JP4151118B2 - インクジェット記録装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はインクジェット記録装置に係り、特にインクのメニスカス状態を良好にするインクジェットヘッド部の構造改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録装置はインク滴を噴射し媒体に印刷する。この噴射されたインク滴のメニスカス状態を良好にすることで印字品質を改良できる。このような技術については、例えば特開平6−286143号公報に記載の様にインク滴を吐出するノズル孔の周縁部を凹凸状に吐出させた構成とするものや、特開昭58−124661号公報に記載の様にインク噴射表面に撥水処理を施しインク滴とインク噴射口との分離を容易にしメニスカス状態を良好にするものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、インクジェット記録装置は休止時、あるいは未使用時にインクが乾燥しインクが噴射口に固まる。そして目詰まり状態になる。この目詰まりを防止するために随時ワイパー等を動作させて噴射口を拭き取り清掃をしている。しかし上記公報の1つのように、ノズル孔の周縁部を突出させると周縁部の凹凸にワイパーが引っ掛かり汚損する。また他の1つの公報のように、インク噴射表面を拭き取り清掃するとワイパーで撥水用の膜を擦り落としインク噴射口の撥水効果が無くなる。
【0004】
本発明の目的は、目詰まりを防止するためにワイパーで擦ってもワイパーを汚損せず、また撥水効果の減少を防止する。結果として、噴射されたインクのメニスカス状態を良好に保つことのできる新しいインクジェット記録装置を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ノズル基体にインク噴射用のノズル孔を有するインクジェット記録装置において、前記ノズル孔の周囲に突縁部を設け、且つ前記ノズル基体の表面が前記突縁部と面一になるよう同じ高さの撥水体を設けたことを特徴とするインクジェット記録装置を提供する。この結果、インク滴の噴射口を擦ってもワイパーを汚損せず、撥水効果をも減少させず、インク滴のメニスカス状態を良好に保つことができる。
【0006】
本発明は、前記突縁部はノズル基体となる金属板にノズル孔をパンチ加工した際に金属板の表面側に押出された金属板の一部であることを特徴とするインクジェット記録装置を提供する。この結果、ノズル孔の周囲に設けられた突縁部の高さ、直径、真円度を精度良く製造できる。本発明は、前記ノズル孔内面が親水処理されていることを特徴とするインクジェット記録装置を提供する。この結果、インク滴のメニスカス状態を良好に保つことができる。
【0007】
本発明は、ノズル基体にインク噴射用のノズル孔を有し、前記ノズル孔をワイパーにて清掃するインクジェット記録装置の製造方法において、ノズル基体となるべき金属板の所定位置にノズル孔をパンチ加工することで、前記金属板におけるポンチを挿入した面に対する反対面に押し出された金属により前記ノズル孔の周囲に凸部を設ける工程と、前記凸部を前記反対面から所定の高さまでの部分を残して切除して前記ノズル孔周囲に突縁部を形成する工程と、前記突縁部と同一の高さとなるようノズル基体の表面に撥水剤を付加して撥水体を設けることで、前記突縁部の表面と前記撥水体の表面とを面一とする工程とを有してなることを特徴とするインクジェット記録装置の製造方法を提供する。この結果インク滴の噴射口を擦ってもワイパーを汚損せず、撥水効果を減少させず、インクのメニスカス状態を良好に保つインクジェット記録装置を製造できる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係るインクジェット記録装置の一部破断面図を示す。
1はインクジェット記録装置、11はインク噴射ヘッド体、12はノズル基体、13はインク噴射体である。
【0009】
インクジェット記録装置1は複数のインク噴射ヘッド体11を例えば縦2列に、左4個、右3個計7個を左右に千鳥状に対向して設けている。このインク噴射ヘッド体11は大略ノズル基体12とインク噴射体13とから構成される。
次に、ノズル基体の製造方法について説明するが、理解し易いようにノズル基体1個を例示している。
<第1の実施例>
図2は第1の実施例に係るノズル基体の製造工程の説明図である。
【0010】
図2(a)に示すように、ノズル基体12は厚さL01、約0.8mmの親水性を持つステンレス材である。このノズル基体12を先端直径W01、約0.035mmΦ、根元直径W03、約0.085mmΦ、傾斜角θ、約20度のポンチ17で貫通しない状態に深さL02、約1.1mmまで押圧する。従って押圧された部分にノズル凸部14ができる。このノズル凸部14の形状は外径W02、約0.135mmΦで、中心内部の内径W01、約0.035mmΦ、高さH01、約0.3mmの形状である。
【0011】
次に、図2(b)に示すように、ノズル基体12の上面から高さH02、約0.1mmの位置でノズル凸部14をフライス盤で切断する。そしてこの切断面をラップ盤で研磨しノズル突縁部15を設ける。従ってノズル基体12の上面から下面まで円錐状に貫通したノズル孔16になる。
図3はノズル基体に撥水処理を施す工程説明図である。
【0012】
更に、図3(a)に示すように、ノズル基体12のノズル孔16の広口側を上向きにしてノズル基体12上に樹脂板20を載置する。樹脂板20の材料はフィルム状のエポキシ樹脂である。
次に、図3(b)に示すように、ノズル基体12上と樹脂板20とを約150度Cで5分間程度加熱する。そして溶融した樹脂20をノズル孔16の狭口側から溢れる程度に充填する。
【0013】
更に、図3(c)に示すように、ノズル孔16の周囲に設けたノズル突縁部15の高さと同一になるように撥水処理を施して撥水体18を設ける。撥水処理は例えば共析メッキ法にてニッケルメッキ、ニッケル合金等の金属メッキをすると同時にフッソ系樹脂の微粒子を含浸する。またはこの金属メッキした後にポーラス状面あるいは、微細クラック面にフッソ系樹脂の微粒子を加熱し含浸する。
【0014】
次に、図3(d)に示すように、ノズル基体12上面とノズル孔16内との樹脂板20をエタノール等の溶剤で溶融し除去する。
このノズル基体12とインク噴射体13とを合体させてインク噴射ヘッド体11をつくる。
結果として、このような製造方法によってノズル基体12のノズル突縁部15の周囲に撥水処理が施される。且つ、ノズル基体12のノズル突縁部15の高さと撥水処理した表面とが同一の高さとなる。従ってノズル基体12をワイパーで擦ってもワイパーを汚損しない。またワイパーで擦ってもノズル突縁部15から距離を隔てた場所は多少の撥水効果が減少する。しかし肝心なノズル突縁部15近辺は撥水効果が減少しない。
<第2の実施例>
図4は第2の実施例に係るノズル基体の製造工程の説明図である。
【0015】
まず、図4(a)に示すように、ノズル基体12は第1実施例と同じ寸法、同形状のステンレス材である。またノズル基体12に設けられたノズル孔16も同形状、同寸法である。ノズル孔16の周囲にノズル突縁部15が無い点が第1実施例と異なる。
このノズル基体12をノズル孔16の狭口側を上向きに載置する。そしてノズル基体12の上にレジスト膜30を載置する。このレジスト膜30の材料はフィルム状の厚さ約0.02mmの溶剤に可溶な感光性エポキシ樹脂である。次にレジスト膜30の上に所定の位置に通過孔を設けた遮光マスク31の通過孔とノズル孔16とを位置合わせして載置する。この遮光マスク31の厚さは約0.1mmで、通過孔の直径0.035mmΦである。この遮光マスク31を介してレジスト膜30を照射し露光する。
【0016】
次に、図4(b)に図示するように、遮光マスク31を除去した後にレジスト膜30を現像する。従って、遮光マスク31の円形パターン部分、換言するとノズル孔16の狭口側周囲直径0.035mmΦの円形部を除いてレジスト膜30が形成される。更にレジスト膜30およびノズル基体12上に硬質膜を形成する。具体的には親水性を持つセラミックスを真空中でスパッタリング処理を施し厚さ約0.1mmの膜を設ける。
【0017】
更に、図4(c)に示すように、溶剤でレジスト膜を溶解し硬質膜のセラミックスと一緒に除去する。従ってノズル孔16の狭口側周囲に厚さH03、約0.1mm、幅W04、約0.05mmの硬質膜19が残る。
次に、上述した図3(a)から図3(d)の撥水処理をノズル基体12上に行なう。
【0018】
このノズル基体12とインク噴射体13とを合体させてインク噴射ヘッド体11をつくる。
結果として、このような製造方法によっても第1の実施例と同様な効果、つまりノズル基体12のノズル突縁部15の周囲に撥水処理が施され且つ、ノズル基体12の突縁部の高さと撥水処理した表面とが同一の高さとなる。
<第3の実施例>
図5は第3の実施例に係るノズル基体の製造工程の説明図である。
【0019】
最初に図5(a)に示すように、ノズル基体12の材料がアルミニユム材あるいはアルミニユム合金である以外は第1の実施例と全て同じである。またノズル基体12に押圧するポンチ17も同形状、同寸法である。
次にノズル基体12の全表面にアルマイト処理を施し硬質膜19を設ける。
更に、ノズル基体12の上面から高さH02、約0.1mmの位置でノズル凸部14をフライス盤で切断する。そしてこの切断面をラップ盤で研磨し突縁部15を設ける。従ってノズル基体12の上面から下面まで円錐状に貫通したノズル孔16になる。
【0020】
更に、前述した図3(a)から図3(d)を行いノズル基体12上に撥水処理を行なう。
次に、図5(b)に示すように、このノズル基体12は上面にノズル凸部14を切断した切断領域22にアルミニユム材が露出している。このアルミニユム材を除去するのに溶剤の二酸化鉄にてエッチングする。そして除去された部分に撥水性を持つテフロン、シリコン等を浸漬製法にて充填する。結果としてノズル基体12の上面全部を撥水処理した撥水体18とする。
【0021】
そして、このノズル基体12とインク噴射体13とを合体させてインク噴射ヘッド体11をつくる。
結果として、このような製造方法によっても、ノズル基体12のノズル突縁部15の周囲に撥水処理が施され且つ、ノズル基体12の突縁部の高さと撥水処理した表面とが同一の高さとなる。
<第4の実施例>
図6は第4の実施例に係るノズル基体の製造工程の説明図である。
【0022】
最初に図6(a)に示すように、ノズル基体12は厚さ約0.3mmのアルミニユム材と厚さ約0.5mmのクラッド材を約1200度Cで真空積層したものである。そして、クラッド材がノズル凸部14を形成しない程度に押圧するする必要がある。換言するとノズル凸部14全部がアルミニユム材で形成されている。これ以外は第1の実施例と全て同じである。
【0023】
次に、図6(b)に示すように、ノズル基体12の上面から高さH02、約0.1mmの位置でノズル凸部14をフライス盤で切断する。そしてこの切断面をラップ盤で研磨しノズル突縁部15を設ける。従って切断全面が撥水性のアルミニユム材である。
次に、ノズル基体12上面にアルマイト処理を施し硬質膜19を設ける。
【0024】
更にアルマイト処理されたアルミニユム面にフッソ樹脂のフィラーを塗布し約300度Cで溶融させノズル凸部14の高さと同じになるまで含浸させる。
結果としてノズル基体12の上面全部を撥水処理された撥水体18となる。
そして、このノズル基体12とインク噴射体13とを合体させてインク噴射ヘッド体11をつくる。
【0025】
結果として、このような製造方法によっても、ノズル基体12のノズル突縁部15の周囲に撥水処理が施され且つ、ノズル基体12のノズル突縁部の高さと撥水処理した表面とが同一の高さとなる。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明のようなインクジェット記録装置は、ワイパーで擦ってもワイパーを汚損せず、また撥水効果の減少を防止し、そして噴射されたインクのメニスカス状態を良好に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るインクジェット記録装置の一部破断面図、
【図2】 第1の実施例に係るノズル基体の製造工程の説明図、
【図3】 ノズル基体に撥水処理を施す工程説明図、
【図4】 第2の実施例に係るノズル基体の製造工程の説明図、
【図5】 第3の実施例に係るノズル基体の製造工程の説明図、
【図6】 第4の実施例に係るノズル基体の製造工程の説明図である。
【符号の説明】
1 インクジェット記録装置
11 インク噴射ヘッド体
12 ノズル基体
13 インク噴射体
14 ノズル凸部
15 ノズル突縁部
16 ノズル孔
17 ポンチ
18 撥水体
19 硬質膜
20 樹脂板
22 切断領域
30 レジスト膜
31 遮光マスク
Claims (1)
- ノズル基体にインク噴射用のノズル孔を有し、前記ノズル孔をワイパーにて清掃するインクジェット記録装置の製造方法において、
ノズル基体となるべき金属板の所定位置にノズル孔をパンチ加工することで、前記金属板におけるポンチを挿入した面に対する反対面に押し出された金属により前記ノズル孔の周囲に凸部を設ける工程と、
前記凸部を前記反対面から所定の高さまでの部分を残して切除して前記ノズル孔周囲に突縁部を形成する工程と、
前記突縁部と同一の高さとなるようノズル基体の表面に撥水剤を付加して撥水体を設けることで、前記突縁部の表面と前記撥水体の表面とを面一とする工程とを有してなることを特徴とするインクジェット記録装置の製造方法。
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