伝搬特性における補正値を検出するパラメータとなり得る。この場合、総和ΣHiをパラメータとして、多重山岳における電波伝搬特性の補正値を推定する奥村カーブを用いれば、この基地局10および移動局11の間における電波伝搬特性の補正値を検出できる。したがって、この奥村カーブに近似する推定線を実現し、総和ΣHiをパラメータとする所定の近似式の組み合わせを用いれば、多重山岳における電波伝搬特性の補正値Mを容易に演算出力できる。
【0042】
たとえば、上述した総和ΣHiをパラメータとする所定の近似式の一例として、次に示す2つの式を設定する。
M=−12.49×log10ΣHi+20.96 ・・・(6)
M=−21.40×log10ΣHi+37.21 ・・・(7)
ただし、式(6)および式(7)は、補正値Mと総和ΣHiの対数log10ΣHiとについての一次式と考える。図4は、式(6)および式(7)によって例示される2つの近似式の組み合わせで形成される推定線と、多重山岳における電波伝搬特性の補正値を推定する奥村カーブとを示す図である。なお、図4に示す直線Raは式(6)によって図示される直線であり、直線Rbは、式(7)によって図示される直線である。
【0043】
図4に示すように、この推定線は、直線Ra,Rbの組み合わせによって形成され、直線Ra,Rbは、総和ΣHiが66.65[m]である場合に補正値Mが−1.82[dB]となる点で交差している。また、この推定線は、図4に示す奥村カーブに極めて近似している。したがって、総和ΣHiが66.65[m]未満である場合に、直線Raで示される補正値Mを検出し、総和ΣHiが66.65[m]以上である場合に、直線Rbで示される補正値Mを検出すれば、図4に示す奥村カーブを用いて推定される補正値の近似値を得ることができる。すなわち、総和ΣHiが66.65[m]未満である場合に、式(6)を用いて補正値を演算し、総和ΣHiが66.65[m]以上である場合に、式(7)を用いて補正値を演算すれば、上述した多重山岳における電波伝搬特性の補正値Mを容易に推定することができる。
【0044】
なお、上述した補正値Mの推定処理では、図4に示す直線Ra,Rbの交点の座標を境界として、式(6)および式(7)から補正値Mを演算する近似式を選択しているが、この発明はこれに限定されるものではなく、式(6)を用いて補正値M1を演算するとともに、式(7)を用いて補正値M2を演算し、得られた補正値M1と補正値M2とを比較した結果、小さい方の値を上述した補正値Mとしてもよい。
【0045】
また、上述した補正値Mを推定する近似式として、式(6)および式(7)を設定したが、この発明はこれに限定されるものではなく、図4に示す奥村カーブ上の任意点に近似する交点を有し、この奥村カーブに近似する推定線を形成可能な近似式であればよく、さらに、設定した近似式における各係数は、任意の有効数字にしてもよい。
【0046】
つぎに、地形判断部5cが伝搬路における地形を多重山岳と判断した場合(ステップS30,多重山岳)に、補正値推定部5dが、地形判断部5cから受信した地形情報S7をもとに補正値Mを推定する処理手順について詳細に説明する。図5は、補正値推定部5dが、地形判断部5cから地形情報S7を受信してから、受信した地形情報S7をもとに、補正値Mを推定するまでの各処理手順を示すフローチャートである。
【0047】
図5において、補正値推定部5dは、地形判断部5cによる地形判断結果と、該地形判断結果に該当する多重山岳の山岳高の総和ΣHiとを示す地形情報S7を地形判断部5cから受信する(ステップS41)。つぎに、補正値推定部5dは、受信した地形情報S7による地形判断結果をもとに、上述した補正値Mを演算する近似式が組み込まれたプログラムを制御部4のROMから読み出す。この近似式としては、上述した式(6)および式(7)が例示される。
【0048】
補正値推定部5dは、受信した地形情報S7による山岳高の総和ΣHiをパラメータとし、式(6)および式(7)を用いて、補正値M1,M2をそれぞれ演算し(ステップS42)、さらに、得られた補正値M1,M2を比較する。その結果、補正値M1が補正値M2未満である場合(ステップS43,Yes)、補正値推定部5dは、補正値M1を推定対象の補正値Mとして設定し(ステップS44)、補正値M1が補正値M2以上である場合(ステップS43,No)、補正値推定部5dは、補正値M2を推定対象の補正値Mとして設定する(ステップS45)。なお、この補正値推定部5dによる補正値M1,M2の各演算処理および比較処理は、読み出したプログラムを実行することで実現され、これによって、補正値推定部5dは、所望の補正値Mの推定処理を達成する。その後、補正値推定部5dは、推定した補正値Mを示す補正値情報S8を伝搬損推定部5eに送出する。
【0049】
つぎに、陸海混合伝搬路を介して行われる移動体無線通信の電波伝搬特性を補正する補正値Wの推定処理における基本原理について詳細に説明する。図6は、移動体無線通信を行う基地局および移動局が、陸海混合伝搬路を介して電波を送受信する状態を説明する図である。図6において、基地局10および移動局11が、陸海混合伝搬路を介して移動体無線通信を行う場合、基地局10から送信した電波は、陸面LNDと海や湖等の水面WTRとを順次伝搬し、移動局11に受信される。また、水面距離DWの中点を通過する垂線C2が、局間距離Dの中点を通過する垂線C1よりも受信点RPに近い位置にあるので、図6に示す受信点RPは、水面近傍に位置するといえる。
【0050】
ここで、基地局10から移動局11までの局間距離Dと、この局間距離Dにおける水面WTRの占める水面距離DWとを計測した場合、この局間距離Dに対する水面距離DWの比DW/Dは、陸面LNDおよび水面WTRを介して、基地局10および移動局11の間で送受信される電波の電波伝搬特性における補正値を検出するパラメータとなり得る。この場合、比DW/Dをパラメータとして、陸海混合伝搬路における電波伝搬特性の補正値を推定する奥村カーブを用いれば、この基地局10および移動局11の間における電波伝搬特性の補正値を検出できる。したがって、この奥村カーブに近似する推定線を実現し、比DW/Dをパラメータとする所定の近似式を用いれば、陸海混合伝搬路における電波伝搬特性の補正値Wを容易に演算出力できる。
【0051】
たとえば、上述した局間距離Dに対する水面距離DWの比DW/Dをパラメータとする所定の近似式の一例として、次に示す2つの式を設定する。
W=10×DW/D ・・・(8)
W=15×DW/D ・・・(9)
ただし、式(8)および式(9)は、補正値Wおよび比DW/Dについての一次式と考える。図7は、所定の近似式による推定線と陸海混合伝搬路における電波伝搬特性の補正値を推定する奥村カーブとを例示する図である。なお、図7に示す推定線L1は式(8)によって図示され、推定線L2は、式(9)によって図示される。また、図7に示す曲線Q1,Q2は、受信点RPが水面近傍に位置する場合に、陸海混合伝搬路における電波伝搬特性の補正値を推定する奥村カーブを示している。
【0052】
図7に示すように、推定線L1は、ほぼ曲線Q1に近似しており、推定線L2は、ほぼ曲線Q2に近似している。また、曲線Q1は、局間距離Dが30[km]未満である場合に、陸海混合伝搬路における補正値の推定曲線として用いられる奥村カーブであり、曲線Q2は、局間距離Dが60[km]を超える場合に、陸海混合伝搬路における補正値の推定曲線として用いられる奥村カーブである。
【0053】
したがって、局間距離Dが30[km]未満である場合に、推定線L1で示される補正値Wを検出し、局間距離Dが60[km]を超える場合に、推定線L2で示される補正値Wを検出すれば、曲線Q1,Q2で例示する奥村カーブを用いて推定される補正値の近似値を得ることができる。すなわち、局間距離Dが30[km]未満である場合に、式(8)を用いて補正値を演算し、局間距離Dが60[km]を超える場合に、式(9)を用いて補正値を演算すれば、上述した陸海混合伝搬路における電波伝搬特性の補正値Wを容易に推定することができる。
【0054】
また、局間距離Dが30[km]以上、60[km]以下である場合の補正値Wは、推定線L1を用いて推定される補正値と推定線L2を用いて推定される補正値との中間値に相当し、次式によって示される。
W=12.5×DW/D ・・・(10)
【0055】
なお、上述した補正値Wの推定処理では、陸海混合伝搬路における補正値を推定する奥村カーブを例示する各曲線が、それぞれ1つの近似式で示される推定線を用いて近似されていたが、この発明はこれに限定されるものではなく、この奥村カーブを例示する各曲線が、複数の近似式で示される各直線を組み合わせて形成される推定線を用いて、それぞれ近似されるようにしてもよい。この場合、上述した補正値Wを演算する近似式は、この推定線を構成する各直線の交点座標や演算出力された各補正値の比較結果等をもとに設定された所定の境界条件に応じて、選択的に用いられる。
【0056】
また、上述した補正値Wを推定する近似式として、式(8)、式(9)、および式(10)を設定したが、この発明はこれに限定されるものではなく、図7に例示する奥村カーブに近似する推定曲線を形成可能な近似式を用いてもよい。さらに、設定する近似式を構成する各係数は、任意の有効数字であってもよい。
【0057】
つぎに、地形判断部5cが伝搬路における地形を陸海混合伝搬路と判断した場合(ステップS30,陸海混合)に、補正値推定部5dが、地形判断部5cから受信した地形情報S7をもとに補正値Wを推定する処理手順について詳細に説明する。図8は、補正値推定部5dが、地形判断部5cから地形情報S7を受信してから、受信した地形情報S7をもとに、補正値Wを推定するまでの各処理手順を示すフローチャートである。なお、以下では、地形判断部5cが、電波の受信点近傍の地形を水面と判断した場合について説明する。
【0058】
図8において、補正値推定部5dは、地形判断部5cによる地形判断結果と、該地形判断結果に該当する陸海混合伝搬路における水面距離DWおよび局間距離Dとを示す地形情報S7を地形判断部5cから受信する(ステップS51)。ただし、この地形判断結果には、伝搬路における地形判断結果(陸海混合伝搬路に該当)と電波の受信点近傍における地形判断結果(水面に該当)とが含まれる。補正値推定部5dは、受信した地形情報S7をもとに、該地形情報S7によって示される局間距離Dが、30[km]未満、60[km]超過、または30[km]以上かつ60[km]以下のいずれの範囲に該当するかを判定する。
【0059】
この局間距離Dが30[km]未満である場合(ステップS52,D<30)、補正値推定部5dは、補正値Wを演算する式(8)に例示される近似式が組み込まれたプログラムを制御部4のROMから読み出す。つぎに、補正値推定部5dは、受信した地形情報S7が示す局間距離Dおよび水面距離DWによる比DW/Dをパラメータとし、式(8)を用いて、補正値W1を演算する(ステップS53)。この場合、補正値推定部5dは、推定対象の補正値Wとして、補正値W1を演算出力する。
【0060】
また、この局間距離Dが60[km]を超える場合(ステップS52,D>60)、補正値推定部5dは、補正値Wを演算する式(9)に例示される近似式が組み込まれたプログラムを制御部4のROMから読み出す。つぎに、補正値推定部5dは、受信した地形情報S7が示す局間距離Dおよび水面距離DWによる比DW/Dをパラメータとし、式(9)を用いて、補正値W2を演算する(ステップS54)。この場合、補正値推定部5dは、推定対象の補正値Wとして、補正値W2を演算出力する。
【0061】
さらに、この局間距離Dが30[km]以上かつ60[km]以下である場合(ステップS52,30≦D≦60)、補正値推定部5dは、補正値Wを演算する式(10)に例示される近似式が組み込まれたプログラムを制御部4のROMから読み出す。つぎに、補正値推定部5dは、受信した地形情報S7が示す局間距離Dおよび水面距離DWによる比DW/Dをパラメータとし、式(10)を用いて、補正値W3を演算する(ステップS55)。この場合、補正値推定部5dは、推定対象の補正値Wとして、補正値W3を演算出力する。
【0062】
なお、上述した補正値推定部5dによる補正値W1,W2,W3の各演算処理は、読み出したプログラムを実行することで実現され、これによって、補正値推定部5dは、所望の補正値Wの推定処理を達成する。その後、補正値推定部5dは、推定した補正値Wを示す補正値情報S8を伝搬損推定部5eに送出する。
【0063】
この実施の形態では、奥村モデルによって分類される準平滑地形に関する奥村カーブを数式化した秦式を用いて、準平滑地形上の地物を介して送受信される電波の伝搬損を演算し、得られた伝搬損を所望の移動体無線通信における電波伝搬特性を推定する基準値とし、所望の移動体無線通信における伝搬路の地形が多重山岳である場合、多重山岳における補正値を推定する奥村カーブに近似な推定線を形成する所定の近似式を用いて、上述した基準値を補正する補正値を演算し、得られた補正値を上述した基準値に加算することによって、多重山岳を介して行われる所望の移動体無線通信における電波伝搬特性の推定値を演算している。また、所望の移動体無線通信における伝搬路の地形が陸海混合伝搬路である場合、陸海混合伝搬路における補正値を推定する奥村カーブに近似な各推定線を形成する所定の近似式を用いて、上述した基準値を補正する補正値を演算し、得られた補正値を上述した基準値に加算することによって、陸海混合伝搬路を介して行われる所望の移動体無線通信における電波伝搬特性の推定値を演算している。すなわち、準平滑地形、多重山岳、または陸海混合伝搬路を介して行われる移動体無線通信の電波伝搬特性における基準値および補正値を所定の数式によって演算できるので、上述した奥村カーブを用いた各推定値の読取作業を行うことなく、この電波伝搬特性の推定値を自動的に演算出力することができる。これによって、準平滑地形、多重山岳、または陸海混合伝搬路を介して行われる移動体無線通信の電波伝搬特性の推定値を自動的に演算出力するプログラムが組み込まれた電波伝搬特性推定装置を容易に実現することができ、この電波伝搬特性の推定処理を容易に行うことができる。
【0064】
また、所望の移動体無線通信における伝搬路の地形が丘陵地形、孤立山岳、または傾斜地形である場合は、各地形における補正値を推定する奥村カーブのパラメータとして、起伏高、山岳から移動局までの距離、または傾斜角等の各地形に関するパラメータを出力表示しているので、奥村カーブを用いた補正値の読取作業を一層容易にすることができ、丘陵地形、孤立山岳、または傾斜地形を介して行われる移動体無線通信の電波伝搬特性の推定処理を容易に行うことができる。
【0065】
さらに、多重山岳における補正値を演算する近似式は、奥村カーブ上の任意点(たとえば総和ΣHiが66.65である点)で交差する2つの直線をそれぞれ図示する式を有し、所定の境界条件に基づいて、近似式として用いる式を選択しており、また、陸海混合伝搬路における補正値を演算する各近似式は、局間距離の範囲に応じて異なる奥村カーブに対して、それぞれ近似な推定線を図示する式であり、所定の境界条件に基づいて、近似式として用いる式を選択しているので、各地形に対応する奥村カーブを用いて読み取られる推定値に近似な値を容易に演算することができる。
【0066】
なお、この発明の実施の形態では、多重山岳における電波伝搬特性の補正値を推定する奥村カーブを2つの近似式によって形成される推定線で近似し、これらの近似式を用いて、多重山岳における電波伝搬特性の補正値Mを演算しているが、この発明は、これに限定されるものではない。図9は、多重山岳における電波伝搬特性の補正値を推定する奥村カーブを用いて読み取った補正値の近似値を演算する各近似式によって形成され、この奥村カーブに近似な推定線を例示する図である。
【0067】
この発明の実施の形態では、図9(a)に示すように、この奥村カーブを直線Ra,Rbによって形成される推定線で近似し、直線Raを示す式(6)または直線Rbを示す式(7)を用いて、補正値Mを演算している。しかし、この発明では、図9(b)に示すように、この奥村カーブを3つの直線R1,R2,R3によって形成される推定線で近似し、直線R1,R2,R3を示す各近似式を所望の境界条件に応じて選択的に用いて、補正値Mを演算してもよいし、図9(c)に示すように、この奥村カーブを所望数n個の直線R1,…,Rnによって形成される推定線で近似し、直線R1,…,Rnを示す各近似式を所望の境界条件に応じて選択的に用いて、補正値Mを演算してもよいし、さらには、この奥村カーブに近似な曲線を示す多項式を近似式として用い、補正値Mを演算してもよい。ただし、上述した直線R1,R2,R3,…,Rnは、この奥村カーブ上の任意点において、総和ΣHiが任意の正数X1,X2,…,Xn−1の場合に隣接直線同士で交差する直線である。
【0068】
また、この発明の実施の形態では、陸海混合伝搬路を介して送受信される電波の受信点が水面近傍に位置する場合を示したが、この発明はこれに限定されるものではなく、電波の受信点が水面近傍に位置していない場合に適用することもできる。図10は、陸海混合伝搬路を介して伝搬する電波が、水面近傍に位置しない受信点で受信される状態を説明する図である。図10に示すように、水面距離DWの中点を通過する垂線C2は、局間距離Dの中点を通過する垂線C1よりも送信点TPに近い位置にあるので、この受信点RPは、水面近傍に位置していないといえる。この場合、水面WTRを介して基地局10および移動局11の間で送受信される電波の電波伝搬特性の補正値は、図7に示す曲線Q3,Q4で例示される奥村カーブを用いて推定できる。
【0069】
ただし、曲線Q3,Q4は、局間距離Dの範囲に応じて選択的に用いられ、たとえば、局間距離Dが30[km]未満である場合は曲線Q3を用い、局間距離Dが60[km]を超える場合は曲線Q4を用いる。したがって、図7に示すように、曲線Q3,Q4をそれぞれ近似する推定線L3,L4を設定し、局間距離Dの範囲に応じて、推定線L3,L4を形成する各近似式を選択的に用いれば、この奥村カーブによって推定される補正値の近似値を演算することができる。
【0070】
たとえば、局間距離Dが30[km]未満である場合は、推定線L3を形成する近似式を用いて補正値Wを演算し、局間距離Dが60[km]を超える場合は、推定線L4を形成する近似式を用いて補正値Wを演算する。この推定線L3,L4を形成する各近似式としては、次に例示する式(11)および式(12)をそれぞれ用いればよい。
W=13×DW/D ・・・(11)
W=19×DW/D ・・・(12)
ただし、局間距離Dが30[km]以上かつ60[km]以下である場合の補正値Wは、推定線L3を用いて推定される補正値と推定線L4を用いて推定される補正値との中間値に相当し、次式によって例示される。
W=16×DW/D ・・・(13)
【0071】
さらに、図10に示す水面WTRが基地局10および移動局11の伝搬路の中間に位置する、すなわち、垂線C1,C2が一致する場合、補正値Wは、局間距離Dが30[km]未満の範囲において、図7に示す曲線Q1,Q3から推定される各補正値の中間値に相当し、局間距離Dが60[km]を超える範囲において、図7に示す曲線Q2,Q4から推定される各補正値の中間値に相当する。したがって、上述した局間距離Dの各範囲に応じて、式(8)と式(11)との中間値を演算する近似式、式(9)と式(12)との中間値を演算する近似式、または式(10)と式(13)との中間値を演算する近似式を選択的に用いれば、垂線C1,C2が一致する場合の補正値Wを演算することができる。
【0072】
また、この発明の実施の形態では、基地局および移動局の間で送受信される電波の周波数や送信電力、基地局および移動局の各アンテナ高さ等の各パラメータを制御部4のROMに予め格納した場合を示したが、この発明はこれに限定されるものではなく、各パラメータの入力指示のもと、入力部2から各パラメータを入力してもよい。
【0073】
さらに、この発明の実施の形態では、基地局から送信した電波を移動局で受信する場合を示したが、この発明はこれに限定されるものではなく、移動局から送信した電波を基地局で受信した場合に適用することもできる。
【0074】
また、この発明の実施の形態では、局間距離Dが30[km]未満、60[km]超過、または30[km]以上、60[km]以下の各条件に応じて、補正値Wを演算する近似式を選択的に用いているが、この発明はこれに限定されるものではなく、局間距離Dが45[km]以下または45[km]超過の各条件に応じて、補正値Wを演算する近似式を選択的に用いてもよい。たとえば、局間距離Dが45[km]以下の場合に、受信点が水面近傍に位置していれば、式(8)を用い、受信点が水面近傍に位置しなければ、式(11)を用いる。また局間距離Dが60[km]を超える場合に、受信点が水面近傍に位置していれば、式(9)を用い、受信点が水面近傍に位置しなければ、式(12)を用いる。
【0075】
【発明の効果】
以上に説明したように、この発明によれば、処理手段が、前記地図データをもとに前記2地点間の断面地形を求め、該断面地形が不規則地形である場合に、準平滑地形に対応した電波伝搬損失に関する第1の近似式を用いて前記2地点間の断面地形が準平滑地形である場合の電波伝搬損失に相当する基準電波伝搬損失を求めるとともに、前記不規則地形に対応した前記基準電波伝搬損失の補正値に関する第2の近似式(M=a*B+c(M:補正値、a,c:奥村カーブに近似する推定線を形成可能な任意の数値、B:不規則地形における補正パラメータ))を用いて該補正値を求め、前記基準電波伝搬損失に前記補正値を加えた推定電波伝搬損失を求める処理手段として、前記断面地形の輪郭を示す地形プロファイル情報を求める断面地形取得手段と、前記基準電波伝搬損失を求める基準損失取得手段と、前記地形プロファイル情報に基づいて不規則地形であるか否かを判断する地形判断手段と、前記第2の近似式を用いて前記基準電波伝搬損失の補正値を求める補正手段と、前記基準電波伝搬損失に前記補正値を加えた推定電波伝搬損失を求める推定手段とを備え、さらに前記補正手段は、多重山岳地形の場合、補正パラメータBが前記2地点間を結ぶ直線を超える山岳の各超過高さの総和ΣHiの値に応じた複数の前記第2の近似式を用いて前記基準電波伝搬損失の補正値を求め、前記地形判断手段が陸海混合地形の場合、補正パラメータBが前記2地点間に存在する水面の割合DW/D(D;局間距離、DW;水面距離)であり、前記2地点間の距離の値に応じた複数の前記第2の近似式を用いて前記基準電波伝搬損失の補正値を求めるようにしているので、準平滑地形、多重山岳、または陸海混合伝搬路等の各種地形を介して電波を送受信した場合の電波伝搬損失を自動的に演算出力でき、これによって、奥村カーブを用いた各推定値の読取作業にともなう煩わしさが軽減され、所望の電波伝搬特性の推定処理を容易に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態である電波伝搬特性推定装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】 電波伝搬特性推定装置の処理部が行う電波伝搬特性推定処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】 多重山岳を介して行われる移動体無線通信における電波伝搬の状態を説明する図である。
【図4】 多重山岳における電波伝搬特性の補正値を近似する推定線を例示する図である。
【図5】 処理部における補正値推定部が、多重山岳における電波伝搬特性の補正値を推定するまでの各処理手順を示すフローチャートである。
【図6】 陸海混合伝搬路を介して行われる移動体無線通信における電波伝搬の状態を説明する図である。
【図7】 陸海混合伝搬路における電波伝搬特性の補正値を近似する推定線を例示する図である。
【図8】 処理部における補正値推定部が、陸海混合伝搬路における電波伝搬特性の補正値を推定するまでの各処理手順を示すフローチャートである。
【図9】 多重山岳における電波伝搬特性の補正値を近似する推定線の別態様を例示する図である。
【図10】 陸海混合伝搬路を介して行われる移動体無線通信における電波伝搬状態の別態様を説明する図である。
【図11】 従来技術による奥村カーブの一例を示す図である。
【符号の説明】
1 電波伝搬特性推定装置、2 入力部、3 地図データベース、4 制御部、5 処理部、5a 地図データ処理部、5b 基準値推定部、5c 地形判断部、5d 補正値推定部、5e 伝搬損推定部、6 出力部、10 基地局、11 移動局、LDN 陸面、Mt1,Mt2,Mtn 山岳、MNT 多重山岳、RP 受信点、TP 送信点、WTR 水面。
Claims (3)
- 地図データをもとに2地点間の電波伝搬特性を推定する電波伝搬特性推定装置において、
前記地図データをもとに前記2地点間の断面地形を求め、該断面地形が不規則地形である場合に、準平滑地形に対応した電波伝搬損失に関する第1の近似式を用いて前記2地点間の断面地形が準平滑地形である場合の電波伝搬損失に相当する基準電波伝搬損失を求めるとともに、前記不規則地形に対応した前記基準電波伝搬損失の補正値に関する第2の近似式(M=a*B+c(M:補正値、a,c:奥村カーブに近似する推定線を形成可能な任意の数値、B:不規則地形における補正パラメータ))を用いて該補正値を求め、前記基準電波伝搬損失に前記補正値を加えた推定電波伝搬損失を求める処理手段を備え、
前記処理手段は、
前記地図データをもとに前記2地点間の断面地形の輪郭を示す地形プロファイル情報を求める断面地形取得手段と、
準平滑地形に対応した電波伝搬損失に関する第1の近似式を用いて前記2地点間の断面地形が準平滑地形である場合の電波伝搬損失に相当する基準電波伝搬損失を求める基準損失取得手段と、
前記地形プロファイル情報に基づいて前記断面地形が多重山岳地形または陸海混合地形としての不規則地形であるか否かを判断する地形判断手段と、
前記地形判断手段が多重山岳地形または陸海混合地形としての不規則地形であると判断した場合、多重山岳地形または陸海混合地形に対応した前記基準電波伝搬損失の補正値に関する第2の近似式をそれぞれ用いて該補正値を求める補正手段と、
前記基準電波伝搬損失に前記補正値を加えた推定電波伝搬損失を求める推定手段と、
を備え、
前記補正手段は、
前記地形判断手段が多重山岳地形としての不規則地形であると判断した場合、補正パラメータBが前記2地点間を結ぶ直線を超える山岳の各超過高さの総和ΣHi ( i=1,2,・・・n ) であり、このΣHiの値に応じた複数の前記第2の近似式を用いて前記基準電波伝搬損失の補正値を求め、
前記不規則地形が陸海混合地形である場合、補正パラメータBが前記2地点間に存在する水面の割合DW/D(D;局間距離、DW;水面距離、前記c=0))であり、前記2地点間の距離の値に応じた複数の前記第2の近似式を用いて前記基準電波伝搬損失の補正値を求めることを特徴とする電波伝搬特性推定装置。 - 地図データをもとに2地点間の電波伝搬特性を推定する電波伝搬特性推定方法において、
前記地図データをもとに前記2地点間の断面地形を求め、該断面地形が不規則地形である場合に、準平滑地形に対応した電波伝搬損失に関する第1の近似式を用いて前記2地点間の断面地形が準平滑地形である場合の電波伝搬損失に相当する基準電波伝搬損失を求めるとともに、前記不規則地形に対応した前記基準電波伝搬損失の補正値に関する第2の近似式(M=a*B+c(M:補正値、a,c:奥村カーブに近似する推定線を形成可能な任意の数値、B:不規則地形における補正パラメータ))を用いて該補正値を求め、前記基準電波伝搬損失に前記補正値を加えた推定電波伝搬損失を求める処理ステップを含み、
前記処理ステップは、
前記地図データをもとに前記2地点間の断面地形の輪郭を示す地形プロファイル情報を求める断面地形取得ステップと、
準平滑地形に対応した電波伝搬損失に関する第1の近似式を用いて前記2地点間の断面地形が準平滑地形である場合の電波伝搬損失に相当する基準電波伝搬損失を求める基準損失取得ステップと、
前記地形プロファイル情報に基づいて前記断面地形が多重山岳地形または陸海混合地形としての不規則地形であるか否かを判断する地形判断ステップと、
前記地形判断ステップが多重山岳地形または陸海混合地形としての不規則地形であると 判断した場合、多重山岳地形または陸海混合地形に対応した前記基準電波伝搬損失の補正値に関する第2の近似式をそれぞれ用いて該補正値を求める補正ステップと、
前記基準電波伝搬損失に前記補正値を加えた推定電波伝搬損失を求める推定ステップと、
を含み、
前記補正ステップには、
前記地形判断ステップが多重山岳地形としての不規則地形であると判断した場合に、補正パラメータBが前記2地点間を結ぶ直線を超える山岳の各超過高さの総和ΣHi ( i=1,2,・・・n ) であり、このΣHiの値に応じた複数の前記第2の近似式を用いて前記基準電波伝搬損失の補正値を求める手順が含まれ、
前記不規則地形が陸海混合地形である場合、補正パラメータBが前記2地点間に存在する水面の割合DW/D(D;局間距離、DW;水面距離、前記c=0))であり、前記2地点間の距離の値に応じた複数の前記第2の近似式を用いて前記基準電波伝搬損失の補正値を求める手順が含まれることを特徴とする電波伝搬特性推定方法。 - 前記請求項2に記載の電波伝搬特性推定方法をコンピュータに実行させるプログラム。
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